(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142363
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241003BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J29/38 104
H02J50/10
H02J7/00 302A
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054477
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】酒井 勇士
(72)【発明者】
【氏名】柴 国偉
(72)【発明者】
【氏名】有城 真
(72)【発明者】
【氏名】坂部 拓児
【テーマコード(参考)】
2C061
5G503
【Fターム(参考)】
2C061AQ04
2C061AQ05
2C061AS02
2C061AS14
2C061HJ10
2C061HK10
2C061HK11
2C061HK18
2C061HN15
2C061HN22
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503GB08
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】二次電池の劣化を抑制できるプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタは、無接点受電部、装着部、印刷部、およびCPUを備える。無接点受電部は、外部から第1電力が入力される。装着部は、二次電池から第2電力が入力される。印刷部は、第1電力および第2電力の少なくともいずれかを利用して媒体に印刷する。CPUは、第2電力を使うことなく第1電力を利用して印刷部に印刷を実行させる第1印刷モードと、第1電力および第2電力を利用して印刷部に印刷を実行させる第2印刷モードと、のいずれかを選択的に実行する(S21、S25)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から第1電力が入力される第1入力部と、
二次電池から第2電力が入力される第2入力部と、
前記第1電力および前記第2電力の少なくともいずれかを利用して媒体に印刷する印刷部と、
前記印刷部を制御して前記媒体に印刷する為の制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2電力を使うことなく前記第1電力を利用して前記印刷部に印刷を実行させる第1印刷モードと、
前記第1電力および前記第2電力を利用して前記印刷部に印刷を実行させる第2印刷モードと、
のいずれかを選択的に実行する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、
印刷データに基づく必要電力量に基づいて、前記第1印刷モードと前記第2印刷モードとのいずれかを選択して実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1印刷モードは、前記印刷データで特定される印刷時間に前記第1電力に基づき受電可能な受電電力量が、前記必要電力量以上となる場合に実行され、
前記第2印刷モードは、前記受電電力量が前記必要電力量よりも小さい場合に実行される
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記必要電力量は、前記印刷データのうち印刷パターンと印刷幅とに基づき演算される
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記必要電力量は、前記印刷データのうち、更に、前記制御部が決定する印刷速度、前記印刷部のヘッドの温度、前記ヘッド周辺の環境温度に基づき演算される
ことを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第1印刷モードは、
前記第1電力に基づく印刷が可能であり、且つ前記第2電力に基づく印刷ができない場合に実行され、
前記制御部は、
前記第1電力に基づく印刷ができず、且つ前記第2電力に基づく印刷ができない場合、印刷を実行しない停止モードを選択して実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記制御部は、
前記プリンタが印刷を実行する為の印刷指示を受け付ける度に、前記第1印刷モードと、前記第2印刷モードとを選択的に実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記第1入力部には、非接触で前記外部から前記第1電力が入力される
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1電力に基づき、前記プリンタの待機状態を継続する待機モードを選択して実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第1電力に基づき、前記二次電池を充電する充電モードを選択して実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の印字装置は、印字部、二次電池、非接給電器、非接触受電部、および制御部を備える。印字部は、用紙に情報を印字する。二次電池は、第1電力を印字部に供給する。非接触受電部は、外部の非接触給電器から電力を受給して、第1電力より小さな第2電力を印字部に供給する。制御部は、二次電池に充電されている電力が充分である場合、二次電池から印字部に第1電力を供給し、二次電池に充電されている電力が不足している場合、非接触受電部から第2電力を印字部に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記印字装置は、主として二次電池からの電力で駆動するので、充電回数の増加等に伴い二次電池の劣化が早まる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、二次電池の劣化を抑制できるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリンタは、外部から第1電力が入力される第1入力部と、二次電池から第2電力が入力される第2入力部と、前記第1電力および前記第2電力の少なくともいずれかを利用して媒体に印刷する印刷部と、前記印刷部を制御して前記媒体に印刷する為の制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2電力を使うことなく前記第1電力を利用して前記印刷部に印刷を実行させる第1印刷モードと、前記第1電力および前記第2電力を利用して前記印刷部に印刷を実行させる第2印刷モードと、のいずれかを選択的に実行することを特徴とする。
【0007】
プリンタは、第1電力のみで電力量が十分な場合、第1電力のみに基づき第1印刷モードを実行する。更に、プリンタは、第1電力のみでは電力量が不十分な場合、第1電力に加えて、二次電池の第2電力も使用して第2印刷モードを実行する。第1電力を主として使用するので、プリンタは、二次電池の劣化を抑制できる。
【0008】
本発明において、前記制御部は、印刷データに基づく必要電力量に基づいて、前記第1印刷モードと前記第2印刷モードとのいずれかを選択して実行してもよい。プリンタは、印刷データの必要電力量に基づきモードを選択できる。
【0009】
本発明において、前記第1印刷モードは、前記印刷データで特定される印刷時間に前記第1電力に基づき受電可能な受電電力量が、前記必要電力量以上となる場合に実行され、前記第2印刷モードは、前記受電電力量が前記必要電力量よりも小さい場合に実行されてもよい。プリンタは、受電電力量と必要電力量との関係でモードを選択できる。
【0010】
本発明において、前記必要電力量は、前記印刷データのうち印刷パターンと印刷幅とに基づき演算されてもよい。プリンタは、必要電力量を正確に演算できる。
【0011】
本発明において、前記必要電力量は、前記印刷データのうち、更に、前記制御部が決定する印刷速度、前記印刷部のヘッドの温度、前記ヘッド周辺の環境温度に基づき演算されてもよい。プリンタは、必要電力量を、より正確に演算できる。
【0012】
本発明において、前記第1印刷モードは、前記第1電力に基づく印刷が可能であり、且つ前記第2電力に基づく印刷ができない場合に実行され、前記制御部は、前記第1電力に基づく印刷ができず、且つ前記第2電力に基づく印刷ができない場合、印刷を実行しない停止モードを選択して実行してもよい。プリンタは、第2電力を利用できないが、第1電力で印刷可能な場合、第1電力を利用して印刷を実行する。プリンタは、第1電力および第2電力が利用できない場合、印刷を実行しない。故に、プリンタは、状況に応じてモードを変更できる。プリンタは、印刷できない電力状態で印刷が実行されることを抑制できる。
【0013】
本発明において、前記制御部は、前記プリンタが印刷を実行する為の印刷指示を受け付ける度に、前記第1印刷モードと、前記第2印刷モードとを選択的に実行してもよい。プリンタは、印刷指示を受け付ける度にモードを選択して、適切な電力に基づき印刷を実行できる。
【0014】
本発明において、前記第1入力部には、非接触で前記外部から前記第1電力が入力されてもよい。プリンタは、非接触で受電した第1電力に基づき、印刷を実行できる。
【0015】
本発明において、前記制御部は、前記第1電力に基づき、前記プリンタの待機状態を継続する待機モードを選択して実行してもよい。プリンタは、第1電力に基づき待機状態を継続できる。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記第1電力に基づき、前記二次電池を充電する充電モードを選択して実行してもよい。プリンタは、第1電力で二次電池を充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】プリンタ1と無接点給電部8を示す図である。
【
図5】メイン処理のフローチャートであって、
図4の続き。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照し、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。プリンタ1は、印刷データに基づいて媒体に画像を印刷する。媒体は特定の媒体に限定されないが、例えばシート状またはテープ状であり、本実施形態では感熱タイプのカット紙である。プリンタ1は、複数の電源により駆動可能である。複数の電源は、二次電池29、および無接点受電部41を含む。
【0019】
図1に示すように、プリンタ1はケース2を備える。ケース2は例えば直方体状である。ケース2の下部には装着部34(
図3参照)が設けられる。装着部34は、後述の第1電力とは異なる第2電力を供給可能な二次電池29を装着可能である。
【0020】
ケース2の下端部には、無接点受電部41が設けられる。無接点受電部41は、受電コイル41A、電力取得部41Bを備える。受電コイル41Aは、非接触で電力を受電可能である。以下、受電コイル41Aが受電する電力を「第1電力」ともいう。電力取得部41Bは、受電した第1電力に基づき供給可能な電力の電力情報を取得する。電力情報は、受電コイル41Aから出力される電力、電圧、および電流等の情報である。
【0021】
無接点給電部8には、プリンタ1が載置される。無接点給電部8は、DCジャック31、送電コイル81を備える。DCジャック31には、外部電源としてのACアダプタ30が接続される。これにより、DCジャック31には、外部から供給される外部電力が供給される。この場合、送電コイル81には外部電力に基づく電流が流れる。
【0022】
送電コイル81に電流が流れた場合、送電コイル81からの誘導起電力により、受電コイル41Aに電圧が発生する。受電コイル41Aは、入力された第1電力に基づく受電電力を、プリンタ1に供給可能となる。例えば無接点受電部41の受電電力で二次電池29が充電される。
【0023】
図2を参照してプリンタ1の電気的構成を説明する。プリンタ1は、電力供給回路100、および印刷部3を備える。電力供給回路100は、無接点給電部8(
図1参照)の第1電力、二次電池29の第2電力を、印刷部3に供給する。例えば、第1電力は、第2電力よりも小さい。また、受電電力は第2電力よりも小さい。無接点受電部41は、例えば9.0Vの電圧を出力可能である。二次電池29は、例えば10.8Vの電圧を出力可能である。
【0024】
印刷部3は、CPU21、ROM22、RAM24、駆動回路11、12、搬送モータ9、サーマルヘッド(以下、「ヘッド10」という。)、温度センサ13、25、表示部4、および操作部7を備える。
【0025】
ROM22、RAM24、表示部4、操作部7、駆動回路11、12、温度センサ13、25は、夫々CPU21に電気的に接続されている。ROM22には、プリンタ1の制御上必要な各種のプログラムが記憶されている。CPU21は、これらのプログラムに基づいて各種演算を行う。RAM24には、記憶エリアが設けられる。記憶エリアには、各種演算データが記憶される。
【0026】
表示部4は、プリンタ1のケース2に設けられる。表示部4は、CPU21に接続され、各種情報を表示する。表示部4は、各種の情報を表示可能である。表示部4は、例えば液晶ディスプレイ、複数のLED等である。操作部7は、プリンタ1のケース2に設けられる。操作部7は、CPU21に接続され、各種指示をCPU21に送信する。操作部7は、例えば各種指示を入力する為の物理ボタンである。操作部7は、各種指示を入力できればよく、ダイヤル、タッチパネル等の構成でもよい。
【0027】
駆動回路11には、搬送モータ9が接続される。搬送モータ9は、ケース2の内部に設けられる。搬送モータ9は、媒体を搬送する為の動力を発生させる。搬送モータ9は、駆動回路11の駆動により媒体を搬送する。
【0028】
駆動回路12には、ヘッド10が接続される。ヘッド10は、ケース2の内部に設けられる。ヘッド10は、印刷データに基づき媒体への印刷を実行する。ヘッド10は複数の加熱素子を含む。ヘッド10は、駆動回路12の駆動により複数の加熱素子を選択的に加熱する。CPU21は、駆動回路11、12により、搬送モータ9とヘッド10を夫々駆動することで、媒体に印刷を実行する。
【0029】
温度センサ13は、ヘッド10に設けられ、ヘッド10の温度を検出し、検出結果をCPU21に送信する。温度センサ25は、ヘッド10周辺の環境温度を検出し、検出結果をCPU21に送信する。
【0030】
図3を参照して、電力供給回路100を説明する。電力供給回路100は、無接点給電部8の第1電力、二次電池29の第2電力に基づき、印刷部3への電力供給を行う。電力供給回路100は、無接点受電部41、装着部34、電圧変換部39、配線L1~L4、切替部SW1~SW4等を備える。
【0031】
無接点受電部41は、第1切替部SW1に電気的に接続される。第1切替部SW1は、トランジスタ等のオンオフ可能な電子デバイスである。第1切替部SW1は、駆動回路12に電気的に接続される。駆動回路12は、ヘッド10に電気的に接続される。以下、無接点受電部41とヘッド10とを電気的に接続する配線を、「第1配線L1」という。第1切替部SW1は、第1配線L1が導通した状態と導通しない状態とに切り替える。
【0032】
第2切替部SW2は、第1配線L1のうち無接点受電部41と第1切替部SW1との間に電気的に接続される。第2切替部SW2は、ダイオード15のアノードに接続される。第2切替部SW2は、トランジスタ等のオンオフ可能な電子デバイスである。ダイオード15のカソードは、駆動回路11に電気的に接続される。駆動回路11は、搬送モータ9に電気的に接続される。以下、無接点受電部41と搬送モータ9とを電気的に接続する配線を、「第2配線L2」という。第2切替部SW2は、第2配線L2が導通した状態と導通しない状態とに切り替える。
【0033】
第3切替部SW3は、第1配線L1のうち第1切替部SW1と駆動回路12との間に電気的に接続される。第3切替部SW3は、トランジスタ等のオンオフ可能な電子デバイスである。第3切替部SW3は、ダイオード16のアノードに接続される。ダイオード16のカソードは、第2配線L2のうちダイオード15のカソードと駆動回路11との間に電気的に接続する。以下、第1配線L1のうち第1切替部SW1と駆動回路12との間と、第2配線L2のうちダイオード15のカソードと駆動回路11との間とを電気的に接続する配線を、「第3配線L3」という。第3切替部SW3は、第3配線L3が導通した状態と導通しない状態とに切り替える。
【0034】
装着部34は、電圧変換部39に接続される。電圧変換部39は、二次電池29の電圧を15Vに昇圧する。電圧変換部39は、ダイオード17のアノードに接続される。ダイオード17のカソードは、第4切替部SW4に接続される。第4切替部SW4は、トランジスタ等のオンオフ可能な電子デバイスである。第4切替部SW4は、第1配線L1のうち第1切替部SW1と駆動回路12との間に電気的に接続する。以下、二次電池29に接続され、且つ第1配線L1のうち第1切替部SW1と駆動回路12との間に電気的に接続する配線を、「第4配線L4」という。
【0035】
無接点受電部41のみの単電源での駆動について説明する。CPU21は、第1切替部SW1、第2切替部SW2をオンし、第3切替部SW3をオフする。これにより、無接点給電部8の第1電力の少なくとも一部は、第1配線L1を介してヘッド10に供給される。また、無接点給電部8の第1電力の少なくとも一部は、第2配線L2を介して搬送モータ9に供給される。無接点受電部41の単電源のみでの印刷を、「第1印刷モード」ともいう。なお、二次電池29は、装着部34に装着されていても、装着されてなくてもよい。二次電池29が装着部34に接続されている場合、第4切替部SW4をオフすれば、駆動回路11、12へ第2電力が供給されることはない。
【0036】
二次電池29のみの単電源での駆動について説明する。CPU21は、第3切替部SW3、第4切替部SW4をオンし、第1切替部SW1、第2切替部SW2をオフする。これにより、二次電池29の第2電力の少なくとも一部は、第4配線L4および第1配線L1を介して、ヘッド10に供給される。また、二次電池29の第2電力の少なくとも一部は、第4配線L4、第1配線L1、第3配線L3、および第2配線L2を介して、搬送モータ9に供給される。この場合、無接点受電部41は、無接点給電部8に載置されていても、載置されなくてもよい。無接点受電部41が無接点給電部8に載置されていても、第1切替部SW1と第2切替部SW2とがオフするので、駆動回路11、12へ電力が供給されることはない。二次電池29のみの単電源での印刷を、「携帯モード」ともいう。携帯モードは、プリンタ1を無接点給電部8に載置せずに、ユーザがプリンタ1を持ち歩く場合に設定される。
【0037】
無接点受電部41と二次電池29とのハイブリッド駆動について説明する。CPU21は、第2切替部SW2、第4切替部SW4をオンし、第1切替部SW1、第3切替部SW3をオフする。これにより、無接点給電部8の第1電力の少なくとも一部は、第2配線L2を介して、搬送モータ9にのみ供給される。また、二次電池29の第2電力の少なくとも一部は、第4配線L4、第1配線L1を介して、ヘッド10にのみ供給される。ハイブリッド駆動での印刷を、「第2印刷モード」ともいう。
【0038】
以下の説明では、無接点給電部8にプリンタ1が載置されている状態を前提とする。このため、二次電池29のみの駆動である携帯モードは選択されない。無接点給電部8にプリンタ1が載置されると、無接点給電部8の第1電力に基づき、二次電池29の充電が実行される(以下、「充電モード」ともいう)。また、プリンタ1が印刷を待機している待機状態(以下、「待機モード」ともいう。)の場合、無接点給電部8の第1電力にのみ基づき待機モードの維持に必要な電力が使用される。例えば待機モードの場合、CPU21等のデジタル回路系に第1電力が供給される。なお、無接点給電部8と二次電池29の電力を利用できない場合は印刷が実行されない(以下、「停止モード」ともいう。)。
【0039】
図4、
図5を参照して、メイン処理について説明する。例えば、ユーザによりプリンタ1が無接点給電部8に載置される。ユーザによる操作部7の操作によりプリンタ1に電源が投入される。電源が投入された後、CPU21は、ROM22からプログラムを読み出してメイン処理を実行する。なお、電源が投入された直後は、プリンタ1は、無接点給電部8の第1電力のみで駆動する待機モードとなる。
【0040】
メイン処理が実行されると、CPU21は、待機モードを継続するか否か判断する(S1)。ユーザからの操作部7の操作がなく待機モードを継続すると判断した場合(S1:YES)、CPU21は、処理をS1に戻して、無接点給電部8の第1電力のみに基づき、プリンタ1の待機モードを継続する。ユーザからの操作部7の操作により待機モードを継続しない判断した場合(S1:NO)、CPU21は、無接点受電部41が供給可能な電力情報を取得する(S3)。この場合、CPU21は、電力取得部41Bから電力情報を取得する。
【0041】
CPU21は、二次電池29を利用可能か判断する(S5)。例えばCPU21は、二次電池29の残量が所定の閾値よりも低い場合、例えば残量が5パーセント以下の場合に二次電池29が利用できないと判断する。なお、二次電池29の第2電力、電圧、電流等が所定の閾値よりも低い場合、または、二次電池29が装着部34に装着されていない場合にも、二次電池29が使用できないと判断してもよい。
【0042】
二次電池29を利用可能であると判断した場合(S5:YES)、CPU21は、二次電池29の充電が必要か否か判断する(S7)。例えばCPU21は、二次電池29の残量が100%でない場合に充電が必要と判断する。二次電池29の充電が必要と判断した場合(S7:YES)、CPU21は、充電モードを選択して実行する(S9)。つまり、CPU21は、装着部34に二次電池29が装着された状態で、無接点受電部41に入力された第1電力を使用して、二次電池29を充電する。CPU21は、二次電池29の残量が100%となるまで充電モードを継続する。CPU21は、処理をS11に進める。一方、二次電池29の充電が不要と判断した場合(S7:NO)、CPU21は、充電モードを選択して実行せずに、処理をS11に進める。
【0043】
CPU21は、印刷データを受け付けたか否か判断する(S11)。印刷データを受け付けていないと判断した場合(S11:NO)、CPU21は、S1に処理を戻す。印刷データを受け付けたと判断した場合(S11:YES)、CPU21は、S3で取得した電力情報とS11で受けた付けた印刷データに基づき、受電電力量Wcを演算する(S13)。受電電力量Wcは、媒体への印刷が完了するまでの印刷時間の間に、無接点給電部8の第1電力に基づき無接点受電部41が供給可能な電力量である。受電電力量Wcは、印刷時間に受電コイル41Aが供給可能な電力を乗じた値である。印刷時間は、過去の印刷履歴を参照して取得してもよいし、印刷データに基づき演算して取得してもよい。
【0044】
CPU21は、S11の処理で取得した印刷データに基づき、必要電力量Wnを演算する(S15)。必要電力量Wnは、媒体への印刷が完了するまでの印刷時間の間に必要な電力量を示す。例えばCPU21は、印刷データのうち印刷パターンと印刷幅との情報に基づき、必要電力量Wnを演算する。この場合、印刷パターンと印刷幅で特定されるオンドット数に基づき、必要電力量Wnが演算される。なお、必要電力量Wnの演算精度を上げたい場合には、CPU21は、印刷部3による印刷速度、ヘッド10の温度、ヘッド10周辺の環境温度の情報も加えて、必要電力量Wnを演算するとよい。例えば印刷速度は、CPU21が特定する。印刷速度が速い場合、必要電力量Wnは増加する。また、ヘッド10の温度、ヘッド10周辺の環境温度が高い場合、ヘッド10の加熱素子が発熱しやすいので、必要電力量Wnは低減される。
【0045】
CPU21は、演算された受電電力量Wcが、演算された必要電力量Wn以上か否か判断する(S17)。受電電力量Wcが必要電力量Wn以上と判断した場合(S17:YES)、CPU21は、上記したように第1切替部SW1から第4切替部SW4を制御して、無接点受電部41のみの単電源での駆動に設定する(S19)。CPU21は、第1印刷モードを選択して実行する(S21)。この場合、二次電池29の第2電力を使用せず、無接点給電部8の第1電力のみに基づき、媒体への印刷が実行される。CPU21は、処理をS1に戻す。
【0046】
一方、受電電力量Wcが必要電力量Wnよりも低い場合(S17:NO)、CPU21は、上記したように第1切替部SW1から第4切替部SW4を制御して、無接点受電部41と二次電池29とのハイブリッド駆動に設定する(S23)。CPU21は、第2印刷モードを選択して実行する(S25)。この場合、無接点給電部8の第1電力と二次電池29の第2電力とに基づき、媒体への印刷が実行される。
【0047】
一方、二次電池29を利用できないと判断した場合(S5:NO)、CPU21は、印刷データを受け付けたか否か判断する(S27)。印刷データを受け付けていないと判断した場合(S27:NO)、CPU21は、処理をS1に戻す。
【0048】
印刷データを受け付けたと判断した場合(S27:YES)、CPU21は、S27で受け付けた印刷データに基づき、S13の処理と同様に、受電電力量Wcを演算する(S29)。CPU21は、S27で受け付けた印刷データに基づき、S15の処理と同様に、必要電力量Wnを演算する(S31)。CPU21は、演算された受電電力量Wcが、演算された必要電力量Wn以上か否か判断する(S33)。
【0049】
受電電力量Wcが必要電力量Wn以上である場合(S33:YES)、CPU21は、上記したように第1切替部SW1から第4切替部SW4を制御して、無接点受電部41のみの単電源での駆動に設定する(S35)。CPU21は、第1印刷モードを選択して実行する(S37)。つまり、CPU21は、受電電力量Wcが必要電力量Wn以上であり、且つ二次電池29を利用できないと判断された場合、無接点給電部8の第1電力にのみ基づき印刷を実行する。CPU21は、処理をS1に戻す。
【0050】
受電電力量Wcが必要電力量Wnよりも低いと判断した場合(S33:NO)、CPU21は、停止モードを選択して実行する(S39)。つまり、CPU21は、受電電力量Wcが必要電力量Wnよりも低く、且つ二次電池29を利用できないと判断された場合、印刷を実行しない。CPU21は、印刷を実行できない旨をユーザに報知する(S41)。報知は、例えば表示部4のディスプレイに文字列「印刷できません」等を表示する、LEDでアラーム表示する、またはブザーによる警告等を行う等を実行すればよい。これにより、ユーザは、印刷ができないことを認識できる。CPU21は、処理をS1に戻す。
【0051】
以上説明したように、無接点受電部41は、外部から第1電力が入力される。装着部34は、二次電池29から第2電力が入力される。印刷部3は、第1電力および第2電力の少なくともいずれかを利用して媒体に印刷する。CPU21は、印刷部3を制御して媒体に印刷する。CPU21は、第1印刷モードと、第2印刷モードとのいずれかを選択的に実行する。第1印刷モードは、第2電力を使うことなく第1電力を利用して印刷部3に印刷を実行させる。第2印刷モードは、第1電力および第2電力を利用して印刷部3に印刷を実行させる。
【0052】
プリンタ1は、第1電力のみで電力量が十分な場合、第1電力のみに基づき第1印刷モードを実行する。更に、プリンタ1は、第1電力のみでは電力量が不十分な場合、第1電力に加えて、二次電池29の第2電力も使用して第2印刷モードを実行する。第1電力を主として使用するので、プリンタ1は、二次電池29の劣化を抑制できる。
【0053】
CPU21は、印刷データに基づく必要電力量Wnに基づいて、第1印刷モードと、第2印刷モードとのいずれかを選択して実行する。プリンタ1は、印刷データの必要電力量Wnに基づきモードを選択できる。
【0054】
第1印刷モードは、印刷データで特定される印刷時間に第1電力に基づき受電可能な受電電力量Wcが、必要電力量Wn以上となる場合に実行される。第2印刷モードは、受電電力量Wcが必要電力量Wnよりも小さい場合に実行される。プリンタ1は、受電電力量Wcと必要電力量Wnとの関係でモードを選択できる。
【0055】
必要電力量Wnは、印刷データのうち印刷パターンと印刷幅とに基づき演算される。プリンタ1は、必要電力量Wnを正確に演算できる。
【0056】
必要電力量Wnは、印刷データのうち、更に、CPU21が決定する印刷速度、ヘッド10の温度、ヘッド10周辺の環境温度に基づき演算される。プリンタ1は、必要電力量Wnを、より正確に演算できる。
【0057】
第1印刷モードは、第1電力に基づく印刷が可能であり、且つ第2電力に基づく印刷ができない場合に実行される。CPU21は、第1電力に基づく印刷ができず、且つ第2電力に基づく印刷ができない場合、印刷を実行しない停止モードを選択して実行する。プリンタ1は、二次電池29の第2電力を利用できないが、受電電力量Wcが十分の場合、第1電力を利用して印刷を実行する。プリンタ1は、二次電池29を利用できず、且つ受電電力量Wcが不十分な場合、印刷を実行しない。故に、プリンタ1は、状況に応じてモードを変更できる。プリンタ1は、印刷できない電力状態で印刷が実行されることを抑制できる。また、プリンタ1は、受電電力量Wcの不足で発生する印刷不良を抑制できる。
【0058】
CPU21は、プリンタ1が印刷を実行する為の印刷指示を受け付ける度に、第1印刷モードと第2印刷モードとを選択的に実行する。プリンタ1は、印刷指示を受け付ける度に、モードを切り替えて、適切な電力に基づき印刷を実行できる。
【0059】
無接点受電部41には、非接触で外部から第1電力が入力される。プリンタ1は、非接触で受電した第1電力に基づき、印刷を実行できる。
【0060】
CPU21は、第1電力に基づき、プリンタ1の待機状態を継続する待機モードを選択して実行する。プリンタ1は、第1電力に基づき待機状態を継続できる。
【0061】
CPU21は、第1電力に基づき、二次電池29を充電する充電モードを選択して実行する。プリンタ1は、第1電力で二次電池29を充電できる。
【0062】
上記実施形態において、無接点受電部41が本発明の「第1入力部」に相当する。装着部34が本発明の「第2入力部」に相当する。CPU21が本発明の「制御部」に相当する。CPU21が実行するS21の処理が本発明の「第1印刷モード」に相当する。CPU21が実行するS25の処理が、本発明の「第2印刷モード」に相当する。CPU21が実行するS37の処理が、本発明の「第1印刷モード」に相当する。CPU21が実行するS39の処理が、本発明の「停止モード」に相当する。CPU21が実行するS1の処理が、本発明の「待機モード」に相当する。CPU21が実行するS9の処理が、本発明の「充電モード」に相当する。
【0063】
本発明は上記実施形態から更に変更できる。なお、上記実施形態、および下記変形例に開示された技術は、矛盾しない範囲で組み合わせてよい。上記プリンタ1は、感熱タイプのカット紙に印刷を実行するものであったがこれに限らない。例えば、プリンタ1は、熱転写型のプリンタであってもよいし、インクジェットプリンタであってもよい。
【0064】
上記実施形態では、無接点受電部41、二次電池29の二つの電源で駆動されたがこれに限らない。例えば、プリンタ1は、無接点受電部41の代わりに、ACアダプタまたはUSB給電部(USB Power Delivery)を使用して、二次電池29と併用してもよい。つまり、プリンタ1は、ACアダプタまたはUSB給電部による単電源での駆動、または、ACアダプタまたはUSB給電部と、二次電池29とによるハイブリッド駆動を行ってもよい。
【0065】
上記実施形態では、ハイブリッド駆動時、無接点受電部41の受電電力が搬送モータ9に供給され、二次電池29の第2電力がヘッド10に供給されたがこれに限らない。例えばCPU21は、無接点受電部41の受電電力の少なくとも一部を、ヘッド10に供給し、二次電池29の第2電力の少なくとも一部を、搬送モータ9に供給してもよい。更に、ハイブリッド駆動時、無接点受電部41の受電電力でヘッド10と搬送モータ9のみを駆動して、他のデバイスを二次電池29の第2電力で補ってもよい。また、ハイブリッド駆動時、二次電池29の第2電力でヘッド10と搬送モータ9のみを駆動して、他のデバイスを、無接点受電部41の受電電力で駆動してもよい。
【0066】
上記実施形態では、無接点受電部41の受電電力で二次電池29を充電したがこれに限らない。例えば、プリンタ1には、ACアダプタまたはUSB給電部(USB Power Delivery)等の電源が接続可能であり、これらの電力を用いて二次電池29の充電を行ってもよい。
【0067】
上記実施形態では、第1電力が第2電力よりも小さかったがこれに限らない。例えば、第1電力は第2電力よりも高くてもよいし、同じでもよい。この場合、電力供給回路100は、ヘッド10、搬送モータ9が必要とする電力に応じて、第1電力と第2電力の供給先を決定するとよい。また、無接点受電部41、および二次電池29が出力する電圧、電流、および電力等は適宜変更されてよい。
【0068】
上記実施形態では、待機モードの場合、CPU21のデジタル回路系を無接点受電部41の受電電力で駆動したがこれに限らない。待機モードで駆動する回路の範囲は、適宜設定すればよい。例えば、デジタル回路のみならず、アナログ系の回路の電力を賄ってもよい。無接点受電部41の受電電力の供給先のデバイスは適宜設定すればよい。
【0069】
なお、CPU21の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC、FPGA (Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。印刷部3は、例えば、フラッシュメモリ、HDD等の他の非一時的な記憶媒体を備えてもよい。非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。
【0070】
各種のプログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ、HDD等に記憶されてもよい。この場合、各種のプログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【符号の説明】
【0071】
1 プリンタ
3 印刷部
8 無接点給電部
9 搬送モータ
10 ヘッド
21 CPU
29 二次電池
34 装着部
41 無接点受電部
Wn 必要電力量
Wc 受電電力量