(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142484
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ヘッドモジュール
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 301
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054636
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(72)【発明者】
【氏名】森本 樹
(72)【発明者】
【氏名】川村 有輝
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF71
2C057AG14
2C057AG44
2C057AG84
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】流路部材の内部の液体の温度を均一化しつつ、圧電アクチュエータの、駆動による温度上昇を抑制することができるヘッドモジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】
ヘッドモジュールは、アクチュエータ部材と、前記アクチュエータ部材によって変形される流路が形成された流路部材と、前記流路部材を支持する金属製の支持部材とを有するヘッドチップと、ヒータアセンブリと、熱導体とを備える。前記熱導体は、前記支持部材と熱接触している第1接触部と、前記ヒータアセンブリ及び前記アクチュエータ部材と熱接触している第2接触部とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ部材と、前記アクチュエータ部材によって変形される流路が形成された流路部材と、前記流路部材を支持する金属製の支持部材とを有するヘッドチップと、
ヒータアセンブリと、
熱導体とを備え、
前記熱導体は、前記支持部材と熱接触している第1接触部と、前記ヒータアセンブリ及び前記アクチュエータ部材と熱接触している第2接触部とを有する、ヘッドモジュール。
【請求項2】
前記熱導体は、前記支持部材と熱接触している第3接触部をさらに有し、
前記支持部材は矩形状の外形を有する枠部材であり、
前記第1接触部は、前記支持部材の第1辺と熱接触しており、
前記第3接触部は、前記支持部材の第2辺と熱接触している、請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項3】
前記支持部材の前記第1辺と前記第2辺とは互いに対向している、請求項2に記載のヘッドモジュール。
【請求項4】
前記支持部材の第3辺には、前記ヘッドチップにインクを供給するための供給口が形成されており、
前記熱導体は前記支持部材の前記第3辺とは熱接触していない、請求項3に記載のヘッドモジュール。
【請求項5】
前記熱導体は枠形状を有するシート部材である、請求項2に記載のヘッドモジュール。
【請求項6】
前記アクチュエータ部材は、圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータと電気的に接続された配線基板とを含み、
前記熱導体の前記第2接触部は、前記ヒータアセンブリと前記アクチュエータ部材の前記配線基板とによって挟まれている、請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項7】
前記圧電アクチュエータは複数の圧電素子を有し、
前記熱導体の前記第2接触部は枠形状を有し、
前記圧電アクチュエータの前記複数の圧電素子は前記第2接触部の内縁よりも内側に位置する、請求項6に記載のヘッドモジュール。
【請求項8】
前記支持部材は互いに対向する第1面及び第2面を有しており、
前記支持部材の前記第1面は前記流路部材に接合されており、
前記熱導体の前記第1接触部は、前記支持部材の前記第2面と熱接触している、請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項9】
前記支持部材に対して固定された冷却液循環部材をさらに備え、
前記熱導体の前記第1接触部はさらに前記冷却液循環部材と熱接触している、請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項10】
前記熱導体の熱伝導率は前記支持部材の熱伝導率より高く、
前記支持部材の前記熱伝導率は前記配線基板の熱伝導率よりも高い、請求項6に記載のヘッドモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに供給する液体を加熱するヒータアセンブリとを備える、ヘッドモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路部材と圧電アクチュエータとヒータとを備えるヘッドが知られている。このヘッドにおいて、流路部材は圧電アクチュエータの一面に接合されており、ヒータは圧電アクチュエータの他面と熱接触する凸部を有する。凸部は、圧電アクチュエータの他面において、圧電アクチュエータの外縁と複数の個別電極との間の領域と熱接触する。これにより流路部材の内部のインクの温度が均一化され、画像品質の低下が抑制される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のヘッドでは、圧電アクチュエータの駆動により発生した熱を放熱するための手段が無い。これにより、圧電アクチュエータが駆動し続けることにより、圧電アクチュエータの温度が上昇し続けるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、流路部材の内部の液体の温度を均一化しつつ、圧電アクチュエータの、駆動による温度上昇を抑制することができるヘッドモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータによって変形される流路が形成された流路部材と、前記流路部材を支持する金属製の支持部材とを有するヘッドチップと、
ヒータアセンブリと、
熱導体とを備え、
前記熱導体は、前記支持部材と熱接触している第1接触部と、前記ヒータアセンブリ及び前記圧電アクチュエータと熱接触している第2接触部とを有する、ヘッドモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヘッドモジュールによれば、流路部材の内部の液体の温度を均一化しつつ、圧電アクチュエータの、駆動による温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4はヘッドモジュールの分解斜視図である。
【
図5】
図5は流路部材及び圧電アクチュエータを示す上面図である。
【
図7】
図7は伝熱部材の形状を説明するための斜視図である。
【
図8】
図8はヘッドモジュールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態のヘッドモジュール1について、ヘッドモジュール1をプリンタ(印刷装置)1000において用いる場合を例として説明する。
【0010】
[プリンタ1000]
図1に示すように、プリンタ1000は、4つのヘッドユニット100と、プラテン400と、一対の搬送ローラ501、502と、制御装置CONTと、これらを収容する筐体900とを主に備える。筐体900の内部には更に、インクタンク600と、4つのサブタンク700と、冷却機構800とが収容されている。
【0011】
以下の説明においては、一対の搬送ローラ501、502が並ぶ方向、即ち画像形成時に媒体PMが搬送される方向をプリンタ1000の搬送方向と呼ぶ。搬送方向については、媒体PMが搬送される方向の上流側、下流側をそれぞれ、搬送方向の供給側、排出側と呼ぶ。
【0012】
また、搬送方向と直交する水平面内の方向、即ち、搬送ローラ501、502の回転軸の延びる方向を媒体幅方向と呼ぶ。媒体幅方向については、搬送方向の供給側から排出側を見た際の左側、右側をそれぞれ、媒体幅方向の左側、右側と呼ぶ。搬送方向及び媒体幅方向に直交する方向を上下方向と呼ぶ。
【0013】
4つのヘッドユニット100の各々は、いわゆるラインタイプのヘッドであり、媒体幅方向の両端部において支持体100aに支持されている。本実施形態では、4つのヘッドユニット100は、互いに異なる色のインクを吐出する。4つのヘッドユニット100により吐出される4色のインクは、一例としてシアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクである。4つのヘッドユニット100の各々の具体的な構造、機能は後述する。
【0014】
プラテン400は、ヘッドユニット100から媒体PMに向けてインクが吐出される際に、媒体PMをヘッドユニット100とは反対側(下方)から支持する板状部材である。プラテン400の媒体幅方向の幅は、プリンタ1000による画像記録が可能な最も大きな媒体の幅よりも大きい。
【0015】
一対の搬送ローラ501、502は、プラテン400を搬送方向に挟むような状態で位置している。一対の搬送ローラ501、502は、ヘッドユニット100による媒体PMへの画像形成時に、媒体PMを所定の態様で搬送方向の排出側に送る。
【0016】
インクタンク600は、4色のインクを収容できるよう4つに区分されている。4つのサブタンク700は、4つのヘッドユニット100の上方に、1つずつ位置している。
【0017】
4色のインクは、管路610によりリザーバ620に送られる。管路610及びリザーバ620は、4色のインクを流通、収容できるよう4つに区分されている。リザーバ620に送られた各色のインクは、不図示の管路及びポンプを介して、4つのサブタンク700のいずれかとリザーバ620との間で循環される。
【0018】
4つのサブタンク700の各々は、その真下に位置したヘッドユニット100にインクを供給し、且つ当該ヘッドユニット100からインクを回収する。
【0019】
冷却機構800は主に、冷媒タンク、ポンプ、冷媒供給管、冷媒回収管(いずれも不図示)を有する。冷却機構800は、冷媒供給管及び冷媒回収管を介して、冷媒タンクとヘッドユニット100が有するヘッドモジュール1(
図2参照)との間で冷媒を循環させる。冷媒としては、例えば冷却水を用いることができる。
【0020】
制御装置CONTは、プリンタ1000の備える各部を全体的に制御し、媒体PMへの画像形成等を行わせる。制御装置CONTは、FPGA(Field Programmable Gate Array)、EEPROM(Electrically Eracable Programmable Read-Only Memory、登録商標)、RAM(Random Access Memory)等を備える。なお、制御装置CONTはCPU(Central Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Curcuit)等を備えてもよい。制御装置CONTは、PC等の外部装置(不図示)とデータ通信可能に接続されており、当該外部装置から送られた印刷データに基づいてプリンタ1000の各部を制御する。
【0021】
[ヘッドユニット100]
4つのヘッドユニット100は互いに同一の構成を有するため、以下では一つを代表的に取り上げて説明する。
【0022】
ヘッドユニット100は、
図2に示すように、保持部材HMと、保持部材HMによって保持された10個のヘッドモジュール1とを備える。
【0023】
保持部材HMは、媒体幅方向を長手方向とし、搬送方向を短手方向とする平面視矩形の板状部材である。保持部材HMの長手方向の両端部が、支持体100aによって支持される。
【0024】
10個のヘッドモジュール1は、保持部材HMの複数の開口部(不図示)のそれぞれの内部にそれぞれが位置した状態で、保持部材HMによって一体に保持されている。10個のヘッドモジュール1は、平面視において、媒体幅方向にそって千鳥状(ジグザグ状)に位置している。
【0025】
[ヘッドモジュール1]
10個のヘッドモジュール1は互いに同一の構成を有するため、以下では一つを代表的に取り上げて説明する。
【0026】
図3及び
図4に示すように、ヘッドモジュール1は、ヘッドチップ10と、伝熱部材15と、ヒータアセンブリHAと、制御基板19と、冷却器20とを主に備える。
【0027】
[ヘッドチップ10]
図4に示すように、ヘッドチップ10は、ノズルカバーNCと、流路部材11と、圧電アクチュエータ12と、フレーム部材FFと、COF(Chip on Film)13と、ドライバIC14とを備える。圧電アクチュエータ12、COF13、及びドライバIC14は、本発明の「アクチュエータ部材」の一例である。
【0028】
[ノズルカバーNC]
ノズルカバーNCは平面視矩形枠状の部材である。ノズルカバーNCは、流路部材11の下面の外縁に接合されて、流路部材11の下面に開口する複数のノズルNZ(
図5参照)を保護する。
【0029】
[流路部材11]
図4及び
図5に示すように、流路部材11は矩形状の板状部材である。
図6に示すように、流路部材11は、インク封止膜11A、プレート11B~11E、及びノズルプレート11Fが、上からこの順に積層されることにより構成されている。
図6に示すように、流路部材11の内部には、流路CHが形成されている。
【0030】
流路CHは、4本のマニホールド流路M1、M2、M3、M4と、48個の個別流路iCHとを含む。4本のマニホールド流路M1~M4の各々は、直線状の共通流路cCHと、共通流路cCHの両端部のインク流通口IP(流入口、排出口)とを含む。4本のマニホールド流路M1~M4の各々には12個の個別流路iCHが接続している。なお、マニホールド流路の本数、及び各マニホールド流路に接続している個別流路の数は一例であり、これらの数には限られない。
【0031】
図6に示すように、個別流路iCHの各々は、圧力室PC、ディセンダ流路DC、ノズルNZを含む。圧力室PCの上面はインク封止膜11Aにより画定されている。ディセンダ流路DCは圧力室PCからノズルNZに向けて、上下方向に延びている。ノズルNZは、インクを媒体PMに向けて吐出する微小開口であり、ノズルプレート11Fに形成されている。
図5に示すように、ノズルプレート11Fの下面には、4本のノズル列Lが形成されている。各ノズル列Lは、マニホールド流路M1~M4が延びる方向に沿って延びている。
【0032】
[圧電アクチュエータ12]
図5に示すように、圧電アクチュエータ12は、流路部材11よりも一回り小さい矩形状の外形を有する。
図6に示すように、圧電アクチュエータ12は、流路部材11の上面に設けられた第1圧電層12Aと、第1圧電層12Aの上方の第2圧電層12Bと、第2圧電層12Bの上面に設けられた複数の個別電極12Cと、第1圧電層12A、第2圧電層12Bに挟まれた共通電極12Dとにより構成されている。第1圧電層12A及び第2圧電層12Bはそれぞれ、チタン酸ジルコン酸鉛等を主成分とする圧電材料からなる。第2圧電層12Bのうち、共通電極12Dと複数の個別電極12Cの各々とに挟まれた活性部12Eは、厚み方向に分極されている。複数の個別電極12Cは、複数の個別流路iCHの圧力室13の上方にそれぞれが位置するように、第2圧電層12Bの上面に形成されている。各個別電極12Cには、COF13と電気的に接続される接点が形成されている。COF13に実装されたドライバIC14は、制御装置CONTの制御に基づき、COF13の配線を介して各個別電極12Cに対して、駆動電位及びグランド電位のいずれかを選択的に付与する。共通電極12Dは、第2圧電層12Bを厚み方向に貫通する貫通電極(図示略)を介してCOF13と電気的に接続されている。COF13に実装されたドライバIC14は、COF13の配線及び貫通電極を介して共通電極12Dをグランド電位に維持する。共通電極12Dと、複数の個別電極12Cと、共通電極12D及び複数の個別電極12Cで挟まれた複数の活性部12Eとによって、複数の圧電素子PEが形成されている。
【0033】
ここで、マニホールド流路M4と連通する1つのノズルNZからインク滴を吐出する場合を例にとり、当該ノズルNZに対応する圧電素子PEの動作について説明する。
【0034】
プリンタ1000が記録動作を開始する前は、個別電極12Cに駆動電位が付与されている。このとき、個別電極12Cと共通電極12Dとの電位差によって、第2圧電層12Bの個別電極12Cと共通電極12Dとに挟まれた活性部12Eに、上下方向下向きの電界が作用する。このとき、活性部12Eの分極方向(上下方向下向き)と電界の方向が一致し、活性部12Eは、第2圧電層12Bの厚み方向(上下方向)に伸び、第2圧電層12Bの面方向に収縮する。活性部12Eの収縮変形に伴い、第1圧電層12A及びインク封止膜11Aの圧力室PCと上下方向に重なる部分が、圧力室PCに向かって(下向きに)凸となるように変形する。このとき圧力室PCは、第1圧電層12A及びインク封止膜11Aがフラットな場合と比べ、容積が小さくなっている。
【0035】
プリンタ1000が記録動作を開始し、当該ノズルNZからインクを吐出させる際には、先ず、当該ノズルNZに対応する個別電極12Cの電位が駆動電位からグランド電位に切り替えられる。このとき、個別電極12Cと共通電極12Dとの電位差が小さくなることで、活性部12Eの収縮が解消する。これにより、第1圧電層12A及びインク封止膜11Aにおける圧力室PCと上下方向に重なる部分がフラットな状態となる。これにより、圧力室PCの容積が大きくなり、マニホールド流路M4から圧力室PC内にインクが引き込まれる。
【0036】
その後、当該ノズルNZに対応する個別電極12Cの電位がグランド電位から駆動電位に切り替えられる。このとき、個別電極12Cと共通電極12Dとの電位差によって、活性部12Eにその分極方向に等しい下向きの電界が生じ、活性部12Eが第2圧電層12Bの面方向に収縮する。これにより、第1圧電層12A及びインク封止膜11Aにおける圧力室PCと上下方向に重なる部分が、圧力室PCに向かって(下向きに)凸となるように変形する。このとき、圧力室PCの容積が大きく減少することにより、圧力室PC内のインクに大きな圧力が付与され、圧力室PCに引き込まれたインクが当該ノズルNZからインク滴として吐出される。
【0037】
[フレーム部材FF]
次に、フレーム部材FFについて説明する。フレーム部材FFは、矩形状の外形を有する金属製の部材であり、1枚の板状部材から中央部分を切り抜くことにより形成されている。本実施形態では、一例としてSUS製のフレーム部材FFを用いている。フレーム部材FFの下面FFaは、流路部材11の上面に両面テープTP1を介して接合される。これにより、フレーム部材FFは流路部材11及び圧電アクチュエータ12を支持する。
図4に示すように、フレーム部材18は、媒体幅方向に互いに対向する辺FF1、FF2と、搬送方向に互いに対向する辺FF3、FF4とを有する。辺FF1、FF2はそれぞれ、搬送方向に沿って延びている。辺FF3は、辺FF1の搬送方向上流の端部から辺FF2の搬送方向上流の端部まで、媒体幅方向に沿って延びている。辺FF4は、辺FF1の搬送方向下流の端部から辺FF2の搬送方向下流の端部まで、媒体幅方向に沿って延びている。フレーム部材FFの外縁のサイズは、流路部材11の外縁のサイズと略同じである。一方、フレーム部材FFの内縁のサイズは、圧電アクチュエータ12の外縁のサイズよりも一回り大きい。そして、フレーム部材FFが流路部材11の上面に接合された状態では、圧電アクチュエータ12の全体が、フレーム部材FFの内縁よりも内側に位置する。フレーム部材FFの辺FF1、FF2にはそれぞれ、流路部材11のインク流通口IPに対応する4個の貫通孔TH(
図7参照)が形成されている。各貫通孔THはフレーム部材FFを上下方向に貫通しており、対応する流路部材11のインク流通口IPと上下方向に重なっている。つまり、各貫通孔THは、対応する流路部材11のインク流通口IPと連通している。フレーム部材FFは本発明の「支持部材」の一例である。フレーム部材FFの辺FF3及びFF4は、本発明の「第1辺」及び「第2辺」の一例であり、辺FF1及び辺FF2は、本発明の「第3辺」の一例である。フレーム部材FFの下面FFaは本発明の「第1面」の一例であり、フレーム部材FFの上面FFbは本発明の「第2面」の一例である。
【0038】
[COF13及びドライバIC14]
圧電アクチュエータ12の上方には、COF13が位置する。COF13はポリイミドからなるフィルム状の配線回路基板であり、COF13の熱伝導率はフレーム部材FFの熱伝導率よりも低い。COF13の媒体幅方向の一端部(右端部)は、フレーム部材FFの内縁(辺FF1の左面)に沿って上方に折れ曲がった後、左方に折れ曲がっている。COF13の媒体幅方向の他端部(左端部)は、フレーム部材FFの内縁(辺FF2の右面)に沿って上方に折れ曲がった後、右方に折れ曲がっている。つまり、COF13は、媒体幅方向及び搬送方向に平行な部分13aと、部分13aの媒体幅方向の一端部からフレーム部材FFの内縁に沿って上方に延びた部分13bと、部分13aの媒体幅方向の他端部からフレーム部材FFの内縁に沿って上方に延びた部分13Cと、部分13bの上端部から左方に延びた部分13dと、部分13cの上端部から右方に延びた部分13eとを有する。部分13aの下面には、圧電アクチュエータ12の複数の個別電極12Cに形成された複数の接点と電気的に接続される、複数の接点(不図示)が形成されている。また、部分13d、13eにはそれぞれ、ドライバIC14が実装されている。
【0039】
[伝熱部材15]
伝熱部材15は、中央部分が切り抜かれた枠状のシート部材である。本実施形態では、伝熱部材15としてグラファイトシートを用いており、伝熱部材15の熱伝導率は、フレーム部材FF(例えば、SUS製)の熱伝導率よりも高い。
図4及び
図7に示すように、伝熱部材15は、中央部分が切り抜かれた枠状部分15aと、突出部15b、15cとを有する。突出部15bは、枠状部分15aの搬送方向上流の縁から搬送方向上流に向かって突出している。突出部15cは、枠状部分15aの搬送方向下流の縁から搬送方向下流に向かって突出している。
図8に示すように、突出部15bは、枠状部分15aの搬送方向上流の縁から上方且つ搬送方向上流に向かって延びる傾斜部15b1と、傾斜部15b1の上端から搬送方向上流に向かって延びる延在部15b2とを有する。また、
図7に示すように、突出部15cは、枠状部分15aの搬送方向下流の縁から上方且つ搬送方向下流に向かって延びる傾斜部15c1と、傾斜部15c1の上端から搬送方向下流に向かって延びる延在部15c2とを有する。
【0040】
枠状部分15aの下面は、COF13の部分13aの上面に、両面テープTP2(
図4参照)を介して接合される。そして、両面テープTP2の熱伝導率は、COF13の熱伝導率よりも高い。つまり、枠状部分15aは、COF13の部分13aと熱接触している。本明細書において「熱接触」とは、直接接触することだけでなく、伝熱可能な部材を介して接触することも含む。2つの部材の間に空間がある場合、つまり接触していない場合や、2つの部材の間に別の部材が位置し、当該別の部材が2つの部材の双方に接触していない場合は、「熱接触」には含まれない。そして、枠状部分15aの下面が部分13aの上面に接合された状態において、延在部15b2の下面は、フレーム部材FFにおける辺FF3の上面FFbと接触し、延在部15c2の下面は、フレーム部材FFにおける辺FF4の上面FFbと接触する。つまり、延在部15b2はフレーム部材FFの辺FF3と熱接触し、延在部15c2はフレーム部材FFの辺FF4と熱接触する。一方で、伝熱部材15は、フレーム部材FFの辺FF1及び辺FF2とは接触していない。伝熱部材15の熱伝導率は、両面テープTP2の熱伝導率よりも高く、上記の通り、両面テープTP2の熱伝導率は、COF13の熱伝導率よりも高い。
【0041】
また、枠状部分15aの下面がCOF13の部分13aの上面に接合された状態において、枠状部分15aと、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子PEとは、上下方向に重なっていない。つまり、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子PEは、枠状部分15aの内縁よりも内側(
図7において一点鎖線で示される矩形領域内)に位置しており、枠状部分15aは複数の圧電素子PEを取り囲んでいる。伝熱部材15は、本発明の「熱導体」の一例である。伝熱部材15の枠状部分15a、延在部15b2、延在部15c2はそれぞれ、本発明の「第2接触部」、「第1接触部」、「第3接触部」の一例である。
【0042】
[ヒータアセンブリHA]
ヒータアセンブリHAは、流路部材11及び圧電アクチュエータ12に熱を与えて、流路部材11内を流れるインクを加熱する。
図4に示すように、ヒータアセンブリHAは、伝熱部材16と、フィルムヒータ17と、板バネ18とを有する。
【0043】
伝熱部材16は、熱伝導率の高い金属、一例としてアルミニウムにより形成されている。伝熱部材16は、
図4に示すように、平面視略正方形の板部16Aと、板部16Aの媒体幅方向の両端から上方に突出する一対の壁部16Bと、板部16Aの下面の外縁から下方に突出する枠状の凸部16Cとを有する。枠状の凸部16Cの下端部は、両面テープTP3を介して伝熱部材15の枠状部分15aの上面に接合される。これにより、伝熱部材16の枠状の凸部16Cと伝熱部材15の枠状部分15aとは熱接触する。つまり、
図8に示すように、伝熱部材15の枠状部分15aは、COF13の部分13aと伝熱部材16の枠状の凸部16Cとの間に挟まれている。さらに換言すると、伝熱部材16の枠状の凸部16Cは、伝熱部材15の枠状部分15a及びCOF13の部分13aを介して、圧電アクチュエータ12の上面の周縁部に接触している。より詳細には、伝熱部材16の枠状の凸部16Cは、圧電アクチュエータ12の複数の個別電極12Cと圧電アクチュエータ12の外縁との間の領域に、熱接触している。なお、
図8では、両面テープTP1、TP2、TP3の図示は省略されている。また、
図8では搬送方向上流の断面構造のみを示し、搬送方向下流の断面構造は省略しているが、搬送方向下流の断面構造も搬送方向上流の断面構造と同じである。
【0044】
フィルムヒータ17は、伝熱部材16の上方に位置する。フィルムヒータ17は、ポリイミド等の樹脂で形成された発熱面17Aを有しており、発熱面17Aは伝熱部材16の板部16Aの上面に当接される。フィルムヒータ17で発生した熱は、伝熱部材16、伝熱部材15の枠状部分15a、及びCOF13の部分13aを介して、流路部材11及び圧電アクチュエータ12に与えられる。
【0045】
板バネ18は、フィルムヒータ17の上方に位置する。板バネ18は、フィルムヒータ17の上面と接触してフィルムヒータ17の発熱面17Aを伝熱部材16に向かって付勢するとともに、制御基板19の下面と接触して制御基板19を上向きに付勢する。
図3に示すように、ヘッドモジュール1が組み立てられた状態では、伝熱部材15、ヒータアセンブリHA、及び制御基板19は、上下方向において、COF13の部分13aと、部分13d及び部分13eとの間に位置する。
【0046】
[冷却器20]
図3及び
図4に示すように、冷却器20の上面には、冷媒供給口20aと冷媒回収口20bとが開口している。そして、冷却器20の内部には、冷媒供給口20aと冷媒回収口20bとを連通させる不図示の冷媒流路が形成されている。冷媒機構800の冷媒供給管は冷媒供給口20aに接続されており、冷媒機構800の冷媒回収管は冷媒回収口20bに接続されている。冷媒は、冷却機構800の冷媒タンクから冷媒供給管及び冷媒供給口20aを介して冷媒流路に供給される。そして、冷媒流路を流れた冷媒は冷媒回収口20b及び冷媒回収管を介して冷媒タンクに回収される。冷却器20の搬送方向上流の端部は、伝熱部材15の延在部15b2を介して、フレーム部材FFの辺FF3に、例えばネジ等で固定される。つまり、
図8に示すように、冷却器20の搬送方向上流の端部は伝熱部材15の延在部15b2と接触している。これにより、伝熱部材15の延在部15b2は、フレーム部材FFの辺FF3だけでなく、冷却器20の搬送方向上流の端部とも接触している。そして冷却器20の搬送方向上流の端部がフレーム部材FFの辺FF3に固定された状態において、冷却器20の下面の一部は、COF13の部分13d及び13eの上面にそれぞれ位置する2つのドライバIC14と当接する。そして、複数の圧電素子PEの駆動時にドライバIC14から発生する熱は、冷却器20の冷媒流路を流れる冷媒に吸収される。冷却器20は、本発明の「冷媒循環部材」の一例である。
【0047】
本実施形態において、伝熱部材15は、フレーム部材FFの辺FF3及び辺FF4とそれぞれ接触する延在部15b2及び延在部15c2と、COF13の部分13aを介して圧電アクチュエータ12と接触する枠状部分15aとを有する。このため、圧電アクチュエータ12が有する複数の圧電素子PEの駆動によって発生した熱を、伝熱部材15を介してフレーム部材FFに伝えることができる。つまり、圧電アクチュエータ12からの熱を、ヘッドチップ10の面方向、具体的にはアクチュエータ12に対して搬送方向の上流及び下流に逃すことができる。一方、伝熱部材15の枠状部分15aは、伝熱部材16の枠状の凸部16Cとも接触している。このため、シートヒータ17の熱を、伝熱部材16の枠状の凸部16C、伝熱部材15の枠状部分15a、COF13の部分13aを介して、圧電アクチュエータ12の外周部分に伝えることができる。つまり、ヒータアセンブリHAからの熱を、ヘッドチップ10の厚み方向に伝えることができる。ここで、熱伝導率は、伝熱部材15、フレーム部材FF、両面テープTP2及びTP3、COF13の順に低くなっている。そして、上記各部材における伝熱経路の断面積及び距離を考慮した場合、各部材の熱抵抗は、両面テープTP2及びTP3、COF13、伝熱部材15、フレーム部材FFの順に小さくなる。つまり、伝熱部材15はCOF13よりも熱を伝えやすく、フレーム部材FFは伝熱部材15よりも熱を伝えやすい。このため、熱は、伝熱部材15からフレーム部材FFの方が、伝熱部材15からCOF13よりも伝わりやすい。この結果、流路部材11の内部のインクの温度を均一化しつつ、圧電アクチュエータ12の、駆動による温度上昇を抑制することができる。つまり、流路部材11の内部のインクに対して精度の高い温度制御を行うことができる。また、フレーム部材FFの辺FF3と辺FF4とは搬送方向に離れているので、圧電アクチュエータ12からの熱を、搬送方向の上流と下流に分散させて効率よく逃すことができる。
【0048】
また、枠状部分15aの下面がCOF13の部分13aの上面に接合された状態において、枠状部分15aと、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子PEとは、上下方向に重なっていない。つまり、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子PEは、枠状部分15aの内縁よりも内側に位置しており、枠状部分15aは複数の圧電素子PEを取り囲んでいる。このため、枠状部分15aは、複数の圧電素子PEの駆動を妨げない。また、伝熱部材15は1つの材料を加工することにより作成できるので、複数の部品から組み立てる場合と比べて製造工数を削減できる。
【0049】
また、伝熱部材15の突出部15bは傾斜部15b1と延在部15b2とを有し、突出部15cは傾斜部15c1と延在部15c2とを有する。つまり、枠状部分15aから延在部15b2、15c2までの間に傾斜部15b1、15c1が介在するので、傾斜部15b1、15b2が介在しない場合と比べて、枠状部分15aから延在部15b2、15c2に伝わる熱を大きく減らすことができる。
【0050】
さらに、伝熱部材15の延在部15b2は、冷却器20とも接触している。このため、圧電アクチュエータ12からの熱をより効率よく逃すことができる。
【0051】
また、伝熱部材15は、フレーム部材FFの辺FF1及び辺FF2とは接触していない。このため、伝熱部材15が辺FF1及び辺FF2と接触する場合と比べて、ヒータアセンブリHAからの熱や圧電アクチュエータ12からの熱が、辺FF1及び辺FF2の貫通孔THに供給されるインクに伝わりにくい。よって、ヘッドモジュール1が伝熱部材15を有していても、ヘッドチップ10内に供給されるインクの粘度変化は生じにくい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能である。
【0053】
上記実施形態のヘッドモジュール1には両面テープTP1、TP2、TP3が用いられていたが、これには限られず、例えばシート状の接着剤が用いられてもよい。
【0054】
上記実施形態におけるプリンタ1000は、ラインタイプのヘッドユニット100を備える、いわゆるライン方式のプリンタであったが、これには限られない。例えば、ヘッドモジュール1をキャリッジとともに走査方向に移動させつつ、ノズル15から媒体PMにインクを吐出させる、いわゆるシリアル方式のプリンタに、本発明を適用してもよい。
【0055】
ノズル15から吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0056】
媒体PMは、紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0057】
上記実施形態及びその変形例は、全ての点で例示であって、限定的なものではないと考えられるべきである。例えば、ヘッドユニット100の数、構成等は変更し得る。プリンタ1000が同時に印刷可能な色の数も限定はされず、単色印刷のみが可能な構成であってもよい。また、各種流路の数、形状、位置等も適宜変更し得る。
【符号の説明】
【0058】
1 ヘッドモジュール
10 ヘッドチップ
11 流路部材
12 アクチュエータ部材
PE 圧電素子
13 COF
14 ドライバIC
15 伝熱部材
HA ヒータアセンブリ
FF フレーム部材
20 冷却器
100 ヘッドユニット
1000 プリンタ