(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142467
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20241003BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B65D88/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054611
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正剛
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
(72)【発明者】
【氏名】森 英男
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AA08
3E170AA22
3E170AB29
3E170BA10
3E170CA01
3E170CA10
3E170CB03
3E170NA01
3E170NA03
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB13
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD04
3E172CA29
3E172DA03
3E172DA04
3E172HA04
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク内の圧力の過度な上昇を抑える。
【解決手段】液化二酸化炭素タンクシステムは、液化二酸化炭素を貯留するタンクと、タンク内の液化二酸化炭素をタンク外に抽出し、タンク内の気相部に戻す循環ラインと、循環ラインの途中に設けられ、液化二酸化炭素を冷却可能な冷却装置と、タンク内の圧力を検出する圧力センサーと、冷却された液化二酸化炭素の温度を検出する温度センサーと、冷却装置の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、圧力センサーによって検出されたタンク内の圧力に応じて、冷却装置における液化二酸化炭素の冷却能力を調整する第一制御部と、温度センサーによって検出された液化二酸化炭素の温度に応じて、冷却装置における液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる第二制御部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素を貯留するタンクと、
前記タンク内の前記液化二酸化炭素を前記タンク外に抽出し、前記タンク内の気相部に戻す循環ラインと、
前記循環ラインの途中に設けられ、前記液化二酸化炭素を冷却可能な冷却装置と、
前記タンク内の圧力を検出する圧力センサーと、
前記冷却装置によって冷却された前記液化二酸化炭素の温度を検出する温度センサーと、
前記冷却装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧力センサーによって検出された前記タンク内の圧力に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整する第一制御部と、
前記温度センサーによって検出された前記液化二酸化炭素の温度に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる第二制御部と、を含む
液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項2】
前記第二制御部は、前記温度センサーで検出された前記液化二酸化炭素の温度と、前記圧力センサーで検出された前記タンク内の圧力と、に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる
請求項1に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項3】
前記第一制御部は、前記圧力センサーで検出された前記タンク内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を高める
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項4】
前記第一制御部は、前記圧力センサーで検出された前記タンク内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる
請求項3に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項5】
前記タンク、前記循環ライン、前記冷却装置、前記圧力センサー、前記温度センサー、及び前記制御装置を収容し、可搬性を有するコンテナ、を更に備える
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項6】
前記冷却装置、及び前記制御装置は、外部から供給される電力により駆動される
請求項5に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項7】
前記循環ラインを通して循環される前記液化二酸化炭素を、前記タンク内の上部に噴射する噴射部を更に備える
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素タンクシステム。
【請求項8】
液化二酸化炭素を貯留するタンクと、
前記タンク内の前記液化二酸化炭素を前記タンク外に抽出し、前記タンク内の気相部に戻す循環ラインと、
前記循環ラインの途中に設けられ、前記液化二酸化炭素を冷却可能な冷却装置と、
前記タンク内の圧力を検出する圧力センサーと、
前記冷却装置で冷却された前記液化二酸化炭素の温度を検出する温度センサーと、を備える液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法であって、
前記圧力センサーで検出される前記タンク内の圧力に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整するステップと、
前記温度センサーで検出される前記液化二酸化炭素の温度に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させるステップと、を含む
液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを貯留するタンクにおいては、外部からの入熱により、タンク内に貯留した液化ガスが気化して、いわゆるボイルオフガスが生成される。ボイルオフガスが生成されると、タンク内の圧力が上昇する。このため、例えば特許文献1には、液化ガスを貯蔵するタンクから汲み上げた液化ガスを過冷却し、過冷却された液化ガスをタンク内に噴霧する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タンク内に液化二酸化炭素を貯留する場合、以下のような理由により、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成されることがある。すなわち、特許文献1に開示されたような構成を、液化二酸化炭素を貯蔵するタンクに適用しようとすると、タンク内で液化二酸化炭素を噴霧する際、噴霧ノズルの先端における液化二酸化炭素の圧力は、タンク運用圧に応じたものとなる。
【0005】
液化二酸化炭素の気相、液相、固相が共存する三重点の圧力(三重点圧力)は、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)の三重点圧力に比較して高い。一方で、タンク製造コスト低減のためにはタンク設計圧力を出来るだけ低く設定する必要がある。従い、液化二酸化炭素運用時におけるタンク運用圧と三重点圧力の差異がLNGやLPGに比較して小さくなる。その結果、タンク運用圧と噴霧される液化二酸化炭素の温度によっては、噴霧ノズルの先端における液化二酸化炭素の圧力及び温度が三重点に近づいてしまい、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。ドライアイスが生成されると、液化二酸化炭素の流れが阻害され、タンクの運用に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク内の圧力の過度な上昇を抑えることができる液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る液化二酸化炭素タンクシステムは、タンクと、循環ラインと、冷却装置と、圧力センサーと、温度センサーと、制御装置と、を備える。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留する。前記循環ラインは、前記タンク内の前記液化二酸化炭素を前記タンク外に抽出し、前記タンク内の気相部に戻す。前記冷却装置は、前記循環ラインの途中に設けられ、液化二酸化炭素を冷却可能である。前記圧力センサーは、前記タンク内の圧力を検出する。前記温度センサーは、前記冷却装置によって冷却された前記液化二酸化炭素の温度を検出する。前記制御装置は、前記冷却装置の動作を制御する。前記制御装置は、第一制御部と、第二制御部と、を含む。前記第一制御部は、前記圧力センサーによって検出された前記タンク内の圧力に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整する。前記第二制御部は、前記温度センサーによって検出された前記液化二酸化炭素の温度に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる。
【0008】
本開示に係る液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法は、液化二酸化炭素タンクシステムを制御する。前記液化二酸化炭素タンクシステムは、タンクと、循環ラインと、圧力センサーと、温度センサーと、を備える。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留する。前記循環ラインは、前記タンク内の前記液化二酸化炭素を前記タンク外に抽出し、前記タンク内の気相部に戻す。前記冷却装置は、前記循環ラインの途中に設けられている。前記冷却装置は、前記液化二酸化炭素を冷却可能である。前記圧力センサーは、前記タンク内の圧力を検出する。前記温度センサーは、前記冷却装置によって冷却された前記液化二酸化炭素の温度を検出する。前記液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法は、冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整するステップと、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させるステップと、を含む。前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整するステップでは、前記圧力センサーで検出される前記タンク内の圧力に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を調整する。前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させるステップでは、前記温度センサーで検出される前記液化二酸化炭素の温度に応じて、前記冷却装置における前記液化二酸化炭素の冷却能力を低下させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法によれば、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムの構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムに備えられた冷却装置の構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態における液化二酸化炭素タンクシステムにおいて、液化二酸化炭素の過冷却を行っていない状態を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態における液化二酸化炭素タンクシステムにおいて、液化二酸化炭素を過冷却し、タンク内の気相部に戻している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法について、
図1~
図6を参照して説明する。
(液化二酸化炭素タンクシステムの全体構成)
図1に示すように、この実施形態の液化二酸化炭素タンクシステム1は、コンテナ5と、タンク3と、冷却装置2と、を備えている。
【0012】
コンテナ5は、中空の直方体状をなしている。本実施形態で例示するコンテナ5は、ISO規格コンテナであり、いわゆる20フィートコンテナ、または40フィートコンテナである。コンテナ5は、トレーラ等の車両の荷台(図示せず)に搭載可能とされている。コンテナ5は、下部枠51と、複数の支柱52と、上部枠54と、を有するフレーム50を備えている。下部枠51は、上下方向Dvから見た際に、上下方向Dvに交差する第一方向Daを長辺とし、上下方向Dv及び第一方向Daに交差する第二方向Dwを短辺とする長方形状の枠状に形成されている。複数の支柱52は、下部枠51の少なくとも四隅に設けられている。支柱52は、下部枠51の四隅に加えて、他の部位に設けられていてもよい。各支柱52は、下部枠51から上下方向Dvの上方に立ち上がっている。上部枠54は、複数の支柱52上に設けられている。上部枠54は、下部枠51と同様、上下方向Dvから見た際に、第一方向Daを長辺とし、第二方向Dwを短辺とする長方形状の枠状に形成されている。上部枠54は、複数の支柱52の上端部同士を接続している。
なお、コンテナ5は、フレーム50を備えるようにしたが、その構成は適宜変更可能である。また、コンテナ5は、フレーム50を備えた構成に限らず、中空箱状であってもよい。
【0013】
タンク3は、コンテナ5のフレーム50内に設けられている。タンク3は、タンク本体31と、アウターシェル32と、断熱部33と、給排ライン35と、圧力検出ライン36と、循環ライン40と、を有している。
【0014】
タンク本体31は、フレーム50内で、例えば、第一方向Daに延びる円筒状をなしている。タンク本体31は、筒状部31aと、鏡板部31bと、を備えている。筒状部31aは、第一方向Daを長手方向Dxとして延びている。この実施形態において、筒状部31aは、円筒状に形成され、その長手方向Dxに直交する断面形状が円形をなしている。鏡板部31bは、筒状部31aの長手方向Dxの両端部にそれぞれ配置されている。各鏡板部31bは、球面状をなし、筒状部31aの長手方向Dx両端の開口を閉塞している。タンク本体31は、その内部に液化二酸化炭素Lを貯留可能である。タンク本体31内の下部には、液化二酸化炭素Lが貯留される。タンク本体31内の上部の気相部Vには、液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスを含む気体が貯留される。
【0015】
アウターシェル32は、フレーム50内で、タンク本体31の全体をタンク本体31の外側から覆うように設けられている。アウターシェル32は、筒状シェル部32aと、球面状シェル部32bと、を備えている。筒状シェル部32aは、第一方向Daを長手方向Dxとして延びている。この実施形態において、筒状シェル部32aは、円筒状に形成され、その長手方向Dxに直交する断面形状が円形をなしている。筒状シェル部32aは、タンク本体31の筒状シェル部32aに対して径方向の外側に間隔をあけて設けられている。球面状シェル部32bは、筒状シェル部32aの長手方向Dxの両端部にそれぞれ配置されている。各球面状シェル部32bは、鏡板部31bに対しての径方向外側に間隔をあけて設けられている。各球面状シェル部32bは、筒状シェル部32aの長手方向Dx両端の開口を閉塞している。なお、タンク本体31、及びアウターシェル32は、円筒状に限られるものではなく、球形、方形等、他の形状であってもよい。アウターシェル32は、コンテナ5の下部枠51上に、例えば、複数の支脚34を介して支持されている。なお、アウターシェル32のフレーム50に対する取付構造は、上記に限られない。例えば、アウターシェル32は、支脚34に限らず、支柱52や上部枠54に、適宜のブラケットを介して支持するようにしてもよい。
【0016】
断熱部33は、例えば、タンク本体31の外周面と、アウターシェル32の内周面との間に充填された断熱材からなる。このような断熱部33は、例えば、発泡スチロール、発泡ウレタン等により形成できる。また、断熱部33は、タンク本体31の外周面と、アウターシェル32の内周面との間の空間を、定められた圧力以下の負圧状態として密封する、いわゆる真空断熱構造としてもよい。断熱部33は、タンク本体31の外部からの入熱を抑える。
【0017】
給排ライン35は、タンク本体31内に液化二酸化炭素Lを給排するために用いられる。給排ライン35の一端35aは、タンク本体31内の底部で、タンク本体31内に連通するよう設けられている。給排ライン35の一端35aは、例えば、タンク本体31の外部からタンク本体31の底部を貫通して、タンク本体31内に延びている。タンク本体31内の底部から液化二酸化炭素Lを抽出できるのであれば、給排ライン35のレイアウトは設計事項であり、例えば、タンク本体31の底部に限らず、タンク本体31の他の部位を貫通して、タンク本体31内に延びていてもよい。給排ライン35の他端35bは、コンテナ5のフレーム50に、適宜のブラケットを介して支持された接続部材120に接続されている。接続部材120は、コンテナ5の外部に向けて露出している。接続部材120は、コンテナ5の外部から、接続配管(図示なし)の一端が接続可能とされている。接続配管の他端は、液化二酸化炭素運搬船、陸上の液化二酸化炭素供給施設、液化二酸化炭素を搭載可能なタンクローリー等に備えられた外部のタンク(図示せず)に接続可能とされる。また、給排ライン35の途中には、開閉弁35vが設けられている。
【0018】
給排ライン35は、外部のタンクから、接続配管(図示なし)を通して供給される液化二酸化炭素Lを、タンク本体31内に積み込む際に用いられる。また、給排ライン35は、タンク本体31内の液化二酸化炭素Lを、外部のタンクに払い出す際に用いられる。
【0019】
圧力検出ライン36は、タンク本体31内の圧力を検出するために用いられる。圧力検出ライン36の一端36aは、タンク本体31の底部に接続されている。圧力検出ライン36の他端36bは、タンク本体31の頂部に接続されている。圧力検出ライン36の上部には、分岐管36sを介して、圧力センサー37が接続されている。また、圧力検出ライン36の途中には、液位計38が設けられている。
【0020】
液位計38に対し、圧力検出ライン36の一端36a側には、開閉弁39Vが設けられている。圧力センサー37、及び液位計38に対し、圧力検出ライン36の他端36b側には、開閉弁39Wが設けられている。なお、ここで示した圧力センサー37、及び液位計38の配置は一例に過ぎず、圧力センサー37、及び液位計38の配置は上記配置に限られない。例えば、圧力センサー37は、タンク本体31の頂部に、直接接続した管を介して設けてもよい。
【0021】
圧力センサー37は、タンク本体31内の気相部Vの圧力を検出する。開閉弁39V、及び39Wを開いた状態で、液位計38には、圧力検出ライン36を通して、タンク本体31内の液相と気相との差圧が作用する。液位計38は、タンク本体31内の差圧に基づいてタンク本体31内の液位を検出する。なお、開閉弁39V、及び39Wは、給排ライン35を通して、タンク本体31に対して液化二酸化炭素Lの積み込み、払い出しを行う場合を除き、タンク本体31内に液化二酸化炭素Lが貯留されている間、常に開いている。
【0022】
循環ライン40は、タンク本体31内の液化二酸化炭素Lを抽出し、タンク本体31内の気相部Vに戻すために用いられる。循環ライン40の一端40aは、タンク本体31の底部に接続されている。循環ライン40の他端40bは、タンク本体31の頂部に接続されている。循環ライン40の他端40bは、例えば、タンク本体31の外部からタンク本体31の頂部を貫通して、タンク本体31内で噴射部45に接続されている。噴射部45は、タンク本体31内の上部に配置されている。噴射部45は、循環ライン40を通してタンク本体31内に戻される液化二酸化炭素Lを、タンク本体31内の上部の気相部Vに噴射する。なお、ここで、循環ライン40の配置は設計事項であり、循環ライン40がタンク本体31を貫通する位置は、タンク本体31の頂部に限らず、他の部位であってもよい。
【0023】
循環ライン40の途中には、後述する冷却装置2が設けられている。循環ライン40は、循環ライン第一部40Aと、循環ライン第二部40Bと、を備えている。循環ライン第一部40Aは、冷却装置2を挟んで一方の側(タンク本体31の底部に接続される側)に配置されている。循環ライン第一部40Aは、その一部を、給排ライン35と共有している。循環ライン第二部40Bは、冷却装置2を挟んで他方の側(タンク本体31の頂部に接続される側)に配置されている。循環ライン第一部40Aの途中には、開閉弁41Vと、ポンプ42とが、設けられている。循環ライン第二部40Bの途中には、開閉弁41Wが設けられている。
【0024】
図2は、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムに備えられた冷却装置の構成を示す図である。
冷却装置2は、循環ライン40を通してタンク本体31内の底部から送り込まれた液化二酸化炭素Lを過冷却(冷却)する。
図2に示すように、冷却装置2は、圧縮機21と、コンデンサ22と、ファン23と、膨張弁24と、熱交換器25と、制御装置60と、を備えている。圧縮機21、コンデンサ22、膨張弁24、及び熱交換器25は、冷媒回路26上に設けられている。圧縮機21は、冷媒回路26を構成する冷媒配管内を流れる冷媒を圧縮する。コンデンサ22は、コンテナ5内の空気と、冷媒配管内を流れる冷媒との間で熱交換を行う。ファン23は、タンク本体31外の大気中の空気を吸い込み、コンデンサ22に向かって送風する。膨張弁24は、コンデンサ22を経た冷媒を膨張させる。熱交換器25は、コンデンサ22で膨張されて冷媒配管内を流れる冷媒と、循環ライン40内を流れる液化二酸化炭素Lとの間で熱交換を行う。熱交換器25は、冷媒との熱交換により、液化二酸化炭素Lを冷却し、過冷却状態とする。なお、ファン23に代えて、他の冷熱源を用いてもよい。
【0025】
冷却装置2の出口側には、温度センサー28が設けられている。温度センサー28は、循環ライン40の循環ライン第二部40Bに設けられている。温度センサー28は、冷却装置2で過冷却された液化二酸化炭素Lの温度を検出する。
【0026】
制御装置60は、主に冷却装置2の動作を制御する。
図1に示すように、制御装置60には、電源ライン100の一端が接続されている。電源ライン100の他端は、電源接続部101に接続されている。本実施形態で例示する電源接続部101は、支柱52に支持されている。電源接続部101は、液化二酸化炭素タンクシステム1の外部から、電源供給配線(図示せず)の一端が接続可能とされている。電源供給配線(図示せず)の他端は、液化二酸化炭素タンクシステム1の外部の電源に接続される。液化二酸化炭素タンクシステム1の外部の電源としては、コンテナ5を搭載する車両、タンク本体31内に貯留される液化二酸化炭素Lを運搬する船舶等に設けられた電源装置が挙げられる。電源装置としては、オルタネーターを含む発電機、バッテリー等が挙げられる。また、液化二酸化炭素タンクシステム1の外部の電源としては、陸上の液化二酸化炭素供給施設から供給される商用電源が含まれる。制御装置60は、このような液化二酸化炭素タンクシステム1の外部の電源から供給される電力により駆動される。なお、電源接続部101は、支柱52に支持される構成に限られない。例えば、冷却装置2の筐体の外面等に支持されていてもよい。
【0027】
図3は、本開示の実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
制御装置60は、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータと、コンピュータの周辺回路や周辺装置等のハードウェアを用いて構成することができる。
図3に示すように、制御装置60は、ハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、信号入力部70、第一制御部71、第二制御部72、出力部75の各構成を備える。
【0028】
信号入力部70は、圧力センサー37で検出されるタンク本体31内の圧力、液位計38で検出されるタンク本体31内の液位、温度センサー28で検出される冷却装置2で過冷却された液化二酸化炭素Lの温度の検出信号を受信する。
【0029】
第一制御部71は、圧力センサー37によって検出されたタンク本体31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力(冷却能力)を調整する。
第一制御部71は、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を高める。本実施形態では、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を行っていない状態から、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始する。
【0030】
冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を開始するに際し、第一制御部71は、圧縮機21、及びファン23を作動させる。これにより、冷媒回路内を冷媒が循環する。また、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始するに際し、第一制御部71は、開閉弁41V、41Wを開くとともに、ポンプ42を作動させる。これにより、循環ライン40の一端40aから、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lが抽出され、冷却装置2へと送り込まれる。冷却装置2に送り込まれた液化二酸化炭素Lは、熱交換器25で冷媒と熱交換を行うことにより、過冷却され、循環ライン40の他端40bへと送られる。循環ライン40の他端40bへと送られた液化二酸化炭素Lは、噴射部45からタンク本体31内の気相部Vに噴射される。過冷却された液化二酸化炭素Lが噴射されることで、気相部Vに含まれるボイルオフガスは再液化される。ボイルオフガスが再液化されることで、タンク本体31内の気相部Vの圧力は低下する。
【0031】
また、第一制御部71は、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させる。ここで、第二閾値は、第一閾値よりも低い。本実施形態では、第一制御部71は、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、液化二酸化炭素Lの過冷却を停止させる。冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を停止するに際し、第一制御部71は、圧縮機21、及びファン23を停止させる。また、第一制御部71は、ポンプ42を停止するとともに、開閉弁41V,41Wを閉じる。
【0032】
第二制御部72は、冷却装置2で液化二酸化炭素Lを過冷却している間、温度センサー28によって検出された液化二酸化炭素Lの温度に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させる。第二制御部72は、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力と、に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力(冷却能力)を低下させる。本実施形態では、第二制御部72は、予め設定された気相部Vの圧力と冷却装置2の出口における液化二酸化炭素Lの温度と二酸化炭素の状態(三重点を含む)とのマップ(以下、単に予め設定されたマップと称する)に基づいて、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力とが三重点に近づいているか否かを判定する。第二制御部72は、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力とが三重点に近づいていると判定された場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を停止する。これにより、第二制御部72は、循環ライン40の他端40bに設けられた噴射部45からタンク本体31内の気相部Vに戻す液化二酸化炭素Lから、ドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0033】
冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を停止するに際し、第二制御部72は、圧縮機21、及びファン23を停止させる。また、第一制御部71は、ポンプ42を停止するとともに、開閉弁41V,41Wを閉じる。
【0034】
出力部75は、第一制御部71、及び第二制御部72の制御に応じて、圧縮機21、ファン23、開閉弁41V,41W、及びポンプ42に対し、制御信号を出力する。
【0035】
(液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法の手順)
図4は、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法の手順を示すフローチャートである。
図5は、本開示の実施形態における液化二酸化炭素タンクシステムにおいて、液化二酸化炭素の過冷却を行っていない状態を示す図である。
図6は、本開示の実施形態における液化二酸化炭素タンクシステムにおいて、液化二酸化炭素を過冷却し、タンク内の気相部に戻している状態を示す図である。
図4に示すように、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法S10は、タンク本体31内の圧力を取得するステップS11と、タンク本体31内の圧力が第一閾値以上であるか否かを判定するステップS12と、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始するステップS13と、液化二酸化炭素Lの温度を取得するステップS14と、液化二酸化炭素Lの温度が三重点に近づいているか否かを判定するステップS15と、タンク本体31内の圧力が第二閾値以下であるか否かを判定するステップS16と、液化二酸化炭素Lの過冷却を停止するステップS17と、を含んでいる。液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法S10は、タンク本体31内に液化二酸化炭素Lを積み込んだ後、タンク本体31内の液化二酸化炭素Lを払い出すまでの間、実行される。
【0036】
タンク本体31内に液化二酸化炭素Lを積み込んだ後、通常時においては、
図5に示すように、循環ライン40の開閉弁41V,41Wは閉じている。また、ポンプ42、及び圧縮機21は停止している。
【0037】
タンク本体31内の圧力を取得するステップS11では、制御装置60の信号入力部70で、圧力センサー37で検出したタンク本体31内の気相部Vの圧力の検出結果を取得する。
【0038】
タンク本体31内の圧力が第一閾値以上であるか否かを判定するステップS12では、第一制御部71により、ステップS11で取得されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上であるか否かを判定する。
この判定の結果、タンク本体31内の圧力が、第一閾値未満であった場合(ステップS12でNo)、ステップS11に戻る。
また、タンク本体31内の圧力が、第一閾値以上であった場合(ステップS12でYes)、ステップS13に進む。
【0039】
液化二酸化炭素Lの過冷却を開始するステップS13では、第一制御部71が、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始する。これには、
図6に示すように、第一制御部71は、圧縮機21、及びファン23を作動させる。これにより、冷媒回路内を冷媒が循環する。また、第一制御部71は、開閉弁41V,41Wを開くとともに、ポンプ42を作動させる。これにより、循環ライン40の一端40aから、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lが抽出され、冷却装置2へと送り込まれる。冷却装置2に送り込まれた液化二酸化炭素Lは、熱交換器25で冷媒と熱交換を行うことにより、過冷却され、循環ライン40の他端40bへと送られる。
【0040】
液化二酸化炭素Lの温度を取得するステップS14では、温度センサー28により検出される、冷却装置2で過冷却された液化二酸化炭素Lの温度を取得する。
【0041】
液化二酸化炭素Lの温度が三重点に近づいているか否かを判定するステップS15では、第二制御部72が、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、ステップS11で取得されたタンク本体31内の圧力とを基に、予め設定されたマップを参照し、噴射部45からタンク本体31内の気相部Vに戻す液化二酸化炭素Lが、三重点に近づいているか否かを判定する。
この判定の結果、過冷却された液化二酸化炭素Lが、三重点に近づいているとは判定されていない場合(ステップS15でNo)、ステップS16に進む。
【0042】
また、過冷却された液化二酸化炭素Lが、三重点に近づいている、と判定された場合(ステップS15でYes)、ステップS17に進む。この場合、液化二酸化炭素Lの過冷却を停止するステップS17は、温度センサー28で検出される液化二酸化炭素Lの温度に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させるステップとして実行される。
この場合、第二制御部72は、予め設定されたマップに基づいて、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力と、に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を停止する。これには、第二制御部72は、圧縮機21、及びファン23を停止させる。これにより、第二制御部72は、循環ライン40の他端40bに設けられた噴射部45からタンク本体31内の気相部Vに、過冷却された液化二酸化炭素を戻すことが中止される。
【0043】
タンク本体31内の圧力が第二閾値以下であるか否かを判定するステップS16では、第一制御部71が、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下であるか否かを判定する。
この判定の結果、タンク本体31内の圧力が、第二閾値以上であった場合(ステップS16でNo)、ステップS14に戻る。
また、タンク本体31内の圧力が、第二閾値以下であった場合(ステップS16でYes)、ステップS17に進む。
【0044】
ステップS16に続いてステップS17が実行される場合、液化二酸化炭素Lの過冷却を停止するステップS17は、圧力センサー37で検出されるタンク本体31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を調整するステップS16として実行される。この場合、第一制御部71は、圧縮機21、及びファン23を停止させる。また、第一制御部71は、ポンプ42を停止するとともに、開閉弁41V、41Wを閉じる。
【0045】
(作用効果)
上記実施形態の液化二酸化炭素タンクシステム、及び液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法では、外部からの入熱により、タンク本体31内の液化二酸化炭素Lが気化し、いわゆるボイルオフガス(二酸化炭素ガス)が生成される。生成されたボイルオフガスは、タンク本体31内の上部の気相部Vに溜まる。タンク本体31内のボイルオフガスを再液化するには、ボイルオフガスを冷却する必要がある。このため、上記実施形態では、タンク本体31内の液化二酸化炭素Lを、循環ライン40を通してタンク本体31外に抽出し、循環ライン40の途中に設けられた冷却装置2で過冷却している。そして、冷却装置2で過冷却された液化二酸化炭素Lを、循環ライン40を通して、タンク本体31内の気相部Vに戻すと、過冷却された液化二酸化炭素Lによって、タンク本体31内の気相部Vに存在するボイルオフガスが冷却されて再液化される。このようにして、タンク本体31内におけるボイルオフガスの生成が抑えられる。
【0046】
上記実施形態の冷却装置2の動作は、制御装置60によって制御されている。さらに、タンク本体31内の圧力が圧力センサー37によって検出されている。タンク本体31内でボイルオフガスが生成されると、タンク本体31内の圧力が上昇する。制御装置60の第一制御部71は、圧力センサー37によって検出されたタンク本体31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を調整する。例えば、タンク本体31内でボイルオフガスが生成されることでタンク本体31内の圧力が上昇した場合に、第一制御部71により、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を高めることができる。これにより、過冷却された液化二酸化炭素Lをタンク本体31内の気相部Vに戻すことによる、ボイルオフガスの再液化能力が高まる。
【0047】
上記実施形態では、更に、温度センサー28が、冷却装置2によって過冷却された液化二酸化炭素Lの温度を検出している。そして、第二制御部72は、温度センサー28によって検出された液化二酸化炭素Lの温度に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させるようになっている。これにより、液化二酸化炭素Lが循環ライン40を通してタンク本体31内の気相部Vに戻された際に、液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されてしまうような温度まで、冷却装置2で液化二酸化炭素Lを過冷却してしまうことが抑えられる。
その結果、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク本体31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【0048】
上記実施形態では、更に、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力と、に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させている。したがって、循環ライン40を通してタンク本体31内の気相部Vに戻された液化二酸化炭素Lが、三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されてしまうことが有効に抑えられる。
【0049】
上記実施形態では、更に、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を高めている。これにより、タンク本体31内でボイルオフガスが生成されることでタンク本体31内の圧力が上昇し、第一閾値以上となった場合には、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力が高められる。したがって、過冷却された液化二酸化炭素Lをタンク本体31内の気相部Vに戻すことによる、ボイルオフガスの再液化能力が高められる。
ここで、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を高めることには、冷却装置2による液化二酸化炭素Lの過冷却を停止した状態から、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始することも含まれる。
【0050】
上記実施形態では、過冷却された液化二酸化炭素Lがタンク本体31内の気相部Vに供給され、タンク本体31内のボイルオフガスが再液化されると、タンク本体31内の圧力が低下する。そして、圧力センサー37で検出されたタンク本体31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を低下させている。これにより、ボイルオフガスの再液化を停止させることができる。
【0051】
上記実施形態の液化二酸化炭素タンクシステム1では、タンク本体31、循環ライン40、冷却装置2、圧力センサー37、温度センサー28、及び制御装置60が、可搬性を有するコンテナ5に収容されている。このようにすることで、可搬性を有するコンテナ5に収容されたタンク本体31において、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク本体31内の圧力の過度な上昇を抑えつつ、ドライアイスの生成を抑えることができる。
【0052】
上記実施形態では、冷却装置2及び制御装置60に、液化二酸化炭素タンクシステム1の外部から電力を供給している。これにより、可搬性を有するコンテナ5に収容されたタンク本体31を備える液化二酸化炭素タンクシステム1において、冷却装置2、及び制御装置60を駆動させるための発電機等を省略することができる。これにより、コンテナ5内にタンク3設置するための広いスペースを確保することができるとともに、液化二酸化炭素タンクシステム1の輸送中等においても、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク本体31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【0053】
上記実施形態では、循環ライン40を通して循環される液化二酸化炭素Lを、噴射部45により、タンク本体31内の上部に噴射することができる。これにより、タンク本体31内の気相部Vに位置するボイルオフガスを、効率良く再液化することができる。
【0054】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、液化二酸化炭素Lの過冷却を開始するステップS13で、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を開始した後、圧力センサー37によって検出されたタンク本体31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を停止させるようにした。しかし、これに限らず、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却を開始した後、圧力センサー37によって検出されたタンク本体31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの過冷却能力を高めたり、低下させたりするようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、冷却装置2で過冷却した液化二酸化炭素Lを、タンク本体31内の気相部Vに戻すことで、タンク本体31内のボイルオフガスを再液化させるようにしたが、これに限られない。例えば、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lの温度が、十分に低く、過冷却状態、または過冷却状態に近い場合、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lをタンク本体31の底部から抽出し、タンク本体31内の気相部Vに戻すようにしてもよい。この場合、タンク本体31内の底部に温度センサーを追設するのが好ましい。制御装置60は、タンク本体31内の底部に設けられた温度センサーにより、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lの温度を検出する。制御装置60では、温度センサーの検出結果に基づいて、タンク本体31内の底部の液化二酸化炭素Lをタンク本体31の底部から抽出し、タンク本体31内の気相部Vに戻す。
【0056】
また、上記実施形態では、冷却装置2で過冷却した液化二酸化炭素Lを、タンク本体31内の気相部Vに戻すようにしたが、これに限られない。冷却装置2で冷却した液化二酸化炭素Lをタンク本体31内の気相部Vに戻すことで、タンク本体31内のボイルオフガスを再液化させることができるのであれば、冷却装置3では、液化二酸化炭素Lを、過冷却に至らないように冷却してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、噴射部45が、循環ライン40を通してタンク本体31内に戻される液化二酸化炭素Lを、タンク本体31内の上部の気相部Vに噴射するようにしたが、これに限られない。例えば、循環ライン40を通してタンク本体31内の気相部Vに戻す液化二酸化炭素Lを、噴射せずに、単に流下させるようにしてもよい。これにより、液化二酸化炭素Lの表層部の温度を低下させ、気相部Vのボイルオフガスを再液化させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、コンテナ5は、トレーラ等の車両の荷台(図示せず)に搭載可能とされているが、もちろん、クレーン等による揚重、船舶等への搭載も可能である。さらに、液化二酸化炭素タンクシステム1は、船舶を含む浮体に、固定的に設置するようにしてもよい。液化二酸化炭素タンクシステム1を、船舶を含む浮体に固定的に設置する場合、液化二酸化炭素タンクシステム1は、コンテナ5を備えない構成としてもよい。
【0059】
<付記>
実施形態に記載の液化二酸化炭素タンクシステム1、液化二酸化炭素タンクシステム1の制御方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0060】
(1)第1の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、液化二酸化炭素Lを貯留するタンク31と、前記タンク31内の前記液化二酸化炭素Lを前記タンク31外に抽出し、前記タンク31内の気相部Vに戻す循環ライン40と、前記循環ライン40の途中に設けられ、前記液化二酸化炭素Lを冷却可能な冷却装置2と、前記タンク31内の圧力を検出する圧力センサー37と、前記冷却装置2によって冷却された前記液化二酸化炭素Lの温度を検出する温度センサー28と、前記冷却装置2の動作を制御する制御装置60と、を備え、前記制御装置60は、前記圧力センサー37によって検出された前記タンク31内の圧力に応じて、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を調整する第一制御部71と、前記温度センサー28によって検出された前記液化二酸化炭素Lの温度に応じて、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させる第二制御部72と、を含む。
タンクの例としては、タンク本体が挙げられる。
【0061】
この液化二酸化炭素タンクシステム1は、外部からの入熱により、タンク31内の液化二酸化炭素Lが気化し、いわゆるボイルオフガス(二酸化炭素ガス)が生成されることがある。生成されたボイルオフガスは、タンク31内の上部の気相部Vに溜まる。タンク31内のボイルオフガスを再液化するには、ボイルオフガスを冷却する必要がある。このため、タンク31内の液化二酸化炭素Lを、循環ライン40を通してタンク31外に抽出し、循環ライン40の途中に設けられた冷却装置2で冷却する。冷却装置2で冷却された液化二酸化炭素Lを、循環ライン40を通して、タンク31内の気相部Vに戻すと、冷却された液化二酸化炭素Lによって、タンク31内の気相部Vに存在するボイルオフガスが冷却されて再液化される。このようにして、タンク31内におけるボイルオフガスの生成が抑えられる。
冷却装置2の動作は、制御装置60によって制御される。圧力センサー37は、タンク31内の圧力を検出する。タンク31内でボイルオフガスが生成されると、タンク31内の圧力が上昇する。第一制御部71は、圧力センサー37によって検出されたタンク31内の圧力に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を調整する。例えば、タンク31内でボイルオフガスが生成されると、タンク31内の圧力が上昇した場合に、第一制御部71により、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を高めることができる。これにより、冷却された液化二酸化炭素Lをタンク31内の気相部Vに戻すことによる、ボイルオフガスの再液化能力が高まる。
また、温度センサー28は、冷却装置2によって冷却された液化二酸化炭素Lの温度を検出する。第二制御部72は、温度センサー28によって検出された液化二酸化炭素Lの温度に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させる。これにより、液化二酸化炭素Lが循環ライン40を通してタンク31内の気相部Vに戻された際に、液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されてしまうような温度まで、冷却装置2で液化二酸化炭素Lを冷却してしまうことが抑えられる。
その結果、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【0062】
(2)第2の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(1)の液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記第二制御部72は、前記温度センサー28で検出された前記液化二酸化炭素Lの温度と、前記圧力センサー37で検出された前記タンク31内の圧力と、に応じて、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させる。
【0063】
これにより、温度センサー28で検出された液化二酸化炭素Lの温度と、圧力センサー37で検出されたタンク31内の圧力と、に応じて、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させることで、液化二酸化炭素Lが循環ライン40を通してタンク31内の気相部Vに戻された液化二酸化炭素Lが、三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されてしまうことが有効に抑えられる。
【0064】
(3)第3の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(1)又は(2)の液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記第一制御部71は、前記圧力センサー37で検出された前記タンク31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を高める。
冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を高める、とは、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却を行っていない状態から、液化二酸化炭素Lの冷却を開始することを含む。
【0065】
これにより、圧力センサー37で検出されたタンク31内の圧力が、予め設定された第一閾値以上となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を高める。これにより、タンク31内でボイルオフガスが生成されることでタンク31内の圧力が上昇し、第一閾値以上となった場合には、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力が高められる。これにより、冷却された液化二酸化炭素Lをタンク31内の気相部Vに戻すことによる、ボイルオフガスの再液化能力が高められる。
【0066】
(4)第4の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(3)の液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記第一制御部71は、前記圧力センサー37で検出された前記タンク31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させる。
冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させる、とは、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却を行っている状態から、液化二酸化炭素Lの冷却を停止させることを含む。
【0067】
冷却された液化二酸化炭素Lがタンク31内の気相部Vに供給されることで、タンク31内のボイルオフガスが再液化されると、タンク31内の圧力が低下する。圧力センサー37で検出されたタンク31内の圧力が、予め設定された第二閾値以下となった場合、冷却装置2における液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させることで、ボイルオフガスの再液化を停止させることができる。
【0068】
(5)第5の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(1)から(4)の何れか一つの液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記タンク31、前記循環ライン40、前記冷却装置2、前記圧力センサー37、前記温度センサー28、及び前記制御装置60を収容し、可搬性を有する中空箱状のコンテナ5、を更に備える。
【0069】
これにより、液化二酸化炭素タンクシステム1は、タンク31、循環ライン40、冷却装置2、圧力センサー37、温度センサー28、及び制御装置60が、可搬性を有するコンテナ5に収容された構成となる。このようにして、可搬性を有するコンテナ5に収容されたタンク31において、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【0070】
(6)第6の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(5)の液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記冷却装置2、及び前記制御装置60は、外部から供給される電力により駆動される。
【0071】
これにより、冷却装置2及び制御装置60に、外部から電力を供給することで、可搬性を有するコンテナ5に収容されたタンク31を備える液化二酸化炭素タンクシステム1において、冷却装置2、及び制御装置60を駆動させることができる。これにより、液化二酸化炭素タンクシステム1の輸送中等においても、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【0072】
(7)第7の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1は、(1)から(6)の何れか一つの液化二酸化炭素タンクシステム1であって、前記循環ライン40を通して循環される前記液化二酸化炭素Lを、前記タンク31内の上部に噴射する噴射部45を更に備える。
【0073】
これにより、循環ライン40を通して循環される液化二酸化炭素Lを、噴射部45により、タンク31内の上部に噴射することができる。これにより、タンク31内の気相部Vに位置するボイルオフガスを、効率良く再液化することができる。
【0074】
(8)第8の態様に係る液化二酸化炭素タンクシステム1の制御方法S10は、液化二酸化炭素Lを貯留するタンク31と、前記タンク31内の前記液化二酸化炭素Lを前記タンク31外に抽出し、前記タンク31内の気相部Vに戻す循環ライン40と、前記循環ライン40の途中に設けられ、前記液化二酸化炭素Lを冷却可能な冷却装置2と、前記タンク31内の圧力を検出する圧力センサー37と、前記冷却装置2で冷却された前記液化二酸化炭素Lの温度を検出する温度センサー28と、を備える液化二酸化炭素タンクシステム1の制御方法S10であって、前記圧力センサー37で検出される前記タンク31内の圧力に応じて、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を調整するステップS13、S16と、前記温度センサー28で検出される前記液化二酸化炭素Lの温度に応じて、前記冷却装置2における前記液化二酸化炭素Lの冷却能力を低下させるステップS17と、を含む。
【0075】
これにより、ドライアイスの生成を抑えつつ、ボイルオフガスの生成を抑えてタンク31内の圧力の過度な上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…液化二酸化炭素タンクシステム
2…冷却装置 3…タンク 5…コンテナ 21…圧縮機 22…コンデンサ 23…ファン 24…膨張弁 25…熱交換器 26…冷媒回路 28…温度センサー 31…タンク本体 31a…筒状部 31b…鏡板部 32…アウターシェル 32a…筒状シェル部 32b…球面状シェル部 33…断熱部 34…支脚 35…給排ライン 35a…一端 35b…他端 35v…開閉弁 36…圧力検出ライン 36a…一端 36b…他端 36s…分岐管 37…圧力センサー 38…トランスミッター 39V,39W…開閉弁 40…循環ライン 40A…循環ライン第一部 40B…循環ライン第二部 40a…一端 40b…他端 41V,41W…開閉弁 42…ポンプ 45…噴射部 50…フレーム 51…下部枠 52…端壁 54…上部枠 60…制御装置 70…信号入力部 71…第一制御部 72…第二制御部 75…出力部 100…電源ライン 101…電源接続部 120…接続部材 L…液化二酸化炭素 V…気相部 Da…第一方向 Dv…上下方向 Dw…第二方向 Dx…長手方向 S10…液化二酸化炭素タンクシステムの制御方法 S11…タンク内の圧力を取得するステップ S12…タンク内の圧力が第一閾値以上であるか否かを判定するステップ S13…液化二酸化炭素の過冷却を開始するステップ S14…液化二酸化炭素の温度を取得するステップ S15…液化二酸化炭素の温度が三重点に近づいているか否かを判定するステップ S16…タンク内の圧力が第二閾値以下であるか否かを判定するステップ S17…液化二酸化炭素の過冷却を停止するステップ