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特開2024-142463測量システムにおけるターゲットの検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142463
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】測量システムにおけるターゲットの検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054607
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 純幸
(57)【要約】
【課題】 一つの測量機に対し、複数のターゲットが存在する測量システムにおいて、選択された一つのターゲットを識別して、検出する方法を提供する。
【解決手段】 複数のターゲットの各送光器の識別光の発光周期T1,T2,T3はそれぞれ異なっており、測量機の受光器の受光周期TAを、選択されたターゲットの識別光の発光周期と同一に設定し、選択されたターゲットの識別光を受光するごとに積算処理して増幅し、増幅した信号を識別して、選択されたターゲットを検出する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のターゲットから一つのターゲットを検出して測定する測量システムにおけるタ
ーゲットの検出方法であって、
前記一つのターゲットを選択する選択信号に基いて選択されたターゲットを測定する
測量機を備え、
前記複数のターゲットは互いに異なる周期で識別光を発光し、
前記測量機は、
前記識別光を受光する受光部と、前記選択信号が入力する入力部と、記憶部と、制御部を有し、
前記制御部は前記受光部で受光する周期を前記選択信号に基いて設定し、識別光を受光するごとに受光データとして前記記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶した受光データを積算または平均化する演算処理を行い、演算結果に基づいて測定するターゲットを検出する
ことを特徴とする測量システムにおけるターゲットの検出方法。
【請求項2】
前記選択信号は無線通信で入力する
請求項1に記載の測量システムにおけるターゲットの検出方法。
【請求項3】
前記複数のターゲットの発光周期は、少なくとも各5周期までは同期しない
請求項1に記載の測量システムにおけるターゲットの検出方法。
【請求項4】
前記複数のターゲットはそれぞれプリズムを有し、
前記測量機は前記制御部で検出された測定するターゲットに、前記プリズムをトラッ
キングする追尾光を発光し、その反射光に基いて前記測定するターゲットのプリズム
に対して測定光軸を位置合わせする
請求項1から3のいずれか1項に記載の測量システムにおけるターゲットの検出方法。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のターゲットから一つのターゲットを検出して測定する測量システムに
おけるターゲットの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、作業現場において、一つの測量機と、複数の整地作業車により整地作業が行われることがある。それぞれの作業車は、識別情報およびターゲットを有し、測量機は、ターゲットの識別情報を取得して、特定の整地作業車を自動視準、自動追尾して、測量作業を行う。識別情報として、例えば特許文献1では、反射体による白黒の縞模様で、それぞれ異なる識別パターンの反射帯を用いており、測量機に備えたカメラで画像を取得し、取得画像の差分処理による識別手段で、ターゲットの固有識別情報を検出する。特許文献2では、識別用のバーコードをそれぞれのターゲットが備えており、レーザスキャンにて検出している。
【0003】
また例えば、複数のターゲットのなかの一つのターゲットを検出して測定する方法として、特許文献3に開示された方法が知られている。この方法は、ターゲットから測量機に向けて光パルスが放射され、測量機に配置された撮像装置を用いて、ターゲットの第1の画像及び第2の画像を撮像し、測量機とターゲットは第1の画像のキャプチャと同時に光パルスを放射し、第2の画像のキャプチャと非同時に光パルスを放射するよう同期させる。そして、第1の画像と第2の画像との間の差分画像を得て、差分画像における光パルスの位置を識別情報として、測量機からターゲットへの方向を決定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-138802号
【特許文献2】特開2020-008406号
【特許文献3】米国特許第11092434号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バーコードなどの検出方法では、特定のターゲットを検出する場合、測量機は、まず周囲をくまなく検索し、ターゲットを探し出さなければならず、どこにあるかも全く不明で、検出中に他のターゲットを検出する可能性もあり、特定のターゲットを探し出すのに時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、従来の第1の画像と第2の画像との間の差分画像を得て、差分画像におけるターゲットから測量機に向けて放射された光パルスの位置を識別情報として、測量機からターゲットへの方向を決定する方法では、画像のキャプチャと光パルスの放射を同期させている。この同期をとるため、測量機とターゲットはそれぞれに、同期の取れた高性能なクロックを備えて、正確なクロック信号を発出する必要がある。二つのクロックからクロック信号が正確に発出されないと、同期をとることができず、測量機からターゲットへの方向を決定することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決した、ターゲットの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る複数のターゲットから一つのターゲットを検出
して測定する測量システムにおけるターゲットの検出方法は、前記一つのターゲットを選
択する選択信号に基いて選択されたターゲットを測定する測量機を備え、前記複数のター
ゲットは互いに異なる周期で識別光を発光し、前記測量機は、前記識別光を受光する受光
部と、前記選択信号が入力する入力部と、記憶部と、制御部とを備え、前記制御部は、前
記受光部で受光する周期を前記選択信号に基いて設定し、識別光を受光するごとに受光デ
ータとして前記記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶した受光データを積算または平均化す
る演算処理を行い、演算結果に基づいて測定するターゲットを検出するものである。
【0009】
このように、測量機側とターゲット側でクロックの同期をとることなく、測定するター
ゲットを検出できる。
【0010】
複数のターゲットから一つのターゲットを選択するための選択信号は無線通信で入力すると好適である。
【0011】
前記複数のターゲットの発光周期は、少なくとも各5周期までは同期しないように設定すると、演算処理が確実かつ短時間でなされて好適である。
【0012】
前記複数のターゲットはそれぞれプリズムを有し、前記測量機は前記制御部で検出された測定するターゲットに、前記プリズムをトラッキングする追尾光を発光し、その反射
光に基いて前記測定するターゲットのプリズムに対して測定光軸を位置合わせするよう構成すると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測量機側とターゲット側でクロックの同期をとることなく、測定する
ターゲットを検出できる。また、二つのターゲットが近接していても、測定対象となる一つのターゲットを確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る測量機と複数のターゲットの一実施形態を概略的に示す斜視図。
図2】同じく測量機とターゲットユニットのブロック図。
図3】同じく(A)はターゲットユニットの側面図、(B)はターゲットユニットの平面図。
図4】同じく受光器の受光周期と、各送光器の発光周期を示す周期表。
図5】同じくターゲットを検出し、測定する動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、本実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明の好適な実施形態にかかる測量システム1の概要構成を示す図である。測量システム1は、測量機10、および複数のターゲットユニットTUを含んで構成される。本実施形態においては、三つのターゲットユニットTU1~TU3が含まれる。ターゲットユニットTU1~TU3は、後述する発光周期Tを除き、同一の構成を有しており、特に指定する場合を除き、これらをまとめてターゲットユニットTUと称する。
【0017】
測量機10は、測距・測角機能及び追尾機能を備えたトータルステーションである。測量機10は、基準点中心上に三脚4を用いて設置される。測量機10は、整準器の上に設けられた基盤部2aと、基盤部2aに対し水平回転軸H回りに水平回転する托架部2bと、托架部2bの中央で鉛直回転軸V回りに鉛直回転する望遠鏡2cとを有する。
【0018】
ターゲットユニットTUは、ポール6の上端に測量機10の測量目標物であるターゲットのプリズム8を有し、ポール6の下端を測定点に概ね鉛直に設置して使用される。前記プリズム8は、全方位から入射される光を再帰反射する光学特性を有している。
【0019】
ターゲットユニットTUは、略水平方向に概ね全周方向に識別光Lを送光する送光器70を有する。ターゲットユニットTUは、それぞれ異なる周期で発光する。すなわち、ターゲットユニットTU1~TU3に取付けられた送光器70から送光される識別光L1~L3は、それぞれ異なる周期T1~T3で発光する。
【0020】
取付けられたターゲットユニットTUにより異なる送光器70の発光周期Tは、ターゲットユニットTU固有の識別情報である。測量機10は、図4に示すように、送光器70から送光される光を受光可能な受光部である受光器40を有し、この受光器40の受光信号を解析して、特定のターゲットユニットTUを捕捉すること、受光したターゲットユニットTUを特定することが可能となっている。
【0021】
図2は測量機10とターゲットユニットTUの構成ブロック図である。測量機10は、モータドライブトータルステーションであり、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、入力部23、表示部24、測量機通信部25、測距部26、追尾部27、記憶部28、測量機制御部29を備える。
【0022】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、エンコーダである。前記水平角検出器21は、托架部2bの回転軸に設けられ、托架部2bの水平角を検出する。前記鉛直角検出器22は、望遠鏡2cの回転軸に設けられ、望遠鏡2cの鉛直角を検出する。水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2はモータである。前記水平回転駆動部M1は托架部2bの回転軸を動かし、前記鉛直回転駆動部M2は、望遠鏡2cの回転軸を動かす。両駆動部の協働により、望遠鏡2cの向きが変更される。
【0023】
測量機通信部25は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えば、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットを接続し、ターゲットユニットTUと情報の送受信を行う。無線通信はこれに制限されず、既知の無線通信を使用することができる。測量機10が測定(測距・測角)した測定結果は、測量機通信部25を介して処理端末へ送られるように構成してもよい。
【0024】
測距部26は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光を送光部から出射し、その反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光との時間差から測距する。本実施形態においては、測量機10はターゲットユニットTUのプリズム8を視準して、プリズム8までの距離を計測する。
【0025】
追尾部27は、測距光とは異なる波長の赤外線レーザなどを追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部27は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部29に送ることができる。測量機制御部29は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡2cの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡2cがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0026】
記憶部28は、ROMおよびRAMを備える。ROMには測量機制御部29のためのプログラムが収納され、RAMにて各制御が実行される。また、後述する受光演算処理部291から送られる各種データを格納するRAMも備えている。
【0027】
測量機制御部29は、CPUを備えたマイクロコントローラであり、制御として、測量機通信部25を介した情報の送受信、水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2による各回転軸の駆動、測距部26による測距、水平角検出器21および鉛直角検出器22による測角、追尾部27による自動追尾などを行う。前記測量機制御部29は、受光演算処理部291を有する。受光部である受光器40が受光した受光信号は、受光演算処理部291に入力され、受光信号取得時の水平角検出器21と紐づけて記憶部28に記憶される。受光演算処理部291は、入力された信号を演算処理して、ターゲットユニットTUを識別する。
【0028】
入力部23、表示部24は、測量機10のインターフェースである。前記入力部23は、電源キー、数字キー、実行キーなどを有し、作業者が、前記測量機10の操作や測量機10に対する情報を入力できる。本実施形態においては、測量作業の指令や結果の確認などは、直接入力部23で入力するが、別体としてコントローラを備え、コントローラから前記測量機10を遠隔操作するように構成してもよい。
【0029】
受光器40は、托架部2bに固定され、受光方向を測量機10の前方にして配置されている。前記受光器40は、ターゲットユニット70の発光を受光可能に構成されている。受光器40の信号の取得間隔は、発光周期よりも小さく、異なる周期のパルス光を受光するのに十分なものとなっている。
【0030】
本実施形態の受光器40は、図示しないシンドリカルレンズと長方形受光センサと、水平受光範囲を制限するスリットを鉛直方向に設けて、測量機10とターゲットとに高低差があっても、ターゲットユニットTUの識別光Lを受光できるようにしている。受光器40は、托架部2bに固定されていることから、測量機10を水平回転させたとき、識別光Lを受光することにより、ターゲットユニットTUの水平方向を検知する。受光器40で受光した受光信号は、受光演算処理部291に入力され、演算処理され、入力された識別光LのターゲットユニットTUを識別する。
【0031】
続いて、ターゲットユニットTUを、図1及び図3を用いて説明する。図3(A)はターゲットユニットTUの側面図である。図3(B)は同平面図である。
【0032】
ターゲットユニットTUは、ターゲット支持部材であるポール6、プリズム8、および送光器70を備える。前記プリズム8は、前記ポール6の中心軸Aが前記プリズム8の光学中心を通過するように、前記ポール6の上端に支持されている。プリズム8の光学中心とポール6下端までの距離(取付高)は既知である。作業者の移動中は、前記ポール6の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつ運ばれ、測定点では、前記ポール6の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつポール6の下端を測定点に当接して、測量機10で、前記プリズム8を測距・測角する。
【0033】
送光器70は、円柱形状の筐体76と、光源74と、送光器制御部77と、送光器通信部78とを備える。前記送光器70は、プリズム8の上端に、前記筐体76の中心軸がポール6の中心軸Aと一致するように取付けられている。
【0034】
光源74は、例えば、赤外LED(Light Emitting Diode)であり、識別光Lとして、測距光とも、追尾光とも異なる波長の赤外光を射出する。光源74は、筐体76内部の中心近傍に、ポール6の中心軸A周りの全周に向けて識別光Lを射出するように取り付けられている。前記筐体76の外周面には、複数の送光口75が、ポール6の中心軸Aと直交する平面上に、周方向に等間隔で配置されている。前記送光口75の数は、図示の例において6個であるが、これに限定されない。図3(B)に示すように、中心軸A周りの全周方向に放射状に識別光Lcが射出されるようになっていることが好ましい。作業者が、意識的に前記送光口75を測量機10の方向に向ける必要がなく、作業が容易になるからである。しかし、送光方向はこれに限定されず、全周方向の一部、または一方向であってもよい。この場合は、作業者が前記ポール6を回転させて光の射出方向を前記測量機10に向ければよいからである。送光器70の配置は、プリズム8の上端側に限らず、下端側でもよい。また、前記光源74を前記筐体76内部に設けるのではなく、前記送光口75の位置にそれぞれ赤外LEDを設ける構成とすることもできる。
【0035】
送光器通信部78は、送光器70の通信インターフェースであり、測量機10との通信を可能とする。送光器通信部78を介して、測量機10からの命令信号が入力される。
【0036】
送光器制御部77は、例えば、CPUと、メモリが基板に実装されたマイクロコントローラであり、測量機10からの信号に応じて、光源74の作動および停止を制御する。送光器制御部77は、設定された周期Tで光源74を点滅させる。この点滅の周期の設定は、測量機10で行われ、各通信部25,78を介して送光器制御部77に入力される。発光周期は、自在に設定できるように構成してもよく、あらかじめ設定した複数ある発光周期の中から選択されてもよい。いずれの方法を選択しても、ターゲットユニットTU毎に異なる発光周期Tが設定され、各ターゲットユニットTUの発光周期Tは、測量機制御部29により記憶部28に記憶される。
【0037】
本実施形態において、送光器70は、測量機10からの信号に応じて、光源74の作動および停止を制御するようになっている。このことは、省電力の観点から有利である。しかし、これは必須ではなく、送光器70は、測定中、常時、所定の周期Tで点滅するようになっていてもよい。この場合、送光器通信部78は不要であり、手動で電源のON/OFFができるよう構成されてもよい。図示しない押圧スイッチを入力部として設けて、ポール6を把持する作業者が、前記光源74の点灯開始、点灯停止の命令や、測量機10への命令の送受信を、ターゲットユニットTU側から行うように設定してもよい。
【0038】
測量機10は、複数のターゲットユニットTUが存在する作業現場において、複数のターゲットユニットTUから、特定の一つのターゲットユニットTUを識別する識別機能を有する。
【0039】
本実施形態においては、三つのターゲットユニットTU1~TU3の光源74は、それぞれ異なる周期T1~T3で発光する。すなわち、送光器70は、識別光Lとして周期Tごとに、パルス光を送光する。識別光Lは前記送光器70を中心として水平方向の全周(360度)に送光され、測量機10の受光器40で受光されて、受光演算処理部291に送られる。本実施形態においては、発光のタイミングを受光のタイミングに合わせるための、前記受光演算処理部291とターゲットユニットTUの送光器制御部77の動作を同期させる必要はなく、受光信号を記憶部28に記憶するとともに、前記受光演算処理部291が取得した受光信号を指定されたターゲットユニットTUの周期Tごとに所定の方法で演算処理、例えば積算することで、識別光Lを検知して識別する。なお、受光器40は、異なる周期のパルス光を問題なく受光して識別できる性能を有する。
【0040】
図4は、受光器40の所定時間(受光周期TA)と、第1ターゲットユニットTU1~第3ターゲットユニットTU3の各送光器70の識別光L1~L3の発光を示す。横軸は経過時間を示す。
【0041】
ターゲットユニットTU1~TU3の送光器70は、それぞれ異なる周期T1~T3でパルス光を出射する。受光器40で受光された受光信号は、受光データとして受光演算処理部291に随時入力されて記憶部28に記憶される。記憶された受光データは、設定された受光周期TA毎に区切られ、区切られたデータは、時系列に順に保存される。
【0042】
受光周期TAを、識別したいターゲットユニットTUの識別光Lの発光周期Tにすることにより、識別したいターゲットユニットTUを識別光Lから識別できる。例えば、三つのターゲットユニットTU1~TU3から第1ターゲットユニットTU1を識別したい場合、受光器40の受光周期はT1に設定される。識別光L1~L3は、異なる周期で発光するため、例えあるときに全てが同時に発光しても、発光する周期はずれていく。
【0043】
次に、図4に示す各ターゲットユニットTU1~TU3の送光器70における識別光L1~L3の発光周期と、測量機10の受光器40の受光周期の関係を参照して、第1ターゲットユニットTU1を識別する方法について説明する。
【0044】
測量機10の測量機制御部29は、入力部23に入力された選択信号が、第1ターゲットユニットTU1を選択する信号であると、受光器40の受光周期を前記第1ターゲットTU1の発光周期T1と等しい周期TAに設定する。したがって、第2ターゲットユニットTU2と第3ターゲットユニットTU3は、各送光器70の発光周期T2,T3が前記受光器40の受光周期TAと異なることになる。
【0045】
第1ターゲットユニットTU1の識別光L1は発光周期T1と受光周期TAが等しいので、一回目の発光に続いて二回目以降の発光も一回目の発光に重なって受光される。一方、第2ターゲットユニットTU2と第3ターゲットユニットTU3の各識別光L2,L3は、一回目の発光は受光されるが、二回目以降の発光は受光周期TAと異なるので、一回目の発光に重ならない。前記各識別光L2,L3は、発光経過時間が受光経過時間の倍数となった時にだけ一回目の発光に重なることとなる。
【0046】
測量機制御部29は、受光器40受光した識別光L1を受光データとして記憶部23に記憶する。受光演算処理部291は、次の受光データを受光すると、記憶部23に記憶された受光データに積算する。このようにして受光演算処理部291は、受光データを受光するごとに、記憶部23に時系列に記憶し、前回積算された受光データに順次積算していく。この積算処理において、識別光L1の受光信号のみが増幅されて、識別光L1と各識別光L2,L3との相違を容易に識別できることになる。各発光周期T1,T2,T3は、少なくとも各5周期までは同期しないよう設定される。これによって、積算回数が少なくても、各識別光L1,L2,L3の識別を確実にすることができることが実験的に確認されている。なお、上述の通り識別光の発光周期と受光周期は積算する期間において大きくずれないことで足りる。これにより発光周期と受光周期を完全に同期することなくターゲットの識別が可能となる。
【0047】
なお、第2ターゲットユニットTU2を識別するには、受光周期TAを前記第2ターゲットTU2の発光周期T2と等しく設定すればよい。また、第3ターゲットユニットTU3を識別するには、受光周期TAを前記第3ターゲットTU3の発光周期T3と等しく設定すればよい。
【0048】
続いて、複数のターゲットユニットTUから特定のターゲットユニットTU、例えば第1ターゲットユニットTU1をロックして、測量する作業工程を、図5のフロー図に基いて説明する。
【0049】
まず、ステップS101でターゲットユニットTU1~TU3に備えられた各送光器70が、光源74を発光周期T1~T3で発光し、識別光L1~L3の送光を開始する。前記発光周期T1~T3は受光器40で識別光L1~L3を受光すると、記憶部23に記憶される。また、前記発光周期T1~T3は測量機10の入力部23から入力してもよい。発光周期T1~T3で送光するターゲットユニットTU1~TU3は、測量現場で所定位置に配置される。
【0050】
次に、ステップS102に移り、特定のターゲットユニットTU1が選択される。この選択は、測量機10の入力部23から入力してもよいし、ターゲットユニットTU1を把持する作業者が、図示しないコントローラや送光器70の送光器通信部78を介して、測量機通信部25に選択信号を送信してもよい。
【0051】
次に、ステップS103に移り、受光器40が受光動作を開始する。ここで、受光周期TAは、識別光L1の発光周期T1に設定される。
【0052】
次に、ステップS104に移り、測量機10がサーチを開始する、水平回転駆動部M1を駆動させて、托架部2bを水平回転軸H回りに水平回転させる。
【0053】
次に、ステップS105に移り、受光器40で受光された識別光L1は、受光データとして随時受光演算処理部291に入力され、上述したように演算処理されて、積算される。これによって、選択されたターゲットユニットTUとして第1ターゲットユニットTU1が識別される。
【0054】
次に、ステップS106に移り、測量機10は、第1ターゲットユニットTU1のプリズム8へ望遠鏡2cの光軸を合わせるために、鉛直回転駆動部M2の駆動により、前記望遠鏡2cを上下方向に駆動させて、追尾部27の追尾光を上下に走査し、前記プリズム8の反射光に基いて、前記プリズム8を捕捉する。
【0055】
次に、ステップS107に移り、第1ターゲットユニットTU1のプリズム8に対して測光光軸を位置合わせしてロックし、測距・測角を行う。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、演算処理は、識別対象として選択されたターゲットユニットTUの発光周期と測量機10の受光周期を同一に設定して、受光演算処理部291で同一周期の信号を確実に識別できればよく、上述した積算処理のほか、平均化処理でもよい。また、上述の実施形態を当業者の知識に基づいて変形することも可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 測量システム
8 プリズム
10 測量機
23 入力部
25 測量機通信部
26 測距部
27 追尾部
28 記憶部
29 測量機制御部
291 受光演算処理部
40 受光器
70 送光器
74 光源
77 送光器制御部
78 送光器通信部
TU ターゲットユニット
L 識別光
図1
図2
図3
図4
図5