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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142486
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20241003BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241003BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/08 Z
E02F9/20 K
E02F9/20 L
E02F9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054638
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】平澤 茂
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘樹
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003BA08
2D003CA02
2D003DA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】掘削作業中に周囲の岩盤などの障害物との衝突、落石との衝突などがあったとしても、速やかに自走または牽引車による移動に適した姿勢をとることができる。
【解決手段】建設機械は、自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置と、作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータとを備え、複数の油圧アクチュエータは、ブームを車体に対して回動させるブーム用アクチュエータと、アームをブームに対して回動させるアーム用アクチュエータとを含み、複数の電磁弁は、ブーム用アクチュエータにブームを上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁24とアーム用アクチュエータにアームを車体奥側に押し出す動作を行わせるアームダンプ用電磁弁25とを含み、複数の電磁弁のうち少なくともブーム上げ用電磁弁およびアームダンプ用電磁弁は、コントロールバルブの底面とフレームの間に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータとを備え、
前記作業装置は、前記車体に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に取り付けられたアームとを有し、
前記車体は、ベースとなるフレームと、油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブと、操作に応じた電気信号を出力する電気式操作装置と、前記電気式操作装置からの電気信号に基づいて前記コントロールバルブを制御する複数の電磁弁と、を備えた建設機械において、
前記複数の油圧アクチュエータは、前記ブームを前記車体に対して回動させるブーム用アクチュエータと、前記アームを前記ブームに対して回動させるアーム用アクチュエータとを含み、
前記複数の電磁弁は、前記ブーム用アクチュエータに前記ブームを上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁と前記アーム用アクチュエータに前記アームを車体奥側に押し出す動作を行わせるアームダンプ用電磁弁とを含み、
前記複数の電磁弁のうち少なくとも前記ブーム上げ用電磁弁および前記アームダンプ用電磁弁は、前記コントロールバルブの底面と前記フレームの間に配置されることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記車体は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体とを含んで構成されており、
前記複数の油圧アクチュエータは、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して旋回させる旋回用アクチュエータを含み、
前記複数の電磁弁は、前記旋回用アクチュエータに右旋回の動作を行わせる旋回右用電磁弁と、前記旋回用アクチュエータに左旋回の動作を行わせる旋回左用電磁弁と、を含み、
前記旋回右用電磁弁および前記旋回左用電磁弁のうちの少なくともいずれか一方は、前記コントロールバルブの底面と前記フレームの間に配置されている建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記複数の油圧アクチュエータは、前記車体を走行させる左走行モータと右走行モータとを含み、
前記複数の電磁弁は、前記右走行モータに前進の動作を行わせる右側走行前進用電磁弁と、前記右走行モータに後進の動作を行わせる右側走行後進用電磁弁と、前記左走行モータに前進の動作を行わせる左側走行前進用電磁弁と、前記左走行モータに後進の動作を行わせる左側走行後進用電磁弁とを含み、
前記右側走行前進用電磁弁と前記左側走行前進用電磁弁、および前記右側走行後進用電磁弁と前記左側走行後進用電磁弁の少なくとも一方は、前記コントロールバルブの底面と前記フレームの間に配置されている建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記フレームには、前記ブーム上げ用電磁弁および前記アームダンプ用電磁弁の下方側に開口部が形成されている建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記作業装置は、前記アームの先端に回動可能に設けられたバケットを含み、
前記複数の油圧アクチュエータは、前記バケットを回動させるバケットシリンダを含み、
前記複数の電磁弁は、前記バケットシリンダに前記バケットを前記車体奥側に押し出す動作を行わせるバケットダンプ用電磁弁を含み、
前記バケットダンプ用電磁弁は、前記コントロールバルブの底面と前記フレームの間に配置されている建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熟練オペレータの減少により、建設現場の省人化、建設機械の半自動化技術が普及しており、建設機械を半自動化する制御システムを構築するため、制御システムの開発が容易な電気式操作装置を備えた油圧ショベルが採用される。このような電気式操作装置を備えた油圧ショベルとして、特許文献1の構成が知られている。特許文献1には、下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体の旋回フレームに多関節フロントを取付け、前記多関節フロントは、前記旋回フレームにブームシリンダにより俯仰可能に取付けたブームと、前記ブームにアームシリンダにより回動可能に取付けたアームと、前記アームにバケットシリンダにより回動可能に取付けたバケットとを備え、前記ブームシリンダ、アームシリンダおよびバケットシリンダの各油圧操作式コントロール弁のパイロット弁としてそれぞれ比例電磁弁を備え、前記比例電磁弁を制御するコントローラは、それぞれ前記比例電磁弁に対応して設けた電気式操作レバーからの電気信号を受けて前記比例電磁弁への操作信号を発生させる油圧ショベルの操作システムにおいて、前記ブームおよびアームの少なくともいずれかに取付けられた過負荷検出用の歪ゲージと、前記コントローラに設けられ、前記操作レバー操作の際に、前記歪ゲージにより検出される負荷信号が基準値を超えたか否かを判定する過負荷検出手段と、前記コントローラに設けられ、前記過負荷検出手段により過負荷が検出された際に前記比例電磁弁への前記操作信号を抑制する信号抑制手段とを備えたことを特徴とする油圧ショベルの操作システムが開示されている。
【0003】
電気式操作装置が設けられた油圧ショベルは、複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブの他に、電磁弁装置、電磁弁コントローラ、ケーブル等の電装品が付設されている。電磁弁コントローラは、電気式操作装置の操作に応じて電磁弁の弁開度の目標値を演算し、この目標値に応じた電気信号を電磁弁装置に出力する。電磁弁装置は、複数の電磁弁(比例電磁弁)によって構成され、コントロールバルブを構成する複数の方向制御弁に供給されるパイロット圧を、電磁弁コントローラからの電気信号に基づいて制御する。
【0004】
ここで、油圧ショベルの作業装置は、通常、上部旋回体に取付けられたブームと、ブームの先端に取付けられたアームと、アームの先端に取付けられたバケットと、油圧アクチュエータであるブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダとを含んで構成されている。そして、電磁弁装置は、ブームシリンダによってブームを動作させるブーム用電磁弁、アームシリンダによってアームを動作させるアーム用電磁弁、バケットシリンダによってバケットを動作させるバケット用電磁弁とを含む複数の電磁弁により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-72636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベルの作業時に、周囲の岩盤などの障害物との衝突、落石との衝突等により電磁弁装置が破損する可能性がある。電磁弁装置が破損した場合には、電気式操作装置を用いた油圧アクチュエータの操作を正常に行うことができなくなる。特に、地面の掘削作業時など、作業装置の先端が地面よりも低い位置にある状態で電磁弁装置が破損した場合に問題となる。具体的には、作業装置の先端が地面に引っ掛かった状態で止まることにより、油圧ショベルを自走させることも、牽引車を用いて油圧ショベルを移動させることもできなくなる。そのため、油圧ショベルを修理工場に搬送し、破損した電磁弁装置を迅速に修理すること自体が困難になるという問題がある。特許文献1に記載されている発明では、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による建設機械は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータとを備え、前記作業装置は、前記車体に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に取り付けられたアームとを有し、前記車体は、ベースとなるフレームと、油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブと、操作に応じた電気信号を出力する電気式操作装置と、前記電気式操作装置からの電気信号に基づいて前記コントロールバルブを制御する複数の電磁弁と、を備えた建設機械において、前記複数の油圧アクチュエータは、前記ブームを前記車体に対して回動させるブーム用アクチュエータと、前記アームを前記ブームに対して回動させるアーム用アクチュエータとを含み、前記複数の電磁弁は、前記ブーム用アクチュエータに前記ブームを上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁と前記アーム用アクチュエータに前記アームを車体奥側に押し出す動作を行わせるアームダンプ用電磁弁とを含み、前記複数の電磁弁のうち少なくとも前記ブーム上げ用電磁弁および前記アームダンプ用電磁弁は、前記コントロールバルブの底面と前記フレームの間に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、掘削作業中に周囲の岩盤などの障害物との衝突、落石との衝突などがあったとしても、速やかに自走または牽引車による移動に適した姿勢をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油圧ショベルの側面図
図2】油圧ショベルの上面図
図3】旋回フレームを示す図
図4】コントロールバルブの斜視図
図5】コントロールバルブの三面図
図6】コントロールバルブの取付状態を示す図
図7】油圧ショベルの自走や牽引のために動作させる作業装置の方向を示す図
図8】開口部を示す図
図9】油圧ショベルの操作系統を示す図
図10】電磁弁コントローラを用いずにブーム上げおよびアームダンプを行うための回路図
【発明を実施するための形態】
【0010】
―第1の実施の形態―
以下、図1図10を参照して、建設機械である油圧ショベルの第1の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。図2は、油圧ショベル1の上面図である。図3は旋回フレーム6を示す図である。図1図3を参照して油圧ショベル1の概要を説明する。本実施の形態では、油圧ショベル1の走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0012】
図1に示す油圧ショベル1は、前後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とを備える。油圧ショベル1の車体は、下部走行体2と上部旋回体4とにより構成される。下部走行体2は、走行用油圧アクチュエータとしての左走行モータ2Aおよび右走行モータ2Bを有する。油圧ショベル1は、左走行モータ2Aによって左クローラ2Cを駆動すると共に右走行モータ2Bによって右クローラ2Dを駆動することにより、不整地等を走行する。ただし右走行モータ2Bおよび右クローラ2Dは図示奥側に存在するため図示されていない。上部旋回体4の前側には作業装置5が設けられ、この作業装置5を用いて土砂の掘削作業等が行われる。
【0013】
作業装置5は、後述する旋回フレーム6に回動可能に取付けられたブーム5Aと、ブーム5Aの先端に回動可能に取付けられたアーム5Bと、アーム5Bの先端に回動可能に取付けられたバケット5Cとを備える。また、作業装置5を駆動する作業用油圧アクチュエータとして、ブーム5Aを回動させる2本のブームシリンダ5D(以下、「ブーム用アクチュエータ」とも呼ぶ)と、アーム5Bを回動させるアームシリンダ5Eと、バケット5Cを回動させるバケットシリンダ5Fとを備える。
【0014】
上部旋回体4は、下部走行体2に旋回装置3を介して旋回可能に搭載される。旋回装置3には、作業用油圧アクチュエータとしての旋回モータ3Aが設けられる。この旋回モータ3Aを回転駆動することにより、上部旋回体4が下部走行体2上で旋回動作を行う。上部旋回体4は、ベースとなる旋回フレーム6を備え、旋回フレーム6には、カウンタウエイト11、エンジン12、油圧ポンプ13、キャブ14、外装カバー15、コントロールバルブ16、電磁弁装置17等が搭載される。ただし図3ではコントロールバルブ16および電磁弁装置17が一体に示されている。
【0015】
車体フレームとしての旋回フレーム6は、下部走行体2に旋回装置3を介して取付けられる。図1および図2に示すように、旋回フレーム6の後端側にはカウンタウエイト11が備えられる。カウンタウエイト11は、作業装置5との重量バランスを保っている。原動機としてのエンジン12は、カウンタウエイト11の前側に位置して旋回フレーム6に搭載されている。エンジン12は、旋回フレーム6の後端側に、不図示の防振マウントを介して支持される。エンジン12は、クランク軸が左右方向に延びる横置き状態で旋回フレーム6に搭載され、油圧ポンプ13およびパイロットポンプ18を回転駆動する。
【0016】
キャブ14は、旋回フレーム6の前部左側に配置される。キャブ14は、内部が運転室となったボックス状に形成され、キャブ14によって画成された運転室内には、オペレータが座る運転席(図示せず)と、運転席の前側に配置された左走行用操作装置29および右走行用操作装置30と、運転席の左右両側に配置された左作業用操作装置31および右作業用操作装置32とが設けられる。
【0017】
旋回フレーム6の右側には、油圧ポンプ13の前側に位置して作動油タンク19および燃料タンク20が設けられる。燃料タンク20内には、エンジン12に供給される燃料が貯留され、作動油タンク19内には、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給される作動油が貯留される。
【0018】
図4図6を参照して、コントロールバルブ16および電磁弁装置17を説明する。コントロールバルブ16は、取付台座21を介して旋回フレーム6の略中央に設けられる。コントロールバルブ16は、金属の鋳造によって形成された強固な弁ケーシング16Aと、弁ケーシング16A内に組込まれた複数の方向制御弁の集合体として構成される。
【0019】
コントロールバルブ16を構成する複数の方向制御弁は、左走行モータ2Aに供給される圧油の流れを制御する左走行モータ2A用の方向制御弁と、右走行モータ2Bに供給される圧油の流れを制御する右走行モータ2B用の方向制御弁と、旋回モータ3Aに供給される圧油の流れを制御する旋回モータ3A用の方向制御弁と、作業装置5を構成する各種シリンダ用の方向制御弁とを含む。シリンダ用の方向制御弁は、作業装置5のブームシリンダ5Dに供給される圧油の流れを制御するブームシリンダ5D用の方向制御弁と、アームシリンダ5Eに供給される圧油の流れを制御するアームシリンダ5E用の方向制御弁と、バケットシリンダ5Fに供給される圧油の流れを制御するバケットシリンダ5F用の方向制御弁と、を含む。
【0020】
コントロールバルブ16に設けられた圧油の流入口は油圧ポンプ13に接続され、コントロールバルブ16を構成する複数の方向制御弁は、それぞれ油圧管路22を介して対応する油圧アクチュエータに接続される。ここでいう複数の方向制御弁とは、左走行モータ2A用の方向制御弁、右走行モータ2B用の方向制御弁、旋回モータ3A用の方向制御弁、ブームシリンダ5D用の方向制御弁、アームシリンダ5E用の方向制御弁、およびバケットシリンダ5F用の方向制御弁である。
【0021】
電磁弁装置17は、コントロールバルブ16の弁ケーシング直上に取り付けられた、金属の鋳造によって形成された強固な電磁弁ケーシング23Aおよび、弁ケーシング直下に配置された電磁弁ケーシング23B内にそれぞれ設けられた複数の電磁弁(比例電磁弁)を備えた集合体(多連弁)として構成される。電磁弁ケーシング23Aに設けられた複数の電磁弁は、水平方向に取り付けられており、コントロールバルブ16の車体右側側面、左側側面に1列に並んでいる。コントロールバルブ16の弁ケーシング直下に取り付けられた電磁弁ケーシング23Bに設けられた複数の電磁弁は、鉛直下方向に取り付けられており、2列に並んでいる。
【0022】
ブーム用電磁弁は、ブームシリンダ5D用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応する。ブーム用電磁弁は、ブームシリンダ5Dにブーム5Aを持上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁24と、ブームシリンダ5Dにブーム5Aを下げる動作を行わせるブーム下げ用電磁弁とにより構成される。ブーム上げ用電磁弁24は、電磁弁装置17を構成する2個の電磁弁ケーシング23A、23Bのうち、電磁弁ケーシング23Bの直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に設けられる。ここで、コントロールバルブ16の投影範囲内とは、コントロールバルブ16の外形を上部から旋回フレーム6側に向けて投影した範囲内である。
【0023】
アーム用電磁弁は、アームシリンダ5E用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応し、アームシリンダ5Eにアーム5Bの引き動作を行わせるアームクラウド用電磁弁と、アームシリンダ5Eにアーム5Bのダンプ動作を行わせるアームダンプ用電磁弁25とにより構成される。アームダンプ用電磁弁25は、電磁弁装置17を構成する2個の電磁弁ケーシング23A、23Bのうち、電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に設けられる。
【0024】
バケット用電磁弁は、バケットシリンダ5F用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応し、バケットシリンダ5Fにバケット5Cのクラウド動作を行わせるバケットクラウド用電磁弁と、バケットシリンダ5Fにバケット5Cのダンプ動作を行わせるバケットダンプ用電磁弁42により構成される。バケットダンプ用電磁弁42は、電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に設けられる。
【0025】
左走行用電磁弁は、左走行モータ2A用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応し、左走行モータ2Aを前進回転させる左側走行前進用電磁弁39と、左走行モータ2Aを後進回転させる左側走行後進用電磁弁41とにより構成される。右走行用電磁弁は、右走行モータ2B用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応し、右走行モータ2Bを前進回転させる右側走行前進用電磁弁38と、右走行モータ2Bを後進回転させる右側走行後進用電磁弁40とにより構成される。
【0026】
旋回用電磁弁は、旋回モータ用の方向制御弁に設けられた2個の油圧パイロット部に対応し、旋回モータ3Aを左旋回させる左旋回用電磁弁と、旋回モータ3Aを右旋回させる右旋回用電磁弁とにより構成される。
【0027】
このように、電磁弁装置17は、ブームシリンダ5Dにブーム5Aを持上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁24、およびアーム5Bのダンプ動作を行わせるアームダンプ用電磁弁25などの複数の電磁弁を含む。電磁弁装置17に設けられたパイロット圧の流入口はパイロットポンプ18に接続される。電磁弁装置17を構成する複数の電磁弁は、コントロールバルブ16を構成する複数の方向制御弁のうち、対応する方向制御弁の油圧パイロット部に、電磁弁ケーシング23A、23B内部に設けられた油路を介して接続される。
【0028】
ここで、電磁弁装置17を構成する複数の電磁弁のうち、ブーム上げ用電磁弁24とアームダンプ用電磁弁25は、他の電磁弁に比較して重要度が高い。例えば油圧ショベル1の作動時に、周囲の岩盤などの障害物との衝突、落石との衝突等により電磁弁装置17が破損する可能性がある。このとき、バケット5Cの先端が地面よりも低い位置にある状態でブーム上げ用電磁弁24が破損した場合には、バケット5Cの先端を地面より上に持上げることができなくなる。また、トンネル内部での作業や天井の存在する屋内作業など、油圧ショベル1の上方に障害物が存在する場合、ブーム上げ動作範囲が制限される。
【0029】
ブーム上げ動作のみでバケット5Cの先端を地面より上に持ち上げることができない状況下であっても、アームダンプ動作によってバケット5Cの先端を地面より上に持ち上げることができる。しかし、さらにブーム上げ用電磁弁24だけでなくアームダンプ用電磁弁25も破損した場合にはバケット5Cの先端を地面より上に持上げることができなくなる。この場合には、バケット5Cが地面に引っ掛かった状態で止まることにより、油圧ショベル1を自走させることも、牽引車を用いて移動させることもできず、油圧ショベル1を迅速に修理工場等に搬送することが困難となる。そのため本実施の形態では、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25を外部からの衝撃による破損のリスクが低い場所に配置している。
【0030】
具体的には、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25は、図5中の下面視において、コントロールバルブ16の弁ケーシング16Aに重なる位置に配置される。また図6中の側面視において、弁ケーシング16Aの底面から旋回フレーム6の底板26間の高さの位置に配置される。本実施の形態では、コントロールバルブ16を旋回フレーム6に搭載した状態で、弁ケーシング16A直下に設けられた電磁弁ケーシング23Bに直接にブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25が取り付けられている。また電磁弁ケーシング23Aの直上にも同様に電磁弁ケーシングが設けられる。
【0031】
そのため、掘削作業時に上部旋回体4に落石等による衝撃が作用したとしても、強固な弁ケーシング16Aおよび上方向に設けられた電磁弁ケーシング23Aによって、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25を保護することができる。さらに、次に説明するようにブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25にアクセスするための構成を有する。
【0032】
図7は、油圧ショベル1の自走や牽引のために動作させる作業装置5の方向を示す図である。図7において破線は移動前の状態を示し、実線が移動後の状態を示す。ブーム5Aは、高い方向に移動させることが望ましい。そのためブーム上げ用電磁弁24を保護することが望ましい。アーム5Bは、車体奥側すなわちダンプ方向に移動させることが望ましい。そのため、アームダンプ用電磁弁25を保護することが望ましい。バケット5Cは、車体奥側すなわちダンプ方向に移動させることが望ましい。そのため、バケットダンプ用電磁弁42を保護することが望ましい。前述のように、これらの保護すべき電磁弁は、コントロールバルブ16の直下に配する。
【0033】
図8は、開口部44を示す図である。旋回フレーム6は、オペレータがブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25をメンテナンスするために、コントロールバルブ16の下方に開口部44を備える。開口部44は、コントロールバルブ16の下部にアクセス可能な位置に配されていればよい。たとえば、コントロールバルブ16を上方から旋回フレーム6への投影範囲に開口部44が含まれてもよいし、コントロールバルブ16を上方から旋回フレーム6への投影範囲と開口部44とが隣接してもよい。また開口部44が複数設けられてもよい。オペレータは、この開口部44を利用することでブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25のメンテナンスを迅速に行うことができる。
【0034】
図9は、油圧ショベル1の操作系統を示す図である。電磁弁コントローラ27は、電磁弁装置17を構成する複数の電磁弁にケーブル28を介して電気的に接続される。電磁弁コントローラ27の入力側には、電気式操作装置としての左走行用操作装置29、右走行用操作装置30、左作業用操作装置31、および右作業用操作装置32が電気的に接続される。
【0035】
左走行用操作装置29および右走行用操作装置30は、キャブ14内に位置して運転席の前側に設けられ、左右方向で対向して配置される。左走行用操作装置29は、左走行モータ2Aを駆動するときに前後方向に傾転操作されるレバーペダル29Aを有する。左走行用操作装置29は、レバーペダル29Aの操作方向および操作量に応じた電気信号を、ケーブル29Bを介して電磁弁コントローラ27に出力する。右走行用操作装置30は、右走行モータ2Bを駆動するときに前後方向に傾転操作されるレバーペダル30Aを有する。右走行用操作装置30は、レバーペダル30Aの操作方向および操作量に応じた電気信号を、ケーブル30Bを介して電磁弁コントローラ27に出力する。
【0036】
左作業用操作装置31は、キャブ14内に位置して運転席の左側に設けられる。左作業用操作装置31は、左右方向および前後方向に傾転操作されるレバー31Aを有し、レバー31Aは、例えば旋回モータ3Aを駆動するときには左右方向に傾転操作され、アームシリンダ5Eを駆動するときには前後方向に傾転操作される。左作業用操作装置31は、レバー31Aの操作方向および操作量に応じた電気信号を、ケーブル31Bを介して電磁弁コントローラ27に出力する。
【0037】
右作業用操作装置32は、キャブ14内に位置して運転席の右側に設けられる。右作業用操作装置32は、左右方向および前後方向に傾転操作されるレバー32Aを有し、レバー32Aは、例えばバケットシリンダ5Fを駆動するときには左右方向に傾転操作され、ブームシリンダ5Dを駆動するときには前後方向に傾転操作される。右作業用操作装置32は、レバー32Aの操作方向および操作量に応じた電気信号を、ケーブル32Bを介して電磁弁コントローラ27に出力する。
【0038】
電磁弁コントローラ27は、左走行用操作装置29、右走行用操作装置30、左作業用操作装置31、および右作業用操作装置32に対する操作方向および操作量(操作角)に応じて入力された電気信号に基づいて、電磁弁装置17を構成する電磁弁の開度(弁開度)の目標値を演算する。そして、電磁弁コントローラ27は、演算した目標値に応じて電磁弁の電磁パイロット部に出力される電流値を増減させ、電磁弁の弁開度を調整することにより、コントロールバルブ16を構成する方向制御弁の油圧パイロット部に供給されるパイロット圧を制御する。
【0039】
これにより、左走行用操作装置29のレバーペダル29Aに対する操作に応じて、左走行モータ2Aの回転方向および回転数が制御され、右走行用操作装置30のレバーペダル30Aに対する操作に応じて、右走行モータ2Bの回転方向および回転数が制御される。また、左作業用操作装置31のレバー31Aに対する操作に応じて、旋回モータ3Aの回転方向および回転数が制御され、アームシリンダ5Eの伸縮方向および伸縮量が制御される。さらに、右作業用操作装置32のレバー32Aに対する操作に応じて、バケットシリンダ5Fの伸縮方向および伸縮量が制御され、ブームシリンダ5Dの伸縮方向および伸縮量が制御される。
【0040】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述した構成を有するので、キャブ14に搭乗したオペレータは、例えば左走行用操作装置29のレバーペダル29A、および右走行用操作装置30のレバーペダル30Aを操作する。左走行用操作装置29は、レバーペダル29Aの操作に応じた電気信号を電磁弁コントローラ27に出力し、右走行用操作装置30は、レバーペダル30Aの操作に応じた電気信号を電磁弁コントローラ27に出力する。電磁弁コントローラ27は、左走行用操作装置29および右走行用操作装置30からの電気信号に基づいて、電磁弁装置17を構成する左走行モータ用電磁弁および右走行モータ用電磁弁の開度(弁開度)の目標値を演算する。
【0041】
そして、電磁弁コントローラ27は、演算した弁開度の目標値に応じて、左走行モータ用電磁弁および右走行モータ用電磁弁の電磁パイロット部に出力される電流値を増減させる。これにより、左走行モータ用電磁弁および右走行モータ用電磁弁の弁開度が調整され、コントロールバルブ16を構成する方向制御弁のうち、左走行モータ2A用の方向制御弁の油圧パイロット部、および右走行モータ2B用の方向制御弁の油圧パイロット部に供給されるパイロット圧が制御される。
【0042】
これにより、左走行用操作装置29(レバーペダル29A)に対する操作に応じて、左走行モータ2Aの回転方向および回転数が制御され、右走行用操作装置30(レバーペダル30A)に対する操作に応じて、右走行モータ2Bの回転方向および回転数が制御される。この結果、下部走行体2の左クローラ2Cおよび右クローラ2Dが駆動され、油圧ショベル1を作業現場に向けて走行させることができる。
【0043】
油圧ショベル1が作業現場まで走行した後には、オペレータは、左作業用操作装置31のレバー31A、および右作業用操作装置32のレバー32Aを操作する。左作業用操作装置31は、レバー31Aの操作に応じた電気信号を電磁弁コントローラ27に出力し、右作業用操作装置32は、レバー32Aの操作に応じた電気信号を電磁弁コントローラ27に出力する。電磁弁コントローラ27は、左作業用操作装置31および右作業用操作装置32からの電気信号に基づいて、電磁弁装置17を構成する旋回モータ用電磁弁、ブーム用電磁弁、アーム用電磁弁、バケット用電磁弁の弁開度の目標値を演算する。
【0044】
そして、電磁弁コントローラ27は、演算した弁開度の目標値に応じて、旋回モータ用電磁弁、ブーム用電磁弁、アーム用電磁弁、バケット用電磁弁の電磁パイロット部に出力される電流値を増減させる。これにより、旋回モータ用電磁弁、ブーム用電磁弁、アーム用電磁弁、バケット用電磁弁の弁開度が調整され、コントロールバルブ16を構成する方向制御弁のうち、旋回モータ3A用の方向制御弁、ブームシリンダ5D用の方向制御弁、アームシリンダ5E用の方向制御弁、バケットシリンダ5F用の方向制御弁のそれぞれの油圧パイロット部に供給されるパイロット圧が制御される。
【0045】
これにより、左作業用操作装置31(レバー31A)に対する操作に応じて、旋回モータ3Aの回転方向および回転数が制御されると共に、アームシリンダ5Eの伸縮動作および伸縮量が制御される。また、右作業用操作装置32(レバー32A)に対する操作に応じて、ブームシリンダ5Dの伸縮動作および伸縮量が制御されると共に、バケットシリンダ5Fの伸縮動作および伸縮量が制御される。このようにして、上部旋回体4を旋回させつつ、作業装置5を用いて掘削作業等を行うことができる。
【0046】
ところで、油圧ショベル1の作業時には、障害物との衝突、落石等の外部からの衝撃が上部旋回体4に作用することにより、例えば電磁弁コントローラ27等の電装品が破損する可能性がある。電磁弁コントローラ27等の電装品が破損した状態では、油圧ショベル1は正常な動作を行うことができないため、油圧ショベル1をトレーラ等に積載して修理工場等に搬送する必要がある。作業装置5が地面よりも上に出ている状態で電装品が破損した場合には、油圧ショベル1をトレーラまで自走させることや、牽引車を用いて油圧ショベル1をトレーラまで移動させることができる。
【0047】
しかし、作業装置5の先端(バケット5C)が、地面よりも低い位置にある状態で、電磁弁装置17を構成するブーム上げ用電磁弁24が破損した場合には次の問題がある。すなわち、ブームシリンダ5Dによってブーム5Aを持上げる動作が行えないため、バケット5Cの先端を地面より上に持上げることができない。また、アームダンプ用電磁弁25が破損した場合には、トンネル内部での作業や天井の存在する屋内作業など、ブーム5Aを持ち上げる動作のみでバケット5Cの先端を地面より上に持ち上げることができない環境下では、アーム5Bを押し出す動作が行えないためバケット5Cの先端を地面より上に持上げることができない。この場合には、バケット5Cが地面に引っ掛かるため、油圧ショベル1をトレーラまで自走できないだけでなく、牽引車を用いて油圧ショベル1を移動させることもできない、という問題がある。
【0048】
しかし、本実施の形態では、ブーム5Aを持上げる動作に係るブーム上げ用電磁弁24およびアーム5Bを押し出す動作に関わるアームダンプ用電磁弁25が物理的な配置の工夫により保護されているのでこの問題を回避できる。具体的には、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25は、強固なコントロールバルブ16の弁ケーシング16Aの直下に取り付けられている。そのため、落石等による外部からの衝撃が上部旋回体4に作用し、電磁弁装置17の一部、または電磁弁コントローラ27等が破損したとしても、前述の問題が生じない。すなわち、弁ケーシング16Aおよび上面の電磁弁ケーシング23Aによって、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25を保護できる。
【0049】
図10は、電磁弁コントローラ27を用いずにブーム上げおよびアームダンプを行うための回路図である。落石などで電磁弁コントローラ27が破損した場合には、図10に示すように回路を構成することで、ブーム上げおよびアームダンプを行うことができる。すなわち図10に示すように、ブーム上げ用電磁弁24に外部コントローラ33を接続する。これにより、仮にブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25以外の電磁弁、電磁弁コントローラ27等の電装品が破損した緊急時においても、外部コントローラ33を用いてブーム5Aおよびアーム5Bを持上げることができる。
【0050】
すなわち、電磁弁装置17のブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25に対し、ケーブル34を介して外部コントローラ33を電気的に接続する。外部コントローラ33にはアクチュエータ駆動レバー35が接続され、外部コントローラ33は、アクチュエータ駆動レバー35に対する操作に応じてブーム上げ用電磁弁24の弁開度の目標値を演算する。そして、外部コントローラ33は、演算した弁開度の目標値に応じて、ブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25の電磁パイロット部に出力される電流値を増減させる。これにより、ブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25の弁開度が調整される。そして、コントロールバルブ16を構成する方向制御弁のうち、ブームシリンダ5Dまたはアームシリンダ5E用の方向制御弁の油圧パイロット部に供給されるパイロット圧が制御される。
【0051】
このため、アクチュエータ駆動レバー35に対する操作に応じてブームシリンダ5Dの伸長動作が制御され、ブーム5Aを持上げることにより、バケット5Cと地面との引っ掛かりを防止することができる。同様にアクチュエータ駆動レバー35に対する操作に応じて、アームシリンダ5Eの収縮動作が制御されアーム5Bを押し出すことにより、バケット5Cと地面の引っ掛かりを防止することができる。この状態で、例えば牽引車を用いて油圧ショベル1をトレーラまで移動させることにより、油圧ショベル1をトレーラに積載して修理工場等に搬送することができる。なお、外部コントローラ33への指示は、外部コントローラ33に接続されたアクチュエータ駆動レバー35の操作によって行うことに限らず、例えばアクチュエータ駆動レバー35の代わりとして携帯端末を用いた有線通信または無線通信によって行うようにしてもよい。
【0052】
このように、電磁弁装置17のうちブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25以外の電磁弁や電磁弁コントローラ27が破損した場合に次の操作が可能となる。すなわち、ブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25に外部コントローラ33を接続することにより、作業装置5を持上げて油圧ショベル1を移動させることができる。前述のように、旋回フレーム6のコントロールバルブ16直下に位置する箇所は開口部44が設けられている。そのため、オペレータは開口部44を利用することでブーム上げ用電磁弁24に容易にアクセスでき、ケーブル34を介して外部コントローラ33を接続する作業性を高めることができる。
【0053】
また、旋回右用電磁弁36と旋回左用電磁弁37のどちらかが高さ方向はコントロールバルブ16底面と旋回フレーム6との間に、水平方向はコントロールバルブ16の上方向からの投影範囲内に配置される構成としてもよい。右側走行前進用電磁弁38と左側走行前進用電磁弁39または右側走行後進用電磁弁40と左側走行後進用電磁弁41のどちらか一対が高さ方向はコントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に、水平方向はコントロールバルブ16の上方向からの投影範囲内に配置される構成としてもよい。
【0054】
このような構成とすることで、障害物との衝突、落石等の外部からの衝撃が上部旋回体4に作用し、コントロールバルブ16上面に設けた電磁弁が破損したとしても、悪影響を少なく留めることができる。具体的には、コントロールバルブ16の下面に設けた電磁弁を作動させることで、稼働方向に制限はでるものの旋回・走行動作を行う事ができる。そのため、自走または牽引に適した車体姿勢や車体方向に調整できる。
【0055】
この構成によれば、障害物との衝突、落石との衝突等による外部からの衝撃が上部旋回体4に作用したとしても、強度部材である弁ケーシング16A、コントロールバルブ上側に設けられた電磁弁ケーシング23Aによって、ブーム上げ用電磁弁24とアームダンプ用電磁弁25を保護することができる。このため、例えばブーム上げ用電磁弁24に外部コントローラ33を接続することにより、外部コントローラ33を用いてブーム上げ用電磁弁24またはアームダンプ用電磁弁25を制御し、ブームシリンダ5Dの伸長動作、またはアームシリンダ5Eの収縮動作を制御することができる。従って、作業装置5を持上げてバケット5Cの先端を地面より上に持上げることにより、油圧ショベル1を移動させることができる。
【0056】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)建設機械である油圧ショベル1は、自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置5と、少なくとも作業装置5を駆動する複数の油圧アクチュエータとを備える。作業装置5は、車体に取り付けられたブーム5Aと、ブーム5Aの先端に取り付けられたアーム5Bとを有する。車体は、ベースとなる旋回フレーム6と、油圧ポンプ13から複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ16と、操作に応じた電気信号を出力する電気式操作装置と、電気式操作装置からの電気信号に基づいてコントロールバルブ16を制御する複数の電磁弁を含む電磁弁装置17とを備える。油圧アクチュエータは、ブーム5Aを車体に対して回動させるブーム用アクチュエータとアーム5Bをブーム5Aに対して回動させるアーム用アクチュエータとを含む。電磁弁装置17は、ブーム用アクチュエータにブーム5Aを上げる動作を行わせるブーム上げ用電磁弁24とアーム用アクチュエータにアーム5Bを車体奥側に押し出す動作を行わせるアームダンプ用電磁弁25を含む。ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25は、コントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に配置される。そのため、油圧ショベル1が外部から衝撃を受けた際にもブーム上げおよびアームダンプが可能となり、油圧ショベル1の自走や牽引に適した姿勢、すなわちバケット5Cの先端を地面より上に持上げた姿勢をとることができる。
【0057】
(2)車体は、下部走行体2と下部走行体2に旋回可能に取り付けられた上部旋回体4とを含んで構成される。油圧ショベル1は、上部旋回体4を下部走行体2に対して旋回させる旋回用アクチュエータを含む。電磁弁装置17は、旋回用アクチュエータに右旋回の動作を行わせる旋回右用電磁弁36と、旋回用アクチュエータに左旋回の動作を行わせる旋回左用電磁弁37とを備える。旋回右用電磁弁36および旋回左用電磁弁37のうちの少なくともいずれか一方は、コントロールバルブ16の底面とフレームの間に配置される。そのため、油圧ショベル1が外部から力を受けても右旋回および左旋回のいずれかは可能であり、移動や牽引に適した状態に油圧ショベル1を遷移させることができる。
【0058】
(3)油圧ショベル1は、車体を走行させる左走行モータ2Aと右走行モータ2Bとを含む。電磁弁装置17は、右走行モータ2Bに前進の動作を行わせる右側走行前進用電磁弁38と、右走行モータ2Bに後進の動作を行わせる右側走行後進用電磁弁40と、左走行モータ2Aに前進の動作を行わせる左側走行前進用電磁弁39と、左走行モータ2Aに後進の動作を行わせる左側走行後進用電磁弁41とを含む。右側走行前進用電磁弁38と左側走行前進用電磁弁39および右側走行後進用電磁弁40と左側走行後進用電磁弁41の少なくとも一方は、コントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に配置されている。そのため、油圧ショベル1が外部から力を受けても前進および後進の少なくとも一方は可能であり、油圧ショベル1を移動させられる。
【0059】
(4)旋回フレーム6には、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25の下方側に開口部44が形成されている。そのため図10に示したように、電磁弁コントローラ27が故障した際に外部コントローラ33を容易に接続して油圧ショベル1のバケット5Cの先端を地面より上に持上げることができる。
【0060】
(5)油圧ショベル1は、アーム5Bの先端に配されるバケット5Cを回動させるバケットシリンダ5Fを含む。電磁弁装置17は、バケットシリンダ5Fにバケット5Cを車体奥側に押し出す動作を行わせるバケットダンプ用電磁弁42を含む。バケットダンプ用電磁弁42は、高さ方向はコントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に、水平方向はコントロールバルブ16の上方向からの投影範囲内に配置されている。そのため、バケット5Cをダンプ状態に遷移させることで障害物との接触を解除するなど、油圧ショベル1の移動に資することができる。
【0061】
(変形例1)
上述した第1の実施の形態では、電磁弁ケーシング23Bの直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に、ブーム上げ用電磁弁24、アームダンプ用電磁弁25、旋回左用電磁弁37、右側走行前進用電磁弁38、左側走行前進用電磁弁39、およびバケットダンプ用電磁弁42が配された。しかしこれらの全てを電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に配することは必須の構成ではなく、少なくともブーム上げ用電磁弁24、アームダンプ用電磁弁25を電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に配すればよい。
【0062】
(変形例2)
上述した第1の実施の形態において、旋回左用電磁弁37の代わりに旋回右用電磁弁36が電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に配されてもよい。また、右側走行前進用電磁弁38および左側走行前進用電磁弁39の代わりに、右側走行後進用電磁弁40および左側走行後進用電磁弁41が電磁弁ケーシング23B直下かつ、上方向からのコントロールバルブ16の投影範囲内に配されてもよい。
【0063】
(変形例3)
上述した第1の実施の形態では、ブーム上げ用電磁弁24およびアームダンプ用電磁弁25などの重要な電磁弁は、上下方向はコントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に、水平方向はコントロールバルブ16の投影範囲内に設けられた。しかし、これら重要な電磁弁は少なくとも上下方向はコントロールバルブ16の底面と旋回フレーム6の間に配されればよく、水平方向がコントロールバルブ16の投影範囲内に設けられることは必須の構成要件ではない。
【0064】
上述した変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 :油圧ショベル
5 :作業装置
5A :ブーム
5B :アーム
5C :バケット
5D :ブームシリンダ
5E :アームシリンダ
5F :バケットシリンダ
6 :旋回フレーム
16 :コントロールバルブ
16A :弁ケーシング
17 :電磁弁装置
23A :電磁弁ケーシング
23B :電磁弁ケーシング
24 :ブーム上げ用電磁弁
25 :アームダンプ用電磁弁
27 :電磁弁コントローラ
36 :旋回右用電磁弁
37 :旋回左用電磁弁
38 :右側走行前進用電磁弁
39 :左側走行前進用電磁弁
40 :右側走行後進用電磁弁
41 :左側走行後進用電磁弁
42 :バケットダンプ用電磁弁
44 :開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10