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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142396
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】物品用消毒剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20241003BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20241003BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241003BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20241003BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01P7/02
A01P3/00
A01N47/44
A01N25/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054521
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AC04
4H011BA05
4H011BB04
4H011BB11
4H011BC19
4H011BC20
4H011DH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】机や椅子などの家具、ぬいぐるみなどの種々の玩具、布団、毛布、枕などの寝具、或いはセーター、コートなどの衣服、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができるとともに、さらに、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンを低減することができる物品用消毒剤を提供することを目的とする。
【解決手段】第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種と、スメクタイトに属する粘土鉱物と、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする物品用消毒剤であって、前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種である前記物品用消毒剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種と、
スメクタイトに属する粘土鉱物と、
非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする物品用消毒剤。
【請求項2】
前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の物品用消毒剤。
【請求項3】
前記第四級アンモニウム塩が、前記第四級アンモニウム塩が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサドデシルトリメチリアンモニウム、臭化テトラアンモニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の物品用消毒剤。
【請求項4】
リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸から選ばれる少なくとも1種である酸と、前記酸に対応するナトリウム塩又はカリウム塩を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の物品用消毒剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、家具、玩具、寝具、衣類などの物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるとともに、それら物品に付着したアレルゲンを低減するための消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるために、有効成分としてエタノール、酸などを配合した手指用の消毒剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エタノール、リン酸、リン酸塩、保湿剤、増粘剤などを含有する比較的粘度の高い消毒剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、炭素数1~3の低級アルコールを20~60w/v%と、酸を0.1~3.0w/v%と、酸の塩を0.1~3.0w/v%と、第四級アンモニウム塩と、水を含有し、25℃におけるpHが3.0~5.0である手指消毒剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-166134号公報
【特許文献2】特開2021-169432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の手指用の消毒剤では、机や椅子などの家具、ぬいぐるみなどの種々の玩具、布団、毛布、枕などの寝具、或いはセーター、コートなどの衣服、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができるとしても、それらの物品に付着したアレルゲンを低減や抑制することは困難であるという課題があった。なお、アレルゲンは、特に居住空間において、ダニの死骸や花粉などが粉砕されて生じた微粒子や花粉そのものなどに由来し、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎などの種々のアレルギー反応を示す原因である。
【0007】
そこで、本発明では、机や椅子などの家具、ぬいぐるみなどの種々の玩具、布団、毛布、枕などの寝具、或いはセーター、コートなどの衣服、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができるとともに、さらに、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンを低減することができる物品用消毒剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕すなわち、本発明は、第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種と、スメクタイトに属する粘土鉱物と、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする物品用消毒剤である。
【0009】
〔2〕そして、前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕に記載の物品用消毒剤である。
【0010】
〔3〕そして、前記第四級アンモニウム塩が、前記第四級アンモニウム塩が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサドデシルトリメチリアンモニウム、臭化テトラアンモニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の物品用消毒剤である。
【0011】
〔4〕そして、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸から選ばれる少なくとも1種である酸と、前記酸に対応するナトリウム塩又はカリウム塩を含有することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の物品用消毒剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、机や椅子などの家具、ぬいぐるみなどの種々の玩具、布団、毛布、枕などの寝具、或いはセーター、コートなどの衣服、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができるとともに、さらに、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の物品用消毒剤に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0014】
本発明の物品用消毒剤に用いられる第四級アンモニウム塩は、一般的に化学式N+RX-(R:アルキル基,X-:塩化物イオンなど)で表されるように、第四級アンモニウムイオンとカウンターアニオンとからなる化合物である。第四級アンモニウム塩としては、具体的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサドデシルトリメチリアンモニウム、臭化テトラアンモニウムなどが好ましい。これらの第四級アンモニウム塩は単独で使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。このように、第四級アンモニウム塩が含まれることによって、細菌、カビを死滅することができ、また、コロナウイルス(とりわけCOVID-19)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのエンベロープを有するRNAウイルスやヘルペスウイルス、天然痘ウイルスなどのエンベロープを有するDNAウイルスに対して、エンベロープが破壊されやすくなり、より不活化することができる。
【0015】
そして、第四級アンモニウム塩に代えて、又は第四級アンモニウム塩とともに、クロルヘキシジングルコン酸塩を用いることもできる。クロルヘキシジングルコン酸塩が含まれることによって、第四級アンモニウム塩と同様に、細菌、カビを死滅することができ、また、ウイルスを不活化することができる。
【0016】
第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種の含有割合は、物品用消毒剤のうち、0.01重量%~2.0重量%が好ましく、0.03重量~1.0重量%がさらに好ましい。第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種の含有割合がこの範囲にあると、細菌、カビを死滅することができ、ウイルスを不活化しやすくすることができる。
【0017】
本発明の物品用消毒剤に用いられるスメクタイトに属する粘土鉱物は、層状の結晶構造を有するケイ酸塩である。スメクタイトに属する粘土鉱物の基本的な構造としては、2枚のSi-O四面体シートの間にAl-(OH)又はMg-(OH)の八面体シートが挟まれた2:1構造を基本としている。そして、スメクタイトに属する粘土鉱物は、四面体シートのSi4+や八面体シートAl3+などが一部化数の小さい陽イオンに置換しているため
、層全体が弱い負の電荷を有しているという特性を有している。スメクタイトに属する粘土鉱物により、ダニの生体や死骸など体由来の抗原であるアレルゲンを層全体や層内部などに吸着すると考えられ、当該アレルゲンを低減することができる。具体的に、スメクタイトに属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトなどが好ましい。これらのスメクタイトに属する粘土鉱物は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
スメクタイトに属する粘土鉱物の含有割合は、物品用消毒剤のうち、0.005~1.0重量%が好ましく、0.01~0.5重量%がさらに好ましい。スメクタイトに属する粘土鉱物の含有割合がこの範囲にあると、物品用消毒剤を、家具、玩具、衣類、寝具、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に使用したときにそれらに付着されているアレルゲンを低減することができる。
【0019】
本発明の物品用消毒剤に用いられる非イオン界面活性剤は、陽イオン性や陰イオン性の親水基を有さずエーテル結合やヒドロキシ基などを有し、界面活性を呈する有機化合物である。非イオン界面活性剤により、物品用消毒剤において沈殿物などを生じずに均一に溶解又は分散した溶液とすることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害することがない。非イオン界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型などから選ばれる少なくとも一種が好ましく、液状、又は固形である100%純分の化合物だけでなく、それらを所定量の水で希釈した水溶液であってもよい。
【0020】
エステル型の非イオン界面活性剤としては、炭素数1~22の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基及びアシル基、芳香族基並びにそれらの組み合わせの主鎖を有するカルボン酸と多価アルコールから得られる化合物であることが好ましい。また、炭化水素基は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖や飽和又は不飽和であってもよい。具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノオレートなどのグリセリン脂肪酸エステル、2~10分子のグリセリンが縮合したポリグリセリンに関して、ポリグリセリンモノラウレート、ポリグリセリンジラウレート、ポリグリセリンモノパルミテート、ポリグリセリンモノジパルミテート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレート、ポリグリセリンモノジオレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステルなどを使用することができる。
【0021】
エーテル型の非イオン界面活性剤としては、炭素数1~22の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基及びアシル基、芳香族基並びにそれらの組み合わせの主鎖を有する一価のアルコールと多価アルコールから得られる化合物であることが好ましい。また、炭化水素基は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖や飽和又は不飽和であってもよい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを使用することができる。
【0022】
エステルエーテル型の非イオン界面活性剤としては、炭素数1~22の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基及びアシル基、芳香族基並びにそれらの組み合わせの主鎖を有するカルボン酸とポリアルキレンオキサイド又はポリアルキレンオキサイドが付加された多価ア
ルコールから得られる化合物であることが好ましい。また、炭化水素基は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖や飽和又は不飽和であってもよい。具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンジラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンモノパルミテート、ポリオキシエチレングリセリンモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどを使用することができる。これらの非イオン界面活性剤は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。なお、カチオン界面活性剤や両性界面活性剤などの各種界面活性剤の中でも特に非イオン界面活性剤がスメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害しないことは、作用機序は必ずしも明らかではないものの下記実施例及び比較例の結果から示唆される。
【0023】
また、物品用消毒剤に用いられる非イオン界面活性剤において、グリフィンの式から算出されるHLBとしては、8~18であることが好ましく、9~15であることが好ましい。非イオン界面活性剤のHLBがこの範囲にあると、物品用消毒剤において沈殿物などを生じずに均一に溶解又は分散した溶液とすることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害することがない。
【0024】
非イオン界面活性剤の含有割合は、物品用消毒剤のうち、0.05~20重量%が好ましく、0.1~10重量%がさらに好ましい。非イオン界面活性剤の含有割合がこの範囲にあると、物品用消毒剤において沈殿物などを生じずに均一に溶解又は分散した溶液とすることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害することがない。
【0025】
本発明の物品用消毒剤に酸を配合することができる。酸は、第四級アンモニウム塩などと併存することにより核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩の細胞への浸透を促進させ、エンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させることができる。
【0026】
酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独で使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0027】
酸の含有割合は、物品用消毒剤のうち、0.05重量%~3.0重量%が好ましく、0.1重量%~2.5重量%がさらに好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができる。
【0028】
本発明の物品用消毒剤に前記酸の塩を配合することができる。前記酸の塩は、上述した有機酸や無機酸に対応する塩である。具体的には、例えば、酸としてクエン酸を用いているときはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどの塩であり、リンゴ酸を用いているときはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウムなどの塩であり、リン酸を用いているときはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどの塩である。このように、前記酸に対応する塩が含まれることによって、物品用消毒剤が所定範囲のpHとなるとともに、物品用消毒剤において炭素数1~3の低級アルコールや水が長く使用して少々揮発したとしても、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができる。
【0029】
前記酸の塩の含有割合は、物品用消毒剤のうち、0.05重量%~5.0重量%が好ま
しく、0.1重量%~3.0重量%がさらに好ましい。前記酸の塩の含有割合がこの範囲にあると、物品用消毒剤のpHを所定の範囲に保つことができる。
【0030】
本発明の物品用消毒剤に炭素数1~3級の低級アルコールを配合することができる。炭素数1~3級の低級アルコールを配合することにより、殺菌性を向上させたり、スメクタイトに属する粘土鉱物を水などの溶剤と均一にさせやすくしたりすることができる。炭素数1~3級の低級アルコールは、具体的に、メタノール、エタノール、n-プロパノールなどであることが好ましい。そして、物品用消毒剤における炭素数1~3級の低級アルコールの含有割合は、0~25重量%であることが好ましく、1~20重量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の物品用消毒剤に水を配合することができる。水を配合することにより物品用消毒剤を希釈して低濃度で使用する箇所に塗布することができる。水であれば、物品用消毒剤に配合して家具、玩具、寝具、衣服、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に使用し付着しても変色などの変性を生じない。そして、水は、日本薬局方規格の水であることが好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などであることが好ましい。なお、水は、スメクタイトに属する粘土鉱物を分散するために用いられている水や非イオン界面活性剤を溶解している水であってよい。そして、物品用消毒剤における水の含有割合は、40~99.8重量%であることが好ましく、50~98.6重量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の物品用消毒剤の25℃におけるpHとしては、2~6であることが好ましく、さらに3~5であることが好ましい。本発明の物品用消毒剤のpHが上記範囲であると、細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物によるアレルゲンを低減する効果を阻害しない。
【0033】
さらに本発明の物品用消毒剤の酸化による劣化などの腐食を防止するため、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α-トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤を添加することができる。また、消臭を目的に、緑茶抽出物、カキ抽出物を添加することもできる。
【0034】
本発明の物品用消毒剤に、水、炭素数1~3級の低級アルコールや各種添加剤を配合した混合溶液を、トリガーの付いた容器に入れてノズルから噴霧してスプレータイプとして、又は、容器に圧縮ガス又は液化ガスと共に封入して吐出装置を取り付けてエアゾールタイプとして、使用することができ、家具、玩具、寝具、衣類、手摺、抱っこ紐、ベビーカーなどの物品に対して簡便に使用することができる。
【実施例0035】
以下、本件発明における物品用消毒剤について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
25℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、第四級アンモニウム塩としてベンザルコニウム塩化物水溶液(ベンザルコニウム塩化物含有率:50重量%)を0.1g、スメクタイトに属する粘度鉱物としてモンモリロナイトの水希釈剤(モンモリロナイト含有率:1.5重量%)を1.0g、非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:1
00重量%、HLB:10)を1.0g、酸としてリン酸水溶液(リン酸含有率:85重量%)を0.20g、前記酸の塩としてリン酸三ナトリウム(リン酸三ナトリウム含有率:100重量%)を0.25g、水として精製水を97.45g加えて攪拌し、合計100gの物品用消毒剤を得た。
【0037】
そして、実施例1の物品用消毒剤のpHは、JIS Z 8802:2011に準じて、pH測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:F-52)を用いた計測において、25℃で3.1であった。
【0038】
<実施例2>
非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:100重量%、HLB:10)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.4であった。
【0039】
<実施例3>
スメクタイトに属する粘度鉱物としてモンモリロナイトの水希釈剤(モンモリロナイト含有率:1.5重量%)を2.0g、非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:100重量%、HLB:10)を2.0g用いて、精製水を95.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.2であった。
【0040】
<実施例4>
スメクタイトに属する粘度鉱物としてモンモリロナイトの水希釈剤(モンモリロナイト含有率:1.5重量%)を3.0g、非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:100重量%、HLB:10)を2.0g用いて、精製水を94.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.2であった。
【0041】
<実施例5>
非イオン界面活性剤としてポリグリセリンオレイン酸エステル(ポリグリセリンオレイン酸エステル含有率:100重量%、HLB:12)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.1であった。
【0042】
<実施例6>
非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル含有率:100重量%、HLB:14.5)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.0であった。
【0043】
<実施例7>
非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:100重量%、HLB:10)を2.0g、炭素数1~3の低級アルコールとしてエタノールを10.0g用いて、精製水を86.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.1であった。
【0044】
<実施例8>
第四級アンモニウム塩に代えてクロルヘキシジングルコン酸塩(クロルヘキシジングルコン酸塩含有率:20重量%、)を0.25g、非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン含有率:100重量%、HLB:10)を2.0g用いて、精製水を96.3gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.2であった。
【0045】
<比較例1>
非イオン界面活性剤を配合せず、精製水を98.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.4であった。
【0046】
<比較例2>
非イオン界面活性剤に代えてアニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム含有率:30重量%)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.3であった。
【0047】
<比較例3>
非イオン界面活性剤に代えて両性イオン界面活性剤であるラウリン酸アミドプロピルベタイン水溶液(ラウリン酸アミドプロピルベタイン含有率:30重量%)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.1であった。
【0048】
<比較例4>
非イオン界面活性剤に代えて多価アルコールであるポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール含有率:100重量%)を2.0g用いて、精製水を96.45gとした以外は、、実施例1と同様に、合計100gの物品用消毒剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、3.1であった。
【0049】
各実施例及び各比較例の物品用消毒剤を用いて、性状を確認し、殺菌効果及びアレルゲンの低減効果についてそれぞれ測定した。
【0050】
〔性状〕
性状について、物品用消毒剤を静置し目視にて確認した。透明又は均一に白濁して分散しているものを○と評価し、沈殿物が生じているものは×と評価した。これらのうち、○を良好、×を不良と判断した。
【0051】
〔殺菌効果〕
物品用消毒剤の殺菌効果を評価するに際して、検体と黄色ブドウ球菌を含有する菌液を直接接触した後に平板培地に塗抹し、菌数の評価を行った。コントロールの菌数に対する減少割合を評価した。そして、上記試験において、99.99%以上の減少がみられるものを○と評価し、99.9%以上99.99%未満の減少がみられるものを△と評価し、99.9%以下の減少がみられるものを×と評価した。これらのうち、○及び△を良好、×を不良と判断した。
【0052】
〔アレルゲンの低減効果〕
文部科学省の「学校環境衛生管理マニュアル」(平成30年度改訂版)に、「ダニの基準
値は、1m2当たりのダニが100匹以下になるとぜん息の発作が治まったという報告があることなどから、100匹/m2以下であることとされている。アレルゲンを抽出し、酵素免疫測定法によりアレルゲンを測定した場合、「100匹/m2以下」と同等のアレルゲン量は、Der2(ダニの死骸由来アレルゲン)量10μgとなるため、ダニアレルゲンの基準値は、Der2量10μg以下であることとなる。」と記載されており、これに準拠したダニアレルゲンの検査器具が各社から種々販売されている。このうち、「学校環境衛生基準」準拠商品であるダニアレルゲン検査キット(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製、マイティチェッカー(登録商標))を用いてアレルゲンの低減効果を確認した。なお、当該ダニアレルゲン検査キットの測定原理は、ダニアレルギーの臨床分野で主要アレルゲンの一つであるDer2(Derf2とDelp2の両方)と特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた水平展開クロマト方式によってハウスダスト等の抽出液中に含まれるダニアレルゲンレベルを赤色の発色程度で表示するものであり、酵素免疫測定法との相関係数がr=0.83と非常に高いものである。当該ダニアレルゲン検査キットでは、発色程度により、〔判定:++、判定の目安:ハッキリとしたライン、ダニアレルゲンレベル:>35μg(>350匹)/m2〕、〔判定:+、判定の目安:ラインであることが確認できる、ダニアレルゲンレベル:10μg(100匹)/m2〕、〔判定:+-、判定の目安:うっすらと発色しているのがわかる、ダニアレルゲンレベル:5μg(50匹)/m2〕、〔判定:--、判定の目安:全く発色していない、ダニアレルゲンレベル:<1μg(<10匹)/m2〕と4段階の判断基準が設けられている。
【0053】
アレルゲンの低減効果の確認について、具体的には、上記ダニアレルゲン検査キットで++と判定される、コナヒョウヒダニ抗原(ダニの生体や死骸など体由来の抗原)を用いた抗原液を予め調整し、当該抗原液と各実施例及び各比較例のそれぞれの物品用消毒剤を同量混和し、60秒間振とうする。当該混和液を用いて、上記ダニアレルゲン検査キットにてダニアレルゲンレベルを赤色の発色程度で確認した。そして、判定結果が-又は-と+-の間に相当する物品用消毒剤をアレルゲン低減効果が顕著にあるとして◎、判定結果が+-又は+-と+の間に相当する物品用消毒剤をアレルゲン低減効果が十分にあるとして○、判定結果が+である物品用消毒剤をアレルゲン低減効果が軽微であるとして△、判定結果が+と++の間に相当する又は++である物品用消毒剤をアレルゲン低減効果が不十分であるとして×と評価した。これらのうち、◎及び○を良好、△及び×を不良と判断した。
【0054】
各実施例及び各比較例の物品用消毒剤の組成と、これらを用いて行った性状、殺菌効果及びアレルゲンの低減効果の結果を、表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
以上の結果より、比較例1から比較例4との対比より、実施例1から実施例8において、モンモリロナイトが殺菌効果を阻害せず、また、非イオン界面活性剤が、モンモリロナイトのアレルゲン低減効果を阻害しないことがわかった。このため、第四級アンモニウム塩又はクロルヘキシジングルコン酸塩の少なくも1種と、スメクタイトに属する粘土鉱物と、非イオン界面活性剤を含有する物品用消毒剤によれば、使用した物品に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることができ、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減することができることがわかった。