(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142356
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20241003BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241003BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20241003BHJP
F24F 11/30 20180101ALI20241003BHJP
F24F 140/40 20180101ALN20241003BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20241003BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
F24F7/007 B
F24F11/30
F24F140:40
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054467
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 孝昭
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L260AA01
3L260AB07
3L260BA12
3L260CB54
3L260CB55
3L260EA19
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】ダンパの数が増加しても、換気性能の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】空調装置2は空調室1に設けられる。第1ダクト4Aa~第5ダクト4Beは、空調装置2によって空調された空気を空調室1から第1居室5a~第5居室5eに搬送する。第1ダンパ6a~第5ダンパ6eは、第1ダクト4Aa~第5ダクト4Beのそれぞれに対応して設けられ、第1ダクト4Aa~第5ダクト4Beを通過する空気の風量を調整する。ダンパ数量取得部62は、ダンパの数を取得する。制御部50は、第1ダンパ6a~第5ダンパ6eにおける開度を制御する。制御部50は、ダンパ数量取得部62により取得されたダンパの数をもとに、第1ダンパ6a~第5ダンパ6eにおける開度の下限値を設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室に設けられる空調装置と、
前記空調装置によって空調された空気を前記空調室から複数の空間のそれぞれに搬送する複数のダクトと、
前記複数のダクトのそれぞれに対応して設けられ、前記複数のダクトのそれぞれを通過する前記空気の風量を調整する複数のダンパと、
前記ダンパの数を取得するダンパ数量取得部と、
前記複数のダンパのそれぞれにおける開度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ダンパ数量取得部により取得された前記ダンパの数をもとに、前記複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定する、空調システム。
【請求項2】
前記空調室の前記空気を前記複数のダクトのそれぞれへ送風する送風装置と、
前記送風装置の送風量を取得する送風量取得部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記ダンパ数量取得部により取得された前記ダンパの数と前記送風量取得部により取得された前記送風装置の送風量とをもとに、前記複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記ダンパの数と、前記送風装置の送風量と、前記ダンパにおける開度の下限値と、を関連付けたテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記ダンパ数量取得部により取得された前記ダンパの数と、前記送風量取得部により取得された前記送風装置の送風量と、前記記憶部に記憶された前記テーブルとをもとに、前記複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定する、請求項2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調技術に関し、特に複数の空間の空調を制御する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムは、住宅の複数の居室を空調する。空調システムにおいて、搬送ファンは、空調室において空調した空気を分岐チャンバーに送風し、ダクトは、分岐チャンバーに流入した空気を複数の居室に搬出し、ダンパは、ダクトを介して複数の居室のそれぞれに搬出する風量を調整する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のダクトのそれぞれに搬送ファンを設けるとコストが増加するので、1つの搬送ファンから複数のダクトに送風するとともに、ダンパの開度を調節することによって、各居室に搬出する空気の風量が調節される。搬送ファンにより空気が送風されるダクトの数が増加すると、換気の基準値(例えば、0.5回換気)を満たせない可能性がある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、ダンパの数が増加しても、換気性能の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空調システムは、空調室に設けられる空調装置と、空調装置によって空調された空気を空調室から複数の空間のそれぞれに搬送する複数のダクトと、複数のダクトのそれぞれに対応して設けられ、複数のダクトのそれぞれを通過する空気の風量を調整する複数のダンパと、ダンパの数を取得するダンパ数量取得部と、複数のダンパのそれぞれにおける開度を制御する制御部と、を備える。制御部は、ダンパ数量取得部により取得されたダンパの数をもとに、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ダンパの数が増加しても、換気性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の空調コントローラの構成を示す図である。
【
図3】
図2の空調コントローラによるダンパ開度の決定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、住宅等の施設に設けられ、施設に対する全館空調を実行する空調システムに関する。空調システムは、1つの送風装置から複数のダクトへ空気を搬送し、各ダクトに設けられたダンパがダクトから吹き出される空気の量を調節する。このような構成において、各居室に対して換気の基準値を満たすために、本実施例では、ダクト(ダンパ)の分岐数と風量とに応じてダンパの最低開度を決定する。ここで、ダクト(ダンパ)の分岐数は空調システムの施工の段階で入力され、風量は空調システムを運転させる際に取得される。
【0011】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、ステップ(工程)およびステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
図1は、住宅40の構成を示す。住宅40は、2階建ての建物であり、一例として1階に第1居室5a、第2居室5b、第3居室5cを備え、2階に第4居室5d、第5居室5e、空調室1を備える。第1居室5aから第5居室5eは「居室」と総称され、居室は空間である。住宅40における居室の数は「5」に限定されない。空調室1は居室とは独立した空間である。また、住宅40は、2階の上側に小屋裏空間14を備え、1階と2階の間に階間空間15を備える。
【0013】
住宅40に設置される空調システム30は、空調装置2、第1送風装置3a、第2送風装置3b、第1ダンパ6aから第5ダンパ6e、第1ダンパコントローラ7a、第2ダンパコントローラ7b、空調コントローラ8、送風装置コントローラ10、第1温度センサ20aから第5温度センサ20eを含む。
【0014】
空調室1には空調装置2が設置される。空調装置2は、エアコンディショナであり、空調室1の内部の空調を制御する。空調装置2は、空調室1の内部の空気の温度が設定された温度(以下、「設定温度」という)となるように、空調室1に流入した空気を加熱または冷却するとともに、設定された風量で加熱または冷却した空気を送風する。設定温度と風量は、空調コントローラ8により設定される。空調装置2は、空調した空気を下向きに吹き出す。空調装置2の下側には、図示しないHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタが設置される。 HEPAフィルタは、エアフィルタであり、空調装置2において空調がなされた空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。
【0015】
HEPAフィルタの下側には第1送風装置3aと第2送風装置3bが設置される。また、第1送風装置3aにはダクト4Aが接続され、ダクト4Aは、空調室1から階間空間15に延びて、階間空間15に設置された第1分岐チャンバー9aに接続される。第1送風装置3aは、空調装置2で空調され、かつHEPAフィルタにおいて清浄された空気をダクト4Aから第1分岐チャンバー9aに送風する。第2送風装置3bにはダクト4Bが接続され、ダクト4Bは、空調室1から小屋裏空間14に延びて、小屋裏空間14に設置された第2分岐チャンバー9bに接続される。第2送風装置3bは、空調装置2で空調され、かつHEPAフィルタにおいて清浄された空気をダクト4Bから第2分岐チャンバー9bに送風する。
【0016】
第1送風装置3aと第2送風装置3bは送風装置コントローラ10と通信可能であり、送風装置コントローラ10は空調コントローラ8と通信可能である。第1送風装置3aの風量と第2送風装置3bの風量は、送風装置コントローラ10を介して空調コントローラ8により設定される。第1送風装置3aの風量と第2送風装置3bの風量は別の値でもよい。
【0017】
第1分岐チャンバー9aは、ダクト4Aを第1ダクト4Aa、第2ダクト4Ab、第3ダクト4Acに分岐する。第1ダクト4Aaは第1居室5aに接続され、ダクト4Aからの空気を第1居室5aに搬送する。第2ダクト4Abは第2居室5bに接続され、ダクト4Aからの空気を第2居室5bに搬送する。第3ダクト4Acは第3居室5cに接続され、ダクト4Aからの空気を第3居室5cに搬送する。
【0018】
第1分岐チャンバー9aと第1ダクト4Aaとの間には第1ダンパ6aが設けられ、第1ダンパ6aは、第1ダクト4Aaの開閉の程度(以下、「開度」という)を変化させることによって、第1ダクト4Aaを通過する空気の風量を調整する。第1分岐チャンバー9aと第2ダクト4Abとの間には第2ダンパ6bが設けられ、第2ダンパ6bは、第2ダクト4Abの開度を変化させることによって、第2ダクト4Abを通過する空気の風量を調整する。第1分岐チャンバー9aと第3ダクト4Acとの間には第3ダンパ6cが設けられ、第3ダンパ6cは、第3ダクト4Acの開度を変化させることによって、第3ダクト4Acを通過する空気の風量を調整する。
【0019】
第1ダンパ6a、第2ダンパ6b、第3ダンパ6cは第1ダンパコントローラ7aと通信可能であり、第1ダンパコントローラ7aは空調コントローラ8と通信可能である。第1ダンパ6aから第3ダンパ6cのそれぞれの開度は第1ダンパコントローラ7aを介して空調コントローラ8により設定される。第1ダンパ6aから第3ダンパ6cのそれぞれの開度は別の値でもよい。
【0020】
第2分岐チャンバー9bは、ダクト4Bを第4ダクト4Bd、第5ダクト4Beに分岐する。第4ダクト4Bdは第4居室5dに接続され、ダクト4Bからの空気を第4居室5dに搬送する。第5ダクト4Beは第5居室5eに接続され、ダクト4Bからの空気を第5居室5eに搬送する。
【0021】
第2分岐チャンバー9bと第4ダクト4Bdとの間には第4ダンパ6dが設けられ、第4ダンパ6dは、第4ダクト4Bdの開度を変化させることによって、第4ダクト4Bdを通過する空気の風量を調整する。第2分岐チャンバー9bと第5ダクト4Beとの間には第5ダンパ6eが設けられ、第5ダンパ6eは、第5ダクト4Beの開度を変化させることによって、第5ダクト4Beを通過する空気の風量を調整する。
【0022】
第4ダンパ6d、第5ダンパ6eは第2ダンパコントローラ7bと通信可能であり、第2ダンパコントローラ7bは空調コントローラ8と通信可能である。第4ダンパ6dと第5ダンパ6eのそれぞれの開度は第2ダンパコントローラ7bを介して空調コントローラ8により設定される。第4ダンパ6dと第5ダンパ6eのそれぞれの開度は別の値でもよい。
【0023】
第1温度センサ20aは第1居室5aに設置される。第1温度センサ20aは第1居室5aの温度を検知する。第1温度センサ20aは通信機能を有し、検知した温度を空調コントローラ8に送信する。第2温度センサ20bは第2居室5bに設置され、第3温度センサ20cは第3居室5cに設置され、第4温度センサ20dは第4居室5dに設置され、第5温度センサ20eは第5居室5eに設置される。第2温度センサ20bから第5温度センサ20eは第1温度センサ20aと同様の処理を実行する。なお、第1温度センサ20a及び第2温度センサ20bは、それぞれ第1ダンパコントローラ7a及び第2ダンパコントローラ7bを介して空調コントローラ8と通信してもよい。
【0024】
空調コントローラ8は、空調システム30全体を制御するコントローラである。空調コントローラ8は、空調装置2、第1ダンパコントローラ7a、第2ダンパコントローラ7b、送風装置コントローラ10、第1温度センサ20aから第5温度センサ20eと、無線通信または有線通信により通信可能に接続される。空調コントローラ8は、第1温度センサ20aから第5温度センサ20eのそれぞれから温度を受信する。
【0025】
また、空調コントローラ8は、空調システム30を構築するために必要な情報の入力を受けつけるためのインターフェースを備える。例えば、空調コントローラ8は、空調システム30において設定すべき温度(以下、「目標温度」という)を受けつける。空調コントローラ8は、第1温度センサ20aから第5温度センサ20eのそれぞれから受信した温度と、目標温度とをもとに、空調装置2の設定温度と風量、第1送風装置3aの風量、第2送風装置3bの風量、第1ダンパ6aから第5ダンパ6eのそれぞれの開度を決定する。空調コントローラ8は、空調装置2の設定温度と風量を空調装置2に送信し、第1送風装置3aの風量と第2送風装置3bの風量とを送風装置コントローラ10に送信する。空調コントローラ8は、第1ダンパ6aから第3ダンパ6cのそれぞれの開度を第1分岐チャンバー9aに送信し、第4ダンパ6dから第5ダンパ6eのそれぞれの開度を第2分岐チャンバー9bに送信する。
【0026】
空調コントローラ8におけるインターフェース機能は、空調コントローラ8とは別の通信装置であって、かつ空調コントローラ8と通信可能な通信装置に備えられてもよい。通信装置は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末(以下、「端末」という)である。
【0027】
図2は、空調コントローラ8の構成を示す。空調コントローラ8は、制御部50、操作部52、表示部54、記憶部56を含み、制御部50は、送風量取得部60、ダンパ数量取得部62を含む。操作部52は、前述のインターフェースであり、ユーザ等からの操作を受けつける。操作部52は、受けつけた操作に応じた信号を制御部50に出力する。ユーザ等からの操作を通信装置(図示せず)が受けつけた場合、通信装置は、受けつけた操作に応じた信号を空調コントローラ8に送信してもよい。ユーザ等からの操作により入力される情報の一例は、空調システム30を住宅40に施工する際に施工者により入力される第1分岐チャンバー9aにおけるダンパの数の情報と、第2分岐チャンバー9bにおけるダンパの数の情報である。また、ユーザ等からの操作により入力される情報の別の一例は、空調システム30を運用している際にユーザにより入力される目標温度の情報である。
【0028】
以下では、空調コントローラ8における処理を(1)第1送風装置3aと第2送風装置3bの送風量の決定、(2)第1ダンパ6aから第5ダンパ6eのそれぞれの開度の下限値の決定の順に説明する。
(1)第1送風装置3aと第2送風装置3bの送風量の決定
制御部50は、第1温度センサ20aから第5温度センサ20eのそれぞれからの温度を受けつけるとともに、操作部52からの目標温度を受けつける。制御部50は、目標温度と第I温度センサ20i(I=1~5、i=a~e)との差ΔT1(i)を算出する。ここで、I(i)は、温度センサを識別する指標であり、居室を識別する指標であり、ダンパを識別する指標である。制御部50は、ΔT1(i)に基づいて第1送風装置3aの風量と第2送風装置3bの風量とを決定する。以下では第1送風装置3aの風量及び第2送風装置3bの風量をノッチと表現する。ノッチは「1」から「7」のいずれかで示され、「1」の風量が最も小さく、「7」の風量が最も大きい。
【0029】
(2)第1ダンパ6aから第5ダンパ6eのそれぞれの開度の下限値の決定
制御部50は、第1ダンパ6aから第3ダンパ6cのそれぞれに対するダンパ開度スコアD(i)1を算出するとともに、第4ダンパ6dと第5ダンパ6eのそれぞれに対するダンパ開度スコアD(i)2を算出する。ここで、D(i)1とD(i)2は整数となるように四捨五入される。それにより、D(i)1とD(i)2は「1」から「5」のいずれかで示される。
【0030】
ダンパ数量取得部62は、第1分岐チャンバー9aにおけるダンパの数と、第2分岐チャンバー9bにおけるダンパの数とを操作部52から取得する。送風量取得部60は、第1送風装置3aの送風量(ノッチ)と第2送風装置3bの送風量(ノッチ)を取得する。制御部50は、第1分岐チャンバー9aにおけるダンパの数と、第2分岐チャンバー9bにおけるダンパの数、第1送風装置3aの送風量(ノッチ)、第2送風装置3bの送風量(ノッチ)、ダンパ開度スコアD(1)1~D(3)1、D(4)2、D(5)2をもとに、各ダンパの開度を決定する。
【0031】
記憶部56には、分岐チャンバーのダンパの数に対応したテーブルのデータ構造が格納される。例えば、
図1における第1分岐チャンバー9aのダンパの数は「3」であり、第2分岐チャンバー9bのダンパの数は「2」であるので、これらに対応したテーブルも記憶される。これらは、ダンパ開度スコアと、送風装置の送風量と、ダンパにおける開度と、を関連付けたテーブルである。テーブルに格納されたダンパにおける開度は、少なくとも換気の基準値(例えば、0.5回換気)を満たすように定められている。ここで、ダンパ開度スコアが「1」のとき、すなわちダンパにおける開度の下限値であっても、換気の基準値が満たされる。したがって、各分岐チャンバーにおけるダンパの数に対応したテーブルのデータ構造を選択することによって少なくとも換気の基準値を満たすようなダンパの開度の下限値を設定できる。
【0032】
制御部50は、1つの分岐チャンバーにおけるダンパの数に対応したテーブルを選択する。制御部50は、テーブルから、当該分岐チャンバーに接続された送風装置の送風量(ノッチ)に対応した列を選択する。制御部50は、選択した列の中から、当該分岐チャンバーにおける1つのダンパのダンパ開度スコアに対応した値を選択する。ここで、ダンパ開度スコア「1」が当該ダンパの開度の下限値である。制御部50は、このような処理を当該分岐チャンバーにおけるダンパのそれぞれに対して実行するとともに、別の分岐チャンバーに対しても実行する。つまり、制御部50は、ダンパ数量取得部62により取得されたダンパの数と、送風量取得部60により取得された送風装置の送風量と、記憶部56に記憶されたテーブルとをもとに、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定できる。このように制御部50は、複数のダンパのそれぞれにおける開度を制御する。
【0033】
制御部50は、空調装置2の風量(TAP)と空調装置2の設定温度(Tacset)を空調装置2に送信することによって、空調装置2の風量(TAP)と空調装置2の設定温度(Tacset)を空調装置2に設定する。制御部50は、第1送風装置3aの風量と第2送風装置3bの風量を送風装置コントローラ10に送信し、送風装置コントローラ10は、第1送風装置3aの風量を第1送風装置3aに設定し、第2送風装置3bの風量を第2送風装置3bに設定する。
【0034】
制御部50は第1ダンパ6aから第3ダンパ6cの開度(下限値)を第1ダンパコントローラ7aに送信する。第1ダンパコントローラ7aは、第1ダンパ6aの開度(下限値)を第1ダンパ6aに設定し、第2ダンパ6bの開度(下限値)を第2ダンパ6bに設定し、第3ダンパ6cの開度(下限値)を第3ダンパ6cに設定する。制御部50は第4ダンパ6dと第5ダンパ6eの開度(下限値)を第2ダンパコントローラ7bに送信する。第2ダンパコントローラ7bは、第4ダンパ6dの開度(下限値)を第4ダンパ6dに設定し、第5ダンパ6eの開度(下限値)を第5ダンパ6eに設定する。
【0035】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0036】
以上の構成による空調コントローラ8の動作を説明する。
図3は、空調コントローラ8によるダンパ開度の決定手順を示すフローチャートである。制御部50は、目標温度を取得する(S10)と、第1温度センサ20aの計測値から第5温度センサ20eの計測値のそれぞれと、目標温度との温度差を算出する(S12)。制御部50はスコア算出処理を実行する(S14)。制御部50は、空調装置2の送風量/設定温度を決定する(S16)。制御部50は、第1送風装置3aと第2送風装置3bの送風量を決定する(S18)。制御部50は、第1ダンパ6aから第5ダンパ6eのそれぞれの開度の下限値を決定する(S20)。
【0037】
本実施例によれば、ダンパの数をもとに、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定するので、ダンパの数が増加しても換気性能の低下を抑制するような開度を設定できる。また、ダンパの数をもとに、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定するので、ダンパの数が増加しても換気の基準値を満たすことができる。また、ダンパの数と送風装置の送風量とをもとに、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定するので、送風装置の送風量が反映された開度を設定できる。また、ダンパの数と、送風装置の送風量と、ダンパにおける開度の下限値と、を関連付けたテーブルを参照して、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定するので、処理を容易にできる。また、ダンパの数と、送風装置の送風量と、ダンパにおける開度の下限値と、を関連付けたテーブルを参照して、複数のダンパのそれぞれにおける開度の下限値を設定するので、テーブルに換気の基準値を満たす値を示しておけば、ダンパの数が増加しても換気の基準値を満たすことができる。
【0038】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。
(項目1)
空調室(1)に設けられる空調装置(2)と、
前記空調装置(2)によって空調された空気を前記空調室(1)から複数の空間(5a~5e)のそれぞれに搬送する複数のダクト(4Aa~4Be)と、
前記複数のダクト(4Aa~4Be)のそれぞれに対応して設けられ、前記複数のダクト(4Aa~4Be)のそれぞれを通過する前記空気の風量を調整する複数のダンパ(6a~6e)と、
前記ダンパ(6a~6e)の数を取得するダンパ数量取得部(62)と、
前記複数のダンパ(6a~6e)のそれぞれにおける開度を制御する制御部(50)と、を備え、
前記制御部(50)は、前記ダンパ数量取得部(62)により取得された前記ダンパ(6a~6e)の数をもとに、前記複数のダンパ(6a~6e)のそれぞれにおける開度の下限値を設定する、空調システム。
【0039】
(項目2)
前記空調室(1)の前記空気を前記複数のダクト(4Aa~4Be)のそれぞれへ送風する送風装置(3a、3b)と、
前記送風装置(3a、3b)の送風量を取得する送風量取得部(60)と、をさらに備え、
前記制御部(50)は、前記ダンパ数量取得部(62)により取得された前記ダンパ(6a~6e)の数と前記送風量取得部(60)により取得された前記送風装置(3a、3b)の送風量とをもとに、前記複数のダンパ(6a~6e)のそれぞれにおける開度の下限値を設定する、項目1に記載の空調システム。
【0040】
(項目3)
前記ダンパ(6a~6e)の数と、前記送風装置(3a、3b)の送風量と、前記ダンパ(6a~6e)における開度の下限値と、を関連付けたテーブルを記憶する記憶部(56)をさらに備え、
前記制御部(50)は、前記ダンパ数量取得部(62)により取得された前記ダンパ(6a~6e)の数と、前記送風量取得部(60)により取得された前記送風装置(3a、3b)の送風量と、前記記憶部(56)に記憶された前記テーブルとをもとに、前記複数のダンパ(6a~6e)のそれぞれにおける開度の下限値を設定する、項目2に記載の空調システム。
【0041】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
本実施例における空調システム30は、一戸建ての住宅40に設置される。しかしながらこれに限らず例えば、空調システム30は、集合住宅における各住宅に設置されてもよい。本変形例によれば、本実施例の適用範囲を拡大できる。
【符号の説明】
【0043】
1 空調室、 2 空調装置、 3a 第1送風装置、 3b 第2送風装置、 4A ダクト、 4Aa 第1ダクト、 4Ab 第2ダクト、 4Ac 第3ダクト、 4B ダクト、 4Bd 第4ダクト、 4Be 第5ダクト、 5a 第1居室、 5b 第2居室、 5c 第3居室、 5d 第4居室、 5e 第5居室、 6a 第1ダンパ、 6b 第2ダンパ、 6c 第3ダンパ、 6d 第4ダンパ、 6e 第5ダンパ、 7a 第1ダンパコントローラ、 7b 第2ダンパコントローラ、 8 空調コントローラ、 9a 第1分岐チャンバー、 9b 第2分岐チャンバー、 10 送風装置コントローラ、 14 小屋裏空間、 15 階間空間、 20a 第1温度センサ、 20b 第2温度センサ、 20c 第3温度センサ、 20d 第4温度センサ、 20e 第5温度センサ、 30 空調システム、 40 住宅、 50 制御部、 52 操作部、 54 表示部、 56 記憶部、 60 送風量取得部、 62 ダンパ数量取得部。