(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142431
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インキ追従体
(51)【国際特許分類】
B43K 7/08 20060101AFI20241003BHJP
C09K 3/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B43K7/08 100
C09K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054568
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390022275
【氏名又は名称】株式会社ニッペコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 猛志
(72)【発明者】
【氏名】内田 智美
(72)【発明者】
【氏名】中里 朋也
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC01
2C350NA11
2C350NC04
2C350NC20
2C350NC23
(57)【要約】
【課題】透明性と筆記性を両立したインキ追従体を提供することが目的である。
【解決手段】本発明におけるインキ追従体は、難揮発性基油と、炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩と、を含むことを特徴とする。本発明では、前記超長鎖脂肪酸金属塩は、モンタン酸金属塩、ラノリン酸金属塩、及び、ライス酸金属塩の少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明では、前記超長鎖脂肪酸金属塩の含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難揮発性基油と、炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩と、を含むことを特徴とするインキ追従体。
【請求項2】
前記超長鎖脂肪酸金属塩として、炭素数が23以上33以下の超長鎖脂肪酸金属塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のインキ追従体。
【請求項3】
前記超長鎖脂肪酸金属塩は、モンタン酸金属塩、ラノリン酸金属塩、及び、ライス酸金属塩の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2に記載のインキ追従体。
【請求項4】
前記モンタン酸金属塩は、モンタン酸リチウムであり、前記ラノリン酸金属塩は、ラノリン酸リチウム、あるいは、ラノリン酸亜鉛であり、前記ライス酸金属塩は、ライス酸リチウムであることを特徴とする請求項3に記載のインキ追従体。
【請求項5】
前記超長鎖脂肪酸金属塩の含有量は、0.1質量%以上15質量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のインキ追従体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンなどの筆記用具のインキ追従体に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンのインキ収容管(リフィル)中のインキ上部には、インキ追従体が充填されている。インキ追従体は、インキ溶媒の蒸発を防止し、インキの漏れを抑制し、リフィル内壁のインキ付着を減少させる役割を有している。
【0003】
特許文献1には、基油と、増ちょう剤として、例えば、ステアリン酸リチウムとを、含有し、粘度ばらつきを小さくしたインキ追従体に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筆記により、液栓のインキ追従体がインキに追従する際、該インキ追従体が、リフィル内壁へ付着する場合がある。このとき、インキ追従体が不透明であると、リフィルに付着していることが視認でき、見栄えが悪くなる問題があった。
【0006】
また、筆記した際にインキに掠れが生じ、筆記性が低下する問題もあった。特許文献1には、透明性と筆記性を両立するインキ追従体を開示していない。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、透明性と筆記性を両立したインキ追従体を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明におけるインキ追従体は、難揮発性基油と、炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、前記超長鎖脂肪酸金属塩として、炭素数が23以上33以下の超長鎖脂肪酸金属塩を含むことが好ましい。
【0010】
本発明では、前記超長鎖脂肪酸金属塩は、モンタン酸金属塩、ラノリン酸金属塩、及び、ライス酸金属塩の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0011】
本発明では、前記モンタン酸金属塩は、モンタン酸リチウムであり、前記ラノリン酸金属塩は、ラノリン酸リチウム、あるいは、ラノリン酸亜鉛であり、前記ライス酸金属塩は、ライス酸リチウムであることが好ましい。
【0012】
本発明では、前記超長鎖脂肪酸金属塩の含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインキ追従体によれば、優れた透明性と筆記性とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例8と比較例2の透明性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
<本実施形態に至る経緯>
ボールペン等のインキ上部に充填されるインキ追従体は、基油と増ちょう剤とを含有し構成される。インキ追従体として求められる特性に、透明性と筆記性がある。
【0017】
インキ追従体を充填するインキ収容管(リフィル)は透明であることが多いため、インキ追従体の透明性が高いと、インキ残量を視認できる。また、筆記の際のインキ掠れを防止することで、優れた筆記性を得ることができる。
【0018】
こうした透明性と筆記性の両立について、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、増ちょう剤として含まれる金属石けんの炭素数を適宜調整することが重要であることを見出した。すなわち、特許文献1によれば、増ちょう剤の一例としてステアリン酸リチウムを挙げているが、透明性及び筆記性が悪化することが後述する実験によりわかっている。ステアリン酸リチウムは、炭素数が18である。
【0019】
また、後述する実験では、増ちょう剤として、炭素数が22のベヘニン酸リチウムを用いると、透明性が低下することがわかっている。
【0020】
これに対し、増ちょう剤として、炭素数が24~33のラノリン酸金属塩や、炭素数が28のモンタン酸金属塩、或いは、炭素数が24~34のライス酸金属塩を含有すると、優れた透明性と筆記性を得ることができた。
【0021】
そこで、本実施の形態におけるインキ追従体は、難揮発性基油と、炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩と、を含むことを特徴とする。
【0022】
(難揮発性基油)
本実施形態で使用される難揮発性基油は、難揮発性液体の基油であり、本実施形態の透明性及び筆記性を得ることが可能であれば、特に、成分を限定するものではない。本実施形態では、インキ追従体に難揮発性基油を含むことで、長寿命のインキ追従体を得ることができ、また高温環境下でもグリースの状態を適切に保つことができる。
【0023】
本実施形態で使用される難揮発性基油は、合成炭化水素油、鉱油、ポリブテン、及びシリコーン油のうち、少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。難揮発性基油は、複数種の難揮発性基油を混合したものであってもよい。
【0024】
例えば、難揮発性基油の動粘度を調整するために、複数種の難揮発性基油を混合することが好ましい。複数種の難揮発性基油を混合する際、ポリブテンは、耐衝撃性に寄与するため、ポリブテンを含有することが好ましい。ただし、ポリブテンは、動粘度がかなり高いため、動粘度が低い合成炭素油や鉱油を混合して、動粘度を調整することが好ましい。また、合成炭化水素油は、潤滑性に優れるため、基油として、ポリブテンと合成炭化水素油とを含むことが好ましい。シリコーン油は、粘度が比較的高いため、単独で使用せず、例えば、動粘度が低く価格が安い鉱油などと一緒に使用することが好ましい。
【0025】
限定するものではないが、難揮発性基油の含有量は、インキ追従体全体を100質量%としたとき、85質量%以上98質量%以下であることが好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
(増ちょう剤)
本実施形態のインキ追従体は、炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩を増ちょう剤として含む。炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩としては、モンタン酸金属塩、ラノリン酸金属塩、及び、ライス酸金属塩の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、モンタン酸金属塩は、モンタン酸リチウムであり、ラノリン酸金属塩は、ラノリン酸リチウム、あるいは、ラノリン酸亜鉛であり、ライス酸金属塩は、ライス酸リチウムであることが好ましい。このように、金属には、リチウムあるいは亜鉛を選択できるが、特に、筆記性(インキ掠れ)を向上させるには、リチウムを選択することが好適である。
【0027】
炭素数は、23以上34以下であることが好ましく、24以上34以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施の形態では、該超長鎖脂肪酸金属塩の含有量は、インキ追従体全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上13質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施の形態では、増ちょう剤として、超長鎖脂肪酸金属塩のみを含むことができるが、超長鎖脂肪酸金属塩と炭素数が22以下の金属石けんとを混合してもよい。炭素数が22以下の金属石けんとしては、例えば、炭素数が16~22程度の長鎖脂肪酸金属塩を用いることができる。また、炭素数が16~22の長鎖脂肪酸金属塩としては、例えば、炭素数が18のステアリン酸金属塩や、炭素数が22のべへニン酸金属塩を用いることが可能である。また、増ちょう剤として、シリカやAl複合石けん(例えば、炭素数C18~22+安息香酸)等を混合することができる。
【0030】
炭素数が22以下の金属石けんと炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩とを混合する場合、超長鎖脂肪酸金属塩の含有量は、炭素数が22以下の金属石けんより少なくできる。
【0031】
増ちょう剤の含有量は、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。このとき、炭素数が22以下の金属石けんと炭素数が23以上の超長鎖脂肪酸金属塩の双方を増ちょう剤として含む場合、該超長鎖脂肪酸金属塩は、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましい。このように、超長鎖脂肪酸金属塩は、炭素数が22以下の金属石けんに比べて少ない含有量でよいため、生産コストを抑制できる。
【0032】
超長鎖脂肪酸金属塩として、モンタン酸金属塩、ラノリン酸金属塩、及び、ライス酸金属塩を挙げたが、モンタン酸金属塩やライス酸金属塩よりラノリン酸金属塩を含有することが好ましい。そして、ラノリン酸金属塩とヒドロキシステアリン酸金属塩を混合した増ちょう剤を用いることが、優れた透明性と筆記性とを両立するうえでより好ましい。
【0033】
(増粘剤)
本実施の形態では、増ちょう剤とともに、増粘剤を含むことができる。増粘剤はポリマーであり、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーを例示できる。
【0034】
増粘剤の含有量を限定するものではないが、0質量%以上8質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
なお、増ちょう剤と増粘剤の双方を含む構成では、増ちょう剤と増粘剤を合わせて15質量%以下となるように調整することが好ましい。増粘剤を添加することで、インキ追従体の硬さを調整できる。すなわち、増粘剤を添加することでインキ追従体のちょう度を高くできる。
【0036】
(その他の添加物)
その他の添加剤としては、当該技術分野で既知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、固体潤滑剤等を含むことができる。
【0037】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン等から選択することができる。防錆剤としては、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石けん、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、または多価アルコールのカルボン酸部分エステル等から選択することができる。腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールまたはベンゾイミダゾール等から選択することができる。油性剤としては、ラウリルアミンなどのアミン類、ミリスチルアルコール等の高級アルコール類、パルミチン酸などの高級脂肪酸類、ステアリン酸メチル等の脂肪酸エステル類、またはオレイルアミドなどのアミド類等から選択することができる。耐摩耗剤としては、亜鉛系、硫黄系、リン系、アミン系、またはエステル系等から選択することができる。また、固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、シリカ等から選択することができる。
【0038】
<本実施形態のインキ追従体の性能>
本実施形態のインキ追従体を用いることで、透明性、及び筆記性を良好な性能として得ることができる。
【0039】
透明性は、目視での評価と測色計反射率の計測の双方で判定できる。目視での評価は、特定の条件下で、印字上に重ねたインキ追従体の表面から文字を読み取ることができるか否かで示すことができる。そして、本実施の形態のインキ追従体を用いた場合、目視にて文字を認識でき、優れた透明性が得られることがわかった。
【0040】
また、測色計反射率の計測は、分光測色計を用い、インキ追従体を充填した透明容器をブランクとして基準色に定め、該基準色からの反射変化量としての測定結果を得た。本実施の形態では、測色計反射率を45%よりも小さくでき、好ましくは、40%以下にでき、より好ましくは、30%以下にでき、さらに好ましくは、25%以下にできる。
【0041】
また、筆記性は、本実施形態のインキ追従体を充填したボールペンを用いて筆記した際にインキに掠れが生じるか否かで判別したところ、本実施形の態では、いずれのインキ追従体の構成であっても、優れた筆記性を得ることができた。
【0042】
<用途>
本実施形態のインキ追従体は、例えば、ボールペンに使用されるインキの上部に充填される。本実施形態では、優れた透明性及び筆記性を得ることができる。したがって、筆記により、インキ追従体がインキに追従する際、インキ追従体が、透明なリフィルの内壁に付着し残っても、外側から透けて見える内部状態の見栄えが良く、インキ残量を適切に視認でき、快適な使用感を与えることができる。
また、筆記性に優れており、筆記の際に、インキ掠れを防止でき、快適な使用感とともに、長寿命を得ることができる。
【実施例0043】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
まずは、実験に使用した難揮発性有機溶媒、増ちょう剤、及び増粘剤の種類及びその物性値等を以下の表1にまとめた。
【0045】
【0046】
<増ちょう剤の炭素数に関する実験>
実験では、基油として、精製鉱油を用い、添加する増ちょう剤を種々変更して、不飽和ちょう度、透明性(目視)、透明性(測色計反射率%)、筆記性(インキ掠れ)について測定した。その実験結果が表2に示されている。
【0047】
【0048】
表2に示す配合比は、質量%である。表2に示すように、基油としての精製鉱油を約90質量%に固定し(ただし、実施例4、及び、比較例2は、精製鉱油を92質量%とした)、残りを増ちょう剤の添加量とした。表2に示すヒドロキシステアリン酸リチウム及びステアリン酸亜鉛は、炭素数が18であり、ベヘニン酸リチウムは、炭素数が22であった。また、ラノリン酸リチウム及びラノリン酸亜鉛の炭素数は24~33であり、モンタン酸リチウムの炭素数は28であり、ライス酸リチウムの炭素数は24~34であった。
【0049】
透明性(目視)は、次のように評価した。すなわち、透明スチロール容器(円筒容器、内径5cm、容量40mL、測色計で計測した反射率が18%)に、インキ追従体を高さ5mmになるように充填した。このとき、インキ追従体の表面が平坦となるようにならした。そして、記号(黒色、フォント:MSゴシック、文字サイズ:60P)を印字したコピー用紙の上に、インキ追従体を入れた上記容器を重ね、記号が読み取れる場合は、透明感ありと判定し(表2の〇)、記号が読み取れない場合は、透明感なしと判定した(表2の×)。
【0050】
また、透明性(計測系反射率)は、次のように測定した。上記に示した透明性(目視)の実験で使用したインキ追従体を充填した透明スチロール容器を用い、該透明スチロール容器をブランクとして基準色とし、分光測色計として、コニカミノルタ製CM-5を用いて、インキ追従体を詰めた上記サンプルを測定し、基準色からの反射変化量を求めた。表2には、反射変化量を測色計反射率(%)として示した。
【0051】
次に、筆記性(インキ掠れ)について説明する。まず、試験用ボールペンを準備した。準備したボールペンは市販品であり、リフィル内径は4mmであった。まずは、ボールペンに充填されている既存のインキ追従体を除去し、リフィル内をベンジンで洗浄した。続いて、リフィル内にインキ追従体を充填した。このとき、インキ追従体のリフィル内の高さが1cmとなるように充填量を調整した。そして、遠心分離にて脱泡した。
【0052】
上記にて用意した試験用ボールペンを、表3に示す試験条件のペンプロッターに装着し、コピー用紙に筆記させた際の掠れの有無で評価した。表2に示す◎は、インキ掠れが無いことを示し、〇は、インキ掠れがほとんど無いことを示し(インキ掠れがあっても、問題とならない程度)、×は、インキ掠れがあることを示す。
【0053】
【0054】
表2に示すように、増ちょう剤として、炭素数が22以下のヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、及びベヘニン酸リチウムを用いた比較例1~比較例3では、いずれも透明性(目視)が×の評価であり、また透明性(測色計反射率)が50%以上であった。また、筆記性(インキ掠れ)は、比較例1、2が×であった。このように、比較例1~比較例3では、透明性と筆記性を両立させることができなかった。
【0055】
これに対し、実施例1~4では、透明性及び筆記性がいずれも優れた結果となった。また、測色計反射率は30%以下であり、透明性が高いことを物性値として証明できた。このように、超長鎖脂肪酸金属塩を添加することで、透明性が発現するとともに、滑り性が向上し、インキ掠れを防止できるものと考えられる。
【0056】
<基油及び増ちょう剤をそれぞれ複数種用いた実験>
次に、基油、及び増ちょう剤をそれぞれ複数種用いて、不飽和ちょう度、透明性(目視)、透明性(測色計反射率%)、筆記性(インキ掠れ)について測定した。その実験結果が表4に示されている。
【0057】
【0058】
表4に示すように、実施例5~実施例9及び比較例4では、いずれも複数種の基油を含有した。このうち、実施例5、6、8、9および比較例4では、基油として、ポリブテンと合成炭化水素油を含む。ポリブテンは、耐衝撃性に寄与するため、基油として含有することが好ましい。
【0059】
表4に示すように、比較例4は、増ちょう剤として炭素数が18のヒドロキシステアリン酸リチウムと、増粘剤としてスチレン系熱可塑性エラストマーを含むが、透明性(目視)および筆記性(インキ掠れ)がいずれも×であり、透明性(測色計反射率)が45%と高い数値を示した。例えば、実施例8と対比すると、基油の種類は両者で一致し、また、ヒドロキシステアリン酸リチウム及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含む点でも一致するが、実施例8は、炭素数が24~33のラノリン酸リチウムを0.3質量%だけ含んでいる。この結果、実施例8では、透明性(目視)が〇の評価であり、筆記性(インキ掠れ)が◎の評価で、さらに透明性(測色計反射率)が10%と低い数値を示した。実施例8以外の実施例5、6、7、9も透明性(目視)及び筆記性(インキ掠れ)が〇か◎であり、透明性(測色計反射率)が15%以下であり、優れた透明性を備えることがわかった。
【0060】
図1は、実施例8と比較例2の透明性を示す写真である。透明性(目視)での評価において、
図1(a)に示すように、実施例8では、印字をはっきりと読み取ることができたが、
図1(b)に示すように、比較例2では、印字を全く読み取ることができなかった。このように、実施例8は、非常に優れた透明性を有することがわかった。
本発明のインキ追従体によれば、優れた透明性及び筆記性を得ることができる。本発明のインキ追従体をボールペン等のリフィルに充填することで、快適な使用感が得られ、かつ長寿命を得ることができる。