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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142374
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20241003BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103D
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054491
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(57)【要約】
【課題】本願発明は、複数のターゲットユニットを備える測量システムに関する。
【解決手段】それぞれ異なる周期で発光する光を識別光として送光する送光器を有する複数のターゲットユニットと、前記識別光を受光可能な受光部と、前記受光部の受光データを演算処理する受光演算処理部と、を備える測量機と、を備え、前記受光演算処理部は、複数の前記ターゲットユニットの中から、1の指定ターゲットユニットの前記識別光の発光する前記周期の所定の自然数倍の時間ごとに、前記受光データを区切り、比較暗合成を行い、前記指定ターゲットユニットの前記識別光を検出する、ことを特徴とする、複数の前記ターゲットユニットの中から1の前記指定ターゲットユニットを識別する測量システムを提供する。発光周期を識別情報として、受光と発光の同期を行うことなく、指定ターゲットユニットを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周期で発光する光を識別光として送光する送光器を有する複数のターゲットユニットと、
前記識別光を受光可能な受光部と、前記受光部の受光データを演算処理する受光演算処理部と、を備える測量機と、
を備え、
前記受光演算処理部は、複数の前記ターゲットユニットの中から、1の指定ターゲットユニットの前記識別光の発光する前記周期のn倍の時間ごとに、前記受光データを区切り、比較暗合成を行い、前記指定ターゲットユニットの前記識別光を検出する、
ことを特徴とする、複数の前記ターゲットユニットの中から1の前記指定ターゲットユニットを識別する測量システム。
【請求項2】
複数の前記ターゲットユニットは、それぞれプリズムを有し、
前記測量機は、測距光を前記プリズムに送光し、反射した前記測距光を受光して前記プリズムを測距、測角する測量部と、
追尾光を前記プリズムに送光し、反射した前記追尾光を受光して前記プリズムの位置を検出し、前記プリズムを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記受光部を制御する測量機制御部を有し、
前記測量機制御部は、前記水平回転駆動部を駆動させて、前記望遠鏡を水平回転させながら、前記受光部に受光させ、前記受光演算処理部が、前記前記指定ターゲットユニットの前記識別光を検出すると、前記追尾部で周辺を走査させて、前記指定ターゲットユニットの前記プリズムを捕捉してロックする、
ことを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
0.5≦n≦2である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複数のターゲットユニットを備える測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1の測量機に対して、複数のターゲットを用いる測量現場では、複数のターゲットの中から、1のターゲットを指定して測量することがある。この場合、複数のターゲットの中から、指定ターゲットを識別して探し出さなければならない。例えば特許文献1では、鉛直方向に配列したコードを識別情報として備え、レーザスキャンにてコードの情報を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-08406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザスキャンの反射光によりコードを検出しており、反射光であることから識別情報の光度が低く、その分だけ検出精度は低くなってしまう。ターゲットから識別情報として光を出射する場合、出射光であることから光度が高く、その分だけ検出精度は高くなるが、光の出射側と受光側で、同期作業を行う必要がある。
【0005】
本件は、このような問題に鑑みてなされたものであり、光の出射側と受光側で同期作業を行うことなく、識別光を出射する複数のターゲットから、指定したターゲットを探し出すことが可能な測量システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示の態様の測量システムにおいては、それぞれ異なる周期で発光する光を識別光として送光する送光器を有する複数のターゲットユニットと、前記識別光を受光可能な受光部と、前記受光部の受光データを演算処理する受光演算処理部と、を備える測量機と、を備え、前記受光演算処理部は、複数の前記ターゲットユニットの中から、1の指定ターゲットユニットの前記識別光の発光する前記周期のn倍の時間ごとに、前記受光データを区切り、比較暗合成を行い、前記指定ターゲットユニットの前記識別光を検出し、複数の前記ターゲットユニットの中から1の前記指定ターゲットユニットを識別するように構成した。この態様によれば、比較暗合成により、受光データから指定ターゲットを検出して指定ターゲットを識別できる。
【0007】
また、ある態様においては、前記ターゲットユニットは、それぞれプリズムを有し、前記測量機は、測距光を前記プリズムに送光し、反射した前記測距光を受光して前記プリズムを測距、測角する測量部と、追尾光を前記プリズムに送光し、反射した前記追尾光を受光して前記プリズムの位置を検出し、前記プリズムを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記受光部を制御する測量機制御部を有し、前記測量機制御部は、前記水平回転駆動部を駆動させて、前記望遠鏡を水平回転させながら、前記受光部に受光させ、前記受光演算処理部が、前記前記指定ターゲットユニットの前記識別光を検出すると、前記追尾部で周辺を走査させて、前記指定ターゲットユニットの前記プリズムを捕捉してロックするように構成した。この態様によれば、1の指定ターゲットを指定すれば、指定ターゲットをプリズムロックすることができる。
【0008】
また、ある態様においては、0.5≦n≦2であるものとした。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、複数のターゲットから、指定したターゲットを探し出すことが可能な測量システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好適な実施形態に係るターゲットユニット、および測量機を含む測量システムの概略構成を示す図である。
図2】測量機およびターゲットユニットのブロック図である。
図3】ターゲットユニットを示す。図7(A)が側面図である。図7(B)が平面図である。
図4】比較暗合成の説明図である。
図5】比較暗合成の説明図である。
図6】比較暗合成の説明図である。
図7】識別光の発光周期と、受光部の受光周期を示す。
図8】受光部の受光データおよび受光データの比較暗合成を示す。
図9】指定ターゲットユニット検出のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
(測量システム)
図1は、本発明の好適な実施形態にかかる測量システム1の概要構成を示す図である。測量システム1は、測量機10、および複数のターゲットユニットTUを含んで構成される。
【0013】
測量機10は、測距・測角機能及び追尾機能を備えたトータルステーションである。測量機10は、基準点中心上に三脚4を用いて設置される。測量機10は、整準器の上に設けられた基盤部2aと、基盤部2aに対し水平回転軸H回りに水平回転する托架部2bと、托架部2bの中央で鉛直回転軸V回りに鉛直回転する望遠鏡2cとを有する。
【0014】
ターゲットユニットTUは、ポール6の上端に測量機10の測量目標物であるプリズム8を有し、ポール6の下端を測定点に概ね鉛直に設置して使用される。プリズム8は、全方位から入射される光を再帰反射する光学特性を有している。
【0015】
ターゲットユニットTUは、略水平方向に概ね全周方向に識別光Lを送光する送光器70を有する。ターゲットユニットTUが複数ある場合、各送光器70から出射される識別光Lは、それぞれ異なる周期で点滅する光である。以下、識別光Lの発光する周期を、発光周期Tと称する。
【0016】
識別光Lの発光周期Tは、取付けられたターゲットユニットTU固有の識別情報となる。測量機10は、送光器70から送光される識別光Lを受光可能な受光部40を有し、受光部40の受光データを解析することにより、特定のターゲットユニットTUを検知することを可能としている。
【0017】
図1では、一例として測量システム1に3つのターゲットユニットTU1~TU3が備えられている場合を示している。ターゲットユニットTU1~TU3に取付けられた各送光器70から送光される識別光L1~L3は、それぞれ異なる発光周期T1~T3で発光する光である。ターゲットユニットTU1~TU3は、後述する識別光Lの発光周期Tを除き、同一の構成を有しており、特に指定する場合を除き、これらをまとめてターゲットユニットTUと称する。識別光L、発光周期Tについても同様である。
【0018】
(測量機)
図2は、測量機10およびターゲットユニットTUの構成ブロック図である。測量機10は、モータドライブトータルステーションであり、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、入力部23、表示部24、測量機通信部25、測距部26、追尾部27、記憶部28、測量機制御部29を備える。
【0019】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、エンコーダである。水平角検出器21は、托架部2bの回転軸に設けられ、托架部2bの水平角を検出する。鉛直角検出器22は、望遠鏡2cの回転軸に設けられ、望遠鏡2cの鉛直角を検出する。水平角検出器21と鉛直角検出器22で測角部を構成する。
【0020】
水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2はモータである。水平回転駆動部M1は托架部2bの回転軸を動かし、鉛直回転駆動部M2は、望遠鏡2cの回転軸を動かす。両駆動部の協働により、望遠鏡2cの向きが変更される。水平角検出器21と鉛直角検出器22とで、測角部を構成する。水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2とで、駆動部を構成する。
【0021】
入力部23、表示部24は、測量機10のインターフェースである。入力部23は、電源キー、数字キー、実行キーなどを有し、作業者が、測量機10の操作や測量機10に対する情報を入力できる。本実施形態においては、特定のターゲットユニットTUの指定や測量作業の指令などは、入力部23で直接入力するが、別体としてコントローラを備え、コントローラから測量機10を遠隔操作するように構成してもよい。
【0022】
測量機通信部25は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えば、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットを接続し、ターゲットユニットTUと情報の送受信を行う。無線通信はこれに制限されず、既知の無線通信を使用することができる。測量機10が測量(測距・測角)したデータは、測量機通信部25を介して処理端末へ送られるように構成してもよい。
【0023】
測距部26は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光を送光部から出射し、その反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光との位相から測距する。測角部および測距部26で測量部を構成する。測量部の光学系は、望遠鏡2cに収納される。
【0024】
追尾部27は、測距光とは異なる波長の赤外線レーザなどを追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部27は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部29に送る。測量機制御部29は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡2cの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡2cがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0025】
記憶部28は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。プリズムロック機能やターゲット識別機能を含む測量機制御部29の種々の機能を実行するためのプログラムが格納されている。また、記憶部28は、測量機10が取得する測定データ等種々のデータを記憶する。
【0026】
測量機制御部29は、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit))と少なくとも1つのメモリ(例えばSRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)等)を備える制御演算ユニットである。測量機制御部29は、プロセッサが、機能を実行するためのプログラムをメモリに読み出して実行することにより測量機10の機能を実行する。制御として、例えば、測量機通信部25を介した情報の送受信、水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2による各回転軸の駆動、測距部26による測距、水平角検出器21および鉛直角検出器22による測角、追尾部27による自動追尾などを行う。
【0027】
測量機制御部29は、識別機能部290を有する。識別機能部290は、受光演算処理部291と、受光記憶部292とを有する。受光部40が受光した受光データは、受光記憶部292に出力される。受光演算処理部291は、受光記憶部292の受光データを所定の方法で演算処理し、指定されたターゲットユニットTUを検出する。
【0028】
(受光部40)
受光部40は、受光方向を測量機10の正面にして、托架部2bに固定されている。受光部40は、ターゲットユニットTUから送光される識別光Lを受光可能に構成され、信号の取得間隔は、ターゲットユニットTUの発光周期よりも小さく、異なる発光周期Tの光を受光するのに十分な性能を有している。
【0029】
本実施形態の受光部40は、図示しないシンドリカルレンズと長方形受光センサと、水平受光範囲を制限するスリットを鉛直方向に設けて、測量機10とターゲットとに高低差があっても、ターゲットユニットTUの識別光Lを受光できるようにしている。
【0030】
受光部40は、托架部2bに固定されていることから、測量機10を水平回転させながら、識別光Lを受光することにより、まず指定のターゲットユニットTUの水平方向を検知する。受光部40を望遠鏡2cに設け、望遠鏡2cを鉛直方向および水平方向に回転させて、識別光Lを受光するように構成してもよい。
【0031】
(ターゲットユニット)
ターゲットユニットTUを、図3を用いて説明する。図3(A)はターゲットユニットTUの側面図である。図7(B)は同平面図である。図1に示すターゲットユニットTUの斜視図、および図2の構成ブロック図も参照のこと。
【0032】
ターゲットユニットTUは、ターゲット支持部材であるポール6、プリズム8、および送光器70を備える。プリズム8は、ポール6の中心軸Aがプリズム8の光学中心を通過するように、ポール6の上端に支持されている。プリズム8の光学中心とポール6下端までの距離(取付高)は既知である。作業者の移動中は、ポール6の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつ運ばれ、測定点では、ポール6の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつポール6の下端を測定点に当接して、測量機10で、プリズム8を測距・測角する。
【0033】
送光器70は、円柱状の外形を有する筐体76と、光源74と、送光器制御部77と、送光器通信部78とを備える。送光器70は、プリズム8の上端に、筐体76の中心軸がポール6の中心軸Aと一致するように取付けられている。
【0034】
光源74は、例えば、赤外LED(Light Emitting Diode)であり、識別光Lとして、測距光とも、追尾光とも異なる波長の赤外光を射出する。光源74は、筐体76内部の中心近傍に、ポール6の中心軸A周りの全周に向けて識別光Lを射出するように取付けられている。筐体76の外周面には、複数の送光口75が、ポール6の中心軸Aと直交する平面上に、周方向に等間隔で配置されている。送光口75の数は、図示の例において6個であるが、これに限定されない。図7(B)に示すように、中心軸A周りの全周方向に放射状に識別光Lが射出されるようになっていることが好ましい。作業者が、意識的に送光口75を測量機10の方向に向ける必要がなく、作業が容易になるからである。しかし、送光方向はこれに限定されず、全周方向の一部、または1方向であってもよい。この場合は、作業者がポール6を回転させて光の射出方向を測量機10に向ければよいからである。送光器70の配置は、プリズム8の上端側に限らず、下端側でもよい。また、光源74を筐体76内部に設けるのでなく、送光口75の位置にそれぞれ赤外LEDを設ける構成とすることもできる。
【0035】
送光器通信部78は、測量機通信部25と同等の通信インターフェースであり、測量機10との通信を可能とする。送光器通信部78を介して、測量機10からの命令信号が入力される。
【0036】
送光器制御部77は、例えば、CPUと、メモリが基板に実装されたマイクロコントローラであり、光源74を設定された発光周期Tで点滅させるとともに、測量機10からの命令信号に応じて、光源74の作動開始/停止を制御する。光源74の発光周期Tの設定は、最初に行われる。発光周期TがターゲットユニットTUの識別情報であることから、測量中に発光周期Tが変更されることなく、常に同一の発光周期Tの光が識別光Lとして送光される。
【0037】
発光周期Tの設定は、測量機10の入力部23で行われ、各通信部を介して送光器制御部77に入力される。発光周期Tは、自在に設定できるように構成してもよく、複数ある発光周期Tの中から選択されるように構成されてもよい。送光器70に、発光周期Tを選択するスイッチを設けてもよい。いずれの方法を用いて発光周期Tを設定しても、ターゲットユニットTUごとに異なる発光周期Tが設定され、設定された各ターゲットユニットTUの発光周期Tは、受光演算処理部291に記憶される。
【0038】
測量中は、光源74は常に設定された発光周期Tで点灯し、ターゲットユニットTUは常に識別光Lを送光するように構成されている。これに限られず、測量機10からの信号に応じて、光源74の作動および停止を制御するように構成してもよい。これは、省電力の観点から有利である。手動で送光器70のON/OFFができるよう構成されてもよい。送光器70に入力部を設けて、ポール6を把持する作業者が、発光周期Tの設定、光源74の点灯開始/点灯停止の命令や、測量機10へ命令の送受信などを行い、測量機10側の作業者でなく、ターゲットユニットTUを把持する作業者が指示を行うように設定してもよい。測量機10へターゲットユニットTUの検出を開始させるスイッチを搭載し、自身のもつターゲットユニットTUを見つけるように命令を入力するように構成してもよい。
【0039】
(ターゲットユニット検知機能)
測量機10は、複数のターゲットユニットTUが存在する作業現場において、識別光Lを識別し、複数のターゲットユニットTUの中から、指定された1のターゲットユニットTUを検知する検知機能を有する。
【0040】
本実施形態においては、三つのターゲットユニットTU1~TU3は、それぞれ異なる発光周期T1~T3の識別光Lを送光する。具体的には、送光器70は、識別光Lとして、発光周期Tでパルス光を出射する。発光はパルス光に限られず、識別光Lは、点灯と消灯をそれぞれ所定の間隔で繰り返す点滅光でもよく、点灯と消灯の割合は問わない。
【0041】
識別光Lは、送光器70を中心として水平方向の全周(360度)に送光され、測量機10の受光部40で受光され、識別機能部290で受光データが記憶、演算処理される。本実施形態においては、受光演算処理部291が、取得した受光データを所定の方法で演算処理することで、識別光Lを検知する。このため、発光のタイミングと受光のタイミングを合わせる必要がなく、受光部40と送光器70を同期させる同期作業が不要である。
【0042】
複数あるターゲットユニットTUから、指定された1のターゲットユニットTUを識別して検知する方法について、詳しく説明する。
【0043】
受光演算処理部291は、受光部40が受光して受光記憶部292に記憶された受光データを、所定時間ごとに区切り、所定時間で区切られた受光データを比較暗合成することにより、所定時間を周期として点灯する識別光Lを検知する。この所定時間を受光周期TAと称する。なお、受光部40は、異なる発光周期Tの光の点滅を問題なく受光して識別できる(少なくとも1周期の発光を複数回受光できる程度)性能を有する。
【0044】
(比較暗合成)
比較暗合成について、詳しく説明する。比較暗合成とは、例えば複数枚のデジタル画像における同じ座標の画素、あるいは同じ領域の複数画素、の出力を、それぞれ比較して、出力値(輝度)が低いもので置き換える合成手法である。本実施形態においては、随時取得される受光部40の計測結果(受光データ)を、受光周期TAごとに区切り、基準時間を合わせて計測値を比較し、より小さい値を演算結果として出力する。
【0045】
上記内容を、図4を用いてグラフで説明する。図4のグラフのX値が時間、Y値が計測値である。比較暗合成を行うと、それぞれのX値において、Y値を比較して、より小さいY値が演算結果として出力される。
【0046】
例えば、図4に示すように、例えば、X=0~X3で、Y=Y1であるデータS1と、X=X1~X2で、Y=Y2(Y2>Y1)のデータS2とを、比較暗合成すると、X=X1~X2でY=Y1のデータS3が演算結果として出力される。
【0047】
上記内容を詳しく説明する。図4下図は、データS1とデータS2とを、原点O(X=0,Y=0)を合わせて配置している。図4下図に示すように、X=0~X1の範囲では、データS1がY=Y1、データS2ではY=0である。比較暗合成では、Y値が低い方が出力されるため、両者を比較暗合成すると、X=0~X1の範囲では、Y=0が出力される。X=X1~X3の範囲では、データS1がY=Y1、データS2がY=Y2で、Y1<Y2であるため、両者を比較暗合成すると、Y=Y1が出力される。X=X2~X3の範囲では、データS1がY=Y1、データS2ではY=0であり、両者を比較暗合成すると、X=X2~X3の範囲では、Y=0が出力される。直観的には、データS1とデータS2とを原点を合わせて重ね合わせ、重複する領域が、比較暗合成による演算結果となる。
【0048】
受光演算処理部291は、受光部40で受光された受光データLOGを、受光周期TAごとに区切り、周期受光データlog1,log2,log3…とし、順次比較暗合成していく。
【0049】
図5および図6は、受光データの比較暗合成を説明する説明図である。各グラフは、受光データLOGが、受光周期TAで区切られたものである。縦軸が受光量、横軸が時間を示す。
【0050】
取得された受光データLOGにおいて、受光周期TAの範囲で区切られた最初のデータ(1周期目の取得データ:第1周期受光データlog1)と、その次の受光周期TAのデータ(2周期目の取得データ:第2周期受光データlog2)を比較暗合成した結果を示す。
【0051】
図5(A)は、受光周期TAと、発光周期Tが同一の場合を示す。図5(B)受光周期TAと、発光周期Tが異なる場合を示す。図6は、二つの異なる発光周期の光を受光した場合を示す。
【0052】
発光周期Tと受光周期TAが同一の場合、図5(A)に示すように、一回目の発光周期Tに取得される受光データも、二回目の発光周期Tに取得される受光データも、ほぼ同等であり、二つの受光データを比較暗合成しても、受光データと略同じものが出力される。
【0053】
これに対し、発光周期Tと受光周期TAが異なる場合、図5(B)に示すように、一回目の発光周期に取得される受光データと、二回目の発光周期で取得される受光データとでは、受光のタイミングが異なるため、比較暗合成すると、出力値がほぼ0となる。
【0054】
また、異なる発光周期Tの二つの識別光Lを、同時に受光する場合がある。図6に示すように、二つの識別光を同時に受光した場合、周期の異なる光を受光することから、発光のタイミングが重なっても、二回目の発光では発光のタイミングには周期の差だけ発光のタイミングにずれが生じることとなる。一方の光の発光周期T=受光周期TAであれば、比較暗合成の結果、発光周期Tが受光周期TAの計測データだけが出力される。もちろん、いずれの受光した光の発光周期Tが受光周期TAと異なる場合、比較暗合成すると、受光量がほぼ0のデータが出力される。
【0055】
すなわち、受光周期TAと発光周期Tとを同一とし、取得した受光データを、受光周期TAで区切り、区切られた受光データを比較暗合成すると、発光周期Tの光だけを検出することができる。
【0056】
(受光データ)
図7は、受光部40の所定時間(受光周期TA)ごとの区切りと、第1ターゲットユニットTU1~第3ターゲットユニットTU3の識別光L1~LU3の発光を、一例として示す。横軸は経過時間を示す。
【0057】
ターゲットユニットTU1~TU3は、識別光L1~L3として、それぞれ異なる発光周期T1~T3で発光する。図7においては、発光は短時間発光のパルス光とする。
【0058】
識別光L1~L3が受光部40で受光されると、受光データとして受光記憶部292に随時出力されて記憶される。次に、記憶された受光データは、受光演算処理部291で、設定された受光周期TAごとに区切られ、区切られた受光データは、第1周期受光データlog1、第2周期受光データlog2、第3周期受光データlog3…とされ、順次、比較暗合成されていく。受光データを区切る受光周期TAを、識別したいターゲットユニットTUの識別光Lの発光周期Tにすることにより、識別したいターゲットユニットTUの識別光Lを識別することができる。
【0059】
図7では、第1ターゲットユニットTU1の第1識別光L1の点灯、第2ターゲットユニットTU2の第2識別光L2の点灯、第3ターゲットユニットTU3の第3識別光L3の点灯、および受光部40の受光データが区切られる、受光周期TAごとの区切りを共に示している。一例として、第1ターゲットユニットTU1の識別光L1を識別する方法について説明する。第1ターゲットユニットTU1が選択されると、受光周期TAに、識別光L1の発光周期T1が設定される。
【0060】
識別光L1~L3は、異なる発光周期T1~T3で発光するため、例え、最初に全てが同時に発光し始めても、発光するタイミングはずれていく。
【0061】
図8に、三つのターゲットユニットTU1~TU3から送光された識別光L1~L3を全て受光部40が受光した場合の受光データを示す。図8には、さらに、受光データを受光周期TAで区切った、第1周期の受光データlog1と第2周期の受光データlog2を示す。
【0062】
第1周期の受光データlog1と第2周期の受光データlog2には、いずれも第1識別光L1、第2識別光L2、および第3識別光L3の発光が受光信号として検出されている。第1識別光L1の発光周期T1は、受光周期TAと同じであるため、第1周期の受光データlog1,第2周期の受光データlog2・・・のいずれにも同じタイミングで第1識別光L1の発光が受光されている。これに対し、他の識別光L2、L3は、受光周期TAとは発光する周期が異なるため、第1周期の受光データlog1、第2周期の受光データlog2で、発光のタイミングが異なって検出される。
【0063】
このため、第1周期の受光データlog1と、第2周期の受光データlog2を比較暗合成すると、受光周期TAごとに同じタイミングで発光する第1識別光L1だけが出力される。
【0064】
同様に、第2ターゲットユニットTU2を識別したい場合には、受光周期TAに第2識別光L2の発光周期T2を設定することにより、受光信号の中から、第2識別光L2だけを検出することができる。
【0065】
これにより、複数のターゲットユニットTUの中から、特定のターゲットユニットTUを識別することができる。受光部40は、測量機10の正面に受光方向を向けて配置されているため、特定のターゲットユニットTUの識別光Lを検出したとき、測量機10は水平方向において、その特定のターゲットユニットTUの方向を向いていることとなる。追尾部27の追尾光を出射しながら、望遠鏡2cを上下に振ってプリズムサーチすることで、特定のターゲットユニットTUのプリズム8をロックすることができる。
【0066】
各ターゲットユニットTU1~TU3の識別光L1~L3の発光周期T1~T3は、測量機制御部29で記憶される。検出したいターゲットユニットTUを選択すると、受光周期TAに選択したターゲットユニットTUの発光周期Tが設定される。
【0067】
上記例では、説明を分かりやすくするため、受光周期TAを、第1ターゲットユニットTU1の識別光L1の1周期(受光周期TA=識別光L1の1周期)としたが、これに限られず、受光周期TAは、識別するターゲットユニットTUの発光周期のn周期の時間に設定されればよい。好ましくは0.5≦n≦2であり、たとえば、第1識別光L1の発光周期T1=10msの場合、受光周期TAは、5msより大きく、20msより小さく設定される。
【0068】
このため、複数の識別光Lの発光周期Tは、それぞれ異なる周期、かつ、公約倍数がn倍以下の倍数となる周期は避けて設定されることが好ましい。発光周期の制限は、発光周期同士の関係で決定されるため、各ターゲットユニットTUの発光周期Tは、発光の間隔時間が発光時間分以上ずれる周期となっていればよい。また、他の発光周期のm倍や1/m(mは自然数)とならない周期に設定されることが望ましい。
【0069】
また、上記例では、第1周期の受光データlog1と第2周期の受光データlog2を比較暗合成しただけであるが、好ましくは、さらに第3周期の受光データlog3、第4受光データlo4を比較暗合成すると、検出の確実性が向上して好ましい。演算結果による検出の確実性と、判定時間とのバランスがよさから、比較暗合成の回数が、1~3回が好ましい。また、連続した周期の比較暗合成したものを複数回平均してもよい。
【0070】
上記構成によれば、ターゲットユニットTUの送光器70と、受光部40との同期を行うことなく、複数の識別光Lの受光信号から、識別しない信号のみを検出することができる。周期受光データlogを所定回数だけ比較暗合成するだけで、識別したい識別光Lを検出できるため、検出するまでに時間が短い。ターゲットユニットTUが発光しているため、受光部40の受光量が多く、検出の精度が高い。
【0071】
特定の識別光Lを検出することにより、ターゲットユニットTUを識別することができる。指定のターゲットユニットTUの識別光Lを目印として、追尾部27でプリズムサーチを行い、ロックすることで、複数のターゲットユニットTUの中から、特定のターゲットユニットTUを追尾・測距・測角することができる。
【0072】
(作業フロー)
複数あるターゲットユニットTUから、特定のターゲットユニット(一例として第1ターゲットユニットTU1)をロックして、測量する作業工程フローを説明する。図7は、測量システム1を用いた測量作業の工程フローである。
【0073】
まず、ステップS101で、ターゲットユニットTU1~TU3に備えられた各送光器70が、識別光L1~L3の送光を開始する。光源74は発光周期T1~T3で点灯を開始し、出射光は、送光口75から識別光L1~L3として全周方向に送光される。発光周期T1~T3は、受光演算処理部291で記憶される。ターゲットユニットTU1~TU3は、識別光L1~L3を送光しながら運ばれ、測量現場で、各々配置される。
【0074】
次に、ステップS102に移行して、識別したい特定のターゲットユニットTU(第1ターゲットユニットTU1)が指定される。測量機10の入力部23で、第1ターゲットユニットTU1を選択して入力してもよい。第1ターゲットユニットTU1を把持する作業者が、図示しないコントローラや送光器70の入力部から入力を行い、通信部を介して、測量機制御部29に命令が入力されてもよい。
【0075】
次に、ステップS103に移行して、受光周期TAに、第1識別光L1の1周期(一例として、n=1)が設定され、受光部40が受光を開始する。
【0076】
次に、ステップS104に移行して、測量機10がサーチを開始する。水平回転駆動部M1を駆動させて、托架部2bを水平回転軸H回りに水平回転させる。回転の間も、受光部40は受光を行う。
【0077】
次に、ステップS105に移行して、受光部40で受光された信号は、受光データLOGとして随時、受光記憶部292に出力されて記憶され、記憶された受光データLOGが受光演算処理部291で演算処理される。受光部40の受光データは、第1識別光L1の1周期ごとに区分される(n=1の場合)。受光周期TAごとに受光データが取得される都度、比較暗合成される。所定回数の比較暗合成が行われた結果、所定値以上の値が検出された場合、検出された光が第1識別光L1と判定される。
【0078】
次に、ステップS106に移行して、望遠鏡2cで第1ターゲットユニットTU1のプリズム8を視準させるため、サーチを行う。第1識別光L1が検出されると、測量機制御部29は、水平回転を停止する。ついで鉛直回転駆動部M2の駆動により、望遠鏡2cを上下方向に駆動させて、追尾部27の追尾光を上下に走査させ、プリズム8の鉛直方向を検知し、ロックする。
【0079】
次に、ステップS107に移行して、第1ターゲットユニットTU1のプリズム8の測距・測角を行う。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 :測量システム
2c :望遠鏡
8 :プリズム
10 :測量機
21 :水平角検出器(測量部)
22 :鉛直角検出器(測量部)
26 :測距部(測量部)
27 :追尾部
29 :測量機制御部
40 :受光部
70 :送光器
290 :識別機能部
291 :受光演算処理部
292 :受光記憶部
L :識別光
LOG :受光データ
M1 :水平回転駆動部
M2 :鉛直回転駆動部
TA :受光周期
TU :ターゲットユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9