(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014240
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20240125BHJP
F16F 15/067 20060101ALI20240125BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20240125BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/067
F16F1/06 Z
F16F1/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116923
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】518204545
【氏名又は名称】株式会社Keigan
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】奥 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】栗本 直彰
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA03
3J048BC02
3J048BG02
3J048EA13
3J059AA01
3J059BA01
3J059BB07
3J059BC02
3J059BD02
3J059BD03
3J059GA50
(57)【要約】
【課題】弾性部材の密着長さによって防振力を制限されない防振装置を提供する。
【解決手段】防振装置Sは、ベース部材と、ベース部材の上方に配置された可動部材2と、可動部材2を水平方向にスライド可能に支持する支持部3と、連結部4と、複数の弾性部材7と、複数の凸部5と、を備えている。連結部4は、ベース部材1の上面中央に固定されている。弾性部材7は、他の弾性部材7から間隔をおいて連結部4から水平方向に放射状に配置され、一端が連結部4に連結され、他端が可動部材2の下面側に連結されている。凸部5は、上下方向に突出し、可動部材2の下面側において、弾性部材7の一端と他端との間に設けられている。弾性部材7の一端および他端のいずれかまたはその両方は、水平方向に回動可能に連結されており、弾性部材7は、凸部5に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びるベース部材と、
水平方向に延びるとともに前記ベース部材の上方に配置された可動部材と、
前記ベース部材と前記可動部材との間に配置され、前記可動部材を水平方向にスライド可能に支持する支持部と、
前記可動部材の下面から間隔をおいて、前記ベース部材の上面中央に固定された連結部と、
軸方向に伸縮可能かつ水平方向に屈曲可能な弾性部材であって、他の前記弾性部材から間隔をおいて前記連結部から水平方向に放射状に配置され、一端が前記連結部に連結され、他端が前記可動部材の下面側に連結された複数の前記弾性部材と、
上下方向に突出する凸部であって、前記可動部材の下面側において、各前記弾性部材の一端と他端との間にそれぞれ設けられた複数の前記凸部と、を備え、
各前記弾性部材の一端および他端のいずれかまたはその両方は、水平方向に回動可能に連結されており、
各前記弾性部材は、前記凸部に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている、防振装置。
【請求項2】
水平方向に延びるベース部材と、
水平方向に延びるとともに前記ベース部材の上方に配置された可動部材と、
前記ベース部材と前記可動部材との間に配置され、前記可動部材を水平方向にスライド可能に支持する支持部と、
前記可動部材の下面から間隔をおいて、前記ベース部材の上面中央に固定された連結部と、
軸方向に伸縮可能かつ水平方向に屈曲可能な弾性部材であって、他の前記弾性部材から間隔をおいて前記連結部から水平方向に放射状に配置され、一端が前記連結部に連結され、他端が前記可動部材の下面側に連結された複数の前記弾性部材と、
上下方向に突出する凸部であって、前記連結部の下面側において、各前記弾性部材の一端と他端との間にそれぞれ設けられた複数の前記凸部と、を備え、
各前記弾性部材の一端および他端のいずれかまたはその両方は、水平方向に回動可能に連結されており、
各前記弾性部材は、前記凸部に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている、防振装置。
【請求項3】
前記複数の弾性部材は、コイルばねによって構成されている、請求項1または2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記複数の弾性部材は、すべて同じ方向に屈曲させられている、請求項1または2に記載の防振装置。
【請求項5】
前記連結部は、前記連結部の水平方向の周囲を覆うクッション材を有する、請求項1または2に記載の防振装置。
【請求項6】
前記複数の凸部は、前記弾性部材の軸方向に直交する方向に移動可能に構成されている、請求項1または2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材を利用した防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、特許文献1に記載のように、自律して食器などを回収するロボットが開発されている。このようなロボットによって搬送されるものの中には壊れやすいものや、液体が入った容器などがあるので、搬送中の振動を緩和させる必要がある。
【0003】
そこで、搬送中の振動を緩和させる装置として、例えば、特許文献2に記載の防振装置がある。この防振装置は、ベース部材と、可動部材と、複数の転動体と、複数のコイルばねと、を備えている。転動体は、ベース部材と可動部材との間に配置されており可動部材を水平方向にスライドさせて水平方向の振動や衝撃を緩和させる。また、複数のコイルばねは、ベース部材と可動部材とに連結され、その弾性力によって、振動や衝撃を緩和させるとともにスライドした可動部材を元の位置に復帰させる。
【0004】
ところで、上述の防振装置は、可動部材のスライド距離が長いほど、より大きな振動を緩和させることができる。しかしながら、この防振装置では、コイルばねの軸方向への可動部材の可動範囲は、コイルばねの密着長さまでであるので、コイルばねの密着長さ分、可動部材のスライド距離が短くなり、その分、緩和可能な振動の大きさが制限される。言い換えると、上述の防振装置は、コイルばねの密着長さによって防振力を制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-134082号公報
【特許文献2】特開平9-370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、弾性部材の密着長さによって防振力を制限されない防振装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る防振装置は、水平方向に延びるベース部材と、水平方向に延びるとともにベース部材の上方に配置された可動部材と、ベース部材と可動部材との間に配置され、可動部材を水平方向にスライド可能に支持する支持部と、可動部材の下面から間隔をおいて、ベース部材の上面中央に固定された連結部と、軸方向に伸縮可能かつ水平方向に屈曲可能な弾性部材であって、他の弾性部材から間隔をおいて連結部から水平方向に放射状に配置され、一端が連結部に連結され、他端が可動部材の下面側に連結された複数の弾性部材と、上下方向に突出する凸部であって、可動部材の下面側において、各弾性部材の一端と他端との間にそれぞれ設けられた複数の凸部と、を備えている。各弾性部材の一端および他端のいずれかまたはその両方は、水平方向に回動可能に連結されており、各弾性部材は、凸部に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る別の構成の防振装置は、水平方向に延びるベース部材と、水平方向に延びるとともにベース部材の上方に配置された可動部材と、ベース部材と可動部材との間に配置され、可動部材を水平方向にスライド可能に支持する支持部と、可動部材の下面から間隔をおいて、ベース部材の上面中央に固定された連結部と、軸方向に伸縮可能かつ水平方向に屈曲可能な弾性部材であって、他の弾性部材から間隔をおいて連結部から水平方向に放射状に配置され、一端が連結部に連結され、他端が可動部材の下面側に連結された複数の弾性部材と、上下方向に突出する凸部であって、連結部の下面側において、各弾性部材の一端と他端との間にそれぞれ設けられた複数の凸部と、を備えている。各弾性部材の一端および他端のいずれかまたはその両方は、水平方向に回動可能に連結されており、各弾性部材は、凸部に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている。
【0009】
上記防振装置は、好ましくは、複数の弾性部材は、コイルばねによって構成されている。
【0010】
上記防振装置は、好ましくは、複数の弾性部材は、すべて同じ方向に屈曲させられている。
【0011】
上記防振装置は、好ましくは、連結部は、連結部の水平方向の周囲を覆うクッション材を有する。
【0012】
上記防振装置は、好ましくは、複数の凸部は、弾性部材の軸方向に直交する方向に移動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防振装置は、弾性部材が予め屈曲させられていることにより軸方向に荷重を受けないので、弾性部材の密着長さによって防振力を制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防振装置を示し、Aは平面図であり、Bは側面図である。
【
図3】Aは
図1および
図2のb-b断面図であり、BはAのB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る防振装置について説明する。図中において両矢印X、YおよびZは、左右方向、前後方向または上下方向をそれぞれ示し、互いに直交している。
【0016】
【0017】
図1および
図2に示すように、防振装置Sは、ベース部材1と、可動部材2と、6つの支持部3と、連結部4と、6つの凸部5と、6つのコイルばね7と、を備えている。なお、支持部3、凸部5およびコイルばね7の数は、一例であって、本発明の防振装置は、これに限定されない。
【0018】
ベース部材1は、樹脂製であって、水平に延びるプレートから構成されている。また、ベース部材1は、外形が円形に形成されている。これらは、単なる一例であって、本発明のベース部材1は、これに限定されない。例えば、ベース部材1は、金属製でもよく、外形を多角形状に形成されていてもよい。
【0019】
可動部材2は、樹脂製であって、水平に延び外形が円形状に形成されている。また、可動部材2の天面は、フラットに構成されており、防振対象物を載置することができるよう構成されている。
図2および
図3に示すように、可動部材2の下側は、その中央において、上下方向に凹んだ円形の凹部2aを有する。本発明の可動部材2は、例えば、金属製でもよく、外形を多角形状に形成されていてもよい。
【0020】
可動部材2は、下側に6つの係止部21をさらに有する。各係止部21は、上下方向に延びるとともに、可動部材2の周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されている。
【0021】
図1に示すように、可動部材2は、側面にマーク22を有している。マーク22は、後で説明するコイルばね7の配置位置を示すよう構成されている。
【0022】
支持部3は、金属製の球体から構成されている。6つの支持部3は、ベース部材1と可動部材2との間において、水平方向に互いに間隔をおいて円状に配置されている。支持部3は、いわゆるボールベアリングであって、可動部材2の下面に設けられた金属製のリングに回転可能にはめ込まれている。これにより、複数の支持部3は、ベース部材1の上面において可動部材2を水平方向にスライド可能に支持している。したがって、可動部材2は、振動や衝撃をスライドすることにより、緩和することができる。
【0023】
連結部4は、樹脂製であって、水平に延びる略円形のプレートから構成されている。
図3に示すように、連結部4は、可動部材2の上面から間隔をおいて、ベース部材1の上面中央において皿ネジによってベース部材1に固定されている。
【0024】
連結部4は、連結部4の水平方向の周囲を覆うクッション材40を有する。クッション材40は、凹部2aの内壁が連結部4に衝突することがあった場合、その衝撃を緩和することができる。クッション材40は、例えば、ゴム材によって構成されてもよく、また、スポンジ状に形成されてもよい。クッション材40の材質および形状は、特に限定されない。
【0025】
連結部4は、下側に6つの係止部41をさらに有する。各係止部41は、上下方向に延びるとともに、連結部4の周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されている。
【0026】
凸部5は、下方に突出し、凹部2aを囲むように、凹部2aの周囲にそれぞれ配置されている。凸部5は、可動部材2と一体的に形成されているが、単なる一例であって別個に構成されていてもよい。凸部5は、各支持部3の間において1つずつ配置されているが、その両側には、ビットを挿入可能な挿入穴6が設けられている。本実施形態では、ビットが挿入されることにより、当該ビットを凸部5としてさらに追加することができる。
【0027】
6つのコイルばね7は、互いに間隔をおいて連結部4から水平方向に放射状に配置され、第1端7aを係止部21に連結され、第2端7bを係止部41に連結されている。これにより、コイルばね7は、スライドした可動部材2をその弾性力によって元の位置に復帰させることができる。
【0028】
また、コイルばね7は、第1端7aを係止部21に水平方向に回動可能に連結され、第2端7bを係止部41に水平方向に回動可能に連結されている。さらに、コイルばね7は、凸部5に水平方向に接触し、予め水平方向に屈曲させられている。これにより、コイルばね7は、軸線方向に荷重を受けることがないので、座屈現象を生じさせずに屈曲することができ、可動部材2をスムーズにスライドさせることができる。
【0029】
また、
図3に示すように、コイルばね7は、係止部21、係止部41、凸部5および支持部3を除く他の構成よりも低い位置に配置されており、屈曲する際に接触するものがない。すなわち、防振装置Sは、コイルばね7を屈曲させるための空間を有しているので、
図4に示すように、コイルばね7の第1および第2端7a、7bは、自由に回動することができる。本実施形態の構成では、コイルばね7の第1端7aは、第1端7aと第2端7bとを結ぶ軸線に対して、約80度まで回転することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、コイルばね7の端部の屈曲方向をいずれの方向に規定しても、隣接するコイルばね7に接触することはないが、例えば、太いコイルばね7を使用する場合や、よりコンパクトな防振装置Sを構成する場合には、複数のコイルばね7の屈曲方向を同一方向に規定することにより(
図5参照)、隣接するコイルばね7同士の接触を防止することもできる。
【0031】
上記構成を備えていることにより、防振装置Sは、振動や衝撃があった場合、支持部3によって可動部材2を水平方向に自在にスライドさせて振動や衝撃を緩和させるとともに、スライドした可動部材2をコイルばね7によって緩やかに復帰させることができる。しかも、防振装置Sは、ビットを挿入穴6に差し込まれて凸部5が追加され、この追加された凸部5にコイルばね7を水平方向に接触させ屈曲させることにより、コイルばね7の弾力性を強めることもできる。さらに、防振装置Sは、防振対象物や設置される環境に基づいて、マーク22を基準に所定の方向に配置されることにより、コイルばね7の弾性力の方向を規定し、防振力をより効果的に発揮することができる。これは、特に、コイルばね7の数が少ないときに有効である。
【0032】
また、上記説明では、防振装置Sは、可動部材2を上側、ベース部材1を下側に配置するよう説明したが、上下逆さまに配置されても防振装置として機能を発揮することができる。
【0033】
さらに、防振装置Sは、1つの防振対象物の下に複数配置されて使用されてもよい。この場合、複数の防振装置Sの向きは、揃えてもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、防振装置Sは、マーク22を基準に、所定の方向に揃えて配置されたり、所定の方向に異ならせて配置されたりすることにより、防振力をより効果的に発揮することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態に係る防振装置Sについて説明してきたが、本発明の防振装置は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の防振装置Sは、例えば、以下のような変形例によって構成されてもよい。
【0035】
・ベース部材1および可動部材2の形状は、特に限定されない。例えば、ベース部材1および可動部材2はフレーム状に形成されていてもよい。
【0036】
・支持部3は、可動部材2を水平方向にスライド可能に支持することができれば、ベース部材1に設けられるか可動部材2に設けられるかを特に限定されない。また、支持部3は、ボールベアリングに限定されるものではない。例えば、支持部3は、可動部材2のスライド方向を一方向に限定する場合には、ローラで構成されていてもよい。
【0037】
・本発明の弾性部材は、コイルばね7に限定されない。例えば、弾性部材は、軸方向に伸縮可能かつ水平方向に屈曲可能な弾性部材であれば、波状に形成された板バネや蛇腹状に形成された弾性部材であってもよい。
【0038】
・凸部5は、例えば、
図5に示すように、ボルトで形成されてもよい。この場合、防振装置Sは、可動部材2の下面に周方向に延びる孔8を設けられ、凸部5をその孔8にナットで固定することにより、凸部5を弾性部材の軸方向に直交する方向に移動することができる。これにより、防振装置Sは、弾性部材の弾性力を調整することができる。
【0039】
・複数の凸部5は、例えば、連結部4に設けられていてもよく、この場合、弾性部材は、連結部4に設けられた凸部5によって、予め屈曲させられる。また、複数の凸部5のうちの一部が連結部4に設けられ、他の凸部5が可動部材2に設けられていてもよい。
【0040】
・コイルばね7は、座屈状態を生じることなく屈曲可能であれば、コイルばね7の第1端7aおよび第2端7bのいずれかが水平方向に回動可能に連結されていればよく、必ずしも第1端7aおよび第2端7bの両方が水平方向に回動可能に連結されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
S 防振装置
1 ベース部材
2 可動部材
2a 凹部
21 係止部
22 マーク
3 支持部
4 連結部
40 クッション材
41 係止部
5 凸部
6 挿入穴
7 コイルばね(弾性部材)
7a 第1端
7b 第2端
8 孔