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特開2024-142464金型製作支援システム、金型製作支援方法、及び学習用データセットの生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142464
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】金型製作支援システム、金型製作支援方法、及び学習用データセットの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20241003BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20241003BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20241003BHJP
   G06F 113/22 20200101ALN20241003BHJP
【FI】
G06F30/10 100
B21D22/00
G06F30/27
G06F113:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054608
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】伊原 涼平
(72)【発明者】
【氏名】和田 尭
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一
【テーマコード(参考)】
4E137
5B146
【Fターム(参考)】
4E137AA11
4E137AA17
4E137CB01
4E137CB03
5B146AA06
5B146BA04
5B146DC03
5B146EA02
5B146EA06
5B146EA11
5B146EC01
(57)【要約】
【課題】金型形状修正回数の低減を図ることが可能な金型製作支援システムを提供する。
【解決手段】金型製作支援システムは、金型の実形状を表す金型実形状データと、金型により成形された成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データとを取得する取得部と、学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、金型実形状データ及び成形品差分データから金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定する推定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の実形状を表す金型実形状データと、前記金型により成形された成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データとを取得する取得部と、
学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型実形状データ及び前記成形品差分データから前記金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定する推定部と、
を備える、金型製作支援システム。
【請求項2】
前記金型の実形状を表す元データを、前記学習済みモデルに入力するための前記金型実形状データに変換する変換部をさらに備える、
請求項1に記載の金型製作支援システム。
【請求項3】
前記金型目標形状データをNCデータに変換するCAM部と、前記NCデータに基づいて前記金型の実形状を修正する工作機械とをさらに備える、
請求項1に記載の金型製作支援システム。
【請求項4】
前記工作機械により修正された前記金型により成型された成形品の実形状を計測する形状計測器をさらに備える、
請求項3に記載の金型製作支援システム。
【請求項5】
前記形状計測器により計測された前記成形品の実形状と前記目標形状の差分を表す修正後差分データを算出する減算部をさらに備える、
請求項4に記載の金型製作支援システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記金型目標形状データを新たな金型実形状データとし、前記修正後差分データを新たな成形品差分データとして、新たな金型目標形状データを推定する、
請求項5に記載の金型製作支援システム。
【請求項7】
前記学習済みモデルにより推定された前記金型目標形状データを表示する表示部と、ユーザによる前記金型の目標形状の決定を受付ける受付部とをさらに備える、
請求項1に記載の金型製作支援システム。
【請求項8】
前記学習済みモデルにより推定された前記金型目標形状データと、前記形状計測器により計測された前記成形品の実形状を表す成形品実形状データとを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う学習部をさらに備える、
請求項5に記載の金型製作支援システム。
【請求項9】
金型の実形状を表す金型実形状データと、前記金型により成形された成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データとを取得し、
学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型実形状データ及び前記成形品差分データから前記金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定する、
金型製作支援方法。
【請求項10】
複数の金型形状データと、前記複数の金型形状データに対応する複数の成形品形状データとを用意し、
前記複数の金型形状データから第1及び第2の金型形状データを抽出し、
前記複数の成形品形状データから前記第1及び第2の金型形状データに対応する第1及び第2の成形品形状データを抽出し、
前記第1の金型形状データを学習用金型形状データとし、前記第1及び第2の成形品形状データの差分を学習用成形品差分データとし、前記第2の金型形状データを学習用金型目標形状データとする、
学習用データセットの生成方法。
【請求項11】
金型の形状を表す金型形状データを取得する取得部と、
学習用金型形状データを入力データとし、学習用成形品形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型形状データから成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを推定する推定部と、
を備える、金型製作支援システム。
【請求項12】
前記金型形状データと前記成形品予測形状データを表示する表示部をさらに備える、
請求項11に記載の金型製作支援システム。
【請求項13】
前記表示部は、前記成形品の目標形状を表す成形品目標形状データをさらに表示する、
請求項12に記載の金型製作支援システム。
【請求項14】
ユーザによる前記金型形状データの修正を受付ける受付部をさらに備え、
前記推定部は、修正された前記金型形状データから新たな成形品予測形状データを推定し、
前記表示部は、前記新たな成形品予測形状データを表示する、
請求項12に記載の金型製作支援システム。
【請求項15】
金型の形状を表す金型形状データを取得し、
学習用金型形状データを入力データとし、学習用成形品形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型形状データから成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを推定する、
金型製作支援方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型製作支援システム、金型製作支援方法、及び学習用データセットの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるCAE(Computer Aided Engineering)により金型の見込み形状データを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-119010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術では、見込み精度等が十分でないために金型形状修正回数が増大することがある。特に近年は、材料の高強度化による割れやしわの問題に加え、成形後のスプリングバック等により、成形品の寸法精度を満足することが困難となっており、金型形状修正回数が益々増大する傾向にある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、金型形状修正回数の低減を図ることが可能な金型製作支援システム、金型製作支援方法、及び学習用データセットの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の金型製作支援システムは、金型の実形状を表す金型実形状データと、前記金型により成形された成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データとを取得する取得部と、学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型実形状データ及び前記成形品差分データから前記金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定する推定部と、を備える。これによれば、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記金型の実形状を表す元データを、前記学習済みモデルに入力するための前記金型実形状データに変換する変換部をさらに備えてもよい。これによれば、元データから金型実形状データを得ることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記金型目標形状データをNCデータに変換するCAM部と、前記NCデータに基づいて前記金型の実形状を修正する工作機械とをさらに備えてもよい。これによれば、学習済みモデルにより推定された金型目標形状データに基づいて金型の実形状を修正することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記工作機械により修正された前記金型により成型された成形品の実形状を計測する形状計測器をさらに備えてもよい。これによれば、修正後の金型により成型された成形品の実形状を計測することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記形状計測器により計測された前記成形品の実形状と前記目標形状の差分を表す修正後差分データを算出する減算部をさらに備えてもよい。これによれば、修正後の金型により成型された成形品の実形状と目標形状の差分を算出することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記推定部は、前記金型目標形状データを新たな金型実形状データとし、前記修正後差分データを新たな成形品差分データとして、新たな金型目標形状データを推定してもよい。これによれば、金型目標形状データの推定を繰り返すことが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記学習済みモデルにより推定された前記金型目標形状データを表示する表示部と、ユーザによる前記金型の目標形状の決定を受付ける受付部とをさらに備えてもよい。これによれば、ユーザは、表示された金型目標形状データを見て、金型の目標形状を決定することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記学習済みモデルにより推定された前記金型目標形状データと、前記形状計測器により計測された前記成形品の実形状を表す成形品実形状データとを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う学習部をさらに備えてもよい。これによれば、学習済みモデルの推定精度をさらに向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様の金型製作支援方法は、金型の実形状を表す金型実形状データと、前記金型により成形された成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データとを取得し、学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型実形状データ及び前記成形品差分データから前記金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定する。これによれば、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様の学習用データセットの生成方法は、複数の金型形状データと、前記複数の金型形状データに対応する複数の成形品形状データとを用意し、前記複数の金型形状データから第1及び第2の金型形状データを抽出し、前記複数の成形品形状データから前記第1及び第2の金型形状データに対応する第1及び第2の成形品形状データを抽出し、前記第1の金型形状データを学習用金型形状データとし、前記第1及び第2の成形品形状データの差分を学習用成形品差分データとし、前記第2の金型形状データを学習用金型目標形状データとする。これによれば、学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により学習済みモデルを生成可能となり、煩雑なユーザのGUI操作等不要で金型目標形状の推定が可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様の金型製作支援システムは、金型の形状を表す金型形状データを取得する取得部と、学習用金型形状データを入力データとし、学習用成形品形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型形状データから成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを推定する推定部と、を備える。これによれば、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【0017】
上記態様において、前記金型形状データと前記成形品予測形状データを表示する表示部をさらに備えてもよい。これによれば、ユーザが金型形状データと成形品予測形状データを見比べることが可能となる。
【0018】
上記態様において、前記表示部は、前記成形品の目標形状を表す成形品目標形状データをさらに表示してもよい。これによれば、ユーザが成形品予測形状データと成形品目標形状データを見比べることも可能となる。
【0019】
上記態様において、ユーザによる前記金型形状データの修正を受付ける受付部をさらに備え、前記推定部は、修正された前記金型形状データから新たな成形品予測形状データを推定し、前記表示部は、前記新たな成形品予測形状データを表示してもよい。これによれば、ユーザにより修正された金型形状データから新たな成形品形状データを推定し、表示することが可能となる。
【0020】
また、本発明の他の態様の金型製作支援方法は、金型の形状を表す金型形状データを取得し、学習用金型形状データを入力データとし、学習用成形品形状データを教師データとして機械学習により予め生成された学習済みモデルを用いて、前記金型形状データから成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを推定する。これによれば、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る金型製作支援システムの例を示す図である。
図2】金型目標形状データの推定を説明するための図である。
図3】支援装置及びGUI端末の例を示す図である。
図4】金型製作支援方法の例を示す図である。
図5】学習用データセットの作成を説明するための図である。
図6】学習用データセットの作成を説明するための図である。
図7】第2実施形態に係る金型製作支援システムの例を示す図である。
図8】第3実施形態に係る金型製作支援システムの例を示す図である。
図9】第4実施形態に係る金型製作支援システムの例を示す図である。
図10】成形品形状データの推定を説明するための図である。
図11A】GUI端末の表示例を示す図である。
図11B】GUI端末の表示例を示す図である。
図11C】GUI端末の表示例を示す図である。
図11D】GUI端末の表示例を示す図である。
図12】金型製作支援方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る金型製作支援システム100Aの構成例を示す図である。金型製作支援システム100Aは、プレス成形に用いられる金型の製作を支援するためのシステムである。
【0024】
金型製作支援システム100Aは、支援装置1、GUI(Graphical User Interface)端末2、CAM/工作機械3、プレス機4、形状計測器5、及び成形解析DB(データベース)6を備えている。
【0025】
支援装置1は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータを備えている。GUI端末2は、ユーザUにGUIを提供する端末であり、支援装置1と同様にコンピュータを備えている。
【0026】
CPUは、ROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。プログラムは、情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0027】
本実施形態では、支援装置1とGUI端末2は、サーバとクライアントの関係にある。これに限らず、支援装置1とGUI端末2は一体であってもよい。すなわち、支援装置1の機能とGUI端末2の機能が1つの装置で実現されてもよい。
【0028】
CAM/工作機械3は、NCデータを生成するCAM部と、NCデータに基づいて金型を作製する工作機械とを含んでいる。
【0029】
プレス機4は、金型を用いたプレス成形により成形品を作製する。
【0030】
形状計測器5は、作製された成形品の形状を計測する。形状計測器5は、例えば3Dスキャナ、又は接触式若しくは非接触式の変位センサである。
【0031】
成形解析DB6は、過去に作製された金型のデータ及び成形品のデータを保存するデータベースである。金型のデータ及び成形品のデータは、試験・計測で得られる実際の形状データだけでなく、CAEで得られるデータも含む。
【0032】
以下、図1に示した(a)~(j)の工程について説明する。
【0033】
(a)ユーザUによりGUI端末2に、金型の実形状を表す元データ、当該金型により成形された成形品の実形状を表す元データ、及び成形品の目標形状を表す元データが入力される。元データは、例えばCADデータ又はSTLデータ等である。
【0034】
(b)GUI端末2は、元データに基づいて、学習済みモデルに入力するためのデータを生成し、支援装置1に出力する。具体的には、GUI端末2は、金型の実形状を表す元データを、学習済みモデルに入力するための金型実形状データに変換する。また、GUI端末2は、成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データを算出する。
【0035】
(c)支援装置1は、学習済みモデルを用いて、GUI端末2から取得した金型実形状データ及び成形品差分データから、金型の目標形状を表す金型目標形状データを推定し(図2参照)、GUI端末2に出力する。
【0036】
学習済みモデルは、学習用金型形状データ及び学習用成形品差分データを入力データとし、学習用金型目標形状データを教師データとして機械学習により予め生成されたモデルである。学習用データの生成については後述する。学習済みモデルは、例えばニューラルネットワーク又はガウス過程などの回帰モデルである。
【0037】
(d)GUI端末2は、支援装置1から出力された金型目標形状データを表示する。ユーザUは、GUI端末2に表示された金型目標形状データを確認し、採否を判断する。(e)GUI端末2は、ユーザによる金型目標形状の決定を受付けると、(f)金型目標形状データを出力する。
【0038】
(g)ユーザUによりCAM/工作機械3に金型目標形状データが入力される。(h)CAM/工作機械3は、金型目標形状データをNCデータに変換し、変換されたNCデータに基づいて金型の実形状を修正する。(i)プレス機4は、修正された金型により成形品を成形する。
【0039】
(j)形状計測器5は、修正された金型により成形された成形品の実形状を計測する。その後、金型目標形状データを新たな金型実形状データとし、計測された成形品の実形状と目標形状の差分を表す修正後差分データを新たな成形品差分データとして、(a)~(j)の工程が再度行われる。なお、金型実形状データには、実金型を計測で得られたデータを用いてもよい。
【0040】
以上に説明した(a)~(j)の工程は、成形品の実形状と目標形状の差分が無くなるまで繰り返される。
【0041】
図3は、支援装置1及びGUI端末2の構成例を示すブロック図である。支援装置1は、取得部11、推定部12、及び学習部13を備えている。これらの機能部は、支援装置1のCPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0042】
GUI端末2は、変換部21及び減算部22を備えている。これらの機能部は、GUI端末2のCPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0043】
また、GUI端末2は、受付部23及び表示部24を備えている。受付部23は、例えばキーボード又はマウス等であり、ユーザUの操作を受付ける。表示部24は、例えば液晶表示ディスプレイ等である。
【0044】
図4は、金型製作支援システム100Aにおいて実現される金型製作支援方法の手順例を示すフロー図である。支援装置1及びGUI端末2のそれぞれは、プログラムに従って同図に示す情報処理を実行する。
【0045】
まず、GUI端末2は、金型の実形状を表す元データ、当該金型により成形された成形品の実形状を表す元データ、及び成形品の目標形状を表す元データを取得する(S21、上記(a)の工程に相当)。
【0046】
次に、GUI端末2は、金型の実形状を表す元データを、学習済みモデルに入力するための金型実形状データに変換する(S22、変換部21としての処理、上記(b)の工程に相当)。金型実形状データは、例えばCADデータ又はSTLデータ等の点群データで表される。STLデータの計測点数が多い場合には、特徴量抽出による次元削減が行われてもよい。
【0047】
次に、GUI端末2は、成形品の実形状と目標形状の差分を表す成形品差分データを算出する(S23、減算部22としての処理、上記(b)の工程に相当)。
【0048】
支援装置1は、GUI端末2から金型実形状データ及び成形品差分データを取得する(S11、取得部11としての処理)。
【0049】
次に、支援装置1は、学習済みモデルを用いて、金型実形状データ及び成形品差分データから金型目標形状データを推定する(S12、推定部12としての処理、上記(c)の工程に相当)。
【0050】
GUI端末2は、支援装置1において学習済みモデルにより推定された金型目標形状データを表示部24に表示する(S24、上記(d)の工程に相当)。
【0051】
次に、GUI端末2は、受付部23においてユーザによる金型目標形状の決定を受付けると(S25:YES)、金型目標形状データを出力する(S26、上記(e)及び(f)の工程に相当)。
【0052】
金型目標形状データは、上述したように、CAM/工作機械3による金型の実形状の修正に用いられ、修正された金型により成形された成形品の形状は、形状計測器5により計測される(上記(g)ないし(j)の工程に相当)。
【0053】
GUI端末2は、形状計測器5により計測された成形品の実形状と目標形状の差分を表す修正後差分データを算出する(減算部22としての処理)。
【0054】
支援装置1は、GUI端末2から、金型目標形状データを新たな金型実形状データとし、修正後差分データを新たな成形品差分データとして、新たな金型目標形状データを推定する(推定部12としての処理)。
【0055】
本実施形態によれば、熟練者の経験、ノウハウ、勘などに頼ることなく、学習済みモデルによって適切な金型目標形状を迅速に得ることができるので、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【0056】
図5及び図6は、学習用データセットの作成を説明するための図である。学習用データセットの作成、及びそれを用いた学習済みモデルの作成は、支援装置1の学習部13によって行われる。
【0057】
図5に示すように、成形解析DB6には、複数の金型形状データと、それらに対応する複数の成形品形状データとが用意される。すなわち、金型の形状を表す金型形状データと、当該金型により成形された成形品の形状を表す成形品形状データとの組が複数用意される。条件A~Eは、金型の形状を指す。
【0058】
図6に示すように、成形解析DB6から、第1及び第2の金型形状データ並びにそれらに対応する第1及び第2の成形品形状データが抽出され、第1の金型形状データを学習用金型形状データとし、第1及び第2の成形品形状データの差分を学習用成形品差分データとし、第2の金型形状データを学習用金型目標形状データとして学習用データセットが作成される。
【0059】
例えば、条件Aの金型形状データ及び成形品形状データと、条件Bの金型形状データ及び成形品形状データとが抽出された場合、条件Aの金型形状データを学習用金型形状データとし、条件A及び条件Bの成形品形状データの差分を学習用成形品差分データとし、条件Bの金型形状データを学習用金型目標形状データとして、条件A-Bに基づく学習用データセットが作成される。
【0060】
同様に、条件A-C、条件A-D、及び条件A-Eに基づく学習用データセットも作成でき、さらには、条件B-A、条件B-C、・・・、条件C-A、条件C-B、・・・、条件D-A、条件D-B、・・・、条件E-A、条件E-B、・・・に基づく学習用データセットも作成できる。このように抽出する2つの条件の組み合わせを変えることで、多数の学習用データセットを作成することが可能となる。
【0061】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る金型製作支援システム100Bの例を示す図である。本実施形態では、(e)GUI端末2が金型目標形状の決定を受付けると、(k)GUI端末2からCAM/工作機械3へ金型目標形状データが直接出力される。これにより、金型修正の自動化を実現し、ユーザUの負担を軽減することが可能となる。
【0062】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る金型製作支援システム100Cの例を示す図である。本実施形態では、(j)形状計測器5が成形品の実形状を計測すると、(m)成形解析DB6に金型形状データと成形品形状データが登録され、支援装置1の学習部13により学習済みモデルの再学習が行われる。これにより、推定精度を向上させることが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態は、上記第1実施形態に(m)の工程を追加したものであるが、これに限らず、上記第2実施形態に(m)の工程を追加してもよい。
【0064】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態に係る金型製作支援システム100Dの例を示す図である。本実施形態では、金型の形状を表す金型形状データを入力すると、成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを出力する学習済みモデル(図10を参照)を用いて、金型形状を対話形式で決定することを実現している(「サロゲートモデル」ともいう)。
【0065】
以下、図9に示した(n)~(w)の工程について説明する。
【0066】
(n)ユーザUによりGUI端末2に、金型の形状を表す元データ及び成形品の目標形状を表す元データが入力される。元データは、例えばCADデータ又はSTLデータ等である。
【0067】
(o)GUI端末2は、元データに基づいて、学習済みモデルに入力するためのデータを生成し、支援装置1に出力する。具体的には、GUI端末2は、金型の形状を表す元データを、学習済みモデルに入力するための金型形状データに変換する。
【0068】
(p)支援装置1は、学習済みモデルを用いて、GUI端末2から取得した金型形状データから、成形品の予測形状を表す成形品予測形状データを推定し(図10参照)、GUI端末2に出力する。
【0069】
(q)GUI端末2は、支援装置1から出力された成形品予測形状データを表示する。ここでは、金型形状データと成形品予測形状データが並べて表示される。また、成形品予測形状データと、成形品の目標形状を表す成形品目標形状データとが重ねて表示される。
【0070】
(r)ユーザUは、GUI端末2に表示された金型形状データ、成形品予測形状データ、及び成形品目標形状データを確認しながら、金型形状データの修正を入力する。GUI端末2は、ユーザによる金型形状データの修正を受付ける。
【0071】
(s)GUI端末2は、修正された金型形状データを支援装置1に出力する。(t)支援装置1は、学習済みモデルを用いて、修正された金型形状データから、新たな成形品予測形状データを推定し、GUI端末2に出力する。
【0072】
(u)GUI端末2は、支援装置1から出力された新たな成形品予測形状データを表示する。ここでも、GUI端末2は、上記(q)の工程と同様に、金型形状データ、成形品予測形状データ、及び成形品目標形状データを表示する。
【0073】
ユーザUは、成形品予測形状と成形品目標形状の差分が無くなる、または、許容できる範囲まで誤差が小さくなるまで、金型形状データの修正を繰り返し、それに応じて上記(r)~(u)の工程が繰り返される。
【0074】
(v)ユーザUは、成形品予測形状と成形品目標形状の差分が無くなると、金型形状データの決定を入力する。(w)GUI端末2は、ユーザによる金型形状データの決定を受付けると、金型形状データを出力する。
【0075】
出力された金型形状データは、CAM/工作機械3による金型の作製に用いられ、作製された金型は、プレス機4によるプレス成形に用いられる(図1等参照)。
【0076】
図11A図11Dは、GUI端末2の表示例を示す図である。
【0077】
図11Aに示すように、GUI端末2の画面MGには、金型形状データに基づく金型形状オブジェクトDSと、成形品予測形状データに基づく成形品予測形状オブジェクトESとが並べて表示される(上記(q)の工程に相当)。また、成形品予測形状オブジェクトESと、成形品目標形状データに基づく成形品目標形状オブジェクトGSとが重ねて表示される。
【0078】
金型形状オブジェクトDSと成形品予測形状オブジェクトESを並べて表示することで、金型によってどのような形状の成形品が予測されるか視覚的に把握することが可能となる。また、成形品予測形状オブジェクトESと成形品目標形状オブジェクトGSを重ねて表示することで、成形品の予測形状と目標形状の差分を視覚的に把握することが可能となる。
【0079】
図11Bに示すように、ユーザUは、画面MGを見ながら、金型形状オブジェクトDSの形状を修正する(上記(r)の工程に相当)。金型形状オブジェクトDSの形状は、例えばポインタPTで外形線をドラッグすることによって修正される。金型形状オブジェクトDSの形状が修正されることによって、金型形状オブジェクトDSの基となる金型形状データが修正される。
【0080】
図11Cに示すように、金型形状オブジェクトDSの形状が修正されると、それに応じて成形品予測形状オブジェクトESの形状が変化する(上記(t)及び(u)の工程に相当)。すなわち、金型形状データが修正されると、修正された金型形状データから新たな成形品予測形状データが推定され、それにより、成形品予測形状オブジェクトESの形状が変化する。
【0081】
図11Dに示すように、ユーザUは、画面MGを見ながら、成形品予測形状オブジェクトESと成形品目標形状オブジェクトGSの差分が無くなる、または、許容できる範囲まで誤差が小さくなるまで、金型形状オブジェクトDSの形状の修正を繰り返す。最終的に、金型形状オブジェクトDSの形状が決定されると、金型形状オブジェクトDSに対応する金型形状データが出力される。
【0082】
図12は、金型製作支援システム100Dにおいて実現される金型製作支援方法の手順例を示すフロー図である。支援装置1及びGUI端末2のそれぞれは、プログラムに従って同図に示す情報処理を実行する。
【0083】
まず、GUI端末2は、金型形状を表す元データを取得し(S41、上記(n)の工程に相当)、学習済みモデルに入力するための金型形状データに変換する(S42、変換部21としての処理、上記(o)の工程に相当)。
【0084】
支援装置1は、GUI端末2から金型形状データを取得し(S31、取得部11としての処理)、学習済みモデルを用いて、金型形状データから成形品予測形状データを推定する(S32、推定部12としての処理、上記(p)の工程に相当)。
【0085】
GUI端末2は、金型形状データと、支援装置1において学習済みモデルにより推定された成形品予測形状データと、成形品目標形状データとを表示部24に表示する(S43、上記(q)の工程に相当、図11A参照)。
【0086】
GUI端末2は、受付部23においてユーザによる金型形状データの修正を受付けると(S44:YES)、修正された金型形状データを支援装置1に出力する(上記(r)及び(s)の工程に相当、図11B参照)。
【0087】
支援装置1は、GUI端末2から修正された金型形状データを取得すると(S31)、学習済みモデルを用いて、修正された金型形状データから新たな成形品予測形状データを推定する(S32、上記(t)の工程に相当)。
【0088】
GUI端末2は、それまで表示されていた成形品目標形状データに代えて、支援装置1において学習済みモデルにより推定された新たな成形品予測形状データを表示する(S43、上記(u)の工程に相当、図11C参照)。
【0089】
以上の処理は、ユーザUによる金型形状データの修正が完了するまで繰り返される。
【0090】
その後、GUI端末2は、受付部23においてユーザによる金型形状の決定を受付けると(S45:YES)、金型形状データを出力する(S46、上記(v)及び(w)の工程に相当)。
【0091】
本実施形態によれば、熟練者の経験、ノウハウ、勘などに頼ることなく、成形品目標形状を実現するための金型形状を対話形式で決定することができるので、金型形状修正回数の低減を図ることが可能となる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0093】
1 支援装置、2 GUI端末、3 CAM/工作機械、4 プレス機、5 形状計測器、6 成形解析DB、11 取得部、12 推定部、13 学習部、21 変換部、22 減算部、23 受付部、24 表示部、100 金型製作支援システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12