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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142377
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/26 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01J61/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054495
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池野 良亮
【テーマコード(参考)】
5C015
【Fターム(参考)】
5C015TT12
(57)【要約】
【課題】長寿命の放電ランプを提供する。
【解決手段】放電ランプは、発光管と、前記発光管内で対向配置される一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれの電極に接続される二つのリード棒と、を備える放電ランプであって、前記放電ランプは、前記発光管内の水素を吸着するゲッター材料が密閉容器内に封入される、水素ゲッターと、前記水素ゲッターを覆い、かつ、前記リード棒に固定されるカバーと、前記水素ゲッターと前記カバーとの間に位置することにより、前記水素ゲッターが前記カバーに接触することを妨げる接触防止部材と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、前記発光管内で対向配置される一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれの電極に接続される二つのリード棒と、を備える放電ランプであって、前記放電ランプは、
前記発光管内の水素を吸着するゲッター材料が密閉容器内に封入される、水素ゲッターと、
前記水素ゲッターを覆い、かつ、前記リード棒に固定されるカバーと、
前記水素ゲッターと前記カバーとの間に位置することにより、前記水素ゲッターが前記カバーに接触することを妨げる接触防止部材と、を備えることを特徴とする、放電ランプ。
【請求項2】
前記接触防止部材はシート状であることを特徴とする、請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記接触防止部材の表面は、エンボス形状、メッシュ形状、又は複数の穿孔若しくは複数の凹部を有していることを特徴とする、請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記接触防止部材は、前記水素ゲッターの前記密閉容器と同じ材料であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記接触防止部材は、タンタル及びニオブの少なくとも一つから構成されることを特徴とする、請求項4に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記カバーは、モリブデン及びタングステンの少なくとも一つから構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプの発光管内に、水素ゲッターを配置することが知られている。水素ゲッター内に含まれるゲッター材料が、発光管内の水素を吸着することにより、当該放電ランプの照度を安定化させる。
【0003】
特許文献1は、水素ゲッターと、水素ゲッターを覆い、かつ、リード棒に固定されるカバー(特許文献1で言うところの「ケーシング」)と、を有するショートアーク型放電ランプを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-100588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電ランプの長寿命化が市場より要求されている。市場の要求に応えるために、長寿命の放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光管と、前記発光管内で対向配置される一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれの電極に接続される二つのリード棒と、を備える放電ランプであって、前記放電ランプは、
前記発光管内の水素を吸着するゲッター材料が密閉容器内に封入される、水素ゲッターと、
前記水素ゲッターを覆い、かつ、前記リード棒に固定されるカバーと、
前記水素ゲッターと前記カバーとの間に位置することにより、前記水素ゲッターが前記カバーに接触することを妨げる接触防止部材と、を備える。
【0007】
詳細は後述するが、従来の放電ランプでは、前記水素ゲッターが前記カバーに接触することがあった。本発明者の解析の結果、前記水素ゲッターが前記カバーに接触した状態で点灯を続けると、前記水素ゲッターが前記カバーに拡散接合して前記水素ゲッターの密封容器を破損し、前記ゲッター材料の漏洩リスクが高まることが分かった。漏洩した前記ゲッター材料は発光管に付着し、放電ランプの照度低下を招く。しかしながら、本発明の放電ランプは、前記接触防止部材を備える。接触防止部材が、前記水素ゲッターが前記カバーに接触することを妨げることにより、前記水素ゲッターと前記カバーの接触面積が低減するか、又は、非接触となる。その結果、放電ランプを長時間使用しても、水素ゲッターの密封容器と、カバーとの拡散接合が進行しにくく、密封容器の破損に伴うゲッター材料の漏洩リスクが低下する。ゲッター材料が漏洩すると水素ゲッターが発光管に付着し放電ランプの照度低下を招くところ、漏洩リスクが低下するため放電ランプの照度低下を招きにくい。
【0008】
前記接触防止部材はシート状であっても構わない。
【0009】
前記接触防止部材の表面は、エンボス形状、メッシュ形状、又は複数の穿孔若しくは複数の凹部を有していても構わない。
【0010】
前記接触防止部材は、前記水素ゲッターの前記密閉容器と同じ材料であっても構わない。
【0011】
前記接触防止部材は、タンタル及びニオブの少なくとも一つから構成されても構わない。
【0012】
前記カバーは、モリブデン及びタングステンの少なくとも一つから構成されても構わない。
【発明の効果】
【0013】
これにより、長寿命の放電ランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態の放電ランプの全体図である。
図2】水素ゲッター周辺の拡大断面図である。
図3】水素ゲッターの斜視図である。
図4】カバーの斜視図である。
図5】接触防止部材を有しない放電ランプにおける、水素ゲッター周辺の拡大断面図である。
図6】シート形状の接触防止部材を示す図である。
図7】第二実施形態の放電ランプにおける、水素ゲッター周辺の拡大断面図である。
図8】第三実施形態の放電ランプにおける、水素ゲッター周辺の拡大断面図である。
図9】第四実施形態の放電ランプにおける、水素ゲッター周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0016】
図面の一部は、XYZ直交座標系で示される。鉛直方向をZ方向、鉛直方向に対して直交する水平面内において互いに直交する二方向を、X方向及びY方向とする。方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。-Z方向は重力方向である。
【0017】
<第一実施形態>
[放電ランプの概要]
図1を参照しながら、第一実施形態の放電ランプの概要を説明する。図1に示される放電ランプ10(ここでは、ショートアーク型の超高圧水銀ランプ)は、発光管2と、発光管2内で対向配置される一対の電極(陽極3及び陰極4)と、陽極3と陰極4にそれぞれ接続される二つのリード棒7と、発光管2の両端にそれぞれ繋がる二つの側管5とを備える。本実施形態において、発光管2と二つの側管5は、Z1軸に沿って配列される。Z1軸はZ方向に平行な軸である。発光管2は、Z1軸からX方向及びY方向に膨出して形成されている。発光管2、二つの側管5、陽極3及び陰極4は、共通のZ1軸を中心とする回転体形状を呈する。しかしながら、発光管2及び二つの側管5は、Z1軸に沿って配列されなくてもよいし、回転体形状を呈さなくても構わない。二つの側管5にはそれぞれ、口金6が取り付けられている。放電ランプ10は、さらに、水素ゲッター(図1では不図示)と、水素ゲッターを覆うカバー(8a,8b)とを有する。
【0018】
[水素ゲッター]
図2及び図3を参照しながら、水素ゲッターを説明する。図2は、水素ゲッター周辺の拡大断面図である。図3は水素ゲッターの斜視図である。図2に示されるように、水素ゲッター9を覆うカバー(8a,8b)は、陰極4に接続されるリード棒7に固定されている(図1,2参照)。
【0019】
図2に示されるように、水素ゲッター9は、密封容器13と、密封容器13の内部に充填されたゲッター材料12とを有する。密封容器13は、ゲッター材料12が漏れないように密封される。ゲッター材料12が温度上昇により熱膨張しても、ゲッター材料12が密封容器13から漏洩しないよう、密封容器13の内部にはゲッター材料12の充填されない空間がある。
【0020】
放電ランプ10の点灯により発生する熱でゲッター材料12の温度が上昇し、水素分子を吸着可能な温度に達すると、ゲッター材料12は発光管2内の水素分子を吸着する。ゲッター材料12として、例えば、イットリウム又はジルコニウム等の金属が挙げられるが、これらの金属に限定されない。ゲッター材料12に使用される金属の純度は、例えば、90at%以上であるとよいが、90at%未満でも構わない。
【0021】
図3は水素ゲッター9の外観の斜視図である。本実施形態の密封容器13は棒状である。密封容器13の長手方向両端は、それぞれ、テーパ形状を有する。密封容器13の長手方向両端がテーパ形状を有することで、密封容器13の底と、カバー8aの接触面積を低減できる。密封容器13は、水素分子を透過する。密封容器13の材料には、高温に曝されても溶解せず、かつ、容器に加工できる材料が使用される。密封容器13の材料として、例えば、タンタル(Ta)又はニオブ(Nb)が挙げられる。密封容器13に使用される金属の純度は、例えば、90at%以上であるとよい。
【0022】
水素ゲッター9のサイズ、即ち、密封容器13の長手方向の寸法は、5mm以上であるとよく、30mm以下であるとよく、好ましくは、15mm以上であるとよく25mm以下であるとよい。密封容器13の長手方向に直交する断面での最大幅は、2mm以上であるとよく、10mm以下であるとよく、好ましくは、3mm以上であるとよく、8mm以下であるとよい。密封容器13を構成するシートの厚みは3μm以上であるとよく、300μm以下であるとよく、好ましくは、5μm以上であるとよく、200μm以下であるとよい。なお、上記した密封容器13の形状及び寸法に限定されず、他の形状及び寸法であっても構わない。
【0023】
[水素ゲッターのカバー]
カバー(8a,8b)について説明する。図4はカバー(8a,8b)の分解斜視図である。二つのカバー8aは、リード棒7を挟むように配置される。そして、二つのカバー8a同士をねじ等(不図示)で固定することにより、二つのカバー8aがリード棒7に固定される。二つのカバー8bは、水素ゲッター9(図4では不図示)を収容した状態で、それぞれ、カバー8aの中に嵌め込まれる。これにより、水素ゲッター9が、カバー(8a,8b)の外部から隔離される。
【0024】
カバー(8a,8b)の機能について説明する。カバー(8a,8b)がない場合、放電ランプ10の点灯時、異常放電が水素ゲッター9から発生し、水素ゲッター9が破損することがある。カバー(8a,8b)が水素ゲッター9を覆うことにより、異常放電が水素ゲッター9から発生することを抑える。
【0025】
図2及び図4には示されていないが、嵌め込まれたカバー(8a,8b)は、水素を透過する隙間を有する。この隙間は、異常放電が水素ゲッター9から発生しない程度に小さければよい。例えば、目視可能な程度の大きな隙間であっても構わない。
【0026】
カバー(8a,8b)は放電ランプ10の点灯により高温に曝されても溶融しない。カバー(8a,8b)は、密封容器13と異なる材料が使用される。カバー(8a,8b)の材料としてモリブデン(Mo)又はタングステン(W)等の金属が挙げられる。カバー(8a,8b)に使用される金属の純度は、低くても構わない。例えば、カバー(8a,8b)は、主となる金属が70at%以下の合金であっても構わない。
【0027】
本実施形態は、一組のカバー(8a,8b)内に、二つの水素ゲッター9が入っているが、より多くの水素ゲッター9が一組のカバー(8a,8b)内に入っていても構わないし、一つの水素ゲッター9が一組のカバー(8a,8b)内に入っていても構わない。また、二つのカバー8aがリード棒7を挟むように配置される本実施形態は、一例であって、これに限定されない。例えば、一つのカバーがリード棒7を取り囲むように存在していてもよく、二つより多くのカバーがリード棒7に沿って並んでいても構わない。カバーは、水素ゲッター9から異常放電の発生を抑えられるように、水素ゲッター9を覆っていればよい。
【0028】
[接触防止部材]
本実施形態の接触防止部材について説明する。図2に示されるように、放電ランプ10は、接触防止部材11を有する。接触防止部材11は、水素ゲッター9とカバー(8a,8b)との間に位置する。接触防止部材11により、水素ゲッター9がカバー(8a,8b)に接触することを妨げる。
【0029】
接触防止部材11の機能について、接触防止部材11を有しない放電ランプと比較することにより詳細に説明する。図5は、接触防止部材11を有しない放電ランプを示す。図5に示される放電ランプは接触防止部材11を有しないため、接触点C1において、水素ゲッター9の密封容器13が、カバー(8a,8b)に接触している。ランプ点灯時の高温環境において、密封容器13がカバー(8a,8b)に接触していると、密封容器13の材料とカバー(8a,8b)の材料との拡散接合が進行する。その結果、密封容器13とカバー(8a,8b)が接触点C1で溶着する。接触点C1が溶着していると、放電ランプ10の点灯と消灯を繰り返すとき、密封容器13とカバー(8a,8b)の熱膨張量の違いによる応力が、繰り返し接触点C1付近に付与される。そのため、密封容器13が局所的に貫通し、密封容器13内のゲッター材料12が密封容器13から漏洩することがある。ゲッター材料12が密封容器13から漏洩すると、ゲッター材料12が発光管2に付着し、発光管2の光透過率を低下させる。つまり、放電ランプ10の照度低下を招く。
【0030】
これに対し、図2に示されるように、水素ゲッター9とカバー(8a,8b)の間に接触防止部材11を配置すると、水素ゲッター9とカバー(8a,8b)の接触点が形成されないか、少なくとも接触面積が低減する。その結果、水素ゲッター9の密封容器13の材料とカバー(8a,8b)の材料の拡散が進みにくく、密封容器13の破損(貫通)を防ぎゲッター材料12の漏洩リスクが低下する。その結果、放電ランプ10を長時間使用しても、放電ランプ10の照度が低下しにくいから、放電ランプ10を長寿命化できる。
【0031】
水素ゲッター9とカバー(8a,8b)の間に接触防止部材11を配置すると、接触防止部材11がカバー(8a,8b)と接触することになる。接触防止部材11とカバー(8a,8b)の間で拡散接合が進行し、接触防止部材11とカバー(8a,8b)が溶着しても構わない。接触防止部材11に応力が繰り返し付与され、歪みが蓄積して変形し破損しても、密封容器13がカバー(8a,8b)に接触することを妨げる機能を損なうことがなく、密封容器13の破損に繋がらない。
【0032】
本実施形態において、接触防止部材11はシート形状を呈する。斯かるシート形状の接触防止部材11で複数の水素ゲッター9の回りを巻くことにより、図2の断面図に示されるように接触防止部材11が配置される。水素ゲッター9を縛って固定するように接触防止部材11を巻くよりも、接触防止部材11で水素ゲッター9を柔らかく包む程度に巻くとよい。水素ゲッター9が接触防止部材11内で自由に熱膨張できる状態にしておくことで、接触防止部材11と水素ゲッター9の密封容器13の破損を防ぐことができる。
【0033】
接触防止部材11であるシートの厚みは、カバー(8a,8b)の厚みより薄いとよい。シートの厚みは、5μm以上であるとよく、1mm以下であるとよい。好ましくは、10μm以上であるとよく、500μm以下であるとよく、さらに好ましくは15μm以上であるとよく、100μm以下であるとよい。接触防止部材11は放電ランプの使用により変形した場合でも、破損し難い強靭性材料であるとよい。
【0034】
原則として、接触防止部材11は、カバー(8a,8b)と異なる材料を使用する。しかしながら、接触防止部材11の厚みが、密封容器13を構成するシートの厚みよりも薄いなど、密封容器13よりも接触防止部材11の方が変形し易い状態にある場合には、接触防止部材11に、カバー(8a,8b)と同じ材料を使用してもよい。接触防止部材11とカバー(8a,8b)との間で溶着しても、熱膨脹に伴う変形は、接触防止部材11に集中し、密封容器13を変形させにくく、ゲッター材料12の漏洩に繋がらない。
【0035】
接触防止部材11の材料は、水素ゲッター9の密封容器13と異なる材料でもよく、同じ材料であってもよい。接触防止部材11の材料が、密封容器13の材料と同じである場合には、密封容器13の熱膨張率と接触防止部材11の熱膨張率が同じであり、拡散接合を起こさないため、接触防止部材11と密封容器13の破損をさらに防ぎやすい。
【0036】
図6はシート形状の接触防止部材11を示す図である。図6は、シートの一方の面が示されている。本実施形態の接触防止部材11では、平坦なシートの表面に、複数の突起21(図6においてハッチングされた領域)が形成されている。各突起21の高さは2mm以内である。本明細書では、斯かる複数の突起21を、エンボス形状と言うことがあるが、エンボス形状の突起は、平坦なシートをエンボス加工することによって得られたものだけを指すのではなく、他の加工方法によりシート状の材料から複数の突起21が形成されたものを含む。
【0037】
シート形状の接触防止部材11で複数の水素ゲッター9の回りを巻くとき、複数の突起21が内側に位置するように、接触防止部材11を巻く。これにより、接触防止部材11と水素ゲッター9の密封容器13との接触面積を低減できる。接触防止部材11は、カバー(8a,8b)に比べて、密封容器13と溶着し難いものの、わずかに溶着することもある。しかしながら、接触防止部材11に突起を設けることで、接触防止部材11と密封容器13の接触面積を低減し、より溶着し難くできる。また、接触防止部材11に、密封容器13と同じ材料(例えば、タンタル(Ta))を選択すると、両者の熱膨張率が同じになり、溶着防止効果が高い。
【0038】
図6に示される接触防止部材11は、一方向に長い突起21が、それぞれの向きを交互に異ならせつつ、格子状に配置されている。しかしながら、突起21の形状及び複数の突起21の配置は特に限定されない。また、接触防止部材11は、単なる平坦なシート状であってもよい。接触防止部材11は、多数の素線が編み込まれたメッシュ形状であっても構わない。接触防止部材11は、ストリップ状のシートが一方向に並んだアレイでもよい。接触防止部材11は、複数の穿孔又は複数の凹部を有していてもよい。
【0039】
<第二実施形態>
図7を参照しながら第二実施形態の放電ランプを説明する。以下に説明する事項は、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。第一実施形態と同様である事項は説明を省略する。第三実施形態以降も同様である。
【0040】
図7では、接触防止部材11が袋状に形成され、水素ゲッター9の全体を取り囲んでいる。図2では、接触防止部材11が-Z側の端部においてカバー8aに接触していたが、図7では、袋状の接触防止部材11が水素ゲッター9の全体を取り囲んでおり、水素ゲッター9(密封容器13)とカバー(8a,8b)の接触点が存在しない。
【0041】
<第三実施形態>
図8を参照しながら第三実施形態の放電ランプを説明する。図8では、カバー8aは、リード棒7を覆っていない。水素ゲッター9(密封容器13)とリード棒7の間に接触防止部材11があり、密封容器13とリード棒7間の拡散接合を防止している。
【0042】
<第四実施形態>
図9を参照しながら第四実施形態の放電ランプを説明する。図9では、接触防止部材11は、コイル状である。図9では、接触防止部材11の形状を明瞭に示すため、水素ゲッター9を図示していない。実際には、水素ゲッター9が、コイル状の接触防止部材11の中に配置される。コイル状の接触防止部材11が水素ゲッター9とカバー(8a,8b)の接触面積を低減できる。さらに、コイル状の接触防止部材11は自立する場合には、カバー(8a,8b)の内側面に接触せず、接触防止部材11とカバー(8a,8b)との接触面積をも低減できる。
【0043】
以上で放電ランプの各実施形態を説明した。本発明は、上記した各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記の各実施形態に種々の変更又は改良を加えたり、各実施形態を組み合わせたりできる。
【0044】
放電ランプとして、ショートアーク型の放電ランプ、例えば、超高圧水銀ランプ、キセノンランプが例示される。さらに、放電ランプとして、ロングアークメタルハライドランプが例示される。
【0045】
上記各実施形態では、密封容器13とは別体の接触防止部材11を示したが、接触防止部材は、密封容器13に接触していても構わない。例えば、密封容器13の表面に、密封容器13とカバー(8a,8b)との接触を阻む膜を成膜してもよい。斯かる膜の具体例として、セラミック材料からなるコーティング膜を塗布等により成膜してもよい。コーティング膜は水素分子の透過を妨げない厚みにするとよい。例えば、コーティング膜の厚みは、10μm以上であり、100μm以下であるとよい。また、コーティング膜を密封容器13の全面に成膜するのではなく、コーティング膜を、断続的に成膜したり、密封容器13がカバー(8a,8b)と接触し易い部分に成膜したりしてもよい。
【0046】
密封容器13の外表面に凹凸(突起及び/又は凹部)を形成し、密封容器13と、接触防止部材11及びカバー(8a,8b)との接触面積を低減してもよい。
【実施例0047】
以下の実験を行った。まず、以下に示すの3つのサンプルの放電ランプを準備した。
サンプル1: 接触防止部材11として、金属シートを図2のように配置した。金属シートは、高純度タンタル(タンタルが95at%以上)であり、50μmの厚みである。シートには突起がない。
サンプル2: 接触防止部材11として、金属シートを図2のように配置した。金属シートは、高純度タンタル(タンタルが95at%以上)であり、50μmの厚みである。シートには、図6に示すような複数の突起21を設けている。
サンプル3: 接触防止部材11のない放電ランプである。
3つのサンプル(1,2,3)について、他の条件(例えば、水素ゲッター9及び放電ランプ10の条件)は全て同じ条件である。
【0048】
以上に示す3つのサンプルの放電ランプについて、所定の期間使用(点灯・消灯の繰り返しを含む)した後に、放電ランプを検査した。検査結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1について、「ゲッター材料の付着」は、発光管2にゲッター材料12が付着しているか否か目視点検した結果を示す。発光管2は透明であり、ゲッター材料12は茶色を呈するため、ゲッター材料12が一定量付着すると目視で確認できる。サンプル1とサンプル2が、放電ランプ10を所定の期間使用しても、ゲッター材料12の発光管2への付着が確認できなかった(即ち、「付着なし」であった)のに対し、サンプル3は、放電ランプ10を所定の期間使用すると、ゲッター材料12の発光管への付着が確認された(即ち、「付着あり」であった)。サンプル3は、水素ゲッター9の密封容器13が破損し、漏洩したゲッター材料12が発光管に付着して光の透過率が低下し、照度低下することを示す。
【0051】
表1について、「水素ゲッターとカバーの溶着」は、水素ゲッター9の密封容器13が、カバー(8a,8b)に溶着しているか否かを、カバー(8a,8b)を分解して水素ゲッター9をカバー(8a,8b)から人手で引き離す際の引張力を判定することにより、検査する。引張力を加えることなく水素ゲッター9をカバー(8a,8b)から引き離すことができる場合には、「溶着なし」と判定される。力を加えないと、水素ゲッター9をカバー(8a,8b)から引き離すことができない場合には、「溶着あり」と判定される。サンプル3は「溶着あり」と判定された。サンプル1とサンプル2は「溶着なし」と判定された。
【0052】
表1について、「水素ゲッターと接触防止部材の溶着」は、水素ゲッター9の密封容器13が接触防止部材11に溶着しているか否かを、水素ゲッター9を接触防止部材11から人手で引き離す際の引張力を判定することにより、検査する。引張力を加えることなく水素ゲッター9を接触防止部材11から引き離すことができる場合には、「溶着なし」と判定される。サンプル1では、軽い力で引き離す(剥がす)ことができる程度の、僅かな溶着がみられたのに対し、サンプル2では、引張力を加えることなく水素ゲッター9を接触防止部材11から引き離すことができ、溶着がみられなかった。なお、サンプル3は接触防止部材11を使用していないため、サンプル3の当該項目は評価されない。
【0053】
表1の「総合評価」は、「ゲッター材料の付着」、「水素ゲッターとカバーの溶着」及び「水素ゲッターと接触防止部材の溶着」の結果から導出された。総合評価は、優れた順にAA、A及びBで判定される。Bが好ましくない評価であるのに対し、Aは好ましい評価である。AAはさらに好ましい評価である。サンプル1とサンプル2は所定の期間使用してもゲッター材料12の漏洩が見られなかったため、A以上の評価である。サンプル1は、ゲッター材料12の漏洩がないものの、溶着防止部材と水素ゲッターとの間に、溶着による僅かな張り付きがみられたため、サンプル1はA評価とされた。サンプル2は、ゲッター材料12の漏洩がなく、さらに、水素ゲッター9とカバー(8a,8b)の溶着及び水素ゲッター9と接触防止部材11の溶着もないことから、さらに長時間の点灯を続けても密封容器13が破損しないことが予測され、サンプル2はAA評価とされた。
【符号の説明】
【0054】
2 :発光管
3 :陽極
4 :陰極
5 :側管
6 :口金
7 :リード棒
8a :カバー
8b :カバー
9 :水素ゲッター
10 :放電ランプ
11 :接触防止部材
12 :ゲッター材料
13 :密封容器
21 :突起
C1 :接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9