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  • 特開-消火システム 図1
  • 特開-消火システム 図2
  • 特開-消火システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142403
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 5/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A62C5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054533
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】吉井 裕二
(57)【要約】
【課題】従来よりも泡の展開性を向上させることのできる消火システムを得る。
【解決手段】第1の放出指令を受信中に、火災発生の監視対象に向けて第1泡を放出する主発生器と、第2の放出指令を受信中に、監視対象に向けて第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する副発生器と、外部から火災信号を受信することで、主発生器に対して第1の放出指令を出力し、副発生器に対して第2の放出指令を出力する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放出指令を受信中に、火災発生の監視対象に向けて第1泡を放出する主発生器と、
第2の放出指令を受信中に、前記監視対象に向けて前記第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する副発生器と、
外部から火災信号を受信することで、前記主発生器に対して前記第1の放出指令を出力し、前記副発生器に対して前記第2の放出指令を出力する制御部と
を備える消火システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記火災信号を受信してからあらかじめ設定した第1時間が経過した後に前記第1の放出指令を出力し、前記火災信号を受信してからあらかじめ設定した第2時間が経過した後に前記第2の放出指令を出力する
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
放出方向指令に従って前記副発生器による放出方向を変更可能な放出方向調整機構部をさらに備え、
前記制御部は、あらかじめ決められた放出パターンに従って前記放出方向を変更させる指令として前記放出方向指令を出力する
請求項1または2に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、泡を放出して消火を行う消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災発生の監視対象に向けて泡を放出することで消火を行うシステムとして、高発泡消火設備がある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に開示された高発泡消火設備は、煙を泡に閉じ込めて、煙の発散を抑える働きを有する。
【0003】
従来の高発泡消火設備は、燃焼物の煙や熱気流で泡の生成が阻害されるため、発泡倍率が著しく低下していた。これに対して、非特許文献1に開示された高発泡消火設備は、火災室内の煙を吸引しながら、アスピレータ方式で発泡倍率約650倍の高倍率泡の発泡を行うことができるインサイドエア方式を実現している。
【0004】
さらに、非特許文献1に開示された高発泡消火設備は、煙を泡の中に閉じ込めて短時間で消火するため、従来の消火設備などと比較して、消火エリア外への煙の拡散が極めて少なく、火災への対応活動・避難活動が行いやすくなる効果もある。
【0005】
また、従来の高発泡消火設備は、新鮮な空気を外気から取り込む吸気口や、内圧を上げない排気口のための壁面貫通・建屋補強工事が必要となり、設備全体のコストが高まるだけでなく、建屋によっては設置できない場合もあった。
【0006】
これに対して、非特許文献1に開示された高発泡消火設備は、上述したように、インサイドエア方式を採用できるため、建屋の外壁に吸気口や排気口が不要になり、設備全体のコストダウンを図ることができる。さらに、非特許文献1に開示された高発泡消火設備は、薄型化・小型化・軽量化により、天井分散設置が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】能美防災 ホームページ 、高発泡消火設備「Perf-Ex(パーフェックス)」(https://www.nohmi.co.jp/product/bubble_fire_extinguishing/perf-ex/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高発泡消火設備によって放出される泡は、高倍率であり、泡の展開性が物理的な影響に左右されてしまう。具体的には、泡発生器の近傍に積み上がった泡が重さにより流れ出し、継続して泡発生器から発生される泡によって押されるように展開していく。
【0009】
従って、例えば、火災発生の監視領域内の床面にある燃料などの可燃物火災のように、広範囲に広がった火災を迅速に消火するためには、泡の展開性を向上させ、より広範囲にわたる火災を、より速く泡により閉じ込めることが望まれる。
【0010】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、従来よりも泡の展開性を向上させることのできる消火システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る消火システムは、第1の放出指令を受信中に、火災発生の監視対象に向けて第1泡を放出する主発生器と、第2の放出指令を受信中に、監視対象に向けて第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する副発生器と、外部から火災信号を受信することで、主発生器に対して第1の放出指令を出力し、副発生器に対して第2の放出指令を出力する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、従来よりも泡の展開性を向上させることのできる消火システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態1に係る消火システムの全体構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る消火システムが有する主発生器と副発生器とを併用する効果を示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態2に係る消火システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の消火システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る消火システムは、高発泡倍率の泡による消火を行う際に、低発泡倍率の泡あるいは水溶液を併用することで、高発泡倍率の泡の展開性を向上させ、より広範囲にわたる火災を、より迅速に泡により閉じ込めることを技術的特徴とするものである。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る消火システムの全体構成図である。本実施の形態1に係る消火システムは、消火器本体10と、制御部20とを備えて構成されている。消火器本体10は、火災発生の監視対象に向けて第1泡を放出する主発生器11と、監視対象に向けて第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する副発生器12とを含んでいる。
【0016】
本実施の形態1に係る消火システムは、泡を放射して消火を行う泡消火設備に分類される。泡消火設備を用いるに当たっては、防護対象物の特性に応じて、適切な発泡器、泡消火薬剤の種類、混合比率、発泡倍率、発泡器などを選定することとなる。ここで、発泡倍率とは、泡水溶液と、生成された泡との体積比を意味しており、大別すると、以下のような発泡倍率がある。
・低発泡(倍率20以下)
・中発泡(倍率20を越え80未満)
・高発泡(倍率80以上1000未満)
【0017】
ここで、図1に示した主発生器11から放出される第1泡としては、非特許文献1に開示されたような高発泡泡を採用することができる。高発泡倍率を有する第1泡を用いて、煙を第1泡の中に閉じ込めることで、短時間での消火を実現できる。
【0018】
一方、副発生器12は、消火の目的とともに、第1泡の展開性を向上させる目的で、第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する。従って、第1泡として高発泡泡を採用する場合における第2泡としては、中発泡泡あるいは低発泡泡を用いることが考えられる。
【0019】
すなわち、本実施の形態1に係る消火システムは、発泡倍率の異なる2種類の泡を併用することで、より高い発泡倍率の泡の展開性を向上させ、より広範囲にわたる火災を、より迅速に泡により閉じ込めることを可能としている。図2は、本開示の実施の形態1に係る消火システムが有する主発生器11と副発生器12とを併用する効果を示した説明図である。
【0020】
主発生器11から放出される第1泡は、放出先の近傍に積み上がり、第1泡の自重により流れ出し、継続して主発生器11から放出される第1泡に押されるように展開していく。
【0021】
これに対して、副発生器12から放出される第2泡または水溶液は、第1泡の径よりも小径であり、図2に示すように、第1泡の下層に積層される。また、副発生器12から放出される第2泡または水溶液は、小径であるため、第1泡よりも展開性がよく、第1泡よりも迅速に、火災発生の監視領域内の床面30の広範囲に広がることができる。
【0022】
この結果、第2泡または水溶液の上に積層されることとなった第1泡は、第2泡または水溶液とともに、より迅速により広範囲に展開されることとなる。
【0023】
制御部20は、外部から火災信号を受信することで、主発生器11に対して第1の放出指令を出力し、副発生器12に対して第2の放出指令を出力する。これに対して、主発生器11は、制御部20から第1の放出指令を受信中に第1泡を放出し、副発生器12は、制御部20から第2の放出指令を受信中に第1泡よりも発泡倍率の低い第2泡または水溶液を放出する。
【0024】
ここで、制御部20は、監視対象における火災検出処理を統括制御する火災受信機などから火災信号を受信することができる。あるいは、制御部20は、手動操作によってボタンが押下されることで生成された火災信号を受信することもできる。
【0025】
なお、制御部20は、火災信号を受信してから、あらかじめ設定した第1時間が経過した後に第1の放出指令を出力し、火災信号を受信してから、あらかじめ設定した第2時間が経過した後に第2の放出指令を出力するように、消火器本体10による放出タイミングを制御することができる。
【0026】
第1時間および第2時間は、いずれも0秒以上の値として、監視対象に適した値としてあらかじめ設定しておくことができる。例えば、第1時間および第2時間がともに0秒として設定されていた場合には、制御部20は、外部から火災信号を受信することで、直ちに第1の放出指令および第2の放出指令を出力し、主発生器11と副発生器12を同時に起動させることができる。
【0027】
また、第1時間と第2時間を異なる値としてあらかじめ設定しておくことで、制御部20は、主発生器11と副発生器12を異なるタイミングで起動させることができる。さらに、制御部20は、第1の放出指令の出力を停止することで主発生器11を所望のタイミングで停止させ、第2の放出指令の出力を停止することで副発生器12を所望のタイミングで停止させることができる。
【0028】
主発生器11を先に起動し、副発生器12を後から起動させた場合にも、第2泡または水溶液は、第1泡の径よりも小径であるため、図2に示したように、第1泡の間を通過して床面30に到達し、第1泡の展開性の向上に寄与することができる。
【0029】
以上のように、実施の形態1によれば、高発泡倍率の泡による消火を行う際に、低発泡倍率の泡あるいは水溶液を併用することで、高発泡倍率の泡の展開性を向上させ、より広範囲にわたる火災を、より迅速に泡により閉じ込めることができる消火システムを実現できる。
【0030】
実施の形態2.
本実施の形態2では、副発生器12による放出方向を変更可能な構成をさらに備えることで、所望の方向の展開性を向上させることができる消火システムについて説明する。
【0031】
図3は、本開示の実施の形態2に係る消火システムの全体構成図である。本実施の形態2に係る消火システムは、先の実施の形態1に係る図1の構成と比較すると、消火器本体10として放出方向調整機構部13をさらに備えている点が異なっている。そこで、本実施の形態2の特徴である放出方向調整機構部13を中心に以下に説明する。
【0032】
放出方向調整機構部13は、制御部20から出力される放出方向指令に従って、副発生器12による放出方向を2次元あるいは3次元で変更可能とする機構部である。制御部20は、あらかじめ決められた放出パターンに従って放出方向を変更させる指令として放出方向指令を出力し、放出方向調整機構部13を稼働させる。
【0033】
監視対象によっては、ある特定の方向に対して、より迅速に泡の展開性を向上させたい場合が考えられる。例えば、ある施設の入口付近で泡による消火を行う際には、その施設の奥側に煙が進入することを優先して防止するためには、奥側に対する泡の展開性を向上させることが効果的である。
【0034】
従って、制御部20は、このような効果を得るために、あらかじめ決められた放出パターンに従って放出方向を変更させる指令として放出方向指令を出力し、放出方向調整機構部13を稼働させる。
【0035】
なお、あらかじめ決められた放出パターンとしては、最初の所定時間だけ放出方向を変更させ、所定時間が経過した後は放出方向を固定にすることで、特定の方向に進行する煙の消火を優先させるパターンとしてあらかじめ設定しておくことが可能である。
【0036】
あるいは、あらかじめ決められた放出パターンの別の例としては、主発生器11の放出方向から徐々に広がるように、放出方向を順次変更することで、周囲全体に泡を展開させるパターンとしてあらかじめ設定しておくことが可能である。
【0037】
以上のように、実施の形態2によれば、副発生器12による放出方向を変更可能な構成をさらに備えており、監視領域の特性に応じて、所望の方向に対する泡の展開性を優先させて、泡消火を実行することができる。
【0038】
具体的には、副発生器の放出方向を制御できる構成を備えることで、長く直線的に泡を展開させたい、左右方向により早く泡を展開させたいなど、現場に合わせた展開性の向上が実現できる。
【符号の説明】
【0039】
10 消火器本体、11 主発生器、12 副発生器、20 制御部、30 床面。
図1
図2
図3