(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142443
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B5/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054582
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】曹 蓮
(72)【発明者】
【氏名】上坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柏本 幸俊
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悠大
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PR01
4C038PS07
(57)【要約】
【課題】ユーザの認知特性を比較的高い精度で判定する判定装置等を提供する。
【解決手段】ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示するテスト画面表示手段と、テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する注視軌跡取得手段と、注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する注視時間検出手段と、主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する顕在的認知特性判定手段とを有する。顕在的認知特性判定手段は、顕在的認知特性における「直感的」又は「熟慮的」を判定するものであり、主注視時間と副注視時間との差が、所定閾値以上となる場合、「直感的」と判定し、所定閾値よりも小さい場合、「熟慮的」と判定する。そして、ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示するテスト画面表示手段と、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する注視軌跡取得手段と、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する注視時間検出手段と、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する顕在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
注視時間検出手段は、テスト画像における1つ以上の任意の座標点を設定し、当該座標点から所定距離までの領域を主領域とし、当該主領域以外を副領域とする
を有することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
顕在的認知特性判定手段は、
顕在的認知特性における「直感的」又は「熟慮的」を判定するものであり、
主注視時間と副注視時間との差が、所定閾値以上となる場合、「直感的」と判定し、所定閾値よりも小さい場合、「熟慮的」と判定し、
ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
顕在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とし、顕在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項3に記載の判定装置。
【請求項5】
顕在的認知特性判定手段は、
顕在的認知特性における「直感的」から「熟慮的」までの特性度を判定するものであり、
主注視時間と副注視時間との差が、大きくなるほど、「直感的」が強い特性度となり、小さくなるほど、「熟慮的」が強い特性度となり、
ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項6】
顕在的認知特性の特性度について「直感的」が強いほど、意思決定特性は「リスク選好」が強い特性度とし、顕在的認知特性の特性度について「熟慮的」が強いほど、意思決定特性は「リスク回避」が強い特性度とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項5に記載の判定装置。
【請求項7】
通常状況に対して、ユーザに行動変容のための介入情報を送信するために、
顕在的認知特性に応じて、異なる介入情報を蓄積した介入情報蓄積手段と、
介入情報蓄積手段を用いて、ユーザ毎に、異なる介入情報を送信する介入情報送信手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項8】
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項9】
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項10】
顕在的認知特性に、潜在的認知特性を考慮して、意思決定特性における「リスク選好」から「リスク回避」までの特性度を推定する意思決定特性判定手段を
更に有する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の判定装置。
【請求項11】
意思決定特性判定手段は、顕在的認知特性に、潜在的認知特性を重み付けて、意思決定特性の特性度を推定する
ことを特徴とする請求項10に記載の判定装置。
【請求項12】
ユーザ毎に、属性として、意思決定特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の判定装置。
【請求項13】
不確実状況に対して、ユーザに行動変容のための介入情報を送信するために、
意思決定特性に応じて、異なる介入情報を蓄積した介入情報蓄積手段と、
介入情報蓄積手段を用いて、ユーザ毎に、異なる介入情報を送信する介入情報送信手段と
を更に有することを特徴とする請求項8又は9に記載の判定装置。
【請求項14】
任意の第1の用語を、良的感情用語のアイコンと、悪的感情用語のアイコンとのいずれかに分類させる第1の予備操作画面を表示し、分類された良的感情用語又は悪的感情用語として用語蓄積手段に蓄積する第1の予備操作画面表示手段と、
任意の第2の用語を、熟慮的用語のアイコンと、直感的用語のアイコンとのいずれかに分類させる第2の予備操作画面を表示し、分類された熟慮的感情用語又は直感的感情用語として用語蓄積手段に蓄積する第2の予備操作画面表示手段と
を更に有することを特徴とする請求項8又は9に記載の判定装置。
【請求項15】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする判定装置。
【請求項16】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする判定装置。
【請求項17】
潜在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とし、潜在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の判定装置。
【請求項18】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示するテスト画面表示手段と、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する注視軌跡取得手段と、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する注視時間検出手段と、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する顕在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項19】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示する第1のステップと、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する第2のステップと、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する第3のステップと、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする判定方法。
【請求項22】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積部を有し、
用語蓄積部を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択し、
用語蓄積部に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1のステップと、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2のステップと、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する第3のステップと、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする判定方法。
【請求項23】
ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積部を有し、
用語蓄積部を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択し、
用語蓄積部に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1のステップと、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2のステップと、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する第3のステップと、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの認知特性を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人の意思決定特性は、大きく「リスク選好」又は「リスク回避」に分けられる。「リスク選好」な人は、例えば災害発生時には防災用品が必要となることを理解しているにも関わらず、その準備をしなかったり、避難勧告のニュースを見ても、「自分は大丈夫だろう」と避難行動をとらなかったりする。
【0003】
人の意思決定特性として、「リスク回避」の行動を選択する方が良いにもかかわらず、「リスク選好」の行動を選択してしまうことも多い。このような非合理的な意思決定に対する有力な理論として、「二重過程理論」がある。
具体的に、人は、迅速で自動的且つ「直感的」な情報処理能力と、時間を要するが意識的で且つ「熟慮的」な情報処理能力との両方を持つと言われている(例えば非特許文献1参照)。
このような人の認知特性は、人の意思決定特性に影響するといわれている(例えば非特許文献1及び2参照)。認知特性が「熟慮的」な人ほど、多様な観点から判断して、リスク回避の行動を選択しやすい。一方で、認知特性が「直感的」な人ほど、深く考えずに偏った情報に基づいて判断するために、リスク選好の行動を選択しやすい。
【0004】
従来、顕在的認知特性を判定するために、数問の計算問題を回答させる検査方法がある(例えば非特許文献2及び3参照)。各問題には、直感的な回答(典型的な誤答)と熟慮的な回答(正答)が設けられ、正答の場合に1問1点としてカウントされる。合計得点が高い人ほど「熟慮的」と判定され、低い人ほど「直感的」と判定される。但し、全ての問題を1点として採点するには、全ての問題の間に等価性が仮定されていることが必要となる。
【0005】
また、人の顕在的認知特性に対して、潜在的認知特性がある。潜在的認知特性は、例えばIAT(Implicit Association Test:潜在連合テスト)によって検査される。これは、異なる概念を表す言葉の分類作業を通して、概念と概念の結びつきの強さを測定する。素早く且つ正しく分類できるほど、「分類する概念」と「分類される概念」との間に、潜在的な関連性が強いといえる。IATによれば、ユーザに、パーソナルコンピュータのキーボードを押下させる操作方法(例えば非特許文献5参照)や、指で選択肢を押して移動させる操作方法(例えば特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kahneman, D. (2003). A perspective on judgment and choice: mapping bounded rationality. American psychologist, 58(9), 697.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL: https://psycnet.apa.org/record/2003-08746-001>
【非特許文献2】Frederick, S. (2005). Cognitive reflection and decision making. Journal of Economic perspectives, 19(4), 25-42.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL: https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/089533005775196732>
【非特許文献3】原田佑規, 原田悦子, ハラダエツコ, & 須藤智. (2018). 認知的熟慮性検査 (CRT) における項目間等価性および呈示順序・教示効果の検証: 大学生集団実験による検討. 筑波大学心理学研究, 56, 27-34.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL:https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I029333276-00>
【非特許文献4】Gibson, B. (2008). Can evaluative conditioning change attitudes toward mature brands? New evidence from the Implicit Association Test. Journal of Consumer Research, 35(1), 178-188.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL: https://www.researchgate.net/publication/23547436_Can_Evaluative_Conditioning_Change_Attitudes_Toward_Mature_Brands_New_Evidence_from_the_Implicit_Association_Test>
【非特許文献5】森尾博昭. (2007). 潜在的連合テスト (Implicit Association Test) の可能性. 教育テスト研究センター 第 4 回研究会報告書, 1-13.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL: https://www.cret.or.jp/files/29801c5f8e57f38971ca33db8ebfde0a.pdf>
【非特許文献6】Damiano, C., & Walther, D. B. (2019). Distinct roles of eye movements during memory encoding and retrieval. Cognition, 184, 119-129.、[online]、[令和5年3月25日検索]、インターネット<URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30594878/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献2及び3によれば、計算問題毎に、正答率が高かったり低くかったりする場合があり、等価性について課題があった。また、計算問題に対する好き嫌いやスキル(得意・苦手)、計算ミスなどの影響から、認知特性の推定精度の低さも課題となっていた。更に、その計算問題を解けるスキルを持つ一定年齢以上の対象者しか測定できないために、測定対象者を限定してしまうとする課題もあった。
【0009】
非特許文献5及び特許文献1によれば、潜在的認知特性の測定方法としての指の操作は、人の顕在的な意識によって比較的コントロールされやすいという課題もあった。即ち、人の潜在的認知特性を計測しようとしているにも関わらず、人の顕在的認知特性が含まれやすくなる。
【0010】
人の意思決定には、人の顕在的認知特性と潜在的認知特性の両方を考慮することが必要であると提案されている(例えば非特許文献4参照)。
しかしながら、非特許文献2及び3の場合、顕在的認知特性の判定精度が低く、非特許文献5及び特許文献1の場合、潜在的認知特性に顕在的認知特性が含まれてしまっている。結果的に、人の意思決定特性をできる限り正確に判定することは難しくなっている。
【0011】
また、前述した従来技術における意思決定特性については、通常状況についてしか検討されておらず、不確実状況については検討されていない。
例えば、避難勧告が発出されている際に、ユーザは、時間的制限や情報の欠如などによって、避難を判断する意思決定のための認知負荷が高くなってしまう。このように、認知負荷が高くなるような不確実状況の意思決定は、通常状況における意思決定とは異なる場合がある(例えば非特許文献4参照)。
【0012】
これに対し、本願の発明者らは、ユーザが通常状況又は不確実状況にあっても、行動変容のための適切な介入情報を提供することができるサービスを想定している。このとき、ユーザの意思決定特性を判定することができれば、ユーザ毎に、意思決定特性に応じて、行動変容に適切な介入情報を提供することできる、と考えた。このような介入情報の提供は、将来的なリスクにも備えることができる。
【0013】
そこで、本発明によれば、ユーザの認知特性を比較的高い精度で判定する判定装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示するテスト画面表示手段と、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する注視軌跡取得手段と、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する注視時間検出手段と、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する顕在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
注視時間検出手段は、テスト画像における1つ以上の任意の座標点を設定し、当該座標点から所定距離までの領域を主領域とし、当該主領域以外を副領域とする
を有することも好ましい。
【0016】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
顕在的認知特性判定手段は、
顕在的認知特性における「直感的」又は「熟慮的」を判定するものであり、
主注視時間と副注視時間との差が、所定閾値以上となる場合、「直感的」と判定し、所定閾値よりも小さい場合、「熟慮的」と判定し、
ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことも好ましい。
【0017】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
顕在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とし、顕在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことも好ましい。
【0018】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
顕在的認知特性判定手段は、
顕在的認知特性における「直感的」から「熟慮的」までの特性度を判定するものであり、
主注視時間と副注視時間との差が、大きくなるほど、「直感的」が強い特性度となり、小さくなるほど、「熟慮的」が強い特性度となり、
ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことも好ましい。
【0019】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
顕在的認知特性の特性度について「直感的」が強いほど、意思決定特性は「リスク選好」が強い特性度とし、顕在的認知特性の特性度について「熟慮的」が強いほど、意思決定特性は「リスク回避」が強い特性度とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことも好ましい。
【0020】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
通常状況に対して、ユーザに行動変容のための介入情報を送信するために、
顕在的認知特性に応じて、異なる介入情報を蓄積した介入情報蓄積手段と、
介入情報蓄積手段を用いて、ユーザ毎に、異なる介入情報を送信する介入情報送信手段と
を更に有することも好ましい。
【0021】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することも好ましい。
【0022】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することも好ましい。
【0023】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
顕在的認知特性に、潜在的認知特性を考慮して、意思決定特性における「リスク選好」から「リスク回避」までの特性度を推定する意思決定特性判定手段を
更に有する
ことも好ましい。
【0024】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
意思決定特性判定手段は、顕在的認知特性に、潜在的認知特性を重み付けて、意思決定特性の特性度を推定する
ことも好ましい。
【0025】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
ユーザ毎に、属性として、意思決定特性を蓄積するユーザ属性蓄積手段を更に有する
ことも好ましい。
【0026】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
不確実状況に対して、ユーザに行動変容のための介入情報を送信するために、
意思決定特性に応じて、異なる介入情報を蓄積した介入情報蓄積手段と、
介入情報蓄積手段を用いて、ユーザ毎に、異なる介入情報を送信する介入情報送信手段と
を更に有することも好ましい。
【0027】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、
任意の第1の用語を、良的感情用語のアイコンと、悪的感情用語のアイコンとのいずれかに分類させる第1の予備操作画面を表示し、分類された良的感情用語又は悪的感情用語として用語蓄積手段に蓄積する第1の予備操作画面表示手段と、
任意の第2の用語を、熟慮的用語のアイコンと、直感的用語のアイコンとのいずれかに分類させる第2の予備操作画面を表示し、分類された熟慮的感情用語又は直感的感情用語として用語蓄積手段に蓄積する第2の予備操作画面表示手段と
を更に有することも好ましい。
【0028】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する判定装置であって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
を有することを特徴とする。
【0030】
本発明の判定装置における他の実施形態によれば、潜在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とし、潜在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする意思決定特性判定手段を更に有する
ことも好ましい。
【0031】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示するテスト画面表示手段と、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する注視軌跡取得手段と、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する注視時間検出手段と、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する顕在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積手段と、
用語蓄積手段を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択する用語選択手段と、
用語蓄積手段に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2の操作画面表示手段と、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する注視距離時間算出手段と、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する潜在的認知特性判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
主領域とそれ以外の副領域とを含むテスト画像を、ユーザに表示する第1のステップと、
テスト画像に対するユーザの注視軌跡を取得する第2のステップと、
注視軌跡から、主領域を注視する主注視時間と、副領域を注視する副注視時間とを検出する第3のステップと、
主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積部を有し、
用語蓄積部を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択し、
用語蓄積部に含まれる任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1のステップと、
当該任意の熟慮的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2のステップと、
当該任意の熟慮的用語について、第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第1の注視距離時間と、第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第4の注視距離時間とを算出する第3のステップと、
第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、ユーザの視線の動きから認知特性を判定する装置の判定方法であって、
装置は、
第1種概念として複数の良的感情用語及び悪的感情用語と、第2種概念として複数の直感的用語及び熟慮的用語とを蓄積した用語蓄積部を有し、
用語蓄積部を用いて、第1種概念として良的感情用語及び悪的感情用語を選択し、第2種概念として直感的用語及び熟慮的用語を選択し、
用語蓄積部に含まれる任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ熟慮的を表す第1のアイコン、又は、悪的且つ直感的を表す第2のアイコンのいずれかに分類させる第1の操作画面を表示する第1のステップと、
当該任意の直感的用語を、ユーザの注視軌跡によって、良的且つ直感的を表す第3のアイコン、又は、悪的且つ熟慮的を表す第4のアイコンのいずれかに分類させる第2の操作画面を表示する第2のステップと、
当該任意の直感的用語について、第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第2の注視距離時間と、第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した第3の注視距離時間とを算出する第3のステップと、
第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する第4のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明の判定装置、プログラム及び方法によれば、ユーザの認知特性を比較的高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】本発明における顕在的認知特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【
図3】顕在的認知特性を判定するためのテスト画像の例である。
【
図4】テスト画像の主領域及び副領域を表す例である。
【
図5】本発明における意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【
図6】本発明の判定装置における第1の予備操作画面表示部及び第2の予備操作画面表示部の表示画面を表す例である。
【
図7】本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第1の例である。
【
図8】本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第2の例である。
【
図9】本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第3の例である。
【
図10】本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第4の例である。
【
図11】本発明の判定装置における意思決定特性判定部の判定方式の説明図である。
【
図12】本発明における潜在的認知特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【
図13】本発明における顕在的認知特性から意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【
図14】本発明における潜在的認知特性から意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0040】
【0041】
図1によれば、判定装置1は、ネットワークを介して、ディスプレイ装置2と、アイトラッキング(eye tracking)装置3と、携帯端末4と通信することができる。
【0042】
[判定装置1]
判定装置1は、ユーザの「認知特性」を判定するものである。
判定装置1は、ユーザが視認するディスプレイ装置2へテスト画像を送信し、アイトラッキング装置3からユーザの「注視軌跡」を受信する。また、ユーザが所持する携帯端末4へ、行動変容を期待する「介入情報」を送信する。
尚、判定装置1は、サーバとしてネットワークに接続されているが、勿論、1台以上のコンピュータで構成されていてもよい。
【0043】
[ディスプレイ装置2]
ディスプレイ装置2は、判定装置1から受信した「テスト画像」を、ユーザに表示する。
【0044】
[アイトラッキング装置3]
アイトラッキング装置3は、ユーザの眼球の動きを計測して「注視軌跡」を取得する。注視軌跡とは、時刻毎に、ユーザが注視する座標点を対応付けたものであり、時間経過に伴う注視座標点の遷移(座標点の時間的変位)を表す。尚、アイトラッキングの技術として、赤外線を目に向けて放出し、その際の角膜反射の光と瞳孔の位置関係から、視線の動きを測定する方式がある。勿論、アイトラッキング装置3は、ディスプレイ装置2と一体的なシステムとして構成されたものであってもよい。
アイトラッキング装置3は、取得した注視軌跡を、判定装置1へ送信する。判定装置1は、その注視軌跡によって、そのユーザの認知特性を判定する。
【0045】
[携帯端末4]
携帯端末4は、ユーザに常時所持されている例えばスマートフォンである。携帯端末4は、様々な状況下で、判定装置1から「介入情報」を受信し、その介入情報をユーザに提示する。介入情報は、例えばユーザに行動変容を促すメッセージである。ユーザには、通常状況や不確実状況のような異なる状況に応じて、異なる介入情報が提示される。
【0046】
図2は、本発明における顕在的認知特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【0047】
人の認知特性として、「直感的」又は「熟慮的」に分類できる「顕在的認知特性」がある。本発明における顕在的認知特性は、ユーザにとって「通常状況」にあって、認知負荷が比較的低い状態における認知特性を考慮する。
【0048】
図2によれば、判定装置1は、通常状況にある顕在的認知特性を判定することができる。ここで、本発明の特徴の1つに、顕在的認知特性を判定するために、ユーザの注視軌跡という生理的指標を用いている点にある。
生理的指標は、人の指先の動きのような身体的指標と比較して、ユーザの恣意的なコントロールが難しいものである。即ち、人の本音(人のありのままの状態)を、できる限り正確に判定することができる、と考えられている。
【0049】
図2によれば、判定装置1は、ユーザ属性蓄積部101と、介入情報蓄積部102と、テスト画像表示部11と、注視軌跡取得部12と、注視時間検出部13と、顕在的認知特性判定部141と、介入情報送信部15とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、認知特性の判定方法としても理解できる。
【0050】
[テスト画像表示部11]
テスト画像表示部11は、「主領域」とそれ以外の「副領域」とを含むテスト画像を、ユーザに表示するためのものである。
図1及び
図2によれば、判定装置1のテスト画像表示部11は、ユーザが視認するディスプレイ装置2へ、そのテスト画像を送信する。勿論、テスト画像表示部11は、判定装置1と一体的に搭載されたディスプレイに、そのテスト画像を表示するものであってもよい。
【0051】
図3は、顕在的認知特性を判定するためのテスト画像の例である。
【0052】
図3によれば、テスト画像は、注目すべき物体の外縁(エッジ)の内側領域を「主領域」とし、それ以外を「副領域」としたものである。テスト画像は、例えば3秒程度の比較的短い時間だけ、ディスプレイに表示される。また、テスト画像毎に、ユーザに対して課題が提示される。
図3(a)のテスト画像には、5人の顔の表情が映るテスト画像が表示されている。また、課題として「真ん中の人はどのような気持ちですか?」と提示されている。このテスト画像によれば、主領域は、真ん中の人が映る領域であり、副領域は、それ以外となる。ここでは、ユーザには、真ん中の人の気持ちを想像してもらう。
【0053】
図3(b)のテスト画像には、水槽の複数の魚が映るテスト画像が表示されている。また、課題として「人に伝えられるように、絵を覚えてください」と提示されている。このテスト画像によれば、主領域は、魚が映る領域であり、副領域は、それ以外となる。ここでは、ユーザには、画像全体を覚えてもらう。
【0054】
[注視軌跡取得部12]
注視軌跡取得部12は、テスト画像に対するユーザの「注視軌跡」を取得する。判定装置1は、アイトラッキング装置3から、注視軌跡を受信する。
図3によれば、ユーザの視線が比較的長く留まった領域には、その時間に応じた大きさの円状ノードで表現されている。また、円ノードの間の視線の移動がリンクで表現されている。
【0055】
図3(a)によれば、ユーザは、真ん中の人の顔と、その周辺の他の人の顔とを見比べるように、視線を動かしている。
また、
図3(b)によれば、ユーザは、複数の魚と、その周辺の藻とを見比べるように、視線を動かしている。
【0056】
図4は、テスト画像の主領域及び副領域を表す例である。
【0057】
図4によれば、テスト画像における1つ以上の任意の(中心)座標点を設定し、その座標点から所定距離(例えば半径)までの領域を「主領域」とし、それ以外を「副領域」とするものである。勿論、半径にかかわらず、2つの任意の座標点を決定し、その2つの座標点を結ぶ線を対角線とした矩形領域を主領域とし、それ以外を副領域としたものであってもよい。
図4によれば、
図3と異なって、テスト画像の中で、注目すべき物体の外縁を特定する必要がなく、中心座標点のみを設定すればよい。中心座標点からの半径となる所定距離のみで、主領域と副領域とを区分することができる。
【0058】
[注視時間検出部13]
注視時間検出部13は、注視軌跡から、主領域を注視する「主注視時間」と、副領域を注視する「副注視時間」とを検出する。検出した主注視時間及び副注視時間は、顕在的認知特性判定部141へ出力される。
【0059】
[顕在的認知特性判定部141]
顕在的認知特性判定部141は、主注視時間と副注視時間とを比較して、顕在的認知特性を判定する。顕在的認知特性としては、「直感的」又は「熟慮的」を判定する。
【0060】
図2によれば、2つの判定方式について記載されている。いずれの判定方式も、主注視時間と副注視時間との差が大きくなるほど「直感的」と判定し、逆に、その差が小さくなるほど「熟慮的」と判定する。
<第1の判定方式>
顕在的認知特性を、直感的と熟慮的との2値で表す。主注視時間と副注視時間との差(絶対値)と所定閾値とを比較して、以下のように判定する。
主注視時間と副注視時間との差(絶対値)≧所定閾値 :「直感的」
主注視時間と副注視時間との差(絶対値)<所定閾値 :「熟慮的」
【0061】
<第2の判定方式>
顕在的認知特性を、直感的と熟慮的との間の特性度として表す。主注視時間と副注視時間との差が大きくなるほど「直感的」が強い特性度とし、逆に小さくなるほど「熟慮的」が強い特性度とする。
主注視時間が副注視時間よりかなり長い :「直感的」
主注視時間が副注視時間より比較的長い :「やや直感的」
主注視時間が副注視時間より少しだけ長い:「やや熟慮的」
主注視時間が副注視時間とほぼ同じ :「熟慮的」
主注視時間が副注視時間より少しだけ短い:「やや熟慮的」
主注視時間が副注視時間より比較的短い :「やや直感的」
主注視時間が副注視時間よりかなり短い :「直感的」
【0062】
[ユーザ属性蓄積部101]
ユーザ属性蓄積部101は、顕在的認知特性判定部141から、ユーザの顕在的認知特性を入力する。そして、ユーザ属性蓄積部101は、ユーザ毎に、属性として、顕在的認知特性を蓄積する。
【0063】
[介入情報蓄積部102]
介入情報蓄積部102は、介入種別毎に、各顕在的認知特性に応じた介入情報を蓄積する。ここでは、介入情報とは、通常状況にあるユーザに対して、行動変容を促すメッセージであってもよい。
【0064】
[介入情報送信部15]
介入情報送信部15は、介入情報蓄積部102を用いて、ユーザ毎に、顕在的認知特性を参照する。そして、介入情報送信部15は、ユーザ毎に、通常状況に対して、そのユーザの顕在的認知特性に応じた行動変容のための介入情報を送信する。
【0065】
図5は、本発明における意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【0066】
前述した
図2によれば、ユーザにとって通常状況にあって、認知負荷が低い状態におかれていることを考慮している。これに対し、
図5によれば、ユーザにとって不確実状況にあって、認知負荷が高い状態におかれていることを考慮する。
即ち、
図5によれば、顕在的認知特性に、潜在的認知特性の重みを加えて考慮することによって、不確実状況下での意思決定特性を判定することができる。
【0067】
図5によれば、判定装置1は、
図2と比較して、用語蓄積部103と、用語選択部16と、第1の操作画面表示部171と、第2の操作画面表示部172と、潜在的認知特性判定部142と、意思決定特性判定部143と、第1の予備操作画面表示部181と、第2の予備操作画面表示部182と、注視距離時間算出部19とを更に有する。これら機能構成部も、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、認知特性の判定方法としても理解できる。
【0068】
図6は、本発明の判定装置における第1の予備操作画面表示部及び第2の予備操作画面表示部の表示画面を表す例である。
【0069】
[第1の予備操作画面表示部181]
第1の予備操作画面表示部181は、ディスプレイ装置2を介して、任意の第1の用語を、以下のように分類させる第1の予備操作画面を表示する。
良的感情用語のアイコン
悪的感情用語のアイコン
そして、第1の用語を、分類された良的感情用語又は悪的感情用語として用語蓄積部103に蓄積する。
【0070】
図6によれば、例えば用語「論理的」について、ユーザが、良的感情用語に分類するか、悪的感情用語に分類するかを判定する。ここでは、ユーザは、用語「論理的」は良的感情用語に分類している。
【0071】
[第2の予備操作画面表示部182]
第2の予備操作画面表示部182は、ディスプレイ装置2を介して、任意の第2の用語を、以下のように分類させる第2の予備操作画面を表示する。
熟慮的用語のアイコン
直感的用語のアイコン
そして、第2の用語を、分類された熟慮的感情用語又は直感的感情用語として用語蓄積部103に蓄積する。
【0072】
図6によれば、例えば用語「吟味する」について、ユーザが、熟慮的感情用語に分類するか、直感的感情用語に分類するかを判定する。ここでは、ユーザは、用語「吟味する」は熟慮的感情用語に分類している。
【0073】
[用語蓄積部103]
用語蓄積部103は、第1の予備操作画面表示部181及び第2の予備操作画面表示部182によって2つの概念に分類された用語を、蓄積する。
第1種概念:「良的感情用語」及び「悪的感情用語」
第2種概念:「直感的用語」 及び「熟慮的用語」
例えば、以下のように用語を蓄積しているとする。
良的感情用語:素晴らしい、論理的、楽しみ、嬉しさ、輝かしい、幸せな
悪的感情用語:ひどい、非論理的、恐ろしい、苦悩、すさまじい、失敗
直感的用語: 情緒的、直覚的、感性的、第六感、感覚的、その場その場
熟慮的用語: 慎重に、再考する、考え直す、重ね重ね、腕を組む、「吟味する」
【0074】
[用語選択部16]
用語選択部16は、用語蓄積部103を用いて、以下のように用語を選択する。
第1種概念:任意の良的感情用語及び悪的感情用語をそれぞれ選択
第2種概念:任意の直感的用語及び熟慮的用語をそれぞれ選択
【0075】
[第1の操作画面表示部171]
第1の操作画面表示部171は、ディスプレイ装置2を介して、用語蓄積部103に含まれる任意の用語を、ユーザの注視軌跡によって、以下のいずれかのアイコンに分類させる第1の操作画面を表示する。
第1のアイコン:良的且つ熟慮的を意味
第2のアイコン:悪的且つ直感的を意味
【0076】
[第2の操作画面表示部172]
第2の操作画面表示部172は、ディスプレイ装置2を介して、用語蓄積部103に含まれる任意の用語を、ユーザの注視軌跡によって、以下のいずれかのアイコンに分類させる第2の操作画面を表示する。
第3のアイコン:良的且つ直感的を意味
第4のアイコン:悪的且つ熟慮的を意味
【0077】
第1~第4のアイコンのような組み合わせの分類提示は、第1種概念と第2種概念との間の関連性をユーザに検討させる。
具体的には、ユーザが正しく且つ素早く(判断時間が短い)分類をすることができれば、ユーザとしてその用語に対する両概念の間の関連性が強いことを意味する。一方で、ユーザが誤り又は迷って(判断時間が長い)分類をする場合、ユーザとしてその用語に対する両概念の間の関連性が弱いとを意味する。
【0078】
図7によれば、第1の操作画面によって、ユーザに対して、例えば用語「吟味する」を、第1のアイコン又は第2のアイコンにいずれかに分類させる。また、第2の操作画面によって、ユーザに対して、例えば用語「吟味する」を、第3のアイコン又は第4のアイコンにいずれかに分類させる。
【0079】
[注視距離時間算出部19]
注視距離時間算出部19は、当該任意の用語について、以下のように注視距離時間を算出する。
第1の注視距離時間:第1の操作画面で第1のアイコンに分類した場合における
注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した値
第2の注視距離時間:第1の操作画面で第2のアイコンに分類した場合における
注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した値
第3の注視距離時間:第2の操作画面で第3のアイコンに分類した場合における
注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した値
第4の注視距離時間:第2の操作画面で第4のアイコンに分類した場合における
注視軌跡の距離と注視時間とを乗算した値
【0080】
[潜在的認知特性判定部142]
潜在的認知特性判定部142は、ユーザが「熟慮的用語」を分類した際に、第1の注視距離時間が第4の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定し、それ以外の場合「直感的」と判定する。
第1の注視距離時間<第4の注視距離時間 : 熟慮的
第1の注視距離時間≧第4の注視距離時間 : 直感的
一方で、潜在的認知特性判定部142は、ユーザが「直感的用語」を分類した際に、第3の注視距離時間が第2の注視距離時間よりも小さい場合、潜在的認知特性として「直感的」と判定し、それ以外の場合「熟慮的」と判定する。
第3の注視距離時間<第2の注視距離時間 : 直感的
第3の注視距離時間≧第2の注視距離時間 : 熟慮的
判定された潜在的認知特性は、意思決定特性判定部143へ出力される。
【0081】
図7は、本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第1の例である。
【0082】
図7によれば、ユーザは、第1の操作画面で、用語「吟味する」(予備操作では「熟慮的」に分類)を、第1のアイコン(良的且つ熟慮的)へ第1の注視距離時間で分類している。
また、ユーザは、第2の操作画面で、用語「吟味する」(予備操作では「熟慮的」に分類)を、第4のアイコン(悪的且つ熟慮的)へ第4の注視距離時間で分類している。
このとき、第1の注視距離時間<第4の注視距離時間となっており、そのユーザは、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定する。
【0083】
図8は、本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第2の例である。
【0084】
図8によれば、
図7と異なって、ユーザは、第1の操作画面で、用語「吟味する」(予備操作では「熟慮的」に分類)を、第1のアイコン(良的且つ熟慮的)へ第1の注視距離時間で分類している。
また、ユーザは、第2の操作画面で、用語「吟味する」(予備操作では「熟慮的」に分類)を、第4のアイコン(悪的且つ熟慮的)へ第4の注視距離時間で分類している。
このとき、第1の注視距離時間≧第4の注視距離時間となっており、そのユーザは、潜在的認知特性として「直感的」と判定する。
【0085】
図9は、本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第3の例である。
【0086】
図9によれば、ユーザは、第1の操作画面で、用語「第六感」(予備操作では「直感的」に分類)を、第2のアイコン(悪的且つ直感的)へ第2の注視距離時間で分類している。
また、ユーザは、第2の操作画面で、用語「第六感」(予備操作では「直感的」に分類)を、第3のアイコン(良的且つ直感的)へ第3の注視距離時間で分類している。
このとき、第3の注視距離時間<第2の注視距離時間となっており、そのユーザは、潜在的認知特性として「直感的」と判定する。
【0087】
図10は、本発明の判定装置における第1の操作画面表示部及び第2の操作画面表示部の表示画面を表す第4の例である。
【0088】
図10によれば、
図9と異なって、ユーザは、第1の操作画面で、用語「第六感」(予備操作では「直感的」に分類)を、第2のアイコン(悪的且つ直感的)へ第2の注視距離時間で分類している。
また、ユーザは、第2の操作画面で、用語「第六感」(予備操作では「直感的」に分類)を、第3のアイコン(良的且つ直感的)へ第3の注視距離時間で分類している。
このとき、第3の注視距離時間≧第2の注視距離時間となっており、そのユーザは、潜在的認知特性として「熟慮的」と判定する。
【0089】
[意思決定特性判定部143]
意思決定特性判定部143は、顕在的認知特性に、潜在的認知特性を考慮して、意思決定特性における「リスク選好」であるか又は「リスク回避」であるかを判定する。
判定された意思決定特性は、ユーザ属性蓄積部101へ出力され、ユーザ毎に、属性として蓄積される。
【0090】
図11は、本発明の判定装置における意思決定特性判定部の判定方式の説明図である。
【0091】
図11によれば、意思決定特性判定部143は、顕在的認知特性判定部141と潜在的認知特性判定部142の組み合わせによって異なる。
<第1の判定方式>
顕在的認知特性が直感的と熟慮的との2値で表された場合、潜在的認知特性の直感的と熟慮的との2値に対応して、以下のように意思決定特性が判定される。
(顕在的認知特性)(潜在的認知特性)(意思決定特性:特性度)
直感的 直感的 リスク選好
直感的 熟慮的 ややリスク選好
熟慮的 直感的 ややリスク回避
熟慮的 熟慮的 リスク回避
【0092】
<第2の判定方式>
顕在的認知特性を、直感的と熟慮的との間の特性度として表す。主注視時間と副注視時間の差が大きいほど「直感的」が強い特性度とし、逆に小さいほど「熟慮的」が強い特性度とする。
(顕在的認知特性)(潜在的認知特性)(意思決定特性:特性度)
直感的 直感的 リスク選好
直感的 熟慮的 ややリスク選好
やや直感的 直感的 ややリスク選好
やや熟慮的 直感的 ややリスク選好
やや直感的 熟慮的 ややリスク回避
やや熟慮的 熟慮的 ややリスク回避
熟慮的 直感的 ややリスク回避
熟慮的 熟慮的 リスク回避
【0093】
これによって、ユーザ属性蓄積部101は、ユーザ毎に、属性として、「潜在的認知特性」及び/又は「意思決定特性」も蓄積することができる。
【0094】
尚、第2の判定方式のように、顕在的認知特性が、直感的と熟慮的との間の特性度として判定される場合、意思決定特性判定部143は、顕在的認知特性に、潜在的認知特性を重み付けて、意思決定特性の特性度を推定するものであってもよい。
【0095】
図12は、本発明における潜在的認知特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【0096】
図12によれば、判定装置1は、前述した
図5に対して、顕在的認知特性や意思決定特性を判定することなく、潜在的認知特性のみを判定することができる。各機能構成部の処理内容は、前述した
図5と全く同じものである。
【0097】
図13は、本発明における顕在的認知特性から意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【0098】
図13によれば、前述した
図2について、意思決定特性判定部143を追加したものである。意思決定特性判定部143は、顕在的認知特性判定部141から出力された顕在的認知特性に応じて、意思決定特性を決定する。
これによって、ユーザ属性蓄積部101は、ユーザ毎に、属性として、「意思決定特性」を蓄積することができる。
【0099】
具体的には、顕在的認知特性判定部141が、顕在的認知特性を「直感的」又は「熟慮的」の2値で出力する場合、意思決定特性判定部143は、以下のように、意思決定特性を「リスク選好」又は「リスク回避」の2値で出力する。
顕在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とする。
顕在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする。
【0100】
また、顕在的認知特性判定部141が、顕在的認知特性における「直感的」から「熟慮的」までの特性度を出力する場合、意思決定特性判定部143は、以下のように、意思決定特性の特性度を出力する。
顕在的認知特性の特性度について「直感的」が強いほど、
意思決定特性は「リスク選好」が強い特性度とする。
顕在的認知特性の特性度について「熟慮的」が強いほど、
意思決定特性は「リスク回避」が強い特性度とする。
【0101】
図14は、本発明における潜在的認知特性から意思決定特性を判定する判定装置の機能構成図である。
【0102】
図14によれば、前述した
図12について、意思決定特性判定部143を追加したものである。意思決定特性判定部143は、潜在的認知特性判定部142から出力された潜在的認知特性に応じて、意思決定特性を決定する。
これによって、ユーザ属性蓄積部101は、ユーザ毎に、属性として、「意思決定特性」を蓄積することができる。
【0103】
具体的には、潜在的認知特性判定部142が、潜在的認知特性を「直感的」又は「熟慮的」の2値で出力するために、意思決定特性判定部143は、以下のように、意思決定特性を「リスク選好」又は「リスク回避」の2値で出力する。
潜在的認知特性が「直感的」である場合、意思決定特性は「リスク選好」とする。
潜在的認知特性が「熟慮的」である場合、意思決定特性は「リスク回避」とする。
【0104】
以上、詳細に説明したように、本発明の判定装置、プログラム及び方法によれば、ユーザの認知特性を比較的高い精度で判定することができる。
【0105】
尚、これにより、例えば「ユーザの認知特性を判定することができる」」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」に貢献することが可能となる。
【0106】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、当業者は、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0107】
1 判定装置
101 ユーザ属性蓄積部
102 介入情報蓄積部
103 用語蓄積部
11 テスト画像表示部
12 注視軌跡取得部
13 注視時間検出部
141 顕在的認知特性判定部
142 潜在的認知特性判定部
143 意思決定特性判定部
15 介入情報送信部
16 用語選択部
171 第1の操作画面表示部
172 第2の操作画面表示部
181 第1の予備操作画面表示部
182 第2の予備操作画面表示部
19 注視距離時間算出部
2 ディスプレイ装置
3 アイトラッキング装置
4 携帯端末