(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014236
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電磁接触器の機械ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 50/32 20060101AFI20240125BHJP
H01H 51/10 20060101ALI20240125BHJP
H01H 50/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01H50/32 A
H01H51/10 A
H01H50/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116914
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 耕明
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 遼太郎
(57)【要約】
【課題】電磁接触器の機械ラッチ装置において、ラッチ状態を手動で解除できる構造とし、且つケース内への異物の侵入を抑制する。
【解決手段】回動部材22は、一端側の回動軸33によって回動可能に支持され、回動軸33から径方向に離れた位置に連結ピン34が形成されている。解除棒23は、奥行方向に延び、奥行方向の手前側に付勢され、奥行方向の奥側が連結ピン34に嵌まり合い、奥行方向の奥側に押し込まれたときに連結ピン34を介して回動部材22を回動させて先端面35をラッチ面32から退避させる。ケース12は、解除棒23における奥行方向の手前側が進退可能な状態で嵌まり合う貫通孔42が形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁接触器の接点支えに連結されて奥行方向に変位可能であり、側方に突出して奥行方向の手前側を向いたラッチ面を有する突出部が形成されたラッチ支えと、
一端側の回動軸によって回動可能に支持され、前記回動軸から径方向に離れた位置に連結ピンが形成され、他端側の先端面が前記ラッチ面に対向する回動位置となるときに、前記ラッチ支えが奥行方向の手前側に変位することを機械的に阻止する回動部材と、
奥行方向に延び、奥行方向の手前側に付勢され、奥行方向の奥側が前記連結ピンに嵌まり合い、奥行方向の奥側に押し込まれたときに前記連結ピンを介して前記回動部材を回動させて前記先端面を前記ラッチ面から退避させる解除棒と、
前記ラッチ支え、前記回動部材、及び前記解除棒を収容し、前記解除棒における奥行方向の手前側が進退可能な状態で嵌まり合う貫通孔が形成されているケースと、を備えていることを特徴とする電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項2】
前記電磁接触器が遮断状態で、前記ラッチ支えが奥行方向の手前側にあるときには、前記回動部材の前記先端面が前記ラッチ面から退避し、且つ前記連結ピンによって前記解除棒が奥行方向の奥側に引き込まれており、
前記電磁接触器が投入状態で、前記ラッチ支えが奥行方向の奥側にあるときには、前記回動部材の前記先端面が前記ラッチ面に対向することで前記ラッチ支えが奥行方向の手前側に変位することが機械的に阻止され、且つ前記連結ピンによって前記解除棒が奥行方向の手前側に押し出されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項3】
前記解除棒には、奥行方向の奥側に前記連結ピンが嵌まり合い、奥行方向に直線運動する前記解除棒と前記回動軸を中心に円運動する前記連結ピンとの軌道の差を吸収する長穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項4】
前記解除棒には、奥行方向の手前側にフランジが形成され、
前記ケースの内側には、前記解除棒が嵌まり合うリブが形成され、
前記解除棒に挿通され、前記フランジと前記リブとの間に介在し、前記解除棒を奥行方向の手前側に付勢するコイルスプリングを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器の機械ラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
停電や電圧降下によって電磁接触器を遮断させたくない回路や、制御コイルを励磁するための消費電力を抑えたい場合には、電磁接触器の投入状態を機械的に維持することが要求されるため、機械ラッチ装置が電磁接触器に取り付けられる。特許文献1に示される機械ラッチ装置では、接点支えに連動してラッチ支えが投入側に変位したときに、ラッチ支えの肩部にラッチレバーのローラを引っ掛けることで、ラッチ支えが釈放側に戻ることを機械的に阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回動可能に支持されたラッチレバーの一端側には、ラッチ状態を手動で解除するための操作部が形成されており、この操作部がケースの開口部から露出している。開口部は、ラッチレバーにおける操作部の可動範囲に合わせて形成されており、この開口部からケース内に異物が侵入しやすいという問題があった。
本発明の目的は、電磁接触器の機械ラッチ装置において、ラッチ状態を手動で解除できる構造とし、且つケース内への異物の侵入を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器の機械ラッチ装置は、ラッチ支えと、回動部材と、解除棒と、ケースと、を備えている。ラッチ支えは、電磁接触器の接点支えに連結されて奥行方向に変位可能であり、側方に突出して奥行方向の手前側を向いたラッチ面を有する突出部が形成されている。回動部材は、一端側の回動軸によって回動可能に支持され、回動軸から径方向に離れた位置に連結ピンが形成され、他端側の先端面がラッチ面に対向する回動位置となるときに、ラッチ支えが奥行方向の手前側に変位することを機械的に阻止する。解除棒は、奥行方向に延び、奥行方向の手前側に付勢され、奥行方向の奥側が連結ピンに嵌まり合い、奥行方向の奥側に押し込まれたときに連結ピンを介して回動部材を回動させて先端面をラッチ面から退避させる。ケースは、ラッチ支え、回動部材、及び解除棒を収容し、解除棒における奥行方向の手前側が進退可能な状態で嵌まり合う貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、解除棒を押し込むことでラッチ状態を解除することができる。解除棒は、奥行方向に変位するだけなので、ケースの貫通孔は解除棒の外形に合わせることができる。したがって、ラッチレバーによってラッチ状態を解除する構成と比べて、ケースの開口を小さくできるので、ケース内への異物の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、機械ラッチ装置11を示す図である。
ここでは、機械ラッチ装置11を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。停電や電圧降下によって電磁接触器を遮断させたくない回路や、制御コイルを励磁するための消費電力を抑えたい場合に、電磁接触器の投入状態を機械的に維持することが要求されるため、機械ラッチ装置11が電磁接触器に取り付けられる。機械ラッチ装置11は、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の両側を閉塞した直方体状に形成されたケース12を備えており、ケース12は、縦方向における一方のケース13と、他方のケース14と、に分割可能な構造とされている。
【0010】
図2は、機械ラッチ装置11の内部を示す図である。
ここでは、他方のケース14を取り外した機械ラッチ装置11の内部を、縦方向の他方から見た状態を示す。電磁接触器15については、公知の構成であるため詳細な説明を省略する。機械ラッチ装置11のケース12には、ラッチ支え21と、回動部材22と、解除棒23と、電磁石部24と、が収容されている。
ラッチ支え21は、幅方向の略中央に配置され、奥行方向の奥側がケース12から突出し、電磁接触器15の接点支え16に連結されることで、奥行方向に変位可能となる。ラッチ支え21には、幅方向の一方に突出した突出部31が形成されている。突出部31には、奥行方向の手前側及び幅方向の一方を向いたラッチ面32が形成されている。
【0011】
回動部材22は、一端側が回動軸33によって回動可能な状態で一方のケース13に支持されている。回動部材22は、回動軸33から径方向に離れた位置に、回動軸33と平行な連結ピン34が形成されている。回動部材22は、他端側の先端面35がラッチ面32に対向する回動位置となるときに、ラッチ支え21が奥行方向の手前側に変位することを機械的に阻止する。
解除棒23は、奥行方向に延びる円柱状に形成されており、コイルスプリング36によって奥行方向の手前側に付勢された状態で、奥行方向の奥側が連結ピン34に嵌まり合っている。解除棒23は、奥行方向の奥側に押し込まれたときに、連結ピン34を介して回動部材22を回動させて先端面35をラッチ面32から退避させる。
【0012】
電磁石部24は、ラッチ支え21よりも幅方向の他方に配置され、幅方向を軸方向とするプランジャ37を駆動する。プランジャ37は、幅方向の一方側がロッド状に形成されており、その先端がラッチ支え21の貫通穴を介して回動部材22の外周面に対向している。プランジャ37は、図示しない制御コイルが励磁されると、幅方向の一方に前進し、その先端で回動部材22を押し返す。
図3は、分解したケース12を示す図である。
図中の(a)は、一方のケース13を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。ケース13の内側には、縦方向の一方に向かって凹となる軸穴41が形成されている。軸穴41の内径は、回動軸33の外径に対応している。回動部材22は、回動軸33が軸穴41に挿入されることで、回動可能に支持される。
【0013】
図中の(b)は、他方のケース14を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。ケース14には、奥行方向の手前側に、奥行方向に貫通した貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、丸穴であり、その内径は、解除棒23における奥行方向手前側の外径よりも僅かに大きい。解除棒23は、奥行方向に進退可能な状態で、奥行方向の手前側が貫通孔42に嵌まり合う。ケース14の内側には、縦方向及び幅方向に沿い、解除棒23が嵌まり合うリブ43が形成されている。リブ43には、奥行方向から見て縦方向の他方に向かって凹となるU溝が形成されており、解除棒23が奥行方向に進退可能な状態で嵌まり合う。
【0014】
図4は、ラッチ支え21を示す図である。
ここでは、ラッチ支え21を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。ラッチ支え21は、基体51と、脚部52と、を備えている。
基体51は、奥行方向及び縦方向に沿った略板状であり、縦方向の中央には、幅方向に貫通した貫通穴53が形成されている。貫通穴53は、奥行方向に延びる長穴であり、プランジャ37の先端が挿通される。基体51には、貫通穴53よりも奥行方向の奥側に、突出部31が形成されている。突出部31のラッチ面32は、縦方向から見て幅方向の一方に向かうほど奥行方向の奥側に向かう平坦な傾斜面である。
脚部52は、基体51における奥行方向の奥側に形成され、奥行方向に沿って延びている。脚部52における奥行方向の奥側には、縦方向から見て奥行方向の奥側に向かって開いた略C字状の連結凹部54が形成されている。連結凹部54に接点支え16が嵌め合わされることで、ラッチ支え21が接点支え16に連結される。
【0015】
図5は、回動部材22を示す図である。
ここでは、互いに直交する三方向を、縦方向、x方向、及びy方向とする。図中の(a)は、回動部材22を縦方向の他方から見た状態を示す。図中の(b)は、y方向の一方から見た状態を示す。図中の(c)は、x方向の一方から見た状態を示す。回動部材22は、y方向に延びる長手部56と、x方向に延びる短手部57と、を備えており、縦方向から見て略L字状に形成されている。長手部56の基端側(又は短手部57の基端側)には、縦方向の一方に向かって突出した円柱状の回動軸33が形成されている。回動軸33は、ケース13の軸穴41に嵌め込まれる。短手部57の先端側には、縦方向の他方に向かって突出した円柱状の連結ピン34が形成されている。連結ピン34は、回動軸33と略同等のサイズである。先端面35は、長手部56におけるy方向の他端に形成されており、縦方向から見て僅かに膨らんだ曲面である。したがって、先端面35はラッチ面32に対して線接触する。
【0016】
図6は、解除棒23を示す図である。
図中の(a)は、解除棒23を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。解除棒23には、奥行方向の手前側にフランジ61が形成されている。解除棒23は、奥行方向の手前側がケース14の貫通孔42に嵌まり合い、奥行方向の奥側に押し込み可能な押しボタン62となる。解除棒23には、奥行方向の奥側に、角柱部63が連結されている。例えば、解除棒23に形成した雄ねじ部と、角柱部63に形成した雌ねじ部とを嵌め合わせることで互いに連結される。図中の(b)は、角柱部63を、縦方向の他方から見た状態を示す。角柱部63には、縦方向に貫通し、且つ幅方向に長い長穴64が形成されている。長穴64は、奥行寸法が連結ピン34の外径に対応しており、幅寸法が連結ピン34の外径よりも大きい。長穴64には、回動部材22の連結ピン34が嵌め込まれる。長穴64は、縦方向から見て、奥行方向に直線運動する解除棒23と回動軸33を中心に円運動する連結ピン34との軌道の差を吸収するために、幅方向に延びている。
【0017】
ここで、解除棒23の組み付けについて説明する。まず、解除棒23のうちフランジ61よりも奥行方向の奥側にコイルスプリング36を挿通してから、解除棒23に角柱部63を連結する。そして、押しボタン62をケース14の貫通孔42に嵌め込み、ケース14のリブ43よりも奥行方向の手前側にコイルスプリング36が配置されるように、コイルスプリング36を圧縮しながら、リブ43のU溝に解除棒23を嵌め合わせる。これにより、コイルスプリング36がフランジ61とリブ43との間に介在して、解除棒23を奥行方向の手前側へと付勢する。そして、解除棒23の長穴64に対して、縦方向の一方から回動部材22の連結ピン34が嵌め込まれる。解除棒23が奥行方向の手前側へ付勢されていることに伴い、回動部材22は、縦方向の他方から見て反時計回りに回動するように付勢される。
【0018】
《動作》
次に、実施形態の主要な動作について説明する。
電磁接触器15が釈放状態であるときには、
図2に示すように、接点支え16によってラッチ支え21が奥行方向の手前側に押し上げられている。このとき、回動部材22は縦方向の他方から見て時計回りに回動した状態にあり、この回動位置では、先端面35がラッチ面32から退避しているため、ラッチ支え21が奥行方向の奥側に変位することを許容している。また、この回動位置では、連結ピン34が回動軸33よりも奥行方向の奥側に位置しているため、解除棒23がコイルスプリング36の反発力に逆らって奥行方向の奥側に引き込まれている。したがって、押しボタン62は、ケース14の貫通孔42から僅かに出ているだけで、既に奥行方向の奥側に押し込まれた状態にある。
【0019】
この状態から、電磁接触器15が投入状態に変化すると、投入状態を機械的に維持するラッチ状態となる。
図7は、ラッチ状態を示す図である。
ここでは、他方のケース14を取り外した機械ラッチ装置11の内部を、縦方向の他方から見た状態を示す。電磁接触器15が投入状態になると、接点支え16によってラッチ支え21が奥行方向の奥側に引き下げられる。このとき、回動部材22は縦方向の他方から見て反時計回りに回動した状態になり、この回動位置では、先端面35がラッチ面32に対向するため、ラッチ支え21が奥行方向の手前側に変位することを機械的に阻止している。ラッチ面32は平坦な傾斜面であり、ラッチ支え21における奥行方向の位置に関わらず、ラッチ面32に回動部材22の先端面35が必ず接触するので、ラッチ支え21の戻りを機械的に阻止する部分の隙間はゼロとなる。また、ラッチ面32には段差がないので、回動部材22の回動に段付き感はなく、滑らかに動作する。また、この回動位置では、連結ピン34が回動軸33よりも奥行方向の手前側に位置しているため、解除棒23がコイルスプリング36の反発力によって奥行方向の手前側へと押し上げられている。したがって、押しボタン62は、ケース14の貫通孔42から突出した状態にある。
【0020】
この状態から、ユーザが押しボタン62をコイルスプリング36の反発力に逆らって奥行方向の奥側へ押し込むと、ラッチ状態が解除される。すなわち、押しボタン62が押し込まれると、連結ピン34が奥行方向の奥側へと押し下げられるため、回動部材22が縦方向の他方から見て時計回りに回動する。この回動により、
図2に示すように、回動部材22の先端面35がラッチ面32から退避するため、ラッチ支え21が奥行方向の奥側に変位することを許容する。したがって、電磁接触器15の制御コイルが非励磁にされていると、接点支え16及びラッチ支え21が奥行方向の手前側に押し上げられ、ラッチ状態が解除される。
【0021】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器15の機械ラッチ装置11は、ラッチ支え21と、回動部材22と、解除棒23と、ケース12と、を備えている。ラッチ支え21は、電磁接触器15の接点支え16に連結されて奥行方向に変位可能であり、側方に突出して奥行方向の手前側を向いたラッチ面32を有する突出部31が形成されている。回動部材22は、一端側の回動軸33によって回動可能に支持され、回動軸33から径方向に離れた位置に回動軸33と平行な連結ピン34が形成されている。回動部材22は、他端側の先端面35がラッチ面32に対向する回動位置となるときに、ラッチ支え21が奥行方向の手前側に変位することを機械的に阻止する。解除棒23は、奥行方向に延び、奥行方向の手前側に付勢され、奥行方向の奥側が連結ピン34に嵌まり合い、奥行方向の奥側に押し込まれたときに連結ピン34を介して回動部材22を回動させて先端面35をラッチ面32から退避させる。ケース12は、ラッチ支え21、回動部材22、及び解除棒23を収容し、解除棒23における奥行方向の手前側が進退可能な状態で嵌まり合う貫通孔42が形成されている。これにより、解除棒23を押し込むことでラッチ状態を解除することができる。解除棒23は、奥行方向に変位するだけなので、ケース12の貫通孔42は解除棒23の外形に合わせることができる。したがって、後述する比較例の構成と比べて、ケース12の開口を小さくできるので、ケース12内への異物の侵入を抑制することができる。開口面積は、後述する比較例と比べて70%ほど減少しており、異物の侵入を抑制するのに効果的な構造となっている。また、ラッチ状態を解除する操作は、貫通孔42に嵌まり合った解除棒23を押し込むだけなので、操作性に優れる。
【0022】
電磁接触器15が遮断状態で、ラッチ支え21が奥行方向の手前側にあるときには、回動部材22の先端面35がラッチ面32から退避し、且つ連結ピン34によって解除棒23が奥行方向の奥側に引き込まれている。電磁接触器15が投入状態で、ラッチ支え21が奥行方向の奥側にあるときには、回動部材22の先端面35がラッチ面32に対向することでラッチ支え21が奥行方向の手前側に変位することが機械的に阻止される。電磁接触器15が投入状態で、ラッチ支え21が奥行方向の奥側にあるときには、連結ピン34によって解除棒23が奥行方向の手前側に押し出されている。したがって、ラッチ状態にあるときだけ、解除棒23がケース12の貫通孔42から突出することになり、解除棒23が押しボタン62として機能する。これにより、ラッチ状態を容易に解除することができる。
【0023】
解除棒23には、奥行方向の奥側に連結ピン34が嵌まり合い、奥行方向に直線運動する解除棒23と回動軸33を中心に円運動する連結ピン34との軌道の差を吸収する長穴64が形成されている。これにより、解除棒23の直線運動から回動部材22の回転運動に、また回動部材22の回転運動から解除棒23の直線運動に、夫々、スムーズに変換することができる。
解除棒23には、奥行方向の手前側にフランジ61が形成されている。ケース12の内側には、解除棒23が嵌まり合うリブ43が形成されている。電磁接触器15の機械ラッチ装置11は、コイルスプリング36を備えている。コイルスプリング36は、解除棒23に挿通され、フランジ61とリブ43との間に介在し、解除棒23を奥行方向の手前側に付勢している。このようにシンプルな構造で、解除棒23を奥行方向の手前側に付勢することができる。
【0024】
次に、比較例について説明する。
図8は、比較例を示す図である。
比較例のラッチ構造では、ラッチ支え71と、ラッチレバー72と、を備えている。図中の(a)は、ラッチ支え71及びラッチレバー72を、縦方向の他方から見た状態を示す。ラッチ支え71には、肩部73が形成されており、ラッチレバー72には、ローラ74が設けられている。ラッチ支え71が奥行方向の奥側に位置しているときに、ラッチ支え71の肩部73にラッチレバー72のローラ74を引っ掛けることで、ラッチ支え71が奥行方向の手前側に戻ることを機械的に阻止している。
【0025】
ラッチレバー72には、奥行方向の手前側に、ラッチ状態を手動で解除するための操作部75が形成されている。操作部75は、幅方向及び縦方向に沿った板状に形成されており、その端部に指を引っ掛けてラッチレバー72を回動させることで、ラッチ支え71の肩部73からローラ74を退避させてラッチ状態を解除することができる。図中の(b)は、ケース76の一部を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。ケース76には、ラッチレバー72の操作部75を露出させるために、開口部77が形成されている。開口部77は、太い点線で示すように、操作部75の可動範囲に応じて形成されるため、ある程度の大きさになる。したがって、この開口部77からケース76内に異物が侵入しやすいという問題があった。また、操作部75がケース76の奥まったところに配置されているため、その端部に指を掛けにくいという操作性の問題もあった。
【0026】
《変形例》
実施形態では、ラッチ面32を傾斜面にする構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ラッチ面32は少なくとも奥行方向の手前側を向いていればよいので、幅方向及び縦方向に沿った平面でもよい。
実施形態では、解除棒23を奥行方向の手前側に付勢すると共に、回動部材22を縦方向の他方から見て反時計回りに付勢する機能を、一つのコイルスプリング36で担う構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、回動部材22における幅方向の一方にコイルスプリングを追加することで、回動部材22を縦方向の他方から見て反時計回りに付勢してもよい。
【0027】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0028】
11…機械ラッチ装置、12…ケース、13…ケース、14…ケース、15…電磁接触器、16…接点支え、21…ラッチ支え、22…回動部材、23…解除棒、24…電磁石部、31…突出部、32…ラッチ面、33…回動軸、34…連結ピン、35…先端面、36…コイルスプリング、37…プランジャ、41…軸穴、42…貫通孔、43…リブ、51…基体、52…脚部、53…貫通穴、54…連結凹部、56…長手部、57…短手部、61…フランジ、62…ボタン、63…角柱部、64…長穴、71…ラッチ支え、72…ラッチレバー、73…肩部、74…ローラ、75…操作部、76…ケース、77…開口部