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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142433
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】グラスラン及びウエストシール
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/15 20160101AFI20241003BHJP
   B60J 10/76 20160101ALI20241003BHJP
   B60J 10/75 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
B60J10/15
B60J10/76
B60J10/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054570
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕二
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA21
3D201AA24
3D201CA19
3D201CA20
3D201DA06
3D201DA08
3D201DA31
(57)【要約】
【課題】ドアガラスの良好な昇降性を確保しつつ、ドアガラスの高い振動抑制効果を得ることが可能なグラスラン及びウエストシールを提供する。
【解決手段】本発明に係るグラスラン及びウエストシールでは、ダイラタント流体からなる補助部材に相当する補助部材23及び第1、第2補助部材33,34が設けられている。これにより、車両ばらつきに起因する変動許容範囲内においては、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保しつつ、変動許容範囲を超えるような大きな(早い)入力に対しては、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部と、前記基底部の車幅方向両端部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部と、からなる断面ほぼコ字状をなす基部と、
前記両側壁部の先端部からそれぞれ前記基部の内側へ向かって延設され、前記基部の内側を前記両側壁部の長手方向に沿って昇降移動するドアガラスと摺接可能に設けられた車内側シールリップ及び車外側シールリップと、
ダイラタント流体により形成され、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記車内側シールリップと当接する補助部材と、
を有することを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
請求項1に記載のグラスランであって、
前記補助部材は、前記車内側側壁部の内側面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップの先端部と当接する、
ことを特徴とするグラスラン。
【請求項3】
請求項1に記載のグラスランであって、
前記車内側側壁部の内側面から前記基部の内側に向かって延設され、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップと弾性的に当接するサブリップをさらに有し、
前記補助部材は、前記サブリップの前記車内側シールリップと対向する面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップと当接する、
ことを特徴とするグラスラン。
【請求項4】
請求項1に記載のグラスランであって、
前記補助部材は、前記車内側側壁部の内側面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップの根元部と当接する、
ことを特徴とするグラスラン。
【請求項5】
車内側ドアパネル又は前記車内側ドアパネルに被せられるドアトリムに取り付けられる取付基部と、
前記取付基部から車外側へ延設され、ドアガラスに摺接して前記車内側ドアパネル又は前記ドアトリムと前記ドアガラスとの間をシールするシールリップと、
ダイラタント流体により形成され、前記取付基部の車外側側面に前記シールリップと対向するように設けられ、前記シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記シールリップと当接する補助部材と、
を有することを特徴とするウエストシール。
【請求項6】
請求項5に記載のウエストシールであって、
前記シールリップは、前記ドアガラスと対向する前記取付基部の車外側側面に、前記ドアガラスの昇降移動方向に沿って複数設けられ、
前記補助部材は、前記各シールリップと対向するように複数設けられ、前記各シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記各シールリップと当接する、
ことを特徴とするウエストシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアガラスに適用され、ドアガラスの摺動ないし保持に供するグラスラン及びウエストシールに関する。
【背景技術】
【0002】
概略を説明すれば、従来のグラスランGRは、例えば図17に示すように、基底部201と車内側側壁部202と車外側側壁部203とからなる概ねコ字状の基部20と、前記両側壁202,203の先端部からそれぞれ前記基部の内側へ向かって延びる一対のシールリップである車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22と、を有する。
【0003】
また、上記従来のグラスランGRは、車内側側壁部202の基底部201側(根元側)に、自由状態において車内側シールリップ21と対向し、かつドアガラスDGの摺動状態において車内側シールリップ21と車内側側壁部202との間に挟み込まれるサブリップ27が設けられていた。すなわち、当該従来のグラスランGRによれば、ドアガラスDGが車内側へ大きく変位して車内側シールリップ21が大きく撓み変形した際に、車内側シールリップ21とサブリップ27とが協働してドアガラスDGを支持することによって、ドアガラスDGのがたつきが抑制されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5100029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のグラスランGRでは、例えばドアガラスDGが半開きの状態でドアを閉めた場合などに生じるドアガラスDGの大きなばたつきを抑制するためにサブリップ27の反力を高めた場合、ドアガラスDGの振動は効果的に抑制可能となる一方で、車両やドアパネルなどの寸法のばらつきに起因してドアガラスDGの車幅方向位置にばらつきが生じた際、サブリップ27の反力の増大によってドアガラスDGの摺動抵抗が過大となり、ドアガラスDGの昇降性が低下してしまう点で、改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであり、ドアガラスの良好な昇降性を確保しつつドアガラスの高い振動抑制効果を得ることが可能なグラスラン及びウエストシールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグラスランは、その一態様として、基底部と、前記基底部の車幅方向両端部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部と、からなる断面ほぼコ字状をなす基部と、前記両側壁部の先端部からそれぞれ前記基部の内側へ向かって延設され、前記基部の内側を前記両側壁部の長手方向に沿って昇降移動するドアガラスと摺接可能に設けられた車内側シールリップ及び車外側シールリップと、ダイラタント流体により形成され、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記車内側シールリップと当接する補助部材と、を有する。
【0008】
このように、ダイラタント流体で形成された補助部材により、ドアガラスを支持することができる。このため、車両ばらつきに起因する範囲においては、補助部材を構成するダイラタント流体が柔軟に変形し、ドアガラスの摺動抵抗を過度に増大させるおそれがない。これにより、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0009】
一方、ドアガラスの変位量が前記車両ばらつきに起因する範囲を超えた場合には、補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることにより、当該補助部材の反力を瞬時に増大させることが可能となる。これにより、ドアガラスの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0010】
ここで、本発明に係るグラスランの好ましい態様として、前記補助部材は、前記車内側側壁部の内側面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップの先端部と当接する、ことが望ましい。
【0011】
このように、補助部材が車内側シールリップの先端部と当接する構成としたことで、車内側シールリップが車外側に位置する状態では車内側シールリップが補助部材に当接せず、車内側シールリップが車内側へ所定量押圧されてはじめて補助部材に当接することとなる。これにより、車内側シールリップの初期反力を低減することが可能となり、車両ばらつきに起因する範囲におけるドアガラスの摺動抵抗を効果的に低減することができる。
【0012】
また、本発明に係るグラスランのさらに好ましい態様として、前記車内側側壁部の内側面から前記基部の内側に向かって延設され、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップと弾性的に当接するサブリップをさらに有し、前記補助部材は、前記サブリップの前記車内側シールリップと対向する面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップと当接する、ことが望ましい。
【0013】
このように、補助部材を、サブリップの車内側シールリップとの対向面に配置してサブリップと車内側シールリップとの間に配置することで、サブリップの反力変化を遅らせることが可能となる。これにより、車両のばらつきに基づくドアガラスの車幅方向の可動範囲においてサブリップの反力を大きく増大させてしまうおそれがなく、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0014】
一方、車内側シールリップに対して前記車両のばらつきに基づくドアガラスの車幅方向の可動範囲を超えるほど大きな入力が発生した場合には、補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなるため、当該補助部材を介して車内側シールリップの撓み変形がサブリップへと直接伝わる結果、サブリップの反力を瞬時に増大させて、サブリップの反力変化を早めることが可能となる。これにより、ドアガラスの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、基部にサブリップが設けられているため、車内側シールリップとサブリップとによって反力を発生させることができる。これにより、サブリップの撓み変形分だけドアガラスの振動(振幅)は増大する可能性がある一方、車内側シールリップに加えてサブリップの反力が作用することで、ドアガラスの振動を、より速やかに減衰させ、収束させることができる。
【0016】
また、本発明に係るグラスランのさらに好ましい態様として、前記補助部材は、前記車内側側壁部の内側面に設けられ、前記車内側シールリップが車内側へ撓み変形したときに前記車内側シールリップの根元部と当接する、ことが望ましい。
【0017】
このように、補助部材が車内側シールリップの根元部に配置されていることで、車内側シールリップの初期反力を高めることが可能となる。このとき、車内側シールリップの初期反力は高められるものの、ドアガラスの昇降時には、補助部材を構成するダイラタント流体が柔軟に(緩やかに)変形するため、車両のばらつきに基づくドアガラスの車幅方向の可動範囲において反力を大きく増大させてしまうおそれがなく、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0018】
一方、車内側シールリップに対して前記車両のばらつきに基づくドアガラスの車幅方向の可動範囲を超えるほど大きな入力が発生した場合には、補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなるため、補助部材の反力を瞬時に大きく増大させ、ドアガラスの振動(振幅)を低減することができるうえ、前記初期反力の増大により、とりわけドアガラスの振動の初動を効果的に抑制できるメリットがある。
【0019】
また、本発明に係るウエストシールは、その一態様として、車内側ドアパネル又は前記車内側ドアパネルに被せられるドアトリムに取り付けられる取付基部と、前記取付基部から車外側へ延設され、ドアガラスに摺接して前記車内側ドアパネル又は前記ドアトリムと前記ドアガラスとの間をシールするシールリップと、ダイラタント流体により形成され、前記取付基部の車外側側面に前記シールリップと対向するように設けられ、前記シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記シールリップと当接する補助部材と、を有する。
【0020】
このように、ダイラタント流体で形成された補助部材により、ドアガラスを支持することができる。このため、車両ばらつきに起因する範囲においては、補助部材を構成するダイラタント流体が柔軟に変形し、ドアガラスの摺動抵抗を過度に増大させるおそれがない。これにより、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0021】
一方、ドアガラスの変位量が前記車両ばらつきに起因する範囲を超えた場合には、補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることにより、当該補助部材の反力を瞬時に増大させることが可能となる。これにより、ドアガラスの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0022】
ここで、本発明に係るウエストシールの好ましい態様として、前記シールリップは、前記ドアガラスと対向する前記取付基部の車外側側面に、前記ドアガラスの昇降移動方向に沿って複数設けられ、前記補助部材は、前記各シールリップと対向するように複数設けられ、前記各シールリップが車内側へ撓み変形した際に前記各シールリップと当接する、ことが望ましい。
【0023】
このように、各シールリップとそれぞれ対向するように補助部材が複数設けられていて、当該複数の補助部材によって各シールリップの撓み変形時の反力が調整可能となっている。このため、各補助部材により、ドアガラスに対する各シールリップの摺動抵抗を大きく増大させることなく、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0024】
一方、ドアガラスの変位量が前記車両ばらつきに起因する範囲を超えた場合にも、各補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることにより、各補助部材の反力を瞬時に増大させることが可能となる。これにより、ドアガラスの振動(振幅)を効果的に低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ダイラタント流体により形成された補助部材によってドアガラスを支持する構成となっている。このため、車両ばらつきに起因する範囲においては、補助部材を構成するダイラタント流体が柔軟に変形することで、ドアガラスの円滑な昇降移動を確保することができる一方、ドアガラスの変位量が前記車両ばらつきに起因する範囲を超えた場合は、各補助部材を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることで、ドアガラスの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るグラスランが装着されるドアの正面図である。
図2】本発明に係るグラスランの第1実施形態を示す図であって、図1のA-A線断面図である。
図3】本発明に係るウエストシールの第1実施形態を示す図であって、図1のB-B線断面図である。
図4】ドアガラスの振動時におけるグラスランの状態を示す図であって、(a)はドアガラスが最も車外側に位置する状態、(b)はドアガラスが中央に位置する状態、(c)はドアガラスが変動許容範囲のうち最も車内側に位置する状態、(d)はドアガラスが最も車内側に位置する状態を表したグラスランの横断面図である。
図5図2に示すグラスランの反力特性を表したグラフである。
図6図2に示すグラスランの振幅と減衰特性を表したグラフである。
図7】本発明に係るグラスランの第1実施形態の変形例を示す図であって、図1のA-A線断面図である。
図8】ドアガラスの振動時におけるグラスランの状態を示す図であって、(a)はドアガラスが最も車外側に位置する状態、(b)はドアガラスが中央に位置する状態、(c)はドアガラスが変動許容範囲のうち最も車内側に位置する状態、(d)はドアガラスが最も車内側に位置する状態を表したグラスランの横断面図である。
図9図7に示すグラスランの反力特性を表したグラフである。
図10】本発明に係るグラスランの第2実施形態を示す図であって、図1のA-A線断面図である。
図11】ドアガラスの振動時におけるグラスランの状態を示す図であって、(a)はドアガラスが最も車外側に位置する状態、(b)はドアガラスが中央に位置する状態、(c)はドアガラスが変動許容範囲のうち最も車内側に位置する状態、(d)はドアガラスが最も車内側に位置する状態を表したグラスランの横断面図である。
図12図10に示すグラスランの反力特性を表したグラフである。
図13図10に示すグラスランの振幅と減衰特性を表したグラフである。
図14】本発明に係るウエストシールの第2実施形態を示す図であって、図1のB-B線断面図である。
図15】ドアガラスの振動時におけるグラスランの状態を示す図であって、(a)はドアガラスが最も車外側に位置する状態、(b)はドアガラスが変動許容範囲のうち最も車外側に位置する状態、(c)はドアガラスが中央に位置する状態、(d)はドアガラスが最も車内側に位置する状態を表したグラスランの横断面図である。
図16】スポンジ材料製の補助部材を用いた従来のグラスランの反力特性を表したグラフである。
図17】ドアガラスの振動時におけるグラスランの状態を示す図であって、(a)はドアガラスが最も車外側に位置する状態、(b)はドアガラスが中央に位置する状態、(c)はドアガラスが変動許容範囲よりも車内側であってサブリップが基部の車内側側壁部に当接した状態、(d)はドアガラスが最も車内側に位置する状態を表したグラスランの横断面図である。
図18】サブリップを用いた従来のグラスランの反力特性を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るグラスラン及びウエストシールを自動車用のフロントドア(以下、単に「ドア」と略称する。)1に適用した各実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記各実施形態では、説明の便宜上、車体取付状態の天地を基準として、鉛直方向上側に相当する図1の上側を「上」と定義すると共に、鉛直方向下側に相当する図1の下側を「下」と定義して説明する。
【0028】
(ドアの構成)
図1は、本発明に係るグラスラン2が装着されるドア1の正面図を示している。
【0029】
図1に示すように、ドア1は、ドア本体11と、ドア本体11に接続され、ドア本体11のドアウエスト部13から上方へアーチ状に延びるドアサッシュ12と、を有する。また、ドア本体11とドアサッシュ12の間には、ガラス開口部Wが形成されていて、このガラス開口部Wの周縁部には、グラスラン2が取り付けられている。
【0030】
グラスラン2は、押出成形されてなる、一対の縦辺部2a,2bと、両縦辺部2a,2bを繋ぐ上辺部2cと、を有し、縦辺部2a,2bと上辺部2cとは、それぞれ型成形部2d,2eによって接続されている。なお、グラスラン2は、ドアガラスDGの昇降時の案内(ガイド)や、走行時及びドア1閉時のドアガラスDGの振動吸収、並びにドアガラスDGとドアサッシュ12の間の水密及び気密の機能を果たす。
【0031】
また、ドア本体11のドアウエスト部13には、ドアウエスト開口部130の車内側及び車外側のそれぞれに、ドアガラスDGを挟んで対向するように、一対のウエストシールである、車内側ウエストシール(本発明に係るウエストシールに相当)3及び車外側ウエストシール4が配置されている。
【0032】
ドアガラスDGは、上方に開口するドアウエスト開口部130から出没し、上下方向に延びるドアサッシュ12の縦辺部121,122に沿って昇降移動可能に配置されている。なお、ドアガラスDGは、ドア本体11の内部に搭載されたウインドウレギュレータ(図3の符号WR参照)から出力される動力に基づいて昇降移動する。
【0033】
[第1実施形態]
図2図6は、本発明に係るグラスラン及びウエストシールの第1実施形態を示している。
【0034】
(グラスランの構成)
図2は、本発明の第1実施形態に係るグラスラン2の縦辺部121の横断面であって、図1のA-A線に沿って切断した断面図を示している。
【0035】
図2に示すように、ドアサッシュ12の縦辺部121は、底壁121aと、車内側側壁121b及び車外側側壁121cと、が一体に折り曲げ形成されてなる横断面ほぼコ字状を有する。車内側側壁121bは、車内側ドアパネルである図示外のドアインナーパネルに接続され、車外側側壁121cは、車外側ドアパネルである図示外のドアアウターパネルに接続されている。
【0036】
グラスラン2は、長手方向に直交する断面(横断面)が概ねコ字形状を呈し、例えば熱可塑性エラストマ(TPE)等の熱可塑性樹脂を押出成形することによって、長尺状に連続一体に形成されている。そして、このグラスラン2は、ドアサッシュ12に取り付けられる基部20と、基部20の内側に相互に対向するように延設され、ドアガラスDGの車内側側面及び車外側側面にそれぞれ弾接する一対のシールリップである車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22と、を備える。
【0037】
基部20は、ドアサッシの底面に固定される基底部201と、基底部201の車内側端部及び車外側端部から折れ曲がるように延設され、それぞれほぼ直線状に延びる車内側側壁部202及び車外側側壁部203と、を有し、これらが一体に形成されている。なお、基底部201は、車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22とは異なる材質、具体的には車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22よりも比較的高剛性の性質を有する熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0038】
車内側側壁部202は、先端部外側に車内側シールリップ21とは反対側へ折り返し状に突設された、ドアサッシュ12の車内側側壁123のフランジ部123aに弾接する車内側モールリップ204を有する。さらに、車内側側壁部202には、基底部201側の外側面に、車内側モールリップ204と協働してドアサッシュ12の車内側側壁123のフランジ部123aを挟持状態に保持する車内側保持リップ206が設けられている。
【0039】
車外側側壁部203は、先端部外側に車外側シールリップ22とは反対側へ折り返し状に突設された、ドアサッシュ12の車外側側壁124のフランジ部124aに弾接する車外側モールリップ205を有する。さらに、車外側側壁部203には、基底部201側の外側面に、車外側モールリップ205と協働してドアサッシュ12の車外側側壁124のフランジ部124aを挟持状態に保持する車外側保持リップ207が設けられている。
【0040】
車内側シールリップ21は、車内側側壁部202の先端部内側から折り返し状に形成されていて、基底部201側へ向かって湾曲状に延設されている。なお、車内側シールリップ21は、車内側シールリップ21よりも相対的に短くなるように形成されている。一方、車外側シールリップ22は、車外側側壁部203の先端部内側から車内側シールリップ21と対向するように折り返し状に形成されていて、基底部201側へ向かって概ね直線状に延設されている。そして、この車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22は、ドアガラスDGの下降時においては、図2に実線で示すように、相互に当接して対向する一方、ドアガラスDGの上昇時においては、図2に仮想線で示すように、ドアガラスDGにより押し退けられて、ドアガラスDGの内側面及び外側面に弾接する。
【0041】
また、車内側側壁部202の内側面には、ドアガラスDGの上昇時において当該ドアガラスDGによって車内側へ押されて車内側シールリップ21の先端部と弾接可能な補助部材23が設けられている。この補助部材23は、ダイラタント流体により車内側側壁部202と一体に形成されていて、車内側側壁部202の長手方向に沿って連続して設けられ、自由状態において横断面がほぼ矩形状となるように形成されている。なお、補助部材23は、グラスラン2の仕様等(例えば車内側シールリップ21の形状や、補助部材23に求める反力特性など)に応じて任意の断面形状を採用することが可能であることは勿論、押出成形により車内側側壁部202と一体に形成されてもよく、また、加硫接着等の固定手段により車内側側壁部202に固定されてもよい。
【0042】
(ウエストシールの構成)
図3は、本発明に係るウエストシール(車内側ウエストシール3)の第1実施形態を示す断面図であって、図1のB-B線に沿って切断した断面図を示している。
【0043】
図3に示すように、ドアウエスト開口部130を形成しているドアパネルのうちドアインナーパネル14に被せられるドアトリム15には、本発明に係るウエストシールに相当する車内側ウエストシール3が装着されている。他方、ドアウエスト開口部130を形成しているドアアウターパネル16には、車内側ウエストシール3と対をなして、ドアアウターパネル16とドアガラスDGとの間をシールする車外側ウエストシール4が装着されている。
【0044】
車内側ウエストシール3は、ドアトリム15への取り付けに供する取付基部30と、取付基部30から上下二段にわたり互いに概ね平行に突出形成された一対の第1シールリップ31及び第2シールリップ32と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0045】
取付基部30は、ゴム材料と比べて比較的硬質な合成樹脂材料によって概ね板状に形成されていて、第1、第2シールリップ31,32とは反対側の側面であってドアトリム15と対向する内側面30aに突出形成されたクリップ部301を介してドアトリム15に取り付けられている。具体的には、取付基部30は、クリップ部301の軸部301aの先端側に概ね鉤状に設けられた係止突部301aがドアトリム15に貫通形成された図示外の係止孔の孔縁部に係止することで、ドアトリム15が取付基部30とクリップ部301の係止突部301bとに挟み込まれるようにして、ドアトリム15に取り付け固定されている。
【0046】
第1シールリップ31及び第2シールリップ32は、いずれも比較的軟質の発泡スポンジゴム系材料によって形成されていて、取付基部30の外側面30bに、それぞれ斜め上方へ向かって延びるように設けられている。また、第1シールリップ31及び第2シールリップ32は、ドアガラスDGが下降状態にある自由状態では、図3に実線で示すように、車外側ウエストシール4の第1シールリップ41及び第2シールリップ42と非接触状態で対向する。一方、ドアガラスDGが上昇状態にある撓み変形状態においては、第1シールリップ31及び第2シールリップ32は、図3にて仮想線で示すように、ドアガラスDGに押されてドアガラスDGの内側面に弾接する。
【0047】
また、取付基部30の外側面30bには、第1シールリップ31の先端部の内側面と対向する位置に、ドアガラスDGの上昇時にドアガラスDGによって車内側へと押された第1シールリップ31の先端部と弾接可能な第1補助部材33が設けられている。同様に、第2シールリップ32の先端部の内側面と対向する位置に、ドアガラスDGの上昇時にドアガラスDGによって車内側へと押された第2シールリップ32の先端部と弾接可能な第2補助部材34が設けられている。
【0048】
第1補助部材33及び第2補助部材34は、前記補助部材23と同様、いずれも同じダイラタント流体によって取付基部30の長手方向に沿って連続して設けられ、加硫接着等により取付基部30と一体に形成されている。そして、第1補助部材33及び第2補助部材34は、自由状態において横断面がほぼ矩形状となるように形成されている。なお、第1補助部材33及び第2補助部材34は、いずれも車内側ウエストシール3の仕様等(例えば第1シールリップ31及び第2シールリップ32の形状や、第1補助部材33及び第2補助部材34に求める反力特性など)に応じて任意の断面形状を採用することが可能である。
【0049】
車外側ウエストシール4は、ドアアウターパネル16への取り付けに供する取付基部40と、取付基部40から上下二段にわたって互いに概ね平行に突出形成された一対の第1シールリップ41及び第2シールリップ42と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0050】
取付基部40は、例えばEPDM等の硬質のソリッドゴム系材料により形成されていて、横断面が逆U字形状を呈し、ドアアウターパネル16の上端部を挟み込むかたちでドアアウターパネル16に装着されている。
【0051】
第1シールリップ41及び第2シールリップ42は、いずれも取付基部40を形成するソリッドゴム系材料よりも軟質の発泡スポンジゴム系材料によって押出成形されたものであり、取付基部40の内側面40bからそれぞれ斜め上方へ向かって延びるように設けられている。また、第1シールリップ41及び第2シールリップ42は、ドアガラスDGが下降した状態にある自由状態では、図3にて実線で示すように、車内側ウエストシール3の第1シールリップ31及び第2シールリップ32と非接触状態で対向する。一方、ドアガラスDGが上昇した状態にある撓み変形状態においては、第1シールリップ41及び第2シールリップ42は、図3に仮想線で示すように、ドアガラスDGに押されてドアガラスDGの外側面に弾接する。
【0052】
(本実施形態の作用効果)
従来のグラスランGRでは、例えば以下の態様によって車内側シールリップ21を補助することにより、ドアガラスDGのばたつきの抑制が図られていた。
【0053】
図15は、ドアガラスDGの振動時における従来のグラスランGRの状態を示す断面図であって、(a)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車外側に位置する状態、(b)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rのうち最も車外側に位置する状態、(c)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rの中央に位置する状態、(d)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車内側に位置する状態を示している。図16は、補助部材26を付加した従来のグラスランGRの反力特性を表したグラフを示し、点aは図15(a)の状態、点bは図15(b)の状態、点cは図15(c)の状態、点dは図15(d)の状態を示している。なお、図16に示す変動許容範囲Rは、ドアガラスDGの製造誤差や取付誤差を含めて、ドアガラスDG昇降移動時におけるドアガラスDGのばらつきを許容することが可能な範囲を示している。また、図16に示す実線L1は、補助部材26を付加した状態に係る車内側シールリップ21の反力特性を示し、仮想線L2は、補助部材26を付加しない状態に係る車内側シールリップ21の反力特性を示している。
【0054】
従来のグラスランGRでは、ドアガラスDGのばたつき抑制の一態様として、例えば図15に示すように、車内側側壁部202の内側面に、ドアガラスDGの上昇時にドアガラスDGによって車内側へ押された車内側シールリップ21の先端部内側面と弾接して車内側シールリップ21のドアガラスDGとの摺接を補助的に支持するスポンジ材料製の補助部材26が設けられていた。
【0055】
かかる構成の場合、補助部材26が付加されたことで、車内側シールリップ21がサブリップ27に当接するまでは(図16の点a~点b)、車内側シールリップ21のみの反力によって当該車内側シールリップ21の反力は緩やかに増大し、車内側シールリップ21が補助部材26に当接した後は(図16の点b~点d)、車内側シールリップ21と補助部材26の合力により車内側シールリップ21の反力Fが大きく増大することになる。このように、補助部材26が付加されたことによって、補助部材26を付加しない場合と比べて、車内側シールリップ21の反力Fの増加タイミングが早められて、ドアガラスDGが変動許容範囲R内に位置する状態からドアガラスDGのばたつきの早期の抑制を図ることが可能となる。
【0056】
しかしながら、一方で、スポンジ材料製の補助部材26が付加されたことによって、ドアガラスDGが変動許容範囲R内に位置している状態から車内側シールリップ21の反力Fが増加することになる(図16のハッチング部H参照)。このため、例えば車両やドアパネル等の寸法のばらつきに起因してドアガラスDGの車幅方向位置にばらつきが生じた際に、補助部材26の反力Fの増大によりドアガラスDGの摺動抵抗が過大となり、ドアガラスDGの昇降性が低下してしまう点で、改善の余地が残されていた。
【0057】
図17は、ドアガラスDGの振動時における従来のグラスランGRの状態を示す断面図であって、(a)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車外側に位置する状態、(b)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rの中央に位置する状態、(c)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rよりも車内側に位置する状態、(d)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車内側に位置する状態を示している。図18は、サブリップ27を付加した従来のグラスランGRの反力特性を表したグラフを示し、点aは図17(a)の状態、点bは図17(b)の状態、点cは図17(c)の状態、点dは図17(d)の状態を示している。なお、図18に示す変動許容範囲Rは、ドアガラスDGの製造誤差や取付誤差を含めて、昇降移動時におけるドアガラスDGのばらつきを許容することが可能な範囲を示している。また、図18に示す実線L1は、サブリップ27を付加した状態での車内側シールリップ21の反力特性を示し、仮想線L2は、サブリップ27を付加しない状態での車内側シールリップ21の反力特性を示している。
【0058】
また、従来のグラスランGRでは、ドアガラスDGのばたつき抑制の他の態様として、例えば図17に示すように、車内側側壁部202の内側面に、ドアガラスDGの上昇時にドアガラスDGによって車内側へ押された車内側シールリップ21の先端部内側面と弾接して車内側シールリップ21のドアガラスDGとの摺接を補助的に支持するサブリップ27が設けられていた。
【0059】
かかる構成の場合、サブリップ27が付加されたことで、車内側シールリップ21がサブリップ27に当接するまでは(図18の点a~点b)、車内側シールリップ21のみの反力Fによって当該車内側シールリップ21の反力Fは緩やかに増大し、車内側シールリップ21がサブリップ27に当接した後からサブリップ27が車内側側壁部202に当接するまでは(図18の点b~点c)、サブリップ27により車内側シールリップ21の反力Fが一段階上昇し、その後サブリップ27が車内側側壁部202に当接した後は(図18の点c~点d)、車内側シールリップ21とサブリップ27の合力によって車内側シールリップ21の反力Fがさらに一段階上昇する。このように、サブリップ27が付加されたことで、サブリップ27を付加しない場合と比べて、車内側シールリップ21の反力Fの増加タイミングが早められるため、ドアガラスDGが変動許容範囲R内に位置する状態からドアガラスDGのばたつきを早期に抑制することが可能となる。しかも、かかる構成の場合には、ドアガラスDGの反力特性が2段階にて増加することとなるため、補助部材26を付加した場合と比べて、車内側シールリップ21の反力Fの増大を抑えることが可能となる。
【0060】
しかしながら、一方で、サブリップ27が付加されたことによって、少なからずドアガラスDGが変動許容範囲R内に位置している状態から車内側シールリップ21の反力Fが増加することになる(図18のハッチング部H参照)。このため、当該態様においても、例えば車両やドアパネル等の寸法のばらつきに起因してドアガラスDGの車幅方向位置にばらつきが生じた際に、サブリップ27の反力Fの増大によってドアガラスDGの摺動抵抗が増大し、少なからずドアガラスDGの昇降性が低下してしまう点で、改善の余地が残されていた。
【0061】
図4は、ドアガラスDGの振動時における本実施形態に係るグラスランGRの状態を示す断面図であって、(a)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車外側に位置する状態、(b)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rの中央に位置する状態、(c)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rのうち最も車内側に位置する状態、(d)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車内側に位置する状態を示している。図5は、本実施形態に係るグラスランGRの反力特性を表したグラフを示し、点aは図4(a)の状態、点bは図4(b)の状態、点cは図4(c)の状態、点dは図4(d)の状態を示している。なお、図5に示す変動許容範囲Rは、ドアガラスDGの製造誤差や取付誤差を含め、昇降移動時におけるドアガラスDGのばらつきを許容することが可能な範囲を示している。また、図5に示す実線L1は、本実施形態に係る車内側シールリップ21の反力特性を示し、仮想線L2は、補助部材23を付加しない状態における車内側シールリップ21の反力特性を示している。図6は、図2に示すグラスランGRの振幅と減衰特性を表したグラフを示している。なお、図6に示す実線L1は、本実施形態に係る車内側シールリップ21の減衰特性を示し、仮想線L2は、補助部材23を付加しない状態における車内側シールリップ21の減衰特性を示している。
【0062】
図4に示すように、本実施形態に係るグラスランGRは、ダイラタント流体により形成された補助部材23によってドアガラスDGを支持している。このため、図5に示すように、車両ばらつきに起因する変動許容範囲R内では(図4の点a~点c)、補助部材23を構成するダイラタント流体が柔軟に変形する結果、ドアガラスDGの摺動抵抗を過度に増大させてしまうおそれがなくなる。これにより、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0063】
一方で、ドアガラスDGの変位量が変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては(図4の点d)、補助部材23を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることで、車内側シールリップ21の反力Fを瞬時に増大させる。これにより、図6に示すように、実線L1で示す本実施形態に係るグラスランGRは、仮想線L2で示す従来のグラスランGRと比べて、L1の振幅W1とL2の振幅W2の差分WxだけドアガラスDGの振動(振幅)を低減することができる。また、振幅W1が低減されることにより、当該振幅W1の収束時間T1についても、L1の収束時間T1とL2の収束時間T2の差分Txだけ短縮することができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るグラスランGRは、ダイラタント流体からなる補助部材23により、変動許容範囲Rでは、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保しつつ、変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、補助部材23が、車内側側壁部202の内側面に設けられていて、車内側シールリップ21が車内側へ撓み変形したときに車内側シールリップ21の先端部と当接する構成となっている。
【0066】
このため、車内側シールリップ21が車外側に位置している状態では、車内側シールリップ21が補助部材23に当接しない。換言すれば、本実施形態の場合、車内側シールリップ21が車内側へ所定量押圧されてはじめて補助部材23に当接することとなる。これにより、車内側シールリップ21の初期反力を低減することが可能となり、変動許容範囲RにおけるドアガラスDGの摺動抵抗を効果的に低減することができる。
【0067】
また、本実施形態では、車内側ウエストシール3においても、取付基部30の外側面30bに、シールリップ(第1、第2シールリップ31,32)の先端部の内側面と対向配置され、シールリップ(第1、第2シールリップ31,32)の先端部と弾接可能な補助部材(第1、第2補助部材33,34)が設けられている。
【0068】
このように、本実施形態では、前記グラスランGRと同様、車内側ウエストシール3にも、補助部材(第1、第2補助部材33,34)が配置されている。このため、ダイラタント流体からなる補助部材23により、変動許容範囲R内ではドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保しつつ、変動許容範囲Rを超えた範囲では、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0069】
しかも、本実施形態では、補助部材である第1、第2補助部材33,34が第1、第2シールリップ31,32とそれぞれ対向するように複数設けられ、第1、第2補助部材33,34によって各シールリップ31,32の撓み変形時の反力Fが調整可能となっている。このため、各補助部材33,34により、ドアガラスDGの摺動抵抗を大きく増大させることなく、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。一方、ドアガラスDGの変位量が車両ばらつきに起因する範囲である変動許容範囲Rを超えるような入力に対しては、各補助部材33,34を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなることで、各補助部材33,34の反力Fを瞬時に増大させて、ドアガラスDGの振動(振幅)を効果的に低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0070】
(変形例)
図7図9は、本発明に係るグラスランの第1実施形態の変形例を示している。なお、本変形例は、主として、補助部材23の配置を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。したがって、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、具体的な説明を省略する。
【0071】
(グラスランの構成)
図7は、本発明の第1実施形態の変形例に係るグラスラン2の縦辺部121の横断面であって、図1のA-A線に沿って切断した断面図を示している。
【0072】
図7に示すように、本変形例に係るグラスランGRでは、ダイラタント流体からなる横断面ほぼ矩形状の補助部材23が、車内側側壁部202の内側面において、車内側シールリップ21が車内側へ撓み変形したときに車内側シールリップ21の根元部と当接可能な位置に設けられている。なお、補助部材23の具体的な形態については、前記第1実施形態と同様に、グラスラン2の仕様等(例えば車内側シールリップ21の形状や、補助部材23に求める反力特性など)に応じて任意の断面形状を採用することが可能であることは勿論、押出成形により車内側側壁部202と一体に形成されてもよく、また、加硫接着等の固定手段により車内側側壁部202に固定されてもよい。
【0073】
(本変形の作用効果)
図8は、ドアガラスDGの振動時における本変形例に係るグラスランGRの状態を示す断面図であって、(a)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車外側に位置する状態、(b)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rの中央に位置する状態、(c)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rのうち最も車内側に位置する状態、(d)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車内側に位置する状態を示している。図9は、本変形例に係るグラスランGRの反力特性を表したグラフを示し、点aは図8(a)の状態、点bは図8(b)の状態、点cは図8(c)の状態、点dは図8(d)の状態を示している。なお、図9に示す変動許容範囲Rは、ドアガラスDGの製造誤差や取付誤差を含め、昇降移動時におけるドアガラスDGのばらつきを許容することが可能な範囲を示している。また、図9に示す実線L1は、本実施形態に係る車内側シールリップ21の反力特性を示し、仮想線L2は、補助部材23を付加しない状態における車内側シールリップ21の反力特性を示している。
【0074】
図8に示すように、本実施形態に係るグラスランGRは、ダイラタント流体により形成された補助部材23によってドアガラスDGを支持している。このため、図9に示すように、車両ばらつきに起因する変動許容範囲R内では(図8の点a~点c)、補助部材23を構成するダイラタント流体が柔軟に変形する結果、ドアガラスDGの摺動抵抗を過度に増大させてしまうおそれがなくなる。これにより、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。一方で、ドアガラスDGの変位量が変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては(図8の点d)、補助部材23を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなり、車内側シールリップ21の反力Fを瞬時に増大させることで、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減することができる。
【0075】
以上のように、本変形例に係るグラスランGRによっても、前記第1実施形態と同様、ダイラタント流体からなる補助部材23により、変動許容範囲Rでは、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保しつつ、変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0076】
さらに、本変形例では、図8に示すように、補助部材23が、車内側側壁部202の内側面に設けられていて、車内側シールリップ21が車内側へ撓み変形したときに車内側シールリップ21の根元部と当接する構成となっている。
【0077】
このため、ドアガラスDGが最も車外側に位置している状態で車内側シールリップ21が補助部材23に当接することとなり、車内側シールリップ21の初期反力Fsを高めることが可能となる。一方で、ドアガラスDGの昇降移動時の小さな(緩やかな)入力に対しては補助部材23を構成するダイラタント流体が柔軟に変形することで、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。これにより、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を犠牲にすることなく、ドアガラスDGの振動時の初動を抑制でき、ドアガラスDGの振動(振幅)を効果的に低減することができる。
【0078】
[第2実施形態]
(グラスランの構成)
図10図13は、本発明に係るグラスランの第2実施形態を示している。なお、本実施形態は、主として、サブリップ27を追加し、当該サブリップ27に補助部材23を配置したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。したがって、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、具体的な説明を省略する。
【0079】
図10は、本発明の第2実施形態に係るグラスラン2の縦辺部121の横断面であって、図1のA-A線に沿って切断した断面図を示している。
【0080】
図10に示すように、本実施形態に係るグラスランGRでは、車内側側壁部202の内側面に、ドアガラスDGの上昇時にドアガラスDGによって車内側へ押された車内側シールリップ21の先端部内側面と弾接することにより車内側シールリップ21のドアガラスDGとの摺接を補助的に支持するサブリップ27が設けられている。
【0081】
また、本実施形態に係るグラスランGRでは、サブリップ27の先端部外側面に、前記第1実施形態と同様のダイラタント流体からなる横断面がほぼ矩形状の補助部材23が設けられている。なお、本実施形態においても、補助部材23の具体的な形態については、前記第1実施形態と同様に、グラスラン2の仕様等(例えば車内側シールリップ21の形状や、補助部材23に求める反力特性など)に応じて任意の断面形状を採用することが可能であることは勿論、押出成形によりサブリップ27と一体に形成されてもよく、また、加硫接着等の固定手段によりサブリップ27に固定されてもよい。
【0082】
(ウエストシールの構成)
図11は、本発明に係るウエストシールの第2実施形態を示している。なお、本実施形態は、主として、取付基部30の形態を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。したがって、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、具体的な説明を省略する。
【0083】
図11は、本発明に係るウエストシール(車内側ウエストシール3)の第2実施形態を示す断面図であって、図1のB-B線に沿って切断した断面図を示している。
【0084】
図11に示すように、本実施形態では、車内側ウエストシール3において、取付基部30が、例えばEPDM等の硬質のソリッドゴム系材料からなり、横断面が逆U字形状を呈し、ドアインナーパネル14の上端部を挟み込むようにドアインナーパネル14に装着されている。
【0085】
また、本実施形態では、取付基部30の車外側に、長手方向に沿って中空状に延びるシール基部302が設けられている。そして、このシール基部302の車外側の側面には、上下二段にわたり互いに概ね平行に突出形成された一対の第1シールリップ31及び第2シールリップ32が設けられていて、これらがシール基部302と一体に形成されている。なお、第1シールリップ31は、シール基部302の内側面の上端部に設けられていて、第2シールリップ32は、シール基部302の内側面の下端部に設けられている。
【0086】
また、本実施形態では、シール基部302の上端部の車外側端部に、上方に延出して先端部がドアトリム15と弾接可能なサブリップ35が、シール基部302と一体に形成されている。すなわち、当該サブリップ35がドアトリム15と弾接することにより、ドアインナーパネル14とドアトリム15との間がシールされている。
【0087】
また、本実施形態では、シール基部302の車外側において、前記第1実施形態に係る第1シールリップ31と弾接可能な第1補助部材33が廃止されていて、第2シールリップ32と弾接可能な第2補助部材34のみが設けられている。なお、本実施形態においても、第2補助部材34の具体的な形態については、前記第1実施形態と同様、グラスラン2の仕様等(例えば車内側シールリップ21の形状や、第2補助部材33に求める反力特性など)に応じて任意の断面形状を採用することが可能であることは勿論、押出成形によってシール基部302と一体に形成されてもよく、また、加硫接着等の固定手段によってシール基部302に固定されてもよい。
【0088】
一方、第1シールリップ31については、第1補助部材33が廃止された代わりに、ドアトリム15の弾接によって車外側へ押し出されたサブリップ25の中間部と当接可能に構成されている。すなわち、第1シールリップ31は、ドアガラスDGの振動時など、ドアガラスDGが車内側へ大きく変位して第1シールリップ31が大きく撓み変形した際には、第1シールリップ31とサブリップ35とが協働してドアガラスDGを支持することで、ドアガラスDGのがたつきを抑制する。換言すれば、ドアガラスDGの振動抑制にあたり、車内側ウエストシール3においては、複数のシールリップ31,32のうち一方をサブリップ35で支持し、他方を補助部材(例えば第2補助部材34)で支持する構成としてもよい。
【0089】
(本実施形態の作用効果)
図12は、ドアガラスDGの振動時における本実施形態に係るグラスランGRの状態を示す断面図であって、(a)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車外側に位置する状態、(b)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rの中央に位置する状態、(c)は車幅方向においてドアガラスDGが変動許容範囲Rのうち最も車内側に位置する状態、(d)は車幅方向においてドアガラスDGが最も車内側に位置する状態を示している。図13は、本実施形態に係るグラスランGRの反力特性を表したグラフを示し、点aは図12(a)の状態、点bは図12(b)の状態、点cは図12(c)の状態、点dは図12(d)の状態を示している。なお、図13に示す変動許容範囲Rは、ドアガラスDGの製造誤差や取付誤差を含め、昇降移動時におけるドアガラスDGのばらつきを許容することが可能な範囲を示している。また、図13に示す実線L1は、本実施形態に係る車内側シールリップ21の反力特性を示し、仮想線L2は、補助部材23を付加しない状態における車内側シールリップ21の反力特性を示している。図14は、図10に示すグラスランGRの振幅と減衰特性を表したグラフを示している。なお、図14に示す実線L1は、本実施形態に係る車内側シールリップ21の減衰特性を示し、仮想線L2は、補助部材23を付加しない状態における車内側シールリップ21の減衰特性を示している。
【0090】
図12に示すように、本実施形態に係るグラスランGRは、サブリップ27と一体に設けられた前記ダイラタント流体からなる補助部材23によってドアガラスDGを支持している。このため、図13に示すように、車両ばらつきに起因する変動許容範囲R内では(図13の点a~点c)、補助部材23を構成するダイラタント流体が柔軟に変形する結果、ドアガラスDGの摺動抵抗を過度に増大させてしまうおそれがなくなる。これにより、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0091】
一方で、ドアガラスDGの変位量が変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては(図13の点d)、サブリップ27の撓み変形により車内側シールリップ21の反力Fが増大し(図13の点c~点e)、その後サブリップ27が車内側側壁部202に当接した後は、補助部材23を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなり、車内側シールリップ21の反力Fを瞬時に大幅に増大させる。これにより、図14に示すように、実線L1で示す本実施形態に係るグラスランGRは、仮想線L2で示す従来のグラスランGRと比べて、L1の振幅W1とL2の振幅W2の差分Wx´だけドアガラスDGの振動(振幅)を低減することができる。また、振幅W1が低減されることにより、当該振幅W1の収束時間T1についても、L1の収束時間T1とL2の収束時間T2の差分Tx´だけ短縮することができる。特に、本実施形態では、補助部材23がサブリップ27に設けられていることで、補助部材23の硬化現象にサブリップ27の反力Fが加わり、前記第1実施形態と比べて、ドアガラスDGの減衰性を高めることができる(Tx>Tx´)。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るグラスランGRによっても、ダイラタント流体からなる補助部材23によって、変動許容範囲Rでは、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保しつつ、変動許容範囲Rを超えるような大きな(早い)入力に対しては、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0093】
さらに、本実施形態では、車内側側壁部202の内側面から基部20の内側に向かって延設され、車内側シールリップ21が車内側へ撓み変形したときに車内側シールリップ21と弾性的に当接するサブリップ27をさらに有し、補助部材23は、サブリップ27の車内側シールリップ21と対向する面に設けられ、車内側シールリップ21が車内側へ撓み変形したときに車内側シールリップ21と当接する構成となっている。
【0094】
このように、補助部材23をサブリップ27の車内側シールリップ21との対向面に配置してサブリップ27と車内側シールリップ21との間に配置することで、サブリップ27の反力変化を遅らせることが可能となる。これにより、変動許容範囲Rにてサブリップ27の反力Fを大きく増大させてしまうおそれがなく、ドアガラスDGの円滑な昇降移動を確保することができる。
【0095】
一方、車内側シールリップ21に対して変動許容範囲Rを超えるほど大きな入力が発生した場合には、補助部材23を構成するダイラタント流体が瞬間的に硬くなり、当該補助部材23を介して車内側シールリップ21の撓み変形がサブリップ27へ直接伝わることで、サブリップ27の反力Fを瞬時に増大させて、サブリップ27の反力変化を早めることが可能となる。これにより、ドアガラスDGの振動(振幅)を低減し、かつ速やかに減衰させることができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、基部20にサブリップ27が設けられているため、車内側シールリップ21とサブリップ27によって反力Fを発生させることができる。これにより、サブリップ27の撓み変形分だけドアガラスDGの振動(振幅)は増大する可能性がある一方、車内側シールリップ21に加えてサブリップ27の反力Fが作用することで、ドアガラスDGの振動を、より速やかに減衰させ、収束させることができる。
【0097】
本発明は、前記実施形態において開示された構成に限定されるものではなく、グラスランGRの基部20、車内側シールリップ21及び車外側シールリップ22の材質及び形状、車内側ウエストシール3の取付基部30及び第1、第2シールリップ31,32の材質及び形状、さらには車外側ウエストシール4の取付基部40及び第1、第2シールリップ41,42の材質及び形状など、本発明の技術的特徴とは直接関係ない細部の具体的な態様については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適用対象である車体の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…ドア
14…車内側ドアパネル
15…ドアトリム
16…車外側ドアパネル
2…グラスラン
20…基部
201…基底部
202…車内側側壁部
203…車外側側壁部
21…車内側シールリップ
22…車外側シールリップ
23…補助部材
27…サブリップ
3…車内側ウエストシール(ウエストシール)
30…取付基部
31…第1シールリップ
32…第2シールリップ
33…第1補助部材
34…第2補助部材
35…サブリップ
4…車外側ウエストシール
DG…ドアガラス
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