(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142480
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両用駆動伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/00 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
F16H57/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054630
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
(72)【発明者】
【氏名】土田 和行
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡浩
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA03
3J063BA04
3J063BA05
3J063BB23
3J063CD44
(57)【要約】
【課題】ケーブルの損傷を回避可能な車両用駆動伝達装置を提供する。
【解決手段】ケース9の第1区画壁91には、第1室CM1と第2室CM2とを連通する連通口9aが形成され、ケーブルC1は、第1室CM1において連通口9aよりも第1側H1から、連通方向Dに沿う連通方向視で第1方向Hに沿う姿勢で連通口9aを貫通し、第2室CM2において第2側H2に向かうように配置され、位置決め機構6は、連通口9aよりも第1側H1において第1区画壁91から第1室CM1の側に突出して、ケーブルC1を連通口9aの第1側H1の縁部に対して第1室CM1の側に離間させる第1突出部61と、連通口9aよりも第2側H2において第1区画壁91から第2室CM2の側に突出して、ケーブルC1を連通口9aの第2側H2の縁部に対して第2室CM2の側に離間させる第2突出部と、の少なくとも一方を備え、ケーブルC1を第2方向に保持する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記ケースは、当該ケースの内部を第1室と第2室とに区画する区画壁を備え、
前記区画壁には、前記第1室と前記第2室とを連通する連通口が形成され、
前記ケースには、ケーブルと、前記ケーブルの位置決めを行う位置決め機構と、が収容され、
前記連通口が前記第1室と前記第2室とを連通する方向を連通方向とし、前記連通方向に直交する方向のうち特定の方向を第1方向とし、前記第1方向の一方側を第1側とし、前記第1方向の他方側を第2側とし、前記連通方向に沿う連通方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記ケーブルは、前記第1室において前記連通口よりも前記第1側から前記第2側へ向かい、前記連通方向視で前記第1方向に沿う姿勢で前記連通口を貫通し、前記第2室において前記連通口よりも前記第2側に向かうように配置され、
前記位置決め機構は、
前記連通口よりも前記第1側において前記区画壁から前記第1室の側に突出するように形成され、前記ケーブルを前記連通口の前記第1側の縁部に対して前記第1室の側に離間させる第1突出部と、
前記連通口よりも前記第2側において前記区画壁から前記第2室の側に突出するように形成され、前記ケーブルを前記連通口の前記第2側の縁部に対して前記第2室の側に離間させる第2突出部と、の少なくとも一方を備え、
前記ケーブルを前記第2方向に保持するように構成されている、車両用駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第1突出部及び前記第2突出部の少なくとも一方を対象突出部として、
前記対象突出部は、当該対象突出部における前記第2方向の一部の領域が前記区画壁の側に窪んだ凹部を備え、
前記凹部に前記ケーブルの一部が配置されて、前記ケーブルが前記第2方向に保持される、請求項1に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、前記区画壁の前記第1室の側を向く面における前記第1突出部よりも前記第1側の領域に配置され、前記第1方向に沿って延在する第1凹溝と、前記区画壁の前記第2室の側を向く面における前記第2突出部よりも前記第2側の領域に配置され、前記第1方向に沿って延在する第2凹溝と、の少なくとも一方を更に備える、請求項1又は2に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項4】
前記入力部材は、前記駆動力源としての回転電機に駆動連結され、
前記第1室に、前記動力伝達機構と、前記ケース内の油を吸入して吐出することで前記回転電機に冷却用の前記油を供給するオイルポンプと、が収容され、
前記第2室に、前記回転電機が収容されていると共に、前記回転電機のロータの回転を検出する回転センサ、前記回転電機のステータの温度を検出する温度センサ、及び前記油の温度を検出する油温センサの少なくとも1つを含むセンサと、前記第2室と前記第2室の外部との間で電気的な接続を行うためのコネクタと、前記センサと前記コネクタとを電気的に接続するセンサケーブルと、が収容され、
前記ケーブルは、前記オイルポンプと前記コネクタとを電気的に接続するように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、それらの間の動力伝達を行う動力伝達機構と、当該動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動伝達装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動伝達装置(100)では、ケース(2)は、当該ケースの内部を第1室(SP1)と第2室(SP2)とに区画する区画壁(2500)を備えている。区画壁(2500)には、第1室(SP1)と第2室(SP2)とを連通する連通口(25009)が形成されている。そして、第1室(SP1)に配置された回転電機(1)のステータ(320)の温度を検出する温度センサ(93)と、第2室(SP2)に配置されたコネクタ(CN1)とを電気的に接続するケーブル(L114)が、連通口(25009)を通るように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、特許文献1のように区画壁(2500)に連通口(25009)を形成する場合、バリ等の鋭角形状の部分が連通口(25009)の縁部に形成される場合がある。そのため、車両用駆動伝達装置(100)が搭載された車両の振動等によって、ケーブル(L114)が連通口(25009)の縁部に接触した場合に、ケーブル(L114)が損傷する可能性があった。
【0006】
そこで、ケーブルの損傷を回避可能な車両用駆動伝達装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用駆動伝達装置の特徴構成は、
駆動力源に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記ケースは、当該ケースの内部を第1室と第2室とに区画する区画壁を備え、
前記区画壁には、前記第1室と前記第2室とを連通する連通口が形成され、
前記ケースには、ケーブルと、前記ケーブルの位置決めを行う位置決め機構と、が収容され、
前記連通口が前記第1室と前記第2室とを連通する方向を連通方向とし、前記連通方向に直交する方向のうち特定の方向を第1方向とし、前記第1方向の一方側を第1側とし、前記第1方向の他方側を第2側とし、前記連通方向に沿う連通方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記ケーブルは、前記第1室において前記連通口よりも前記第1側から前記第2側へ向かい、前記連通方向視で前記第1方向に沿う姿勢で前記連通口を貫通し、前記第2室において前記連通口よりも前記第2側に向かうように配置され、
前記位置決め機構は、
前記連通口よりも前記第1側において前記区画壁から前記第1室の側に突出するように形成され、前記ケーブルを前記連通口の前記第1側の縁部に対して前記第1室の側に離間させる第1突出部と、
前記連通口よりも前記第2側において前記区画壁から前記第2室の側に突出するように形成され、前記ケーブルを前記連通口の前記第2側の縁部に対して前記第2室の側に離間させる第2突出部と、の少なくとも一方を備え、
前記ケーブルを前記第2方向に保持するように構成されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、位置決め機構がケーブルを第2方向に保持するため、連通口における第2方向の両側の縁部にケーブルが接触することが回避される。また、位置決め機構が第1突出部を備える場合には、ケーブルが連通口の第1側の縁部に接触することを回避できる。更に、位置決め機構が第2突出部を備える場合には、ケーブルが連通口の第2側の縁部に接触することを回避できる。
したがって、本構成によれば、連通口の縁部にバリ等の鋭角形状の部分がある場合であっても、車両の振動等によってケーブルが損傷することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置のスケルトン図
【
図3】第1の実施形態に係るケースの第1室を示す図
【
図4】第1の実施形態に係るケースの第2室を示す図
【
図5】第1の実施形態に係るケースの区画壁に形成された連通口、及び位置決め機構を示す図
【
図6】第1の実施形態に係る位置決め機構の構成を示す図
【
図7】第1の実施形態に係る位置決め機構の構成を示す断面図
【
図8】第2の実施形態に係る位置決め機構の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について、
図1から
図7を参照して説明する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、駆動力源に駆動連結される入力部材1と、車輪WHに駆動連結される出力部材2と、入力部材1と出力部材2との間の動力伝達を行う動力伝達機構3と、動力伝達機構3を収容するケース9と、を備えている。
【0012】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0013】
本実施形態では、回転電機MGが「駆動力源」に相当する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、車輪WHの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0014】
以下の説明では、入力部材1の回転軸心である第1軸心A1に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、第1軸心A1を含む複数の回転軸心のそれぞれに直交する方向を、対応する軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0015】
図1に示すように、ケース9は、当該ケース9の内部を第1室CM1と第2室CM2とに区画する「区画壁」としての第1区画壁91を備えている。本実施形態では、第1区画壁91は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。つまり、本実施形態では、第1室CM1と第2室CM2とが、軸方向Lに並んで配置されている。また、本実施形態では、第1室CM1に動力伝達機構3が収容され、第2室CM2に回転電機MGが収容されている。
【0016】
本実施形態では、ケース9は、第1側壁92と、第2側壁93と、第2区画壁94と、を更に備えている。
【0017】
第1側壁92は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第1側壁92は、当該第1側壁92と第1区画壁91との軸方向Lの間に第1室CM1が形成されるように、第1区画壁91に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0018】
第2側壁93は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第2側壁93は、当該第2側壁93と第1区画壁91との軸方向Lの間に第2室CM2が形成されるように、第1区画壁91に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0019】
第2区画壁94は、ケース9の内部を、第1室CM1及び第2室CM2と、第3室CM3とに区画するように形成されている。本実施形態では、第2区画壁94は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。つまり、本実施形態では、第1室CM1及び第2室CM2と、第3室CM3とが、径方向Rに並んで配置されている。
【0020】
本実施形態では、第3室CM3には、インバータ装置INVが収容されている。インバータ装置INVは、回転電機MGを制御するように構成されている。本実施形態では、インバータ装置INVは、回転電機MG及び上記の蓄電装置と電気的に接続され、当該蓄電装置の直流と回転電機MGの複数相(ここでは3相)の交流との間で電力を変換する装置である。本例では、インバータ装置INVは、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を有するスイッチング素子ユニット、上記インバータ回路の直流電源側の電圧の平滑化を行う平滑コンデンサ、及び上記インバータ回路の制御を行う制御基板を備えている。
【0021】
回転電機MGは、ステータSTと、当該ステータSTに対して回転自在に設けられたロータRTと、を備えている。ステータSTは、円筒状のステータコアSCを備えている。ステータコアSCは、ケース9に固定されている。ロータRTは、円筒状のロータコアRCと、ロータコアRCと一体的に回転するように連結されたロータ軸RSと、を備えている。ロータコアRCは、ステータコアSCに対して回転自在に支持されている。ロータ軸RSは、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。
【0022】
本実施形態では、回転電機MGは、インナロータ型の回転電機である。そのため、ロータコアRCが、ステータコアSCに対して径方向Rの内側に配置されている。また、ロータ軸RSが、ロータコアRCに対して径方向Rの内側に配置されている。
【0023】
また、本実施形態では、回転電機MGは、回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコアSCには、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、ステータコアSCに対して軸方向Lの両側に突出したコイルエンド部CEが形成されるように、ステータコアSCに巻装されている。また、ロータコアRCには、永久磁石が設けられている。
【0024】
本実施形態では、回転電機MGは、第1軸心A1上に配置されている。つまり、本実施形態では、回転電機MGは、入力部材1と同軸上に配置されている。
【0025】
本実施形態では、入力部材1は、入力ギヤ11と、入力軸12と、を備えている。入力ギヤ11は、入力軸12と一体的に回転するように連結されている。入力軸12は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。入力軸12は、ロータ軸RSと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、入力軸12は、第1区画壁91を軸方向Lに貫通している。そして、第1軸心A1を軸心とする筒状に形成されたロータ軸RSに対して、入力軸12が径方向Rの内側に配置された状態で、ロータ軸RSと入力軸12とが一体的に回転するように連結されている。
【0026】
本実施形態では、動力伝達機構3は、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、を備えている。
【0027】
カウンタギヤ機構4は、第1軸心A1とは異なる第2軸心A2上に配置されている。カウンタギヤ機構4は、カウンタ入力ギヤ41と、カウンタ出力ギヤ42と、を備えている。カウンタ入力ギヤ41は、入力ギヤ11に噛み合っている。カウンタ出力ギヤ42は、カウンタ入力ギヤ41と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、カウンタ出力ギヤ42は、カウンタ入力ギヤ41よりも小径に形成されている。
【0028】
差動歯車機構5は、第1軸心A1及び第2軸心A2とは異なる第3軸心A3上に配置されている。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51と、差動ケース52と、一対のピニオンギヤ53と、一対のサイドギヤ54と、を備えている。
【0029】
差動入力ギヤ51は、カウンタ出力ギヤ42に噛み合っている。本実施形態では、差動入力ギヤ51は、カウンタ出力ギヤ42よりも大径に形成されている。
【0030】
差動ケース52は、一対のピニオンギヤ53及び一対のサイドギヤ54を収容している。差動ケース52は、第3軸心A3を中心として回転するように構成されている。差動ケース52は、差動入力ギヤ51と一体的に回転するように連結されている。
【0031】
一対のピニオンギヤ53は、第3軸心A3を基準とした径方向Rに間隔を空けて、互いに対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤ53は、差動ケース52に固定されたピニオンシャフト55に回転自在に支持されている。より詳細には、一対のピニオンギヤ53のそれぞれは、その軸心を中心として回転(自転)自在、かつ、第3軸心A3を中心として回転(公転)自在に構成されている。
【0032】
一対のサイドギヤ54は、ピニオンシャフト55に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されている。一対のサイドギヤ54は、一対のピニオンギヤ53に噛み合っている。一対のサイドギヤ54は、第3軸心A3を中心として回転するように構成されている。
【0033】
本実施形態では、軸方向第1側L1のサイドギヤ54は、連結部材56と一体的に回転するように連結されている。連結部材56は、軸方向第1側L1の車輪WHに駆動連結された第1ドライブシャフトDS1と一体的に回転するように連結される部材である。本実施形態では、連結部材56は、第3軸心A3を軸心とする筒状に形成されている。そして、連結部材56は、当該連結部材56に対して径方向Rの内側に軸方向第1側L1から第1ドライブシャフトDS1が挿入された状態で、第1ドライブシャフトDS1と一体的に回転するように連結されている。
【0034】
本実施形態では、軸方向第2側L2のサイドギヤ54は、出力軸部材57と一体的に回転するように連結されている。出力軸部材57は、軸方向第2側L2の車輪WHに駆動連結された第2ドライブシャフトDS2と一体的に回転するように連結される軸部材である。出力軸部材57は、第3軸心A3上に配置されている。本実施形態では、出力軸部材57の軸方向第2側L2の端部が、第3軸心A3を軸心とする筒状に形成されている。そして、出力軸部材57は、当該出力軸部材57の筒状部分に対して径方向Rの内側に軸方向第2側L2から第2ドライブシャフトDS2が挿入された状態で、第2ドライブシャフトDS2と一体的に回転するように連結されている。
【0035】
本実施形態では、連結部材56及び出力軸部材57のそれぞれが出力部材2に相当する。そのため、本実施形態では、差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51に伝達された回転を、一対の出力部材2に分配する。
【0036】
図3及び
図4に示すように、ケース9には、ケーブルC1が収容されている。ケーブルC1は、電力及び電気信号の少なくとも一方を伝達する電線が絶縁体により被覆されたものである。ケーブルC1は、第1区画壁91に形成された連通口9aを通るように配置されている。連通口9aは、ケース9の第1室CM1と第2室CM2とを連通するように形成されている。つまり、ケーブルC1は、第1室CM1と第2室CM2とに亘って配置されている。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では、第1室CM1に、動力伝達機構3に加えて、オイルポンプOPが収容されている。オイルポンプOPは、ケース9内の油を吸入して吐出することで回転電機MGに冷却用の油を供給するように構成されている。本実施形態では、オイルポンプOPは、電動モータにより駆動される電動式のポンプである。
【0038】
本実施形態では、オイルポンプOPは、第1区画壁91に固定されている。そして、オイルポンプOPは、第1区画壁91に形成された吸入口9bから油を吸入する。吸入口9bは、当該吸入口9bから吸入された油に含まれる異物を除去するストレーナに連通している。本実施形態では、吸入口9bは、第1室CM1に配置されている。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、第2室CM2に、回転電機MGに加えて、センサSと、コネクタCNと、センサケーブルC2とが収容されている。
【0040】
センサSは、回転センサS1、温度センサS2、及び油温センサS3の少なくとも1つを含む。本実施形態では、センサSは、回転センサS1、温度センサS2、及び油温センサS3の全てを含む。
【0041】
回転センサS1は、回転電機MGのロータRTの回転を検出するセンサである。
図1に示すように、本実施形態では、回転センサS1は、ケース9に対して固定されたセンサステータS11と、ロータRTと一体的に回転するセンサロータS12と、を備えている。本例では、回転センサS1は、レゾルバとして構成されている。なお、回転センサS1は、レゾルバに限らず、例えば、ホール素子センサ、エンコーダ、磁気式回転センサ等の各種センサにより構成することができる。
【0042】
本実施形態では、センサステータS11は、第1軸心A1を軸心とする円環板状に形成されている。そして、センサステータS11は、第1区画壁91又は第2側壁93に固定されている。また、センサロータS12は、センサステータS11に対して径方向Rの内側から対向するように配置されている。
図1に示す例では、センサステータS11は、第2側壁93に固定されている。
【0043】
図4に示すように、温度センサS2は、回転電機MGのステータSTの温度を検出するセンサである。本実施形態では、温度センサS2は、ステータSTにおける一方のコイルエンド部CEの温度を検出するように、当該コイルエンド部CEに配置されている。本例では、温度センサS2は、サーミスタにより構成されている。なお、温度センサS2は、サーミスタに限らず、例えば熱電対により構成することができる。
【0044】
油温センサS3は、油の温度を検出するセンサである。本実施形態では、油温センサS3は、第2室CM2の底部に貯留された油の温度を検出可能に配置されている。
【0045】
コネクタCNは、第2室CM2と第2室CM2の外部との間で電気的な接続を行うための部材である。本実施形態では、コネクタCNは、第2室CM2に収容された回転電機MG及びセンサSと、第3室CM3に収容されたインバータ装置INV(
図1参照)との間で電気的な接続を行うために用いられる。
【0046】
センサケーブルC2は、センサSとコネクタCNとを電気的に接続するケーブルである。センサケーブルC2は、電力及び電気信号の少なくとも一方を伝達する電線が絶縁体により被覆されて構成されている。本実施形態では、センサケーブルC2は、回転センサS1とコネクタCNとを電気的に接続する第1センサケーブルC21と、温度センサS2とコネクタCNとを電気的に接続する第2センサケーブルC22と、油温センサS3とコネクタCNとを電気的に接続する第3センサケーブルC23と、を含む。
【0047】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、ケーブルC1は、オイルポンプOPとコネクタCNとを電気的に接続するように配置されている。より詳細には、第1室CM1に収容されたオイルポンプOPと、第2室CM2に収容されたコネクタCNとが、連通口9aを通るように配置されたケーブルC1により、互いに電気的に接続されている。
【0048】
以下の説明では、連通口9aが第1室CM1と第2室CM2とを連通する方向を「連通方向D」とする。また、連通方向Dに直交する方向のうち特定の方向を「第1方向H」とする。そして、第1方向Hの一方側を「第1側H1」とし、第1方向Hの他方側を「第2側H2」とする。また、連通方向Dに沿う連通方向視で、第1方向Hに直交する方向を「第2方向W」とする。
【0049】
なお、本実施形態では、連通方向Dは、軸方向Lに一致する。また、第1方向Hは、車両用駆動伝達装置100が車両に搭載された車両搭載状態において、鉛直方向に一致する。そして、第1側H1が鉛直下側に一致し、第2側H2が鉛直上側に一致する。また、第2方向Wは、車両用駆動伝達装置100が車両に搭載された車両搭載状態において、水平方向に一致する。
【0050】
図3に示すように、ケーブルC1は、第1室CM1において連通口9aよりも第1側H1から第2側H2へ向かい、連通方向Dに沿う連通方向視で第1方向Hに沿う姿勢で連通口9aを貫通するように配置されている。本実施形態では、第1室CM1においてケーブルC1が接続されるオイルポンプOPが、連通口9aよりも第1側H1に配置されている。
【0051】
図4に示すように、ケーブルC1は、第2室CM2において連通口9aよりも第2側H2に向かうように配置されている。本実施形態では、第2室CM2においてケーブルC1が接続されるコネクタCNが、連通口9aよりも第2側H2に配置されている。
【0052】
図5及び
図6に示すように、ケース9には、ケーブルC1の位置決めを行う位置決め機構6が収容されている。位置決め機構6は、ケーブルC1を第2方向Wに保持するように構成されている。
【0053】
図7に示すように、本実施形態では、位置決め機構6は、第1突出部61を備えている。第1突出部61は、連通口9aよりも第1側H1において、第1区画壁91から第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)に突出するように形成されている。第1突出部61は、連通方向Dにおける第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)からケーブルC1を支持している。こうして、第1突出部61は、ケーブルC1を連通口9aの第1側H1の縁部に対して第1室CM1の側に離間させている。本例では、第1突出部61は、第1区画壁91と一体的に形成されている。
【0054】
図6に示すように、本実施形態では、第1突出部61は、凹部6aを備えている。本実施形態では、凹部6aは、第1突出部61における第2方向Wの一部の領域が第1区画壁91の側(ここでは、軸方向第2側L2)に窪むように形成されている。凹部6aには、ケーブルC1の一部が配置される。こうして、ケーブルC1が第1突出部61により第2方向Wに保持される。言い換えると、ケーブルC1の第2方向Wの移動が第1突出部61により規制される。
【0055】
図7に示すように、本実施形態では、位置決め機構6は、第1凹溝63を更に備えている。第1凹溝63は、第1区画壁91の第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)を向く面における第1突出部61よりも第1側H1の領域に配置されている。第1凹溝63は、第1区画壁91の第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)を向く面が第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)に窪むように形成されている。第1凹溝63は、第1方向Hに沿って延在するように形成されている。第1凹溝63には、ケーブルC1における第1突出部61に接触する部分よりも第1側H1の部分が配置される。こうして、ケーブルC1が第1凹溝63により第2方向Wに保持される。言い換えると、ケーブルC1の第2方向Wの移動が第1凹溝63により規制される。
【0056】
本実施形態では、ケーブルC1は、第1室CM1においてカバー部材7に覆われている。本実施形態では、カバー部材7は、ケーブルC1における第1突出部61の凹部6a及び第1凹溝63に配置された部分を、連通方向Dにおける第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)から支持するように配置されている。カバー部材7は、第1区画壁91に対して着脱可能に構成されている。なお、
図5は、カバー部材7が外された状態における位置決め機構6の構成を示している。また、
図6は、カバー部材7が外されていると共に、ケーブルC1が配置されていない状態における位置決め機構6の構成を示している。
【0057】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について、
図8を参照して説明する。本実施形態では、位置決め機構6の構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0058】
図8に示すように、本実施形態では、位置決め機構6は、第1突出部61の代わりに、第2突出部62を備えている。第2突出部62は、連通口9aよりも第2側H2において、第1区画壁91から第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)に突出するように形成されている。第2突出部62は、連通方向Dにおける第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)からケーブルC1を支持している。こうして、第2突出部62は、ケーブルC1を連通口9aの第2側H2の縁部に対して第2室CM2の側に離間させている。本例では、第2突出部62は、第1区画壁91と一体的に形成されている。
【0059】
本実施形態では、第2突出部62は、凹部6aを備えている。本実施形態では、凹部6aは、第2突出部62における第2方向Wの一部の領域が第1区画壁91の側(ここでは、軸方向第1側L1)に窪むように形成されている。凹部6aには、ケーブルC1の一部が配置される。こうして、ケーブルC1が第2突出部62により第2方向Wに保持される。言い換えると、ケーブルC1の第2方向Wの移動が第2突出部62により規制される。
【0060】
本実施形態では、位置決め機構6は、第1凹溝63の代わりに、第2凹溝64を備えている。第2凹溝64は、第1区画壁91の第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)を向く面における第2突出部62よりも第2側H2の領域に配置されている。第2凹溝64は、第1区画壁91の第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)を向く面が第1室CM1の側(ここでは、軸方向第1側L1)に窪むように形成されている。第2凹溝64は、第1方向Hに沿って延在するように形成されている。第2凹溝64には、ケーブルC1における第2突出部62に接触する部分よりも第2側H2の部分が配置される。こうして、ケーブルC1が第2凹溝64により第2方向Wに保持される。言い換えると、ケーブルC1の第2方向Wの移動が第2凹溝64により規制される。
【0061】
本実施形態では、ケーブルC1は、第2室CM2においてカバー部材7に覆われている。本実施形態では、カバー部材7は、ケーブルC1における第2突出部62の凹部6a及び第2凹溝64に配置された部分を、連通方向Dにおける第2室CM2の側(ここでは、軸方向第2側L2)から支持するように配置されている。
【0062】
なお、上述したように、位置決め機構6は、上記第1の実施形態では第1突出部61を備え、上記第2の実施形態では第2突出部62を備えている。しかしながら、位置決め機構6は、第1突出部61及び第2突出部62の少なくとも一方を備えていれば良い。つまり、位置決め機構6が、第1突出部61及び第2突出部62の双方を備えていても良い。
【0063】
以上のように、車両用駆動伝達装置100は、
駆動力源に駆動連結される入力部材1と、
車輪WHに駆動連結される出力部材2と、
入力部材1と出力部材2との間の動力伝達を行う動力伝達機構3と、
動力伝達機構3を収容するケース9と、を備えた車両用駆動伝達装置100であって、
ケース9は、当該ケース9の内部を第1室CM1と第2室CM2とに区画する第1区画壁91を備え、
第1区画壁91には、第1室CM1と第2室CM2とを連通する連通口9aが形成され、
ケース9には、ケーブルC1と、当該ケーブルC1の位置決めを行う位置決め機構6と、が収容され、
ケーブルC1は、第1室CM1において連通口9aよりも第1側H1から第2側H2へ向かい、連通方向Dに沿う連通方向視で第1方向Hに沿う姿勢で連通口9aを貫通し、第2室CM2において連通口9aよりも第2側H2に向かうように配置され、
位置決め機構6は、
連通口9aよりも第1側H1において第1区画壁91から第1室CM1の側に突出するように形成され、ケーブルC1を連通口9aの第1側H1の縁部に対して第1室CM1の側に離間させる第1突出部61と、
連通口9aよりも第2側H2において第1区画壁91から第2室CM2の側に突出するように形成され、ケーブルC1を連通口9aの第2側H2の縁部に対して第2室CM2の側に離間させる第2突出部62と、の少なくとも一方を備え、
ケーブルC1を第2方向Wに保持するように構成されている。
【0064】
この構成によれば、位置決め機構6がケーブルC1を第2方向Wに保持するため、連通口9aにおける第2方向Wの両側の縁部にケーブルC1が接触することが回避される。また、位置決め機構6が第1突出部61を備える場合には、ケーブルC1が連通口9aの第1側H1の縁部に接触することを回避できる。更に、位置決め機構6が第2突出部62を備える場合には、ケーブルC1が連通口9aの第2側H2の縁部に接触することを回避できる。
したがって、本構成によれば、連通口9aの縁部にバリ等の鋭角形状の部分がある場合であっても、車両の振動等によってケーブルC1が損傷することを回避できる。
【0065】
なお、上述したように、上記第1の実施形態では第1突出部61が凹部6aを備え、上記第2の実施形態では第2突出部62が凹部6aを備えている。例えば、位置決め機構6が第1突出部61及び第2突出部62の双方を備えた構成では、第1突出部61及び第2突出部62の少なくとも一方が、凹部6aを備えていれば良い。つまり、第1突出部61及び第2突出部62の少なくとも一方を対象突出部6Tとした場合に、対象突出部6Tが凹部6aを備えている。なお、上記第1の実施形態では第1突出部61が対象突出部6Tであり、上記第2の実施形態では第2突出部62が対象突出部6Tである。
【0066】
このように、本実施形態では、第1突出部61及び第2突出部62の少なくとも一方を対象突出部6Tとして、
対象突出部6Tは、当該対象突出部6Tにおける第2方向Wの一部の領域が第1区画壁91の側に窪んだ凹部6aを備え、
凹部6aにケーブルC1の一部が配置されて、ケーブルC1が第2方向Wに保持される。
【0067】
この構成によれば、ケーブルC1を連通口9aの縁部から離間させるための対象突出部6Tに、ケーブルC1の一部が配置される凹部6aが形成されている。これにより、位置決め機構6の構成の簡素化を図りつつ、ケーブルC1を第2方向Wに適切に保持することができる。
【0068】
なお、上述したように、位置決め機構6は、上記第1の実施形態では第1凹溝63を備え、上記第2の実施形態では第2凹溝64を備えている。しかしながら、位置決め機構6は、第1凹溝63及び第2凹溝64の少なくとも一方を備えていれば良い。つまり、位置決め機構6が、第1凹溝63及び第2凹溝64の双方を備えていても良い。
【0069】
このように、本実施形態では、位置決め機構6は、第1区画壁91の第1室CM1の側を向く面における第1突出部61よりも第1側H1の領域に配置され、第1方向Hに沿って延在する第1凹溝63と、第1区画壁91の第2室CM2の側を向く面における第2突出部62よりも第2側H2の領域に配置され、第1方向Hに沿って延在する第2凹溝64と、の少なくとも一方を更に備える。
【0070】
この構成によれば、第1区画壁91の壁面に形成された凹溝63,64を用いて、ケーブルC1を第2方向Wに適切に保持することができる。これにより、位置決め機構6の構成の簡素化を図り易い。
また、本構成によれば、凹溝63,64が第1方向Hに沿って延在するように形成されているため、連通方向Dに沿う連通方向視で第1方向Hに沿う姿勢で連通口9aを貫通するケーブルC1の姿勢を安定的に保持し易い。
【0071】
また、上述したように、本実施形態では、入力部材1は、駆動力源としての回転電機MGに駆動連結され、
第1室CM1に、動力伝達機構3と、ケース9内の油を吸入して吐出することで回転電機MGに冷却用の油を供給するオイルポンプOPと、が収容され、
第2室CM2に、回転電機MGが収容されていると共に、回転電機MGのロータRTの回転を検出する回転センサS1、回転電機MGのステータSTの温度を検出する温度センサS2、及び油の温度を検出する油温センサS3の少なくとも1つを含むセンサSと、第2室CM2と当該第2室CM2の外部との間で電気的な接続を行うためのコネクタCNと、センサSとコネクタCNとを電気的に接続するセンサケーブルC2と、が収容され、
ケーブルC1は、オイルポンプOPとコネクタCNとを電気的に接続するように配置されている。
【0072】
この構成では、第2室CM2と当該第2室CM2の外部との間で電気的な接続を行うためのコネクタCNが、第2室CM2に配置されている。一方、オイルポンプOPは、第1室CM1に配置されている。そのため、オイルポンプOPとコネクタCNとを電気的に接続するケーブルC1は、第1区画壁91に形成された連通口9aを貫通するように配置する必要がある。
したがって、このような構成は、上述したような、連通口9aの縁部にバリ等の鋭角形状の部分があっても車両の振動等によってケーブルC1が損傷することを回避可能な構成において好適である。
【0073】
図3に示すように、本実施形態では、オイルポンプOPは、第2方向Wにおける第2軸心A2と第3軸心A3との間であって、第2軸心A2及び第3軸心A3よりも第1側H1に配置されている。また、連通口9aは、第2方向Wにおける第2軸心A2と第3軸心A3との間であって、第2軸心A2及び第3軸心A3よりも第2側H2に配置されている。また、吸入口9bは、オイルポンプOPに対して第2方向Wにおける第2軸心A2の側であって、第2軸心A2よりも第1側H1に配置されている。このように、動力伝達機構3における第2軸心A2及び第3軸心A3の隙間を利用して、オイルポンプOP、連通口9a、及び吸入口9bが配置されている。これにより、車両用駆動伝達装置100の小型化を図っている。
【0074】
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、ケース9の内部を第1室CM1と第2室CM2とに区画する第1区画壁91に連通口9aが形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、ケース9の内部を第1室CM1及び第2室CM2と第3室CM3とに区画する第2区画壁94に連通口9aが形成されていても良い。この構成では、第1室CM1及び第2室CM2が「第1室」及び「第2室」の一方に相当し、第3室CM3が「第1室」及び「第2室」の他方に相当する。そして、第2区画壁94が「区画壁」に相当する。
【0075】
(2)上記の実施形態では、第1突出部61及び第2突出部62が第1区画壁91と一体的に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1突出部61及び第2突出部62の少なくとも一方が、第1区画壁91とは別部材により構成され、第1区画壁91に固定されていても良い。
【0076】
(3)上記第1の実施形態では、位置決め機構6が第1突出部61及び第1凹溝63を備え、第1突出部61の凹部6a及び第1凹溝63にケーブルC1が配置されることにより、ケーブルC1が第2方向Wに保持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、位置決め機構6が第1突出部61及び第1凹溝63のいずれか一方を備えず、それらのいずれか他方によりケーブルC1が第2方向Wに保持される構成としても良い。
【0077】
(4)上記第2の実施形態では、位置決め機構6が第2突出部62及び第2凹溝64を備え、第2突出部62の凹部6a及び第2凹溝64にケーブルC1が配置されることにより、ケーブルC1が第2方向Wに保持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、位置決め機構6が第2突出部62及び第2凹溝64のいずれか一方を備えず、それらのいずれか他方によりケーブルC1が第2方向Wに保持される構成としても良い。
【0078】
(5)上記の実施形態では、コネクタCNが、第2室CM2に収容された回転電機MG及びセンサSと、第2室CM2の外部である第3室CM3に収容されたインバータ装置INVとの間で電気的な接続を行うために用いられる構成、つまり、「第2室CM2の外部」が第3室CM3である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、インバータ装置INVがケース9の外部に配置された構成、つまり、「第2室CM2の外部」がケース9の外部である構成としても良い。
【0079】
(6)上記の実施形態では、動力伝達機構3がカウンタギヤ機構4及び差動歯車機構5を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、動力伝達機構3がクラッチやブレーキ等の係合装置、及び変速機の少なくとも一方を備えた構成としても良い。また、動力伝達機構3がカウンタギヤ機構4を備えていない構成としても良い。この構成では、回転電機MG等の駆動力源、及び動力伝達機構3の構成要素(差動歯車機構5等)が一軸上に配置されていても良い。
【0080】
(7)上記の実施形態では、回転電機MGが駆動力源である構成、つまり、車両用駆動伝達装置100が電気自動車に搭載される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、回転電機MGに加えて内燃機関も駆動力源として機能する構成、つまり、車両用駆動伝達装置100がハイブリッド自動車に搭載される構成としても良い。
【0081】
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示に係る技術は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、それらの間の動力伝達を行う動力伝達機構と、当該動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動伝達装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
100:車両用駆動伝達装置、1:入力部材、2:出力部材、3:動力伝達機構、6:位置決め機構、6a:凹部、6T:対象突出部、61:第1突出部、62:第2突出部、63:第1凹溝、64:第2凹溝、9:ケース、9a:連通口、91:第1区画壁(区画壁)、CM1:第1室、CM2:第2室、MG:回転電機(駆動力源)、ST:ステータ、RT:ロータ、C1:ケーブル、C2:センサケーブル、OP:オイルポンプ、S:センサ、S1:回転センサ、S11:センサステータ、S12:センサロータ、S2:温度センサ、S3:油温センサ、CN:コネクタ、WH:車輪、D:連通方向、H:第1方向、H1:第1側、H2:第2側、W:第2方向