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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142380
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】鋳造型及び鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/06 20060101AFI20241003BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B22C9/06 A
B22C9/10 S
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054500
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 昌之
(72)【発明者】
【氏名】進藤 颯太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 寛二
(72)【発明者】
【氏名】福永 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 知典
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NB02
4E093NB07
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来よりも設計上の自由度が高くメンテナンスが容易な鋳造型を提供する。
【解決手段】本発明の鋳造型1は、固定型2と、可動型3と、可動型3の可動方向と交差する方向に進退可能に可動型3に設けられ、固定型2と可動型3とともにキャビティを形成する摺動型4と、を備え、摺動型4は、可動型3の可動方向に沿って進退可能に移動する摺動中子5と、型閉じ位置における摺動中子5に当接して摺動中子5をロックするストッパ6と、を有していることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、
前記固定型に対して接離可能に可動する可動型と、
前記可動型の可動方向と交差する方向に進退可能に前記可動型に設けられ、前記固定型と前記可動型とともにキャビティを形成する摺動型と、
を備え、
前記摺動型は、
第1可動機構によって前記可動型の可動方向に沿って進退可能に移動する摺動中子と、
第2可動機構によって型閉じ位置における前記摺動中子に当接して前記摺動中子をロックするロック位置と、前記摺動中子から離反してロックを解除するロック解除位置とに移動するストッパと、
を有していることを特徴とする鋳造型。
【請求項2】
前記摺動中子は、前記摺動中子の中子本体の底面から延びて前記第1可動機構に接続するロッド部を有し、
前記ストッパは、二股形状になっており、
前記ロッド部を二股形状の内側に接するように配置するとともに前記中子本体の底面に当接することによって前記摺動中子をロックすることを特徴とする請求項1に記載の鋳造型。
【請求項3】
前記ストッパと前記中子本体の底面との接触面は、前記第2可動機構による前記ストッパの移動方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の鋳造型。
【請求項4】
固定型と、
前記固定型に対して接離可能に可動する可動型と、
前記可動型の可動方向と交差する方向に進退可能に前記可動型に設けられ、前記固定型と前記可動型とともにキャビティを形成する摺動型と、
を備え、
前記摺動型が、
前記可動型の可動方向に沿って進退可能に移動する摺動中子と、
型閉じ位置における前記摺動中子に当接して前記摺動中子をロックするストッパと、
を備える鋳造型を使用した鋳造方法であって、
前記ストッパを前記摺動中子まで移動させる移動工程と、
前記ストッパの位置を調整することで前記摺動中子の先端部が前記キャビティを形成するように前記摺動中子を位置決めしてロックするロック工程と、
少なくとも前記キャビティを形成する前記固定型の表面と前記可動型の表面と前記摺動型の表面とに離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
前記摺動型を摺動型型締め位置に配置し、前記固定型に対して前記可動型を型閉じする型閉じ工程と、
を有することを特徴とする鋳造方法。
【請求項5】
前記キャビティ内に鋳造品を形成して前記固定型から前記可動型を離反させた後、鋳造位置にある前記摺動中子を前記キャビティ側に一旦押してから再び鋳造位置に戻す予備押出し工程と、
前記予備押出し工程後、前記ストッパをロック解除位置に設定するロック解除工程と、
前記摺動中子を前記摺動型内に引き戻す中子引き込み工程と、
前記中子引き込み工程後、前記摺動型を前記可動型から型開きする摺動型型開き工程と、
前記鋳造品の取り出し工程と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造型及び鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造型として、固定型と可動型との間に形成されるキャビティに進退可能に臨む移動中子を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この鋳造型は、第1の移動中子と第2の移動中子とを備え、型内に溶湯を鋳込む際に第1の移動中子と第2の移動中子とが互いに係合するようになっている。
このような鋳造型によれば、高圧で溶湯を鋳込む際に移動中子のずれが防止されて型内に得られる鋳造品の寸法精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3-9885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の鋳造型(例えば、特許文献1参照)は、鋳造圧がかかる方向の移動を防止するように第1の移動中子と第2の移動中子とを係合させて高精度に位置決めしなければならない。そのため従来の鋳造型は、設計上の自由度が制限されるという課題がある。
また、従来の鋳造型は、第1の移動中子と第2の移動中子とが熱膨張により作動不良を生じた際にメンテナンスが困難になるという課題がある。
【0005】
本発明の課題は、従来よりも設計上の自由度が高くメンテナンスが容易な鋳造型及び鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明の鋳造型は、固定型と、前記固定型に対して接離可能に可動する可動型と、前記可動型の可動方向と交差する方向に進退可能に前記可動型に設けられ、前記固定型と前記可動型とともにキャビティを形成する摺動型と、を備え、前記摺動型は、第1可動機構によって前記可動型の可動方向に沿って進退可能に移動する摺動中子と、第2可動機構によって型閉じ位置における前記摺動中子に当接して前記摺動中子をロックするロック位置と、前記摺動中子から離反してロックを解除するロック解除位置とに移動するストッパと、を有していることを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決した本発明の鋳造方法は、固定型と、前記固定型に対して接離可能に可動する可動型と、前記可動型の可動方向と交差する方向に進退可能に前記可動型に設けられ、前記固定型と前記可動型とともにキャビティを形成する摺動型と、を備え、前記摺動型が、前記可動型の可動方向に沿って進退可能に移動する摺動中子と、型閉じ位置における前記摺動中子に当接して前記摺動中子をロックするストッパと、を備える鋳造型を使用した鋳造方法であって、前記ストッパを前記摺動中子まで移動させる移動工程と、前記ストッパの位置を調整することで前記摺動中子の先端部が前記キャビティを形成するように前記摺動中子を位置決めしてロックするロック工程と、少なくとも前記キャビティを形成する前記固定型の表面と前記可動型の表面と前記摺動型の表面とに離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、前記摺動型を摺動型型締め位置に配置し、前記固定型に対して前記可動型を型閉じする型閉じ工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりも設計上の自由度が高くメンテナンスが容易な鋳造型及び鋳造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る鋳造型の全体斜視図である。
図2図1の鋳造型で製造する鋳造品の部分拡大斜視図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】摺動中子をストッパでロックした様子を示す部分拡大斜視図である。
図5図3のV部の部分拡大図である。
図6】本発明の実施形態に係る鋳造方法における鋳造サイクルの工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の鋳造型及び鋳造方法を実施するための形態(実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る鋳造型1は、固定型2と、可動型3と、摺動型4とを備えて構成されている。図1中、固定型2と可動型3との間に挟まれるように配置される摺動型4は、作図の便宜上、隠れ線(点線)にて模式的に表している。また、図1中、これらの型内に形成される鋳造品7及びこれをかたどったキャビティCの形状についても隠れ線にて表している。
以下では、再生アルミニウム溶湯を使用して車体構造を鋳造する鋳造型1を例にとって本発明を具体的に説明するが、鋳造品及び溶湯はこれに限定されるものではない。
本実施形態では、鋳造型1で得られる鋳造品7の形状について具体的に説明した後に、鋳造型1及びこれを使用した鋳造方法について説明する。
【0011】
≪鋳造品≫
図2は、図1の鋳造型1で製造する鋳造品7の部分拡大斜視図である。図2の鋳造品7は、図1に示した鋳造品7における右側部分に対応する。
図2に示すように、本実施形態で例示する鋳造品7は、従来、複数からなる部材同士を溶接などで接合して形成していた車体構造体10を、鋳造にて一体に得たものである。
この車体構造体10は、サイドフレーム11と、アッパメンバ12と、ホイールハウス13と、ダンパハウジング14と、を主に備えて構成されている。
【0012】
サイドフレーム11は、車体前部及び車体後部の左右両側で車体前後方向に延びる長尺部材である。
サイドフレーム11は、図示を省略したバンパビームエクステンションに接続され、左右のサイドフレーム11の後端同士は、上下方向に面するパネル状のダッシュボードロア16(図1参照)にて連結されている。
【0013】
アッパメンバ12は、サイドフレーム11の車幅方向外側で上方に凸の略円弧を描きなから後方へと延びる長尺部材で形成されている。
ホイールハウス13は、図示を省略したホイールハウス外側半体と一体となってタイヤホイールの収容空間を形成する。すなわち、図2に示す車体構造体10のホイールハウス13は、ホイールハウス内側半体に相当する。
ホイールハウス13は、図2に示すように、アーチ状のパネルからなる立体構造体である。具体的には、ホイールハウス13は、上方に凸の円弧を描きながら前後方向に延びる上壁13aと、この上壁13aの車幅方向内側から下方に延びてサイドフレーム11に接続される側壁13bと、を有している。
【0014】
なお、上壁13aの車幅方向外側は、アッパメンバ12に接続されている。そして、ホイールハウス13の車幅方向外側は、円弧状の開口(図示を省略)を有するとともに、ホイールハウス13の上壁13aの裏側面(下面)は、後記する摺動型4(図3参照)の型抜きが可能なように摺動型4の摺動方向(図2の左右方向)に沿うように形成されている。
【0015】
ダンパハウジング14は、ホイールハウス13が部分的に上方に向けて膨出するように形成されている。ダンパハウジング14は、ホイールハウス13と共通の内部空間を有している。そして、ダンパハウジング14の車幅方向外側は、後記する摺動型4(図3参照)の型抜きが可能なようにホイールハウス13の前記の開口と一緒になって開口している。
【0016】
ダンパハウジング14の車幅方向外側の上縁は、アッパメンバ12に接続されている。なお、図示は省略するが、ダンパハウジング14に対応する部分でのアッパメンバ12の断面形状は、L字形状を呈している。また、ホイールハウス13に対応する部分でのアッパメンバ12は、車幅方向外側に開くコ字断面形状を呈している。
【0017】
ダンパハウジング14の上部には、図示を省略したダンパが取り付けられるダンパベース15が形成されている。具体的には、ダンパベース15は、ダンパハウジング14の上部からさらに上方に向けてドーム状に膨出するように形成されている。
このダンパベース15の内側は、後記する摺動中子5(図5参照)の型抜きが可能なように、円柱状の内部空間を形成している。
【0018】
≪鋳造型≫
本実施形態の鋳造型1(図1参照)は、大型で前記のように複雑な構造を有する車体構造体10(図2参照)の一体鋳造を可能にするものである。
図1では一例として車体の前部構造体を示しているが、前部構造体に限定するものではなく後部構造体であってもよい。また車体部品に限定するものではなく、要部構成が同様な種々の鋳物部品の鋳造型に応用可能である。
鋳造型1(図1参照)は、鋳造品7(図1参照)におけるアンダーカット部の離型を工夫するだけでなく、各型の位置精度を向上させた構成になっている。
なお、図1に示す前後上下左右の方向は、本実施形態の説明の便宜上、図2の車体構造体10における前後上下左右の方向に合わせて規定したものであって、鋳造型1における前後上下左右の方向はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、鋳造型1は、固定型2に対して接離可能に上下方向に可動する可動型3と、可動型3の可動方向(上下方向)と交差する方向、具体的には図1の左右方向に進退可能に可動型3に設けられる摺動型4と、を備えている。
【0020】
図1に示すように、固定型2と可動型3との間には、前記のダッシュボードロア16が鋳造されるキャビティC1が形成されている。
また、図1のIII-III断面図である図3に示すように、固定型2と摺動型4との間には、サイドフレーム11を鋳造するキャビティC2と、アッパメンバ12を鋳造するキャビティC3と、ホイールハウス13及びダンパハウジング14を鋳造するキャビティC4と、ダンパベース15を鋳造するキャビティC5と、が形成されている。
また、図3に示すように、摺動型4と可動型3との間には、サイドフレーム11のコ字状断面を構成する下壁11aを鋳造するキャビティC6が形成されている。
【0021】
摺動型4は、固定型2から離反させた状態の可動型3に対して左右方向に型開きができるようになっている。なお、摺動型4は、図3に示すように、駆動ロッド4aによって可動型3に対して摺動するようになっている。ちなみに、本実施形態での駆動ロッド4aは、油圧シリンダなどの駆動源によって摺動型4を進退させるものを想定している。
【0022】
また、摺動型4は、図3に示すように、摺動中子5と、この摺動中子5のストッパ6と、を備えている。
図4は、摺動中子5をストッパ6でロックした様子を示す部分拡大斜視図である。
図4に示すように、摺動中子5は、略円柱状の中子本体5aを有している。
また、摺動中子5は、中子本体5aの底面から下方に延びるロッド部5bを有している。
また、摺動中子5は、図3に示すように、ロッド部5bの下端に接続される油圧シリンダ5cを備えている。この油圧シリンダ5cは、特許請求の範囲にいう「第1可動機構」に相当する。
【0023】
図3に示す油圧シリンダ5cは、図3のV部の部分拡大図である図5に示すように、ロッド部5bを介して中子本体5aを上下方向(可動型3(図3参照)の可動方向)に進退可能に移動させる。これにより中子本体5aは、図5に示す摺動型4のキャビティ形成面Msよりも中子本体5aの先端が後退するように摺動型4の内部に引き込まれ、又はキャビティ形成面Msよりも摺動型4の外側に押し出される。
【0024】
そして、図5に示すように、中子本体5aの先端が鋳造位置P1に設定されることで、中子本体5aは、固定型2(図3参照)との間でダンパベース15(図3参照)を鋳造するキャビティC4(図3参照)を形成する。
また、本実施形態での中子本体5aは、後記する鋳造方法の予備押出し工程S108(図6参照)において、図5に示すように、鋳造位置P1よりもさらに突出した限界位置P2(以下、突出限界位置P2と称する)まで移動可能となっている。
【0025】
図3に示すように、ストッパ6は、ロッド部6bを介して油圧シリンダ6cに接続されている。油圧シリンダ6cは、特許請求の範囲にいう「第2可動機構」に相当する。
ストッパ6は、図5に示すように、中子本体5aの底面5a1に当接することで摺動中子5をロックする。
具体的には、ストッパ6は、中子本体5aの先端を前記の鋳造位置P1に位置決めするロック位置に配置される。
また、ストッパ6は、図3に示すように、油圧シリンダ6cによって左右方向に移動することで摺動中子5に対して接離可能となっている。すなわちストッパ6は、摺動中子5から離反することで摺動中子5のロックを解除するロック解除位置に配置されることとなる。
【0026】
また、図5に示すように、中子本体5aの底面5a1に当接するストッパ6の上面6aは、ストッパ6の移動方向D1に対して傾斜している。具体的には、ストッパ6の上面6aは、ストッパ6の先端に向かうほど下方に変位するように傾斜している。
これにより中子本体5aは、図5に示すように、ストッパ6がストッパ6の移動方向D1に変位した際に、これに応じて摺動中子5は、中子本体5aの底面5a1が上面6a上で摺動することで、移動方向D2に変位する。
すなわち、ストッパ6は、移動方向D1における位置を調整することで中子本体5aの先端を鋳造位置P1に位置決めしてロックすることができる。
【0027】
ちなみに、本実施形態では、ストッパ6と中子本体5aの底面5a1との接触面(ストッパ6の上面6a)が移動方向D1に対して傾斜しているが、中子本体5aの底面5a1についてもストッパ6の移動方向D1に対して傾斜する構成とすることもできる。
すなわち、ストッパ6が移動方向D1に変位した際に、これに応じて摺動中子5が移動方向D2に変位する構成であればよい。
したがって、ストッパ6の上面6aと中子本体5aの底面5a1の少なくともいずれか一方がストッパ6の移動方向D1に対して傾斜していればよい。
【0028】
また、ストッパ6は、図4に示すように、先端が二股形状になっている。
そして、図4に示すように、ロック位置のストッパ6は、摺動中子5のロッド部5bを二股形状の内側に接するように配置するとともに、図5に示すように、中子本体5aの底面5a1に当接するようになっている。
【0029】
≪鋳造方法≫
次に、鋳造型1を使用した鋳造方法について主に図3及び図5を参照しながら説明する。
本実施形態の鋳造方法は、[1]ストッパ6を摺動中子5の中子本体5aまで移動させる移動工程と、[2]ストッパ6の位置を調整することで中子本体5aの先端がキャビティC5を形成するように中子本体5aを位置決めしてロックするロック工程と、[3]キャビティC(図1参照)を形成する固定型2の表面と可動型3の表面と摺動型4の表面と、中子本体5aの表面とに離型剤を噴霧して塗布する塗布工程と、[4]可動型3に対する摺動型4の型閉じ工程と、[5]固定型2に対する可動型3の型閉じ工程と、[6]キャビティC(図1参照)内に再生アルミニウムの溶湯を高圧で射出充填する工程と、[7]キャビティC(図1参照)内に再生アルミニウムからなる鋳造品7を形成する工程と、を有している。
【0030】
また、本実施形態の鋳造方法は、[8]固定型2から摺動型4と一体の可動型3を離反させる型開き工程と、[9]鋳造位置P1(図5参照)にある中子本体5aをキャビティC側(固定型2側)に一旦押し込んでから再び鋳造位置P1(図5参照)に戻す予備押出し工程と、[10]予備押出し工程後、ストッパ6をロック解除位置に設定するロック解除工程と、[11]中子本体5aを摺動型4内に引き込む中子引き込み工程と、[12]中子引き込み工程後、摺動型4を可動型3から型開きする摺動型型開き工程と、[13]鋳造品7の取り出し工程と、を有している。
【0031】
本実施形態の鋳造方法は、前記の[1]から[13]の工程を1サイクルとしてこれを繰り返すことで、鋳造品7(図1参照)を連続的に製造する。
図6は、鋳造方法における鋳造サイクルの工程説明図である。なお、図6中、符号5aは摺動中子5(図3参照)の中子本体であり、符号6はストッパであり、符号15は鋳造品7(図2参照)の一部であるダンパベースである。符号P1は中子本体5aの鋳造位置であり、符号P2は中子本体5aの突出限界位置である。
【0032】
図6に示すように、本実施形態の鋳造方法においては、まず[1]の移動工程が実施される。
この工程では、ステップS101に示すように、まず中子本体5aが油圧シリンダ5c(図3参照)によって押し上げられる。なお、押し上げ前の中子本体5aの初期位置は、[10]の中子引き込み工程後の位置である。
そして、ステップS102に示すように、中子本体5aが突出限界位置P2まで押し上げられた状態で、ストッパ6が油圧シリンダ6c(図3参照)によって中子本体5aに向かって移動する。
【0033】
次に、ステップS103に示すように、ストッパ6が中子本体5aの下方に位置した状態で中子本体5aを降下させる。この際、中子本体5a対するストッパ6の位置は、前記のロック位置に設定される。なお、中子本体5aの降下は、中子本体5aの油圧シリンダ6c(図3参照)による引き下げを想定しているが、中子本体5aの自重によるものであってもよい。
そして、ステップS104に示すように、鋳造位置P1の中子本体5aにストッパ6が当接した状態で[2]のロック工程が完了する。
【0034】
次に、この鋳造方法では、ステップS105に示すように、[3]の離型剤の噴霧工程と、[4]の摺動型4の型閉じ工程と、[5]の可動型3の型閉じ工程と、が実施される。これにより溶湯を鋳込むキャビティC(図1参照)が形成される。その後、ステップS106に示すように、[6]のキャビティC内への溶湯の高圧射出充填工程と、[7]のダンパベース15(鋳造品)の形成工程とが実施される。そして、型内からの鋳造品7(図1参照)の取り出しにあたって、まず摺動型4と一体となった可動型3の型開き工程が実施される。図示は省略するが、摺動型4における摺動中子5(中子本体5a)の上面に形成されたダンパベース15(鋳造品7(図1参照)の一部)は、固定型2(図3参照)に対して離間する。この[8]の型開き工程では、次の予備押出し工程において中子本体5aの押出しが可能なようにダンパベース15の上方にスペースが確保される。
【0035】
[9]の予備押出し工程においては、ステップS107に示すように、鋳造位置P1の中子本体5aが油圧シリンダ5c(図3参照)によって突出限界位置P2まで押し上げられる。次いで、ステップS108に示すように、中子本体5aは、突出限界位置P2から鋳造位置P1まで油圧シリンダ5c(図3参照)によって引き下げられる。
これにより[9]の予備押出し工程においては、中子本体5a上のダンパベース15(鋳造品)は、わずかな弾性変形をともなって中子本体5aから離れる。中子本体5aとダンパベース15との間にはクリアランスが形成される。
【0036】
[10]のロック解除工程においては、ステップS109に示すように、ストッパ6は、油圧シリンダ6c(図3参照)によって中子本体5aから離反するように移動することでロック解除位置に設定される。
次いで、[11]の中子引き込み工程においては、ステップS110に示すように、中子本体5aが油圧シリンダ5c(図3参照)によって摺動型4(図3参照)内に引き込まれる。
その後、S111に示すように、ステップ[12]の摺動型型開き工程と、[13]の鋳造品7(図1参照)の取り出し工程が行われて本実施形態の鋳造方法の1サイクルが終了する。そして、前記のように、この鋳造サイクルが繰り返されることで鋳造品7(図1参照)が連続して製造される。
【0037】
≪作用効果≫
次に、本実施形態に係る鋳造型1及び鋳造方法の奏する作用効果について説明する。
本実施形態の鋳造型1は、キャビティCの一部を構成する摺動型4に摺動中子5とその可動機構である油圧シリンダ5cを備えている。
【0038】
このような鋳造型1によれば、摺動中子5のメンテナンスを行う際に、従来の鋳造型(例えば特許文献1参照)と異なって、摺動型4のみを主型である可動型3から取り出して容易にメンテナンスを行うことができる。鋳造型1は、メンテナンス工数及びその作業時間を短縮することができる。
【0039】
また、このような鋳造型1によれば、従来の第1の移動中子と第2の移動中子とを係合させて高精度に位置決めしなければならない鋳造型と異なって、簡素な構成でキャビティCを形成するそれぞれの型の位置精度を高めることができる。これにより鋳造型1は、高圧で溶湯が射出された場合でも溶湯の差し込みを抑制することができる。また、鋳造型1は、摺動中子5の熱膨張の影響を軽減することができる。鋳造型1によれば、鋳造品7の成形精度が向上する。
【0040】
また、鋳造型1は、摺動型4に摺動中子5をロックするストッパ6とその可動機構である油圧シリンダ6cを備えている。
このような鋳造型1によれば、従来の第1の移動中子と第2の移動中子とを係合させて高精度に位置決めしなければならない鋳造型と異なって、設計上の自由度を高めることができる。
【0041】
また、このような鋳造型1においては、ロック位置のストッパ6は、摺動中子5のロッド部5bを二股形状の内側に接するように配置するとともに、中子本体5aの底面5a1に当接するようになっている。
【0042】
このような鋳造型1によれば、摺動中子5のロッド部5bの少なくとも2方向が保持されることで、ストッパ6は、摺動中子5のがたつきを防止して効果的に摺動中子5をロックすることができる。
また、このような鋳造型1は、ストッパ6の上面6aで中子本体5aの底面5a1を位置決めすることとなる。
【0043】
このような鋳造型1によれば、摺動中子5に掛かる溶湯の圧力を面で受けるので、摺動中子5の位置ずれや傾きをより確実に防止することができる。これにより鋳造型1は、溶湯の差し込みをより確実に防止することができる。また、鋳造型1によれば、摺動中子5周りの部品の摩耗を抑制することができ、耐用時間が一段と向上する。
【0044】
また、このような鋳造型1においては、ストッパ6と中子本体5aの底面5a1との接触面は、ストッパ6の移動方向D1に対して傾斜している。
このような鋳造型1によれば、ストッパ6の動作時に、ストッパ6と中子本体5aの底面5a1との摺動抵抗を抑制することができる。また、このような鋳造型1によれば、鋳造時に摺動中子5が受けた溶湯圧によってストッパ6に対する摺動中子5のかじりを防止することができる。これにより鋳造型1は、より確実に摺動中子5の動作不良を防止することができる。
【0045】
本実施形態の鋳造型1を使用した鋳造方法は、ストッパ6の移動工程と、ストッパ6による摺動中子5のロック工程とを有している。
このような鋳造方法によれば、摺動中子5の位置連れを防止することができ、鋳造時における溶湯の差し込みをより確実に防止することができる。
【0046】
また、この鋳造方法においては、キャビティC内に鋳造品7を形成した後、鋳造位置にある摺動中子5の予備押出し工程と、摺動中子5の摺動型4内に引き戻す中子引き込み工程と、を有している。
【0047】
このような鋳造方法によれば、中子引き込み工程によって可動型3に対する摺動型4の離型を可能にする。
また、この鋳造方法によれば、予備押出し工程によって鋳造品7の一部であるダンパベース15をわずかに弾性変形させることで摺動中子5(中子本体5a)とダンパベース15との間にクリアランスを形成することができる。これにより摺動中子5に対するダンパベース15の離型を一段と容易に行うことができる。
【0048】
また、この鋳造方法においては、鋳造後のストッパ6には摺動中子5(中子本体5a)の底面5a1を介して鋳造時の鋳造圧が掛かっている。すなわち、図5に示す中子本体5aの底面5a1には、ストッパ6の上面6aが強く押し付けられている。
一方、本実施形態の鋳造方法は、予備押出し工程によって、鋳造圧に基づいてストッパ6に掛かる荷重を解放する。これにより鋳造方法は、ストッパ6による摺動中子5のロック解除を容易に行うことができる。また、鋳造方法によれば、摺動中子5からストッパ6が外れやすくすることで、離型不良と鋳造品7の変形を確実に防止することができる。
【0049】
以上のような鋳造型1及びこの鋳造型1を使用した鋳造方法によれば、離型時の鋳造品7の変形やクラックがなく、成形精度の高い鋳造品7を得られることに加え、安定した離型を行いメンテナンス性向上とサイクルタイム削減を実現することができる。
【0050】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 鋳造型
2 固定型
3 可動型
4 摺動型
5 摺動中子
5a 中子本体
5a1 中子本体の底面
5b 摺動中子のロッド部
5c 油圧シリンダ(第1可動機構)
6 ストッパ
6a ストッパの上面
6c 油圧シリンダ(第2可動機構)
7 鋳造品
C キャビティ
Ms キャビティ形成面
P1 鋳造位置
P2 突出限界位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6