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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142407
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】回転電機システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/24 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K3/24 J
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054540
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】丁子 達也
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA13
5H603AA15
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CA10
5H603CB03
5H603CB19
5H603CC03
5H603CE01
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604QB01
5H604QB15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発熱による効率の低下及び劣化を抑制する回転電機システムを提供する。
【解決手段】回転電機システムにおいて、中性点固定構造144は、中性点272に設けられた中性点端子274と、中性点端子274とコイルエンド部154との間に設けられた絶縁部材276と、中性点端子274と絶縁部材276との間で液体冷媒を通過させるための冷媒通路278とを有する。中性点端子274は、絶縁部材276を介してコイルエンド部154に固定される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを有する回転電機と、前記回転電機を収容するハウジングとを備える回転電機システムであって、
前記ハウジングは、前記ステータを収容し、且つ、前記ステータを冷却する液体冷媒が流通するステータ室を有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
前記ステータコアに巻回された複数の導線によって形成される複数のコイルからなり、複数のコイルの端部であるコイルエンド部を有するコイルユニットと、
前記コイルユニットから引き出した複数の前記導線の末端を束ねて結線した中性点を前記コイルエンド部に固定する中性点固定構造と、
を有し、
前記中性点固定構造は、
前記中性点に設けられた中性点端子と、
前記中性点端子と前記コイルエンド部との間に設けられた絶縁部材と、
前記中性点端子と前記絶縁部材との間で前記液体冷媒を通過させるための冷媒通路と、
を有し、
前記中性点端子は、前記絶縁部材を介して前記コイルエンド部に固定される、回転電機システム。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機システムにおいて、
前記絶縁部材は、前記コイルエンド部に配置され、且つ、前記中性点端子が配置される台座である、回転電機システム。
【請求項3】
請求項2記載の回転電機システムにおいて、
前記台座は、互いに反対側の面である第1面と第2面とを有し、
前記第1面には、前記中性点端子が配置され、
前記第2面は、前記コイルエンド部に当接し、
前記冷媒通路は、前記第1面及び前記第2面と平行に延びている、回転電機システム。
【請求項4】
請求項3記載の回転電機システムにおいて、
前記台座の前記第1面には、第1凹部が前記第1面に沿って形成され、
前記第1凹部が前記冷媒通路を構成する、回転電機システム。
【請求項5】
請求項4記載の回転電機システムにおいて、
前記台座の前記第1面には、2つの前記第1凹部が前記第1面に沿って形成され、
2つの前記第1凹部は、交差している、回転電機システム。
【請求項6】
請求項4記載の回転電機システムにおいて、
前記中性点端子は、外周面が前記台座の前記第1面に当接する筒状部材であり、
前記筒状部材の内側空間には、前記コイルユニットから引き出された複数の前記導線の末端が挿入され、
前記筒状部材のうち、前記第1凹部と向かい合う部分が前記筒状部材の内側に凹むことにより第2凹部が形成され、
前記第1凹部と前記第2凹部とによって前記冷媒通路が構成される、回転電機システム。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の回転電機システムにおいて、
前記中性点固定構造は、前記台座と該台座に配置された前記中性点端子とに巻回された第1糸部材をさらに有する、回転電機システム。
【請求項8】
請求項7記載の回転電機システムにおいて、
前記台座の表面のうち、前記中性点端子と接触しない部分には、前記第1糸部材を係止させるための係止溝が形成されている、回転電機システム。
【請求項9】
請求項2~6のいずれか1項に記載の回転電機システムにおいて、
前記中性点固定構造は、前記コイルエンド部と該コイルエンド部に配置された前記台座とに巻回された第2糸部材をさらに有する、回転電機システム。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の回転電機システムにおいて、
前記ロータは、回転シャフトと、前記回転シャフトに設けられた永久磁石とを有し、
前記回転電機システムは、前記ステータ室に前記液体冷媒である冷却油を循環供給する油循環供給装置をさらに備え、
前記油循環供給装置は、前記冷却油を前記ステータ室に供給する油供給ラインと、前記ステータ室を流通した前記冷却油を回収する油回収ラインをと有する、回転電機システム。
【請求項11】
請求項10記載の回転電機システムにおいて、
前記回転シャフトの径方向において、前記ロータと前記ステータとの間に介在する円筒状の隔壁部材をさらに備え、
前記隔壁部材は、前記ハウジングの内部を、前記ステータ室と、前記ロータを収容したロータ室とに区画する、回転電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルエンド部に中性点を配置することが開示されている。特許文献1では、冷却機構から中性点に液体冷媒を適下することにより、中性点が冷却される。特許文献2には、コイルエンド部に中性点端子を配置することが開示されている。特許文献2では、コイルエンド部及び中性点端子に向かって液体冷媒を吐出することで、コイルエンド部及び中性点端子を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-002647号公報
【特許文献2】特開2019-176626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2では、コイルエンド部に中性点(中性点端子)が配置されているので、回転電機の動作時にコイルに発生した熱がコイルエンド部から中性点に伝わる。従って、中性点が高温にならないことが望まれている。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、ロータ及びステータを有する回転電機と、前記回転電機を収容するハウジングとを備える回転電機システムであって、前記ハウジングは、前記ステータを収容し、且つ、前記ステータを冷却する液体冷媒が流通するステータ室を有し、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻回された複数の導線によって形成される複数のコイルからなり、複数のコイルの端部であるコイルエンド部を有するコイルユニットと、前記コイルユニットから引き出した複数の前記導線の末端を束ねて結線した中性点を前記コイルエンド部に固定する中性点固定構造と、を有し、前記中性点固定構造は、前記中性点に設けられた中性点端子と、前記中性点端子と前記コイルエンド部との間に設けられた絶縁部材と、前記中性点端子と前記絶縁部材との間で前記液体冷媒を通過させるための冷媒通路と、を有し、前記中性点端子は、前記絶縁部材を介して前記コイルエンド部に固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中性点端子が絶縁部材を介してコイルエンド部に固定されるので、回転電機の動作時に高温となるコイルエンド部と、中性点端子とを熱的に分離することができる。これにより、コイルと中性点端子との双方が高温になることを回避することができる。
【0008】
また、中性点端子と絶縁部材との間に設けられた冷媒通路を液体冷媒が通過するので、液体冷媒によって中性点端子を冷却することができると共に、コイルエンド部から中性点端子への熱伝導を低減することができる。これにより、中性点端子の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
従って、本発明では、回転電機の発熱による該回転電機の効率の低下及び劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る回転電機システム及び複合動力システムの斜視図である。
図2図2は、回転電機システムの断面図である。
図3図3は、回転電機システムの一部断面図である。
図4図4は、ステータ室内を流通する冷却油の流通方向を示す回転電機システムの一部断面図である。
図5図5は、回転電機システムにおける潤滑油流路の一例を模式的に示した系統図である。
図6図6は、中性点端子及び台座の斜視図である。
図7図7は、台座の斜視図である。
図8図8は、コイルの端部、台座及び中性点端子の断面図である。
図9図9は、本実施形態の変形例でのコイルの端部及び中性点端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る回転電機システム10及び複合動力システム12の斜視図である。
【0012】
複合動力システム12は、回転電機システム10と、ガスタービンエンジン14とを備える。回転電機システム10及びガスタービンエンジン14の各々は、長手方向(軸線方向)に沿って延在する。回転電機システム10の軸線と、ガスタービンエンジン14の軸線とは、一致する。換言すれば、回転電機システム10とガスタービンエンジン14とは、同一軸線上に並列配置されている。
【0013】
なお、以下の説明において、「左」、「右」、「下」及び「上」のそれぞれは、図2図4における左方、右方、下方及び上方を指す。しかしながら、これらの方向は、説明を簡素化して理解を容易にするための便宜的な方向付けである。すなわち、明細書に記載した方向が、複合動力システム12を実使用するときの方向であるとは限らない。
【0014】
また、以下の説明では、回転電機システム10及びガスタービンエンジン14のそれぞれの軸線方向の左端を、第1端と表記することもある。同様に、回転電機システム10及びガスタービンエンジン14のそれぞれの軸線方向の右端を、第2端と表記することもある。
【0015】
すなわち、回転電機システム10において、ガスタービンエンジン14(図1参照)から離間する左端部は第1端である。回転電機システム10において、ガスタービンエンジン14に近接する右端部は第2端である。また、ガスタービンエンジン14において、回転電機システム10に近接する左端部は第1端である。ガスタービンエンジン14において、回転電機システム10から離間する右端部は第2端である。この定義に従えば、図示例では、ガスタービンエンジン14は、回転電機システム10の第2端に配設されている。回転電機システム10は、ガスタービンエンジン14の第1端に配設されている。
【0016】
図1に示すように、複合動力システム12は、例えば、飛翔体、船舶又は自動車等において、推進の動力源として利用される。飛翔体の好適な具体例としては、ドローン又はマルチコプタ等が挙げられる。複合動力システム12は、飛翔体に搭載されたときには、例えば、プロップ、ダクテッドファン等を回転付勢する動力駆動源とされる。複合動力システム12は、船舶に搭載されたときには、スクリューの回転力発生装置とされる。複合動力システム12は、自動車に搭載されたときには、モータを回転付勢する動力駆動源とされる。
【0017】
複合動力システム12は、航空機、船舶又は建物等において、補助電源の動力源として利用することもできる。この他、複合動力システム12をガスタービン発電設備として利用することも可能である。
【0018】
ガスタービンエンジン14は内燃機関である。また、ガスタービンエンジン14は、圧縮エア(気体)を供給するガス供給装置である。
【0019】
先ず、回転電機システム10について説明する。図2は、回転電機システム10の断面図である。図3は、回転電機システム10(図2参照)の要部の拡大断面図である。回転電機システム10は、回転電機16(例えば、発電機)と、該回転電機16を収納した回転電機ハウジング18(ハウジング)とを備える。
【0020】
図1及び図2に示すように、回転電機ハウジング18は、メインハウジング20と、第1サブハウジング22と、第2サブハウジング24とを有する。メインハウジング20は、略円筒形状をなし、第1端及び第2端の双方が開放端である。第1サブハウジング22は、メインハウジング20の第1端(左開放端)に連結される。第2サブハウジング24は、メインハウジング20の第2端(右開放端)に連結される。以上により、メインハウジング20の第1端及び第2端が閉塞される。
【0021】
メインハウジング20は、左右方向に沿って延在する厚肉の側壁を有する。メインハウジング20には、中空内部が形成されている。この中空内部は、隔壁部材26により、ロータ室28とステータ室30とに区分されている。ロータ室28は、隔壁部材26の内周側(内部)に形成された部屋である。ステータ室30は、隔壁部材26の外周側(外部)に形成された部屋である。
【0022】
メインハウジング20の側壁の内部には、冷却ジャケット32が形成されている。冷却ジャケット32には、冷却水等の冷却媒体が流通する。冷却ジャケット32は、例えば、ウォータジャケットである。
【0023】
メインハウジング20の側壁の外面(外側壁)には、第1端の縁部近傍に、第1ケーシング34及び第2ケーシング36が設けられている。第1ケーシング34及び第2ケーシング36は、メインハウジング20の一部位である。すなわち、第1ケーシング34及び第2ケーシング36は、メインハウジング20と一体的に設けられる。第1ケーシング34は、端子ケーシングである。第2ケーシング36は、測定器ケーシングである。
【0024】
図4に示すように、第1ケーシング34の内部には、下方の接点室38と、上方の端子室40とが形成される。接点室38は、ステータ室30に連通する。接点室38には、第1ケーシング34における第1端を向く端面で開口する差込口42が形成される。差込口42は、蓋部材44で閉塞される。
【0025】
第1サブハウジング22には、回転パラメータ検出器を保持する保持部材が連結される。本実施形態では、回転パラメータ検出器としてレゾルバ46を例示する。従って、以降は、検出器の保持部材を「レゾルバホルダ48」と表記する。
【0026】
回転電機16は、ロータ50と、該ロータ50の外周を囲むステータ52とを備える。ロータ50は、回転シャフト54を含む。隔壁部材26は、回転シャフト54の直径方向において、ロータ50とステータ52との間に介在する。従って、ロータ50は、隔壁部材26の内周側に位置する。換言すれば、ロータ50は、ロータ室28に収容されている。ステータ52は、隔壁部材26の外周側に位置する。換言すれば、ステータ52は、ステータ室30に収容されている。
【0027】
回転シャフト54は、内シャフト56と、中空筒状の外シャフト58とを有する。外シャフト58の両端は、開放端である。すなわち、図2に示すように、外シャフト58は、左開口端60と、右開口端62とを有する。内シャフト56は、外シャフト58の内部に挿抜可能に挿入される。
【0028】
内シャフト56は、外シャフト58に比して長尺である。内シャフト56は、左端部64及び右端部66を有する。左端部64は、内シャフト56において、ガスタービンエンジン14から離間する端部(第1端)である。右端部66は、内シャフト56において、ガスタービンエンジン14に近接する端部(第2端)である。
【0029】
左端部64の一部は、外シャフト58の左開口端60から露出する。左開口端60から露出した部分は、突出先端68である。内シャフト56の左端部64には、レゾルバロータ69が装着される。
【0030】
また、内シャフト56の左端部64に形成された外ネジ部には、大キャップナット70が螺合される。大キャップナット70の右端は、外シャフト58の左開口端60の外周壁を覆う。これにより、内シャフト56の左端部64が、外シャフト58の左開口端60に拘束される。
【0031】
図2に示すように、内シャフト56の第2端である右端部66には、連結孔72が形成される。連結孔72は、第1端である左端部64に向かって延在する。連結孔72の内周壁には、雌ネジ部74が刻設されている。連結孔72には、出力シャフト76の左端が挿入される。出力シャフト76の左端は、雌ネジ部74に螺合されることで内シャフト56に結合される。出力シャフト76は、ガスタービンエンジン14(図1参照)内のコンプレッサホイール78及び不図示のタービンホイールを保持している。
【0032】
図2図4に示すように、外シャフト58の左開口端60の外周壁には、ベアリングストッパの1つである第1外ストッパ80が設けられる。外シャフト58の左開口端60の外周壁には、ベアリングストッパの別の1つである第1内ストッパ82が設けられる。第1外ストッパ80と第1内ストッパ82との間に、第1ベアリング84が挟まれる。
【0033】
外シャフト58の左開口端60と右開口端62との間には、筒部材86を介して永久磁石88が保持されている。ロータ50は、回転シャフト54、筒部材86及び永久磁石88を含んで構成される。筒部材86には、該筒部材86の軸線方向に沿って延びる内孔73が形成される。内孔73には、回転シャフト54が通される。従って、筒部材86は、回転シャフト54の直径方向において、回転シャフト54と永久磁石88との間に介在する。
【0034】
筒部材86及び永久磁石88は、回転シャフト54の軸線方向において、第1磁石ストッパ90と、第2磁石ストッパ92とに挟まれる。第1磁石ストッパ90及び第2磁石ストッパ92は、回転シャフト54の外表面を覆う。これにより、筒部材86が回転シャフト54の軸線方向に位置決めされる。すなわち、筒部材86及び永久磁石88の回転シャフト54の軸線方向への位置ズレが防止される。このように、第1磁石ストッパ90及び第2磁石ストッパ92は、永久磁石88を位置決めする。
【0035】
回転シャフト54の左端(第1端)は、第1ベアリング84を介して第1サブハウジング22に回転可能に支持される。第1ベアリング84は、外シャフト58と第1サブハウジング22との間に挿入される。具体的には、第1サブハウジング22は、メインハウジング20に向かって突出した円柱状突部94を有する。円柱状突部94には、第1挿入孔96が形成されている。第1挿入孔96には、第1ベアリング84を保持した第1ベアリングホルダ81が挿入される。従って、第1ベアリング84が第1挿入孔96に配置される。
【0036】
第1挿入孔96は、左右方向に沿って延在している。第1挿入孔96の左端は、該第1挿入孔96の右端よりも出力シャフト76から離間する。以下、第1挿入孔96の左端を「第1遠位端100」とも表記する。第1挿入孔96の右端は、該第1挿入孔96の左端(第1遠位端100)よりも出力シャフト76に近接する。以下、第1挿入孔96の右端を「第1近位端102」とも表記する。
【0037】
回転シャフト54の左端部の先端は、第1ベアリング84の内孔に通された後、第1挿入孔96を通過する。回転シャフト54の左端部の先端は、さらに、円柱状突部94の外方に露出する。
【0038】
外シャフト58には、第2ベアリング104が設けられる。第2ベアリング104は、回転シャフト54の右端(第2端)を第2サブハウジング24に回転可能に支持する。第2ベアリング104は、外シャフト58と、略円板形状をなす第2サブハウジング24との間に挿入される。
【0039】
第2サブハウジング24は、図示しないボルトを介してメインハウジング20に連結される。該第2サブハウジング24の中心は、厚肉の円筒形状部となっている。該円筒形状部には、第2挿入孔110が形成されている。第2挿入孔110は、左右方向に沿って延在している。第2挿入孔110の左端は、該第2挿入孔110の右端よりも出力シャフト76から離間する。以下、第2挿入孔110の左端を「第2遠位端112」(図5参照)とも表記する。第2挿入孔110の右端は、該第2挿入孔110の左端(第2遠位端112)よりも出力シャフト76に近接する。以下、第2挿入孔110の右端を「第2近位端114」とも表記する。
【0040】
第2挿入孔110には、第2ベアリング104を保持した第2ベアリングホルダ116が挿入される。従って、第2ベアリング104が第2挿入孔110に配置される。第2ベアリング104は、第2遠位端112に位置する第2内ストッパ118と、第2近位端114に位置する第2外ストッパ120とで挟持される。この挟持に基づいて、第2ベアリング104が回転シャフト54の軸線方向に位置決め固定される。このように、第2内ストッパ118及び第2外ストッパ120はベアリングストッパである。
【0041】
第2サブハウジング24において、ガスタービンエンジン14を向く端面には、整流部材122が連結される。整流部材122は、裾部124と、縮径部126と、頂部128とを有する。第2サブハウジング24を向く裾部124は、大径且つ薄肉の円筒板形状である。ガスタービンエンジン14を向く頂部128は、小径且つ比較的長尺な円筒板形状である。裾部124と頂部128との間の縮径部126では、直径が漸次的に小さくなる。従って、整流部材122は、山形形状体又は無底カップ形状体である。縮径部126の外表面は、表面粗さが小さい平滑面とされている。
【0042】
裾部124において、第2サブハウジング24を向く端面には、導入口130が形成されている。また、縮径部126は中空である。すなわち、縮径部126の内部には中継室132が形成されている。導入口130は、圧縮エアの中継室132への入力口である。
【0043】
頂部128には、左右方向に沿って挿通孔134が形成されている。挿通孔134の直径(開口径)は、第2外ストッパ120において、回転シャフト54に沿って延在する部位の外径よりも大きい。このため、第2外ストッパ120において、挿通孔134内に進入した部位及び外周壁は、挿通孔134の内壁から離間する。中継室132は、挿通孔134に接近するに従って幅広となる。
【0044】
また、挿通孔134の直径(開口径)は、コンプレッサホイール78において、比較的小径な左端(小径円筒部136)の外径よりも大きい。このため、挿通孔134内に進入した小径円筒部136も、挿通孔134の内壁から離間する。換言すれば、小径円筒部136の外周壁と、挿通孔134の内壁との間にはクリアランスが形成されている。
【0045】
ステータ52は、上記のロータ50と共に回転電機16を構成する。ステータ52は、ステータコア140と、コイルユニット142と、中性点固定構造144とを有する。
【0046】
ステータコア140は、円筒状の部材である。ステータコア140は、リング状の電磁鋼板を軸線方向に複数枚積層することで構成される。ステータコア140には、複数のスロットが形成される。複数のスロットは、ステータコア140の内側で、周方向に間隔を空けて形成されている。隣接するスロットの間には、ティース部が形成される。
【0047】
コイルユニット142は、複数の電磁コイル150(コイル)を有する。複数の電磁コイル150は、U相コイル、V相コイル及びW相コイルである。複数の電磁コイル150の各々は、ステータコア140のティース部に導線152(図8及び図9参照)が巻回されることで構成される。そのため、複数の電磁コイル150は、ステータコア140に対して円環形状に配列されている。
【0048】
複数の電磁コイル150のうち、ステータコア140から軸線方向に突出する部分が、当該電磁コイル150の端部となる。複数の電磁コイル150の端部は、コイルエンド部154を構成する。すなわち、コイルユニット142は、複数の電磁コイル150の端部であるコイルエンド部154を有する。
【0049】
なお、回転電機16が発電機である場合、該回転電機16はいわゆる三相電源である。
【0050】
上記したように、ロータ50とステータ52との間に隔壁部材26が介在される。隔壁部材26は円筒形状体である。従って、隔壁部材26は、ロータ50の大部分を外周側から囲んでいる。これにより、隔壁部材26の内部にロータ室28が形成される。該ロータ室28には、ロータ50が収容される。
【0051】
ロータ室28には、気体である圧縮エアが流通する。第1サブハウジング22には、ロータ室28に圧縮エアを送るため、3個の起路160が形成されている。図2には、3個の起路160のうち1個が示されている。
【0052】
1個の起路160は、第1サブハウジング22の第1端から第2端に向かうにつれて、第1サブハウジング22の直径方向外方から直径方向内方に向かうように傾斜している。起路160の第1端は、第1サブハウジング22における第1端を向く端面で開口している。この開口は、圧縮エアの回転電機ハウジング18内部への入口である。起路160の第2端は、隔壁部材26の第1端を向いて開口している。この開口は、圧縮エアのロータ室28への入口である。
【0053】
圧縮エアの一部は、起路160から第1ベアリング84に向かう。圧縮エアの残る一部は、起路160からロータ室28を経由し、第2ベアリング104に向かう。このように、ロータ室28における圧縮エアの流通方向は、第1端から第2端に向かう第1方向である。
【0054】
図3に示すように、円柱状突部94の第2端における先端は、ステータ52の内孔と、隔壁部材26の第1端における外周壁との間に進入する。円柱状突部94の第2端における先端には、第1シール部材162が設けられる。第1シール部材162は、Oリングである。第1シール部材162は、円柱状突部94の第2端における先端と、隔壁部材26の第1端における外周壁との間をシールする。
【0055】
図2に示すように、隔壁部材26の外周壁とメインハウジング20とで空間が形成される。この空間が、ステータ室30である。ステータ室30には、ステータ52が収容される。ステータ室30の内壁とステータコア140とは、互いに若干離間している。すなわち、ステータ室30の内壁とステータコア140との間にクリアランスが形成される。このクリアランスにより、メインハウジング20とステータ52とが電気的に絶縁される。
【0056】
ステータ室30には冷却油(冷却媒体)が流通する。冷却油は、第1ベアリング84及び第2ベアリング104に供給される潤滑油の一部である。すなわち、ステータ室30は、回転電機ハウジング18の内部に形成されたハウジング内油路の一部である。ここで、隔壁部材26の外周壁と、ステータコア140との間にもクリアランスが形成されている。このクリアランスも、油路の一部である。以下、この油路を「ステータ内周側油路170」と呼ぶ。なお、ステータ室30(ハウジング内油路)及びステータ内周側油路170を流通する潤滑油は、第1ベアリング84及び第2ベアリング104に供給される潤滑油から分けられた分流である。
【0057】
第2サブハウジング24において、第1端を向く面には、内環状突部172及び外環状突部174が同心円状に設けられる。内環状突部172は、外環状突部174の内周に位置する。内環状突部172と外環状突部174との間に、円環状凹部176が形成される。該円環状凹部176には、コイルユニット142が挿入される。
【0058】
内環状突部172は、環状ホルダ180の貫通孔に通されている。環状ホルダ180の第2端は、フランジ状に拡径し且つ円環状凹部176の第1端の端面に当接している。
【0059】
環状ホルダ180の第1端は、隔壁部材26に向かって延びている。環状ホルダ180の第1端において、隔壁部材26の外周壁を向く内面には、第2シール部材182が設けられる。第2シール部材182は、Oリングである。第2シール部材182は、環状ホルダ180の第1端における内周壁と、隔壁部材26の第2端における外周壁との間をシールする。
【0060】
内環状突部172と、隔壁部材26の第2端における内周壁との間には、環状ガイド184が介在する。環状ガイド184の第1端は、第2端に向かうにつれてテーパ状に拡径するテーパ部186である。環状ガイド184において、隔壁部材26の内周壁を向く外面には、第3シール部材188が設けられる。第3シール部材188は、Oリングである。第3シール部材188は、環状ガイド184の外周壁と、隔壁部材26の第2端における内周壁との間をシールする。
【0061】
第1シール部材162、第2シール部材182及び第3シール部材188により、ロータ室28とステータ室30とが互いに独立空間となる。これにより、例えば、ロータ室28に供給された圧縮エアがステータ室30に漏洩することが防止される。また、ステータ室30に供給された潤滑油がロータ室28に漏洩することも防止される。
【0062】
隔壁部材26の第1端における外周壁は、第1シール部材162を介して第1サブハウジング22に接触する。隔壁部材26の第2端は、第2シール部材182及び第3シール部材188を介して、環状ガイド184と環状ホルダ180とに挟まれる。
【0063】
隔壁部材26の肉厚が大きい場合、隔壁部材26の重量が大きくなり、且つ回転電機16が直径方向に沿って大きくなる。また、肉厚が大きな隔壁部材26は、永久磁石88と電磁コイル150との間の交番磁界を遮る。以上のような不具合を回避するため、肉厚は、可及的に小さいことが好ましい。肉厚は、例えば、1mm前後であることが好ましい。
【0064】
従って、隔壁部材26は、薄肉であっても十分な強度及び剛性を有する素材からなることが好ましい。そのような素材の好適な例としては、セラミックスが挙げられる。ロータ50とステータ52との間の交番磁界が遮られることを回避するため、絶縁性で且つ非磁性のセラミックスが特に好適である。その具体例としては、窒化アルミ(AlN)、窒化ケイ素(Si)及びアルミナ(Al)が挙げられる。このうち、アルミナは安価であることから特に好ましい。
【0065】
上記したように、メインハウジング20の左端近傍の側壁には、第1ケーシング34及び第2ケーシング36が一体的に設けられる。図4に示すように、第1ケーシング34の端子室40には、U相端子190、V相端子192及びW相端子194が収納される。U相端子190は、複数の電磁コイル150のうち、複数のU相コイルと電気的に接続される。V相端子192は、複数の電磁コイル150のうち、複数のV相コイルと電気的に接続される。W相端子194は、複数の電磁コイル150のうち、複数のW相コイルと電気的に接続される。U相端子190、V相端子192及びW相端子194は、外部機器(外部負荷又は外部電源)と電気的に接続される電気端子部である。回転電機16で発生した電力は、外部機器に供給される。外部負荷としては、例えば、図示しないモータが挙げられる。別の外部機器としては、例えば、バッテリが挙げられる。
【0066】
U相端子190と複数のU相コイルとの電気的接点は、第1ケーシング34の接点室38に設けられる。V相端子192と複数のV相コイルとの電気的接点も同様に、接点室38に設けられる。W相端子194と複数のW相コイルとの電気的接点も同様に、接点室38に設けられる。V相端子192と複数のV相コイルとの電気的接点を例示して説明すると、V相端子192は、閉塞凸部196を有する。閉塞凸部196は、接点室38と端子室40との連通開口を閉塞する。この閉塞により、接点室38と端子室40とが互いに独立空間となる。
【0067】
閉塞凸部196には、V相端子192の端子部198が設けられる。端子部198は、接点室38内に延びる。また、V相コイルの端部から引き出された導線152の一端部(先端)である端子線200は、接点室38に引き回される。接点室38内では、端子部198と端子線200とが、ビス202を介して接続される。これにより、V相端子192と複数のV相コイルとが電気的に接続される。特に図示しないが、U相端子190及びU相コイルも同様に、接点室38内で接続される。W相端子194及びW相コイルも同様に、接点室38内で接続される。
【0068】
メインハウジング20の外周壁には、第1中空管部210、第2中空管部212及び第3中空管部214が設けられている。第1中空管部210、第2中空管部212及び第3中空管部214の中空内部は、圧縮エアが流通する圧縮エア流路である。すなわち、本実施形態では、回転電機ハウジング18に3個の圧縮エア流路が形成されている。第1中空管部210及び第3中空管部214は、例えば、メインハウジング20の外周壁から膨出した中空の膨出部として形成されている。
【0069】
図2に示すように、第1サブハウジング22において、第1端を向く端面には、3個の起路160の第1端における先端がそれぞれ開口している。図1及び図2に示すように、3個の起路160のうち1個の開口には、フレキシブルチューブ218を介して第1中空管部210が接続される。3個の起路160のうち別の1個の開口には、フレキシブルチューブ220を介して第2中空管部212が接続される。3個の起路160のうちまた別の1個の開口には、フレキシブルチューブ222を介して第3中空管部214が接続される。
【0070】
以上のように構成される回転電機システム10には、圧縮エア流路と、潤滑油流路とが設けられる。先ず、圧縮エア流路について説明する。
【0071】
第2サブハウジング24において、ガスタービンエンジン14を向く端面には、環状凹部からなる環状の集合流路230が形成される。集合流路230には、ガスタービンエンジン14で生じた圧縮エアの一部が流通する。集合流路230(環状凹部)の底壁には、上流連通孔232が3箇所に形成される。上流連通孔232は、圧縮エアの入力口である。
【0072】
第2サブハウジング24の内部には、気体分岐路としてのエア中継路234が設けられる。エア中継路234は、第2サブハウジング24の直径方向に沿って放射状に延在する。エア中継路234は、直径方向外方において、上流連通孔232を介して集合流路230に連通する。また、第2サブハウジング24において、回転電機16に向く端面には、3個の第1下流連通孔236、238、240が形成される。第1下流連通孔236、238、240は、エア中継路234の第1の出力口である。集合流路230とエア中継路234とにより、分配路が形成される。
【0073】
第2サブハウジング24において、ガスタービンエンジン14に向く端面には、3個の第2下流連通孔242、244、246が形成される。第2下流連通孔242、244、246は、エア中継路234の第2の出力口である。第2下流連通孔242、244、246は、第1下流連通孔236、238、240よりも直径方向の内方に位置する。従って、エア中継路234を流通した圧縮エアは、第1下流連通孔236、238、240に進入する圧縮エア(第1分気流)と、第2下流連通孔242、244、246に進入する圧縮エア(第2分気流)とに分かれる。このように、エア中継路234は、分岐路としての役割を果たす。
【0074】
図1に示すように、メインハウジング20の側壁外面には、第1中空管部210、第2中空管部212及び第3中空管部214が設けられている。第1下流連通孔236、238、240は、それぞれ、第1中空管部210~第3中空管部214に向かって個別に開口する。このことから分かるように、エア中継路234は、集合流路230と、第1中空管部210~第3中空管部214の中空内部とを連通する。図2に示すように、第1中空管部210~第3中空管部214は、メインハウジング20の側壁内部に形成された冷却ジャケット32の直径方向外方に位置する。
【0075】
第1中空管部210~第3中空管部214は、メインハウジング20の軸線方向に沿って延在する。すなわち、第1中空管部210~第3中空管部214は、ガスタービンエンジン14を向く第2端から、第1ケーシング34(又は第1端)に向かって延びる。上記したように、第1中空管部210~第3中空管部214は、フレキシブルチューブ218、220、222を介して3個の起路160にそれぞれ接続される。従って、第1中空管部210~第3中空管部214を流通した圧縮エアは、フレキシブルチューブ218、220、222を介して起路160に流入する。このことから理解されるように、第1中空管部210~第3中空管部214は、圧縮エアを供給するガス供給路である。
【0076】
本実施形態では、第1中空管部210~第3中空管部214を設ける場合を例示しているが、中空管部の個数は、圧縮エアから形成されるカーテンエアに必要とされる流量又は流速等に応じて適宜決定される。すなわち、中空管部の個数は3個に限定されない。また、中空管部の断面積も同様に、カーテンエアに必要とされる流量又は流速等に応じて適宜決定される。
【0077】
起路160に流入した圧縮エアは、その後、第1挿入孔96に向かう圧縮エアと、第2挿入孔110に向かう圧縮エアとに分かれる。具体的には、圧縮エアの一部は、第1サブハウジング22とロータ50との間のクリアランスを流通して第1挿入孔96に向かう。このように、第1サブハウジング22とロータ50との間のクリアランスは、第1エア分岐路Lである。一方、圧縮エアの残りの一部は、主に、永久磁石88の外壁と隔壁部材26の内壁との間のクリアランスを流通して第2挿入孔110に向かう。このように、永久磁石88の外壁と隔壁部材26の内壁との間のクリアランスは、第2エア分岐路Mである。
【0078】
第1エア分岐路Lに到達した圧縮エアは、第1ベアリング84に供給された潤滑油をシールするエアカーテンを形成する。また、第2エア分岐路Mから第2挿入孔110の第2遠位端112に到達した圧縮エアは、第2ベアリング104に供給された潤滑油をシールするエアカーテンを形成する。このように、起路160を流通した圧縮エアは、カーテンエアとして機能する。
【0079】
整流部材122の裾部124には、3個の導入口130が形成されている。図2には、その中の1個が示されている。1個の導入口130は、第2下流連通孔242に連なる。別の1個の導入口130は、第2下流連通孔244に連なる。また、別の1個の導入口130は、第2下流連通孔246に連なる。従って、第2下流連通孔242、244、246から出力された圧縮エアは、導入口130を介して整流部材122の縮径部126の中継室132に進入する。
【0080】
中継室132は、頂部128に形成された挿通孔134に連なる。ここで、中継室132は、挿通孔134に接近するにつれて幅広となっている。このため、圧縮エアが中継室132を流通するにつれて該カーテンエアの圧力が低下する。
【0081】
中継室132の出口は、コンプレッサホイール78の小径円筒部136に対面する。従って、中継室132に進入した圧縮エアは、コンプレッサホイール78の小径円筒部136に接触する。圧縮エアは、その後、第2ベアリング104に向かう圧縮エアと、出口路(不図示)に向かう圧縮エアとに分かれる。その結果、第2挿入孔110の第2近位端114に向かう圧縮エアの圧力が低下する。
【0082】
第2挿入孔110の第2近位端114に到達した圧縮エアは、第2ベアリング104に供給された潤滑油をシールするエアカーテンを形成する。また、出口路に流入した圧縮エアは、シュラウドケース231(図1参照)における第1端(開口端)の内方に導出される。この圧縮エアは、コンプレッサホイール78に再吸引される。
【0083】
図2に示すように、メインハウジング20には、排気路233(ガス排出路)が形成されている。第1エア分岐路Lに到達した圧縮エアと、第2エア分岐路Mに到達した圧縮エアとは、排気路233を経てメインハウジング20の外方に排気される。
【0084】
次に、潤滑油流路について説明する。図4は、回転電機システム10の断面図である。なお、図4には、図2の位相と異なる位相が示されている。図5は、回転電機システム10における潤滑油流路の一例を模式的に示した系統図である。
【0085】
回転電機ハウジング18は、油供給路としての入力管部247と、油回収路としての出力管部248とを有する。入力管部247は、メインハウジング20の第2端の近傍に設けられる。出力管部248は、第1ケーシング34の側部に設けられる。入力管部247及び出力管部248は、それぞれ、内部通路を有する中空部である。入力管部247の内部通路はステータ室30に連通し、出力管部248の内部通路は第1ケーシング34の接点室38に連通する。
【0086】
回転電機ハウジング18には、油供給路(油供給ライン)と油回収路(油回収ライン)とを有する潤滑油流路が形成されている。回転電機ハウジング18は、気液分離装置245と、タンク251と、循環ポンプ253とを備える。
【0087】
気液分離装置245は、油供給ライン250と、油回収ライン252と、排気ライン254とを有する。油供給ライン250は、気液分離装置245と入力管部247とを接続する。油供給ライン250の途中には、タンク251と循環ポンプ253とが設けられている。油回収ライン252は、出力管部248と気液分離装置245とを接続する。排気ライン254は、排気路233と気液分離装置245とを接続する。
【0088】
気液分離装置245は、回転電機ハウジング18の内部を流通した圧縮エア及び潤滑油を回収し、回転電機ハウジング18の内部に再供給する。このように、気液分離装置245は、油循環供給装置を構成する。
【0089】
気液分離装置245に流入する潤滑油は、気液混合物である。気液分離装置245では、気液混合物を潤滑油とエアとに分離する。潤滑油は、タンク251に一旦貯留される。その後、潤滑油は循環ポンプ253によってタンク251から吸引され、油供給ライン250を経て入力管部247に再供給される。一方、エアは、大気に放出される。
【0090】
従って、タンク251に貯留された潤滑油は、油供給ライン250及び入力管部247を介して、ステータ室30に供給される。ステータ室30において、潤滑油は、例えば、ステータ内周側油路170を流通する。潤滑油は、ステータ52のスロット、又は、電磁コイル150の間隙等を通ることも可能である。
【0091】
ステータ室30における潤滑油の流通方向は、第2端から第1端に向かう第2方向である。これにより、電磁コイル150の第1端及び第2端の両端部に潤滑油が十分に流通する。上記したように、ステータ室30は、第1ケーシング34の接点室38に連通している。従って、潤滑油は、第1ケーシング34の接点室38に流入する。ここで、出力管部248には、油回収ライン252が接続されている。従って、接点室38内の潤滑油は、出力管部248及び油回収ライン252を介して気液分離装置245に回収される。
【0092】
次に、中性点固定構造144について、図6図9を参照しながら説明する。
【0093】
複数の電磁コイル150の各々について、電磁コイル150を構成する導線152の他端部(末端270)は、コイルユニット142のコイルエンド部154から引き出される。複数の導線152の末端270は、束ねられ結線されることで中性点272を構成する。中性点固定構造144は、中性点272をコイルエンド部154に固定する。
【0094】
中性点固定構造144は、中性点端子274と、絶縁部材276と、冷媒通路278と、第1糸部材280と、第2糸部材282とを有する。
【0095】
中性点端子274は、中性点272に設けられる。絶縁部材276は、中性点端子274とコイルエンド部154との間に設けられている。中性点端子274は、絶縁部材276を介してコイルエンド部154に固定されている。冷媒通路278は、中性点端子274と絶縁部材276との間で、液体冷媒である潤滑油を通過させる。
【0096】
具体的には、中性点端子274は、筒状部材290である。筒状部材290は、例えば、導電性の筒状部材である。筒状部材290は、非導電性の筒状部材であってもよい。筒状部材290の内側空間292には、コイルユニット142から引き出された複数の導線152の末端270が挿入される。
【0097】
絶縁部材276は、コイルエンド部154に配置され、且つ、中性点端子274が配置される台座294である。台座294は、矩形状のブロックである。台座294は、PTFE等の電気絶縁材料からなる。
【0098】
台座294は、互いに反対側の面である第1面296と第2面298とを有する。第1面296には、中性点端子274が配置される。第2面298は、コイルエンド部154に当接する。
【0099】
第1面296には、第1凹部300が第1面296に沿って形成されている。具体的には、第1面296には、2つの第1凹部300が第1面296に沿って形成されている。2つの第1凹部300は、互いに交差している。本実施形態では、台座294の第1面296を第2面298に向かって十字状に凹ませることで、互いに直交する2つの第1凹部300が第1面296に形成されている。従って、2つの第1凹部300が形成されることで、台座294の四隅には、コイルエンド部154から離間するように突出する矩形状の突出部302が形成される。中性点端子274は、4つの突出部302に配置される。
【0100】
台座294には、係止溝304が形成されている。係止溝304は、台座294の表面のうち、中性点端子274と接触しない部分に形成されている。本実施形態では、2つの係止溝304が台座294に形成されている。2つの係止溝304は、間隔を空けて台座294に形成されている。2つの係止溝304の各々は、一方の突出部302の側面と、第2面298と、他方の突出部302の側面とにかけて、U字状に形成されている。
【0101】
中性点端子274である筒状部材290は、例えば、導電性の部材である。筒状部材290は、非導電性の部材であってもよい。筒状部材290の外周面は、台座294の第1面296に当接する。筒状部材290は、中心軸線306が第1面296と平行となるように、第1面296に当接する。筒状部材290は、外周面が第1面296に当接することで、台座294に配置される。なお、筒状部材290の中心軸線306は、第1面296に形成された2つの第1凹部300のうち、一方の第1凹部300の延在方向と平行であることが望ましい。
【0102】
筒状部材290の内側空間292には、コイルユニット142から引き出された複数の導線152の末端270が挿入される。
【0103】
筒状部材290のうち、第1凹部300と向かい合う部分は、筒状部材290の内側に凹むことで第2凹部308を形成している。すなわち、筒状部材290の外周面のうち、台座294の第1面296に当接する部分に第2凹部308が形成される。第2凹部308は、筒状部材290の中心軸線306に沿って形成されている。台座294には、2つの第1凹部300が形成されている。そのため、第2凹部308は、2つの第1凹部300のうち、一方の第1凹部300と平行に形成されている。
【0104】
第2凹部308が筒状部材290の内側に凹むことで、筒状部材290の内側空間292には、筒状部材290の内側に突出する突出部310が形成される。突出部310は、筒状部材290の内側空間292に挿入される複数の導線152の末端270を押圧する。これにより、複数の導線152の末端270は、筒状部材290の内側空間292に固定される。
【0105】
冷媒通路278は、第1凹部300と第2凹部308とによって構成される。上記のように、台座294には、2つの第1凹部300が形成されている。また、筒状部材290には、第2凹部308が形成されている。そのため、台座294の第1面296(4つの突出部302)に筒状部材290が配置されることで、一方の第1凹部300と第2凹部308とによって一方の冷媒通路278が構成される。また、他方の第1凹部300によって他方の冷媒通路278が構成される。つまり、筒状部材290と台座294との間には、2つの冷媒通路278が形成される。
【0106】
第1糸部材280は、台座294と、該台座294に配置された中性点端子274(筒状部材290)とに巻回されている。具体的には、台座294と中性点端子274とには、2つの第1糸部材280が巻回されている。台座294には、2つの係止溝304が形成されている。一方の第1糸部材280は、一方の係止溝304に係止されるように、台座294と中性点端子274とに巻回されている。他方の第1糸部材280は、他方の係止溝304に係止されるように、台座294と中性点端子274とに巻回されている。これにより、中性点端子274が台座294に固定される。
【0107】
第2糸部材282は、コイルエンド部154と、該コイルエンド部154に配置された台座294とに巻回されている。具体的には、コイルエンド部154と台座294とには、2つの第2糸部材282が巻回されている。2つの第2糸部材282は、他方の第1凹部300に係止されるように、コイルエンド部154と台座294とに巻回されている。これにより、台座294がコイルエンド部154に固定される。
【0108】
次に、図1及び図2を参照しながら、ガスタービンエンジン14の構成について説明する。
【0109】
ガスタービンエンジン14は、エンジンハウジング312と、エンジンハウジング312内で回転する出力シャフト76とを備える。エンジンハウジング312は、インナハウジング314と、アウタハウジング316とを含む。インナハウジング314は、回転電機システム10の第2サブハウジング24に連結される。アウタハウジング316は、インナハウジング314に連結される。アウタハウジング316は、ハウジング本体である。
【0110】
インナハウジング314は、第1円環部318と、第2円環部320と、複数個の脚部322とを有する。第1円環部318は、第2サブハウジング24に連結される。第2円環部320の直径は、第1円環部318の直径よりも大きい。脚部322は、第1円環部318と第2円環部320とを連結する。図示例では、脚部322の個数は6個である。しかしながら、脚部322の個数は、ガスタービンエンジン14と回転電機システム10との間で要求される結合強度に応じて決定される。すなわち、脚部322の個数は、図示例の6個に限定されない。
【0111】
第2円環部320の中央開口からは、回転電機システム10に向かって円筒状カバー部324が突出する。脚部322の右端は、円筒状カバー部324の双方に連なっている。脚部322同士の間には、吸気空間が形成される。
【0112】
コンプレッサホイール78及び不図示のタービンホイールは、回転シャフト54及び出力シャフト76と一体的に回転可能である。
【0113】
本実施形態に係る回転電機システム10及び複合動力システム12は、基本的には以上のように構成される。次に、回転電機システム10及び複合動力システム12の動作について説明する。
【0114】
先ず、U相端子190、V相端子192及びW相端子194を介して、複数の電磁コイル150(U相コイル、V相コイル及びW相コイル)に交流電流が供給される。交流電流が電磁コイル150に流れることで、ステータ52に交番磁界が生じる。このため、電磁コイル150と、ロータ50の永久磁石88との間に、吸引力と反発力とが交互に作用する。この結果、回転シャフト54が回転を開始する。代替的に、図示しない公知のスタータによって回転シャフト54を回転させるようにしてもよい。
【0115】
回転シャフト54の回転トルクは、コンプレッサホイール78を介して出力シャフト76に伝達される。すなわち、回転シャフト54が回転を開始すると、該回転シャフト54と一体的に出力シャフト76も回転を開始する。これに伴い、出力シャフト76に支持されたコンプレッサホイール78及び不図示のタービンホイールが出力シャフト76と一体的に回転する。
【0116】
上記の回転により、インナハウジング314の脚部322同士の間の吸気空間を介して、シュラウドケース231内に大気が吸引される。ここで、インナハウジング314の直径中心には、整流部材122が位置している。上記したように、整流部材122は、シュラウドケース231に向かうに従って縮径するような山形形状をなす。しかも、縮径部126の表面が平滑である。このため、吸引される大気は、整流部材122によってシュラウドケース231に向かうように整流される。整流部材122の右端がシュラウドケース231の左端開口から進入しているので、大気がシュラウドケース231内に効率よく導かれる。
【0117】
シュラウドケース231内に吸引された大気は、コンプレッサホイール78とシュラウドケース231との間を流通する。シュラウドケース231の左開口に比べ、コンプレッサホイール78とシュラウドケース231との間が十分に狭小であることから、この流通の際に大気が圧縮される。すなわち、圧縮エアが生じる。圧縮エアの一部は、ガスタービンエンジン14のチャンバに流入して一時的に貯留される。
【0118】
また、圧縮エアの一部は、カーテンエアとして、集合流路230に流入して集合し、且つ該集合流路230に沿って円環状に拡散する。カーテンエアは、集合流路230から3個の上流連通孔232に個別に流入し、3個のエア中継路234に沿って個別に流通する。その後、カーテンエアの一部が、第1下流連通孔236、238、240から排出される。また、カーテンエアの残部が、第2下流連通孔242、244、246から排出される。以下、第1下流連通孔236、238、240から排出されるカーテンエア(圧縮エア)を「第1分流エア」と表記する。第2下流連通孔242、244、246から排出されるカーテンエア(圧縮エア)を「第2分流エア」と表記する。
【0119】
第1分流エアの経路について説明する。第1下流連通孔236は、第1中空管部210の中空内部に連通している。第1下流連通孔238は、第2中空管部212の中空内部に連通している。第1下流連通孔240は、第3中空管部214の中空内部に連通している。従って、第1分流エアは、図1等に示す第1中空管部210~第3中空管部214の中空内部を流通し、回転電機ハウジング18の第2端から第1端に向かう。すなわち、第1分流エアが回転電機ハウジング18内のロータ室28に進入するより前では、該第1分流エアの流通方向は第2方向である。
【0120】
第1中空管部210~第3中空管部214は、冷却ジャケット32の外周に位置する。冷却ジャケット32には、冷却媒体が予め流通されている。従って、第1分流エアが第1中空管部210~第3中空管部214に沿って流通する過程で、第1分流エアの熱が冷却媒体に十分に伝導する。これにより、第1分流エアが比較的低温となる。すなわち、本実施形態では、回転電機16等を冷却するための冷却ジャケット32により、第1分流エアを降温することができる。
【0121】
第1中空管部210~第3中空管部214を流通した第1分流エアは、フレキシブルチューブ218、220、222を介して、3個の起路160にそれぞれ流入する。第1分流エアは、さらに、起路160を経て、隔壁部材26の直径方向内方に形成されたロータ室28に流入する。
【0122】
第1分流エアの一部は、その後、ロータ室28内の第1エア分岐路Lを介して、第1挿入孔96に向かって流通する。また、第1分流エアの残部は、ロータ室28内の第2エア分岐路Mを介して、永久磁石88の外壁と隔壁部材26の内周壁との間のクリアランスに沿って、第2挿入孔110に向かって流通する。このように、第1分流エアは、左端(第1端)の第1挿入孔96に向かう圧縮エアと、右端(第2端)の第2挿入孔110に向かう圧縮エアとに分かれる。
【0123】
第1分流エアの一部が、永久磁石88の外壁と隔壁部材26の内周壁との間のクリアランスを流通することで、ロータ50が冷却される。ロータ室28において、第1分流エアの流通方向は、第1端から第2端に向かう第1方向である。ここで、上記したように、第1分流エアは、冷却ジャケット32によって十分に降温されている。従って、ロータ50が効率よく冷却される。
【0124】
また、本実施形態では、ガスタービンエンジン14が生成した圧縮エアを用いて、回転電機16を冷却している。従って、ロータ50を冷却するための冷却風をロータ室28に供給する必要がない。これにより、ロータ50の冷却を図りながら、複合動力システム12の構成の簡素化を図ることができる。
【0125】
第1挿入孔96に向かって流通した第1分流エアの一部は、第1挿入孔96の第1近位端102に到達する。第1分流エアの一部は、この第1近位端102において、第1ベアリング84のエアカーテンとなる。一方、第2挿入孔110に向かって流通した第1分流エアの残部は、第2挿入孔110の第2遠位端112に到達する。第1分流エアの残部は、この第2遠位端112において、第2ベアリング104のエアカーテンとなる。
【0126】
余剰の第1分流エアは、排気路233を介して、気液分離装置245(油循環供給装置)に回収される。
【0127】
第2分流エアの経路について説明する。第2下流連通孔242、244、246は、整流部材122の裾部124に形成された3個の導入口130にそれぞれ個別に重なっている。従って、第2分流エアは、導入口130を介して中継室132(整流部材122の中空内部)に流入する。
【0128】
上記したように、中継室132の出口は、コンプレッサホイール78の小径円筒部136に対面する位置で開口している。従って、中継室132に流入した第2分流エアは、小径円筒部136に接触する。第2分流エアの一部は、第2挿入孔110の第2近位端114に到達する。第2分流エアの一部は、この第2近位端114において、第2ベアリング104のエアカーテンとなる。このように、第2ベアリング104は、第2近位端114に到達した第2分流エアの残部と、第2遠位端112に到達した第1分流エアの一部とで挟まれる。
【0129】
第2分流エアの残部は、シュラウドケース231の左端内部に排出される。シュラウドケース231の左端開口では、上記したように吸気が行われている。従って、第2分流エアの残部は、吸引された大気と一緒にコンプレッサホイール78によって圧縮される。
【0130】
上記したように、インナハウジング314とシュラウドケース231との間に設けられたチャンバによって、カーテンエアの圧力が均一化されている。従って、カーテンエアに圧力分布が生じることが回避される。また、カーテンエアにサージングが起こることも回避される。このため、カーテンエアの圧力を略一定に維持しながら、該カーテンエアを第1ベアリング84及び第2ベアリング104の周囲に供給することが可能である。
【0131】
次に、潤滑油の経路について説明する。潤滑油の一部は、潤滑剤として第1ベアリング84及び第2ベアリング104に供給される。潤滑油の残部は、回転電機16を冷却する冷却油として、回転シャフト54及びステータ52に供給される。ここでは、ステータ52に潤滑油を供給する経路について説明する。
【0132】
タンク251から吸い出された潤滑油は、油供給ライン250から入力管部247に到達する。入力管部247がメインハウジング20の外周壁における第2端近傍に形成されているので、潤滑油は、冷却油として、ステータ室30の第2端側に流入する。冷却油は、循環ポンプ253の吐出力により、ステータ室30の第2端から第1端に向かって流通する。すなわち、ステータ室30における第2冷却油の流通方向は、第2端から第1端に向かう第2方向である。
【0133】
ハウジング内油路であるステータ室30において、冷却油は、例えば、ステータ内周側油路170を流通する。また、冷却油は、ステータ52における電磁コイル150の隙間を流通する。また、冷却油は、ステータ52の内孔(ステータコア140の間隙)を流通する。このように、冷却油がステータ52に接触することで、ステータ52が効率よく冷却される。
【0134】
冷却油は、中性点固定構造144に設けられた冷媒通路278を通過する。冷媒通路278を冷却油が通過することで、中性点272及び中性点端子274が冷却される。また、コイルエンド部154から中性点端子274への熱伝導が低減される。
【0135】
ステータ室30(ハウジング内油路)を流通した冷却油は、該ステータ室30の第1端から、第1ケーシング34の接点室38に流入する。接点室38内の冷却油は、端子部198、端子線200及びビス202に接触する。これにより、U相端子190とU相コイルとの電気的接点が冷却される。同様の理由から、V相端子192とV相コイルとの電気的接点も冷却される。W相端子194とW相コイルとの電気的接点も冷却される。
【0136】
接点室38内の冷却油は、出力管部248を介して油回収ライン252に流入する。油回収ライン252を流通した潤滑油は、気液分離装置245に回収される。
【0137】
気液分離装置245は、カーテンエアと冷却油とを回収する。回転電機ハウジング18内では、冷却油をエアカーテンで堰き止めている。このため、排気路233から排気されたカーテンエアには、潤滑油が含まれている。すなわち、排気路233から排気されたカーテンエアは、実質的に気液混合物である。
【0138】
気液分離装置245は、気液混合物をエアと潤滑油とに分離する。エアは、気液分離装置245に設けられた排気ライン254を経て大気に放出される。潤滑油は、タンク251に一旦貯留される。タンク251内の潤滑油は、循環ポンプ253によって気液分離装置245から吸い出される。潤滑油は、さらに、上記に従い、気液分離装置245から再供給される。
【0139】
なお、図示はしないが、潤滑油の一部は、タンク251から、循環ポンプ253によって油供給ライン250に吸い出され、第1ベアリング84及び第2ベアリング104に供給される。これにより、第1ベアリング84及び第2ベアリング104が潤滑される。
【0140】
上記のように、第1分流エアが第1ベアリング84のエアカーテンになると共に、第2分流エアが第2ベアリング104のエアカーテンになる。そのため、第1ベアリング84及び第2ベアリング104を潤滑する潤滑油が、回転シャフト54と電磁コイル150との間に浸入することが回避される。また、潤滑油が整流部材122の中継室132に浸入することも回避される。これにより、特に永久磁石88及び整流部材122が潤滑油で汚れることを回避することができる。
【0141】
本実施形態は、以下の効果を有する。
【0142】
図8に示すように、中性点端子274が絶縁部材276を介してコイルエンド部154に固定されるので、回転電機16の動作時に高温となるコイルエンド部154と、中性点端子274とを熱的に分離することができる。これにより、電磁コイル150と中性点端子274との双方が高温になることを回避することができる。
【0143】
また、中性点端子274と絶縁部材276との間に設けられた冷媒通路278を液体冷媒が通過するので、液体冷媒によって中性点端子274を冷却することができると共に、コイルエンド部154から中性点端子274への熱伝導を低減することができる。これにより、中性点端子274の温度上昇を抑制することができる。
【0144】
従って、本実施形態では、回転電機16の発熱による該回転電機16の効率の低下及び劣化を抑制することができる。
【0145】
また、絶縁部材276である台座294がコイルエンド部154に配置されると共に、台座294に中性点端子274が配置される。これにより、中性点端子274をコイルエンド部154に容易に固定することができると共に、中性点端子274とコイルエンド部154とを容易に分離することができる。
【0146】
図6及び図8に示すように、台座294の第1面296に中性点端子274を容易に配置することができると共に、台座294の第2面298をコイルエンド部154に容易に配置することができる。また、冷媒通路278が第1面296及び第2面298と平行に延びているので、コイルエンド部154から中性点端子274への熱伝導を効率よく低減することができる。
【0147】
図6図8に示すように、台座294の第1面296に形成される第1凹部300によって冷媒通路278が構成されるので、限られたスペースに冷媒通路278を設けることができる。
【0148】
図7に示すように、2つの第1凹部300が第1面296に沿って形成されると共に交差している。これにより、図6に示すように、限られたスペースに2つの冷媒通路278を設けることができる。また、2つの冷媒通路278を設けることで、より多くの冷媒を通過させることができる。これにより、中性点端子274を効率よく冷却することができると共に、図8のコイルエンド部154から中性点端子274への熱伝導を効率よく低減することができる。
【0149】
図6及び図8に示すように、中性点端子274が筒状部材290であるため、筒状部材290の内側空間292に複数の導線152の末端270を容易に挿入することができると共に、挿入された複数の導線152の末端270を結線し、中性点272として構成することができる。
【0150】
また、筒状部材290における第1凹部300と向かい合う部分を筒状部材290の内側に凹ませることにより第2凹部308が形成され、第1凹部300と第2凹部308とが向かい合うことで冷媒通路278が構成される。これにより、限られたスペースで冷媒通路278を容易に構成することができる。また、冷媒通路278の断面積が大きくなり、より多くの液体冷媒を通過させることができる。この結果、中性点端子274を一層効率よく冷却することができると共に、コイルエンド部154から中性点端子274への熱伝導を一層効率よく低減することができる。
【0151】
さらに、筒状部材290における第1凹部300と向かい合う部分が筒状部材290の内側に凹むことにより、筒状部材290の内側空間292に挿入された複数の導線152の末端270を容易にかしめることができる。これにより、複数の導線152の末端270間の電気的接続を確実に行うことができると共に、筒状部材290からの複数の導線152の末端270の抜けを防止することができる。
【0152】
台座294及び中性点端子274に第1糸部材280を巻回させることで、中性点端子274を台座294に固定することができる。
【0153】
台座294の表面に形成された係止溝304に第1糸部材280を係止させることで、中性点端子274を台座294に確実に固定することができる。
【0154】
コイルエンド部154及び台座294に第2糸部材282を巻回させることで、台座294をコイルエンド部154に固定することができる。
【0155】
図5に示すように、油循環供給装置を用いて、冷却油が油供給ライン250を介してステータ室30に供給されるので、ステータ52を冷却油で十分に冷却することができる。これにより、回転電機16における機械エネルギと電気エネルギとの間の変換効率の低下を抑制することができる。この結果、回転電機16の出力を維持することができる。
【0156】
図2図4に示すように、回転電機ハウジング18の内部が隔壁部材26によりロータ室28とステータ室30とに区画されるので、冷却油がロータ室28に浸入することを回避することができる。これにより、特に永久磁石88が冷却油で汚れることを防止することができる。
【0157】
なお、本実施形態では、図9の変形例に示すように、中性点固定構造144を構成してもよい。図9では、複数の導線152を被覆する絶縁被膜330が絶縁部材276である。すなわち、コイルエンド部154では、複数の導線152は、ステータ52の周方向に引き回される。そのため、コイルエンド部154において、ステータ52の軸線方向に沿った外端部には、複数の導線152の絶縁被膜330が配置されている。この変形例では、中性点端子274は、絶縁部材276である絶縁被膜330を介して、コイルエンド部154に固定される。この場合でも、上記の効果が得られる。
【0158】
また、複数の電磁コイル150は、不図示の絶縁紙で覆われる。そのため、コイルエンド部154と中性点端子274との間に絶縁紙を配置し、中性点端子274が絶縁紙を介してコイルエンド部154に固定されてもよい。
【0159】
本実施形態では、第1面296に2つの第1凹部300が形成される場合について説明した。本実施形態では、第1面296に1つの第1凹部300を形成してもよい。この場合でも、1つの第1凹部300を含む冷媒通路278を構成することができる。
【0160】
また、本実施形態では、第1凹部300と第2凹部308とで冷媒通路278を構成する場合について説明した。本実施形態では、第1凹部300及び第2凹部308のうち、どちらか一方のみで冷媒通路278を構成することも可能である。
【0161】
また、本実施形態では、第1糸部材280を用いずに、絶縁部材276(台座294)に対して中性点端子274を固定してもよい。例えば、接着等により絶縁部材276(台座294)に対して中性点端子274を固定してもよい。この場合、係止溝304はなくてもよい。
【0162】
また、本実施形態では、第2糸部材282を用いずに、コイルエンド部154に対して絶縁部材276(台座294)を固定してもよい。例えば、接着等によりコイルエンド部154に対して絶縁部材276(台座294)を固定してもよい。
【0163】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0164】
(付記1)
ロータ(50)及びステータ(52)を有する回転電機(16)と、前記回転電機を収容するハウジング(18)とを備える回転電機システム(10)であって、前記ハウジングは、前記ステータを収容し、且つ、前記ステータを冷却する液体冷媒が流通するステータ室(30)を有し、前記ステータは、ステータコア(140)と、前記ステータコアに巻回された複数の導線(152)によって形成される複数のコイル(150)からなり、複数のコイルの端部であるコイルエンド部(154)を有するコイルユニット(142)と、前記コイルユニットから引き出した複数の前記導線の末端(270)を束ねて結線した中性点(272)を前記コイルエンド部に固定する中性点固定構造(144)と、を有し、前記中性点固定構造は、前記中性点に設けられた中性点端子(274)と、前記中性点端子と前記コイルエンド部との間に設けられた絶縁部材(276)と、前記中性点端子と前記絶縁部材との間で前記液体冷媒を通過させるための冷媒通路(278)と、を有し、前記中性点端子は、前記絶縁部材を介して前記コイルエンド部に固定される。
【0165】
この構成によれば、中性点端子が絶縁部材を介してコイルエンド部に固定されるので、回転電機の動作時に高温となるコイルエンド部と、中性点端子とを熱的に分離することができる。これにより、コイルと中性点端子との双方が高温になることを回避することができる。
【0166】
また、中性点端子と絶縁部材との間に設けられた冷媒通路を液体冷媒が通過するので、液体冷媒によって中性点端子を冷却することができると共に、コイルエンド部から中性点端子への熱伝導を低減することができる。これにより、中性点端子の温度上昇を抑制することができる。
【0167】
従って、本発明では、回転電機の発熱による該回転電機の効率の低下及び劣化を抑制することができる。
【0168】
(付記2)
付記1に記載の回転電機システムにおいて、前記絶縁部材は、前記コイルエンド部に配置され、且つ、前記中性点端子が配置される台座(294)であってもよい。
【0169】
この構成によれば、絶縁部材である台座がコイルエンド部に配置されると共に、台座に中性点端子が配置される。これにより、中性点端子をコイルエンド部に容易に固定することができると共に、中性点端子とコイルエンド部とを容易に分離することができる。
【0170】
(付記3)
付記2に記載の回転電機システムにおいて、前記台座は、互いに反対側の面である第1面(296)と第2面(298)とを有し、前記第1面には、前記中性点端子が配置され、前記第2面は、前記コイルエンド部に当接し、前記冷媒通路は、前記第1面及び前記第2面と平行に延びてもよい。
【0171】
この構成によれば、台座の第1面に中性点端子を容易に配置することができると共に、台座の第2面をコイルエンド部に容易に配置することができる。また、冷媒通路が第1面及び第2面と平行に延びているので、コイルエンド部から中性点端子への熱伝導を効率よく低減することができる。
【0172】
(付記4)
付記3に記載の回転電機システムにおいて、前記台座の前記第1面には、第1凹部(300)が前記第1面に沿って形成され、前記第1凹部が前記冷媒通路を構成してもよい。
【0173】
この構成によれば、台座の第1面に形成される第1凹部によって冷媒通路が構成されるので、限られたスペースに冷媒通路を設けることができる。
【0174】
(付記5)
付記4に記載の回転電機システムにおいて、前記台座の前記第1面には、2つの前記第1凹部が前記第1面に沿って形成され、2つの前記第1凹部は、交差してもよい。
【0175】
この構成によれば、2つの第1凹部が第1面に沿って形成されると共に交差している。これにより、限られたスペースに2つの冷媒通路を設けることができる。また、2つの冷媒通路を設けることで、より多くの冷媒を通過させることができる。これにより、中性点端子を効率よく冷却することができると共に、コイルエンド部から中性点端子への熱伝導を効率よく低減することができる。
【0176】
(付記6)
付記4に記載の回転電機システムにおいて、前記中性点端子は、外周面が前記台座の前記第1面に当接する筒状部材(290)であり、前記筒状部材の内側空間(292)には、前記コイルユニットから引き出された複数の前記導線の末端が挿入され、前記筒状部材のうち、前記第1凹部と向かい合う部分が前記筒状部材の内側に凹むことにより第2凹部(308)が形成され、前記第1凹部と前記第2凹部とによって前記冷媒通路が構成されてもよい。
【0177】
この構成によれば、中性点端子が筒状部材であるため、筒状部材の内側空間に複数の導線の末端を容易に挿入することができると共に、挿入された複数の導線の末端を結線し、中性点として構成することができる。
【0178】
また、筒状部材における第1凹部と向かい合う部分を筒状部材の内側に凹ませることにより第2凹部が形成され、第1凹部と第2凹部とが向かい合うことで冷媒通路が構成される。これにより、限られたスペースで冷媒通路を容易に構成することができる。また、冷媒通路の断面積が大きくなり、より多くの液体冷媒を通過させることができる。この結果、中性点端子を一層効率よく冷却することができると共に、コイルエンド部から中性点端子への熱伝導を一層効率よく低減することができる。
【0179】
さらに、筒状部材における第1凹部と向かい合う部分が筒状部材の内側に凹むことにより、筒状部材の内側空間に挿入された複数の導線の末端を容易にかしめることができる。これにより、複数の導線の末端間の電気的接続を確実に行うことができると共に、筒状部材からの複数の導線の末端の抜けを防止することができる。
【0180】
(付記7)
付記2~6のいずれかに記載の回転電機システムにおいて、前記中性点固定構造は、前記台座と該台座に配置された前記中性点端子とに巻回された第1糸部材(280)をさらに有してもよい。
【0181】
この構成によれば、台座及び中性点端子に第1糸部材を巻回させることで、中性点端子を台座に固定することができる。
【0182】
(付記8)
付記7に記載の回転電機システムにおいて、前記台座の表面のうち、前記中性点端子と接触しない部分には、前記第1糸部材を係止させるための係止溝(304)が形成されてもよい。
【0183】
この構成によれば、台座の表面に形成された係止溝に第1糸部材を係止させることで、中性点端子を台座に確実に固定することができる。
【0184】
(付記9)
付記2~6のいずれかに記載の回転電機システムにおいて、前記中性点固定構造は、前記コイルエンド部と該コイルエンド部に配置された前記台座とに巻回された第2糸部材(282)をさらに有してもよい。
【0185】
この構成によれば、コイルエンド部及び台座に第2糸部材を巻回させることで、台座をコイルエンド部に固定することができる。
【0186】
(付記10)
付記1~9のいずれかに記載の回転電機システムにおいて、前記ロータは、回転シャフト(54)と、前記回転シャフトに設けられた永久磁石(88)とを有し、前記回転電機システムは、前記ステータ室に前記液体冷媒である冷却油を循環供給する油循環供給装置(245)をさらに備え、前記油循環供給装置は、前記冷却油を前記ステータ室に供給する油供給ライン(250)と、前記ステータ室を流通した前記冷却油を回収する油回収ライン(252)とを有してもよい。
【0187】
この構成によれば、油循環供給装置を用いて、冷却油が油供給ラインを介してステータ室に供給されるので、ステータを冷却油で十分に冷却することができる。これにより、回転電機における機械エネルギと電気エネルギとの間の変換効率の低下を抑制することができる。この結果、回転電機の出力を維持することができる。
【0188】
(付記11)
付記10に記載の回転電機システムにおいて、前記回転シャフトの径方向において、前記ロータと前記ステータとの間に介在する円筒状の隔壁部材(26)をさらに備え、前記隔壁部材は、前記ハウジングの内部を、前記ステータ室と、前記ロータを収容したロータ室(28)とに区画してもよい。
【0189】
この構成によれば、回転電機ハウジングの内部が隔壁部材によりロータ室とステータ室とに区画されるので、冷却油がロータ室に浸入することを回避することができる。これにより、特に永久磁石が冷却油で汚れることを防止することができる。
【0190】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0191】
10…回転電機システム
16…回転電機
18…回転電機ハウジング(ハウジング)
30…ステータ室
50…ロータ
52…ステータ
140…ステータコア
142…コイルユニット
144…中性点固定構造
150…電磁コイル(コイル)
152…導線
154…コイルエンド部
270…末端
272…中性点
274…中性点端子
276…絶縁部材
278…冷媒通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9