(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142423
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 109G
A47J27/00 109R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054558
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 紗織
(72)【発明者】
【氏名】小林 朋生
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 景太
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055AA09
4B055BA34
4B055BA62
4B055CD02
4B055DB14
4B055GA05
4B055GB12
4B055GC02
4B055GC13
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】調理温度の異なる複数の調理工程を実施する加熱調理器において、残時間の推定精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】加熱調理器は、本体と、本体に収容される容器と、容器を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、容器の温度である容器温度を測定する温度センサと、加熱部を制御して、第1調理温度及び第1調理時間に設定された第1調理工程と、第1調理工程の後に、第1調理温度と異なる第2調理温度及び第2調理時間に設定された第2調理工程と、を実施する制御部と、を備え、制御部は、容器温度が第1調理温度に到達するまでの第1変温時間中の容器温度の変化率である第1温度変化率を算出し、第1温度変化率に基づいて、第2調理工程において容器温度が第1調理温度から第2調理温度に到達するまでの第2変温時間を算出し、第2調理工程を終了するまでの残時間を算出する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収容される容器と、
前記容器を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器の温度である容器温度を測定する温度センサと、
前記加熱部を制御して、第1調理温度及び第1調理時間に設定された第1調理工程と、前記第1調理工程の後に、前記第1調理温度と異なる第2調理温度及び第2調理時間に設定された第2調理工程と、を実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記容器温度が前記第1調理温度に到達するまでの第1変温時間中の前記容器温度の変化率である第1温度変化率を算出し、
前記第1温度変化率に基づいて、前記第2調理工程において前記容器温度が前記第1調理温度から前記第2調理温度に到達するまでの第2変温時間を算出し、前記第2調理工程を終了するまでの残時間を算出する加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1温度変化率を用いて、前記第2変温時間中の前記容器温度の変化率である第2温度変化率を求め、
前記第1温度変化率から前記第1変温時間を求め、
前記第2温度変化率から前記第2変温時間を求め、
前記第1変温時間、前記第1調理時間、前記第2変温時間、及び前記第2調理時間から、前記残時間を算出する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度よりも高い場合、前記第1温度変化率を前記第2温度変化率とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度以下の場合、前記第1温度変化率よりも小さい値を前記第2温度変化率とする請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記容器温度に影響を与える温度特性情報を取得し、
前記第2調理温度が前記第1調理温度以下の場合、前記第1温度変化率及び前記温度特性情報に基づいて、前記第2温度変化率を求める請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記温度特性情報は、前記本体の環境温度、前記容器に収容される調理物の種類もしくは重量、又は前記加熱部の加熱量の少なくとも何れか一つである請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1温度変化率及び前記温度特性情報に対応する前記第2温度変化率を含むテーブルを用いて、前記第2温度変化率を求める請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度よりも高い場合、前記第1調理工程における前記加熱部の加熱量と、前記第2調理工程における前記加熱部の加熱量と、前記第1温度変化率と、と用いて前記第2温度変化率を求める請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記残時間を表示する表示部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1調理工程が開始された直後に、暫定残時間を算出して前記表示部に表示し、
前記第1変温時間内又は前記第1変温時間の終了後に、前記残時間を算出して前記表示部に表示する請求項1~3の何れか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品の加熱調理を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に容器を収容自在に構成されている本体と、本体内の容器を収容する部分を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、から構成される加熱調理器が知られている。このような加熱調理器では、加熱部の火力を制御することで、火力の異なる複数の調理工程又は複数の調理モードを実行することができる。例えば、特許文献1には、昇温工程及び低温維持工程などの複数の工程、又は調理物の種類に応じた複数のモードを実行する加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、加熱調理器において、加熱調理中に加熱調理が終了するまでの残時間をユーザーに通知することも知られている。ここで単一の調理工程における残時間は、容器温度が調理温度に達するまでの変温時間を推定することで、容易に求めることができる。しかしながら、特許文献1に記載されるように、調理温度の異なる複数の調理工程を連続して実施する場合、各調理工程の変温時間の推定が複雑となり、残時間の推定精度が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、調理温度の異なる複数の調理工程を実施する加熱調理器において、残時間の推定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加熱調理器は、本体と、本体に収容される容器と、容器を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、容器の温度である容器温度を測定する温度センサと、加熱部を制御して、第1調理温度及び第1調理時間に設定された第1調理工程と、第1調理工程の後に、第1調理温度と異なる第2調理温度及び第2調理時間に設定された第2調理工程と、を実施する制御部と、を備え、制御部は、容器温度が第1調理温度に到達するまでの第1変温時間中の容器温度の変化率である第1温度変化率を算出し、第1温度変化率に基づいて、第2調理工程において容器温度が第1調理温度から第2調理温度に到達するまでの第2変温時間を算出し、第2調理工程を終了するまでの残時間を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示における加熱調理器によれば、第1調理工程の第1変温時間中の第1温度変化率に基づいて、第2調理工程の第2変温時間及び残時間を算出することで、調理温度の異なる複数の調理工程を実施する場合も残時間の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における加熱調理器の概略構成を示す断面模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る加熱調理器の操作部及び表示部の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る加熱調理器の制御ブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る加熱調理器における複数調理工程の残時間算出処理を説明する図である。
【
図5】実施の形態1に係る加熱調理器における複数調理工程の残時間算出処理を説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1における残時間算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係る加熱調理器の制御ブロック図である。
【
図9】実施の形態2における第2温度変化率テーブルの一例を示す図である。
【
図10】実施の形態2における残時間算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態2の変形例1における第2温度変化率テーブルの一例を示す図である。
【
図12】実施の形態2の変形例2における第2温度変化率テーブルの一例を示す図である。
【
図13】実施の形態2の変形例3における第2温度変化率テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
(加熱調理器100の構成)
図1は、実施の形態1における加熱調理器100の概略構成を示す断面模式図である。加熱調理器100は、調理物が収容された容器5を加熱部3で加熱することで調理物を加熱調理するものである。
図1に示すように、加熱調理器100は、外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部開口を開閉する蓋体10と、本体1の内部に収容される容器5と、を備えている。
【0011】
本体1は、容器カバー2と、加熱部3と、底面温度センサ4と、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、制御部7と、を備えている。
【0012】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、底面温度センサ4が挿入される孔部2aが設けられている。また、容器カバー2の側面の上部には支持部2bが設けられ、容器5の上端の縁部5aを容器カバー2の支持部2bに置くことで、容器5が容器カバー2内に収容される。
【0013】
加熱部3は、容器5の下方に配置され、容器5を下方から加熱する。加熱部3は、銅線又はアルミ線などの導線が巻回してなる加熱コイルであり、図示しないインバータから供給される高周波電流により、容器5を誘導加熱する。なお、加熱部3として加熱コイルに替えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。
【0014】
底面温度センサ4は、例えばサーミスタで構成され、容器5の温度を検知する。本実施の形態の底面温度センサ4は、バネ等の弾性手段(図示せず)によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された容器5の底面に接して容器5の底面温度を検知する。以降の説明において、底面温度センサ4で測定された温度を「容器温度Tb」とする。底面温度センサ4によって測定された容器温度Tbは、制御部7に出力される。なお、底面温度センサ4の具体的構成はサーミスタに限定されず、容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサのほか、例えば赤外線センサ等の容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサを採用してもよい。
【0015】
容器5は、有底の筒状を有し、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。なお、容器5の底面の形状は、平面視で円形、楕円形又は多角形の何れであってもよい。容器5の内部には、食材などの調理物が収容される。
【0016】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(
図1の紙面左側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。なお、本体1に、加熱調理器100を運搬するためのハンドル(図示せず)を設けておいてもよい。
【0017】
制御部7は、加熱調理器100全体の動作を制御し、加熱調理を実行する。制御部7は、マイクロコンピュータと、その上で実行されるソフトウェアとにより構成される。又は、制御部7を、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで構成してもよい。制御部7については、後ほど詳述する。
【0018】
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有する。外蓋11の内部には、着脱可能なカートリッジ14と、内部温度センサ15と、が設けられ、外蓋11の上面には操作部16と、表示部17とが設けられている。
【0019】
外蓋11は、蓋体10の上部及び側部を構成し、外蓋11の下面(容器5に対向する面)には、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材13を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、容器5の上端部外周との密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12には、内部温度センサ15を挿入させる孔部12aが形成され、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度センサ15の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。さらに、内蓋12には、容器5内で発生した蒸気が通る蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。
【0020】
カートリッジ14には、加熱調理中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、容器5内で発生した蒸気は、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ流出する。
【0021】
内部温度センサ15は、例えばサーミスタで構成され、容器5の内部の空気の温度を検知する。内部温度センサ15は、外蓋11に取り付けられ、一部が内蓋12の孔部12aに挿入される。内部温度センサ15は、孔部12aを介して容器5の内部の温度を測定する。以降の説明において、内部温度センサ15で測定された温度を「内部温度Ts」とする。内部温度センサ15で測定された内部温度Tsは、制御部7に出力される。なお、内部温度センサ15の具体的構成はサーミスタに限定されず、その他のセンサであってもよい。
【0022】
操作部16及び表示部17は、外蓋11の上面に設けられている。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の操作部16及び表示部17の一例を示す図である。操作部16は、加熱調理に関するユーザーからの指示入力を受け付けるものである。
図2に示すように、操作部16は、加熱調理の開始を指示するスタートボタン16a、加熱調理の取消しを指示する切ボタン16bを含む。また、操作部16は、調理時間を設定する時間設定ボタン16c、調理温度を設定する温度設定ボタン16d、及び調理メニューを設定するメニュー設定ボタン16eを含む。
【0023】
本実施の形態の加熱調理器100は、単一の調理工程、複数の連続する調理工程、及び自動調理メニューを実施することができる。ユーザーは、時間設定ボタン16c及び温度設定ボタン16dを操作して、単一又は複数の調理工程における調理時間と調理温度とを設定する。また、ユーザーは、メニュー設定ボタン16eを操作して自動調理メニューを選択する。自動調理メニューは、例えば「炊飯」、「カレー」又は「ローストビーフ」などの単一又は複数の調理工程を含むものである。操作部16に入力された指示及び設定情報は、制御部7へ送信される。なお、操作部16は、さらに調理物の種類又は調理方法などを設定するためのボタンを含んでもよい。又は、操作部16は、表示部17と一体に形成されるタッチパネルであってもよい。
【0024】
表示部17は、操作部16において設定された設定情報、加熱調理の進行状態、及びユーザーへの通知等を表示する。
図2の例では、表示部17は、第1調理工程の調理温度(60℃)及び調理時間(20分)と、第2調理工程の調理温度(90℃)及び調理時間(30分)と、加熱調理の終了までの残時間(71分)と、を表示している。表示部17は、液晶画面、発光素子又は有機EL(Electro Luminescence)画面で構成される。表示部17の表示内容は、制御部7によって制御される。
【0025】
なお、
図1では、操作部16及び表示部17は、外蓋11の上面に設けられているが、操作部16及び表示部17の位置はこれに限定されず、少なくとも一方を本体1に配置してもよい。又は、操作部16及び表示部17の少なくとも一方の機能は、加熱調理器100とは別の装置によって実現されてもよい。例えば、加熱調理器100はスマートフォン等の通信端末と通信する通信部を備え、スマートフォン等の通信端末にて、操作部16に対する操作入力を受け付けるとともに、表示部17と同等の表示を行ってもよい。
【0026】
(加熱調理器100の動作)
続いて、加熱調理器100の動作について説明する。本実施の形態の加熱調理器100は、調理温度の異なる複数の調理工程を連続して実施することができる。なお、複数の調理工程の加熱量(投入電力又は通電時間率)は同じであるとする。各調理工程では、調理温度と、当該調理温度を維持する時間である調理時間とがそれぞれ設定される。例えば、第1調理温度T1及び第1調理時間t1に設定された第1調理工程の後に、第2調理温度T2及び第2調理時間t2に設定された第2調理工程を連続して実施することができる。この場合、第1調理工程では、第1調理温度での加熱が第1調理時間t1維持され、その後、第2調理工程では、第2調理温度での加熱が第2調理時間t2維持される。また、本実施の形態の加熱調理器100は、加熱調理中に、加熱調理が終了するまでの残時間tを算出し、表示部17に残時間tを表示する。
【0027】
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の制御ブロック図である。
図3に示すように、制御部7は、記憶部71と、加熱制御部72と、表示制御部73と、時間計測部74と、残時間算出部75と、を有する。記憶部71は、例えば、ROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、RAM等の揮発性の半導体メモリ、又はHDD等である。加熱制御部72、表示制御部73、時間計測部74、及び残時間算出部75は、制御部7のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、加熱制御部72、表示制御部73、時間計測部74及び残時間算出部75の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0028】
記憶部71は、制御部7が実行するプログラム及びプログラムに用いられる情報を記憶する。例えば、記憶部71は、操作部16を介して入力された設定情報、及び後述する残時間算出処理で用いられる各種データなどを記憶する。
【0029】
加熱制御部72は、操作部16に入力された設定情報、並びに底面温度センサ4及び内部温度センサ15により測定される容器温度Tb及び内部温度Tsに基づいて、加熱部3を制御し、容器5を加熱する。具体的には、加熱制御部72は、容器温度Tb又は内部温度Tsが設定された調理温度となるように、加熱部3への投入電力を制御する。
【0030】
表示制御部73は、操作部16に入力された設定情報、加熱調理器100の動作状態、及び残時間算出部75で算出された残時間tなどを表示部17に表示させる。
【0031】
時間計測部74は、加熱調理が開始された場合、加熱調理の開始からの経過時間tpを計測する。時間計測部74で計測された経過時間tpは、残時間算出部75に出力される。
【0032】
残時間算出部75は、加熱調理の開始後、加熱調理の残時間tを算出する。本実施の形態の残時間算出部75は、複数の調理工程を連続して実施する場合における調理時間の残時間tを算出することができる。
図4及び
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器100における複数調理工程の残時間算出処理を説明する図である。
図4及び
図5では、第1調理温度T1及び第1調理時間t1に設定された第1調理工程の後に、第2調理温度T2及び第2調理時間t2に設定された第2調理工程を実施する場合を例に説明する。
図4及び
図5において、縦軸は容器温度Tbであり、横軸は加熱を開始されてからの経過時間tpである。また、T0は加熱開始時の初期の容器温度Tbであり、以降の説明においては「初期温度」とする。
【0033】
図4は、第2調理温度T2が第1調理温度T1よりも高い場合、すなわち第1調理工程に対し第2調理工程が昇温する場合の例である。残時間算出部75は、第1調理工程の開始が指示されると、第1調理工程の開始から第2調理工程の終了までにかかる時間である全調理時間taを算出する。
図4に示すように、第1調理工程及び第2調理工程の全調理時間taは、第1変温時間tx1と、第1調理時間t1と、第2変温時間tx2と、第2調理時間t2とを加算した時間となる。第1変温時間tx1は、容器温度Tbが初期温度T0から第1調理温度T1に到達するまでの時間であり、第2変温時間tx2は、容器温度Tbが第1調理温度T1から第2調理温度T2に到達するまでの時間である。
【0034】
ここで、第1調理温度T1及び第2調理温度T2は、設定情報としてユーザーに設定され、記憶部71に記憶されている。一方、第1変温時間tx1及び第2変温時間tx2は、調理物の種類もしくは重量、第1調理温度T1、第2調理温度T2、加熱調理器100の周辺の環境温度、又は加熱部3の加熱量などに応じて様々である。本実施の形態の残時間算出部75は、第1変温時間tx1中の容器温度Tbの変化率である第1温度変化率aを求め、第1温度変化率aに基づいて第1変温時間tx1及び第2変温時間tx2を推定する。
【0035】
詳しくは、残時間算出部75は、第1調理工程の第1変温時間tx1中の計算時間tcにおける容器温度Tbの変化率を第1温度変化率aとする。
図4に示すように、計算時間tcは、第1変温時間tx1のうちの一部の時間であり、例えば1~2分である。計算時間tcの開始位置は、加熱開始直後であってもよいし、加熱開始後に昇温が安定した時点であってもよい。残時間算出部75は、計算時間tcにおける温度差ΔTを計算時間tcで割った値を第1温度変化率aとする。
【0036】
残時間算出部75は、第1温度変化率aに基づき、第1変温時間tx1を求める。この場合、第1変温時間tx1は、下記の式(1)から求められる。
tx1=(T1-T0)/a ・・・(1)
【0037】
また、第1調理工程と第2調理工程において、加熱部3の加熱量が同じであるため、昇温時の第2変温時間tx2中の容器温度Tbの変化率は、第1温度変化率aと同じであると推定できる。そのため、残時間算出部75は、昇温時の第2変温時間tx2における第2温度変化率bを第1温度変化率aと同じ値とする。そして、残時間算出部75は、第2温度変化率bに基づき、下記の式(2)から第2変温時間tx2を求める。
tx2=(T2-T1)/b ・・・(2)
【0038】
そして、残時間算出部75は、第1変温時間tx1、第1調理時間t1、第2変温時間tx2、及び第2調理時間t2を加算して、全調理時間taを求め、全調理時間taから加熱調理の開始からの経過時間tpを減算することで、残時間tを算出する。残時間算出部75で算出された残時間tは、表示制御部73に出力される。
【0039】
図5は、第2調理温度T2が第1調理温度T1以下である場合、すなわち第1調理工程に対し第2調理工程が降温する場合の例である。
図5に示すように、この場合も、第1調理工程の開始から第2調理工程の終了までにかかる全調理時間taは、第1変温時間tx1と、第1調理時間t1と、第2変温時間tx2と、第2調理時間t2とを加算した時間となる。そして、残時間算出部75は、昇温時と同様に第1変温時間tx1における第1温度変化率aを求め、第1温度変化率aに基づいて第1変温時間tx1を求める。
【0040】
ここで、第1調理工程に対し第2調理工程が降温する場合、調理物は、第1調理温度T1から第2調理温度T2まで自然に冷却されるため、
図5に示すように、第2変温時間tx2中の第2温度変化率bは、第1温度変化率よりも小さくなると推定される。そこで、残時間算出部75は、第1温度変化率aよりも小さい値を第2温度変化率bとし、上記式(2)を用いて、第2変温時間tx2を求める。この場合の第2温度変化率bは、第1温度変化率aよりも小さい値であればよく、例えば、第1温度変化率aに、実験等によって求められた係数c(c<0)を乗算した値とされる。
【0041】
残時間算出部75は、昇温時と同様に、第1変温時間tx1、第1調理時間t1、第2変温時間tx2、及び第2調理時間t2を加算して、全調理時間taを求める。そして、全調理時間taから加熱調理の開始からの経過時間tpを減算することで、残時間tを算出する。残時間算出部75で算出された残時間tは、表示制御部73に出力される。
【0042】
残時間算出部75による残時間算出処理は、第1調理工程における第1変温時間tx1内に実施される。なお、計算時間tcは第1変温時間tx1であってもよい。この場合は、残時間算出部75による第1変温時間tx1の算出が省略され、第1変温時間tx1の終了時に、残時間算出処理が実施される。
【0043】
また、自動調理メニューが、上記第1調理工程及び第2調理工程に対応する、調理温度の異なる複数の調理工程を含む場合、残時間算出部75は、上記と同様の方法で、自動調理メニューにおける調理終了までの残時間tを算出することができる。
【0044】
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。
図6のフローチャートは、加熱調理器100が、第1調理温度T1及び第1調理時間t1に設定された第1調理工程の後に、第2調理温度T2及び第2調理時間t2に設定された第2調理工程が実施される場合の動作を示している。まず、第1調理工程の設定が行われる(S1)。ここでは、ユーザーによって操作部16が操作され、第1調理温度T1及び第1調理時間t1が入力される。第1調理工程の設定情報は、記憶部71に記憶される。続いて、第2調理工程の設定が行われる(S2)。ここでは、ユーザーによって操作部16が操作され、第2調理温度T2及び第2調理時間t2が入力される。第2調理工程の設定情報は、記憶部71に記憶される。
【0045】
続いて、調理を開始するか否かが判断される(S3)。ここでは、操作部16のスタートボタン16aが操作された場合、調理を開始すると判断される。調理を開始しない場合は(S3:NO)、そのまま待機する。調理を開始する場合(S3:YES)、第1調理工程が実施される(S4)。ここでは、加熱制御部72によって加熱部3に高周波電流が供給され、容器5が加熱される。そして、第1調理工程が開始されると、残時間算出部75によって残時間算出処理が行われる(S5)。
【0046】
図7は、実施の形態1における残時間算出処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、残時間算出部75は、まず、第1温度変化率aを算出する(S51)。第1温度変化率aは、第1変温時間tx1中の計算時間tcにおける容器温度Tbの温度変化に基づき算出される。そして、残時間算出部75は、第1温度変化率aを用いて第1変温時間tx1を算出する(S52)。
【0047】
続いて、残時間算出部75は、第1調理温度T1が第2調理温度T2以下であるか否かを判断する(S53)。第1調理温度T1が第2調理温度T2以下である場合(S53:YES)、第1調理工程に対し第2調理工程が昇温する場合であり、残時間算出部75は、第1温度変化率aを第2温度変化率bとする(S54)。一方、第1調理温度T1が第2調理温度T2より高い場合(S53:NO)、第1調理工程に対し第2調理工程が降温する場合であり、残時間算出部75は、第1温度変化率aよりも小さい値を第2温度変化率bとする(S55)。
【0048】
そして、残時間算出部75は、第2温度変化率bを用いて第2変温時間tx2を算出する(S56)。残時間算出部75は、第1変温時間tx1と、第1調理時間t1と、第2変温時間tx2と、第2調理時間t2とを加算して、全調理時間taを算出する(S57)。そして、残時間算出部75は、全調理時間taから第1調理工程の開始からの経過時間tpを減算して残時間tを求める(S58)。表示制御部73は、残時間算出部75によって算出された残時間tを表示部17に表示する(S59)。例えば、残時間tが71分の場合、
図2に示すように、表示部17に「71分後にできあがり」などの表示が行われる。なお、残時間算出部75によって算出された残時間tを、加熱調理器100の通信部(不図示)からユーザーが所有するスマートフォン等の通信端末に送信し、当該通信端末にて表示部17と同じ表示を行ってもよい。
【0049】
図6に戻って、残時間算出処理は、第1調理工程の第1変温時間tx1内又は第1変温時間tx1の終了時に実施される。そして、第1調理時間t1が終了すると、第2調理工程が実施される(S6)。この間、表示部17においては、随時、残時間算出処理で算出された全調理時間taから時間計測部74で計測された経過時間tpが減算され、更新された残時間tが表示される。
【0050】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100によると、各調理工程の温度変化率をそれぞれ求めて各調理工程の変温時間を算出することで、調理温度の異なる複数の調理工程を実施する場合においても、残時間の推定精度を向上させることができる。これにより、実際の残時間に近い残時間をユーザーに通知することができる。また、前に実施する調理工程の変温時間の一部における温度変化率を用いて、後の調理工程の温度変化率を推定することで、迅速に残時間tを算出してユーザーに通知することができる。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2について説明する。実施の形態2の加熱調理器100Aは、残時間算出処理において実施の形態1と相違する。加熱調理器100Aの構成及びその他の制御は実施の形態1と同じである。
【0052】
図8は、実施の形態2に係る加熱調理器100Aの制御ブロック図である。
図8に示すように、制御部7Aは、記憶部71と、加熱制御部72と、表示制御部73と、時間計測部74と、残時間算出部75と、情報取得部76と、を有する。情報取得部76は、制御部7のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、情報取得部76を、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0053】
本実施の形態の記憶部71は、第2温度変化率テーブル710を記憶している。
図9は、実施の形態2における第2温度変化率テーブル710の一例を示す図である。
図9に示すように、第2温度変化率テーブル710は、環境温度To及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率b(bT11、bT12...btnn)を記憶するテーブルである。第2温度変化率テーブル710における環境温度To及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率bは、実験等により予め求められたものである。
【0054】
情報取得部76は、環境温度Toを取得する。環境温度Toは、容器温度Tbに影響を与える可能性のある加熱調理器100の周辺の温度であり、例えば、容器5の初期温度T0、加熱調理器100Aが配置された室内温度、又は外気温度である。情報取得部76は、第1調理工程の開始時の容器温度Tbである初期温度T0を環境温度Toとして取得する。又は、情報取得部76は、加熱調理器100Aとは別に設けられた室内温度センサもしくは外気温度センサ、又は室内温度又は外気温度の情報を有する外部機器(HEMSコントローラなど)と有線又は無線通信を行って、室内温度又は外気温度を取得する。もしくは、加熱調理器100Aの本体1又は蓋体10の外面に室内温度を測定するための室内温度センサを設け、情報取得部76は、加熱調理器100Aの室内温度センサからから室内温度を取得してもよい。
【0055】
実施の形態1で述べたように、第1調理工程に対して第2調理工程が昇温する場合であって、加熱量が同じ場合は、第2調理工程において第1調理工程と同じように加熱されるため、第1温度変化率aと第2温度変化率bは同じと推定される。一方で、第1調理工程に対して第2調理工程が降温する場合、第2変温時間tx2における第2温度変化率bは、加熱を停止した自然冷却となるため、加熱を行う昇温時の第1温度変化率aよりも加熱調理器100Aの周辺の環境温度Toの影響を受けて変化する。例えば、環境温度Toが高い場合、降温時には環境温度Toが低い場合と比べて第2変温時間tx2が長くなる。
【0056】
そこで、本実施の形態の残時間算出部75は、第1温度変化率aと、情報取得部76で取得した環境温度Toと、第2温度変化率テーブル710とを用いて、第2温度変化率bを求め、残時間tを算出する。
【0057】
図10は、実施の形態2における残時間算出処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態の残時間算出処理におけるステップS51~S54の処理は、実施の形態1と同じである。一方、第1調理温度T1が第2調理温度T2より高い場合(S53:NO)、すなわち第1調理工程に対し第2調理工程が降温する場合、情報取得部76によって環境温度Toが取得される(S551)。
【0058】
そして、残時間算出部75は、記憶部71に記憶される第2温度変化率テーブル710から第1温度変化率a及び環境温度Toに対応する第2温度変化率bを取得する(S552)。
図9の例の場合、第1温度変化率がa3で、環境温度がTo2の場合、第2温度変化率はbT23となる。その後のステップS56~S59の処理は、実施の形態1と同じである。
【0059】
以上のように、実施の形態2の加熱調理器100Aによると、実施の形態1と同様の効果に加え、前の調理工程に対して後の調理工程が降温する場合の温度変化率を環境温度Toを用いて求めることで、残時間tの推定精度をより向上させることができる。
【0060】
なお、実施の形態2では、環境温度Toを用いて第2温度変化率bを求めることとしたが、これに限定されるものではない。残時間算出部75は、容器温度Tbに影響を与える様々な温度特性情報(環境温度To、調理物の種類もしくは重量、又は加熱部3の加熱量)を用いて第2温度変化率bを求めてもよい。
図11は、実施の形態2の変形例1における第2温度変化率テーブル710Aの一例を示す図である。
図11に示すように、第2温度変化率テーブル710Aは、調理物の種類(固形、粘性液体、液体)及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率b(bS1、bS2...bLn)を記憶するテーブルであってもよい。第2温度変化率テーブル710Aにおける調理物の種類及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率bは、実験等により予め求められる。
【0061】
変形例1の場合、情報取得部76は、調理物の種類を取得する。調理物の種類は、ユーザーによって操作部16を介して入力されてもよいし、ユーザーによって選択された自動調理メニューから調理物の種類を判定してもよい。例えば、調理メニューとして「ローストビーフ」が選択された場合は、調理物の種類は「個体」とされる。又は、情報取得部76は、第1変温時間tx1における容器温度Tbと内部温度Tsとの温度差から、調理物の種類を推定してもよい。例えば、情報取得部76は、容器温度Tbと内部温度Tsとの温度差が第1閾値よりも大きい場合は、調理物は個体であると推定し、第1閾値よりも小さい第2閾値未満の場合は、調理物は液体であると推定する。また、容器温度Tbと内部温度Tsとの温度差が第1閾値以下であって第2閾値以上の場合は、調理物は粘性液体であると推定する。
【0062】
残時間算出部75は、記憶部71に記憶される第2温度変化率テーブル710Aから第1温度変化率a及び調理物の種類に対応する第2温度変化率bを取得し、残時間tを算出する。
図11の例の場合、第1温度変化率がa3で、調理物の種類が個体の場合、第2温度変化率はbS3となる。
【0063】
図12は、実施の形態2の変形例2における第2温度変化率テーブル710Bの一例を示す図である。
図12に示すように、第2温度変化率テーブル710Bは、調理物の重量及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率b(bm11、bm12...bmnn)を記憶するテーブルであってもよい。第2温度変化率テーブル710Bにおける調理物の重量及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率bは、実験等により予め求められる。
【0064】
変形例2の場合、情報取得部76は、調理物の重量を取得する。調理物の重量は、ユーザーによって操作部16を介して入力されてもよいし、ユーザーによって選択された自動調理メニューから調理物の重量を推定してもよい。又は、加熱調理器100Aの本体1に容器5に収容された調理物の重量を測定するための重量センサを設け、情報取得部76は、加熱調理器100Aの重量センサから調理物の重量を取得してもよい。
【0065】
残時間算出部75は、記憶部71に記憶される第2温度変化率テーブル710Bから第1温度変化率a及び調理物の重量に対応する第2温度変化率bを取得し、残時間tを算出する。
図12の例の場合、第1温度変化率がa3で、調理物の重量がm3の場合、第2温度変化率はbm33となる。
【0066】
図13は、実施の形態2の変形例3における第2温度変化率テーブル710Cの一例を示す図である。
図13に示すように、第2温度変化率テーブル710Cは、加熱部3の加熱量及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率b(bc11、bc12...bcnn)を記憶するテーブルであってもよい。第2温度変化率テーブル710Cにおける加熱部3の加熱量及び第1温度変化率aごとの第2温度変化率bは、実験等により予め求められる。
【0067】
変形例3の場合、情報取得部76は、第1調理工程における加熱部3の加熱量を取得する。加熱部3の加熱量は、例えば加熱部3への投入電力又は通電時間率であり、ユーザーによって設定された調理温度又はユーザーによって選択された自動調理メニューに応じて加熱制御部72によって決定される。
【0068】
残時間算出部75は、記憶部71に記憶される第2温度変化率テーブル710Cから第1温度変化率a及び加熱量に対応する第2温度変化率bを取得し、残時間を算出する。
図13の例の場合、第1温度変化率がa3で、加熱量がc2の場合、第2温度変化率はbc23となる。
【0069】
さらに、上記実施の形態2及び変形例1~3では、環境温度Toなどの温度特性情報及び第1温度変化率aと、第2温度変化率bと、の相関関係を示すテーブルを用いて第2温度変化率bを求めることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、残時間算出部75は、温度特性情報に基づいて第1温度変化率aを補正することで、第2温度変化率bを求めてもよい。
【0070】
例えば、残時間算出部75は、環境温度Toが第3閾値よりも高い場合は、第1温度変化率aに係数αを乗算した値を第2温度変化率bとし、第3閾値以下の場合は第1温度変化率aに係数αよりも大きい係数βを乗算した値を第2温度変化率bとしてもよい。つまり、降温時の第2温度変化率bは、環境温度To、調理物の種類もしくは重量、又は加熱部3の加熱量などの温度特性情報に応じて求められるものであればよい。
【0071】
さらに、第1調理工程に対して第2調理工程が昇温する場合の第2温度変化率bも、環境温度To、調理物の種類もしくは重量、又は加熱部3の加熱量などの温度特性情報に応じて求められてもよい。この場合は、例えば第2温度変化率テーブル710は、温度特性情報及び第1温度変化率aごとの、降温時の第2温度変化率bdと、昇温時の第2温度変化率buとをそれぞれ記憶する。
【0072】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、上記実施の形態では、2つの調理工程を連続して実施する場合を例に説明したが、3つ以上の調理工程を連続して実施する場合も、残時間tを算出することができる。この場合、残時間算出部75は、第1温度変化率aと第2温度変化率bとを用いて第3調理工程以降の変温時間を算出する。例えば、第3調理工程以降の調理工程が昇温の場合、残時間算出部75は、第1温度変化率aを当該調理工程の変温時間における温度変化率とする。また、第3調理工程以降の調理工程が降温の場合、残時間算出部75は、降温だった前の調理工程の温度変化率を当該降温の調理工程の温度変化率とする。降温だった前の調理工程がない場合は、実施の形態1又は実施の形態2のように、前に実施した何れかの調理工程の温度変化率に基づき、当該降温の調理工程の温度変化率を算出する。
【0073】
また、上記実施の形態では、第1調理工程と第2調理工程との昇温時の加熱量が同じ場合について説明したが、第1調理工程と第2調理工程との加熱量が異なる場合も残時間tを算出することができる。この場合、残時間算出部75は、第1調理工程及び第2調理工程の火力の変化を考慮して、残時間tを算出する。具体的には、第1調理工程の火力が900Wで、第2調理工程の火力が第1調理工程の火力の半分の450Wの場合、残時間算出部75は、第2温度変化率bを第1温度変化率aの1/2として、残時間tを算出する。
【0074】
又は、残時間算出部75は、第1調理工程及び第2調理工程の通電時間率の変化を考慮して、残時間tを算出してもよい。具体的には、第1調理工程の通電時間率が8/16秒で、第2調理工程の通電時間率が第1調理工程の2倍の16/16秒である場合、残時間算出部75は、第2温度変化率bを第1温度変化率aの2倍として、残時間tを算出する。
【0075】
又は、残時間算出部75は、第1調理工程及び第2調理工程の火力と通電時間率の変化との両方を考慮して、残時間tを算出してもよい。具体的には、第1調理工程の火力が900W、通電時間率が16/16秒で、第2調理工程の火力が450W、通電時間率が8/16秒である場合、残時間算出部75は、第2温度変化率bを第1温度変化率aの1/4として、残時間tを算出する。
【0076】
また、残時間算出部75は、加熱調理の開始直後に、暫定残時間tzを算出して表示部17に表示し、残時間算出処理後に、表示部17の表示を算出された残時間tに更新してもよい。暫定残時間tzは、第1温度変化率a及び第2温度変化率bを用いずに推定された残時間である。残時間算出部75は、第1暫定変温時間tz1と、第1調理時間t1と、第2暫定変温時間tz2と、第2調理時間t2とを加算した暫定全時間tazから、経過時間tpを減算した時間を暫定残時間tzとする。第1暫定変温時間tz1は、第1調理温度T1に対応して予め決められた時間であり、第2暫定変温時間tz2は、第2調理温度T2に対応して予め決められた時間である。これにより、調理開始直後におおよその調理時間をユーザーに知らせることができ、その後、精度の高い残時間tに更新することができる。
【0077】
また、残時間算出部75は、第2変温時間tx2中、又は第2変温時間tx2の終了時に、第2変温時間tx2における容器温度Tbの温度変化から実際の第2温度変化率bを求め、残時間tを更新してもよい。これにより、より精度の高い残時間tをユーザーに通知することができる。
【0078】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0079】
(付記1)
本体と、
前記本体に収容される容器と、
前記容器を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器の温度である容器温度を測定する温度センサと、
前記加熱部を制御して、第1調理温度及び第1調理時間に設定された第1調理工程と、前記第1調理工程の後に、前記第1調理温度と異なる第2調理温度及び第2調理時間に設定された第2調理工程と、を実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記容器温度が前記第1調理温度に到達するまでの第1変温時間中の前記容器温度の変化率である第1温度変化率を算出し、
前記第1温度変化率に基づいて、前記第2調理工程において前記容器温度が前記第1調理温度から前記第2調理温度に到達するまでの第2変温時間を算出し、前記第2調理工程を終了するまでの残時間を算出する加熱調理器。
(付記2)
前記制御部は、
前記第1温度変化率を用いて、前記第2変温時間中の前記容器温度の変化率である第2温度変化率を求め、
前記第1温度変化率から前記第1変温時間を求め、
前記第2温度変化率から前記第2変温時間を求め、
前記第1変温時間、前記第1調理時間、前記第2変温時間、及び前記第2調理時間から、前記残時間を算出する付記1に記載の加熱調理器。
(付記3)
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度よりも高い場合、前記第1温度変化率を前記第2温度変化率とする付記2に記載の加熱調理器。
(付記4)
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度以下の場合、前記第1温度変化率よりも小さい値を前記第2温度変化率とする付記2又は3に記載の加熱調理器。
(付記5)
前記制御部は、
前記容器温度に影響を与える温度特性情報を取得し、
前記第2調理温度が前記第1調理温度以下の場合、前記第1温度変化率及び前記温度特性情報に基づいて、前記第2温度変化率を求める付記2又は3に記載の加熱調理器。
(付記6)
前記温度特性情報は、前記本体の環境温度、前記容器に収容される調理物の種類もしくは重量、又は前記加熱部の加熱量の少なくとも何れか一つである付記5に記載の加熱調理器。
(付記7)
前記制御部は、前記第1温度変化率及び前記温度特性情報に対応する前記第2温度変化率を含むテーブルを用いて、前記第2温度変化率を求める付記5又は6に記載の加熱調理器。
(付記8)
前記制御部は、前記第2調理温度が前記第1調理温度よりも高い場合、前記第1調理工程における前記加熱部の加熱量と、前記第2調理工程における前記加熱部の加熱量と、前記第1温度変化率と、と用いて前記第2温度変化率を求める付記2~7の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記9)
前記残時間を表示する表示部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1調理工程が開始された直後に、暫定残時間を算出して前記表示部に表示し、
前記第1変温時間内又は前記第1変温時間の終了後に、前記残時間を算出して前記表示部に表示する付記1~8の何れか一つに記載の加熱調理器。
【符号の説明】
【0080】
1 本体、2 容器カバー、2a 孔部、2b 支持部、3 加熱部、4 底面温度センサ、5 容器、5a 縁部、6 ヒンジ部、7、7A 制御部、9 蓋パッキン、10 蓋体、11 外蓋、11a パッキン、12 内蓋、12a 孔部、12b 蒸気口、13 係止材、14 カートリッジ、14a 蒸気取入口、14b 蒸気排出口、15 内部温度センサ、16 操作部、16a スタートボタン、16b 切ボタン、16c 時間設定ボタン、16d 温度設定ボタン、16e メニュー設定ボタン、17 表示部、71 記憶部、72 加熱制御部、73 表示制御部、74 時間計測部、75 残時間算出部、76 情報取得部、100、100A 加熱調理器、710、710A、710B、710C 第2温度変化率テーブル。