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特開2024-142414燃焼器、燃焼器システム及びガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142414
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】燃焼器、燃焼器システム及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20241003BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20241003BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20241003BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20241003BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241003BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20241003BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20241003BHJP
   F23N 5/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02C7/00 A
F23R3/28 D
F02C7/232
F23R3/30
F01D25/00 V
F02C9/28
F23R3/00 E
F23N5/10 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054549
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧ヶ野 大志
(72)【発明者】
【氏名】福場 信一
(72)【発明者】
【氏名】大山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷本 浩一
【テーマコード(参考)】
3K005
【Fターム(参考)】
3K005TA03
3K005TB10
3K005TC02
3K005UA01
3K005UA12
3K005UA19
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によりフラッシュバックを検知することが可能な燃焼器を提供する。
【解決手段】燃焼器軸線に直交する方向に延びる基板と、基板を貫通するように延びるとともに、上流側から導入される空気に燃料が混合されることで生成された予混合ガスを下流側の開口部から噴射する複数の予混合管と、基板に設けられて、各予混合管の周囲を通過するように燃焼器軸線に直交する方向に延びる温度検知回路をさらに備え、温度検知回路は、該温度検知回路の出力端子となる始点及び終点を有するとともに、始点側から終点側に向かって正素線及び負素線が交互に複数接続されることで形成された複数の接点を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器軸線に直交する方向に延びる基板と、
前記基板を貫通するように延びるとともに、上流側から導入される空気に燃料が混合されることで生成された予混合ガスを下流側の開口部から噴射する複数の予混合管と、
前記基板に設けられて、各前記予混合管の周囲を通過するように前記燃焼器軸線に直交する方向に延びる温度検知回路をさらに備え、
前記温度検知回路は、該温度検知回路の出力端子となる始点及び終点を有するとともに、前記始点側から前記終点側に向かって正素線及び負素線が交互に複数接続されることで形成された複数の接点を有する燃焼器。
【請求項2】
前記接点は、各前記予混合管の周囲に少なくとも一つが配置されている請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記温度検知回路は、前記基板における前記下流側を向く表面の表面に沿って形成されている請求項1に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記温度検知回路は、該温度検知回路の表面に形成された遮熱コーティング層を有する請求項3に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記接点は、
前記温度検知回路の前記始点側から前記終点側に向かって前記正素線、前記負素線の順で接続されることで形成される温接点と、
前記温度検知回路の前記始点側から前記終点側に向かって前記負素線、前記正素線の順で接続されることで形成される冷接点と、
を含み、
前記接点は、前記予混合管を挟み込むように一対が対向配置されており、
一対の前記接点は、いずれも温接点又は冷接点である請求項1に記載の燃焼器。
【請求項6】
前記温度検知回路は、前記始点と前記終点との間に、出力端子となる中間点を有する請求項1に記載の燃焼器。
【請求項7】
複数の前記予混合管が集合配置されて構成されたノズルセグメントを複数有し、
前記温度検知回路は、複数の前記ノズルセグメント毎に設けられている請求項1に記載の燃焼器。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼器と、
前記出力端子から出力される電圧値に基づいて、フラッシュバックを検知する演算装置を備える燃焼器システム。
【請求項9】
請求項6に記載の燃焼器と、
複数の前記出力端子から出力される電圧値に基づいて、複数の前記出力端子間のいずれかの領域でフラッシュバックが発生したか検知を演算する演算装置と、
を備える燃焼器システム。
【請求項10】
請求項7に記載の燃焼器と、
各前記温度検知回路の出力端子から出力される電圧値に基づいて、フラッシュバックが発生した前記ノズルセグメントを特定する演算装置と、
を備える燃焼器システム。
【請求項11】
各前記ノズルセグメントへの燃料の供給量を調整可能な燃料供給部さらに備え、
前記演算装置は、
前記フラッシュバックが発生したと特定された前記ノズルセグメントへの燃料の供給量を減少させるとともに、その他の前記ノズルセグメントへの燃料の供給量を増加させる請求項10に記載の燃焼器システム。
【請求項12】
空気が導入されて燃焼ガスを生成する請求項8から11のいずれか一項に記載の燃焼器システムと、
前記燃焼器システムに圧縮した前記空気を供給する圧縮機と、
前記燃焼ガスによって駆動されるタービンと、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器、燃焼器システム及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ガスタービンに用いられる燃焼器の一例としてのクラスタ燃焼器が開示されている。
上記クラスタ燃焼器は、互いに並設されて空気が導入される多数の予混合管を有している。予混合管内に導入された空気は燃料と混合され、予混合管の下流側の開口部から予混合ガスとして噴出される。この際、予混合ガスが着火することで、各予混合管の出口に複数の小規模の火炎が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0232979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記のような燃焼器では、火炎が予混合管内の壁面に沿って逆流するフラッシュバックが発生する場合がある。このフラッシュバックは、特定の予混合管で局所的に発生することがあり、これを検知するためには予混合管の数に応じた多数のセンサを設置する必要があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成によりフラッシュバックを検知することが可能な燃焼器、燃焼器システム及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る燃焼器は、燃焼器軸線に直交する方向に延びる基板と、前記基板を貫通するように延びるとともに、上流側から導入される空気に燃料が混合されることで生成された予混合ガスを下流側の開口部から噴射する複数の予混合管と、 前記基板に設けられて、各前記予混合管の周囲を通過するように前記燃焼器軸線に直交する方向に延びる温度検知回路をさらに備え、前記温度検知回路は、該温度検知回路の出力端子となる始点及び終点を有するとともに、前記始点側から前記終点側に向かって正素線及び負素線が交互に複数接続されることで形成された複数の接点を有する。
【0007】
本開示に係る燃焼器システムは、上記の燃焼器と、前記出力端子から出力される電圧値に基づいて、フラッシュバックを検知する演算装置を備える。
【0008】
本開示に係るガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、前記空気が導入されて燃焼ガスを生成する上記の燃焼器システムと、前記燃焼ガスによって駆動されるタービンと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の燃焼器、燃焼器システム及びガスタービンによれば、簡易な構成によりフラッシュバックを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係るガスタービンの概略構成を示す模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る燃焼器システムにおける燃焼器の概略構成を示す縦断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器を下流側から見た図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器の温度検知回路の原理を説明する模式図である。
図5】本開示の第一実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の機能ブロック図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図7】本開示の第二実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器を下流側から見た図である。
図8】本開示の第二実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器の温度検知回路の原理を示す模式図である。
図9】本開示の第三実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器を下流側から見た図である。
図10】本開示の第三実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の機能ブロック図である。
図11】本開示の第三実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図12】本開示の第四実施形態に係る燃焼器システムの燃焼器を下流側から見た図である。
図13】本開示の第四実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の機能ブロック図である。
図14】本開示の第四実施形態に係る燃焼器システムの演算装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図15】本開示の第五実施形態に係る燃焼器システムにおける燃焼器の概略構成を示す縦断面図である。
図16図14の部分拡大図である。
図17図15のA-A断面図である。
図18】第五実施形態の変形例に係る燃焼器を示す図である。
図19】本開示の各実施形態に係る演算装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図1図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、空気Aを圧縮する圧縮機2と、燃焼ガスCを生成する燃焼器3aと、燃焼ガスCによって駆動されるタービン4と、を有している。
燃焼器3aは、ガスタービン1の回転軸の周囲に周方向に間隔をあけて複数が設けられている。燃焼器3aは、圧縮機2が圧縮した空気Aに燃料Fを混合させて燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスCを生成する。
【0012】
<燃焼器>
以下、図2図6を参照して燃焼器3aの構成について説明する。
図2に示すように、燃焼器3aは、外筒10、エンドカバー11、内筒13、支持部15、基板20、及び温度検知回路50(図3参照)を有している。
【0013】
<外筒>
筒体は燃焼器3aの中心となる軸線O(燃焼器軸線O)を中心とした円筒状をなしている。
【0014】
<エンドカバー>
エンドカバー11は、外筒10の軸線O方向の一方側(図2における左側)の端部を閉塞する円盤状をなしている。エンドカバー11には、外筒10の軸線O方向一方側の端部が当接されている。
【0015】
<内筒>
内筒13は、外筒10の内側に同軸に配置されている。内筒13は、外筒10の内側で軸線O方向に延びる円筒状をなしている。内筒13の軸線O方向一方側の端部は、エンドカバー11と軸線O方向に離間している。内筒13の外径は外筒10の内径よりも小さい。これにより、内筒13の外周面23と外筒10の内周面との間には、環状の流路が形成されている。当該流路には、圧縮機2によって圧縮された空気Aが軸線O方向他方側(図2における右側)から軸線O方向一方側に向かって流通する。
【0016】
<支持部>
支持部15は、軸線O方向に延びる部材であって、周方向に間隔をあけて複数が設けられている。支持部15の軸線O方向一方側の端部は、外筒10の内周側でエンドカバー11の軸線O方向他方側を向く面に固定されている。外筒10と内筒13との間を軸線O方向一方側に流通してきた空気Aは、互いに隣り合う支持部15の間を通過する最に、流通方向を軸線O方向他方側に反転させる。
【0017】
<燃焼器プレート>
基板20は、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。基板20は、外周面23が内筒13の内側に同軸に嵌め込まれるように設けられている。基板20は、上流端面21と下流端面22とを有する。
【0018】
<上流端面>
上流端面21は、基板20における軸線O方向一方側を向く端面であって、軸線Oに直交する平面状をなしている。上流端面21は、内筒13の軸線O方向一方側の端面と同一の軸線O方向位置に配置されている。
【0019】
<下流端面>
下流端面22は、基板20における軸線O方向他方側を向く端面であって、軸線Oに直交する平面状をなしている。下流端面22は、内筒13の軸線O方向他方側の端面よりも軸線O方向一方側に位置している。これにより内筒13の内周面と基板20の下流端面22とによって空間が区画形成されている。当該空間は燃焼器3aの燃焼空間とされている。
【0020】
<ノズル>
基板20には、上流端面21と下流端面22とにわたって貫通する予混合管としてのノズル30が設けられている。ノズル30は、軸線O方向に延びる貫通孔としての複数が形成されている。ノズル30の内側は、軸線O方向一方側が上流側、軸線O他方側が下流側とされた流路とされている。当該流路には、上流側から下流側に向かって空気Aが流通する。
ノズル30は、直線状に延びており、軸線O方向にわたって一様な内径を有している。ノズル30は、軸線Oに直交する方向に互いに間隔をあけて並設されるように複数が設けられている。
【0021】
ここで基板20の内部には、ノズル30を避けるように区画形成された空間であるプレナム(図示省略)が形成されている。
プレナム内には、図示しない燃料供給管を介して燃料Fが供給される。これにより、プレナム内は燃料Fによって充填された状態にある。燃料Fとしては、水素や、該水素と天然ガスの混合燃料が用いられる。
ノズル30の内周面には、該ノズル30内の流路とプレナム内とを連通させる燃料噴射孔(図示省略)が形成されている。プレナム内に充填された燃料Fは、燃料噴射孔を介してノズル30内に噴射される。
【0022】
<温度検知回路>
図3に示すように、温度検知回路50は、各ノズル30の局所的な温度上昇を検出するための回路(サーモスタット)である。温度検知回路50は軸線Oに直交する方向に延びるように形成されており、本実施形態では、下流端面22の表面に積層されるように平面状に形成されている。
本実施形態の温度検知回路50は、複数が互いに干渉することなく並列に設けられている。各温度検知回路50は、ノズル30を避けるようにして複数のノズル30の開口部の周囲を通過するように蛇行状に延びている。
【0023】
図4に示すように、温度検知回路50は、始点Sから終点Eまで分岐することなく一本道で延びている。始点S及び終点Eは、温度検知回路50の出力端子70である。
温度検知回路50は、始点S側から終点E側に向かって、正素線51と負素線52とが交互に複数が接続されることによって形成されている。正素線51と負素線52との接続部は、接点とされている。接点は、正素線51と負素線52の接続部の数に応じて複数が設けられている。温度検知回路50では各ノズル30の周囲に接点が少なくとも一つ存在するように設けられている。
【0024】
正素線51、負素線52の材料としては、ゼーベック効果が発現する異種金属の組み合わせを適宜採用することができる。正素線51、負素線52の材料としては、例えばクロメル-アルメル、鉄-コンスタンタン、銅-コンスタンタン、クロメル-コンスタンタン、白金ロジウム合金-白金等が挙げられる。これらの場合、正素線51が+脚、負素線52が-脚として機能する。
【0025】
ここで、詳しくは図4に示すように、温度検知回路50の始点S側から終点E側に向かって正素線51、負素線52の順で接続されることで形成された接点は温接点Hとなる。また、温度検知回路50の始点S側から終点E側に向かって負素線52、正素線51の順で接続されることで形成された接点は冷接点Lとなる。
【0026】
図4に示すように、複数のノズル30のうちの一のノズル30で局所的な温度上昇が発生すると、当該ノズル30に近接する温接点Hのみが加熱される。
これにより、加熱された温接点Hと隣り合う始点S側の冷接点Lと間の正素線51には、△Tの温度勾配が生じる結果、ゼーベック効果により△V+の起電力が発生する。
一方、加熱された温接点Hと隣り合う終点E側の冷接点Lとの間の負素線52には、-△Tの温度勾配が生じる結果、ゼーベック効果により△V-の起電力が発生する。
そのため、温度検知回路50全体としては、△Vの起電力が発生することになる。
【0027】
なお、局所的な温度上昇が発生したノズル30に近接する接点が冷接点Lの場合には、上記とは逆向きの起電力が発生する。
即ち、加熱された冷接点Lと隣り合う始点S側の温接点Hと間の負素線52には、△Tの温度勾配が生じる結果、ゼーベック効果により-△V+の起電力が発生する。
一方、加熱された冷接点Lと隣り合う終点E側の温接点Hとの間の正素線51には、-△Tの温度勾配が生じる結果、ゼーベック効果により-△V-の起電力が発生する。
そのため、温度検知回路50全体としては、-△Vの起電力が発生することになる。
【0028】
このような温度検知回路50は、下流端面22の表面に、蒸着、溶射、3Dプリンティング等の種々の配線パターン形成手法によって形成される。温度検知回路50は、下流端面22の表面に直接描画する描画装置を用いて形成されることが好ましい。描画装置は、線状の金属を連続的に配置することができる装置、例えば、溶接ロボットや、金属用3Dプリンタを採用することができる。LMD(レーザ・メタル・デポジション、Laser Metal Deposition、以下LMDと呼ぶ。)装置などの溶接装置も採用することができる。
また、線材としての正素線51、負素線52を直接的に敷設することによって、温度検知回路50を形成してもよい。
【0029】
<燃焼器システム>
本実施形態では、燃焼器3aのフラッシュバックを検出するための演算装置100、200、300がさらに設けられている。燃焼器3aと演算装置100、200、300とによって、燃焼器システム3が構成されている。
【0030】
<演算装置>
図5に示すように、演算装置100は、電圧取得部110、及び判定部120を有する。
電圧取得部110は、燃焼器3aの温度検知回路50における出力端子70としての始点S・終点E間の電圧値を取得する。電圧取得部110は、複数の温度検知回路50がある場合には、各温度検知回路50前に電圧値を首足する。
判定部120は、電圧取得部110が取得した電圧値が、予め定めた閾値を超えているか否かを判定する。
【0031】
次に図6のフローチャートを参照して、演算装置100の処理の流れを説明する。
演算装置100では、まず電圧取得部110が温度検知回路50からの電圧値を取得する(ステップS11)。
次いで、判定部120が、電圧取得部110によって取得された電圧値が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS12)。
電圧値が閾値を超えていなかった場合には、再度ステップS11を実行する。
電圧値が閾値を超えている場合には、フラッシュバックが発生したことを検知する(ステップS13)。
【0032】
<作用効果>
次に本実施形態に係るガスタービン1の動作及び作用効果について説明する。
図2に示すように、ガスタービン1の運転時には、基板20の各ノズル30内に上流側から空気Aが入り込み、該ノズル30内を下流側に向かって空気Aが流通する。その空気Aにノズル30内で燃料Fが噴射されることで、予混合ガスMが生成される。予混合ガスMは基板20の下流端面22でのノズル30の開口部から噴射されて、着火される。これによって予混合ガスMが燃焼することで燃焼ガスCが発生し、当該燃焼ガスCがタービン4に送られることでタービン4が回転駆動される。
【0033】
ここで、燃焼器3aの運転状態によっては、基板20の下流側の火炎がノズル30内に逆流するように入り込むフラッシュバックが発生することがある。特に燃料Fに水素が含まれる場合には、火炎伝搬速度は上昇し、着火エネルギーは大きく減少するため、フラッシュバックや異常燃焼の発生リスクが高くなる。
本実施形態では、このようなフラッシュバックが複数のノズル30のうちの一部のノズル30で局所的に発生した場合であっても適切に検知することができる。
【0034】
即ち、複数のノズル30のうちのいずれかでフラッシュバックが発生した場合に、当該ノズル30付近の温度のみが周囲と比較して異常に上昇する。その際、当該ノズル30の近傍にある接点(温接点H又は冷接点L)の温度が急激に上昇する。この温度の急激な変化によって、温度検知回路50には+又は-の起電力が発生する。この起電力を温度検知回路50の出力端子70から検出することで、いずれかのノズル30でフラッシュバックが発生したことを検知することが可能となる。
これによって、例えば燃料Fの供給量を適宜調整することで燃焼器3aの焼損を回避することができる他、燃料制御による適切な燃焼条件を設定することができる。
【0035】
ここで、複数のノズル30のそれぞれに熱電対の接点を設けようとした場合、接点毎に+脚及び-脚の素線を設ける必要があり、回路長の複雑化及び長大化を招いてしまう。これに対して、本実施形態では、正素線51と負素線52とを交互に接続することで複数の接点が形成されている。したがって、一本道の回路によって各ノズル30の周囲に接点を設けることができる。したがって、簡易な構成によりフラッシュバックの発生を検知することが可能となる。
【0036】
また、各ノズル30の周囲には少なくとも一つの接点が配置されているため、ノズル30毎の局所的なの異常温度上昇を検知することができる。そのため、フラッシュバックの発生を適切に検出することができる。
【0037】
さらに、温度検知回路50が下流端面22に配置されているため、各接点は伝熱層を介することなくフラッシュバックの火炎を直接的に受けることができる。そのため、フラッシュバックの発生を遅れなく検出することができる。
なお、温度検知回路50による温度上昇の検出が過敏になり過ぎ、下流端面22の表面温度のムラをフラッシュバックとして誤検知してしまう場合がある。このような場合を回避するために、接点の表面に薄く遮熱コーティング層を設けてもよい。遮熱コーティング層は、例えば接点に遮熱処理を施すことで形成することができる。これによって、火炎がフラッシュバックしたときのみ異常温度を検知するように感度調整を行うことができる。その結果、誤検知を抑制することができる
また、本実施形態では、複数の温度検知回路50を設けているため、これらの電圧値を検出することで、フラッシュバックが発生した領域をある程度特定することができる。
【0038】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態について図7及び図8を参照して詳細に説明する。本実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第二実施形態の燃焼器3aでは、燃焼プレートの下流端面22に複数のノズル30が規則的に格子状に配置されている。本実施形態では、縦4列、横4列(4行4列)の合計16個のノズル30がマトリックス状に、即ち、全体として正方形状をなすように配置されている。
【0039】
温度検知回路50は、このような複数のノズル30の周囲を蛇行するように下流端面22に沿って張り巡らされている。温度検知回路50の出力端子70となる始点S及び終点Eは、正方形状の対角となる角部に配置されている。温度検知回路50は、縦一列毎に折り返しながら横方向に進むように蛇行しながら、始点Sから終点Eまで全ノズル30の周囲を通過するように延びている。温度検知回路50は、中途で分岐することなく、始点Sから終点Eまで一本道の一筆書きで延びている。
【0040】
温度検知回路50の出力点である終点E及び始点Sには、これらの温度を検出することにより、基準温度からのずれを校正するための基準熱電対80が設けられている。
【0041】
ここで、本実施形態の温度検知回路50では、各ノズル30を挟み込みように接点が設けられている。一のノズル30に対して、一対の接点が横方向の両側(図7の左右)から挟み込むように対向配置されている。対向配置されている接点は、いずれもが温接点H又は冷接点Lとされており、即ち、一のノズル30を挟み込む一対の接点の属性(温接点Hか冷接点Lの属性)は同一とされている。
【0042】
例えば、図8に示すように、縦に3つ並んだノズル30のうち中央のノズル30の温度が上昇した場合、当該中央のノズル30を挟み込む温接点Hの前後では、第一実施形態で説明したように、それぞれ△Vの起電力が生じる。これにより、温度検知回路50では合計2△Vの起電力が発生することになる。当該起電力に基づいて第一実施形態同様にフラッシュバックが検出される。
【0043】
また、温度が上昇したノズル30を挟み込む一対の接点が冷接点Lの場合には、当該冷接点Lの前後でそれぞれ-△Vの起電力が生じる。これにより、温度検知回路50では合計-2△Vの起電力が発生することになる。当該起電力に基づいて第一実施形態同様にフラッシュバックが検出される。
【0044】
<作用効果>
本実施形態では温度検出回路が全てのノズル30の近傍を通過するように一筆書きに設けられている。そのため、第一実施形態同様、回路長の複雑化や長大化を回避して簡易な構成でフラッシュバックを検出することが可能となる。
【0045】
ここで、仮にノズル30を挟み込むように配置された一対の接点が、温接点H・冷接点Lの組み合わせであった場合、当該ノズル30の温度上昇により、温接点Hでは+の起電力が生じる一方、冷接点Lでは-の起電力が生じる。この場合、一本道の温度検出回路では、+と-の起電力が打ち消し合うことになり、出力端子70から出力される電圧値は小さくなるか0となってしまう。
【0046】
これに対して本実施形態では、一のノズル30を挟み込む一対の接点の属性が同一であるため、発生する起電力同士が打ち消されることはない。そのため、フラッシュバックを適切に検出することができる。
また、一のノズル30を挟み込む接点から発生する電圧値の正負が同一であることから、2倍の電圧値を検出することができる。これにより、より温度上昇が少ない段階からフラッシュバックを検出することができ、フラッシュバックを早期に検出することができる。
【0047】
また、本実施形態では、4行4列の計16個のノズル30のうち、1、3列のノズル30は冷接点Lに挟み込まれており、2、4列のノズル30は温接点Hに挟み込まれている。そのため、発生する起電力の正負によって、フラッシュバックが発生しノズル30が奇数行に位置するか、偶数行に位置するかを判別することができる。
【0048】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態について図9図11を参照して説明する。本実施形態では、他の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
第三実施形態の基板20は第二実施形態と同様の構成をなしている。ここで16個のノズル30を図9に示すように、No1~No16のノズル30と定義する。
また、第三実施形態の温度検知回路50では、始点Sと終点Eに加えてこれら始点Sと終点Eとの間の2点の中間点Iをさらに出力端子としている。
【0050】
即ち、温度検出回路の中途位置には、互いに離間するように2点の中間点Iが設けられている。一方の中間点Iは、No5のノズル30とNo9のノズル30との間の温度検知回路50上に設けられている。他方の中間点Iは、No8のノズル30とNo12のノズル30との間の温度検知回路50上に設けられている。
【0051】
本実施形態では、始点Sが第一出力端子71とされ、終点Eが第二出力端子72とされ、一方の中間点Iが第三出力端子73とされ、他方の中間点Iが第四出力端子74とされている。第三出力端子73および第四出力端子74にも、第一出力端子71及び第二出力端子72と同様に基準熱電対80が設けられている。
【0052】
次に燃焼器3aとともに燃焼器システム3を構成する第三実施形態の演算装置200について説明する。
第三実施形態の演算装置200は、電圧取得部210判定部220及び領域特定部230を有している。
【0053】
電圧取得部210は、複数の出力端子間の電圧値を取得する。本実施形態では、
(1)第一出力端子71-第二出力端子72間の電圧値
(2)第一出力端子71-第三出力端子73間の電圧値
(3)第一出力端子71-第四出力端子74間の電圧値
(4)第二出力端子72-第三出力端子73間の電圧値
(5)第二出力端子72-第四出力端子74間の電圧値
の計5つの電圧値を取得する。
【0054】
判定部220は、上記(1)~(5)の電圧値が予め定めた閾値を超えているか否かを判定する。
領域特定部230は、(1)~(5)の電圧値のうち、閾値を超えた電圧値から複数の出力端子間のいずれの領域でフラッシュバックが発生したのかを特定する。
【0055】
次に図11のフローチャートを参照して、演算装置200の処理の流れを説明する。
まず、電圧取得部210が上記(1)~(5)の全ての出力端子間の電圧値を取得する(ステップS21)。
次いで、判定部220は、上記(1)~(5)の出力端子間の電圧値が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS22)。判定部220は、いずれかの出力端子間の電圧値が閾値を超えていない場合、再度ステップS21を実行する。また、判定部220は、いずれかの出力端子間の電圧値が閾値を超えた場合、フラッシュバックが発生したと検知する(ステップS23)。
【0056】
その後、電圧値が閾値を超えた出力端子間の情報に基づいて、フラッシュバックが発生した領域を特定する(ステップS24)。領域特定部230は、例えば予め記憶された下記表1に示すテーブルにしたがって、当該領域を特定する。
【0057】
【表1】
【0058】
表1において、
「1-2」は、上記(1)第一出力端子71-第二出力端子72間の電圧値、
「1-3」は、上記(2)第一出力端子71-第三出力端子73間の電圧値、
「1-4」は、上記(3)第一出力端子71-第四出力端子74間の電圧値、
「2-3」は、上記(4)第二出力端子72-第三出力端子73間の電圧値、
「2-4」は、上記(5)第二出力端子72-第四出力端子74間の電圧値を示している。
また、「+」は、「+の電圧値が閾値を超えたこと」を示しており、「-」は「-の電圧値が閾値を超えたこと」を示している。「0」は電圧値が検出されなかったか、又は、検出した電圧値が閾値を超えなかったことを示している。
【0059】
表1によれば、例えば、「1-2」が+、「1-3」が+、「1-4」が+、「2-3」が0、「2-4」が0であった場合には、No1、No3のいずれかのノズル30でフラッシュバックが発生したことが判別できる。
また、例えば、「1-2」が-、「1-3」が-、「1-4」が-、「2-3」が-、「2-4」が0であった場合には、No6、No8のいずれかのノズル30でフラッシュバックが発生したことが判別できる。
さらに、表1によれば、例えば、「1-2」が-、「1-3」が0、「1-4」が0、「2-3」が-、「2-4」が-であった場合には、No14、No16のいずれかのノズル30でフラッシュバックが発生したことが判別できる
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、複数の出力端子間の電圧値に基づいて、フラッシュバックが発生した領域を特定することができる。これにより、例えばフラッシュバックが発生した領域のノズル30に供給される燃料流量を減少することができ、ノズル30の焼損を回避することができる。また、この際、フラッシュバックが発生していない領域のノズル30に供給される燃料流量を増加させることで、燃焼器3aで全体としての出力の低下を抑制できる。
【0061】
<第四実施形態>
次に本発明の第四実施形態について図12図14を参照して説明する。本実施形態では、他の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図12に示すように、本実施形態では複数のノズル30が集合配置されることでノズルセグメント40が構成されている。ノズルセグメント40は、中央に一が配置され、中央のノズルセグメント40を囲むように外周側に複数(本実施形態では5つ)が配置されている。
【0062】
基板20内に区画形成されているプレナムは、ノズル30セグメント毎に独立するように複数が形成されている。即ち、基板20内には互いに隔てられた複数(本実施形態では6つ)のプレナムが形成されており、当該プレナムと各ノズル30セグメントは対応関係にある。各ノズル30セグメントのノズル30には、対応するプレナムに充填された燃料Fが供給される。
【0063】
これに伴って本実施形態では、複数のプレナム毎に燃料供給部90が設けられている。燃料供給部90は、各プレナムに接続された燃料供給ライン91と、当該燃料供給ライン91に設けられた調整弁92と、を有している。
燃料供給ライン91は、図示しない燃料供給源に接続されている。燃料供給ライン91を介して各プレナムに燃料Fが供給される。
調整弁92は、各燃料供給ライン91に設けられている。調整弁92によって各燃料供給ライン91を通過する燃料Fの流量が調整されることで、各プレナムに供給される燃料Fの流量が決定する。各プレナムからは、燃料供給部90からの供給量に応じた燃料Fがノズル30内に噴出される。即ち、燃料供給部90によって、ノズル30セグメント毎にノズル30に供給される燃料Fの流量が調整される。
【0064】
本実施形態では、温度検知回路50が各ノズル30セグメントに対応するように設けられている。ノズル30セグメントに対応する温度検知回路50は、当該ノズル30セグメントの各ノズル30の周囲を通過するように、下流端面22における当該ノズル30セグメントの設置範囲にわたって張り巡らされている。
【0065】
本実施形態の燃焼器3aには演算装置300が付随しており、これにより燃焼器システム3が構成されている。
演算装置300は、図13に示すように、電圧取得部310、判定部320、及び燃料制御部330を有している。
電圧取得部310は、風数のノズル30セグメント毎の温度検知回路50から出力される電圧値を検出する。
【0066】
判定部320は各ノズル30セグメントに対応する温度検知回路50の電圧値が予め定めた閾値を超えたか否かを判定する。
燃料Fセグメントは、判定部320の判定結果にしたがって、各ノズル30セグメントに対応するプレナムへの燃料供給量を制御する。
【0067】
次に図14のフローチャートを参照して、演算装置300の処理の流れを説明する。
まず、電圧取得部310が各ノズル30セグメントに対応する温度検知回路50毎の電圧値を取得する(ステップS31)。
次いで判定部320は、取得した各ノズル30セグメントに対応する各電圧値が予め定めた閾値を超えたか否かを判定する(ステップS32)。これら電圧値が閾値を超えていない場合、再度、ステップS31を実行する。
【0068】
そして、判定部320によって、特定の電圧値が閾値を超えたと判定された場合、当該電圧値に対応するノズル30セグメントにフラッシュバックが発生したことを検知する。即ち、フラッシュバックが発生したノズル30セグメントを特定する(ステップS33)。
【0069】
その後、燃料制御部330は、各ノズル30セグメントへの燃料Fの供給量を制御する(ステップS34)。即ち、フラッシュバックが発生したと特定されたノズル30セグメントへの燃料供給量を減少させる制御を行う。具体的には、当該ノズル30セグメントに燃料Fを供給する燃料供給部90の調整弁92に対して、流量を減少させる制御を行う。
これと同時に、フラッシュバックが発生したと特定されたノズル30セグメント以外の複数ノズル30セグメントへの燃料供給量を増加させる制御を行う。具体的には、これらノズル30セグメントに燃料Fを供給する燃料供給部90の調整弁92に対して流量を増加させる制御を行う。この際、当該制御の前後でノズル30セグメント全体としての燃料供給量が変化しないように各調整弁92による燃料供給量が制御される。
【0070】
<作用効果>
本実施形態によれば、複数のノズル30セグメント毎に温度検知回路50が設けられていることで、複数のノズル30セグメントのうちいずれのセグメントでフラッシュバックが発生したかを適切に検知することができる。
【0071】
また、燃料制御部330によって、フラッシュバックが発生したノズル30セグメントへの燃料供給量が減少されることで、当該ノズル30セグメントが焼損してしまうことを回避することができる。また、他のノズル30セグメント以外のノズル30セグメントへは燃料Fの供給が継続されることで、燃焼器3aの稼働を継続することができる。
【0072】
さらに、フラッシュバックが発生していないノズル30セグメントへの燃料供給量を増加させることで、燃焼器3a全体としての出力を維持することができる。
【0073】
<第五実施形態>
次に本発明の第五実施形態について図15図18を参照して説明する。本実施形態では、他の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図12に示すように、第5実施形態の燃焼器400は全体構成が他の実施形態と相違する。第五実施形態の燃焼器400は、外筒10、内筒13、支持部15、パイロットバーナ410、メインバーナ420、及び基板430(図16図17参照)を備えている。
【0074】
パイロットバーナ410は、外筒10及び内筒13の内側に設けられている。パイロットバーナ410は、パイロットノズル411、パイロットバーナ筒412、及び、パイロットスワラ415を有している。パイロットノズル411は、軸線Oに沿って延びている。
パイロットノズル411の基端部はパイロット燃料ポート416に接続されている。
【0075】
パイロットバーナ筒412は、内筒13の内側でパイロットノズル411を周囲から囲うように設けられている。パイロットバーナ筒412は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなす円筒部413と、円筒部413におけるパイロットノズル411の先端側に接続されて当該先端側に向かう程に拡径する筒状をなすパイロットコーン414と、を有している。
パイロットスワラ415は、パイロットノズル411とパイロットバーナ筒412の円筒部413との間に設けられている。
【0076】
メインバーナ420は、外筒10及び内筒13の内側で、パイロットノズル411を外周側から囲うように周方向に複数が設けられている。メインバーナ420は、メインノズル421、予混合管としてのメインバーナ420筒、メインスワラ423を有している。
メインノズル421の基端部はメイン燃料ポート424に接続されている、メイン燃料ポート424を介してメインノズル421内に燃料Fが導入される。
【0077】
メインバーナ420筒は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなしており、メインノズル421を外周側から囲んでいる。メインバーナ420筒の先端側は、図16に示すように、パイロットコーン414の形状に応じて先端側に向かうほど徐々に縮径している。各メインバーナ420筒とパイロットバーナ410―筒とは互いに隙間を介して離間して配置されている。各メインバーナ420筒は、内筒13と隙間を介して離間して配置されている。
メインスワラ423は、メインノズル421とメインバーナ420筒との間に設けられている。
【0078】
<基板>
図16及び図17に示すように、基板430は内筒13の内側に配置されており、軸線Oに直交する方向に延びる円板状をなしている。基板430の外周面23は内筒13の内周面に全周にわたって固定されている。基板430は、パイロットバーナ410とメインバーナ420とを内筒13の内側で支持している。パイロットバーナ410及びメインバーナ420は、それぞれ基板430を貫通するように配置されている。即ち、基板430には複数の貫通孔が形成されており、当該貫通孔を介してパイロットバーナ410のパイロットコーン414、及び、メインバーナ420のメインバーナ420筒が支持されている。
【0079】
<温度検知回路>
ここで図17に示すように、基板430には、温度検知回路50が設けられている。本実施形態では、基板430における下流側を向く面に積層されるように平面状に形成されている。なお、温度検知回路50は、基板430における上流側を向く面に積層されていてもよいし、基板430内に埋め込まれた構成であってもよい。
【0080】
温度検知回路50は、パイロットコーン414と各メインバーナ420筒との間を周方向に延びるように配置されている。温度検知回路50の各接点は、パイロットコーン414と各メインバーナ420筒との間に設けられている。即ち、各接点は、パイロットコーン414の外周側で周方向に温接点Hと冷接点Lとが交互に存在するように配列されている。
【0081】
なお、例えば図18に示すように、第五実施形態の変形例として、温度検知回路50がメインバーナ420筒を囲むように設けられていてもよい、即ち、当該変形例では、複数のメインバーナ420筒と内筒13との間を周方向に延びるように温度検知回路50が設けられている。各接点は、各メインバーナ420筒に対応するように、各メインバーナ420筒と内筒13との間に設けられている。
<作用効果>
第五実施形態でも、他の実施形態同様、複数のメインバーナ420のうちの一部のメインバーナ420筒で局所的にフラッシュバックが発生した場合であっても、当該フラッシュバックを適切に検知することができる。
【0082】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0083】
実施形態では、基板20内にプレナムが設けられて、当該プレナムから各ノズル30内に燃料Fが供給されることとしたが、これに限定されることはない。例えば、各ノズル30内に上流側から燃料供給ノズルが挿入され、当該燃料供給ノズルによってノズル30内に燃料Fが供給される構成であってもよい。
【0084】
また、実施形態では、各ノズル30に対応して少なくとも一つの接点が当該ノズル30の周囲に設けられることとしたが、必ずしも全てのノズル30の周囲に接点が設けられていなくともよい。例えば、複数のノズル30毎に一つの接点が設けられた構成であってもよい。また、温度検知回路50の延在方向で、一つ又は複数のノズル30を飛ばしながら接点が設けられてもよい。
一方で、各ノズル30に対応するように複数の接点が設けられていてもよい。
【0085】
第二、第三実施形態では、ノズル30が縦4列、横4列(4行4列)に配置されている構造を説明したが、これに限られることはない。即ち、ノズル30が縦複数列、横複数列のマトリックス状に配列されていればよく、また、千鳥配列等の他の配列であってもよい。
【0086】
実施形態では、温度検知回路50が基板20の下流端面22に形成されている構成を説明したがこれに限定する必要はない。温度検知回路50が基板20内に埋め込まれている構成であってもよい。
また、温度検知回路50を下流端面22に形成した場合に温度応答が早過ぎると、ノイズや燃焼振動等の他の事象とフラッシュバックとの判別が難しくなる。よって、温度検知回路50を下流端面22から浅く埋め込んだり、温度検知回路50上に薄く断熱層を設けたりすることで、温度応答を遅延させてもよい。
なお、第五実施形態に他の実施形態の演算装置100、200、300を設けてもよい。
【0087】
上述した演算装置100、200、300による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ500が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ500が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ500の具体例を以下に示す。
【0088】
図19に示すように、コンピュータ500は、CPU501と、メインメモリ502と、ストレージ503と、インターフェース504と、を備える。
例えば、上述の演算装置100、200、300はコンピュータ500に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ503に記憶されている。CPU501は、プログラムをストレージ503から読み出してメインメモリ502に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU501は、プログラムに従って、記憶領域をメインメモリ502に確保する。
【0089】
ストレージ503の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ503は、コンピュータ500のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース504または通信回線を介してコンピュータ500に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ500に配信される場合、配信を受けたコンピュータ500が当該プログラムをメインメモリ502に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ503は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0090】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ500にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0091】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0092】
<付記>
各実施形態に記載の燃焼器3a、400、燃焼器システム3及びガスタービン1は、例えば以下のように把握される。
【0093】
(1)第1の態様に係る燃焼器3a、400は、軸線Oに直交する方向に延びる基板20、430と、前記基板20、430を貫通するように延びるとともに、上流側から導入される空気Aに燃料Fが混合されることで生成された予混合ガスMを下流側の開口部から噴射する複数の予混合管30、422と、前記基板20、430に設けられて、各前記予混合管30、422の周囲を通過するように前記軸線Oに直交する方向に延びる温度検知回路50をさらに備え、前記温度検知回路50は、該温度検知回路50の出力端子70となる始点S及び終点Eを有するとともに、前記始点S側から前記終点E側に向かって正素線51及び負素線52が交互に複数接続されることで形成された複数の接点を有する。
【0094】
上記構成によれば複数の予混合管30、422のいずれかでフラッシュバックが発生し、当該予混合管30、422の温度が上昇した際には、当該予混合管30、422の近傍にある接点の温度が上昇する。これにより、温度検知回路50には起電力が発生する。この起電力を温度検知回路50の出力端子70から検出することで、いずれかの予混合管30、422でフラッシュバックが発生したことを検知することができる。
【0095】
(2)第2の態様に係る燃焼器3a、400では、前記接点は、各前記予混合管30、422の周囲に少なくとも一つが配置されている(1)に記載の燃焼器3aである。
【0096】
これにより、各予混合管30、422の異常温度上昇を検知することができ、フラッシュバックが発生したことを検出することができる。
【0097】
(3)第3の態様に係る燃焼器3a、400は、前記温度検知回路50は、前記基板20、430における前記下流側を向く表面に形成されている(1)又は(2)に記載の燃焼器3a、400である。
【0098】
これにより、フラッシュバックが発生した際には他の伝熱層を介さずに接点により直接的に温度上昇を検出することができる。
【0099】
(4)第4の態様に係る燃焼器3a、400は、前記温度検知回路50は、該温度検知回路50の表面に形成された遮熱コーティング層を有する(3)に記載の燃焼器3a、400である。
【0100】
これによって、火炎がフラッシュバックしたときのみ異常温度を検知するように感度調整を行うことができる。
【0101】
(5)第5の態様に係る燃焼器3a、400は、前記接点は、前記温度検知回路50の前記始点S側から前記終点E側に向かって前記正素線51、前記負素線52の順で接続されることで形成される温接点Hと、前記温度検知回路50の前記始点S側から前記終点E側に向かって前記負素線52、前記正素線51の順で接続されることで形成される冷接点Lと、を含み、前記接点は、前記予混合管30、422を挟み込むように一対が対向配置されており、一対の前記接点は、いずれも温接点H又は冷接点Lである(1)~(4)のいずれかに記載の燃焼器3aである。
【0102】
ここで、温接点Hは温度上昇により+の起電力を発生させ、冷接点Lは温度上昇によって-の起電力を発生させる。そのため、例えば特定の予混合管30、422を挟むように温接点Hと冷接点Lとが対向配置されている場合には、予混合管30、422の温度上昇によって温接点H・冷接点Lで生じる起電力は互いに打ち消されてしまう。これに対して本態様では、一対の温接点H又は一対の冷接点Lが予混合管30、422を挟むように対向配置されているため、互いに起電力が打ち消されることはない。したがって、異常温度上昇を適切に検知することができる。
【0103】
(6)第6の態様に係る燃焼器3a、400は、前記温度検知回路50は、前記始点Sと前記終点Eとの間に、出力端子70となる中間点Iを有する(1)から(5)のいずれかに記載の燃焼器3aである。
【0104】
始点Sと終点Eとの間の電圧値のみならず、始点Sと中間点I、中間点Iと終点E、中間点Iと中間点Iの間の起電力を検知することで、いずれの領域でフラッシュバックが発生したかを検出することができる。
【0105】
(7)第7の態様に係る燃焼器3a、400は、前記基板20は、複数の前記予混合管30、422が集合配置された予混合管30、422セグメントを複数有し、前記温度検知回路50は、複数の前記予混合管30、422セグメント毎に設けられている(1)から(6)のいずれかに記載の燃焼器3aである。
【0106】
これにより、予混合管30、422セグメント毎にフラッシュバックが発生したか否かを検出することができる。
【0107】
(8)第8の態様に係る燃焼器システム3は、(1)から(5)のいずれかに記載の燃焼器3a、400と、前記出力端子70から出力される電圧値に基づいて、フラッシュバックを検知する演算装置100を備える。
【0108】
温度異常回路から取得する電圧値によって、フラッシュバックを精度高く検知することができる。
【0109】
(9)第9の態様に係る燃焼器システム3は、(6)に記載の燃焼器3a、400と、各前記複数の出力端子70から出力される電圧値に基づいて、複数の前記出力端子70間のいずれの領域でフラッシュバックが発生したか検知を演算する演算装置200と、を備える。
【0110】
複数の出力端子70間の電圧値を取得することによって、出力端子70間のいずれの領域でフラッシュバックが発生したのかを精度高く検出することができる。
【0111】
(10)第10の態様に係る燃焼器システム3は、(7)に記載の燃焼器3a、400と、各前記温度検知回路50の出力端子70から出力される電圧値に基づいて、フラッシュバックが発生した前記予混合管30、422セグメントを特定する演算装置300と、を備える。
【0112】
これにより、複数の予混合管30、422セグメントのうち、いずれのセグメントでフラッシュバックが発生したかを適切に検知することができる。
【0113】
(11)第11の態様に係る燃焼器システム3は、各前記予混合管30、422セグメントへの燃料Fの供給量を調整可能な燃料供給部90さらに備え、前記演算装置300は、前記フラッシュバックが発生したと特定された前記予混合管30、422セグメントへの燃料Fの供給量を減少させるとともに、その他の前記予混合管30、422セグメントへの燃料Fの供給量を増加させる(10)に記載の燃焼器システム3である。
【0114】
これにより、フラッシュバックが発生した予混合管30、422セグメントが焼損してしまうことを抑制しながら、燃焼器3a、400全体としての出力を維持することができる。
【0115】
(12)第12の態様に係るガスタービン1は、空気Aが導入されて燃焼ガスCを生成する(8)から(11)のいずれかに記載の燃焼器システム3と、前記燃焼器システム3に圧縮した前記空気Aを供給する圧縮機2と、前記燃焼ガスCによって駆動されるタービン4と、を備える。
【符号の説明】
【0116】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器システム
3a 燃焼器
4 タービン
10 外筒
11 エンドカバー
13 内筒
15 支持部
20 基板
21 上流端面
22 下流端面
23 外周面
30 ノズル(予混合管)
40 ノズルセグメント
50 温度検知回路
51 正素線
52 負素線
70 出力端子
71 第一出力端子
72 第二出力端子
73 第三出力端子
74 第四出力端子
80 基準熱電対
90 燃料供給部
91 燃料供給ライン
92 調整弁
100 演算装置
110 電圧取得部
120 判定部
200 演算装置
210 電圧取得部
220 判定部
230 領域特定部
300 演算装置
310 電圧取得部
320 判定部
330 燃料制御部
400 燃焼器
410 パイロットバーナ
411 パイロットノズル
412 パイロットバーナ筒
413 円筒部
414 パイロットコーン
415 パイロットスワラ
416 パイロット燃料ポート
420 メインバーナ
421 メインノズル
422 メインバーナ筒(予混合管)
423 メインスワラ
424 メイン燃料ポート
430 基板
500 コンピュータ
501 CPU
502 メインメモリ
503 ストレージ
504 インターフェース
O 軸線
A 空気
F 燃料
M 予混合ガス
C 燃焼ガス
S 始点
E 終点
I 中間点
H 温接点
L 冷接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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