(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142429
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】包装機の診断システム及び包装機の診断方法
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65B57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054565
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108281
【氏名又は名称】ゼネラルパッカー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅志
(72)【発明者】
【氏名】長田 直樹
(57)【要約】
【課題】包装機に係るどの装置に動作不良が発生する可能性があるか、その予兆を簡易な構成を用いて検出する包装機の診断システムと、当該診断システムを用いた診断方法を提供する。
【解決手段】包装機10は診断部100を有している。診断部100は測定部101と端末装置103が制御エリアネットワークで接続されている。測定部はメイン軸53にかかる負荷を測定し、周期的な負荷基準座標を備えた負荷基準データを形成する。そして測定される負荷に係る新座標が、負荷基準座標から離れた位置に設置された場合に、新座標が負荷基準座標に対して所定の閾値を超える乖離率であるとき、当該新座標は予兆負荷座標と判定され、当該予兆負荷座標と負荷基準座標を対比させることによって、包装機上で異常発生の予兆が生じている部位を特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を開く開口部と、当該包装体類へ被包装物を充填する充填部と、前記包装体類をシールするシール部と、前記開口部、前記充填部、及び前記シール部がそれぞれ所定のタイミングで動作するように駆動する駆動部とから少なくとも構成され、
前記駆動部が、前記開口部を動作させて前記包装体類を開き、前記充填部を動作させて前記包装体類へ前記被包装物を充填し、前記シール部を動作させて前記包装体類をシールして包装製品を製造する包装機であって、
当該包装機に、異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記駆動部に係る負荷を測定する測定部と、
当該測定部が測定した前記負荷に基づく負荷値を蓄積、記録して周期的な負荷データを形成すると共に、当該負荷データを構成する前記負荷値からなる座標を平均化して、診断基準となる負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを形成する記録部と、
当該記録部から読み出した前記負荷基準値と、前記測定部が測定した前記駆動部に係る新たな負荷に係る新負荷値とを比較して、前記負荷基準値に対して前記新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測し、当該乖離率が所定の閾値を超えたとき、前記負荷基準データと比較して、閾値を超えた前記新負荷値に係る座標が、前記負荷基準値に係る座標のどの位置に相当するかを判定して、前記駆動部が駆動している前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかの部位に動作不良が発生する予兆があるかを特定する判定部を有し、
当該判定部において前記予兆があると判定されたとき、前記閾値を超えた前記新負荷値を予兆負荷値とし、当該予兆負荷値からなる予兆データに基づいて、
前記診断部が、少なくとも前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに前記動作不良が発生するかを特定し、当該動作不良がどのようなものか診断するようにしたことを特徴とする包装機の診断システム。
【請求項2】
包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を周期的な所定の搬送路に沿って搬送する搬送装置と、
前記包装体類を前記搬送路へ供給する供給装置と、
前記搬送路上で前記包装体類を開口する開口装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ被包装物を充填する充填装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ振動を印加する振動装置と、
前記搬送路上で前記包装体類の開口部をシールするシール装置と、
前記搬送路から前記包装体類を搬出する搬出装置とから構成され、
前記搬送路上の所定の位置に配置された前記各装置を、前記搬送装置が所定のタイミングで順に動作させることによって、前記搬送路に沿って搬送される前記包装体類に前記被包装物を充填して包装製品を製造する包装機において、
前記包装機に、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置が接続され、各種信号が伝送する制御エリアネットワークと、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置の異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記搬送装置が前記包装体類を搬送するとき、少なくとも前記搬送装置に掛かる負荷を測定し、当該負荷に係る負荷信号を前記制御エリアネットワークへ出力する測定部と、
前記制御エリアネットワークから前記負荷信号を取得し、当該負荷信号に基づいて負荷値を形成し、当該負荷値を座標として蓄積した周期的な負荷データを形成すると共に、当該負荷データに含まれる前記負荷値に係る座標を平均化して、診断基準となる基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを記録形成する記録部と、
当該記録部が新たに取得した新負荷信号に係る新負荷値に係る新座標と、前記負荷基準値に係る前記基準座標とを比較し、前記基準座標に対して前記新座標がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を求め、当該乖離率に基づいて前記包装機を構成する前記各装置のいずれかに動作不良の予兆の有無を判定する判定部と、
前記判定部が判定した結果を報知する報知部を有し、
前記乖離率が所定の閾値以下の場合には、前記判定部が前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置のいずれも正常であると判定して、前記報知部がそれを報知し、
前記乖離率が前記閾値を超えた場合には、前記基準座標に対し、当該乖離率が得られた前記新座標に係る前記負荷値を予兆負荷値とし、当該予兆負荷値からなる予兆負荷データに基づいて、前記判定部は、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置に動作不良の予兆が出ているかを特定すると共に、特定された装置が前記予兆負荷値に基づいてどのような動作不良が発生するおそれがあるかを判定し、前記報知部は特定された装置のいずれかと前記動作不良について報知して、
前記診断部が、前記予兆に基づいて前記搬送装置と連動する前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のいずれかにどのような動作不良が発生するかということを特定し、当該動作不良がどのようなものであるか前記乖離率に基づいて診断するようにしたことを特徴とする包装機の診断システム。
【請求項3】
前記測定部が測定する前記負荷が、前記搬送装置に設けたモータのトルクであることを特徴とする請求項2に記載の包装機の診断システム。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされたメイン軸を有し、
当該メイン軸は、所定の位置に固定された複数個のカムを備え、
当該カムに従動するカムフォロワが、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記メイン軸に掛かる前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の包装機の診断システム。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされた駆動チェーンを有し、
当該駆動チェーンは、所定の位置に配置された複数個のスプロケットと係合し、
当該スプロケットを軸支し、前記駆動チェーンによって駆動される従動軸が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記駆動チェーンに係る前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の包装機の診断システム。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされた駆動ベルトを有し、
当該駆動ベルトは、所定の位置に配置された複数個のプーリと係合し、
当該プーリを軸支し、前記駆動ベルトによって駆動される従動軸が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記駆動ベルトに係る前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の包装機の診断システム。
【請求項7】
前記制御エリアネットワークを、前記包装機が設置された構内ネットワークへ接続し、
当該構内ネットワークへ前記負荷基準データ及び前記予兆データを出力し、
当該負荷基準データ及び当該予兆データを前記包装機と別に設けた制御端末装置が前記構内ネットワークから取得して、
当該制御端末装置が、前記診断部において、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいてどのような動作不良がどの前記包装機に発生するかということを特定し、当該動作不良が当該包装機のどの装置で発生するか診断した結果を表示するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装機の診断システム。
【請求項8】
前記制御エリアネットワークを、前記構内ネットワークを介してインターネットへ接続し、
当該インターネットへ、前記負荷基準データ及び前記予兆データを前記制御エリアネットワークから前記構内ネットワークを介して出力するようにすると共に、
各地に設置された複数の前記包装機が出力した前記負荷基準データ及び前記予兆データを前記インターネット上から取得して、前記負荷基準データを構成する前記負荷基準値、及び前記予兆データを構成する前記予兆負荷値を収集するサーバユニットと、
当該サーバユニットから読み出した前記負荷基準値に基づいて、標準的な診断基準となる標準座標からなる標準負荷基準値と、当該標準負荷基準値からなる周期的な標準負荷基準データと、前記予兆負荷値に基づいて、前記標準負荷基準データに対して、所定座標で起こり得る動作不良に係る予兆の発生をパターン化した標準予兆パターンとを形成し、
前記標準負荷基準データと前記標準予兆パターンを前記インターネットへ出力する処理を行う処理ユニットとからなる診断センターを設けたことを特徴とする請求項7記載の包装機の診断システム。
【請求項9】
前記インターネット上へ前記負荷基準データ及び前記予兆データを出力した各地に設置された前記包装機は、前記インターネット上から前記標準負荷基準データと前記標準予兆パターンを取得し、
当該標準負荷基準データ及び前記標準予兆パターンに基づいて、前記診断部が、前記負荷基準データと前記閾値を修正して、前記予兆負荷値を早期検出するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の包装機の診断システム。
【請求項10】
前記サーバユニットは、前記インターネット上に設けたクラウドサーバであることを特徴とする請求項8に記載の包装機の診断システム。
【請求項11】
包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を開く開口部と、当該包装体類へ被包装物を充填する充填部と、前記包装体類をシールするシール部と、前記開口部、前記充填部、及び前記シール部がそれぞれ所定のタイミングで動作するように駆動する駆動部とから少なくとも構成され、
前記駆動部が、前記開口部を動作させて前記包装体類を開き、前記充填部を動作させて前記包装体類へ前記被包装物を充填し、前記シール部を動作させて前記包装体類をシールして包装製品を製造する包装機において、
当該包装機に、異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記駆動部に係る負荷を測定する処理を行う測定工程と、
当該測定工程で測定した前記負荷に基づく負荷値を蓄積、記録して周期的な負荷データを形成する処理を行うと共に、当該負荷データを構成する前記負荷値を示す負荷座標を平均化して、診断基準となる負荷基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを形成する処理を行う記録工程と、
当該記録工程で記録された前記負荷基準値と、前記測定工程で測定した前記駆動部に係る新たな負荷に係る新負荷値とを比較して、前記負荷基準値に対して前記新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測する処理を行う計測工程と、
前記乖離率が所定の閾値を超えたとき、前記負荷基準値に係る前記負荷基準座標に対して閾値を超えた前記乖離率を備えた前記新負荷値に係る新座標を予兆座標とし、当該予兆座標を備えた予兆負荷値と、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成して、前記予兆座標が、どの前記負荷基準座標に相当するかを判定する処理を行う判定工程と、
判定された前記予兆座標が示す座標が、前記駆動部が駆動している前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに相当するか特定し、動作不良が発生する予兆があるか部位を特定する処理を行う予兆特定工程とを有し、
前記診断部が、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいて少なくとも前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに前記動作不良が発生するかを特定し、当該動作不良がどの部位に現れるか診断するようにしたことを特徴とする包装機の診断方法。
【請求項12】
包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を周期的な所定の搬送路に沿って搬送する搬送装置と、
前記包装体類を前記搬送路へ供給する供給装置と、
前記搬送路上で前記包装体類を開口する開口装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ被包装物を充填する充填装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ振動を印加する振動装置と、
前記搬送路上で前記包装体類の開口部をシールするシール装置と、
前記搬送路から前記包装体類を搬出する搬出装置とから構成され、
前記搬送路上の所定の位置に配置された前記各装置を、前記搬送装置が所定のタイミングで順に動作させることによって、前記搬送路に沿って搬送される前記包装体類に前記被包装物を充填して包装製品を製造する包装機を用いて、
前記包装機に、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置が接続され、各種信号が伝送する制御エリアネットワークと、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置の異常の有無を診断する診断部を設けて、
前記包装機の異常の有無を診断する包装機の診断方法において、
前記診断部は、
前記搬送装置が前記包装体類を搬送するとき、少なくとも前記搬送装置に掛かる負荷を測定し、当該負荷に係る負荷信号を前記制御エリアネットワークへ出力する処理を行う測定工程と、
前記制御エリアネットワークから前記負荷信号を取得し、当該負荷信号に基づいて負荷値を形成する処理を行い、当該負荷値を座標として蓄積した周期的な負荷データを形成する処理を行うと共に、当該負荷データに含まれる前記負荷値に係る座標を平均化して、診断基準となる基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを記録形成する処理を行う記録工程と、
当該記録部が新たに取得した新負荷信号に係る新負荷値に係る新座標と、前記負荷基準値に係る前記基準座標とを比較し、前記基準座標に対して前記新座標がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測する処理を行う計測工程と、
前記乖離率が所定の閾値以下の場合には、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記ガス置換装置、前記シール装置及び前記搬出装置のいずれも正常であると判定する処理を行い、
前記乖離率が閾値を超えた場合には、前記負荷基準値に係る前記負荷基準座標に対して閾値を超えた前記乖離率を備えた前記新負荷値に係る新座標を予兆座標とし、当該予兆座標を備えた予兆負荷値と、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成して、当該予兆データを構成する前記予兆座標が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置を示す前記負荷基準座標に相当するかを判定する処理を行う判定工程と、
判定された前記予兆座標が示す座標が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置を示すか前記負荷基準座標に基づいて特定し、特定された装置について動作不良が発生する予兆がある部位を特定する処理を行う予兆特定工程とを有し、
前記診断部が、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいて前記搬送装置と連動する前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のいずれかにどのような動作不良が発生するかということを特定し、当該動作不良が特定された装置上のどの部位に現れるか診断するようにしたことを特徴とする包装機の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装機に生じた異変を診断し、当該異変を先触れとした異常発生の予兆を捉える包装機の診断システム及び包装機の診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装機は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を搬送する搬送路を備えた搬送装置を中心に、当該搬送路へ包装体類を供給する供給装置、包装袋又は包装容器を開口する開口装置、包装袋又は包装容器に被包装物を充填する充填装置、包装された被包装物に振動を印加して内部を均す振動装置、内部から空気を脱気して不活性ガスへ置換するガス置換装置、包装袋又は包装容器の開口部をシールして封じるシール装置、包装体類に被包装物を充填して封じた包装製品を搬送路から搬出する搬出装置等の各種装置を、搬送路に沿った所定の位置に配置し、搬送装置と協働させて包装製品を製造している。
搬送装置は、包装袋の所定位置を把持するグリッパ、又は包装容器を所定の間隔で搬送するコンベアを有している。グリッパ又はコンベアは、チェーン又はベルトを介してモータで駆動されている。また、上記の各種装置は、サーボモータ、ステッピングモータ等各種モータ、或いはシリンダ、レギュレータ等を備えた駆動部を有している。そして、搬送装置のモータの駆動タイミングに合わせて各種装置の駆動部が所定のタイミングで所定の動作を周期的に行うことによって、包装機は、包装製品を一定の間隔で製造することができる。
【0003】
このような包装機において、特許文献1(特表2005-528291号公報、包装システム、そのための装置及び方法)に開示されている発明は、包装機械の異常運転を識別するためのシステムである。当該システムは、使用中にサーボモータに発行された当該サーボモータのトルク値に対応する信号をサンプリングするように配置されたサンプリング実体と、サンプリングされた信号のスペクトル分析を生成するスペクトル分析器と、サーボモータに結合された機械要素の運転状態に対応するキャラクタリゼーションを記憶するための記憶装置に結合された処理ユニットであって、当該キャラクタリゼーションが、スペクトル信号の少なくとも1つのそれぞれの周波数に対する少なくとも1つの所定の値に対応する処理ユニットを含み、当該処理ユニットが、スペクトル信号のスペクトル分析および機械要素のキャラクタリゼーションを使用して、機械要素の異常運転を使用中に判定するように配置されている。
【0004】
そして、特許文献2(特開2020-090288号公報、駆動機器の予兆保全装置及び予兆保全方法)に開示されている発明は、上記特許文献1に記載されている発明が、サーボモータのトルク値に対応するスペクトル信号を分析して、サーボモータに結合された機械要素の運転状態、例えば、チェーン、ベルト、軸受等の摩耗を監視し、機械要素の異常運転を判定することから、減速機付サーボモータのようなギヤードモータ等において、ギアヘッドの摩耗やベアリングの油切れ等によりモータの動作が変化した場合等、サーボモータのトルク値に対応するスペクトル信号の分析からは異常運転とは判定されないようなサーボモータの僅かな動作不良等を検出し、異常が生じる前にその保全を図ることができないとし、これを解決するために、駆動エネルギー供給手段から駆動エネルギー、たとえば駆動電流が供給されて駆動している包装機械の駆動機器、たとえばサーボモータが正常に動作している状態において、駆動エネルギー供給手段からサーボモータに供給される駆動電流の電流値を取得して、当該電流値に係る駆動電流波形と基準電流波形とを比較して変化の程度が所定範囲を超えた場合、たとえば所定の指令によって駆動電流が供給されて回転するサーボモータの該指令に対する回転のズレである位置偏差が所定の範囲を超えた場合に、サーボモータに動作不良の予兆ありとの判定をするようにしている。これによって、特許文献2に記載された発明は、包装機械に使用される駆動機器に対して、劣化や異常による動作不良が生ずる前に、その予兆を示す変化を取得して、駆動機器の保全を図れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005-528291号公報
【特許文献2】特開2020-090288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の各特許文献に記載の発明は、いずれも包装機の中核をなす搬送機を駆動するサーボモータの動作不良の予兆を検知するには十分に有効であると思われる。
しかしながら、包装機は上記したように搬送装置が備える搬送路の所定の位置に各種装置が係合されて構成されている。ここで、搬送装置に係合される一の装置、たとえば供給装置に動作不良が発生し、その発見が遅れた場合、搬送路に沿って設置された他の装置、たとえば供給装置の後に続く開口装置、充填装置等へ異常が影響して、最悪の場合、搬送装置を緊急停止しなければならない深刻な異常が発生するおそれがある。
このような場合に、特許文献1に記載の発明では、搬送装置に係るサーボモータのトルク値に対応する信号をサンプリングして、スペクトル分析にかけていることから、搬送装置が備える搬送路に係合している各種装置の僅かな挙動の差異をサーボモータに係るスペクトル分析からでは検出することが出来ず、動作不良につながる予兆を捉えることができないおそれがあり、また、特許文献2に記載の発明では、サーボモータへ供給される駆動電流に係る駆動電流値を取得し、基準電流波形と駆動電流値に係る駆動電流波形を比較し、その電流値の変化からサーボモータの回転のズレとなる位置偏差を検出している。そのため、供給する電流値の変化からは、搬送路に生じた異常負荷がトルク値の変化に現れる結果としての変化を捉えにくく、動作不良の予兆を見逃してしまうおそれがある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、包装機に係るどの装置に動作不良が発生する可能性があるか、その予兆を簡易な構成を用いて検出するようにした包装診断システムと、当該包装システムを用いた包装診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る包装機の診断システムは、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を開く開口部と、当該包装体類へ被包装物を充填する充填部と、前記包装体類をシールするシール部と、前記開口部、前記充填部、及び前記シール部がそれぞれ所定のタイミングで動作するように駆動する駆動部とから少なくとも構成され、
前記駆動部が、前記開口部を動作させて前記包装体類を開き、前記充填部を動作させて前記包装体類へ前記被包装物を充填し、前記シール部を動作させて前記包装体類をシールして包装製品を製造する包装機であって、
当該包装機に、異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記駆動部に係る負荷を測定する測定部と、
当該測定部が測定した前記負荷に基づく負荷値を蓄積、記録して周期的な負荷データを形成すると共に、当該負荷データを構成する前記負荷値からなる座標を平均化して、診断基準となる負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを形成する記録部と、
当該記録部から読み出した前記負荷基準値と、前記測定部が測定した前記駆動部に係る新たな負荷に係る新負荷値とを比較して、前記負荷基準値に対して前記新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測し、当該乖離率が所定の閾値を超えたとき、前記負荷基準データと比較して、閾値を超えた前記新負荷値に係る座標が、前記負荷基準値に係る座標のどの位置に相当するかを判定して、前記駆動部が駆動している前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかの部位に動作不良が発生する予兆があるかを特定する判定部を有し、
当該判定部において前記予兆があると判定されたとき、前記閾値を超えた前記新負荷値を予兆負荷値とし、当該予兆負荷値からなる予兆データに基づいて、
前記診断部が、少なくとも前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに前記動作不良が発生するかを特定し、当該動作不良がどのようなものか診断するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の包装機の診断システムは、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を周期的な所定の搬送路に沿って搬送する搬送装置と、
前記包装体類を前記搬送路へ供給する供給装置と、
前記搬送路上で前記包装体類を開口する開口装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ被包装物を充填する充填装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ振動を印加する振動装置と、
前記搬送路上で前記包装体類の開口部をシールするシール装置と、
前記搬送路から前記包装体類を搬出する搬出装置とから構成され、
前記搬送路上の所定の位置に配置された前記各装置を、前記搬送装置が所定のタイミングで順に動作させることによって、前記搬送路に沿って搬送される前記包装体類に前記被包装物を充填して包装製品を製造する包装機において、
前記包装機に、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置が接続され、各種信号が伝送する制御エリアネットワークと、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置の異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記搬送装置が前記包装体類を搬送するとき、少なくとも前記搬送装置に掛かる負荷を測定し、当該負荷に係る負荷信号を前記制御エリアネットワークへ出力する測定部と、
前記制御エリアネットワークから前記負荷信号を取得し、当該負荷信号に基づいて負荷値を形成し、当該負荷値を座標として蓄積した周期的な負荷データを形成すると共に、当該負荷データに含まれる前記負荷値に係る座標を平均化して、診断基準となる基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを記録形成する記録部と、
当該記録部が新たに取得した新負荷信号に係る新負荷値に係る新座標と、前記負荷基準値に係る前記基準座標とを比較し、前記基準座標に対して前記新座標がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を求め、当該乖離率に基づいて前記包装機を構成する前記各装置のいずれかに動作不良の予兆の有無を判定する判定部と、
前記判定部が判定した結果を報知する報知部を有し、
前記乖離率が所定の閾値以下の場合には、前記判定部が前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置のいずれも正常であると判定して、前記報知部がそれを報知し、
前記乖離率が前記閾値を超えた場合には、前記基準座標に対し、当該乖離率が得られた前記新座標に係る前記負荷値を予兆負荷値とし、当該予兆負荷値からなる予兆負荷データに基づいて、前記判定部は、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置に動作不良の予兆が出ているかを特定すると共に、特定された装置が前記予兆負荷値に基づいてどのような動作不良が発生するおそれがあるかを判定し、前記報知部は特定された装置のいずれかと前記動作不良について報知して、
前記診断部が、前記予兆に基づいて前記搬送装置と連動する前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のいずれかにどのような動作不良が発生するかということを特定し、当該動作不良がどのようなものであるか前記乖離率に基づいて診断するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の包装機の診断システムは、請求項2に記載の発明において、前記測定部が測定する前記負荷が、前記搬送装置に設けたモータのトルクであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の包装機の診断システムは、請求項3に記載の発明において、前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされたメイン軸を有し、
当該メイン軸は、所定の位置に固定された複数個のカムを備え、
当該カムに従動するカムフォロワが、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記メイン軸に掛かる前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の包装機の診断システムは、請求項3に記載の発明において、前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされた駆動チェーンを有し、
当該駆動チェーンは、所定の位置に配置された複数個のスプロケットと係合し、
当該スプロケットを軸支し、前記駆動チェーンによって駆動される従動軸が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記駆動チェーンに係る前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の包装機の診断システムは、請求項3に記載の発明において、前記搬送装置は、前記モータの出力軸にリンクされた駆動ベルトを有し、
当該駆動ベルトは、所定の位置に配置された複数個のプーリと係合し、
当該プーリを軸支し、前記駆動ベルトによって駆動される従動軸が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置を所定のタイミングでそれぞれ駆動し、
前記駆動ベルトに係る前記負荷を測定するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の包装機の診断システムは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記制御エリアネットワークを、前記包装機が設置された構内ネットワークへ接続し、
当該構内ネットワークへ前記負荷基準データ及び前記予兆データを出力し、
当該負荷基準データ及び当該予兆データを前記包装機と別に設けた制御端末装置が前記構内ネットワークから取得して、
当該制御端末装置が、前記診断部において、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいてどのような動作不良がどの前記包装機に発生するかということを特定し、当該動作不良が当該包装機のどの装置で発生するか診断した結果を表示するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の包装機の診断システムは、請求項7に記載の発明において、前記制御エリアネットワークを、前記構内ネットワークを介してインターネットへ接続し、
当該インターネットへ、前記負荷基準データ及び前記予兆データを前記制御エリアネットワークから前記構内ネットワークを介して出力するようにすると共に、
各地に設置された複数の前記包装機が出力した前記負荷基準データ及び前記予兆データを前記インターネット上から取得して、前記負荷基準データを構成する前記負荷基準値、及び前記予兆データを構成する前記予兆負荷値を収集するサーバユニットと、
当該サーバユニットから読み出した前記負荷基準値に基づいて、標準的な診断基準となる標準座標からなる標準負荷基準値と、当該標準負荷基準値からなる周期的な標準負荷基準データと、前記予兆負荷値に基づいて、前記標準負荷基準データに対して、所定座標で起こり得る動作不良に係る予兆の発生をパターン化した標準予兆パターンとを形成し、
前記標準負荷基準データと前記標準予兆パターンを前記インターネットへ出力する処理を行う処理ユニットとからなる診断センターを設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の包装機の診断システムは、請求項8に記載の発明において、前記インターネット上へ前記負荷基準データ及び前記予兆データを出力した各地に設置された前記包装機は、前記インターネット上から前記標準負荷基準データと前記標準予兆パターンを取得し、
当該標準負荷基準データ及び前記標準予兆パターンに基づいて、前記診断部が、前記負荷基準データと前記閾値を修正して、前記予兆負荷値を早期検出するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の包装機の診断システムは、請求項8に記載の発明において、前記サーバユニットは、前記インターネット上に設けたクラウドサーバであることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の包装機の診断方法は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を開く開口部と、当該包装体類へ被包装物を充填する充填部と、前記包装体類をシールするシール部と、前記開口部、前記充填部、及び前記シール部がそれぞれ所定のタイミングで動作するように駆動する駆動部とから少なくとも構成され、
前記駆動部が、前記開口部を動作させて前記包装体類を開き、前記充填部を動作させて前記包装体類へ前記被包装物を充填し、前記シール部を動作させて前記包装体類をシールして包装製品を製造する包装機において、
当該包装機に、異常の有無を診断する診断部を設け、
当該診断部は、
前記駆動部に係る負荷を測定する処理を行う測定工程と、
当該測定工程で測定した前記負荷に基づく負荷値を蓄積、記録して周期的な負荷データを形成する処理を行うと共に、当該負荷データを構成する前記負荷値を示す負荷座標を平均化して、診断基準となる負荷基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを形成する処理を行う記録工程と、
当該記録工程で記録された前記負荷基準値と、前記測定工程で測定した前記駆動部に係る新たな負荷に係る新負荷値とを比較して、前記負荷基準値に対して前記新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測する処理を行う計測工程と、
前記乖離率が所定の閾値を超えたとき、前記負荷基準値に係る前記負荷基準座標に対して閾値を超えた前記乖離率を備えた前記新負荷値に係る新座標を予兆座標とし、当該予兆座標を備えた予兆負荷値と、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成して、前記予兆座標が、どの前記負荷基準座標に相当するかを判定する処理を行う判定工程と、
判定された前記予兆座標が示す座標が、前記駆動部が駆動している前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに相当するか特定し、動作不良が発生する予兆があるか部位を特定する処理を行う予兆特定工程とを有し、
前記診断部が、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいて少なくとも前記開口部、前記充填部、前記シール部のいずれかに前記動作不良が発生するかを特定し、当該動作不良がどの部位に現れるか診断するようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の包装機の診断方法は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を周期的な所定の搬送路に沿って搬送する搬送装置と、
前記包装体類を前記搬送路へ供給する供給装置と、
前記搬送路上で前記包装体類を開口する開口装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ被包装物を充填する充填装置と、
前記搬送路上で前記包装体類へ振動を印加する振動装置と、
前記搬送路上で前記包装体類の開口部をシールするシール装置と、
前記搬送路から前記包装体類を搬出する搬出装置とから構成され、
前記搬送路上の所定の位置に配置された前記各装置を、前記搬送装置が所定のタイミングで順に動作させることによって、前記搬送路に沿って搬送される前記包装体類に前記被包装物を充填して包装製品を製造する包装機を用いて、
前記包装機に、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置が接続され、各種信号が伝送する制御エリアネットワークと、
前記搬送装置、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置及び前記搬出装置の異常の有無を診断する診断部を設けて、
前記包装機の異常の有無を診断する包装機の診断方法において、
前記診断部は、
前記搬送装置が前記包装体類を搬送するとき、少なくとも前記搬送装置に掛かる負荷を測定し、当該負荷に係る負荷信号を前記制御エリアネットワークへ出力する処理を行う測定工程と、
前記制御エリアネットワークから前記負荷信号を取得し、当該負荷信号に基づいて負荷値を形成する処理を行い、当該負荷値を座標として蓄積した周期的な負荷データを形成する処理を行うと共に、当該負荷データに含まれる前記負荷値に係る座標を平均化して、診断基準となる基準座標を備えた負荷基準値と、当該負荷基準値からなる負荷基準データを記録形成する処理を行う記録工程と、
当該記録部が新たに取得した新負荷信号に係る新負荷値に係る新座標と、前記負荷基準値に係る前記基準座標とを比較し、前記基準座標に対して前記新座標がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測する処理を行う計測工程と、
前記乖離率が所定の閾値以下の場合には、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記ガス置換装置、前記シール装置及び前記搬出装置のいずれも正常であると判定する処理を行い、
前記乖離率が閾値を超えた場合には、前記負荷基準値に係る前記負荷基準座標に対して閾値を超えた前記乖離率を備えた前記新負荷値に係る新座標を予兆座標とし、当該予兆座標を備えた予兆負荷値と、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成して、当該予兆データを構成する前記予兆座標が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置を示す前記負荷基準座標に相当するかを判定する処理を行う判定工程と、
判定された前記予兆座標が示す座標が、前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のうち、どの装置を示すか前記負荷基準座標に基づいて特定し、特定された装置について動作不良が発生する予兆がある部位を特定する処理を行う予兆特定工程とを有し、
前記診断部が、前記負荷基準データと前記予兆データに基づいて前記搬送装置と連動する前記供給装置、前記開口装置、前記充填装置、前記振動装置、前記シール装置又は前記搬出装置のいずれかにどのような動作不良が発生するかということを特定し、当該動作不良が特定された装置上のどの部位に現れるか診断するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装機の診断システムによれば、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を開く開口部と、当該包装体類へ被包装物を充填する充填部と、包装体類をシールするシール部と、開口部、充填部、及びシール部がそれぞれ所定のタイミングで動作するように駆動する駆動部とから少なくとも構成され、駆動部が、開口部を動作させて包装体類を開き、充填部を動作させて包装体類へ被包装物を充填し、シール部を動作させて包装体類をシールして包装製品を製造する包装機に、異常の有無を診断する診断部を設けた。当該診断部は、駆動部に係る負荷を測定し、当該負荷に基づいて負荷値を蓄積、記録し、当該負荷値を座標とする周期的な負荷データを形成するとともに、負荷値を構成する座標を平均化して、診断基準となる負荷基準値と当該負荷基準値からなる負荷基準データを形成するようにした。
これによって、予め診断基準となるデータを形成しなくても、診断基準を形成することができ、包装袋又は包装容器のいずれかであっても、また包装の目的にあわせてオプション的な装置を増やした場合でも、包装機独自の診断基準を容易に形成することができる。
【0021】
さらに、負荷基準値と、測定した新たな負荷に係る新負荷値とを比較し、負荷基準値に対して新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測し、当該乖離率が所定の閾値を超えたとき、閾値を超えた新負荷値を予兆負荷値として、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成し、予兆負荷値を備える予兆負荷座標と、負荷基準値に係る負荷基準座標を比較し、多数の負荷基準座標からなる負荷基準データ上で、予兆負荷値に係る予兆負荷座標が予兆データ上のどの位置に相当するかを判定するようにした。そして、当該判定に基づいて、駆動部が駆動している開口部、充填部、シール部のいずれかの部位に動作不良が発生する予兆があるかを特定するようにした。
このように、包装機を構成する各部位のいずれかに動作不良の予兆が生じたか特定し、その動作不良がどのような異常に発展する可能性があるか、駆動部へ掛かる負荷を測定する簡易な構成によって検出することができる。
さらに好ましくは、駆動部がモータである場合に、当該モータの出力軸にカムを備えたメイン軸をリンクさせたり、チェーン或いはベルトをリンクさせたりして、それらのカム、チェーン、ベルトに掛かる負荷の変化を連動しているモータの出力軸のトルク変化に基づいて測定することによって、包装機を構成する各部位、各装置の動作不良の予兆を検出するようにしても良い。これによって、包装機を構成する各部位、各種装置それぞれにセンサを取り付けて予兆を検出するよりも簡易な構成によって動作不良の予兆を検出することができる。
【0022】
また好ましくは、負荷基準データと予兆データを構内ネットワーク上へ出力して、包装機とは別体に設けた制御端末装置で負荷基準データと予兆データを比較して包装機に生じた動作不良の予兆を管理するようにしても良い。これによって、複数台の包装機を使用して包装製品を製造している場合に一括して管理することができる。同様に、構内ネットワークを介して接続したインターネット上へ、負荷基準データと予兆データを出力し、各地の工場からそれら負荷基準データと予兆データを収集した診断センターにおいて、蓄積された負荷基準データをビッグデータ化した標準負荷基準データを形成するようにした。これによって、スタンダードな構成を備えた包装機に係る負荷基準データを得ることができると共に、あらゆるオプション装置を組み込んだ場合であっても、当該オプションを組み込んだ場合に応じた負荷基準データを得ることができる。さらには、蓄積された予兆データに基づいて、様々なオプションを組み合わせて動作不良に係る予兆が発生する予兆パターンをビッグデータ化して標準予兆パターンを形成するようにした。そして、形成された標準負荷基準データと標準予兆パターンをインターネットへ出力して、各地の工場に設置された包装機へフィードバックすることによって、負荷基準データと異常発生の予兆を捉える乖離率を改善することができ、さらに予兆発生を早期に検出することができる。
【0023】
本発明の包装機の診断方法によれば、包装機に異常の有無を診断する診断部を設け、当該診断部が、包装機の駆動部に係る負荷を測定する処理を行う測定工程と、当該負荷に基づいて負荷値を蓄積、記録し、当該負荷値を座標とする周期的な負荷データを形成するとともに、負荷値を構成する座標を平均化して、診断基準となる負荷基準値と当該負荷基準値を備えた負荷基準データを形成する処理を行う記録工程を行うようにした。
これによって、予め診断基準となるデータを形成しなくても、診断基準を形成することができ、包装袋又は包装容器のいずれかであっても、また包装の目的にあわせてオプション的な装置を増やした場合でも、包装機独自の診断基準を容易に形成することができる。
【0024】
さらに、負荷基準値と、測定した新たな負荷に係る新負荷値とを比較し、負荷基準値に対して新負荷値がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測し、当該乖離率が所定の閾値を超えたとき、閾値を超えた新負荷値を予兆負荷値として、当該予兆負荷値からなる予兆データを形成し、予兆負荷値を備える予兆負荷座標と、負荷基準値に係る負荷基準座標を比較し、多数の負荷基準座標からなる負荷基準データ上で、予兆負荷値に係る予兆負荷座標が予兆データ上のどの位置に相当する処理を行う判定工程と、負荷基準データと予兆データに基づいて、駆動部が駆動している開口部、充填部、シール部のいずれかの部位に動作不良が発生する予兆があるかを特定する処理を行う予兆特定工程を設けた。
このように、包装機を構成する各部位のいずれかに動作不良の予兆が生じたか特定し、その動作不良がどのような異常に発展する可能性があるか、駆動部へ掛かる負荷を測定する簡易な処理工程によって検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機の構成の概略を示した説明図である。
【
図2】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機に係る包装工程の概略を示した説明図である。
【
図3】第1実施例の包装機の診断システムの構成の概略を示した説明図である。
【
図4】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機の駆動部に係る構成の概略を示した説明図である。
【
図5】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機の駆動部に係る構成の概略を示した説明図である。
【
図6】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機の駆動部に係る構成の概略を示した説明図である。
【
図7】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機が備える装置の動作タイミングと全装置連動負荷の関係の概略を示したグラフ図である。
【
図8】第1実施例の包装機の診断システムに係る包装機のメイン軸にかかる全装置連動負荷について、通常時と予兆発生時の概略を示したグラフ図である。
【
図9】第1実施例の包装機の診断システムの構成の概略を示した説明図である。
【実施例0026】
本発明に係る包装機の診断システムの実施例を添付した図面にしたがって説明する。
図1は、包装機の構成の概略を示す平面図であり、
図2は、包装機を動作させる駆動部の構成の概略を示す説明図である。
【0027】
包装機10は、
図1に示すように、略円環状の搬送路11を備えた搬送装置を有するロータリー型包装機である。搬送装置は、包装袋を挟持する複数個のグリッパ11aを有し、搬送路11に沿ってグリッパ11aを移動させるように構成されている。グリッパ11aは、搬送路11上を周回しながら、
図1に示すように、第1工程から第10工程を順次繰り返して行うように構成されている。これによって、包装機10は、包装袋に被包装物を充填した包装製品を製造することができる。
【0028】
第1工程は、搬送路11上のグリッパ11aへ包装袋を受け渡す処理を行う給袋工程である。包装機10の対応する位置には、
図1に示すように、給袋工程を行う給袋装置12が配置されている。
給袋装置12は、
図2に示すように、給袋コンベヤ13、袋位置決め台14、給袋吸盤15を有している。
図2に示すように、給袋コンベヤ13は、複数枚の包装袋がストックされている。本実施例において使用される包装袋は、開口部近傍にチャックを有している包装袋であるものとするが、特に当該チャック付き包装袋に限定されるものではない。
袋位置決め台14は、包装袋の周縁部を囲繞するように複数個のストッパ14aが立設され、当該ストッパに包装袋を当接させることによって、グリッパ11aへ正しく包装袋を受け渡すために包装袋の位置を決めることができる。
給袋吸盤15は、第1給袋吸盤15aと第2給袋吸盤15bとからなる。第1給袋吸盤15aは、給袋コンベヤ13から袋位置決め台14へ包装袋を受け渡すように構成されている。第2給袋吸盤15bは、袋位置決め台14からグリッパ11aへ包装袋を受け渡すように構成されている。
そして、給袋工程は、
図2に示すように、第1給袋吸盤15aが給袋コンベヤ13の最前部、最上段にある包装袋を袋位置決め台14へ移し、位置決めされた包装袋は、その後、第2給袋吸盤15bが、包装袋の開口部近傍を吸着し、袋位置決め台14からグリッパ11aへ受け渡すように処理が行われる。これによって、包装袋は搬送路11上のグリッパ11aにセットされる。
【0029】
第2行程は、チャック付き包装袋のチャックを開く処理を行うチャック開き工程、また、包装袋へ所定の文字、記号等を印字する処理を行う印字工程である。そして、包装機10の対応する位置には、チャック開き工程を行うチャック開き装置と、印字工程を行う印字機が配置されている。チャック開き工程又は印字工程の双方又はいずれか一方は、オプションとして設定された工程である。
チャック開き装置は、開放クリップを有している。
図2に示すように、開放クリップは、包装袋開口部に対して上下動可能に構成されており、開放クリップが下降し、包装袋の開口部縁部近傍を把持することによって、チャックを開くように構成されている。本工程において予めチャックを開いておくことによって、後に行う袋口を開口する処理を容易に容易に行うことができる。
印字機は、包装袋に対してインク又はトナーによって包装袋へ所定の文字、記号等をプリントするように構成されている。
【0030】
第3工程は、包装袋へ印字された所定の文字、記号等が所定の位置へ正しく印字されているか否かを検査する処理を行う印字検査工程である。包装機10の対応する位置には、印字検査工程を行うスキャナが配置されている。
スキャナは、
図2に示すように、包装袋へ印字された文字等をスキャンするように構成されている。印字検査工程は、オプション設定されている上記の印字工程を第2工程へ設けた場合に選択されるオプションである。
【0031】
第4工程は、包装袋の袋口を開放し、又は包装袋が自立可能なスタンド袋の場合は、袋下縁部を開放する処理を行う開口工程である。包装機10の対応する位置には、開口工程を行う開口装置16が配置されている。
開口装置16は、開口ヘラ17と開口吸盤18を有している。
開口ヘラ17は、表裏2枚のフィルムを重ねて構成されている包装袋の上端縁又は下端縁へ挿入され、フィルム間を押し開くように構成されている。
開口吸盤18は、上端縁近傍或いは下端縁近傍を吸着して相反する方向へ引っ張るように構成されている。開口ヘラ17と開口吸盤18が協働することによって、包装袋の袋口を開口することができ、或いは、スタンド袋の場合は、袋下縁部を開いて自立させることができる。
また好ましくは、開口する際に、包装袋に向かってエアノズル19で空気を吹き込むようにしても良い。これによって、包装袋の上端縁を容易に開口させることができる。
【0032】
第5工程は、開口された包装袋へ被包装物を充填する処理を行う処理を行う充填工程である。包装機10の対応する位置には、充填工程を行う充填装置20が包装袋上方に配置されている。また、充填工程と並行して、包装袋底部へ振動を与える処理を行う底振動工程が設けられており、当該底振動工程を行う底振動装置23が包装袋下方に配置されている。
充填装置20は、ストッカ(図示略)と、充填筒21と、充填ジョーゴ22を有している。ストッカには、被包装物が貯留されており、シャッタの開閉によって所定量が充填筒内へ落下するように構成されている。充填ジョーゴ22は、開口された袋口へ充填ジョーゴ口を挿嵌するように構成され、さらに、充填ジョーゴ22の上方からは充填筒21が充填ジョーゴ22内へ挿入されるように構成されている。これによって、包装袋内へ充填筒21と充填ジョーゴ22を通じて所定量の被包装物が充填される。
本実施例において、充填される被包装物は、たとえば、小麦粉等の粉体、又はドッグフード等の粒体が好ましいが、これに限定されるものではなく、液体やゼリー状のものを充填するようにしても良い。この場合は、次に説明する底振動工程を省いても良い。
底振動装置23は、振動テーブル23aを有している。振動テーブル23aは、
図2に示すように、被包装物が充填された包装袋を下方から支持して、上下方向に所定の振動を与えるように構成されている。これによって、粉粒体状の被包装物の粉体、粒体間の隙間が詰り、運搬時、保管時等に包装製品を積みやすくすることができる。底振動工程は、
図2に示すように、第5工程、第6工程、第7工程と連続して行われるように構成されている。
【0033】
第7工程は、上記の底振動工程と、包装袋の袋口に付着した粉体を吹き飛ばす処理を行うエアー吹き飛ばし工程である。包装機10の対応する位置には、底振動装置23に加えて、エアー吹き飛ばし工程を行うエアノズル24が配置されている。
エアノズル24は、充填筒21及び充填ジョーゴ22と入れ替えに包装袋の袋口近傍へ設置され、包装袋の袋口近傍に対してノズル先端からエアーを噴き出すように構成されている。これによって、包装袋の袋口に付着した粉体を吹き飛ばして、後工程のシール時に、袋口に粉体が噛み込まれてしまうことを防止することができる。
なお、上記のエアー吹き飛ばし工程に替えて、包装袋内を二酸化炭素ガス等の不活性ガスに置換する処理を行うガス置換工程を設けても良い。ガス置換工程は、エアノズル24を用いて、ノズル先端から不活性ガスを包装袋内へ注入して、包装袋内の空気を不活性ガスへ置換する処理を行う工程である。
エアー吹き飛ばし工程とガス置換工程は、いずれもオプションとして設けられている工程である。
【0034】
第8工程は、第7工程に係るエアー吹き飛ばし工程で処理した包装袋の袋口に、粉粒体が付着し、噛み込みが生じていないか検査する処理を行う噛み込み検出工程である。包装機10の対応する位置には、噛み込み検出工程を行う噛み込み検知センサ25が配置されている。噛み込み検知センサ25は、包装袋の袋口近傍を挟んで相対する検知バー25aを有している。角柱状に形成された検知バー25a対は、
図2に示すように、包装袋の袋口を挟み込んだとき、相対する平面部に生じる挟圧に偏りが無いか否かで噛み込みが発生しているか否かを検出するように構成されている。
【0035】
第9工程は、包装袋の袋口を閉じて密封する処理を行うシール工程である。包装機10の対応する位置には、シール工程を行うシール装置26が配置されている。また、シール工程と並行して、包装袋内の余分な空気を抜く処理を行うエアー抜き工程が設けられ、包装機10の対応する位置には、シール装置26と同様にエアー抜き工程を行うエアー抜き装置27が配置されている。
シール装置26は、包装袋の袋口を挟んで相対するヒータバー26aを有している。ヒータバー26a対は、袋口近傍の包装袋内側へ相対して配された熱溶着性フィルムを溶着可能な所定の温度に加熱されている。ヒータバー26a対が包装袋の袋口近傍を挟み込むことによって包装袋内側で相対する熱溶着性フィルムは溶着し、袋口は所定の位置でシールされるので、包装袋を密封することができる。
エアー抜き装置27は、包装袋を挟んで相対するエアー抜きバー27aを有している。エアー抜きバー27a対は、包装袋内に充填された被包装物を均すと共に、被包装物の上部空間を包装袋の外側から挟んで押し潰し、さらに上方へ扱くように構成されている。これによって包装袋内の余分な空気を抜くことができ、包装製品を運搬し、保管する際に積み込みやすくすることができる。
【0036】
第10工程は、ヒートシールされた袋口近傍を冷却する処理を行う冷却シール工程である。包装機10の対応する位置には、冷却シール工程を行う冷却装置28が配置されている。
冷却装置28は、包装袋の袋口近傍を挟んで相対する冷却バー28aを有している。冷却バー28a対は、ヒータバー26a対(第9工程)によって加熱された包装袋袋口近傍を挟み込むように構成されている。これによって、加熱された袋口側と冷たい冷却バー28a側との間で熱平衡が生じ、袋口側を所定の温度まで冷ますことができる。これによって、熱溶着して密封された袋口を冷まして固化することができ、より強固に密封状態を保つことができる。
さらに第10工程には、冷却シール工程後、包装袋に被包装物を充填して製造された包装製品を搬送路11から排出する処理を行う製品排出工程が設けられている。包装機10の対応する位置には、包装製品を排出する排出シュート29が配置されている。
排出シュート29は、搬送路11上でグリッパ11aから解放された包装袋が滑る落ちるシュート29aを有している。ここで、
図2に示すように、シュート29aに続いて、振分シュート29bを設けても良い。振分シュート29bは、第2工程において開かなかったチャック不良包装袋、第3工程で印字不良と判定された印字不良包装袋、第4工程で袋口が開かなかった開口不良包装袋、さらに第8工程で被シール部分に発生した噛み込み状態が解消されなかった噛み込み不良製品等を不良品として、シュート29aから系外へ排出して、良品のみを振り分けるように構成されている。振り分けられた良品は、振分シュート29bに連接した搬出コンベヤ30より搬出されるように構成されている。
【0037】
なお、本実施例に係る包装機10は、上記のように、包装袋へ被包装物を充填し、開口部をシールして包装製品を製造するものであるが、包装機が包装する対象は包装袋のみに限定されるものではなく、当該包装袋以外にも包装容器、或いはこれらに類する包装体類であれば良い。また、たとえば、包装機も本実施例に示すようなロータリー型の包装機に限定されるものではなく、たとえば、筒状に成形したフィルム状の包材の両端をシールして、ピロー形状に形成した包装袋へ被包装物を収納する包装機、或いは、包装容器に被包装物を収容し、開口部をシールする包装機であっても良い。
すなわち、包装体類を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送装置に連動して、各種装置が順次動作して、包装製品を製造する包装機であれば、本発明は適用可能である。
【0038】
上記の包装機10について、
図3及び
図4に駆動部50の概略図を示す。包装機10の駆動部50は、少なくともメインモータ51と、減速機52と、メイン軸53と、レバー軸54、及びターンテーブル55を有している。これらが協働して、包装袋を搬送する搬送路11を構成すると共に、搬送路11に沿ってグリッパ11aに把持されて移動する当該包装袋に対して所定の工程において所定の装置が所定の動作を行うように構成されている。
メインモータ51は、所定の定格出力で回動する出力軸51aを有し、当該出力軸51aは駆動スプロケット51bを軸支している。
減速機52は、減速軸52aで軸支している従動スプロケット52bを有し、従動スプロケット52bは駆動スプロケット51bとチェーン56で係合されている。これによって、メインモータ51の出力を減速機52へ入力することができる。減速機52は、所定の変速ギアを備え、メインモータ51の回転速度を所定の割合で減速した回転速度をメイン軸53に対して出力するように構成されている。
メイン軸53は、減速機52から主力される回転出力によって、所定の回転数で回動するように構成されている。メイン軸53には、
図5に示すように、複数個のカムがそれぞれ所定の位置に固定されている。
レバー軸54は、
図5に示すように、メイン軸53と並行して配設されている。レバー軸54には、複数本のレバー末端が軸支され、レバー軸54を中心に各レバーが回動可能に構成されている。各レバーはそれぞれ、メイン軸53のカムに当接するカムフォロワを有している。これによって、メイン軸53上で所定のカムが回転したとき、所定のタイミングでカムフォロワがレバー軸54を支点にしてレバーを上下動させて、搬送路11近傍に設置された上記の各装置を動作させることができる。
【0039】
ターンテーブル55は、
図3に示すように、減速機52に一端が連結されたメイン軸53の他端に配置しても良いし、または、
図5に示すように、一端側にメイン軸53が連結された減速機53の他端側に所定のリンク機構を介し、減速機52の回動に伴ってメイン軸53の回動と同調して回転するように構成しても良い。なお、ターンテーブル55は、図示した態様に限定されることなく、たとえば、チェーン又はVベルトで減速機52或いはメイン軸53に連結されるようにしても良い。
ターンテーブル55上には、複数個のグリッパ11aが所定の位置に固定され、ターンテーブル55が回転したとき、グリッパ11aが、所定の搬送路11に沿って上記の第1工程~第10工程を周回移動するように構成されている。
【0040】
ここで、包装機10は、たとえば、
図5に示すように、メイン軸53とターンテーブル55を取り囲むように、少なくとも給袋柱60、開口柱61、充填柱62、シール柱63が立設されている。
そして、メイン軸53は、ターンテーブル55近傍にグリッパ11aが備える爪を上下移動させる爪上下カム65と、爪を閉じて包装袋を把持させ、又は開いて包装袋を排出する反転動作を行う爪反転カム66が取り付けられている。これによって、グリッパ11aは、給袋装置12から受け取った包装袋の所定位置を把持し、搬送路11に沿って移動した後、搬送路11から包装製品を排出するときに把持していた包装袋を解放することができる。
【0041】
給袋柱60は、
図2に示した第1工程に係る処理を行う給袋装置12と、たとえば、オプション設定されている第2工程に係る処理を行うチャック開き装置が設置されるように構成されている。
給袋装置12に対して、メイン軸53には、包装袋の位置決めカム67、袋押えカム68、袋移送カム69が取り付けられている。
位置決めカム67は、第1給袋吸盤15aを所定のタイミングで駆動させて、包装袋がストックされている給袋コンベヤ13から袋位置決め台14へ包装袋を移して位置決めを行うように構成されている。
袋押えカム68は、第2給袋吸盤15bが袋位置決め台14上の包装袋の所定の位置を押さえるように、言い換えると所定のタイミングで袋位置決め台14を第2給袋吸盤15bに向かって傾斜させて、包装袋の所定の位置を第2給袋吸盤15bに向かって押し付けるように構成されている。
袋移送カム69は、第2給袋吸盤15bを所定のタイミングで駆動させて、袋位置決め台14から搬送路11上で、上記の爪反転カム66によって爪が開かれて待機しているグリッパ11aに対して第2給袋吸盤15bを移動させて、包装袋を搬送路11上へ移送するように構成されている。これによって、給袋装置12から搬送路11へ包装袋を移すことができる。
さらに、好ましくは、オプション設定されているチャック開き装置に対して、メイン軸53には、複数個のカムと、当該カムとカムフォロワを介して係合する複数本のレバーが設けられている。レバー軸54に末端が軸支されているそれらレバーの先端は、給袋柱60と開口柱61の中間付近に配置されている。それらのカムによって、チャック付きの包装袋の場合、閉じているチャックを解放させることができる。
【0042】
開口柱61は、
図2に示した第4工程に係る処理を行う開口装置16が設置されるように構成されている。開口装置16に対して、メイン軸53には、開口ヘラ上下カム70、袋開口カム71が取り付けられている。
開口ヘラ上下カム70は、開口ヘラ17を所定のタイミングで上下動させて、包装袋の袋口、又は自立するスタンド袋の場合は包装袋の下縁部へ開口ヘラを挿入させるように構成されている。
袋開口カム71は、開口吸盤18を所定のタイミングで動作させて、包装袋の袋口近傍又は下縁部近傍の所定位置を押さえ、開口吸盤18対を互いに相反する方向へ分かつように構成されている。これによって、開口装置16は、包装袋の袋口を開くことができ、又はスタンド袋の場合は包装袋下縁部を開いて袋底部分を開くことができる。
【0043】
充填柱62は、
図2に示した第5工程に係る処理を行う充填装置20が設置されるように構成されている。充填装置20に対して、メイン軸53には、充填カム72が取り付けられている。
充填カム72は、充填筒21を所定のタイミングで上下動させて、充填ジョーゴ22の上方から当該充填筒21を充填ジョーゴ内へ挿抜可能に構成されている。
また、充填装置20は、包装袋の袋口開口端へ挿嵌される充填ジョーゴ22を有している。当該充填ジョーゴ22は、たとえば、
図6に示すように、先端が上下動するロッド73の当該先端に連結されている。
ロッド73の末端は、メイン軸53の回動と同期するようにチェーン74で連結された充填スプロケット75に同軸で軸支されたカムに当接して動作可能に構成されている。
これによって、包装袋の袋口開口端へ充填ジョーゴ22を所定のタイミングで降下させて嵌入させた後、追って充填筒21を充填ジョーゴ22へ挿入させることができ、充填筒21と充填ジョーゴ22が組み合わされたタイミングで、充填装置20の上方に設けられたストッカのシャッタを開かせて被包装物を包装袋内へ充填することができる。
さらに、充填柱62には、
図2に示した第5工程から第7工程に係る処理を行う底振動装置23が設置されるように構成されている。底振動装置23に係合する振動カム76は、たとえば、
図5に示すように、充填カム72と係合する充填レバー77にリンクされている。これによって、包装袋へ被包装物を充填するタイミングに合わせて包装袋の袋底へ振動を加えることができる。
【0044】
シール柱63には、
図2に示した第9工程に係る処理を行うシール装置26と、エアー抜き装置27、さらに第10工程のうち、冷却シール工程に係る処理を行う冷却装置28が設置されるように構成されている。シール装置26に対して、メイン軸53には、ヒータバー開閉カム(図示略)が取り付けられ、エアー抜き装置27に対して、メイン軸53には、エアー抜きカム78が取り付けられている。ヒータバー開閉カムは、所定のタイミングでヒータバー26aを開閉させるように構成されている。これによって、ヒータバー26aが閉じたとき、包装袋の袋口近傍を挟持し、ヒートシール後に当該ヒータバー26aが開いて包装袋を解放することができる。また、エアー抜きカム78は、所定のタイミングでエアー抜きバー27aを包装袋に向かって付勢するように構成されている。これによって、エアー抜きバー27aを包装袋に向かって押し当て、包装袋を下から上に向かって扱いて包装袋内の空気を抜いた後、エアー抜きバー27aを開いて包装袋を解放することができる。
さらに、冷却装置28に対して、メイン軸53には、冷却バー開閉カム(図示略)が取り付けられている。冷却バー開閉カムは、所定のタイミングで冷却バー28aを開閉動作させるように構成されている。これによって、冷却バー28aが閉じたとき、ヒートシールされた包装袋の袋口近傍を冷却し、所定温度まで冷却後に当該冷却バーを開いて包装袋を解放することができる。
【0045】
上記のように、包装機10のターンテーブル55上に形成された搬送路11に沿って所定の位置に配置された各装置は、カム、チェーン、又はベルト或いはこれらに類するリンク機構類を介して、メインモータ51から減速機52、メイン軸53を通じて出力される回転動力によって動作されるように構成されている。そのため、カムの欠損、チェーン又はベルトの伸び等のリンク機構類の異常、或いは包装袋を把持するグリッパ11aの異常、ヒータバー26a等による包装袋の袋口への挟み込みの異常等は、当該異常が発生する予兆も含めて、各装置単体にとどまらずメイン軸53、減速機52、メインモータ51側へもまた影響が波及するものと考えられる。
そのため、メイン軸53、或いは減速機52又はメインモータ51の僅かな出力変化を捉えることによって、包装機10に発生し得る異常の予兆を検知することができる。この以上の予兆を検知する診断システムについて、添付した図面にしたがって説明する。
【0046】
本実施例に係る包装機10は、
図3に示すように、異常発生の予兆を診断する診断部100を有している。当該診断部100は、測定部101と、制御エリアネットワーク102と、端末装置103を有している。
測定部101は、
図3に示すように、メイン軸53の途中に接続されたトルクセンサ101aを有している。トルクセンサ101aは、検出したメイン軸53のトルクを負荷信号へ変換して制御エリアネットワーク102へ出力するように構成されている。なお、トルクセンサ101aの接続位置は、メイン軸53に限定されるものではなく、減速機52、或いはメインモータ51の出力軸51aとしても良い。
制御エリアネットワーク(CAN)102は、
図3においては、便宜上トルクセンサ101aを備えた制御部101と端末装置103が単線接続された態様で図示しているが、実際には包装機10内において、給袋装置12等の各種装置が接続され、制御信号、応答信号等の各種信号が伝送する情報網の態様で構成されている。これによって、包装機10を総合的に制御することができる。本実施例において、制御エリアネットワーク102上には、負荷信号もまた伝送するように構成されている。
端末装置103は、記録部と判定部を有している。
記録部は、出力された負荷信号を取得し、当該負荷信号を復号して形成された負荷値を集計して負荷データを形成するように構成されている。
判定部は、記録された負荷データに基づいて、異常発生についてその予兆の有無を判定するように構成されている。
さらに、判定した結果を端末装置が有するディスプレイ等へ表示して作業員に対して報知する報知部を設けても良い。当該報知部は、たとえば、
図1に示すように、包装機10の制御盤105に設けることができる。
複数の負荷値から構成される負荷データは、メイン軸53の回動、すなわち、包装機10の各工程に対する周期的な処理に対応する周期的な変化が得られる。上記したメイン軸53に取り付けたカムのうち、主なカムの動作タイミングと負荷データとの関係を
図7に示す。
負荷データについて、メイン軸53の所定の位置に基準ポイントを作成する。当該基準ポイントがメイン軸53の回動に沿って一回転するときの負荷値の変化を表したグラフが
図7に示した全装置連動負荷に係るグラフである。当該グラフは、縦軸が負荷、すなわちトルクの大小、横軸が基準ポイントにかかる負荷値の変化であって、メイン軸53で基準ポイントが原点(0度)からメイン軸53が一回転した360度まで各座標における負荷値の変化を示したものである。
【0047】
さらに、記録部は、包装機10のメイン軸53の回転に伴って複数の周期的な負荷データを累積するように構成されている。これによって、包装機10の稼働時間が長くなるにしたがって膨大な負荷データを記録部に蓄積することができる。そして、メイン軸53の回転にしたがって形成される複数の負荷データは、
図7の全装置連動負荷グラフに示すように、周期的なデータであるから、記録部は、当該負荷データに基づいて、各座標における負荷値の平均値を算出することができる。当該平均値は、包装機10の稼働時間が長くなるにしたがって所定の値に収束する。この値を診断基準となる負荷基準座標に示された負荷基準値とし、当該負荷基準値からなるデータを負荷基準データとする。
【0048】
判定部は、負荷基準値と、新たに制御エリアネットワークから取得した新負荷値とを比較するように構成されている。そして、判定部は、負荷基準値に係る負荷基準座標に対して新負荷値に係る座標がどれだけ離れてしまっているかを示す乖離率を計測し、当該乖離率が閾値を超えたか否かを判定するように構成されている。閾値はこれを超えると異常が発生するおそれが非常に高くなるという異常発生の予兆を検知するために予め設定された値をいう。
【0049】
ここで、
図7に示した全装置連動負荷グラフにおいて、乖離率が大きくなった座標に基づいてどの装置に異常が発生したかを特定する方法について説明する。
なお、異常が発生した場合を疑似的に再現するため、
図3に示すメインモータ51と減速機52を連結しているチェーン56を弛ませた。そして、当該異常がメイン軸53に接続したトルクセンサ101aにどのように現れるかを検証した。
図8は、負荷基準データに係る全装置連動負荷グラフを実線で示し、減速機52のチェーン56を弛ませた場合の負荷データを一点鎖線で示している。
当該グラフによれば、メインモータ51と減速機52を連結しているチェーン56が弛んだ場合は、330度から0度間、及び0度から30度間の正方向への負荷のかかり方と、90度から120度間の逆方向への負荷のかかり方とが急激に変化している。これは、弛んだチェーン56がメインモータ51の駆動スプロケット51bの回動によって急に張ったこと、又は弛んでいることによって、動力が正しく伝達されず従動スプロケット52bが慣性で余分に回転したことが原因であり、さらには、弛んだチェーン56が急に張ったことによって、ピークの負荷値が大きくなっているものと推察される。
また、140度から180度間、240度から270度間で負荷のかかり方が正常時と比べて正逆方向へそれぞれ反転している。これは、正常にテンションがかかっているチェーン56に対し、弛んでいるチェーン56では、弛みの分、チェーン56が張るまでの位相遅れによるものと考えられる。
これを踏まえると、
図5に示した各カムのいずれかに動作タイミングの異常が発生した場合、或いは異常発生の予兆が生じた場合は、メイン軸53に取り付けた複数個のカムのうち、異常発生の予兆が生じているカムについては、その予兆が負荷データに反映されると考えられる。
このとき、メイン軸53に取り付けた複数個のカムは、
図7に示すように、たとえば、チャック上下カムは、340度から30度、200度から250度の間で動作し、これに対して、エアー抜きカムは、310度から30度、100度から180度の間で動作しており、他のカムとも全て同じタイミングでは動作しないことから、負荷データ、すなわち全装置連動負荷グラフに現れる異常の予兆は、カム又はチェーン等それぞれに異なって現れる。そのため、負荷基準データと、異常の予兆が現れた負荷データ(以下「予兆データ」という)とを比較することによって、どのカム、或いはチェーン等に異常発生の予兆があるかを検出することができ、それらのカムが動作させる各装置のどこに異常発生の予兆が生じているかを検出することができる。
これによって、包装機10のメンテナンスの際に、包装機10上のどの装置に異常が発生する予兆が有るかを容易に知ることができるので、素早く修理を行うことができるうえ、故障してから修理するような対応が後手に回ることを防止することができるので、包装機10に深刻なダメージが生じる前に修理することができる。
【0050】
上記の構成を有する包装機10の診断部100が異常予兆を診断する方法を、添付した図面にしたがって次に説明する。
【0051】
包装機の診断部100は、
図3に示すように、メインモータ51、減速機52、メイン53軸、レバー軸54、及びターンテーブル55を備える駆動部50に生じる負荷を測定する測定部101と、当該測定部101で測定された負荷値を記録し、記録された複数の負荷値から負荷基準値を算出する記録部と、基準記録部と新たに生じた負荷値とを比較して異常が発生する予兆の有無を判定する判定部を有している。
【0052】
測定部101は、トルクセンサ101aを用いて、メイン軸53に生じる負荷値を測定する処理を行う測定工程を有している。当該測定工程で測定された負荷値は、負荷信号へ変換されて包装機10内の制御エリアネットワーク102へ出力される。
記録部は、制御エリアネットワーク102上を伝送している負荷信号を取得し、当該負荷信号を負荷値へ復号して蓄積する処理を行う記録工程を有している。
記録工程では、負荷値は、メイン軸の回転に伴って次々に蓄積される。これによって、記録工程では、周期的な負荷データが形成され、さらに周期的な負荷データが多数蓄積される。
記録工程では、蓄積された多数の負荷データに基づいて、メイン軸53の回転、すなわちメインモータ51の出力軸51aに応じた各座標における負荷値の変化を捉え、平均値を取る処理を行うように形成されている。負荷データが多数蓄積されるにしたがって平均値は所定の値に収束する。収束した値を負荷基準値とし、当該負荷基準値から構成されるデータを負荷基準データとして、これを診断基準とする。
図7及び
図8に示す全装置連動負荷グラフ上では、負荷基準値は負荷基準座標として表されている。
【0053】
判定部は、計測工程、判定工程、予兆特定工程を有している。
計測工程は、記録部から負荷基準値を読み込むと共に、記録部と共に制御エリアネットワーク上を伝送している負荷信号を取得し、復号された新負荷値とを比較する処理を行うように形成されている。当該比較処理では、所定の負荷基準座標において得られた負荷基準値に対して、新負荷値がどれだけ離れた値であるかを示す乖離率を計測する処理が行われる。
判定工程では、計測された乖離率が所定の閾値を超えているか否かを判定する処理が行われる。
乖離率が所定の閾値以下である場合、包装機には異常発生の予兆は無いと判定され、さらに新負荷値は、記録工程において新たに負荷データへ蓄積される。
乖離率が所定の閾値を超えている場合、包装機に異常発生の予兆が有ると判定される。ここで、予兆が生じた新負荷値を予兆負荷値とし、予兆負荷値が含まれた負荷データを予兆データとする。
予兆特定工程は、判定工程で異常発生の予兆が判定されたとき、閾値を超えた乖離率が得られた予兆負荷値に係る予兆負荷座標を特定する処理を行うように形成されている。
上記したように、包装機10の特定箇所に異常が発生した場合、予兆データ上で特定の予兆負荷座標が得られた乖離率にしたがって大きく変化する。すなわち、閾値を超えた乖離率を備える予兆負荷値に係る予兆負荷座標を予兆データ上で特定することによって、異常発生の予兆が生じている部分、装置を特定することができる。
【0054】
本実施例に係る包装機の診断方法では、
図7及び
図8に例示したように、メインモータ51と減速機52を連結しているチェーン56に弛みが生じるという予兆をメイン軸53に取り付けたトルクセンサ101aで検知することができることを明らかにしたが、同様な手法を用いることによって、たとえば、搬送路11に沿って設置した各装置の経年劣化に係る予兆、グリッパ11aの爪が折れそうになっている予兆、搬送装置に対して各装置を連動させるために使用しているカムが欠損して各装置との連動に乱れが生じる予兆、同様に連動させるために使用しているチェーン、ベルトが弛む予兆、減速機52或いはメイン軸53等の軸を軸支しているベアリングシール等からオイルが抜けて焼き付きかけている予兆等、包装機10に生じうる異常発生の予兆を早期に捉えることができる。
【0055】
さらに、上記の診断部を備えた包装機10について、
図9に示すように、包装機10の制御エリアネットワーク102が、構内ネットワーク110(LAN)へ接続されるように構成されている。当該構内ネットワーク110には複数台の包装機10と、当該包装機10とは別個に設けた制御端末装置111が接続されている。
構内ネットワーク110は、各包装機10が備えるそれぞれの診断部100から出力された、負荷信号、負荷基準信号、予兆負荷信号が伝送可能に構成されている。また、構内ネットワーク110は、それらの負荷信号に限定されず、たとえば、制御端末装置111側から出力される制御信号等、様々な信号が伝送可能に構成されている。
制御端末装置111は、監視記録部112と監視特定部113を有している。
監視記録部112は、各包装機10が出力した負荷信号、負荷基準信号、及び予兆負荷信号を構内ネットワーク110上から取得し、復号するように構成されている。これによって、制御端末装置111には、各包装機10が出力した包装機毎の負荷信号に基づく負荷データ、負荷基準信号に基づく負荷基準データ、予兆負荷信号に基づく予兆データが蓄積される。
監視特定部113は、各包装機10それぞれの負荷基準データと予兆データに基づいて、負荷基準値から所定の閾値を超えるほどに乖離した予兆負荷値を出した包装機、すなわち異常発生の予兆が生じている包装機を特定すると共に、負荷基準データ上の負荷基準座標と、当該負荷基準座標に相当する予兆データ上で所定の乖離率を備えた予兆負荷座標に基づいて、異常発生の予兆が生じていると特定されている包装機10について、さらに異常発生の予兆が生じている装置、部位を特定するように構成されている。
これによって、たとえば、
図9に示すように、工場120内に包装機10が複数ある場合において、制御端末装置111は、構内ネットワーク110で接続された各包装機10をそれぞれ個別に遠隔監視することができ、さらには構内ネットワーク110に接続された複数の包装機10のうち、どの包装機に異常発生の予兆が生じており、さらに当該包装機を構成するどの装置或いはどの部位にその予兆が生じているかを、集中監視制御することができる。
【0056】
そして、各工場120A,120B,120Cは、
図9に示すように、各工場120内の構内ネットワーク110がインターネット125へ接続されている。
インターネット上には、診断センター130が、工場120A,120B,120Cとは別に設けられている。診断センター130は、サーバユニット131と、処理ユニット132を有している。
サーバユニット131は、各地の工場120A,120B,120Cに設けられた制御端末装置111がインターネット125へ出力した各工場内の各包装機10に係る負荷信号、負荷基準信号、及び予兆負荷信号を取得するように構成されている。これによって、サーバユニット131は負荷値に係る負荷データ、負荷基準値に係る負荷基準データ、及び予兆負荷値に係る予兆データを蓄積することができる。
サーバユニット131は、診断センター130内に設けることに限定されるものではなく、たとえば、
図9に示すように、サーバユニット131をインターネット125上に設けたクラウドサーバとして診断センター130と別個に設置し、当該診断センター130内に処理ユニット132を設置するようにしても良い。これによって、各工場120A,120B,120Cに設置されている各包装機10から制御端末装置111、構内ネットワーク110、インターネット120を経て出力される膨大な負荷データ、負荷基準データ、予兆データを余すことなく記録保存することができる。こうして記録保存された負荷ビッグデータ、負荷基準ビッグデータ、予兆ビッグデータは、処理ユニット132で次に説明するように処理される。
【0057】
処理ユニット132は、サーバユニット131に蓄積された負荷ビッグデータ、負荷基準ビッグデータと、予兆ビッグデータを読み出して所定の処理を行うように構成されている。
ここで、各地の工場120A,120B,120Cに設置されている各包装機10は、共通した駆動部50を有している場合であっても、オプション装備、たとえば、包装袋に印字する処理を行う印字機等によって、包装機全体の構成としては相違している場合があり、また包材、包装袋、包装容器等が相違することによって、搬送路11が相違し、グリッパ11aではなくコンベヤを用いて包装機の構成が異なっている場合があり、同型式の包装機10といえど、個体差が生じている。そのため、各地の工場120A,120B,120Cから出力される負荷データ、負荷基準データは、それらのデータを構成する負荷値、負荷基準値に係る負荷座標、負荷基準座標が異なり、加えて予兆データ、すなわち、負荷基準座標に対して乖離率が大きく現れ、異常発生の予兆が検知される予兆負荷座標が異なり、サーバユニット131に蓄積された負荷ビッグデータ、負荷基準ビッグデータ、予兆ビッグデータには、ばらつきが生じている。
【0058】
処理ユニット132は、それらばらつきのある負荷ビッグデータ、負荷基準ビッグデータ、予兆ビッグデータについて標準化する処理を行うように構成されている。
第一に負荷ビッグデータ、負荷基準ビッグデータに基づいて、包装機10を型式等の種別ごとに分類し、さらにたとえば、包装機10に取り付けられているオプション装置の有無、駆動部50が備えるメインモータ51の定格等によって細かく分類される。それらの分類に基づいて、オプション装置等が付いていないスタンダードな構成の包装機10に係る負荷データ、負荷基準データが整理され、また、オプション装置等の有無による負荷データ、負荷基準データが整理される。そして、整理された負荷基準データに基づいて、オプション装置の有無を踏まえ、負荷基準データを構成する負荷基準値を標準化して、標準負荷基準値が形成され、周期的な標準負荷基準値からなる標準負荷基準データが形成される。標準負荷基準データは、スタンダードな構成の包装機10に係るデータを基に、オプション装備を備えた場合の負荷基準データが反映され、オプション装置の有無等にあわせてパターン化されて構成されている。
第二に予兆ビッグデータについてもまた、当該予兆ビッグデータに基づいて、包装機10を型式等の種別ごとに分類し、さらに包装機10に取り付けられているオプション装置の有無、駆動部50が備えるメインモータ51の定格等によって細かく分類される。それらの分類に基づいて、オプション装置が付いていないスタンダードな構成の包装機10に係る予兆データが整理され、また、オプション装置等の有無による予兆データが整理される。そして整理された予兆データに基づいて、オプション装置の有無を踏まえ、予兆データを構成する予兆負荷値を標準化して、標準予兆負荷値が形成され、周期的な標準予兆負荷値からなる標準予兆データが形成される。標準予兆データは、スタンダードな構成の包装機10に係るデータを基に、オプション装備を備えた場合の予兆データが反映され、オプション装置の有無等にあわせて、標準予兆データ上に現れるあらゆる異常発生の予兆がパターン化された標準予兆データパターンが形成される。
標準負荷基準データを構成する標準負荷基準値に係る標準負荷基準信号と、標準予兆データパターンを構成する標準予兆負荷値に係る標準予兆負荷信号は、処理ユニット132からインターネット125へ出力されるように構成されている。
【0059】
各工場120A,120B,120Cに備えられた制御端末装置111は、インターネット125上を伝送している標準負荷基準信号と標準予兆負荷信号を取得する。制御端末装置111は、標準負荷基準信号に基づいて標準負荷基準データを復号形成し、標準予兆負荷信号に基づいて標準予兆データパターンを復号形成する。制御端末装置111は、診断センター130からフィードバックされた標準負荷基準データを基に、自工場内の各包装機10について、負荷基準データを修正し、またフィードバックされた標準予兆データパターンのうち、自工場内の各包装機10に組み込まれているオプション装置、メインモータ51の定格等を反映した標準予兆データパターンを取り込んで、自工場内の各包装機10に発生し得る異常発生の予兆について修正を加えるように構成されている。
これによって、包装機10単体では、長期稼働させない限り予期することが困難である異常発生の予兆について、他の工場で発生した異常発生に基づいた標準予兆データパターンを取り込むことで、予兆検知の正確性を向上させ、また、包装機10単体を長期に亘って稼働させて負荷基準データを取るよりも、標準負荷基準データに基づき、オプション装備等のパターンを加えて自工場内の包装機10へ適用させることで、より正確な負荷基準データを短期間で得ることができ、予兆検知の正確性を向上させることができる。
【0060】
本実施例に係る包装機10によれば、駆動部50が備えるメインモータ51に減速機52を介して接続されたメイン軸53にかかる負荷を測定し、メイン軸53の回動によって駆動される全装置に生じうる異常の予兆を検知するように構成した。これによって、各装置でそれぞれ別個にセンサを設けて異常の発生を予知するよりも簡易な構成で予兆を捉え、早期に対応させることができる。
そして、故障等の異常が発生する前にその予兆を検知して、包装機10内で異常が発生する箇所を早期に特定し、補修等の対応を行うことができるようにした結果、包装機10が故障等で停止してしまう期間を短縮し、或いは包装機10を長時間にわたって止めることなく稼働させることができる。そのため、包装機10による包装製品の生産性を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施例に係る包装機10によれば、駆動部50が備えるメインモータ51に減速機52を介して接続されたメイン軸53にかかる負荷を測定した場合について説明したが、駆動部50のメイン軸53及びメインモータ51にかかる負荷を測定する場合のみに限定されるものではなく、たとえば、包装機10に取り付けたオプション装置がサーボモータ、ステッピングモータ等を備えている場合には、それら各モータにかかる負荷を合わせて測定することによって、メイン軸53で予兆を検知する本実施例に係る診断方法と合わせてより正確に予兆を検知することができる診断システムを構成することができる。