(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001424
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】排泄物シュータ、簡易トイレおよび排泄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
A47K 11/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A47K11/00 101
A47K11/00 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100047
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】513049480
【氏名又は名称】株式会社ハマネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 賢
【テーマコード(参考)】
2D036
【Fターム(参考)】
2D036AA02
2D036BA06
2D036BA37
2D036CA01
2D036CA05
2D036HA04
2D036HA13
2D036HA22
2D036HA23
2D036HA27
2D036HA42
(57)【要約】
【課題】排泄物処理設備と連通される第1使用態様および排泄物処理設備から切り離される第2使用態様のいずれか一方を選択できるとともに、衛生面での問題を解決できる、排泄物シュータ、簡易トイレおよび排泄物の処理方法を提供する。
【解決手段】簡易トイレ10を構成する排泄物シュータ28は、屈曲変形可能な材料で筒状に形成されたシュータ本体42と、接続手段44と、閉じ手段46とを備える。シュータ本体42は、上端部42aが排泄物投下口34の内周部に接続手段44で接続されるとともに下端部42bが排泄物処理設備12の受入れ口14aに挿し込まれる第1使用態様と、上端部42aが排泄物投下口34の内周部に接続手段44で接続されるとともに下端部42bが閉じ手段46で閉じられる第2使用態様とを選択的に取り得るように構成される。第2使用態様では、シュータ本体42の内部に袋体16の保持空間Sが構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
簡易トイレの排泄物投下口と前記簡易トイレの下方に設けられた排泄物処理設備の受入れ口とを連通させる機能を有する排泄物シュータであって、
屈曲変形可能な材料で上下方向へ延びる筒状に形成され、上端部が前記排泄物投下口の内周部に接続されるとともに下端部が前記受入れ口に挿し込まれる第1使用態様と、上端部が前記排泄物投下口の内周部に接続されるとともに下端部が閉じられる第2使用態様とを選択的に取り得るように構成されたシュータ本体と、
前記第1使用態様および前記第2使用態様において前記シュータ本体の上端部を前記排泄物投下口の内周部に接続する接続手段と、
前記第2使用態様において前記シュータ本体の下端部を閉じる閉じ手段とを備え、
前記第2使用態様における前記シュータ本体の内部には、前記排泄物投下口から投下された排泄物を受け入れる密閉可能な開口を有する袋体を保持するための保持空間が構成される、排泄物シュータ。
【請求項2】
前記シュータ本体の上端部には、前記排泄物投下口の内周部の上面に配置可能に構成された複数の小片が周方向に分離して設けられる、請求項1に記載の排泄物シュータ。
【請求項3】
前記接続手段は、複数の前記小片のそれぞれに設けられた第1面ファスナ片と、前記排泄物投下口の内周部の上面に接合可能に構成され、前記第1面ファスナ片に対して着脱可能に接合される第2面ファスナ片とを有する、請求項2に記載の排泄物シュータ。
【請求項4】
前記閉じ手段は、前記下端部が上方に畳まれた前記シュータ本体の一方の主面に設けられた第1接合片と、前記下端部が上方に畳まれた前記シュータ本体の他方の主面に設けられた第2接合片とを有し、
前記第1接合片と前記第2接合片とは、互いに上下方向へずれた位置に設けられる、請求項1または2に記載の排泄物シュータ。
【請求項5】
前記シュータ本体は、上端から下端に向かうにつれて内径が徐々に縮小する円錐台状に形成される、請求項1または2に記載の排泄物シュータ。
【請求項6】
前記袋体を備える、請求項1または2に記載の排泄物シュータ。
【請求項7】
床面から上方に離間して水平に設けられる板状の腰掛け部と、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排泄物シュータとを備え、
前記排泄物投下口は、前記腰掛け部に形成され、
前記保持空間は、前記床面と前記腰掛け部との間に構成される、簡易トイレ。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排泄物シュータを用いた排泄物の処理方法であって、
前記シュータ本体の下端部を前記閉じ手段で閉じる工程と、
前記保持空間に前記袋体を装着する工程と、
排泄物を前記開口から前記袋体の内部に収容する工程と、
前記開口を密閉する工程と、
前記袋体を前記保持空間から取り出す工程とを備える、排泄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易トイレの排泄物投下口と排泄物処理設備の受入れ口とを連通させる機能を有する排泄物シュータ、排泄物シュータを用いた簡易トイレおよび排泄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の簡易トイレの例が下記特許文献1,2に開示されている。特許文献1の簡易トイレは、落し穴と下水道とを連通させるガイドチューブを備えている。不使用時のガイドチューブは、折り曲げられ、あるいは巻回され、必要に応じて粘着テープで留められて、コンパクトにまとめられる。特許文献2の簡易トイレは、排泄物投下口に取り付けられた汚物バッグを備えている。汚物バッグに汚物が溜まると、使用者は、汚物バッグを排泄物投下口から取り外して汚物廃棄場所へ搬送し、汚物を廃棄した後、再び排泄物投下口に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-10947号
【特許文献2】実開昭56-67100号
【0004】
しかしながら、特許文献1の簡易トイレは、専ら排泄物処理設備(下水道)と共に使用されるものであり、使用者は、この簡易トイレを排泄物処理設備が存在しない場所で使用することができなかった。一方、特許文献2の簡易トイレは、専ら排泄物処理設備(排泄物処理場)から離れた場所で使用されるものであり、使用者は、この簡易トイレの汚物袋を排泄物処理設備に接続することができなかった。また、汚物袋の開口は、密閉されないため、排泄物が漏れたり、臭いが拡散したりするおそれがあり、衛生面での問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、排泄物処理設備と連通される第1使用態様および排泄物処理設備から切り離される第2使用態様のいずれか一方を選択できるとともに、衛生面での問題を解決できる、排泄物シュータ、簡易トイレおよび排泄物の処理方法を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る排泄物シュータの特徴は、簡易トイレの排泄物投下口と前記簡易トイレの下方に設けられた排泄物処理設備の受入れ口とを連通させる機能を有する排泄物シュータであって、屈曲変形可能な材料で上下方向へ延びる筒状に形成され、上端部が前記排泄物投下口の内周部に接続されるとともに下端部が前記受入れ口に挿し込まれる第1使用態様と、上端部が前記排泄物投下口の内周部に接続されるとともに下端部が閉じられる第2使用態様とを選択的に取り得るように構成されたシュータ本体と、前記第1使用態様および前記第2使用態様において前記シュータ本体の上端部を前記排泄物投下口の内周部に接続する接続手段と、前記第2使用態様において前記シュータ本体の下端部を閉じる閉じ手段とを備え、前記第2使用態様における前記シュータ本体の内部には、前記排泄物投下口から投下された排泄物を受け入れる密閉可能な開口を有する袋体を保持するための保持空間が構成されることにある。
【0007】
この構成によれば、使用者は、簡易トイレが設置される現場の状況などに応じて、排泄物処理設備と連通される第1使用態様および排泄物処理設備と連通されない第2使用態様のいずれか一方を適宜選択できる。そして、第1使用態様では、排泄物投下口から投下された排泄物を、排泄物シュータを通して排泄物処理設備へ直接廃棄できる。第2使用態様では、排泄物投下口から投下された排泄物を、保持空間で保持された袋体に収容して、袋体と一緒に廃棄できる。このとき、袋体の開口を密閉できるので、排泄物の漏れや、臭いの拡散を防止でき、衛生面での問題を解決できる。また、シュータ本体およびその周囲が排泄物で汚れることを抑制でき、見た目の印象を良くすることができる。
【0008】
さらに、第2使用態様では、排泄物が袋体の内部に収容されるので、閉じ手段でシュータ本体の下端部を閉じる程度は、袋体が落ちない程度であればよく、完全に密閉する必要はない。したがって、閉じ手段で下端部を閉じる作業の作業負担を軽減できるとともに、作業時間を短縮できる。
【0009】
本発明に係る排泄物シュータの他の特徴は、前記シュータ本体の上端部には、前記排泄物投下口の内周部の上面に配置可能に構成された複数の小片が周方向に分離して設けられることにある。
【0010】
この構成によれば、シュータ本体の上端部の複数の小片を排泄物投下口の内周部の上面に配置できるので、複数の小片を接続手段で排泄物投下口の内周部に接続し易い。
【0011】
本発明に係る排泄物シュータの他の特徴は、前記接続手段は、複数の前記小片のそれぞれに設けられた第1面ファスナ片と、前記排泄物投下口の内周部の上面に接合可能に構成され、前記第1面ファスナ片に対して着脱可能に接合される第2面ファスナ片とを有することにある。
【0012】
この構成によれば、第1面ファスナ片と第2面ファスナ片とを互いに接合することによって、シュータ本体の上端部を排泄物投下口の内周部に簡単に接続できる。
【0013】
本発明に係る排泄物シュータの他の特徴は、前記閉じ手段は、前記下端部が上方に畳まれた前記シュータ本体の一方の主面に設けられた第1接合片と、前記下端部が上方に畳まれた前記シュータ本体の他方の主面に設けられた第2接合片とを有し、前記第1接合片と前記第2接合片とは、互いに上下方向へずれた位置に設けられることにある。
【0014】
この構成によれば、シュータ本体の下端部が巻き上げられたときに、第1接合片と第2接合片とを接合できるので、シュータ本体の下端部を閉じる作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0015】
本発明に係る排泄物シュータの他の特徴は、前記シュータ本体は、上端から下端に向かうにつれて内径が徐々に縮小する円錐台状に形成されることにある。
【0016】
この構成によれば、シュータ本体の内面が、全長にわたってテーパ状に連続するので、シュータ本体の内面に排泄物が付着し難い。
【0017】
本発明に係る排泄物シュータの他の特徴は、前記袋体を備えることにある。
【0018】
この構成によれば、排泄物投下口から投下された排泄物を受け入れる密閉可能な開口を有する袋体を備えているので、第2使用態様において、シュータ本体の内面が排泄物で汚れることを防止できる。また、袋体の開口を密閉できるので、排泄物の漏れや、臭いの拡散を防止でき、衛生面での問題を解決できる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る簡易トイレの特徴は、床面から上方に離間して水平に設けられる板状の腰掛け部と、前記排泄物シュータとを備え、前記排泄物投下口は、前記腰掛け部に形成され、前記保持空間は、前記床面と前記腰掛け部との間に構成されることにある。
【0020】
この構成によれば、袋体を保持する保持空間が、床面と腰掛け部との間に構成されるので、袋体を着脱する作業を床面上で楽に行うことができる。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に係る排泄物の処理方法の特徴は、前記排泄物シュータを用いた排泄物の処理方法であって、前記シュータ本体の下端部を前記閉じ手段で閉じる工程と、前記保持空間に前記袋体を装着する工程と、排泄物を前記開口から前記袋体の内部に収容する工程と、前記開口を密閉する工程と、前記袋体を前記保持空間から取り出す工程とを備えることにある。
【0022】
この構成によれば、排泄物投下口から投下された排泄物を袋体に収容し、開口を密閉した後、袋体を保持空間から取り出すので、シュータ本体の内面が排泄物で汚れることを防止できる。また、袋体の内部に収容された排泄物の漏れや、臭いの拡散を防止でき、衛生面での問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)は、実施形態にかかる簡易トイレの第1使用態様における構成を示す斜視図、(B)は、実施形態にかかる簡易トイレの第2使用態様における構成を示す斜視図である。
【
図2】(A)は、実施形態にかかる簡易トイレの第1使用態様における構成を示す正面図、(B)は、実施形態にかかる簡易トイレの第1使用態様における構成を示す右側面図である。
【
図3】実施形態にかかる簡易トイレの第1使用態様における構成を示す分解斜視図である。
【
図4】(A)は、簡易トイレ(便座部および排泄物シュータを除く。)の構成を示す前斜め上方から見た斜視図、(B)は、簡易トイレ(便座部および排泄物シュータを除く。)の構成を示す後斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】(A)は、シュータ本体42の製造方法を示す正面図、(B)は、排泄物シュータの下端部を上方に二つ折りに畳んだ状態を示す正面図である。
【
図6】実施形態にかかる簡易トイレの第2使用態様における構成を示す分解斜視図である。
【
図7】シュータ本体の下端部を閉じる方法を示す図であり、(A)は、第1工程を示す正面図、(B)は、第2工程を示す正面図、(C)は、第3工程を示す正面図である。
【
図8】シュータ本体の下端部を閉じる他の方法を示す図であり、(A)は、紐を用いた方法を示す正面図、(B)は、粘着テープを用いた方法を示す正面図、(C)は、クリップを用いた方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る排泄物シュータ、簡易トイレおよび排泄物の処理方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる「上・下・左・右・前・後」の各方向は、図面において矢印で示す各方向と一致する。
【0025】
(簡易トイレ10の構成)
図1(A)は、実施形態にかかる簡易トイレ10の第1使用態様における構成を示す斜視図、
図1(B)は、簡易トイレ10の第2使用態様における構成を示す斜視図である。
図2(A)は、簡易トイレ10の第1使用態様における構成を示す正面図、
図2(B)は、簡易トイレ10の第1使用態様における構成を示す右側面図である。
【0026】
図1(A),(B)に示す簡易トイレ10は、災害現場、工事現場およびイベント会場などに設置される仮設トイレとして使用されるものであり、
図1(A)に示す第1使用態様および
図1(B)に示す第2使用態様のいずれか一方を、現場の状況等に応じて使用者が適宜選択できるように構成されている。
【0027】
図2(A),(B)に示すように、第1使用態様は、後述する排泄物シュータ28が、排泄物処理設備12に連通される使用態様である。第1使用態様では、排泄物を排泄物処理設備12に直接廃棄することができる。なお、
図2(A),(B)に示した排泄物処理設備12は、鉛直方向へ延びる管路14を有する汚水枡であり、管路14の上端部の開口が排泄物の受入れ口14aとなっている。
【0028】
図1(B)に示すように、第2使用態様は、後述する排泄物シュータ28が、汚水枡などの排泄物処理設備12から切り離されて単独で使用される使用態様である。第2使用態様では、排泄物シュータ28を構成するシュータ本体42の内部に袋体16が装着される。使用者は、袋体16に収容された排泄物を袋体16と一緒に廃棄できる。
【0029】
袋体16は、排泄物投下口34から投下された排泄物を受け入れる密閉可能な開口16aを有する柔軟な袋状の部材である。袋体16としては、簡易トイレ10のための専用の袋体が用いられてもよいし、レジ袋およびゴミ袋などの汎用の袋体が用いられてもよい。
【0030】
図3は、簡易トイレ10の第1使用態様における構成を示す分解斜視図である。
図4(A)は、簡易トイレ(便座部24および排泄物シュータ28を除く。)10の構成を示す前斜め上方から見た斜視図、
図4(B)は、簡易トイレ(便座部24および排泄物シュータ28を除く。)10の構成を示す後斜め上方から見た斜視図である。以下では、第1使用態様に着目して、簡易トイレ10の構成について説明する。
【0031】
図3に示すように、簡易トイレ10は、現場の床面Fに設置される基礎部18と、使用者が腰掛け可能な高さに設けられる腰掛け部20と、左右一対の手すり部22a,22bと、便座部24と、腰掛け部20を支持する脚部26と、排泄物シュータ28と、上記の袋体16(
図1(B))とを備えている。
【0032】
図4(A),(B)に示すように、基礎部18は、床面Fに設置される平面視で四角形の板状の部材である。基礎部18の4つの角部のそれぞれには、基礎部18を床面Fに固定するための棒状の固定具(図示省略)が挿通される貫通孔30が形成されている。
図4(B)に示すように、基礎部18の中央部には、後述するシュータ本体42(
図3)の下端部を挿通させるための開口であるシュータ挿通口32が形成されている。
【0033】
図2(A),(B)に示すように、基礎部18が床面Fに設置されるとき、シュータ挿通口32(
図4(B))が排泄物処理設備12の受入れ口14aに対して位置決めされる。なお、基礎部18の形状は、四角形に限定されるものではなく、円形、楕円形および異形などの他の形状でもよい。
【0034】
図3に示すように、腰掛け部20は、床面Fから上方に離間して水平に設けられる平面視で四角形の板状の部材である。腰掛け部20の中央部には、排泄物を投下させるための開口である排泄物投下口34が形成されている。腰掛け部20における左右方向の両端部には、左右一対の手すり部22a,22bが取り付けられている。腰掛け部20における排泄物投下口34の内周部には、便座部24が取り付けられている。なお、腰掛け部20の形状は、四角形に限定されるものではなく、円形、楕円形および異形などの他の形状でもよい。
【0035】
図3に示すように、左右一対の手すり部22a,22bのそれぞれは、円形断面を有する棒材を曲げることによって逆U字状に形成されており、平面視で腰掛け部20の左右の側縁に沿うように配置されている。したがって、便座部24に着座した使用者は、手すり部22a,22bを握ることによって、楽に立ち上がることができる。
【0036】
図1(A)に示すように、便座部24は、腰掛け部20における排泄物投下口34の内周部に固定される環状の本体部24aと、排泄物投下口34を覆うように構成された蓋部24bと、蓋部24bを本体部24aに対して回動可能に取り付けるヒンジ部24cとを有している。簡易トイレ10を使用するとき、使用者は、蓋部24bを上方へ回動させて、本体部24aに着座する。簡易トイレ10を使用しないとき、使用者は、蓋部24bを下方へ回動させて、排泄物投下口34を塞ぐ。
【0037】
図4(A),(B)に示すように、脚部26は、基礎部18の上面で腰掛け部20を支持する部材であり、平面視で四角形の枠体36と、側面視でX字状の左右一対の支持体38a,38bと、前面パネル40とを有している。
【0038】
枠体36は、四角形の断面を有する4本の棒材を互いに接合することによって構成されており、ボルト等を用いて基礎部18の上面に固定されている。
【0039】
左右一対の支持体38a,38bのそれぞれは、四角形の断面を有する2本の棒材を互いに接合することによって構成されている。そして、左側の支持体38aの下端部が、ボルト等を用いて枠体36の左側部に接合されており、左側の支持体38aの上端部が、ボルト等を用いて腰掛け部20の左側部に接合されている。また、右側の支持体38bの下端部が、ボルト等を用いて枠体36の右側部に接合されており、右側の支持体38bの上端部が、ボルト等を用いて腰掛け部20の右側部に接合されている。
【0040】
前面パネル40は、四角形の板状の部材であり、前面パネル40の下端部が、ボルト等を用いて枠体36の前部に接合されており、前面パネル40の上端部が、ボルト等を用いて腰掛け部20の前部に接合されている。
【0041】
図2(A),(B)に示すように、排泄物シュータ28は、排泄物投下口34と簡易トイレ10の下方に設けられた排泄物処理設備12の受入れ口14aとを連通させる機能を有する筒状の部材である。
図3に示すように、排泄物シュータ28は、シュータ本体42と、接続手段44と、閉じ手段46とを有している。
【0042】
シュータ本体42は、屈曲変形可能な材料で上下方向へ延びる筒状に形成されている。屈曲変形可能な材料は、特に限定されるものではないが、撥水性、耐久性および加工性に優れる軟質合成樹脂が適しており、本実施形態では、軟質塩化ビニルが使用されている。
【0043】
本実施形態のシュータ本体42は、上端から下端に向かうにつれて内径が徐々に縮小する円錐台状に形成されている。シュータ本体42の上端部42aには、周方向に間隔を隔てて軸方向に延びる複数の切り込み線Qで分断された複数の小片43が設けられており、複数の小片43は、排泄物投下口34の内周部の上面に放射状に配置可能に構成されている。言い換えると、シュータ本体42の上端部42aには、排泄物投下口34の内周部の上面に配置可能に構成された複数の小片43が、周方向に分離して設けられている。
【0044】
図2(A)に示すように、シュータ本体42の長さL1は、排泄物投下口34から受入れ口14aまでの距離L2よりも長く定められている。したがって、シュータ本体42は、自然状態において、上端部42aが排泄物投下口34の内周部に接続されるとともに、下端部42bが受入れ口14aに挿し込まれる第1使用態様をとることができる。また、シュータ本体42は、下端部42bが巻き上げられることによって、上端部42aが排泄物投下口34の内周部に接続されるとともに、下端部42bが閉じられる第2使用態様をとることができる。
【0045】
図1(B)に示すように、第2使用態様におけるシュータ本体42の内部には、開口16aを有する袋体16を保持するための保持空間Sが構成される。本実施形態では、床面Fから上方に離間して腰掛け部20が設けられているため、保持空間Sは、床面Fと腰掛け部20との間に構成される。この場合、第2使用態様におけるシュータ本体42は、本実施形態においては、閉じられた下端部42bが基礎部18または床面Fの上方に浮く程度に巻き上げられる。なお、第2使用態様におけるシュータ本体42は、閉じられた下端部42bが基礎部18上または床面F上に載置される程度に巻き上げられることで袋体16の保持負担を軽減することもできる。
【0046】
図5(A)は、シュータ本体42の製造方法を示す正面図、
図5(B)は、排泄物シュータ28の下端部42bを上方に二つ折りに畳んだ状態を示す正面図である。
図6は、簡易トイレ10の第2使用態様における構成を示す分解斜視図である。
【0047】
シュータ本体42を製造する際には、まず、
図5(A)に示すように、上辺48aおよび下辺48bが同心の円弧状となるように形成された略台形の軟質塩化ビニル製のシート48が準備される。続いて、
図5(B)に示すように、シート48が幅方向の中心線で折られて二層に重ね合わされる。その後、重ね合わされた側端部48c,48dが互いに線状に溶着される。
【0048】
本実施形態では、シュータ本体42の上端部42aが複数の切り込み線Qで切断されることによって、複数の小片43が形成される。この切断工程は、溶着工程の前後のいずれで行われてもよいが、本実施形態では、溶着工程の前に行われる。なお、複数の小片43を形成する方法は、上端部42aを切断する方法に限定されるものではなく、例えば、上端部42aをプレス機等で打ち抜く方法が用いられてもよい。
【0049】
図3に示す接続手段44は、第1使用態様(
図1(A))および第2使用態様(
図1(B))においてシュータ本体42の上端部42aを排泄物投下口34の内周部に接続する部材または機構である。本実施形態の接続手段44は、複数の小片43のそれぞれに設けられた複数の第1面ファスナ片50(
図5(B))と、排泄物投下口34の内周部の上面に接合可能に構成され、第1面ファスナ片50に対して着脱可能に接合される第2面ファスナ片52(
図3)とを有している。
【0050】
本実施形態の第2面ファスナ片52は、排泄物投下口34の内周部の上面に環状に接合可能な連続する1本の帯状に形成されている。なお、第2面ファスナ片52の長さや形状は、特に限定されるものではなく、例えば、1本の帯状の第2面ファスナ片52に代えて、複数の円形または四角形の第2面ファスナ片52が用いられてもよい。
【0051】
複数の第1面ファスナ片50を形成する際には、まず、
図5(A)に示すシート48の上端部に、上辺48aに沿って連続する一本の面ファスナ片が貼り付けられる。その後、この面ファスナ片が、シート48の上端部と共に上記の複数の切り込み線Qで切断される。なお、連続する一本の面ファスナ片は、シート48の上端部と共にプレス機等で打ち抜かれて分割されてもよい。
【0052】
図3に示す閉じ手段46は、
図6に示す第2使用態様において、シュータ本体42の下端部42bを閉じる部材または機構である。
図5(B)に示すように、本実施形態の閉じ手段46は、二つ折りに畳まれたシュータ本体42の一方の主面に幅方向へ延びて設けられた「第1接合片」としての第1面ファスナ片54と、二つ折りに畳まれたシュータ本体42の他方の主面に幅方向へ延びて設けられた「第2接合片」としての第2面ファスナ片56とを有している。第1面ファスナ片(第1接合片)54と第2面ファスナ片(第2接合片)56とは、互いに上下方向へずれた位置に設けられており、シュータ本体42の下端部42bが巻き上げられたときに、第1面ファスナ片54と第2面ファスナ片56とが互いに接合される。
【0053】
図7は、シュータ本体42の下端部42bを閉じる方法を示す図であり、
図7(A)は、第1工程を示す正面図、
図7(B)は、第2工程を示す正面図、
図7(C)は、第3工程を示す正面図である。
【0054】
シュータ本体42の下端部42bを閉じる際には、まず、使用者は、
図5(B)に示すシュータ本体42の下端部42bを、下側の第1面ファスナ片54よりも下方の第1折り線P1において、第1面ファスナ片54が設けられていない側へ折り重ねる。この工程が第1工程であり、第1工程が完了した後のシュータ本体42の状態を
図7(A)に示している。
【0055】
続いて、使用者は、
図7(A)に示すシュータ本体42の下端部42bを、下側の第1面ファスナ片54よりも上方の第2折り線P2において、第1面ファスナ片54が設けられていない側へ折り重ねる。この工程が第2工程であり、第2工程が完了した後のシュータ本体42の状態を
図7(B)に示している。
【0056】
その後、使用者は、
図7(B)に示すシュータ本体42の下端部42bを、下側の第1面ファスナ片54と上側の第2面ファスナ片56との間の折り線P3において、これらのファスナ片54,56が互いに接合されるように折り重ねる。この工程が第3工程であり、第3工程が完了した後のシュータ本体42の状態を
図7(C)に示している。このように、本実施形態の閉じ手段46は、第1面ファスナ片54および第2面ファスナ片56に加えて、シュータ本体42の下端部42bの巻き上げ構造を有している。
【0057】
(排泄物の処理方法)
上記の通り、簡易トイレ10を使用する使用者は、排泄物シュータ28が排泄物処理設備12に連通される第1使用態様と、排泄物シュータ28が排泄物処理設備12から切り離されて単独で使用される第2使用態様とを選択できる。第1使用態様では、排泄物シュータ28が排泄物処理設備12に連通されているので、排泄物投下口34から投下された排泄物を排泄物処理設備12に直接廃棄できる。一方、第2使用態様では、排泄物シュータ28が排泄物処理設備12から切り離されているので、使用者は、排泄物を袋体16に収容して廃棄することになる。以下では、第2使用態様における排泄物の処理方法について説明する。
【0058】
図6に示す第2使用態様において、排泄物を処理する際には、先ず、使用者は、シュータ本体42の下端部42bを閉じ手段46で閉じる工程を実行する。この工程によって、シュータ本体42の内部に袋体16を保持するための保持空間Sが構成される。次に、使用者は、保持空間Sに袋体16を装着する工程を実行する。袋体16は、排泄物を受け入れる密閉可能な開口16aを有しており、保持空間Sでは、開口16aが上方に向けられる。
【0059】
続いて、使用者は、排泄物を開口16aから袋体16に収容する工程を実行する。つまり、使用者は、排泄物を排泄物投下口34から投下させて(つまり、用を足す)、開口16aから袋体16の内部に収容する。そして、使用者は、袋体16の開口16aを密閉する工程を実行し、その後、袋体16を保持空間Sから取り出す工程を実行する。なお、開口16aが密閉された袋体16は、そのまま保持空間Sに貯められてもよいが、最終的には、保持空間Sから取り出されて排泄物処理設備12に廃棄される。
【0060】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、使用者は、簡易トイレ10が設置される現場の状況などに応じて、排泄物シュータ28が排泄物処理設備12と連通される第1使用態様および排泄物シュータ28が排泄物処理設備12と連通されない第2使用態様のいずれか一方を適宜選択できる。
【0061】
第1使用態様では、排泄物投下口34から投下された排泄物を、排泄物シュータ28を通して排泄物処理設備12へ直接廃棄できる。第2使用態様では、排泄物投下口34から投下された排泄物を、保持空間Sで保持された袋体16に収容して、袋体16と一緒に廃棄できる。このとき、袋体16の開口16aを密閉できるので、排泄物の漏れや、臭いの拡散を防止でき、衛生面での問題を解決できる。また、シュータ本体42およびその周囲が排泄物で汚れることを抑制でき、見た目の印象を良くすることができる。
【0062】
第2使用態様では、排泄物が袋体16に収容されるので、閉じ手段46でシュータ本体42の下端部42bを閉じる程度は、袋体16が落ちない程度であればよく、完全に密閉する必要はない。したがって、閉じ手段46で下端部42bを閉じる作業の作業負担を軽減できるとともに、作業時間を短縮できる。
【0063】
シュータ本体42の上端部42aの複数の小片43を排泄物投下口34の内周部の上面に配置できるので、複数の小片43を接続手段44で排泄物投下口34の内周部に接続し易い。
【0064】
接続手段44は、第1面ファスナ片50と第2面ファスナ片52とを有しているので、これらを互いに接合することによって、シュータ本体42の上端部42aを排泄物投下口34の内周部に簡単に接続できる。
【0065】
シュータ本体42の下端部42bが巻き上げられたときに、第1面ファスナ片(第1接合片)54と第2面ファスナ片(第2接合片)56とを接合できるので、シュータ本体42の下端部42bを閉じる作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0066】
シュータ本体42は、上端から下端に向かうにつれて内径が徐々に縮小する円錐台状に形成されており、シュータ本体42の内面が、全長にわたってテーパ状に連続するので、シュータ本体42の内面に排泄物が付着し難い。
【0067】
第2使用態様では、袋体16を保持する保持空間Sが、床面Fと腰掛け部20との間に構成されるので、袋体16を着脱する作業を床面F上で楽に行うことができる。
【0068】
(変形例)
本発明の実施にあたっては、上記の実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、排泄物処理設備12として汚水枡が用いられているが、これに代えて、マンホールが用いられてもよい。
【0069】
上記実施形態では、排泄物シュータ28および袋体16が、簡易トイレ10の構成部材として同列に扱われているが、袋体16は、排泄物シュータ28の構成部材として扱われてもよい。つまり、排泄物シュータ28が袋体16を備えていてもよい。
【0070】
上記実施形態では、接続手段44として、第1面ファスナ片50および第2面ファスナ片52が用いられているが、これらに代えて、他の接続手段が用いられてもよい。例えば、シュータ本体42の上端部42aを排泄物投下口34の内周部に接続する粘着テープ(図示省略)が用いられてもよいし、シュータ本体42の上端部42aを排泄物投下口34の内周部に引掛ける引掛け部材(図示省略)が用いられてもよい。さらに、シュータ本体42の上端部42aを排泄物投下口34の内周部に上方から押し付けて固定する便座部24が用いられてもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、シュータ本体42の上端部42aは、周方向に間隔を隔てた複数の切り込み線Qで分断された複数の小片43で構成した。しかし、シュータ本体42の上端部42aは、腰掛け部20上に取り付けることができる形状に形成されていればよい。したがって、上端部42aは、例えば、周方向に連続的に延びるリング状に形成することもできる。この場合、リング状に形成された上端部42aの下面には、上端部42aと同様のリング状の面ファスナ(図示せず)を設けてもよいし、小片状の面ファスナ(図示せず)を周方向に断続的に設けてもよい。なお、この場合、上端部42aは、面ファスナを設けることなく便座部24で押さえることで腰掛け部20上に固定するようにしてもよいことは当然である。
【0072】
図8は、シュータ本体42の下端部42bを閉じる他の方法を示す図であり、
図8(A)は、紐58を用いた方法を示す正面図、
図8(B)は、粘着テープ60を用いた方法を示す正面図、
図8(C)は、クリップ62を用いた方法を示す正面図である。
【0073】
上記実施形態では、閉じ手段46として、第1面ファスナ片54および第2面ファスナ片56が用いられているが、これらに代えて、他の接続手段が用いられてもよい。例えば、
図8(A)に示すように、紐58が用いられてもよいし、
図8(B)に示すように、粘着テープ60が用いられてもよい。また、
図8(C)に示すように、クリップ62が用いられてもよい。さらに、図示しないホックやボタンが用いられてもよい。
【0074】
閉じ手段46としてホックが用いられる場合には、シュータ本体42の下端部42bが巻き上げられたときに、ホックの一方片(第1接合片)とホックの他方片(第2接合片)とが接合されるように構成されてもよい。この場合、ホックの一方片(第1接合片)とホックの他方片(第2接合片)との位置関係は、第1面ファスナ片(第1接合片)54と第2面ファスナ片(第2接合片)56との位置関係と同様に定められる。
【0075】
また、閉じ手段46としてボタンが用いられる場合には、シュータ本体42の下端部42bが巻き上げられたときに、ボタン(第1接合片)とボタン穴(第2接合片)とが接合されるように構成されてもよい。この場合、ボタン(第1接合片)とボタン穴(第2接合片)との位置関係は、第1面ファスナ片(第1接合片)54と第2面ファスナ片(第2接合片)56との位置関係と同様に定められる。
【0076】
また、上記実施形態においては、シュータ本体42の下端部42bを上方に二つ折りにして第2使用態様とした。しかし、第2使用態様においては、シュータ本体42の下端部42bを上方に3回以上折るまたは巻いて閉じ手段46で固定してもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0077】
Q…切り込み線、S…保持空間、10…簡易トイレ、12…排泄物処理設備、14…管路、14a…受入れ口、16…袋体、16a…開口、18…基礎部、20…腰掛け部、22a,22b…手すり部、24…便座部、26…脚部、28…排泄物シュータ、30…貫通孔、32…シュータ挿通口、34…排泄物投下口、36…枠体、38a,38b…支持体、40…前面パネル、42…シュータ本体、43…小片、44…接続手段、46…閉じ手段、48…シート、50,54…第1面ファスナ片、52,56…第2面ファスナ片、58…紐、60…粘着テープ、62…クリップ。