(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142381
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054501
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長村 隆央
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084DA01
3E084DB12
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB11
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】構造の複雑化を抑えつつ、内容液を吐出口部から吐出する際に、吐出口部の上下方向の位置を不変にできる吐出器を提供する。
【解決手段】ポンプ11と、吐出筒部材12と、を備え、ポンプは、シリンダ21と、ステム22と、ステムの上端部に取り付けられ、ステム内と、吐出筒部材の内周面における吐出口部25の開口25bと、を連通する連絡路37を有する押下ヘッド23と、ピストン24と、を備え、押下ヘッドは、吐出筒部材内に上下動可能に挿入された挿入部材38を備え、挿入部材は、吐出筒部材の内周面のうち、吐出口部の開口を上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって摺動する上シール筒41および下シール筒42を備え、連絡路は、挿入部材の外周面のうち、上シール筒と下シール筒との間に位置する部分に開口している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの内容積の増加による内圧減少により、容器本体内の内容液が前記シリンダ内に導入されるとともに、前記シリンダの内容積の減少による内圧上昇により、前記シリンダ内の内容液を送り出すポンプと、
前記ポンプにより送り出された内容液が吐出される吐出口部を有し、上下方向に延びる吐出筒部材と、を備え、
前記ポンプは、
前記シリンダと、
上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムと、
前記ステムの上端部に取り付けられ、前記ステム内と、前記吐出筒部材の内周面における前記吐出口部の開口と、を連通する連絡路を有する押下ヘッドと、
前記ステムの上下動に連係し、かつ前記シリンダ内に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、を備え、
前記押下ヘッドは、前記吐出筒部材内に上下動可能に挿入された挿入部材を備え、
前記挿入部材は、前記吐出筒部材の内周面のうち、前記吐出口部の開口を上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって摺動する上シール筒および下シール筒を備え、
前記連絡路は、前記挿入部材の外周面のうち、前記上シール筒と前記下シール筒との間に位置する部分に開口している、吐出器。
【請求項2】
前記シリンダを前記容器本体の口部に固定する有頂筒状の装着キャップを備え、
前記装着キャップは、環状の頂壁を有し、
前記頂壁に上方に向けて延びる装着筒が形成され、
前記吐出筒部材は、前記装着筒に外嵌されて固定されている、請求項1に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、押下ヘッドを押下してシリンダ内の内容液を吐出口部から吐出する際に、吐出口部の上下方向の位置を不変にできる吐出器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の吐出器では、構造の複雑化を抑えることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、構造の複雑化を抑えつつ、内容液を吐出口部から吐出する際に、吐出口部の上下方向の位置を不変にできる吐出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る吐出器は、シリンダの内容積の増加による内圧減少により、容器本体内の内容液が前記シリンダ内に導入されるとともに、前記シリンダの内容積の減少による内圧上昇により、前記シリンダ内の内容液を送り出すポンプと、前記ポンプにより送り出された内容液が吐出される吐出口部を有し、上下方向に延びる吐出筒部材と、を備え、前記ポンプは、前記シリンダと、上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムと、前記ステムの上端部に取り付けられ、前記ステム内と、前記吐出筒部材の内周面における前記吐出口部の開口と、を連通する連絡路を有する押下ヘッドと、前記ステムの上下動に連係し、かつ前記シリンダ内に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、を備え、前記押下ヘッドは、前記吐出筒部材内に上下動可能に挿入された挿入部材を備え、前記挿入部材は、前記吐出筒部材の内周面のうち、前記吐出口部の開口を上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって摺動する上シール筒および下シール筒を備え、前記連絡路は、前記挿入部材の外周面のうち、前記上シール筒と前記下シール筒との間に位置する部分に開口している。
【0007】
上記態様によれば、押下ヘッドを吐出筒部材に対して押下すると、ステムおよびピストンがシリンダに対して下降し、シリンダの内容積の減少による内圧上昇により、シリンダ内の内容液が、ステム内、および連絡路を流れる。この過程において、挿入部材が、吐出筒部材に対して下降し、上シール筒および下シール筒がそれぞれ、吐出筒部材の内周面のうち、吐出口部の開口を上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって下方に向けて摺動する。これにより、連絡路を通過した内容液は、吐出口部内に流入して外部に吐出される。
以上より、押下ヘッドを押下したときに、吐出口部の上下方向の位置を変えずに、シリンダ内の内容液を吐出口部から吐出することができる。
挿入部材の一部品に、上シール筒、下シール筒、および連絡路の開口が形成されているので、内容液を吐出口部から吐出する際に、吐出口部の上下方向の位置を不変にできる吐出器の構造の複雑化を抑えることができる。
【0008】
前記シリンダを前記容器本体の口部に固定する有頂筒状の装着キャップを備え、前記装着キャップは、環状の頂壁を有し、前記頂壁に上方に向けて延びる装着筒が形成され、前記吐出筒部材は、前記装着筒に外嵌されて固定されてもよい。
【0009】
吐出筒部材が、装着キャップの装着筒に外嵌されて固定されているので、吐出筒部材を安定して固定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、構造の複雑化を抑えつつ、内容液を吐出口部から吐出する際に、吐出口部の上下方向の位置を不変にできる吐出器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出器の半縦断面図である。
【
図2】
図1の吐出器において、押下ヘッドを下降端位置に位置させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器を説明する。
本実施形態に係る吐出器1は、
図1に示されるように、ポンプ11と、吐出筒部材12と、装着キャップ13と、を備え、内容液が収容される容器本体の口部に装着される。
【0013】
ポンプ11は、シリンダ21と、ステム22と、押下ヘッド23と、ピストン24と、を備え、シリンダ21の内容積の増加による内圧減少により、容器本体内の内容液がシリンダ21内に導入されるとともに、シリンダ21の内容積の減少による内圧上昇により、シリンダ21内の内容液を吐出筒部材12の吐出口部25に送り出す。
【0014】
シリンダ21、ステム22、押下ヘッド23、およびピストン24は、共通軸と同軸に配設されている。
以下、前記共通軸を軸線Oといい、軸線O方向に沿って押下ヘッド23側を上側といい、軸線O方向に沿ってシリンダ21側を下側といい、軸線Oに沿う方向を上下方向という。上下方向から見て軸線Oに交差する方向を径方向といい、上下方向から見て軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
装着キャップ13は、環状の頂壁13aを有する有頂筒状に形成され、口部に装着される。頂壁13aに、上方に向けて延びる装着筒13bが形成されている。装着筒13bは、軸線Oと同軸に配設されている。装着筒13bの上端部には、径方向の内側に向けて突出し、下方を向く下面を有する段部が形成されている。
【0016】
吐出筒部材12は、上下方向に延びる筒状に形成され、軸線Oと同軸に配設されている。吐出筒部材12は、ポンプ11により送り出された内容液が吐出される吐出口部25を有している。吐出口部25は、吐出筒部材12の上部から径方向の外側に向けて延びている。吐出口部25における径方向の外端部に、内容液を外部に吐出する吐出口25aが形成されている。吐出筒部材12の下部は、装着キャップ13の装着筒13bに外嵌されて固定されている。吐出筒部材12の下部の内面と、装着キャップ13における頂壁13aおよび装着筒13bと、の間には、外気を、装着筒13b内を通して、後述する連絡孔32に到達させる外気導入路Xが設けられている。
【0017】
シリンダ21の上端部には、径方向の外側に向けて突出し、全周にわたって連続して延びるフランジ部21aが形成されている。フランジ部21aは、装着キャップ13の周壁の上端部内に嵌合されている。フランジ部21aは、口部の上端開口縁と、装着キャップ13の頂壁13aの下面と、により上下方向に挟まれる。シリンダ21は、装着キャップ13により口部に固定される。
【0018】
シリンダ21は、大径部21bと、弁筒部21cと、小径部21dと、を備え、これら21b~21dが、上方から下方に向けてこの順に連ねられて構成されている。
【0019】
大径部21bには、大径部21bを径方向に貫通する圧逃がし孔31および連絡孔32が形成されている。圧逃がし孔31は、連絡孔32よりも下方に位置している。大径部21bの内周面には、圧逃がし溝33が形成されている。圧逃がし溝33は、圧逃がし孔31よりも下方に位置している。圧逃がし溝33は、周方向の全長に亘って延びている。なお、圧逃がし溝33は、周方向に間欠的に設けられていてもよい。
弁筒部21cは、上方から下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。弁筒部21cの内周面に、ボール弁34が上方に向けて離反自在に載置されている。ボール弁34は、大径部21b内の加圧時に容器本体内と大径部21b内との連通を遮断する一方、大径部21b内の減圧時に容器本体内と大径部21b内とを連通させる逆止弁である。
小径部21dは、弁筒部21cから下方に向けて延び、吸上げパイプ21eの上端部が嵌合されている。吸上げパイプ21eの下端開口は、容器本体内の底部に位置する。
【0020】
ピストン24は、ステム22の上下動に連係し、かつシリンダ21内に上下摺動可能に嵌合されている。ピストン24は、シリンダ21の大径部21bの内周面のうち、圧逃がし孔31と圧逃がし溝33との間に位置する部分に当接している。ピストン24は、
図2に示されるように、下降端位置に位置したときに、圧逃がし溝33に到達する。
ピストン24は、付勢部材35の上端部を支持している。付勢部材35の下端部は、シリンダ21の大径部21bの下端部内に支持されている。付勢部材35は、コイルばねとなっている。
【0021】
図示の例では、ポンプ11は、ピストン24から上方に向けて延びる筒部26と、筒部26から上方に向けて延びる軸部27と、筒部26および軸部27に外嵌されたシール筒28と、を備えている。筒部26、軸部27、およびシール筒28は、軸線Oと同軸に配設されている。
【0022】
軸部27は、シリンダ21の上端開口より上方に位置している。軸部27の上端部は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。
シール筒28は、シリンダ21の上端開口から上方に突出している。シール筒28の上端部は、軸部27の上端部より下方に位置している。シール筒28の下端部は、シリンダ21の大径部21bの内周面のうち、連絡孔32よりも上方に位置する部分に当接している。シール筒28の下端部は、
図2に示されるように、シール筒28が下降端位置に位置したときに、連絡孔32と圧逃がし孔31との間に位置する。シール筒28の下降時に、シール筒28のうち、下端部より上方に位置する部分の外周面と、大径部21bの内周面と、の間には、径方向の隙間が設けられる。この隙間に連絡孔32が開口している。
シール筒28の内周面と、筒部26および軸部27それぞれの外周面と、の間に、上下方向に延び、上方に向けて開口した連通路29が形成されている。連通路29は、筒部26を径方向に貫く貫通孔を通して筒部26内に連通している。シール筒28の外周面と、装着キャップ13の装着筒13bの内周面と、の間に、径方向の隙間が設けられている。
【0023】
ステム22は、上筒部22aと、下筒部22bと、を備え、これら22a、22bが、上方から下方に向けてこの順に連ねられて構成されている。
下筒部22bは、シール筒28の外周面と、装着キャップ13の装着筒13bの内周面と、の間に差し込まれている。下筒部22bの下端開口縁は、シリンダ21のフランジ部21aの上面と上下方向に隙間を設けた状態で対向している。下筒部22bの内周面に、シール筒28の上端部の外周面が液密に当接している。下筒部22bの外周面と、装着筒13bの内周面と、の間には、外気導入路Xに連通する隙間が設けられている。下筒部22bには、径方向の外側に向けて突出し、装着筒13bの上端部に形成された段部の下面に当接、若しくは近接する規制突起22cが形成されている。
上筒部22aの下端開口縁の内周縁部に、軸部27の上端部が、全周にわたって液密に当接している。これにより、上筒部22a内と下筒部22b内との連通が遮断されるとともに、ステム22は、上方付勢状態で下方移動可能に支持されている。
【0024】
押下ヘッド23は、ステム22の上端部に取り付けられ、ステム22内と、吐出筒部材12の内周面における吐出口部25の開口25bと、を連通する連絡路37を有している。
押下ヘッド23は、挿入部材38と、押下釦39と、を備えている。
【0025】
挿入部材38は、筒状に形成され、ステム22の上端部に外嵌され、吐出筒部材12内に上下動可能に挿入されている。挿入部材38の上端部は、ステム22の上端部より上方に位置している。挿入部材38は、吐出筒部材12の内周面のうち、吐出口部25の開口25bを上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって摺動する上シール筒41および下シール筒42を備えている。連絡路37は、挿入部材38の外周面のうち、上シール筒41と下シール筒42との間に位置する部分に開口している。
ステム22の上端開口に対して、上シール筒41および連絡路37は上方に位置し、下シール筒42は下方に位置している。
【0026】
図2に示されるように、挿入部材38が下降端位置に位置したときに、上シール筒41は、吐出筒部材12の内周面における吐出口部25の開口25bより上方に位置し、下シール筒42は、外気導入路Xより上方に位置し、挿入部材38の外周面における連絡路37の開口は、吐出筒部材12の内周面における吐出口部25の開口周縁部の下端部12aと径方向で対向している。吐出筒部材12の内周面における吐出口部25の開口周縁部の下端部12aは、吐出口部25の内周面の下端部から下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。
【0027】
押下釦39は、有頂筒状に形成され、吐出筒部材12の上端部に下方移動可能に外装された周壁39aを有している。周壁39aの下端部の内周面、および吐出筒部材12の上端部の外周面には、互いが上下方向に係合することで、押下釦39が吐出筒部材12から上方に外れるのを規制する規制部が各別に設けられている。
【0028】
押下釦39の頂壁に、下方に向けて突出し、上シール筒41の上端面に当接、若しくは近接する筒体39bが形成されている。押下釦39の頂壁において、筒体39bより径方向の内側に位置する部分に、下方に向けて突出し、挿入部材38内に嵌合され、下端面がステム22の上端開口縁に当接した押下軸44が形成されている。押下軸44のうち、下端部より上方に位置する部分が、挿入部材38内に嵌合されている。押下軸44の下端部の外周面は、挿入部材38の内周面から径方向の内側に離れている。押下軸44の下端部の外周面に、挿入部材38の内周面における連絡路37の開口が径方向に対向している。押下軸44の外周面には、押下軸44の下端面から上方に向けて延びる連絡溝45が形成されている。連絡溝45は、押下軸44に周方向に間隔をあけて複数設けられている。連絡溝45の下端部は、ステム22の上端開口に開口している。連絡溝45の上端部の上下方向の位置は、挿入部材38の内周面における連絡路37の開口の上下方向の位置と同じになっている。
【0029】
次に、吐出器1の作用を説明する。
【0030】
押下ヘッド23を吐出筒部材12に対して押し下げると、ステム22、シール筒28、軸部27、筒部26、およびピストン24が、付勢部材35の付勢力に抗して押し下げられる。
この際、上シール筒41および下シール筒42がそれぞれ、吐出筒部材12の内周面のうち、吐出口部25の開口25bを上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって下方に向けて摺動する。また、ピストン24が、シリンダ21の大径部21bの内周面を下方に向けて摺動し、大径部21bの内容積が減少することで、大径部21b内が加圧される。大径部21bの内圧上昇により、弁筒部21c内のボール弁34が、大径部21b内と容器本体内との連通を遮断する。これにより、大径部21b内で加圧された内容液が、筒部26内、および連通路29を通して、シール筒28の上端部と、軸部27の上端部の外周面と、ステム22の上筒部22aの下端開口縁と、により囲まれた蓄圧空間Yに流入する。その結果、蓄圧空間Yが加圧される。
【0031】
押下ヘッド23が吐出筒部材12に対して下降する過程において、大径部21b内の圧力と蓄圧空間Yの圧力は同等になる。しかし、シール筒28の上端部の受圧面積がピストン24の受圧面積よりも大きいため、蓄圧空間Yの内容液から軸部27が下向きに受ける力は、大径部21b内の内容液から軸部27が上向きに受ける力よりも大きくなる。そして、軸部27が下向きに受ける力が、付勢部材35の上方付勢力よりも大きくなると、軸部27がステム22に対して下降する。これにより、軸部27の上端部が、上筒部22aの下端開口を開放し、蓄圧空間Yと上筒部22a内とが連通する。したがって、蓄圧空間Yで蓄圧された内容液が、連絡溝45、および連絡路37を流通した後、吐出口部25の吐出口25aを通して外部に吐出される。
【0032】
図2に示すように、押下ヘッド23が下降端位置まで押し下げられると、シール筒28の下端部は、連絡孔32と圧逃がし孔31との間に位置し、ピストン24は圧逃がし溝33と径方向に向かい合う。すると、ピストン24は、大径部21bの内周面から離間する。そのため、大径部21b内が圧逃がし孔31を通じて容器本体内に連通する。これにより、大径部21b内の内容液の少なくとも一部、および大径部21b内の空気が、容器本体内に流出する。その結果、大径部21b内の残圧が開放される。
【0033】
大径部21b内および蓄圧空間Yそれぞれの圧力が低下すると、付勢部材35の上方付勢力により、軸部27がステム22に対して上昇し、軸部27の上端部が上筒部22aの下端開口を閉塞する。
押下ヘッド23の押し下げを解除すると、付勢部材35の上方付勢力によって、ピストン24、筒部26、軸部27、シール筒28が、ステム22とともに上昇する。
この過程において、ピストン24が大径部21bの内周面を摺動することで、大径部21bの内容積(大径部21b内と筒部26内とで囲まれた部分の容積)が増加して、大径部21b内が減圧される。大径部21bの内圧減少により、ボール弁34が弁筒部21cの内周面から上方に離反して、大径部21b内と容器本体内とが連通し、容器本体内の内容液が大径部21b内に吸い上げられる。
【0034】
ここで、押下ヘッド23を吐出筒部材12に対して押し下げると、
図2に示すように、シール筒28の下端部が、大径部21bの連絡孔32を下方に超えることで、連絡孔32が、シール筒28のうち、下端部より上方に位置する部分の外周面と、大径部21bの内周面と、の間の径方向の隙間、並びに、ステム22の外周面と、装着筒13bの内周面と、の間の径方向の隙間を通して、外気導入路Xに連通する。
この状態で、押下ヘッド23が上昇し、容器本体内の内容液が大径部21b内に供給されて、容器本体内が負圧になると、外気が、外気導入路X、装着筒13bの内周面とステム22の外周面との間、ステム22の下端開口縁とシリンダ21のフランジ部21aの上面との間、シリンダ21の大径部21bの内周面とシール筒28の外周面との間、並びに、連絡孔32を通して容器本体内に流入し、容器本体内の負圧が解消される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態による吐出器1によれば、押下ヘッド23を吐出筒部材12に対して押下すると、ステム22およびピストン24がシリンダ21に対して下降し、シリンダ21の大径部21bの内容積の減少による内圧上昇により、大径部21b内の内容液が、ステム22内、および連絡路37を流れる。この過程において、挿入部材38が、吐出筒部材12に対して下降し、上シール筒41および下シール筒42がそれぞれ、吐出筒部材12の内周面のうち、吐出口部25の開口25bを上下方向に挟む両側に位置する各部分を、全周にわたって下方に向けて摺動する。これにより、連絡路37を通過した内容液は、吐出口部25内に流入して外部に吐出される。
以上より、押下ヘッド23を押下したときに、吐出口部25の上下方向の位置を変えずに、シリンダ21内の内容液を吐出口部25から吐出することができる。
挿入部材38の一部品に、上シール筒41、下シール筒42、および連絡路37の開口が形成されているので、内容液を吐出口部25から吐出する際に、吐出口部25の上下方向の位置を不変にできる吐出器1の構造の複雑化を抑えることができる。
【0036】
吐出筒部材12が、装着キャップ13の装着筒13bに外嵌されて固定されているので、吐出筒部材12を安定して固定することができる。
【0037】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
ポンプ11は、例えば、シール筒28、軸部27、筒部26、および蓄圧空間Yを有しなくてもよい。
【0039】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 吐出器
11 ポンプ
12 吐出筒部材
13 装着キャップ
13a 装着キャップの頂壁
13b 装着筒
21 シリンダ
22 ステム
23 押下ヘッド
24 ピストン
25 吐出口部
25b 吐出口部の開口
37 連絡路
38 挿入部材
41 上シール筒
42 下シール筒