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2024-142474ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142474
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G18/00 030
C09K3/10 D
H01L23/30 R
C08G18/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054621
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 朋果
(72)【発明者】
【氏名】塚本 傑
(72)【発明者】
【氏名】三井 健司
【テーマコード(参考)】
4H017
4J034
4M109
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB04
4H017AB06
4H017AC04
4H017AC16
4H017AD02
4H017AE05
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC01
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC50
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG08
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA42
4J034RA03
4J034RA08
4J034RA12
4J034RA14
4M109AA01
4M109EA11
4M109EC01
4M109EC03
(57)【要約】
【課題】バイオマス由来の原料を用いていても、柔軟性が高く、伸び率が高く、耐湿性に優れた樹脂製品を製造することができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)イソシアネート基含有化合物、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール、及び、(C)エポキシ基含有化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記グリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールである、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基含有化合物、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール、及び、(C)エポキシ基含有化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記グリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールである、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールの含有量は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、25~80質量%である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)エポキシ基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、0.5~60質量部である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)エポキシ基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、0.5~35質量部である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)イソシアネート基含有化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその変性体、並びに、ヘキサメチレンジイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)イソシアネート基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、10~40質量部である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(D)ひまし油系ポリオールを含有する、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)ひまし油系ポリオールの含有量は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量部として、50質量部以下である、請求項7に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
【請求項10】
請求項9 に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子部品の高密度化および高集積化が進み、各部品に対して、信頼性の向上が要求されている。
【0003】
これらの電気電子部品を保護するために、封止材による封止が行われており、このような封止材としてポリウレタン樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、プラスチック材料等の樹脂製品の廃棄量が増大していること、また、樹脂製品の焼却処理で発生する二酸化炭素による地球温暖化をもたらす懸念がある等の様々な問題が提起されている。このため、地球環境や人体への配慮等の観点からバイオマス由来の原料を用いた樹脂組成物により樹脂製品を製造することが大きく注目されている。
【0005】
しかしながら、バイオマス由来の原料を用いた樹脂組成物を用いて製造された樹脂製品は、柔軟性が低下するため伸び率が低くなるという問題がある。このような樹脂製品は、電気電子部品等に用いられる際、応力がかかると破断伸びが十分でないという問題がある。ポリウレタン樹脂には適度な伸び率が要求される。ポリウレタン樹脂を用いて、例えば電気電子部品のプリント基板全体に樹脂封止を行った場合、プリント基板の変形に追従し、高い封止性を維持することが要求される。また、冷熱衝撃試験等においても、低温時のクラック耐性に優れ、注型部品やケースに追従することが要求され、更に、耐湿性も要求される。
【0006】
よって、バイオマス由来の原料を用いていても、柔軟性が高く、伸び率が高く、耐湿性に優れた樹脂製品を製造することができる樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-35640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バイオマス由来の原料を用いていても、柔軟性が高く、伸び率が高く、耐湿性に優れた樹脂製品を製造することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、イソシアネート基含有化合物、バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール、及び、エポキシ基含有化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、グリコールとして特定のものを用いる構成とすれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下のポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。
1.(A)イソシアネート基含有化合物、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール、及び、(C)エポキシ基含有化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記グリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールである、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
2.前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールの含有量は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、25~80質量%である、項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
3. 前記(C)エポキシ基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、0.5~60質量部である、項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
4.前記(C)エポキシ基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、0.5~35質量部である、項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
5.前記(A)イソシアネート基含有化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその変性体、並びに、ヘキサメチレンジイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
6.前記(A)イソシアネート基含有化合物の含有量は、前記(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、10~40質量部である、項1~5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
7.更に、(D)ひまし油系ポリオールを含有する、項1~6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
8.前記(D)ひまし油系ポリオールの含有量は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量部として、50質量部以下である、項7に記載のポリウレタン樹脂組成物。
9.項1~8のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
10.項9 に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、バイオマス由来の原料を用いていても、柔軟性が高く、伸び率が高く、耐湿性に優れた樹脂製品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品について詳細に説明する。
【0013】
1.ポリウレタン樹脂組成物
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)イソシアネート基含有化合物(以下、「(A)成分」とも示す。)、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール(以下、「(B)成分」とも示す。)、及び、(C)エポキシ基含有化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物(以下、「(C)成分」とも示す。)であって、前記グリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールであるポリウレタン樹脂組成物である。本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記(B)成分がバイオマス由来のグリコールを原料としており、当該グリコールとして、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールを用いている。また、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記(A)成分及び上記(B)成分に加え、(C)成分として、エポキシ基含有化合物を含有する。本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(B)成分が特定のグリコールを原料としており、且つ、(C)成分として、エポキシ基含有化合物を含有するため、バイオマス由来の原料を用いていても、柔軟性が高く、伸び率が高い樹脂製品を製造することができる。
【0014】
本発明のポリウレタン樹脂組成物のバイオマス度は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、本発明のポリウレタン樹脂組成物のバイオマス度の上限は高い程好ましく、100%であってもよいし、90%、80%であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において、ポリウレタン樹脂組成物、及び、各原料のバイオマス度の測定方法は、下記測定方法により測定される。
【0016】
バイオマス度の測定方法
各原料のバイオマス度を、加速器質量分析装置を用いてC14の含有量から測定する。測定された各原料のバイオマス度(%)に、各原材料の配合割合を乗じて合計し、ポリウレタン樹脂組成物のバイオマス度を算出する。
【0017】
((A)イソシアネート基含有化合物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において用いられる(A)イソシアネート基含有化合物としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来イソシアネート基含有化合物として用いられているものを各種使用することが可能である。上記イソシアネート基含有化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
イソシアネート基含有化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体、及び/又は、アロファネート変性体を含んでいてもよい。イソシアネート基含有化合物がポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体、及び/又は、アロファネート変性体を含むことにより、ポリウレタン樹脂組成物がより優れた耐熱性を示すことができる。
【0023】
上記(A)成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの変性体、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体からなる群より選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0024】
上記イソシアネート基含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記(A)成分の含有量は、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、10~40質量部が好ましく、15~35質量部がより好ましい。(A)成分の含有量の上限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。(A)成分の含有量の下限が上記範囲であると、硬化したポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性及び硬化性がより向上する。
【0026】
((B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、(B)成分は、バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールであり、上記バイオマス由来のグリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールである。上記グリコールは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールであり、バイオマス由来のものであれば、公知のものを用いることができる。
【0027】
上記バイオマス由来のグリコールとは、1,3プロパンジオール及び/又は1,4ブタンジオールであって、植物等の天然の成分を出発物質として合成することができるグリコールを意味する。
【0028】
(B)成分は、バイオマス由来のグリコールを原料中に含むポリエーテルポリオールであれば特に限定されず、バイオマス由来のグリコール以外の他のグリコールを原料中に含む共重合体であってもよいが、他のグリコールを原料中に含まないことが好ましい。このような、他のグリコールとしては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来ポリオール成分として用いられているものを各種使用することが可能である。
【0029】
上記他のグリコールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2メチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、2-メチルプロパン-1、2,3-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリット、ポリラクトンジオール、ポリラクトントリオール、エステルグリコール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、水酸基含有液状ポリイソプレンの水素化物、水酸基含有液状ポリブタジエンの水素化物等が挙げられる。
【0030】
上記(B)成分の有量は、本発明のポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、25~80質量%が好ましく、40~75質量%がより好ましい。(B)成分の含有量の上限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物を用いて製造された樹脂製品の柔軟性がより向上し、伸び率がより向上する。(B)成分の含有量の下限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物を用いて製造された樹脂製品の硬度がより向上する。
【0031】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分とのNCO/OH比が0.6~2.0であることが好ましく、0.7~1.5であることがより好ましい。NCO/OH比の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより向上する。NCO/OH比の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。
【0032】
((C)エポキシ基含有化合物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において用いられる(C)エポキシ基含有化合物としては、特に限定されず、樹脂組成物において従来用いられるものを各種使用することが可能である。
【0033】
上記(C)成分としては、エポキシ基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものを好ましく用いることができる。エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、又は環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等のエポキシ化合物を用いることができる。
【0034】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、α-ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、又はテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0035】
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、又はテトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、又はジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0037】
環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、又はビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0038】
上記(C)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物がより好ましい。
【0039】
上記(C)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
上記(C)成分の含有量は、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、0.5~35質量部が好ましく、1~55質量部がより好ましく、5~40質量部が更に好ましい。(C)成分の含有量の上限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。(C)成分の含有量の下限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させて製造した樹脂製品の耐湿性がより向上し、且つ、柔軟性、伸び率がより向上する。
【0041】
((D)ひまし油系ポリオール)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(D)ひまし油系ポリオール(以下、「(D)成分」とも示す。)を含有していてもよい。本発明のポリウレタン樹脂組成物が(D)成分を含有することにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いて製造した樹脂製品の耐湿性、絶縁性がより向上する。
【0042】
上記(D)成分としては、ひまし油、ひまし油脂肪酸、及びこれらに水素付加した水添ひまし油や水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールを使用することができる。このようなポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物及びこれらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオール等が挙げられる。
【0043】
上記(D)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記(D)成分の含有量は、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、120質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、40質量部以下が特に好ましい。また、上記(D)成分の含有量は、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、20質量部以上が特に好ましい。(D)成分の含有量の上限が上記範囲であると、本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いて製造した樹脂製品の耐湿性がより向上する。(D)成分の含有量の下限が上記範囲であると、本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いて製造した樹脂製品の耐湿性、絶縁性がより向上する。
【0045】
((E)可塑剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記(A)成分~(D)成分の他に、更に、(E)可塑剤(以下、「(E)成分」とも示す。)を含有していてもよいが、より高い耐湿性を示すことができる点で、可塑剤を含有しないことが好ましい。
【0046】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸エステル;トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテート等のピロメリット酸エステル等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。また、上記(E)成分の含有量の下限は特に限定されず、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオールを100質量部として、1質量部以上であってもよいし、5質量部以上であってもよい。
【0048】
(その他の添加剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、上記(A)成分~(E)成分以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。このようなその他の添加剤としては、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0049】
触媒としては特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物に用いられる従来公知の触媒を用いることができる。このような触媒としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート等の錫触媒;オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛触媒;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス触媒、ジエチレントリアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。また、上記触媒としては、有機金属化合物、金属錯体化合物等を用いてもよい。
【0050】
上記その他の添加剤の使用量は、その使用目的に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、通常の添加量と同定の範囲から適宜決定すればよい。
【0051】
(ポリウレタン樹脂組成物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、1液型、2液型のいずれであってもよいが、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する本発明のポリウレタン樹脂組成物は、通常2液型樹脂組成物である。以下に説明する製造方法において、2液型樹脂組成物について説明する。
【0052】
2.ポリウレタン樹脂組成物の製造方法
本発明のポリウレタン樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法として用いられる従来公知の方法により製造することができる。
【0053】
このような製造方法としては、例えば、(B)バイオマス由来のグリコールを原料とするポリエーテルポリオール成分を含む成分を調製して第1成分とし、(A)イソシアネート基含有化合物を含む成分を調製して第2成分として、第1成分と第2成分とを混合することにより反応させてポリウレタン樹脂として、本発明の樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
【0054】
上記第1成分が(B)成分を含有し、上記第2成分が(A)成分を含有していれば、他の成分は、第1成分又は第2成分のどちらに含有されていてもよい。
【0055】
上記第1成分及び第2成分の構成としては、具体的には、第1成分が(B)成分及び(C)成分を含み、第2成分が(A)成分を含む構成が挙げられる。また、第1成分が(B)成分及び(C)成分を含み、必要に応じて(D)成分及び(E)成分を含み、第2成分が(A)成分を含む構成であってもよい。
【0056】
第1成分、及び、第2成分を調製する方法としては特に限定されず、例えば、第1成分、及び、第2成分のそれぞれを構成する成分を混練機中で混合撹拌する工程1を有する調製方法により調製することができる。
【0057】
上記工程1において、混合撹拌の温度は、好ましくは60℃以上120℃以下であり、撹拌時間は30分~3時間程度であればよい。
【0058】
以上説明した工程1により、第1成分及び第2成分が調製される。
【0059】
工程1により調製された第1成分及び第2成分を混合する工程2により、本発明のポリウレタン樹脂組成物が製造される。混合温度は特に限定されず、好ましくは23℃以上60℃以下である。混合時間は特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフに合わせて適宜設定すればよい。
【0060】
以上説明した工程2により、本発明のポリウレタン樹脂組成物が製造される。
【0061】
3.樹脂硬化物
本発明のポリウレタン樹脂組成物が硬化することにより、樹脂硬化物を得ることができる。当該樹脂硬化物は、柔軟性が高く、伸び率が高いので、電気電子部品の分野で用いられる樹脂製品として有用である。
【0062】
上記樹脂硬化物は、ポリウレタン樹脂組成物を60℃の温度下で16時間静置して硬化させて樹脂硬化物とした際の初期硬度の硬度Aが0以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、15以上が特に好ましい。上記初期硬度の硬度Aの下限が上記範囲であることにより、樹脂硬化物を電気電子部品の分野で用いられる樹脂製品として、より有用に用いることができる。また、上記初期硬度の硬度Aは、70以下が好ましく、65以下がより好ましい。初期硬度の硬度Aの上限が上記範囲であることにより、樹脂硬化物の柔軟性、伸び率がより向上する。なお、本明細書において、上記樹脂硬化物の初期硬度の硬度Aの測定方法は、後述の実施例に記載の方法による。
【0063】
上記樹脂硬化物の耐湿試験後の硬度は0以上が好ましく、5以上がより好ましい。耐湿試験後の硬度の下限が上記範囲であることにより、樹脂硬化物を電気電子部品の分野で用いられる樹脂製品として、より有用に用いることができる。なお、上記樹脂硬化物の硬度が低く、例えば0である場合であっても、樹脂硬化物の形状を保持していることが好ましい。また、上記樹脂硬化物の耐湿試験後の硬度は、70以下が好ましく、60以下がより好ましい。耐湿試験後の硬度の下限が上記範囲であることにより、樹脂硬化物の柔軟性、伸び率がより向上する。なお、本明細書において、上記樹脂硬化物の耐湿試験後の硬度の測定方法は、後述の実施例に記載の方法による。
【0064】
4.封止材及び電気電子部品
本発明は、また、上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材でもある。封止剤には、適度な伸び率が要求される。ポリウレタン樹脂組成物を用いて、例えば電気電子部品のプリント基板全体に樹脂封止を行った場合、プリント基板の変形に追従し、高い封止性を維持することが要求される。また、冷熱衝撃試験等においても、低温時のクラック耐性に優れ、注型部品やケースに追従することが要求される。上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材は、電気電子部品や、発熱を伴う電気電子部品等に好適に使用することができる。このような電気電子部品としては、トランスコイル、チョークコイル及びリアクトルコイル等の変圧器や機器制御基盤、各種センサー等が挙げられる。このような、本発明の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品も、本発明の一つである。本発明の電気電子部品は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、電動工具、自動車、バイク、電池パック等に用いることができる。
【実施例0065】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0066】
実施例、及び比較例に使用する原料を下記表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
(ポリウレタン樹脂組成物の調製)
表2に示す第1成分の配合の原料を反応釜に投入し、常温、常圧下で1時間攪拌し、第1成分を調製した。
【0069】
表2に示す第2成分の配合の原料を加熱、冷却、減圧装置を備えた反応釜に投入し、60℃、10mmHg以下の圧力下で1時間かけて脱水・反応を行い、第2成分を調製した。
【0070】
表2に示す配合で、第1成分に第2成分を加えて撹拌し、脱泡して混合することによりポリウレタン樹脂組成物を得た。第1成分と第2成分との混合は、第1成分を23℃に調整し、続いて23℃に調整した第2成分を添加し自転・公転ミキサー(あわとり錬太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合することにより行った。
【0071】
試験片の作成
130×130×3mmの成形用型(試験片1)、内径30mm、高さ10mmの成形用型(試験片2)にポリウレタン樹脂組成物を注入した。次いで、当該ポリウレタン樹脂組成物を60℃で16時間加熱した後、室温で1日放置して硬化させて、試験片を作成した。
【0072】
以上のように、実施例及び比較例のポリウレタン樹脂組成物を用いて作成した試験片を用いて、下記の試験を行った。
【0073】
硬度A(初期硬度の硬度A)
試験片2(内径30mm、高さ10mm)を用いて、JIS K6253に準拠した測定方法により、硬度計(高分子計器社製、アスカーゴム硬度計A型)を用いて、温度23℃の条件で硬度(タイプA)を測定した。
【0074】
体積抵抗率
試験片1(130×130×3mm)の体積抵抗率を、抵抗測定器(HIOKI社製、DSM-8104)を用いて測定した。
【0075】
伸び率(柔軟性)
試験片1(130×130×3mm)を用いて、JIS K6251に準拠した測定方法により、破断時の標線間距離を測定し、下記式に従って伸び率(柔軟性)を算出した。また、当該伸び率を初期伸び率とした。
伸び率(%)=[(破断時の標線間距離-標線間距離)/標線間距離]×100
【0076】
耐湿試験後の硬度
試験片2(内径30mm、高さ10mm)を用いて、121℃、100%RH、2気圧、140時間の条件でプレッシャークッカー試験(PCT試験)を行った。試験後の試験片2を用いて、上述の硬度Aの測定方法により硬度を測定した。
【0077】
耐湿試験後の伸び率(柔軟性)の変化率
試験片1(130×130×3mm)を用いて、121℃、100%RH、2気圧、140時間の条件で耐湿試験(プレッシャークッカー試験(PCT試験))を行った。耐湿試験後の試験片1を用いて、上述の伸び率(柔軟性)の測定方法により、耐湿試験後の伸び率を測定し、下記式に従って耐湿試験後の伸び率の変化率を算出した。
伸び率の変化率(%)=[(耐湿試験後の伸び率-初期伸び率)/初期伸び率)]×100
【0078】
結果を表2及び3に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】