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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142449
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】測長器
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20241003BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054589
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】水越 哲也
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF02
2F062GG37
2F062GG51
2F062GG71
2F062HH05
(57)【要約】
【課題】測長器において、ストッパと回り止めとを分散化させることによる構造の複雑化を抑制する。
【解決手段】測長器は、測定対象物に測定子14が当接し軸線方向に移動するスピンドル10と、測定子14の側の開口からスピンドル10を移動可能に突出させる筐体部30と、測定対象物に測定子14が当接したスピンドル10の位置を検出する読取素子80と、スピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能とスピンドル10の回転を規制する機能とを一体に備えた規制部50とを備えた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に先端が当接し軸線方向に移動するスピンドルと、
前記先端の側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、
前記測定対象物に前記先端が当接した前記スピンドルの位置を検出する検出部と、
前記スピンドルの前記軸線方向の移動範囲を定める機能と当該スピンドルの回転を規制する機能とを一体に備えた規制部と
を備えたことを特徴とする測長器。
【請求項2】
前記規制部は、前記軸線方向に直交する方向に延びるピンを備え、前記スピンドルの当該軸線方向の移動範囲を定める機能を実現する機構を当該スピンドルの当該軸線方向と平行する位置に備えていることを特徴とする請求項1記載の測長器。
【請求項3】
前記機構は、前記ピンに設けられた弾性部材と、当該弾性部材の前記軸線方向の下死点および上死点を決定する決定部と、を有することを特徴とする請求項2記載の測長器。
【請求項4】
前記規制部の前記スピンドルの回転を規制する機能は、前記軸線方向に直交する方向に延びるピンと、当該ピンの当該軸線方向の移動を案内する案内部材と、によって実現し、当該ピンを用いて当該スピンドルの当該軸線方向の移動範囲を定める機能を更に実現することを特徴とする請求項1記載の測長器。
【請求項5】
前記ピンの先端は、前記案内部材の面から突出していることを特徴とする請求項4記載の測長器。
【請求項6】
前記検出部は、前記筐体内に設けられ、前記スピンドルの移動に伴って移動するスケールを発光部と受光部とを備える読取素子によって読み取り、
前記規制部は、少なくとも一部にて前記スケールを間に介して前記読取素子と対峙することを特徴とする請求項1記載の測長器。
【請求項7】
前記筐体は前記軸線方向に対して直交する方向の断面が長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向に前記検出部と前記規制部とを備えることを特徴とする請求項6記載の測長器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位を検出する測長器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸線方向に移動可能なスピンドルを測定対象物に当接させ、スピンドルの基準位置からの変位を検出する測長器が知られている。
例えば特許文献1では、スピンドル10に第1ストッパ24と第2ストッパ25とが設けられ、スピンドル10がケース60に対して延び縮みをした際の停止位置が定められている。また、スピンドル10の移動に伴って軸線方向に移動するスケールホルダ11には、このスケールホルダ11に対して半径方向外向きに突出した回り止めベアリング26が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-077193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のように、測長器のスピンドルに設けられたストッパによってスピンドルが予め定められた範囲を越えて移動しようとすることを防止でき、回り止めベアリングによりスピンドルがその軸回りに回転することを防止できる。しかしながら、このようなストッパと回り止めとを別々に設けると、測長器の構造が複雑化してしまう。
【0005】
本発明は、測長器において、ストッパと回り止めとを分散化させることによる構造の複雑化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、測定対象物に先端が当接し軸線方向に移動するスピンドルと、前記先端の側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、前記測定対象物に前記先端が当接した前記スピンドルの位置を検出する検出部と、前記スピンドルの前記軸線方向の移動範囲を定める機能と当該スピンドルの回転を規制する機能とを一体に備えた規制部とを備えたことを特徴とする測長器である。
請求項2に記載された発明は、前記規制部は、前記軸線方向に直交する方向に延びるピンを備え、前記スピンドルの当該軸線方向の移動範囲を定める機能を実現する機構を当該スピンドルの当該軸線方向と平行する位置に備えていることを特徴とする請求項1記載の測長器である。
請求項3に記載された発明は、前記機構は、前記ピンに設けられた弾性部材と、当該弾性部材の前記軸線方向の下死点および上死点を決定する決定部と、を有することを特徴とする請求項2記載の測長器である。
請求項4に記載された発明は、前記規制部の前記スピンドルの回転を規制する機能は、前記軸線方向に直交する方向に延びるピンと、当該ピンの当該軸線方向の移動を案内する案内部材と、によって実現し、当該ピンを用いて当該スピンドルの当該軸線方向の移動範囲を定める機能を更に実現することを特徴とする請求項1記載の測長器である。
請求項5に記載された発明は、前記ピンの先端は、前記案内部材の面から突出していることを特徴とする請求項4記載の測長器である。
請求項6に記載された発明は、前記検出部は、前記筐体内に設けられ、前記スピンドルの移動に伴って移動するスケールを発光部と受光部とを備える読取素子によって読み取り、前記規制部は、少なくとも一部にて前記スケールを間に介して前記読取素子と対峙することを特徴とする請求項1記載の測長器である。
請求項7に記載された発明は、前記筐体は前記軸線方向に対して直交する方向の断面が長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向に前記検出部と前記規制部とを備えることを特徴とする請求項6記載の測長器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ストッパと回り止めとを分散化させることによる構造の複雑化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用される測長システムの一例を示した図である。
図2】(a)、(b)は測長器の構造を説明するための斜視図である。
図3】測長器における軸線方向の断面図である。
図4図3の断面図を部分的に拡大した断面拡大図である。
図5】(a)は図3および図4に示す断面図の規制部を表す箇所を更に拡大した断面拡大図、(b)は規制部の回転を規制する機能を説明するための図、(c)は規制部の軸線方向の移動範囲を定める機能を説明するための図である。
図6】(a)、(b)は規制部を構成するとともにスケールホルダに取り付けられる部材を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔測長システムの説明〕
図1は、本実施の形態が適用される測長システム100の一例を示した図である。この測長システム100は、接触式変位センサである測長器1と、ケーブル3を介して測長器1に接続される表示器2とを備えている。表示器2は、寸法の計測や、加工時のワークの仕上がりなどの合否の判定を行い、結果の表示出力を行なうコントローラとしての機能を有している。ケーブル3は、アングルコネクタ3aを介して測長器1からの計測値を表示器2に伝達する。
【0010】
測長器1は、先端に測定子14を有し測定対象物に測定子14が当接し軸線方向に移動するスピンドル10と、先端の側の開口からスピンドル10を移動可能に突出させる筐体部30とを備えている。筐体部30のケース31は、センサ機能などの各種構造を外側から覆っている。測長器1は、軸線方向に移動可能なスピンドル10の測定子14を測定対象物に当接させ、スピンドル10の基準位置からの変位を光学的に検出する。
【0011】
また測長器1は、図1に示すように外観がケース31によって覆われているが、スピンドル10は、伸縮可能なジャバラ(蛇腹)からなるベローズ41と、ケース31とベローズ41との間に設けられたステム42と、によって覆われている。ベローズ41は、伸縮性、機密性を有するゴム状部材で形成され、スピンドル10の摺動を妨げない。ステム42は、ベローズ41を支持するとともに、筐体部30に連続してまたは筐体部30の一機能として、測長器1の内部構造物を覆っている。測長器1は、ステム42の箇所にてナット等を用いて他の装置や保持具に固定される。
【0012】
〔測長器1の構成〕
次に、本実施の形態が適用される測長器1について、図2図4を用いて説明する。
図2(a)、(b)は測長器1の構造を説明するための斜視図であり、測長器1のケース31を外した状態を示している。図2(a)は規制部50が現れる位置を眺める斜視図であり、図2(b)は、図2(a)の規制部50が現れる側の裏側、すなわち基板70の取り付け側から測長器1を眺めた斜視図である。また、図3は測長器1における軸線方向の断面図である。さらに、図4図3の断面図を部分的に拡大した断面拡大図であり、測長器1に設けられた規制部50と読取素子80との関係を説明するための図である。
【0013】
本実施の形態が適用される測長器1は、先端側に接触部としての測定子14を有し軸線方向に移動可能なスピンドル10と、このスピンドル10の後端側に設けられスピンドル10と軸線方向を同じくしスピンドル10の移動に伴って軸線方向に移動するスケールホルダ11と、を有する。スピンドル10およびスケールホルダ11の半径方向に沿った断面は略円形形状であり、スピンドル10の径に比べてスケールホルダ11の径が大きい。ここで、スピンドル10とスケールホルダ11とは、別部材で形成しても構わないが、一体物を加工して得られる一体構造で形成しても構わない。なお、測定子14とスピンドル10とを含めて「接触子」と呼ぶことがある。また、本実施の形態で用いられるスピンドル10は、回転は行なわず、筐体部30に対して軸線方向(上下方向)に摺動する。
【0014】
筐体部30の一つを構成するケース31は、ステム42を支持する先端側ケースホルダ43と、測長器1の後端側に設けられる後端側ケースホルダ44とによって支持される。後端側ケースホルダ44には、図1に示すケーブル3のアングルコネクタ3aに接続されるコネクタ45が設けられている。また、筐体部30の内部には、スケールホルダ11に連結し軸線方向に作用するバネ46が設けられている。
【0015】
筐体部30の一つを構成するベース32は、スピンドル10とスピンドル10から延伸するスケールホルダ11とを、軸線方向に摺動可能となるように保持する。また、スピンドル10およびスケールホルダ11は、寸法の計測に際して軸線方向を軸として回転することは好ましくなく、ベース32に対する回転が規制される。図2(a)に示すように、本実施の形態では、ベース32に、そのベース32の一部が切り欠かれた凹部33を設け、その凹部33に規制部50の構造部材が取り付けられている。この規制部50は、スピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能とスピンドル10の回転を規制する機能とを一体に備えている。
【0016】
スケールホルダ11には、目盛りが形成された反射型のスケール20が取り付けられる。スケールホルダ11は、その原型は軸線方向に直交する方向の断面形状が円形であるが、その円周上に両端点を持つ線分である弦を形成する位置にスケール20が取り付けられている。このスケール20は、測定対象物に測定子14が当接し軸線方向に移動するスピンドル10の動きに連動して、軸線方向に移動する。
【0017】
また図2(b)に示すように、ベース32には、このベース32の凹部33が形成された面とは反対側の面に、基板70が取り付けられる。基板70には、図2(b)にて現れる面とは反対側の面、すなわちスケールホルダ11と対峙する面に、読取素子80が設けられている。この読取素子80は、発光部と、この発光部からの反射光を受光する受光部とを備えており、測定対象物に先端が当接したスピンドル10の位置を検出する検出部として機能する。具体的には、読取素子80は、スケールホルダ11に設けられたスケール20に対峙する箇所に設けられ、発光部から発光しスケール20にて反射した光を受光部で受光することで、スケール20の目盛りを読み取る。スピンドル10は、先端側に摺動して最も延びた位置である下死点から後端側に摺動して最も縮んだ位置である上死点までの間を、軸線方向に移動する。スケール20は、スピンドル10の移動に伴って移動するが、スピンドル10が下死点から上死点まで移動した場合であっても、筐体部30に取り付けられて移動しない読取素子80による読み取りが可能となるように、軸線方向に延びた形でスケールホルダ11に取り付けられる。
【0018】
後に詳述するが、規制部50は、軸線方向に直交する方向に延びるピン51を有し、これによって、スピンドル10の軸線方向の下死点から上死点まで移動を決定するとともに、スピンドル10の回転を規制している。図4の点線の領域で示されるように、ピン51を有する規制部50は、軸線方向の少なくとも一部にてスケール20を間に介して読取素子80と対峙し、少なくとも一部にて略一直線に並んでいる。このように配置することで、スピンドル10が撓むとしても規制部50のピン51を有する箇所が起点となるので、読取素子80によるスケール20の読み値に影響が出にくい。
【0019】
〔規制部50の構成〕
次に、本実施の形態が適用される規制部50について、図5および図6を用いて説明する。本実施の形態が適用される規制部50は、前述のとおり、スピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能とスピンドル10の回転を規制する機能とを一体に備えている。そして規制部50は、スピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能をスピンドル10の軸線方向と平行する位置に備えている。
ここで、図5(a)は図3および図4に示す断面図の規制部50を表す箇所を更に拡大した断面拡大図、図5(b)は規制部50の回転を規制する機能を説明するための図、図5(c)は規制部50の軸線方向の移動範囲を定める機能を説明するための図である。また、図6(a)、(b)は規制部50を構成するとともにスケールホルダ11に取り付けられる部材を説明するための斜視図である。
【0020】
規制部50は、スケールホルダ11に取り付けられるピン51と、ピン51に取り付けられる弾性部材であるOリング52とを備えている。ピン51およびOリング52は、スピンドル10およびスケールホルダ11の動きに連動して動く。また規制部50は、筐体部30側に取り付けられる部材として、スピンドル10およびスケールホルダ11の回転を規制しスピンドル10およびスケールホルダ11の軸線方向の動きを案内するガイド板53と、ガイド板53を筐体部30側に固定するネジ54と、を備えている。また、規制部50の一つとして、スピンドル10およびスケールホルダ11の下死点および上死点の位置を決定する機能をベース32に持たせている。
【0021】
ピン51は、図6(a)に示すように、スケールホルダ11と連結するピン側連結部51-1と、例えば6角形状を有してピン51の締め付けに用いられる締結部51-2と、Oリング52を保持する凹部51-3と、ガイド板53の摺動面53-1(図5(b)参照)に当接することでスピンドル10およびスケールホルダ11の回転を規制する回り止め部51-4と、を有する。スケールホルダ11には、ピン51を取り付けるための平面部12が形成され、この平面部12には例えばネジ山が掘られたホルダ側連結部13が形成されている。このホルダ側連結部13にピン51のピン側連結部51-1を挿入し、締結部51-2を用いて締め付けることで、ピン51がスケールホルダ11に取り付けられる。その後、Oリング52を凹部51-3に取り付けることで、図6(b)に示すように、スケールホルダ11にピン51とOリング52とが取り付けられる。なお、ピン側連結部51-1とホルダ側連結部13との連結は、ネジ構造ではなく接着剤などを用いた接合によって行うことも可能である。
【0022】
また、前述のように、スケールホルダ11は、その原型は軸線方向に直交する方向の断面形状が円形であるが、平面部12は、スケールホルダ11の円周上に両端点を持つ弦を形成する位置に形成される。さらに、この平面部12は、スケールホルダ11に取り付けられるスケール20と平行となる位置に形成される。そして、ピン51の締結に際して、スケールホルダ11の平面部12に締結部51-2が当接し、ピン51は、スケールホルダ11に対して軸芯を通った垂直方向に取り付けられる。その結果、図5(a)に示すように、ピン51は、スケールホルダ11にて、スケール20の取り付け方向に対して垂直方向に延びる方向に取り付けられる。
【0023】
一方、筐体部30側は、規制部50を形成するため、図5(a)~(c)に示すように、ベース32に対し、ガイド板53を取り付けるための凹部33が形成されている。この凹部33の軸線方向の長さは、ガイド板53の挿入を妨げない長さとしてガイド板53の軸線方向の長さより長く形成されている。また、凹部33の軸線方向に直交する直交方向の長さは、ガイド板53の直交方向の位置を定めるものとして決定されている。さらに、凹部33には、ガイド板53をネジ54によって固定するためのネジ穴35が形成されている。
【0024】
図5(b)に示す例では、ガイド板53は2枚、用いられており、各々のガイド板53は、凹部33の軸線方向に平行する面にて位置決めがなされ、ネジ54によって固定されることで、ピン51(回り止め部51-4)と接触する摺動面53-1の位置が決定される。2枚のガイド板53によって決定される軸線方向と直交する直交方向の距離は、ピン51の回り止め部51-4の摺動を妨げないものとして決定され、凹部33および2枚のガイド板53の加工寸法によって回り止め部51-4の径との間のクリアランスが決定される。このように、筐体部30の凹部33に固定された2枚のガイド板53の各々の摺動面53-1によって形成される構造は、ピン51の軸線方向の移動を案内する案内部材として機能している。
なお、ガイド板53の軸線方向と直交する直交方向は、凹部33に突き当てられて取り付けられることから、スピンドル10が強く回された場合でも、ピン51に押されてガイド板53の位置がずれる、といった問題が解消される。
【0025】
また、規制部50には、凹部33に、ベース32を切り欠いた切り欠き部34が設けられている。この切り欠き部34は、軸線方向の先端側に下死点決定壁34-1を形成し、軸線方向の後端側に上死点決定壁34-2を形成している。ピン51に取り付けられたOリング52が、この下死点決定壁34-1または上死点決定壁34-2に当接することでストッパとして機能し、下死点決定壁34-1および上死点決定壁34-2は、スピンドル10の下死点および上死点を決定する決定部として機能する。なお、切り欠き部34の直交方向の長さは、軸線方向に移動するOリング52の移動を妨げることがないように、Oリング52の外寸よりも大きい。
なお、本実施の形態では、決定部である下死点決定壁34-1および上死点決定壁34-2を切り欠き部34で構成したが、切り欠きではなく壁となる別個の部材を下死点および/または上死点として取り付けることで構成しても構わない。
【0026】
このように、本実施の形態では、規制部50のスピンドル10の回転を規制する機能について軸線方向に直交する方向に延びるピン51と、このピン51の軸線方向の移動を案内する案内部材と、によって実現し、ピン51を用いてスピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能を更に実現しており、ピン51を用いて2つの機能を実現させている。
さらに、図5(a)に示すように、ピン51(回り止め部51-4)の先端は、案内部材であるガイド板53の面(図5(a)の上面)から寸法δ(δ>0)だけ突出している。この寸法δだけ、スケールホルダ11の中心軸から遠ざかるように突出させることで、ピン51(回り止め部51-4)の先端の角がガイド板53の摺動面53-1に当接することがなくなる。その結果、ピン51(回り止め部51-4)の先端が当たることによりガイド板53の摺動面53-1に形成される傷を防止できる。
【0027】
なお、本実施の形態では、読取素子80は、発光部と受光部とを備えたIC(integrated circuit:集積回路)により、スケール20からの反射光を読み取る反射型の素子を用いている。従前では、発光部からの光を光透過型のガラススケールに透過させ、ガラススケールを間に挟んで発光部に対向して設けられる受光素子により透過光を読み取る透過型ICが採用されていた。そのために、従前では、発光部に対向する受光素子側の受光領域は空洞にしておく必要があり、スケールホルダの回転を抑制するピン構造等は、スケールホルダの断面となる半径方向にて光の透過方向とは交差する方向、例えば直交する方向に形成されていた。その結果、スケールホルダの断面となる半径方向にて光の透過方向の寸法確保に加えて、回転抑制のためのピン構造等を設ける寸法確保が直交する方向に必要となり、装置の大型化が余儀なくされていた。一方、本実施の形態によれば、検出部として反射型の読取素子80を採用していることから、スケール20を間に挟んで読取素子80と対向する側に新たなスペースが生まれ、規制部50を形成することが可能となった。これにより、スケールホルダ11の断面となる半径方向の、読取素子80と規制部50とが形成される方向と直交する方向に、回転防止のためのピン等を形成するための厚みが不要となった。これにより、読取素子80、スケール20、および規制部50が設けられた方向を、軸線方向に対して直交する方向の断面にて長手方向とし、この長手方向に直交する方向を短手方向として、筐体部30の寸法を圧縮することが可能となり、装置の小型化を実現している。
【0028】
また、本実施の形態では、スケール20を間に挟んで読取素子80と対向する側に規制部50を配置し、この規制部50に、ピン51を用いたスピンドル10の回転を規制する機能に加えてスピンドル10の軸線方向の移動範囲を定める機能を持たせている。従前の構成では、スケールホルダの断面となる半径方向にて光の透過方向とは交差する方向にピン構造を持たせていたが、その部分は寸法等の関係から構造物が肉薄となり、剛性維持が難しかった。そこで、従前では、回転を規制する機能と移動範囲を定める機能とを別の箇所で持たせ、下死点および上死点を決定するストッパを作動軸であるスピンドルに設ける構成が採用されていた。しかし、本実施の形態では、軸線方向と直交する方向の筐体部30の断面を長方形等の長手と短手とを有する形状とし、この長手側に、読取素子80と規制部50を配置することで、剛性を保ち易い長手方向にて、下死点および上死点を決定する機能を持たせることが可能となった。これにより、従前のストッパを設ける際に形成される溝の存在を起因とするスピンドルのダメージを防止している。また、本実施の形態によれば、従前のようにスピンドルの回転を規制する機能とスピンドルの移動範囲を定める機能とを別の箇所で持たせ、ストッパと回り止めとを分散化させた場合に比べて、測長器1の構造が複雑化するのを抑制している。なお、筐体部30の軸線方向に対して直交する方向の断面は、長方形以外の形状を採用することも可能であり、例えば、断面が長手方向と短手方向を有する楕円形状や台形形状、断面の長手方向の一端だけが半円形状などの各種形状を採用できる。
【0029】
〔測長器1の作用〕
次に、本実施の形態が適用される測長器1の作用、特に、規制部50による作用について説明する。
測長器1が、図示しない保持具などにステム42の箇所で固定され、スピンドル10の軸線方向の先端側を下にして、測定子14が最下端にて測定対象物と接触するように配置される。測長が開始されると、測定対象物の高さ方向の位置に応じて、スピンドル10とスケールホルダ11とが一体となって軸線方向に摺動する。スピンドル10から延長したスケールホルダ11にはバネ46が連結されていることから、バネ46の縮みによる反発力により、測定子14と測定対象物との接触が維持される。
【0030】
ベース32に対するスケールホルダ11の移動により、読取素子80により読み取られるスケール20の目盛が変化する。このとき、ピン51の回り止め部51-4も、ガイド板53の摺動面53-1に沿って移動する。これによって、ベース32に対してスケールホルダ11が摺動した場合でも、ベース32に対するスケールホルダ11の回転が抑制され、読取素子80とスケール20との位置の変動を、予め定められた範囲内に留めることができる。
【0031】
また、このスケールホルダ11の移動により、ピン51の凹部51-3に保持されているOリング52も移動する。このOリング52の軸線方向の移動範囲は、ベース32の切り欠き部34によって規制される。Oリング52が切り欠き部34の下死点決定壁34-1に弾性的に当接したときが下死点であり、スピンドル10が筐体部30に対して最も延びたときである。一方、Oリング52が切り欠き部34の上死点決定壁34-2に弾性的に当接したときが上死点であり、スピンドル10が筐体部30に対して最も縮んだときである。この下死点と上死点との間でスケールホルダ11が軸線方向に移動し、読取素子80によりスケール20の目盛が読み取られる。
【0032】
このように、スケール20の軸線方向の摺動、スピンドル10に加わる横荷重や、振動等の外乱等によりスケール20の位置を変動させる力が加わった場合であっても、規制部50による位置の変動が抑制された状態で、読取素子80によってスケール20の目盛を正しく読み取ることができる。読取素子80によって読み取られた目盛の情報は、ケーブル3を経由して表示器2に出力される。表示器2では、各種演算がなされ、測定対象物が予め設定された合否判定/ランク判定の範囲内か否かの表示や、測定対象物の寸法の計測値の表示などが行なわれる。
【符号の説明】
【0033】
1…測長器、2…表示器、3…ケーブル、3a…アングルコネクタ、10…スピンドル、11…スケールホルダ、12…平面部、13…ホルダ側連結部、20…スケール、30…筐体部、31…ケース、32…ベース、33…凹部、34…切り欠き部、34-1…下死点決定壁、34-2…上死点決定壁、50…規制部、51…ピン、51-4…回り止め部、52…Oリング、53…ガイド板、53-1…摺動面、70…基板、80…読取素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6