(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142382
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】充放電制御装置及びこれを備えたバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054504
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福地 晋也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】村川 惠一
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503EA09
5G503GA01
(57)【要約】
【課題】回路規模が小さいセル数判定装置、充放電制御装置、及びバッテリ装置を提供すること。
【解決手段】直列に接続された複数のセルを搭載したバッテリパックにおける増減可能な複数のセルに対応して設けられた複数の差動増幅器と、複数の差動増幅器に対応して設けられた複数の出力回路を備え、差動増幅器の入力差動対は異極ゲートNMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のセルを搭載したバッテリパックのセル数を判定するセル数判定回路であって、
前記バッテリパックにおける増減可能な複数のセルに対応して設けられた複数の差動増幅器と、
前記複数の差動増幅器に対応して設けられた複数の出力回路と、
を備え、
前記差動増幅器の入力差動対は、異極ゲートNMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成した
ことを特徴とするセル数判定回路。
【請求項2】
前記差動増幅器の入力差動対は、前記異極ゲートNMOSトランジスタが前記バッテリパックの最高電位端子と接続され、前記NMOSトランジスタが前記増減可能なセルが接続される端子と接続された
ことを特徴とする請求項1に記載のセル数判定回路。
【請求項3】
前記複数の差動増幅器は、前記異極ゲートNMOSトランジスタ側のMOSトランジスタと定電流源が共通に構成された
ことを特徴とする請求項2に記載のセル数判定回路。
【請求項4】
前記バッテリパックの複数の端子が接続される複数の入力端子と、
前記複数の入力端子のうち増減可能な複数のセルに対応した端子と前記バッテリパックの最高電位端子の電圧に基づいて前記バッテリパックのセル数を判定する請求項1から3のいずれかに記載のセル数判定回路と、
前記複数の入力端子の電圧及び前記セル数判定回路の出力信号に基づいて前記バッテリパックの充放電を制御する
ことを特徴とする充放電制御回路。
【請求項5】
直列に接続された複数のセルを搭載したバッテリパックと、
請求項4に記載の充放電制御回路と、
外部端子の間に前記バッテリパックと直列に接続された充放電制御FETと
を備えたことを特徴とするバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル数判定回路を備えた充放電制御装置及びバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのバッテリを構成する直列に接続された複数のセルの中からi番目のセルを選択して、そのセルが一つ上位にある(i-1)番目のセルと接続されている端子と接地電位の間の電圧値を測定する電圧測定部と、i番目のセルの一つ下位にある(i+1)番目のセルの電圧値とi番目のセルの電圧値とを比較してi番目のセルの有無を判定する電圧比較部と、この電圧比較部の比較結果に基づきバッテリにおけるセルの装着数を判定するセル数判定部と、を備えるセル数判定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセル数判定装置は、電圧測定部や電圧比較部の回路規模が大きいという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に顧みてなされたもので、回路規模が小さいセル数判定装置、充放電制御装置、及びバッテリ装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のセル数判定回路は、直列に接続された複数のセルを搭載したバッテリパックのセル数を判定するセル数判定回路であって、前記バッテリパックにおける増減可能な複数のセルに対応して設けられた複数の差動増幅器と、前記複数の差動増幅器に対応して設けられた複数の出力回路と、を備え、前記差動増幅器の入力差動対は、異極ゲートNMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成したことを特徴とする。
また、上記セル数判定回路を備えた充放電制御装置、及びバッテリ装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の充放電制御装置によれば、セル検出回路の差動増幅器の入力差動対を異極ゲートNMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成したため、回路規模が小さいセル数判定装置、充放電制御装置、及びバッテリ装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のセル数判定回路を備えた充放電制御装置及びバッテリ装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態のバッテリ装置のセル数を削減したバッテリが接続された例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の充放電制御装置の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態のセル数判定回路を備えた充放電制御装置及びバッテリ装置を示すブロック図である。
【0010】
バッテリ装置1は、充放電制御装置3と、6直セルのバッテリパック2と、放電制御FET4と、充電制御FET5と、外部端子P+及び外部端子P-を備えている。バッテリパック2は、直列に接続されたセル21~26を備えている。
【0011】
充放電制御装置3は、充放電制御回路30と、PMOSトランジスタPM1~PM6と、異極ゲートNMOSトランジスタNM1及びNM3と、NMOSトランジスタNM2及びNM4と、定電流源I1~I4と、電源端子VDD、接地端子VSS、入力端子VC1~VC6、出力端子CO及びDOを備えている。PMOSトランジスタPM1~PM6と異極ゲートNMOSトランジスタNM1及びNM3とNMOSトランジスタNM2及びNM4と定電流源I1~I4は、セル数判定回路を構成している。
【0012】
バッテリパック2と放電制御FET4及び充電制御FET5は、外部端子P+と外部端子P-の間に直列に接続されている。バッテリパック2のセル21~26は、充放電制御装置3の電源端子VDD、入力端子VC1~VC6、接地端子VSSに夫々接続されている。放電制御FET4のゲートは、充放電制御装置3の出力端子DOに接続されている。充電制御FET5のゲートは、充放電制御装置3の出力端子COに接続されている。
【0013】
セル数判定回路は、セル22の有無、即ち4直セルか否かを検出する第一のセル検出回路と、セル21の有無、即ち5直セルか否かを検出する第二のセル検出回路で構成されている。
【0014】
第一のセル検出回路は、PMOSトランジスタPM1、PM2及びPM3と、異極ゲートNMOSトランジスタNM1と、NMOSトランジスタNM2と、定電流源I1及びI3を備えている。
PMOSトランジスタPM1及びPM2と異極ゲートNMOSトランジスタNM1とNMOSトランジスタNM2と定電流源I1は差動増幅器を構成する。PMOSトランジスタPM3及び定電流源I3は出力回路を構成する。
【0015】
異極ゲートNMOSトランジスタNM1のゲートは、入力端子VC1が接続され、電圧VDDが入力されている。NMOSトランジスタNM2のゲートは、入力端子VC5が接続され、入力端子VC5の電圧VC5が入力されている。
【0016】
差動増幅器の入力差動対は、異極ゲートNMOSトランジスタNM1とNMOSトランジスタNM2で構成する。異極ゲートNMOSトランジスタNM1の閾値Vthは1.7Vであり、NMOSトランジスタNM2の閾値Vthは0.7Vである。これらのトランジスタは、ゲートの極性が異なるだけでその他の構成は同じであるため、温度特性やオフセットは等しく、閾値Vthのバラツキの傾向も等しい。従って、これらのトランジスタの閾値Vthの差は、精度よく1.0Vに設定することが出来る。即ち、差動増幅器は、入力差動対にオフセットを設けたりすることなく、入力電圧の1.0V以内の差を検出することが出来る。
【0017】
第二のセル検出回路は、PMOSトランジスタPM4、PM5及びPM6と、異極ゲートNMOSトランジスタNM3と、NMOSトランジスタNM4と、定電流源I2及びI4を備えている。
PMOSトランジスタPM4及びPM5と異極ゲートNMOSトランジスタNM3とNMOSトランジスタNM4と定電流源I2は差動増幅器を構成する。PMOSトランジスタPM6及び定電流源I4は出力回路を構成する。
【0018】
異極ゲートNMOSトランジスタNM3のゲートは、入力端子VC1が接続され、電圧VDDが入力されている。NMOSトランジスタNM4のゲートは、入力端子VC6が接続され、入力端子VC6の電圧VC6が入力されている。
【0019】
差動増幅器の入力差動対は、異極ゲートNMOSトランジスタNM3とNMOSトランジスタNM4で構成する。異極ゲートNMOSトランジスタNM3の閾値Vthは1.7Vであり、NMOSトランジスタNM4の閾値Vthは0.7Vである。これらのトランジスタは、ゲートの極性が異なるだけでその他の構成は同じであるため、温度特性やオフセットは等しく、閾値Vthのバラツキの傾向も等しい。従って、これらのトランジスタの閾値Vthの差は、精度よく1.0Vに設定することが出来る。即ち、差動増幅器は、入力差動対にオフセットを設けたりすることなく、入力電圧の1.0V以内の差を検出することが出来る。
【0020】
充放電制御回路30は、第1~6の入力端子に入力端子VC1~VC6が接続され、夫々の端子電圧が入力され、各セルの電圧を監視している。また、充放電制御回路30は、第一のセル数検出端子に第一のセル検出回路の出力端子が接続され、第二のセル数検出端子に第二のセル検出回路の出力端子が接続され、バッテリパックのセル数を検出している。
【0021】
図2は、本実施形態のバッテリ装置のセル数を4に削減したバッテリパック2が接続された例を示すブロック図である。バッテリパック2と充放電制御装置3の接続以外は
図1と同様であるため、説明は省略する。
【0022】
バッテリパック2は、セル21とセル22が削減されたため、夫々の出力端子はセル26の正極端子と接続され、従って電圧VDDが出力される。充放電制御装置3は、入力端子VC5及びVC6に電圧VDDが入力され、従ってNMOSトランジスタNM2及びNM4のゲートは、電圧VDDが入力される。
【0023】
本実施形態の充放電制御装置3のセル数判定回路の動作について説明する。ここで、各セルの電圧は3Vとする。
【0024】
先ず、
図1の様に6直セルのバッテリパック2が充放電制御装置3に接続された場合について説明する。
【0025】
第一のセル検出回路の異極ゲートNMOSトランジスタNM1のゲートは電圧VDDが入力され、NMOSトランジスタNM2のゲートは入力端子VC5の電圧VC5が入力される。電圧VDDは18Vであり、電圧VC5は6Vである。従って、第一のセル検出回路は、出力端子からセルが接続されていることを示すLレベルの信号を出力する。同様に、第二のセル検出回路も、出力端子からLレベルの信号を出力する。
【0026】
充放電制御回路30は、第一のセル数検出端子及び第二のセル数検出端子にLレベルの信号を入力されるので、接続されているバッテリパック2が6直セルであると判断する。
【0027】
次に、
図2の様に4直セルのバッテリパック2が充放電制御装置3に接続された場合について説明する。
【0028】
第一のセル検出回路の異極ゲートNMOSトランジスタNM1及びNMOSトランジスタNM2のゲートは電圧VDDが入力される。この時、異極ゲートNMOSトランジスタNM1の閾値Vthは1.7Vであり、NMOSトランジスタNM2の閾値Vthは0.7Vである。入力差動対には同じ電圧VDDが入力されるが、閾値Vthの差によって、NMOSトランジスタNM2に流れる電流はPMOSトランジスタPM2に流れる電流よりも多くなる。
【0029】
従って、第一のセル検出回路は、出力端子からセルが接続されていないことを示すHレベルの信号を出力する。同様に、第二のセル検出回路も、出力端子からHレベルの信号を出力する。
【0030】
充放電制御回路30は、第一のセル数検出端子及び第二のセル数検出端子にHレベルの信号を入力されるので、接続されているバッテリパック2が4直セルであると判断する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のセル数判定回路は、セル検出回路の差動増幅器の入力差動対を異極ゲートNMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成したため、簡便な回路でありながら精度よくセルの有無を検出することが可能である。
【0032】
図3は、本実施形態の充放電制御装置3の他の例を示すブロック図である。
図3の充放電制御装置3は、第二のセル検出回路のPMOSトランジスタPM4と異極ゲートNMOSトランジスタNM3及び定電流源I2を、第一のセル検出回路のPMOSトランジスタPM1と異極ゲートNMOSトランジスタNM1及び定電流源I3と共通にして、即ち、異極ゲートNMOSトランジスタNM3側のMOSトランジスタと定電流源を共通にして、素子数を削減した構成である。
【0033】
回路の動作は、
図1の充放電制御装置3と同様であるため説明を省略する。
このように構成した充放電制御装置3は、セル数検出回路が増加した場合でも最小限の素子の増加で構成することが可能である。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、6直セル~4直セルのバッテリパックに対して第一のセル検出回路と第二のセル検出回路を備えた構成として説明したが、バッテリパックのセル数や増減可能なセル数はこれに限定されず、従ってセル数判定回路を構成するセル検出回路の数も限定されない。
【符号の説明】
【0035】
1 バッテリ装置
2 バッテリパック
3 充放電制御装置
4 放電制御FET
5 充電制御FET
30 充放電制御回路
PM1、PM2、PM3、PM4、PM5、PM6 PMOSトランジスタ
NM1、NM3 異極ゲートNMOSトランジスタ
NM2、NM4 NMOSトランジスタ
I1、I2、I3、I4 定電流源