(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014247
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】混合液解析システム、測定装置、情報処理装置及び解析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116932
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩入 章弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 直人
(72)【発明者】
【氏名】河室 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】郡 誠
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AA19
2G060AF03
2G060AF06
2G060AG03
2G060AG11
2G060FA01
2G060HA02
2G060HC10
(57)【要約】
【課題】液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液を解析する際に、解析環境を維持するための、ユーザによる解析アルゴリズムの追加及び更新作業にかかる負担を軽減すること。
【解決手段】混合液解析システムは、混合液のインピーダンスを測定する測定装置と、測定装置に接続され、混合液に関する材料情報が入力されるとともに、測定装置からのインピーダンスを外部に送信する情報処理装置と、材料情報とインピーダンスとに基づいて、混合液の解析を行う解析装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に不溶性の固体物質が混合された混合液を解析する混合液解析システムであって、
前記混合液のインピーダンスを測定する測定装置と、
前記測定装置に接続され、前記混合液に関する材料情報が入力されるとともに、前記測定装置からの前記インピーダンスを外部に送信する情報処理装置と、
前記材料情報と前記インピーダンスとに基づいて、前記混合液の解析を行う解析装置と、を備える、
混合液解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の混合液解析システムにおいて、
前記混合液が収容される収容部と、
前記収容部の内側に設けられ、前記収容部に収容された前記混合液に交流信号を印加する一対の電極と、を有する電極セルを、更に備え、
前記測定装置は、
前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号に基づいて前記インピーダンスを測定する測定手段と、
前記インピーダンスを外部に送信する送信手段と、を有する、
混合液解析システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の混合液解析システムにおいて、
前記解析装置は、
前記混合液に関する前記材料情報と、前記混合液の前記インピーダンスに基づいて、前記混合液を解析する解析アルゴリズムとが紐付けられたテーブルが記憶されたアルゴリズム記憶部と、
前記解析アルゴリズムに基づいて前記混合液を解析する解析部と、を有し、
前記解析部は、
前記材料情報に対応する解析アルゴリズムを前記テーブルから選択するアルゴリズム選択手段と、
前記材料情報及び前記インピーダンスに、前記アルゴリズム選択手段により選択された前記解析アルゴリズムを適用して解析を実行するアルゴリズム実行手段と、を有する、
混合液解析システム。
【請求項4】
請求項3に記載の混合液解析システムにおいて、
前記解析装置は、
複数の前記材料情報に基づいて、複数の混合液を同時に解析する複数の前記解析部を備える、
混合液解析システム。
【請求項5】
請求項3に記載の混合液解析システムにおいて、
前記解析装置は、
前記解析部による解析結果が特定の条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記解析結果が前記特定の条件を満たさないと判定された場合に、前記解析アルゴリズムの更新を促す信号を生成するアルゴリズム更新部と、を備える、
混合液解析システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の混合液解析システムにおいて、
前記解析装置は、
前記情報処理装置が予め登録された情報処理装置であると判定した場合、前記情報処理装置に前記材料情報の入力を許可する認証部を備える、
混合液解析システム。
【請求項7】
液体に不溶性の固体物質が混合された混合液のインピーダンスを測定する測定装置であって、
前記混合液が収容される収容部と、
前記収容部の内側に設けられ、前記収容部に収容された前記混合液に交流信号を印加する一対の電極部と、を有する電極セルを備え、
前記電極セルの前記一対の電極部は、前記収容部の内側に設けられて互いに対向する内側電極と、前記収容部の外側に設けられる外側電極と、を有し、
前記交流信号が印加された際に前記混合液に流れる応答信号に基づいて前記インピーダンスを測定する測定手段と、
前記インピーダンスを外部に送信する送信手段と、
を有する、
測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記電極セルの前記一対の電極部は、それぞれ、前記収容部を貫通する棒状部材を有する、
測定装置。
【請求項9】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記収容部は、外側に突出し、前記電極部が挿通される取付部を有する、
測定装置。
【請求項10】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記電極セルを接続するための接続装置を更に備え、
前記接続装置は、
筒状の部分を有する電極セルを収容する収容凹部と、
前記電極セルに設けられた一対の電極部のそれぞれと接触するように構成された一対の接触部と、を備え、
前記接触部は、前記収容凹部において前記電極セルが所定の収容深さまで収容された際に、前記電極部と接触する位置に配置されている、
測定装置。
【請求項11】
請求項7に記載の測定装置に接続され、前記測定装置より受信したインピーダンス情報を記憶部に記憶するとともに、前記混合液に関する材料情報が入力される情報処理装置であって、
前記測定装置の測定処理に先立って、測定開始指示を前記測定装置に送信する、
情報処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の情報処理装置であって、
前記測定装置から受信した前記インピーダンスを外部に送信する、
情報処理装置。
【請求項13】
請求項7に記載の測定装置に接続され、請求項11に記載の情報処理装置からインピーダンス情報および前記混合液に関する材料情報を受信する受信手段と、
前記材料情報と前記インピーダンスとに基づいて、前記混合液の解析を行う解析手段と、を備える、
解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液を解析する混合液解析システム、測定装置、情報処理装置及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品に対して高機能化・高性能化の要求が高まっている。一例として、蓄電デバイスであるバッテリーにおいては、バッテリーの正極または負極電極を製造するために材料として用いられるスラリーの品質を厳密に管理することが要求されている。
【0003】
非特許文献1には、周波数を段階的に変化させて交流電圧を印加する測定装置によって、バッテリー電極用材料のスラリーのような、液体に不溶性の個体物質の粒子が混合された混合液のインピーダンスを取得し、取得されたインピーダンスの周波数特性をコンピュータにより解析する方法が開示されている。
【0004】
この解析方法では、等価回路により表される曲線が、測定により取得されたインピーダンスに基づいて作成された複素平面インピーダンス図に近似するように、等価回路の各種パラメータが設定される。
【0005】
等価回路の各種パラメータは、混合液を構成する活物質、導電助剤、バインダ、溶剤及び分散剤などの各材料に応じて異なる。このため、等価回路における各種パラメータを、混合液の状態を表す指標とすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
Zhilong Wang Tong Zhao, z Jiafeng Yao, Yusei Kishikawa, and Masahiro Takei,“Evaluation of the Electrochemical characterization of Lithium-Ion Battery (LIB) Slurry with 10-parameter Electrical Equivalent Circuit (EEC)”, Journal of The Electrochemical Society, 164(2) A8-A17 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1の解析方法では、混合液の組成が変われば、等価回路のパラメータも変わる。このため、各材料の新たな組み合わせの混合液に対しては、新たな解析アルゴリズムを適用しなければならない。
【0008】
混合液の研究開発においては、各材料の豊富なバリエーションや組み合わせがあるなかから、日々、新たな材料や配合が研究されており、これに伴って、混合液の解析アルゴリズムの更新サイクルも早まっている。
【0009】
したがって、非特許文献1の解析方法では、ユーザは、新たな混合液を解析したい場合には、新たな解析アルゴリズムを各人のコンピュータに設定する必要があった。このため、ユーザにとっては、最新の解析環境を維持するための作業にかかる負担が大きかった。
【0010】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液を解析する際に、解析環境を維持するための、ユーザによる解析アルゴリズムの追加及び更新作業にかかる負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様としての混合液解析システムは、液体に不溶性の固体物質が混合された混合液を解析する混合液解析システムであって、前記混合液のインピーダンスを測定する測定装置と、前記測定装置に接続され、前記混合液に関する材料情報が入力されるとともに、前記測定装置からの前記インピーダンスを外部に送信する情報処理装置と、前記材料情報と前記インピーダンスとに基づいて、前記混合液の解析を行う解析装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様としての混合液解析システムによれば、液体に不溶性の固体物質の粒子が混合された混合液を解析する際に、解析環境を維持するための、ユーザによる解析アルゴリズムの追加及び更新作業にかかる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における混合液解析システムを説明する概略図である。
【
図2】
図2は、測定装置の構成及び電極セルに収容されるスラリーを説明する図である。
【
図3】
図3は、電極セルの一例を説明する外観斜視図である。
【
図4】
図4は、電極セルをZ方向からみた平面図である。
【
図5】
図5は、接続装置に電極セルがセットされた状態を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、解析装置を説明するブロック図である。
【
図7】
図7は、解析装置に備えられた記憶部に記憶されたテーブルを説明する図である。
【
図8】
図8は、アルゴリズム実行モジュールの機能構成を説明するブロック図である。
【
図9】
図9は、生成モジュール及び等価回路解析モジュールにおいて作成される複素平面インピーダンス図を説明する図である。
【
図10】
図10は、等価回路解析に用いられる等価回路を示す図である。
【
図11】
図11は、解析結果判定部によって、解析できると判定されるナイキストプロットの一例を説明する図である。
【
図12】
図12は、解析結果判定部によって解析できないと判定されるナイキストプロットの一例を説明する図である。
【
図13】
図13は、解析結果判定部によって解析できないと判定されるナイキストプロットの一例を説明する図である。
【
図14】
図14は、解析結果判定部によって解析できないと判定されるナイキストプロットの一例を説明する図である。
【
図15】
図15は、解析結果判定部によって解析できない判定されるナイキストプロットの一例を説明する図である。
【
図16】
図16は、混合液解析システムにおいて実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[混合液解析システム]
<システム全体>
以下、本発明の実施形態における混合液解析システム1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態における混合液解析システム1を説明する概略図である。
【0016】
混合液解析システム1は、液体に不溶性の固体物質が混合された混合液(以下、スラリーと表す)に、周波数を段階的に変化させた交流電圧を印加し、交流電圧が印加された際にスラリーに流れる応答電流からインピーダンスを測定し、測定されたスラリーのインピーダンスから、スラリーの解析結果の一例として、スラリーの分散状態を表す指標を算出するというシステムである。
【0017】
また、混合液解析システム1は、当該システムの利用登録をしたユーザに、スラリー解析サービスを提供するというシステムである。
【0018】
図1に示すように、混合液解析システム1は、測定装置10と、測定装置10と接続された情報処理装置20と、解析装置30と、を備える。情報処理装置20及び解析装置30は、互いにネットワークNWを介して接続される。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、携帯電話網、及び近距離無線通信ネットワークなどによって構成される。
【0019】
測定装置10には、接続装置40を介して、スラリーが収容されるスラリー測定用の電極セル41が接続されている。すなわち、電極セル41は、接続装置40にセットされて、接続装置40を介して測定装置10と接続される。
【0020】
図2は、測定装置10の構成及び電極セル41に収容されるスラリーを説明する図である。
【0021】
混合液解析システム1では、測定対象であるスラリーXcを収容するための電極セル41が用いられる。測定対象であるスラリーXcは、電極セル41に収容される。電極セル41は、測定に供されるスラリーXcのサンプル毎に用意される。
【0022】
本実施形態において、スラリーXcの一例としては、蓄電デバイスであるバッテリーの正極または負極電極を製造するために材料として用いられるスラリーであって、導電率が高い分散質Xbとしてのカーボンブラックなどの導電性粒子を、導電率が低い液体Xaとしての溶媒(バインダ樹脂及び活物質を含む有機溶媒)に分散させた混合液である。
【0023】
図2に示すように、電極セル41は、スラリーXcが収容されるスラリー収容部42と、スラリー収容部42の内側に設けられ、スラリー収容部42に収容されたスラリーXcに交流信号を印加する一対の電極43,44を有する。電極セル41は、接続装置40を介して測定装置10と接続されている。
【0024】
電極セル41は、接続装置40により、測定装置10からの交流信号をスラリーXcに印加するとともに、スラリーXcに流れる応答信号に基づいてスラリーXcのインピーダンスに関する情報を取得することができる。
【0025】
電極43,44は、スラリー収容部42に収容されたスラリーXcに交流信号としての交流電圧を印加するためのものである。電極43,44は、互いに対向するようにしてスラリー収容部42の内周壁に設けられる。
【0026】
<電極セル>
図3は、電極セル41の一例を説明する外観斜視図であり、
図4は、電極セル41をZ方向からみた平面図である。
【0027】
図3に示すように、電極セル41は、スラリーのインピーダンスを測定するために用いられる測定用セルであって、スラリーが収容されるスラリー収容部42と、スラリー収容部42に設けられる電極部101,102とを有する。
【0028】
スラリー収容部42は、有底筒状に形成されており、底部に向けて先細りになる形状に形成されている。スラリー収容部42は、開口部に、キャップ100を備える。スラリー収容部42は、スラリーが収容された後、キャップ100により封止される。
【0029】
電極部101,102は、導電性を有する棒状部材により構成されている。本実施形態においては、
図3及び
図4に示すように、電極部101,102は、スラリー収容部42の側壁部分に、互いに対向してX方向に沿って、スラリー収容部42の側壁部分を貫通して設けられている。
【0030】
スラリー収容部42は、側壁部分に、スラリー収容部42の側壁部分から外側に突出し、棒状部材の外径と略同一の内径を有する筒状の取付部103,104を有する。取付部103,104は、側壁部分を貫通する棒状部材を支持している。
【0031】
電極部101は、スラリー収容部42の内側に位置する端部にYZ平面に沿って延びる内側電極105を有する。内側電極105は、電極部101の端部と電気的に接続されている。電極部102は、スラリー収容部42の内側に位置する端部にスラリー収容部42の内側に位置する端部にXZ平面に沿って延びる内側電極106を有する。内側電極106は、電極部102の端部と電気的に接続されている。
【0032】
本実施形態において、内側電極105,106は、
図2における電極43,44に対応する。
【0033】
内側電極105,106は、それぞれYZ平面に沿って延びており、内側電極105,106は、互いにX方向において所定の間隔を開けて対向して配置された平行平板として機能する。
【0034】
電極部101,102において、スラリー収容部42の外側に位置する部分は、外側電極107,108を構成する。外側電極107,108は、取付部103,104から露出しており、接続装置40側の端子が露出部分におけるいずれの位置に接触しても導通可能に構成されている。外側電極107,108は、接続装置40と接続される端子部を構成する。
【0035】
電極部101,102は、内側にも金属部材が詰まっていることが好ましいが、内側が空洞となっていてもよい。
【0036】
内側電極105,106(電極43,44)は、例えば、白金又は銅などの不活性金属により形成される。一対の電極43,44の間には、スラリーXcに印加された交流電圧に応じた応答信号としての応答電流が流れる。なお、スラリーXcに印加される交流信号は、交流電圧に限らず、交流電流であってもよい。
【0037】
<接続装置>
図5は、接続装置40に電極セル41がセットされた状態を説明する斜視図である。
【0038】
本実施形態において、接続装置40は、スラリーのインピーダンスを測定するために上述した電極セル41とともに使用される。接続装置40は、筐体部200と、電極セル41を収容する収容凹部201と、端子部202,203,204,205と、一対の接触部206,207とを備える。
【0039】
収容凹部201は、筐体部200において、上方に開口されて形成されており、電極セル41がセットされる。端子部202,203,204,205は、スラリーのインピーダンスを測定するための測定装置10と接続される。また、接触部206,207は、電極セル41が収容凹部201にセットされた際に、一対の電極部101,102(外側電極107,108)のそれぞれと接触されるように構成されている。
【0040】
電極セル41収容凹部201に収容した際、電極セル41におけるスラリー収容部42が収容凹部201の内面と当接し、電極セル41の下側への移動が規制される。このように、電極セル41は、収容凹部201に、所定の収容深さまで収容されるようになっている。
【0041】
端子部202,203,204,205と接触部206,207とは、図示されていないが、接続装置40の内部において、互いに電気的に接続されている。電極部101,102、端子部202,203,204,205及び接触部206,207との間の接続は、収容凹部201に電極セル41が所定の収容深さまで差し込まれた際に達成されるように構成されている。
【0042】
<測定装置>
本実施形態において、測定装置10は、スラリーXcに周波数を段階的に変化させる交流電圧を印加し、交流電圧が印加された際にスラリーに流れる応答電流からインピーダンスを測定する装置である。
【0043】
図2に示すように、測定装置10は、測定手段としての測定部11と、送信手段としての通信部12と、操作部13と、表示部14と、記憶部15と、処理部16とを有する。
【0044】
測定部11は、電極セル41の電極43,44を介してスラリーXcに印加する交流信号を生成する。或いは、スラリーXcに交流信号を印加した際に、スラリーXcに流れる応答信号に基づくスラリーXcのインピーダンスを測定する。
【0045】
通信部12は、通信部12と情報処理装置20との間で信号の送受を行う。通信部12は、測定部11において測定されたインピーダンスに関する情報を情報処理装置20に送信する。インピーダンスに関する情報とは、スラリーXcに印加した電圧の掃引周波数と、測定されたスラリーXcの各周波数のインピーダンスZ値、初期位相角θ、直流インピーダンスRzなどである。
【0046】
通信部12は、スラリーXcの解析を実行するための信号などを情報処理装置20から受け取る。
【0047】
操作部13は、スラリーXcの測定条件の設定操作などを指示する各種の操作スイッチを備える。操作部13は、これらの操作に応じた操作信号を処理部16に出力する。操作部13は、機械的に構成される操作スイッチの代わりに、表示部14に備えられるタッチパネルであってもよい。
【0048】
表示部14は、処理部16の指示に従って、インピーダンスの測定に関連する各種設定の内容、測定結果などを表示する。本実施形態においては、表示部14は、液晶パネルなどによって構成される。
【0049】
記憶部15は、各部を制御する制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び後述するCPU(Central Processing Unit)のワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部15としては、SSD(Solid State Drive)などを用いることができる。
【0050】
また、記憶部15には、電極セル41を用いて測定され、取得されたスラリーXcのインピーダンスに関する情報が記憶される。記憶部15は、処理部16の動作プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。記憶部15は、測定装置10に対して、着脱可能に構成されていてもよい。
【0051】
処理部16は、CPUを有する。処理部16は、電極43,44に印加する交流電圧の周波数を変化させる処理、電極セル41から取得したインピーダンスに関する情報を情報処理装置20に送信する処理などを行う。
【0052】
本実施形態において、処理部16は、CPUにより構成される。処理部16は、複数のマイクロコンピュータによって構成することも可能である。
【0053】
一対の電極43,44に印加される交流電圧は、図示しないが、測定装置10に内蔵される定電圧電源(CV)又は定電流電源(CC)から供給される。そして、処理部16は、交流電圧の周波数が段階的に変化させるたびに、一対の電極43,44の間の応答電流からインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値を測定信号として記憶部15に記憶する。
【0054】
<情報処理装置>
続いて、情報処理装置20の構成について説明する。情報処理装置20は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶デバイス、入出力インタフェース、及び、これらを相互に接続するバスなどによって構成されるコンピュータである。
【0055】
情報処理装置20は、ユーザからスラリーXcに関する材料情報の入力を受け付けるとともに、測定装置10から受け取ったインピーダンスに関する情報を外部装置としての解析装置30に送信する。
【0056】
<解析装置>
図6は、解析装置30を説明する図である。
【0057】
解析装置30は、ネットワークNWを介して情報処理装置20と接続されている。本実施形態においては、解析装置30は、混合液解析システム1を提供する提供者(管理者)によって管理されたサーバである。
【0058】
解析装置30は、スラリーXcに関する材料情報と、測定装置10において測定され、情報処理装置20から送信されたスラリーXcのインピーダンスに関する情報とに基づいて、解析アルゴリズムを用いてスラリーXcの解析を行う装置である。
【0059】
スラリーXcに関する材料情報とは、一例として、活物質、導電助剤、バインダ、溶剤及び分散剤である。
【0060】
図6に示すように、解析装置30は、受信手段としてのネットワークインタフェース31(以下、NWインタフェース31と記す)と、ディスプレイ32と、入力部33と、記憶部34と、処理部35とを備え、これらを相互に接続するバス36などによって構成されるコンピュータである。
【0061】
NWインタフェース31は、ネットワークNWを介して、情報処理装置20との間で、測定装置10において測定されたスラリーXcのインピーダンスに関する情報や解析結果の送受を行う。
【0062】
ディスプレイ32は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)である。管理者による解析アルゴリズムの更新作業に関する情報が表示される。
【0063】
入力部33は、キーボード、タッチパネル及びマウスなどから構成されており、ディスプレイ32に表示した情報に対する管理者による操作入力を受け付ける。
【0064】
記憶部34は、各種制御プログラムを記憶するROMや後述するCPUのワークエリアとしてのRAMを含む。記憶部34としては、SSDなどを用いることができる。
【0065】
記憶部34は、物理的に区画された物理領域又は仮想的に区画された仮想領域として、ユーザ情報テーブル341と、アルゴリズム記憶部としてのアルゴリズムテーブル342とを有する。
【0066】
ユーザ情報テーブル341には、混合液解析システム1によるスラリー解析サービスに登録されたユーザに関する情報と、登録の際にユーザに割り当てたユーザIDとが、紐付けられて記憶されている。
【0067】
図7は、アルゴリズムテーブル342を説明するための図である。アルゴリズムテーブル342には、スラリーXcに関する材料情報と、スラリーXcを解析する解析アルゴリズムと、が紐付けられて記憶されている。
【0068】
図7に示すように、スラリーXcに関する材料情報の一例として、活物質A1、導電助剤B1、バインダG1、溶剤D1及び分散剤E1を含むスラリーに対しては、解析アルゴリズムAL-1が適用される。
【0069】
アルゴリズムテーブル342に用意されている解析アルゴリズムは、スラリーの材料情報とスラリーの分散状態に関する指標とが共に既知であるスラリーに対してインピーダンス測定を行って作成した複素平面インピーダンス図に近似した等価回路曲線と、当該等価回路曲線が得られるときの等価回路に関するパラメータと、を含む。
【0070】
分散状態に関する指標が未知であるスラリーに対しては、例えば、
図7に示したアルゴリズムテーブル342に基づいて、スラリーの材料情報と、材料情報に紐付けられた解析アルゴリズムを用いて、未知のスラリーから測定されたインピーダンスを等価回路解析することにより、等価回路に関するパラメータ、すなわち、未知のスラリーの分散状態に関する指標を得ることができる。
【0071】
本実施形態において、アルゴリズムテーブル342は、スラリーの材料情報とスラリーの分散状態に関する指標とが共に既知であるスラリーのインピーダンス測定を行うことによって得られた結果から、予め作成されたものである。
【0072】
アルゴリズムテーブル342における、スラリーを構成する活物質、導電助剤、バインダ、溶剤、分散剤の組み合わせに対して好適に使用可能な解析アルゴリズムは、解析装置30の管理者によって、適宜、追加又は更新することができる。
【0073】
記憶部34には、上述のもののほか、処理部35がNWインタフェース31、ディスプレイ32などを制御するための各種制御プログラムが記憶されている。
【0074】
次に、処理部35の構成について説明する。
【0075】
処理部35は、CPUを有する。処理部35は、記憶部34に保存された各種制御プログラムに従って、NWインタフェース31、ディスプレイ32の各部を制御する。
【0076】
図6に示すように、処理部35は、解析アルゴリズムに基づいてスラリーXcの解析を行う解析手段として、複数の解析部50
(1),50
(2),・・・,50
(n)を備える。
【0077】
解析部50(1),50(2),・・・,50(n)の各々は、アルゴリズム選択手段としてのアルゴリズム選択モジュール511と、アルゴリズム実行手段としてのアルゴリズム実行モジュール512と、を有する。
【0078】
アルゴリズム選択モジュール511は、材料情報に対応する解析アルゴリズムをアルゴリズムテーブル342に記憶されたテーブルから選択する。
【0079】
アルゴリズム実行モジュール512は、情報処理装置20において入力されたスラリーXcの材料情報及び情報処理装置20から受信したインピーダンスに関する情報を用いて、アルゴリズム選択モジュール511において選択された解析アルゴリズムを適用して、スラリーXcの解析を実行する。
【0080】
本実施形態では、処理部35は、複数の解析部50(1),50(2),・・・,50(n)を備えるため、解析部50(1),50(2),・・・,50(n)のそれぞれにおいて、複数のスラリーXcの解析処理を並列して実行することができる。
【0081】
図8は、アルゴリズム実行モジュール512の機能構成を説明するブロック図である。
【0082】
図8に示すように、アルゴリズム実行モジュール512は、インピーダンス取得モジュール61と、複素平面インピーダンスデータ生成モジュール62と、等価回路解析モジュール63と、分散度算出モジュール64とを備える。以下では、複素平面インピーダンスデータ生成モジュール62のことを、単に生成モジュール62と称する。
【0083】
インピーダンス取得モジュール61は、情報処理装置20から取得されたインピーダンスに関する情報をNWインタフェース31から取得する。
【0084】
また、インピーダンス取得モジュール61は、情報処理装置20から送られた応答電流に基づくインピーダンスから、インピーダンスの虚数成分を生成する虚数成分生成部71と、インピーダンスの実数成分を生成する実数成分生成部72とを有する。
【0085】
虚数成分生成部71は、取得されたインピーダンスの虚数成分を生成し、後述する生成モジュール62に出力する。実数成分生成部72は、取得されたインピーダンスの実数成分を生成し、生成モジュール62に出力する。
【0086】
生成モジュール62は、インピーダンス取得モジュール61から取得したインピーダンスの虚数部分と実数部分とから、複素平面インピーダンスを示すデータを作成する。
【0087】
本実施形態においては、生成モジュール62は、複素平面インピーダンスを示すデータとして、測定されたインピーダンスの虚数部分を縦軸とし、実数部分を横軸とする複素平面インピーダンス図を作成する。なお、複素平面インピーダンス図は、ナイキストプロットと記す場合がある。
【0088】
生成モジュール62は、作成したナイキストプロットを等価回路解析モジュール63に出力する。
【0089】
等価回路解析モジュール63は、抵抗器及びコンデンサなどの要素を組み合わせてなる等価回路を用いた等価回路解析を実行する。
【0090】
本実施形態においては、等価回路の要素として、抵抗器要素Rとコンデンサ要素Cとの並列回路(RC)を一要素として、この要素を組み合わせて得られる等価回路を設定する。
【0091】
等価回路解析モジュール63は、RC並列回路を適用した初期の等価回路のパラメータに基づいて、初期の等価回路のインピーダンスの実部及び虚部の周波数特性を示すインピーダンス特性データを生成する。等価回路解析モジュール63は、生成した初期のインピーダンス特性データがXcの測定データに近づくよう、等価回路のパラメータを順次変更する。
【0092】
等価回路解析モジュール63は、実測データと一致するインピーダンス特性データが得られる等価回路のパラメータを解析結果として出力する。このように、等価回路解析モジュール63は、RC並列回路を適用した等価回路を用いて等価回路解析を実行する。
【0093】
本実施形態においては、等価回路解析モジュール63は、インピーダンス特性データとして、設定された等価回路によるナイキストプロットを作成する。
【0094】
図9は、生成モジュール62及び等価回路解析モジュール63において作成されるナイキストプロットを説明する図である。また、
図10は、等価回路解析に用いられた等価回路を示す図である。
【0095】
図9に示す実線は、インピーダンスの測定データに基づいて、生成モジュール62によって作成されたナイキストプロットAである。また、破線は、等価回路解析モジュール63によって作成されたナイキストプロットBである。
【0096】
図10に示すように、等価回路は、抵抗器要素R1とコンデンサ要素C1とからなる並列回路RC1と、抵抗器要素R2とコンデンサ要素C2とからなる並列回路RC2と、抵抗器要素R3とコンデンサ要素C3とからなる並列回路RC3とを直列接続して得られる等価回路である。
【0097】
図9に示すナイキストプロットBは、等価回路を用いて等価回路解析を実行して得られたものである。
【0098】
等価回路解析モジュール63は、ナイキストプロットBが生成モジュール62から取得したナイキストプロットAと重なるように、等価回路の各並列回路における抵抗器要素R及びコンデンサ要素Cに関連するパラメータの変更を繰り返す。
【0099】
分散度算出モジュール64は、等価回路解析モジュール63によって生成されたナイキストプロットを取得し、解析する。
【0100】
本実施形態においては、分散度算出モジュール64は、等価回路解析によって算出された抵抗器Rのレジスタンスに基づいて、分散質Xbの粒子の抵抗値を算出する。
【0101】
以上の機能構成を備えるアルゴリズム実行モジュール512は、測定装置10によって測定されて情報処理装置20を介して受け取ったインピーダンスから、ナイキストプロットAを作成する。これとともに、アルゴリズム実行モジュール512は、等価回路解析モジュール63によって、抵抗器要素Rとコンデンサ要素Cとからなる並列回路RCを一要素とする等価回路を用いてナイキストプロットBを作成する。
【0102】
また、アルゴリズム実行モジュール512は、ナイキストプロットBがナイキストプロットAに重なるように、等価回路の回路素子のパラメータを設定する。これにより分散度算出モジュール64は、スラリーXcの分散度を算出することができる。
【0103】
処理部35は、さらに、解析結果判定部52と、アルゴリズム更新部53とを備える。
【0104】
解析結果判定部52は、解析部50(1),50(2),・・・,50(n)による解析結果が特定の条件を満たすか否かを判定する判定部として機能する。解析結果判定部52は、アルゴリズム実行モジュール512によって実行された解析の結果が特定の条件を満たすか否かを判定する。解析結果判定部52は、作成されたナイキストプロットに基づいて、解析結果の良否を判定する。判定処理の一例は、以下の通りである。
【0105】
【0106】
図11に示すナイキストプロットでは、低周波数側が直線的に表される。これは、電極セルの電極ピンとスラリーとの界面が電気二重層容量のみとなっていることを示している。このように、円弧状にて表される複数の緩和過程が表れており、且つ、低周波数側が直線的に発散している形状のナイキストプロットは、解析結果判定部52によって、等価回路解析を行うことができる、と判定される。
【0107】
図12から
図15に示すナイキストプロットは、解析結果判定部52によって、等価回路解析を行うことができない、と判定されるものの類型である。
【0108】
図12に示すナイキストプロットでは、低周波数側が直線状に発散していない。これは、電極セルの電極ピンとスラリーとの界面が電気二重層容量のみではないことを示している。また、
図13に示すナイキストプロットでは、単一の緩和過程を示している。
【0109】
図14に示すナイキストプロットでは、曲線に円弧状部分が観測されていない。これは、各緩和過程の周波数特性が近いことを示している。また、
図15に示されるナイキストプロットでは、2kHz以上の特性が低周波数側の直線を構成する一部分と重複している。これは、緩和過程が含まれないことを示している。
【0110】
上述した
図12から
図15の類型のように、円弧状にて表される複数の緩和過程が表れていない、且つ、低周波数側が直線的に発散していない形状のナイキストプロットが得られた場合には、解析結果判定部52によって、等価回路解析を行うことができない、と判定される。
【0111】
この場合には、解析結果判定部52は、情報処理装置20にエラー信号を送信するとともに、解析アルゴリズムの更新を促す信号を生成する。
【0112】
アルゴリズム更新部53は、解析結果判定部52によって解析結果が特定の条件を満たさないと判定された場合に、解析アルゴリズムそのものを更新することを促す信号を生成したり、新たなスラリーの解析に対応可能な新規アルゴリズムを生成することを促す信号を生成したりする。
【0113】
アルゴリズム更新部53によって、信号が生成された場合には、管理者は、スラリーの材料情報とスラリーの分散状態に関する指標とが共に既知であるスラリーを使用して、このスラリーのインピーダンス測定を行って作成した複素平面インピーダンス図に近似した等価回路曲線を作成し、新たな解析アルゴリズムを生成する。或いは、解析アルゴリズムの更新を行う。
【0114】
また、処理部35は、情報処理装置20が混合液解析システム1に予め登録された情報処理装置であることを照合できた場合、情報処理装置20にスラリーXcに関する材料情報の入力を許可する認証部54を備える。
【0115】
本実施形態において、解析部50(1),50(2),・・・,50(n)、解析結果判定部52、アルゴリズム更新部53、認証部54は、CPUによって実現される機能構成である。これらの各部は、それぞれ、個別の物理的構成として用意されていてもよい。
【0116】
以上の構成を有することにより、解析装置30は、情報処理装置20との間で通信を行って、情報処理装置20からスラリーXcのインピーダンスを取得し、選択された解析アルゴリズムを用いて、スラリーXcの解析を行うことができる。
【0117】
また、アルゴリズム実行モジュール512によって作成されたナイキストプロットが、解析結果判定部52によって、等価回路解析を行うことができないと判定された場合には、管理者は、スラリーの材料情報とスラリーの分散状態に関する指標とが共に既知であるスラリーを使用して、このスラリーのインピーダンス測定を行って作成した複素平面インピーダンス図に近似した等価回路曲線を作成し、新たな解析アルゴリズムを生成する。或いは、解析アルゴリズムの更新を行う。すなわち、アルゴリズムテーブル342の更新を行うことができる。
【0118】
[混合液(スラリー)の解析処理]
次に、上述した構成を備えた混合液解析システム1による、混合液(スラリーXc)の解析処理について説明する。
【0119】
図16は、混合液解析システム1による解析処理を説明するフローチャートである。
【0120】
スラリーの測定のための準備として、測定対象のスラリーXcが作製され、電極セル41に収容される。
【0121】
ステップS1において、情報処理装置20は、測定装置10における測定処理を開始する測定開始指示を測定装置10に送信する。測定装置10は、測定開始指示を受信し、ステップS2において、スラリーXcのインピーダンスの測定を実行する。
【0122】
ステップS3において、測定装置10は、インピーダンスに関連する情報を情報処理装置20に送信する。インピーダンスに関する情報とは、スラリーXcに印加した電圧の掃引周波数と、測定したスラリーXcのインピーダンス情報(Z位相、θ、直流インピーダンスRz)である。
【0123】
ステップS4において、情報処理装置20は、受信したインピーダンス情報をメモリに保存する。
【0124】
ステップS5において、情報処理装置20のユーザは、ネットワークNW経由で解析装置30を利用可能とするために、予め登録してあるユーザIDを入力する。本実施形態では、一例として、解析装置30を管理する管理者が提供するスラリー解析のためのウェブサイトに、ユーザIDを使用してログインすることにより、スラリー解析サービスが利用可能となる。
【0125】
解析装置30がウェブサイトを介してユーザIDを受信すると、ステップS6において、認証部54は、記憶部34におけるユーザ情報テーブル341に記憶されたユーザIDと、情報処理装置20から送信されたユーザIDとを照合する。
【0126】
ステップS6において、ユーザIDが照合できなかった場合(ステップS6:No)には、ステップS7において、ウェブサイトにおいて、アクセスできない旨が表示される。或いは、ユーザIDによるログインのリトライを促す信号を生成し、情報処理装置20に送信する。
【0127】
ステップS6において、ユーザIDが照合できた場合(ステップS6:Yes)には、ステップS8において、解析装置30は、スラリー解析サービスへのアクセス許可を送信する。
【0128】
情報処理装置20は、ウェブサイトにおいて、スラリー解析サービスへのアクセス許可を受信すると、ステップS9において、情報処理装置20は、測定装置10において測定されたスラリーXcのインピーダンスに関する情報を、測定サンプル毎に、解析装置30に送信する。
【0129】
本実施形態においては、解析装置30に送るインピーダンスに関する情報を、情報処理装置20によってアクセスしているスラリー解析サービスのウェブサイトにアップデートする。
【0130】
続いて、ステップS10において、情報処理装置20は、ウェブサイトにおいて、測定対象のスラリーXcに関する材料情報を入力可能になる。測定サンプルが複数ある場合には、測定サンプル毎にスラリーXcに関する材料情報が入力される。
【0131】
本実施形態においては、一例として、情報処理装置20によって閲覧可能なネットワークNW上のウェブサイトに予め選択肢として用意された幾つかの材料情報のなかから、該当するスラリーの材料情報を、プルダウン形式にて選択する方法を適用することができる。
【0132】
情報処理装置20による、専用のウェブサイトからの材料情報の選択操作の結果は、解析装置30に送られる。
【0133】
ステップS11において、解析装置30の解析部50
(1),50
(2),・・・,50
(n)では、アルゴリズム選択モジュール511が材料情報に対応する解析アルゴリズムをアルゴリズムテーブル342(
図7)に記憶されたテーブルから選択する。
【0134】
ステップS12において、アルゴリズム実行モジュール512は、情報処理装置20において入力されたスラリーXcの材料情報及び情報処理装置20から受信したインピーダンスに関する情報を用いて、アルゴリズム選択モジュール511において選択された解析アルゴリズムを適用して、スラリーXcの解析を実行する。
【0135】
解析が終了すると、ステップS13において、解析結果判定部52は、等価回路曲線が特定の条件を満たす否かを、
図12から
図15に示した判定方法により判別する。
【0136】
特定の条件を満たす場合(ステップS13:Yes)には、ステップS14において、解析装置30は、等価回路解析に基づいて算出されたスラリーの分散度を情報処理装置20に送信する。
【0137】
一方、特定の条件を満たさない場合(ステップS13:No)には、ステップS15において、エラー通知を生成し、情報処理装置20に送信するとともに、解析アルゴリズムの更新を促す信号を生成する。
【0138】
情報処理装置20は、解析装置30から解析結果を受信し、ステップS16において、情報処理装置20は、解析結果を表示する。
【0139】
混合液解析システム1によれば、以上の工程により、解析装置30は、測定装置10において測定されたスラリーXcのインピーダンスを情報処理装置20から取得し、情報処理装置20によって入力された材料情報に基づいて選択された解析アルゴリズムを用いて、スラリーXcの分散度を算出することができる。
【0140】
[作用・効果]
続いて、本実施形態における混合液解析システム1による作用効果について説明する。
【0141】
非特許文献1におけるスラリーの解析方法では、スラリーの組成が変われば、等価回路解析における等価回路のパラメータも変わる。このため、活物質、導電助剤、バインダ、溶剤及び分散剤などの各材料において新たな組み合わせが創出される都度、解析アルゴリズムの変更や更新を行う必要があった。
【0142】
これに対して、本発明の実施形態として示す混合液解析システム1は、スラリーXcのインピーダンスを測定する測定装置10と、測定装置10に接続され、スラリーXcに関する材料情報が入力されるとともに、測定装置10からのインピーダンスに関する情報を外部装置に送信する情報処理装置20と、スラリーXcの材料情報とインピーダンスとに基づいてスラリーXcの解析を行う解析装置30と、を備える。
【0143】
混合液解析システム1では、測定装置10において測定されたスラリーXcのインピーダンスは、情報処理装置20を介し、ネットワークNWを経由して管理者のサーバである解析装置30に送信され、解析装置30において解析される。
【0144】
本実施形態における混合液解析システム1においては、解析アルゴリズムは、ネットワークNWによって接続された解析装置30に記憶されているため、解析アルゴリズムの変更や更新の必要性が生じても、ユーザが各人各々のコンピュータにおいて解析アルゴリズムの変更や更新を行う必要がない。管理者が、解析アルゴリズムの変更や更新を、解析装置30において一元的に行うことができる。
【0145】
したがって、本実施形態における混合液解析システム1によれば、スラリーを解析する際に、ユーザによる、解析環境を維持するための、解析アルゴリズムの追加や更新作業にかかる負担を軽減することができる。
【0146】
また、本実施形態における混合液解析システム1では、スラリーXcを解析する処理は、解析装置30によって実行されるため、測定装置10には、スラリー測定に特化した機能のみを実装すればよい。これにより、測定装置10のコスト上昇を抑えることができる。
【0147】
本実施形態における混合液解析システム1では、スラリーXcの測定には、測定するサンプル毎に、電極43,44が設けられた電極セル41が用いられる。
【0148】
このため、測定するサンプルを切り換える際に、測定容器からスラリーを出して、容器を洗浄して、別のスラリーを充填するという従来の作業が不要であり、ユーザにとって、スラリー測定における操作性が向上する。
【0149】
本実施形態においては、内側電極105,106は、互いにX方向において所定の間隔を開けて対向して配置された平行平板となっている。このため、スラリー収容部42にスラリーが充填した際においても、スラリー収容部42において、内側電極105,106(電極43,44)が一定の電極間距離を保持することができる。これにより、スラリーのインピーダンスの測定精度を向上させることができる。
【0150】
また、電極部101,102が、スラリー収容部42を貫通する棒状部材を有することにより、製造作業者にとって、スラリー収容部42への棒状部材の取付作業を容易なものとすることができる。
【0151】
さらに、スラリー収容部42は、側壁部分に、スラリー収容部42の側壁部分から外側に突出し、棒状部材の外径と略同一の内径を有する筒状の取付部103,104を有する。これにより、電極部101,102の組み付け時における棒状部材の傾きを抑制することができ、一対の内側電極105,106(電極43,44)の相対位置等を変化しにくくして電気特性の測定精度を向上させることができる。
【0152】
接続装置40において、接触部206,207は、電極セル41が収容凹部201にセットされた際に、一対の電極部101,102(外側電極107,108)のそれぞれと接触されるように構成されている。このような接続装置40が使用されることにより、スラリーのインピーダンスを測定するための電極部101,102と測定装置10とを容易に接続することができる。
【0153】
以上によれば、本実施形態における混合液解析システム1では、スラリー測定におけるユーザの操作に起因する測定条件の変動が少なく、安定した測定条件でスラリー測定が可能となる。
【0154】
本実施形態における解析装置30では、スラリーに関する材料情報と、スラリーの解析アルゴリズムとが紐付けられて、アルゴリズムテーブル342として記憶部34に記憶されている。これによれば、管理者による解析アルゴリズムの更新や追加が容易になる。
【0155】
解析装置30は、情報処理装置20が予め登録された情報処理装置であることを照合できた場合、情報処理装置20にスラリーの材料情報の入力を認証する認証部54を備える。
【0156】
このように、混合液解析システム1を利用するためには、予めユーザ登録を必要とすることで、管理者は、混合液解析システム1において使用される材料情報及びインピーダンスに関する情報を、ユーザと紐付けて管理することができる。
【0157】
また、本実施形態における混合液解析システム1によれば、スラリーの解析に特異な実情に対する利点が得られる。これは、以下のとおりである。
【0158】
スラリーを解析する場合、ひとつのサンプル母体としてのスラリーから、複数のサンプルを抽出し、各サンプルに対して個別にインピーダンス測定を行っていく。このため、スラリーの解析精度を上げるためには、ひとつのサンプル母体としてのスラリーから抽出するサンプルの数を増やして、多点かつ多数において、サンプルを測定することが必要となる。
【0159】
しかしながら、ひとつのサンプル母体から得られる複数のサンプル全ての測定を終えるまでには、「(所定の測定時間)×(サンプル数)」の時間を要することになる。
【0160】
ユーザは、種類の異なるスラリー(サンプル母体)に対しても、同様に、そのスラリー毎に複数のサンプルの解析を行いたいため、種類の異なるスラリーを測定する場合には、特に、サンプル数は膨大になり、サンプル数に応じて測定時間も長大化する。
【0161】
一般に、スラリーの状態は、時々刻々と変化するものであるため、同一のサンプル母体から抽出した複数のサンプルの各々を順番に測定している間に、測定を控えているサンプルのスラリーの状態は、変化してしまう。
【0162】
このため、従来のスラリーの解析方法においては、複数のスラリーを同一条件で測定しようとすると、サンプル数を増やすことが難しく、スラリーの解析精度を上げるためにサンプル数を増やすそうとすると、サンプル同士の測定条件を揃えることが難しくなるという、二律背反の関係があった。
【0163】
これに対して、本実施形態における混合液解析システム1では、処理部35は、複数の解析部50(1),50(2),・・・,50(n)を備える。このため、解析装置30は、複数のスラリーXcの解析処理を、解析部50(1),50(2),・・・,50(n)のそれぞれにおいて並列して実行することができる。
【0164】
したがって、本実施形態における混合液解析システム1によれば、サンプル数を増やすことと、測定対象の混合液同士の条件を揃えることとを両立できる。これにより、スラリーの解析精度を上げることができる。
【0165】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0166】
図2及び
図4を用いて説明した一例では、内側電極105,106は、矩形状であるが、内側電極105,106の形状は限定されない。矩形状のほか、多角形であってもよい。また、内側電極105,106は、平面状でなくてもよく、スラリー収容部42の内壁に沿って湾曲していてもよい。さらに、半球状の曲面に形成されていてもよい。
【0167】
本実施形態においては、一例として、情報処理装置20によって閲覧可能なネットワークNW上のウェブサイトに予め選択肢として用意された幾つかの材料情報のなかから、該当するスラリーの材料情報を、プルダウン形式にて選択する方法を適用することを説明した。これに対して、材料情報を直接入力可能としてもよい。
【0168】
本実施形態において、認証部54とユーザ情報テーブル341とは、ネットワークNWに接続された解析装置30とは別の処理装置(サーバ)として用意されていてもよい。このようにした場合には、ユーザの登録情報と、スラリーに関する材料情報及びインピーダンスに関する情報とを切り分けて、別個のサーバにおいて管理することができる。
【0169】
これによれば、万一、悪意あるユーザが別の利用者のユーザIDを取得できたとしても、データの実体(スラリーに関する材料情報及びインピーダンスに関する情報)に辿り着くことができないため、秘匿性が向上する。
【0170】
ステップS4までの工程は、測定装置10と情報処理装置20との間におけるインピーダンス測定のための工程であるため、この後に続くステップS5以降の工程とは、時系列的に連続して実行される必要はない。情報処理装置20は、測定装置10から受信したインピーダンスに関する情報をメモリに記憶しておく、別のタイミングで、解析処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0171】
1 混合液解析システム
10 測定装置
11 測定部
12 通信部
13 操作部
14 表示部
15,34 記憶部
16,35 処理部
20 情報処理装置
30 解析装置
31 ネットワークインタフェース(NWインタフェース)
32 ディスプレイ
33 入力部
36 バス
40 接続装置
41 電極セル
42 スラリー収容部
43,44 電極
50(1),50(2),・・・,50(n) 解析部
52 解析結果判定部
53 アルゴリズム更新部
54 認証部
61 インピーダンス取得モジュール
62 複素平面インピーダンスデータ生成モジュール(生成モジュール)
63 等価回路解析モジュール
64 分散度算出モジュール
71 虚数成分生成部
72 実数成分生成部
100 キャップ
101,102 電極部
103,104 取付部
105,106 内側電極
107,108 外側電極
200 筐体部
201 収容凹部
202,203,204,205 端子部
206,207 接触部
341 ユーザ情報テーブル
342 アルゴリズムテーブル
511 アルゴリズム選択モジュール
512 アルゴリズム実行モジュール