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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142473
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/3442 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L33/04
C08K5/3442
C08K5/11
C08K5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054620
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 朋果
(72)【発明者】
【氏名】塚本 傑
(72)【発明者】
【氏名】三井 健司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG021
4J002CF031
4J002CF181
4J002CH021
4J002EH097
4J002EH147
4J002EU096
4J002FD027
4J002GN00
4J002GQ05
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩、並びに、(C)水を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩、並びに、(C)水を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体は、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、35~99.6質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩として、ジアザビシクロウンデセン及び/又はジアザビシクロノネンのエチルヘキサン塩を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、0.01~0.5質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)水の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、0.05~5質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(D)可塑剤を含有し、前記(D)可塑剤は、トリメリット酸エステル、フタル酸エステル、及びアジピン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)可塑剤の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、60質量%以下である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子製品、自動車に用いられる部品として、樹脂成型品が用いられている。このような部品には、製品自体の発熱や天候により高温環境下で用いられることがあり、樹脂成型品には耐熱性が要求される。
【0003】
上述の耐熱性を備える樹脂成型品を製造するための樹脂組成物として、(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上100質量%以下含む架橋性シリル基含有有機重合体と、(B)硬化触媒とを含み、特定のちょう度を示す高耐熱性ゲル組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のゲル化組成物も優れたゲル化組成物であるが、架橋性シリル基含有ビニル系重合体触媒に用いる触媒として錫系硬化触媒が用いられており、高温環境下で用いるために、より優れた耐熱性を示す樹脂成型品を製造するための組成については更なる検討の余地がある。
【0005】
また、上述の耐熱性を要求される電子製品、自動車等に用いられる樹脂成型品には、高温環境下においても硬度が安定していること、すなわち、硬度安定性が要求される。
【0006】
従って、十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2006-188632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、(B)ジアザビシクロウンデセン及び/又はその塩、及び、(C)水を含有することを特徴とする樹脂組成物によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の樹脂組成物に関する。
1.(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩、並びに、(C)水を含有することを特徴とする樹脂組成物。
2.前記(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体は、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体である、項1に記載の樹脂組成物。
3.前記(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、35~99.5質量%である、項1又は2に記載の樹脂組成物。
4.前記(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩として、ジアザビシクロウンデセン及び/又はジアザビシクロノネンのエチルヘキサン塩を含有する、項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、0.01~0.5質量%である、項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記(C)水の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、0.05~5質量%である、項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.更に、(D)可塑剤を含有し、前記(D)可塑剤は、トリメリット酸エステル、フタル酸エステル、及びアジピン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記(D)可塑剤の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%として、60質量%以下である、項7に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、(B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩、並びに、(C)水を含有する樹脂組成物である(以下、それぞれ「(A)成分」、「(B)成分」、「(C)成分」とも示す。)。上記特徴を有する本発明の樹脂組成物は、上記(A)成分と、特定の触媒である(B)成分とを組み合わせて用いることにより、高い耐熱性が要求される用途においても用いることができる、十分な耐熱性を示す樹脂成型品を製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、上記(A)成分及び上記(B)成分が(C)の存在下で混合されることにより、樹脂組成物の硬度変化が抑制され、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、上記(A)~(C)成分を含有することがあいまって、十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れる樹脂成型品を製造することができる。また、上記樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品は、優れた耐湿性も示すことができる。
【0013】
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
((A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体)
(A)成分としては、分子内にシロキサン結合を形成することによって架橋するシリル基を含有するビニル系重合体であれば、特に限定されない。このような架橋性シリル基含有ビニル系重合体としては、具体的には、分子内に架橋性シリル基を含有する、主鎖がそれぞれオルガノシロキサンを含有していてもよい、ビニル系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン重合体、ポリオキシアルキレン重合体、ポリエステル重合体、アクリル酸エステル重合体、メタアクリル酸エステル重合体、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物等が挙げられる。(A)成分としては、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
【0015】
上記(A)成分は、分子中に上記架橋性シリル基を1~6個含んでいることが好ましい。また、(A)成分の分子中の架橋性シリル基の位置は特に限定されず、有機重合体分子鎖の末端、又は内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。
【0016】
上記(A)成分において、架橋性シリル基が複数存在する場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、含有される架橋性シリル基の異なる有機重合体を2種以上用いてもよい。
【0017】
上記(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2-ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0018】
上記(A)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、35~99.6質量%が好ましく、40~99.0質量%がより好ましい。(A)成分の含有量の下限が上記範囲であることにより、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の耐熱性がより向上する。(A)成分の含有量の上限が上記範囲であることにより、本発明の樹脂組成物を2液型樹脂組成物とする場合に、第1成分、第2成分それぞれの粘度の上昇を抑制でき、作業性がより向上する。
【0020】
上記(A)成分としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、株式会社カネカ製 商品名XMAP SA120S等が挙げられる。
【0021】
((B)ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩)
(B)成分は、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩である。すなわち、(B)成分は、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0022】
(B)成分としては特に限定されず、公知のジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び/又はそれらの塩を用いることができる。
【0023】
ジアザビシクロウンデセンとしては特に限定されず、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン等を用いることができる。これらの中でも、本発明の樹脂組成物を2液型樹脂組成物とする場合に、第1成分、第2成分それぞれの粘度の上昇を抑制でき、作業性がより向上する観点から、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンが好ましい。
【0024】
ジアザビシクロノネンとしては特に限定されず、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン等を用いることができる。これらの中でも、本発明の樹脂組成物を2液型樹脂組成物とする場合に、第1成分、第2成分それぞれの粘度の上昇を抑制でき、作業性がより向上する観点から、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネンが好ましい。
【0025】
上記ジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンとの塩としては、有機化合物塩が挙げられる。有機化合物塩を形成するための有機化合物としては、有機酸、テトラ有機ボレート化合物等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)、ギ酸、オルソフタル酸等のカルボン酸;フェノール;p-トルエンスルホン酸;フェノールノボラック樹脂等のフェノール樹脂;テトラフェニルボレート等を挙げることができる。これらの中でも、常温(23℃)において液状で取扱い性がよく、優れたポットライフと硬化促進効果を示すことができ、且つ、得られる樹脂成型品の耐熱性がより向上する観点から、2-エチルヘキサン酸、フェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0026】
上記(B)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、0.01~0.5質量%が好ましく、0.10~0.3質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記の下限が上記範囲であることにより、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の硬度、及び、耐熱性がより向上する。(B)成分の含有量の上限が上記範囲であることにより、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品からの(B)成分の耐熱性、保存安定性がより良好となる。
【0028】
上記(B)成分としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、サンアプロ株式会社製 商品名U-CAT SA102、U-CAT 1102等が挙げられる。
【0029】
((C)水)
本発明の樹脂組成物は、必須成分として(C)水を含有する。本発明の樹脂組成物が水を含有することにより、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の硬度を安定化させることができ、良好な樹脂成型品を製造することができる。
【0030】
水としては特に限定されず、水道水、工業用水、地下水、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水等を用いることができるが、水道水、イオン交換水、蒸留水が好ましい。
【0031】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、0.05~5質量%が好ましく、0.50~3質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記の下限が上記範囲であることにより、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の硬度変化がより抑制され、高温環境下においても樹脂成型品の硬度安定性がより向上する。また、(C)成分の含有量の上限が上記範囲であることにより、樹脂組成物の反応性がより向上し、良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
((D)可塑剤)
本発明の樹脂組成物は、更に、(D)可塑剤(以下、「(D)成分」とも示す。)を含有していてもよい。
【0033】
(D)成分としては特に限定されず、公知の可塑剤を用いることができる。このような可塑剤としては、トリメリット酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ピロメリット酸エステル、ヒマシ油エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の耐熱性がより向上する観点から、トリメリット酸エステルが好ましい。
【0034】
上記(D)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。(D)成分の含有量の上限が上記範囲であることにより、樹脂組成物の反応性がより向上し、樹脂組成物を用いて製造された樹脂成型品の耐ブリードアウト性がより向上する。また、(D)成分の含有量の下限は特に限定されず、5質量%以上、10質量%以上等とすることができる。
【0036】
(他の成分)
本発明の樹脂組成物、上記(A)~(C)成分、及び、必要に応じて添加される(D)成分の以外に、他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、シランカップリング剤、酸化防止剤、無機フィラー、消泡剤、紫外線吸収剤、硬化触媒等が挙げられる。
【0037】
シランカップリング剤としては特に限定されず、樹脂組成物において架橋性シリル基含有ビニル系重合体と併用される任意のシランカップリング剤を用いることができる。このようなシランカップリング剤としては、有機官能基としてメタクリル基を有するシランカップリング剤、有機官能基としてエチレンジアミン構造を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0038】
上記シランカップリング剤は、活性水素基を有さないシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤を用いることにより、本発明の樹脂組成物の保存安定性がより向上する。
【0039】
樹脂組成物中のシランカップリング剤の含有量は特に限定されず、樹脂組成物を100質量%として、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0040】
酸化防止剤としては特に限定されず、樹脂組成物において用いられる任意の酸化防止剤を用いることができる。このような酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の耐熱性がより向上する観点から、アミン系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0041】
樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は特に限定されず、樹脂組成物を100質量%として、0.05~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.2~1質量%が更に好ましい。酸化防止剤の含有量を上記範囲とすることにより、樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂成型品の長期安定性及び初期硬度がより安定する。
【0042】
無機フィラーとしては特に限定されず、樹脂組成物において用いられる任意の無機フィラーを用いることができる。このような無機フィラーとしては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、シリカ、チタニア等が挙げられる。樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂成型品の放熱性が向上する観点から、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0043】
樹脂組成物中の無機フィラーの含有量は特に限定されず、樹脂組成物を100質量%として、40~95質量%が好ましく、50~85質量%がより好ましい。
【0044】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、1液型、2液型のいずれであってもよいが、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する本発明の樹脂組成物は、通常2液型樹脂組成物である。以下に説明する製造方法において、2液型樹脂組成物について説明する。
【0045】
2.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、架橋性シリル基含有ビニル系重合体を含有する樹脂組成物を製造する方法として用いられる従来公知の方法により製造することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、上述のように通常2液型樹脂組成物である。このような本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(A)成分及び(C)成分を含む成分を調製して第1成分とし、(A)成分及び(B)成分を含む成分を調製して第2成分とし、第1成分と第2成分とを混合することにより反応させて樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
【0047】
上記第1成分及び第2成分の構成としては、具体的には、第1成分が(A)成分及び(C)成分を含み、第2成分が(A)成分及び(B)成分を含む構成が挙げられる。また、第1成分が(A)成分及び(C)成分を含み、必要に応じて(D)成分及び酸化防止剤を含み、第2成分が(A)成分及び(B)成分を含み、必要に応じて(D)成分、酸化防止剤及びカップリング剤を含む構成であってもよい。
【0048】
第1成分、及び、第2成分を調製する方法としては特に限定されず、例えば、第1成分、及び、第2成分のそれぞれを構成する成分を混練機中で混合撹拌する工程1を有する調製方法により調製することができる。
【0049】
上記工程1において、混合撹拌の温度は、好ましくは60℃以上120℃以下であり、撹拌時間は30分~3時間程度であればよい。
【0050】
以上説明した工程1により、第1成分及び第2成分が調製される。
【0051】
工程1により調製された第1成分及び第2成分を混合する工程2により、本発明の樹脂組成物が製造される。混合温度は特に限定されず、好ましくは23℃以上60℃以下である。混合時間は特に限定されず、樹脂組成物のポットライフに合わせて適宜設定すればよい。
【0052】
以上説明した工程2により、本発明の樹脂組成物が製造される。
【0053】
(樹脂成型品)
本発明の樹脂組成物が硬化することにより、樹脂成型品を得ることができる。樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記第1成分及び第2成分を混合することにより製造される樹脂組成物を、経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は60~100℃程度が好ましく、加熱時間は、1~24時間程度が好ましい。
【0054】
上記樹脂成型品の170℃、20日後の硬度変化率は、50%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。硬度変化率の上限が上記範囲であることにより、電子製品、自動車に用いられる部品の安定性がより向上する。
【0055】
なお、上記樹脂成型品の170℃、20日後の硬度変化率の測定方法は、後述の実施例に記載の方法による。
【0056】
本発明の樹脂組成物が硬化して製造される樹脂成型品は、十分な耐熱性を示し、且つ、高温環境下においても硬度安定性に優れているので、電子製品、自動車に用いられる部品として好適に用いられる。また、本発明の樹脂組成物が硬化して製造される樹脂成型品は、電子製品の封止剤としても好適に用いることができる。
【実施例0057】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0058】
なお、実施例及び比較例で用いた原料を以下の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例及び比較例)
上述した原料を、表2に示す第1成分及び第2成分の配合量でそれぞれ撹拌混練機中に投入し、60℃で30分間混練して、第1成分及び第2成分を調製した。調製された第1成分及び第2成分を混合槽中で撹拌混合し、樹脂組成物を製造した。
【0061】
(評価方法)
実施例及び比較例について、下記方法により試験片を作製し、下記評価を行った。
【0062】
試験片1の作製
内径30mm、高さ10mmの成形用型に調製した該樹脂組成物を注入した。次いで、該樹脂組成物を、60℃で16時間加熱した後、室温で1日放置して硬化させ試験片(内径30mm、高さ10mm)を得た。試験は、硬度、170℃における硬度変化率、ブリード性を評価した。
【0063】
試験片2の作製
第2成分を225ccのマヨネーズ瓶に200g注入し、試験片2を作製した。
【0064】
硬度
JIS K 7312に準拠した測定方法により、試験片1(内径30mm、高さ10mm)を用いて、温度23℃の条件下で硬度計(高分子計器社製、アスカーゴム硬度計C型)により硬度(タイプC)を測定した。当該硬度を初期硬度とした。
【0065】
硬度変化率
試験片1(内径30mm、高さ10mm)を170℃で20日間放置した後、上記硬度の測定方法と同様に硬度を測定した。当該硬度を耐熱試験後の硬度として、下記式に従って硬度変化率を算出し、下記評価基準に従って評価した。
(式)硬度変化率(%)=[(耐熱試験後の硬度-初期硬度)/初期硬度]×100
◎:硬度変化率20%未満
〇:硬度変化率20%以上35%未満
△:硬度変化率35%以上50%以下
×:硬度変化率50%を超える
【0066】
ブリード性
試験片1(内径30mm、高さ10mm)を170℃で7日間放置した後常温(23℃)に戻し、ブリードの有無を目視で観察して、下記評価基準に従って評価した。
〇:ブリードなし
△:若干ブリードあり
×:ブリードあり
【0067】
第2成分の粘度
第2成分を調製し、試料とした。試料温度を23±0.5℃に調整し、BH型粘度計を用いて、所定のローター及び回転数により60秒間回転した後の粘度を測定し、下記評価基準に従って評価した。また、当該粘度を第2成分の初期粘度とした。
〇:粘度が30000mPa・s以下である
△:粘度が30000mPa・sを超える
【0068】
第2成分の増粘率
第2成分を調製し、試料とした。試料温度を40℃に調整し、30日間放置した後常温(23℃)に戻し、上記第2成分の粘度の測定方法と同様の方法で粘度を測定した。当該測定値を試験後の粘度として、下記式に従って第2成分の増粘率を算出し、下記評価基準に従って評価した。
(式)第2成分の増粘率(%)=[(試験後の粘度-初期粘度)/初期粘度]×100
◎:増粘率が80%未満
〇:増粘率が80~110%
×:増粘率が110%を超える
【0069】
結果を表2~4表に示す。なお、各表において、配合の数値は質量部を示す。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】