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特開2024-142432作業機械、及び、作業機械を制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142432
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械、及び、作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02F9/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054569
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】講堂 康史朗
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BB01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB06
(57)【要約】
【課題】作業機械において、油圧式ブレーキの作動油のオーバーヒートを抑える。
【解決手段】作業機械は、駆動源と、走行装置と、油圧式ブレーキと、油温センサと、コントローラとを備える。走行装置は、駆動源によって駆動されることで、作業機械を走行させる。油圧式ブレーキは、作動油によって駆動されることで走行装置を制動する。油温センサは、作動油の油温を検出する。コントローラは、作動油の油温を取得する。コントローラは、作動油の油温の上昇に基づいて、作業機械の加速度を低減させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
駆動源と、
前記駆動源によって駆動されることで、前記作業機械を走行させる走行装置と、
作動油によって駆動されることで前記走行装置を制動する油圧式ブレーキと、
前記作動油の油温を検出する油温センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作動油の油温を取得し、
前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記作業機械の加速度を低減させる、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記作動油の油温が所定の閾値以上である場合に、前記作業機械の加速度を低減させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記作業機械の最高車速を維持しながら、前記作業機械の加速度を低減させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
オペレータによって操作可能なアクセル操作部材と、
前記作業機械の車速を検出する車速センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記アクセル操作部材の操作量を取得し、
前記車速を取得し、
前記アクセル操作部材の操作量と前記車速とに応じて前記作業機械の目標駆動力を決定し、
前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記目標駆動力を低減することで、前記作業機械の加速度を低減させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
高出力モードと、前記高出力モードよりも前記作業機械の駆動力が低減される低出力モードとを選択するためにオペレータによって操作可能な入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記低出力モードよりも前記目標駆動力を低減することで、前記作業機械の加速度を低減させる、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
オペレータによって操作可能なアクセル操作部材と、
前記作業機械の車速を検出する車速センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記アクセル操作部材の操作量を取得し、
前記車速を取得し、
前記アクセル操作部材の操作量と前記車速とに応じて前記作業機械の目標駆動力を決定し、
前記目標駆動力に応じて前記駆動源の目標出力トルクを決定し、
前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記目標出力トルクを低減することで、前記作業機械の加速度を低減させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記作動油によって駆動される作業機をさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機の出力制限を行わない、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械は、
駆動源と、
前記駆動源によって駆動されることで、前記作業機械を走行させる走行装置と、
作動油によって駆動されることで前記走行装置を制動する油圧式ブレーキと、
を含み、
前記方法は、
前記作動油の油温を取得することと、
前記作動油の油温の上昇に基づいて、前記作業機械の加速度を低減させること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械及び作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、油圧式ブレーキを備えるものがある。例えば、特許文献1の作業機械では、ブレーキペダルの操作量に応じて、油圧式ブレーキに供給される作動油が制御される。それにより、油圧式ブレーキによる制動力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5412011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、過酷な現場で使われることがあり、ブレーキへの負担が大きい。例えば、単位時間当たりのブレーキ回数が多い、連続運転時間が長い、作業機械の重量が重いことなどによって、大きな負担がブレーキにかかる。そのため、作動油が高温になりやすい。本開示の目的は、作業機械において、油圧式ブレーキの作動油のオーバーヒートを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る作業機械は、駆動源と、走行装置と、油圧式ブレーキと、油温センサと、コントローラとを備える。走行装置は、駆動源によって駆動されることで、作業機械を走行させる。油圧式ブレーキは、作動油によって駆動されることで走行装置を制動する。油温センサは、作動油の油温を検出する。コントローラは、作動油の油温を取得する。コントローラは、作動油の油温の上昇に基づいて、作業機械の加速度を低減させる。
【0006】
本開示の他の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法であって、作業機械は、駆動源と、走行装置と、油圧式ブレーキとを含む。走行装置は、駆動源によって駆動されることで、作業機械を走行させる。油圧式ブレーキは、作動油によって駆動されることで走行装置を制動する。本態様に係る方法は、作動油の油温を取得することと、作動油の油温の上昇に基づいて、作業機械の加速度を低減させること、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作動油の油温の上昇に基づいて、作業機械の加速度が低減される。そのため、作業機械による作業に要する時間が長くなる。それにより、単位時間当たりのブレーキ回数が減少することで、油圧式ブレーキへの負担が軽減され、作動油のオーバーヒートが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】作業機械の構成を示すブロック図である。
図3】エンジンを制御するための処理を示すブロック図である。
図4】駆動力データの一例を示す図である。
図5】加速制限制御の処理を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る目標マッチングデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1の側面図である。図2は、作業機械1の構成を示すブロック図である。本実施形態において、作業機械1は、ホイールローダである。図1に示すように、作業機械1は、車体2と作業機3とを備えている。
【0010】
車体2は、前車体2aと後車体2bとを含む。後車体2bは、前車体2aに対して左右に旋回可能に接続されている。前車体2aと後車体2bとには、油圧シリンダ15が連結されている。油圧シリンダ15が伸縮することで、前車体2aが、後車体2bに対して、左右に旋回する。
【0011】
作業機3は、掘削等の作業に用いられる。作業機3は、前車体2aに対して動作可能に、取り付けられている。作業機3は、ブーム11と、バケット12と、油圧シリンダ13,14とを含む。油圧シリンダ13,14が伸縮することによって、ブーム11及びバケット12が動作する。
【0012】
図2に示すように、作業機械1は、駆動源としてエンジン21を備える。エンジン21は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン21には、燃料噴射装置30が設けられている。燃料噴射装置30は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することで、エンジン21の出力を制御する。ただし、作業機械1は、駆動源として電動モータを備えてもよい。
【0013】
作業機械1は、トランスミッション24と、走行装置25とを含む。トランスミッション24は、エンジン21に接続される。トランスミッション24は、エンジン21からの駆動力を走行装置25に伝達する。例えば、トランスミッション24は、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)である。HMTは、遊星歯車機構と油圧ポンプ/モータとクラッチとを含む。HMTは、油圧ポンプ/モータの容量を制御することで、速度比を無段階に変更可能である。
【0014】
ただし、トランスミッション24は、EMT(Electric Mechanical Transmission)、或いはHST(Hydro-Static Transmission)などの他の種類のトランスミッションであってもよい。或いは、トランスミッション24は、トルクコンバータ及び複数の変速ギアを含むトランスミッションであってもよい。
【0015】
走行装置25は、車体2に搭載され、エンジン21からの駆動力によって駆動されることで車体2を走行させる。走行装置25は、アクスル26,27と、前輪28A,28Bと、後輪28C,28Dとを含む。アクスル26,27は、トランスミッション24に接続される。前輪28A,28Bは、前車体2aに設けられる。後輪28C,28Dは、後車体2bに設けられる。アクスル26は、トランスミッション24からの駆動力を前輪28A,28Bに伝達する。アクスル27は、トランスミッション24からの駆動力を後輪28C,28Dに伝達する。
【0016】
作業機械1は、PTO(Power Take Off)31と、作業機ポンプ32と、制御弁33とを含む。PTO31は、トランスミッション24と作業機ポンプ32とに、エンジン21の駆動力を分配する。なお、図2では、1つの作業機ポンプ32のみが図示されている。しかし、2つ以上の油圧ポンプが、PTO31を介してエンジン21に接続されてもよい。
【0017】
作業機ポンプ32は、PTO31を介してエンジン21に接続される。作業機ポンプ32は、油圧ポンプである。作業機ポンプ32は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。作業機ポンプ32から吐出された作動油は、上述した油圧シリンダ13-15に供給される。制御弁33は、作業機ポンプ32から油圧シリンダ13-15に供給される作動油の流量を制御する。制御弁33は、例えば、電磁比例制御弁であり、入力される電気信号に応じて、制御される。或いは、制御弁33は、圧力比例制御弁であり、入力されるパイロット圧に応じて制御されてもよい。
【0018】
作業機械1は、ブレーキポンプ36と、油圧式ブレーキ37A-37Dとを含む。ブレーキポンプ36は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。ブレーキポンプ36から吐出された作動油は、油圧式ブレーキ37A-37Dに供給される。油圧式ブレーキ37A-37Dは、作動油によって駆動されることで走行装置25を制動する。油圧式ブレーキ37A-37Dは、例えば湿式多板ブレーキである。詳細には、油圧式ブレーキ37A-37Dは、フロントブレーキ37A,37Bとリアブレーキ37C,37Dとを含む。フロントブレーキ37A,37Bは、前輪28A,28Bを制動する。リアブレーキ37C,37Dは、後輪28C,28Dを制動する。
【0019】
作業機械1は、エンジンセンサ34と車速センサ35とを含む。エンジンセンサ34は、エンジン回転速度を検出する。車速センサ35は、車速を検出する。車速センサ35は、例えば、車速として、走行装置25の出力回転速度を検出する。走行装置25の出力回転速度は、作業機械1の車速に相当する。走行装置25の出力回転速度は、例えば、トランスミッション24の出力軸の回転速度である。ただし、出力回転速度は、トランスミッション24内、或いはトランスミッション24の下流に位置する他の回転要素の回転速度であってもよい。
【0020】
作業機械1は、第1油温センサ39と第2油温センサ40とを含む。第1油温センサ39と第2油温センサ40とは、油圧式ブレーキ37A-37Dを駆動する作動油の温度(以下、ブレーキ油温と呼ぶ)を検出する。第1油温センサ39は、フロントブレーキ37A,37Bのブレーキ油温を検出する。第2油温センサ40は、リアブレーキ37C,37Dのブレーキ油温を検出する
作業機械1は、コントローラ41を含む。コントローラ41は、CPU(central processing unit)などのプロセッサと、RAM及びROMなどの記憶装置とを含む。コントローラ41は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。コントローラ41は、作業機械1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。コントローラ41は、記憶されているプログラム及びデータに従って、作業機械1を制御するための処理を実行する。
【0021】
コントローラ41は、エンジンセンサ34から、エンジン回転速度を示す信号を受信する。コントローラ41は、車速センサ35から、車速を示す信号を受信する。コントローラ41は、油温センサ39,40から、油圧式ブレーキ37A-37Dのブレーキ油温を示す信号を受信する。コントローラ41は、第1油温センサ39から、フロントブレーキ37A,37Bのブレーキ油温を示す信号を受信する。コントローラ41は、第2油温センサ40から、リアブレーキ37C,37Dのブレーキ油温を示す信号を受信する。
【0022】
コントローラ41は、エンジン21に指令信号を送信することで、エンジン21の出力を制御する。コントローラ41は、トランスミッション24に指令信号を送信することで、トランスミッション24の速度比を制御する。コントローラ41は、作業機ポンプ32及び制御弁33に指令信号を送信することで、作業機3を制御する。なお、本実施形態では、コントローラ41は、作業機3の出力制限は行わない。
【0023】
作業機械1は、アクセル操作部材43と、作業機操作部材44と、ブレーキ操作部材45と、入力装置46とを含む。アクセル操作部材43は、作業機械1の車速を制御するためにオペレータによって操作可能である。アクセル操作部材43は、例えばペダルである。ただし、アクセル操作部材43は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。作業機操作部材44は、作業機3を制御するためにオペレータによって操作可能である。作業機操作部材44は、例えばレバーである。ただし、作業機操作部材44は、スイッチ、或いはペダルなどの他の部材であってもよい。
【0024】
ブレーキ操作部材45は、油圧式ブレーキ37A-37Dを駆動させるためにオペレータによって操作可能である。ブレーキ操作部材45は、例えばペダルである。ただし、ブレーキ操作部材45は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。ブレーキ操作部材45の操作に応じて、油圧式ブレーキ37A-37Dに供給される作動油の油圧が制御される。それにより、油圧式ブレーキ37A-37Dは、ブレーキ操作部材45の操作量に応じて制動力を発生させる。
【0025】
入力装置46は、作業機械1の制御の設定を行うために、オペレータによって操作可能である。例えば、入力装置46は、オペレータの操作に応じて、作業機械1の設定を行う。入力装置46は、例えばタッチパネルを含む。ただし、入力装置46は、機械式のスイッチ等の他の部材を含んでもよい。
【0026】
コントローラ41は、アクセル操作部材43から、アクセル操作量を示す信号を受信する。アクセル操作量は、アクセル操作部材43の操作量である。コントローラ41は、ブレーキ操作部材45から、ブレーキ操作量を示す信号を受信する。ブレーキ操作量は、ブレーキ操作部材45の操作量である。コントローラ41は、作業機操作部材44から、作業機操作量を示す信号を受信する。作業機操作量は、作業機操作部材44の操作量である。コントローラ41は、入力装置46から、作業機械1の設定を示す信号を受信する。
【0027】
次に、コントローラ41によって実行されるエンジン21を制御するための処理について説明する。図3は、エンジン21を制御するための処理を示すブロック図である。
【0028】
図3に示すように、ステップS101では、コントローラ41は、目標駆動力を決定する。目標駆動力は、走行装置25によって作業機械1を走行させるために要求される駆動力である。コントローラ41は、アクセル操作量と車速とを取得する。コントローラ41は、アクセル操作量と車速とから、目標駆動力を決定する。
【0029】
詳細には、コントローラ41は、駆動力データD1を記憶している。駆動力データD1は、車速(V)及びアクセル操作量(A1)に対する作業機械1の目標駆動力(Ft)の関係を規定している。コントローラ41は、駆動力データD1を参照して、車速(V)及びアクセル操作量(A1)から、目標駆動力(Ft)を決定する。駆動力データD1は、アクセル操作量(A1)の増大に応じて、車速に対する目標駆動力(Ft)が増大するように変化する。
【0030】
図4は、駆動力データD1の一例を示す図である。図4は、アクセル操作量が100%である場合の駆動力データD1を示している。図4に示すように、駆動力データD1は、第1駆動力データL1と第2駆動力データL2とを含む。第1駆動力データL1は、高出力モードでの駆動力データを示す。第2駆動力データL2は、低出力モードでの駆動力データを示す。オペレータは、入力装置46によって、高出力モードと低出力モードとを選択することができる。
【0031】
高出力モードが選択されている場合には、コントローラ41は、第1駆動力データL1を参照して、目標駆動力(Ft)を決定する。低出力モードが選択されている場合には、コントローラ41は、第2駆動力データL2を参照して、目標駆動力(Ft)を決定する。低出力モードでの第2駆動力データL2は、高出力モードでの第1駆動力データL1よりも低い目標駆動力を規定している。そのため、低出力モードが選択されている場合には、高出力モードが選択されている場合よりも、目標駆動力(Ft)が低減される。
【0032】
ステップS102では、コントローラ41は、エンジン21の目標出力トルクと目標回転速度とを決定する。コントローラ41は、目標駆動力と車速とから、エンジン21の目標出力トルク(T)と目標回転速度(N)とを決定する。例えば、コントローラ41は、目標マッチングデータD2を記憶している。目標マッチングデータD2は、エンジン21の目標出力トルク(T)と目標回転速度(N)との関係を規定している。コントローラ41は、目標駆動力と車速とから、エンジン21の目標出力馬力を算出する。コントローラ41は、目標出力馬力を示すラインP1と、目標マッチングデータD2を示すラインとの交点M1から、エンジン21の目標出力トルク(T)と目標回転速度(N)とを決定する。
【0033】
ステップS103では、コントローラ41は、エンジン指令を決定する。コントローラ41は、上記のように決定されたエンジン21の目標出力トルク(T)に応じて、燃料噴射装置30へのスロットル指令を、エンジン指令として決定する。それにより、目標出力トルク(T)が達成されるように、エンジン21の出力が制御される。
【0034】
ステップS104では、コントローラ41は、トランスミッションの目標速度比を決定する。コントローラ41は、エンジン21の目標回転速度(N)と車速とから、トランスミッションの目標速度比を決定する。トランスミッションの速度比は、トランスミッションの出力回転速度と入力回転速度との比を示す。
【0035】
ステップS105では、コントローラ41は、トランスミッション指令を決定する。コントローラ41は、トランスミッションにおいて目標速度比が得られるように、トランスミッション指令を決定する。例えば、トランスミッションがHMTである場合には、トランスミッション指令は、油圧ポンプ/モータへの容量指令とクラッチへの指令とを含む。以上のように、エンジン21とトランスミッション24とが制御されることで、図4に示すように、作業機械1において、車速とアクセル操作量とに応じた目標駆動力が得られる。
【0036】
本実施形態に係る作業機械1では、コントローラ41は、油圧式ブレーキ37A-37Dのブレーキ油温の上昇に基づいて、作業機械1の走行の加速度を制限する加速制限制御を実行する。図5は、加速制限制御の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS201では、コントローラ41は、油圧式ブレーキ37A-37Dのブレーキ油温(Tm)を取得する。
【0037】
ステップS202では、コントローラ41は、ブレーキ油温(Tm)が閾値T1以上であるかを判定する。コントローラ41は、第1油温センサ39が検出した油温と、第2油温センサ40が検出した油温との少なくとも一方が閾値T1以上である場合には、ブレーキ油温(Tm)が閾値T1以上であると判定する。ブレーキ油温(Tm)が所定の閾値T1以上である場合には、処理は、ステップS203に進む。
【0038】
ステップS203では、コントローラ41は、作業機械1の加速度を低減させる。コントローラ41は、同じ車速及び同じアクセル操作量において、ブレーキ油温が閾値T1以上である場合(以下、「高油温状態」と呼ぶ)の作業機械1の加速度を、ブレーキ油温が閾値T1より小さい場合(以下、「通常状態」と呼ぶ)の加速度よりも低減させる。
【0039】
詳細には、コントローラ41は、高油温状態では、通常状態よりも目標駆動力を低減することで、作業機械1の車速の加速度を低減させる。図4に示すように、コントローラ41は、駆動力データD1を、通常状態での駆動力データL1,L2から、高油温状態での駆動力データL3に変更する。例えば、コントローラ41は、高出力モードの選択時には、駆動力データD1を、通常状態での第1駆動力データL1から、高油温状態での駆動力データL3に変更する。コントローラ41は、低出力モードの選択時には、駆動力データD1を、通常状態での第2駆動力データL2から、高油温状態での駆動力データL3に変更する。
【0040】
高油温状態での駆動力データL3では、高出力モードの第1駆動力データL1よりも目標駆動力が小さい。高油温状態での駆動力データL3では、低出力モードの第2駆動力データL2よりも目標駆動力が小さい。コントローラ41は、ブレーキ油温が閾値T1以上である場合には、高油温状態での駆動力データL3を参照して、目標駆動力を決定する。それにより、作業機械1の加速度が低減される。
【0041】
ただし、高油温状態での駆動力データL3は、通常状態での駆動力データL1,L2と同じ最高車速Vmaxを有する。そのため、高油温状態では、通常状態よりも加速度が低減されるが、通常状態と同じ最高車速が維持される。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、ブレーキ油温の上昇に基づいて、作業機械1の加速度が低減される。そのため、作業機械1による作業に要する時間が長くなる。それにより、単位時間当たりのブレーキ回数が減少することで、油圧式ブレーキ37A-37Dへの負担が軽減され、作動油のオーバーヒートが抑えられる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
作業機械1は、ホイールローダに限らず、ブルドーザ、或いはモータグレーダなどの他の機械であってもよい。作業機械1は、遠隔から操作可能であってもよい。その場合、アクセル操作部材43、作業機操作部材44、ブレーキ操作部材45、及び入力装置46は、作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0045】
コントローラ41は、複数のコントローラによって構成されてもよい。上述した作業機械1の制御の処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。エンジン21の制御方法は、上述した実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0046】
加速制限制御の処理は、上述した実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、目標駆動力を低減することで、作業機械1の加速度が低減されている。しかし、作業機械1の加速度を低減するための方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ41は、エンジン21の目標出力トルクを低減することで、作業機械1の加速度を低減してもよい。図6は、変形例に係る目標マッチングデータを示す図である。
【0047】
図6に示すように、コントローラ41は、目標マッチングデータを、通常状態での目標マッチングデータD2Aから、高油温状態での目標マッチングデータD2Bに変更してもよい。高油温状態での目標マッチングデータD2Bは、通常状態での目標マッチングデータD2Aよりも低い目標出力トルクを規定している。コントローラ41は、ブレーキ油温が閾値T1以上である場合には、高油温状態での目標マッチングデータD2Bに基づいて、エンジン21の目標出力トルクを決定してもよい。それにより、作業機械1の加速度が低減される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示によれば、作業機械において、油圧式ブレーキの作動油のオーバーヒートが抑えられる。
【符号の説明】
【0049】
21:エンジン(駆動源)
25:走行装置
35:車速センサ
37A-37D:油圧式ブレーキ
39,40:油温センサ
41:コントローラ
43:アクセル操作部材
46:入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6