(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142487
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】板状構造体、筒状構造体、立体編物構造体、及びロール状収納構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/17 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D81/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054639
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】幸 俊彦
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066BA05
3E066CA01
3E066CA06
3E066CA11
3E066DA03
3E066DB01
(57)【要約】
【課題】各種変形に対する自由度が高く、繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体の構成材料となる板状構造体、板状構造体を筒状に丸めた筒状構造体、筒状構造体を3次元編みして構成される立体編物構造体、及び、板状構造体をロール状に巻き取ったロール状収納構造体を提供する。
【解決手段】板厚方向から見て、第1方向D1及び第2方向D2にそれぞれ配列する複数の平行四辺形体2と、第1方向D1に隣り合う平行四辺形体2の対向する辺同士を連結する撓み変形可能な複数の第1ヒンジ3と、第2方向D2に隣り合う平行四辺形体2の対向する辺同士を連結する撓み変形可能な複数の第2ヒンジ4と、平行四辺形体2の一方の対角線上に配置され、第3方向D3に延びる撓み変形可能な複数の第3ヒンジ5と、を備え、平行四辺形体2は、一対の三角形体9を有し、第3ヒンジ5は、一対の三角形体9の対向する底辺同士を連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に丸めることが可能な板状構造体であって、
板厚方向から見て、第1方向、及び前記第1方向と交差する第2方向に、それぞれ配列する複数の平行四辺形体と、
前記第1方向において隣り合う前記平行四辺形体の対向する辺同士を連結し、前記第2方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第1ヒンジと、
前記第2方向において隣り合う前記平行四辺形体の対向する辺同士を連結し、前記第1方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第2ヒンジと、
前記平行四辺形体の一対の対角線のうち、一方の対角線上に配置され、前記一方の対角線が延びる第3方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第3ヒンジと、を備え、
前記平行四辺形体は、一対の三角形体を有し、
前記第3ヒンジは、前記一対の三角形体の対向する底辺同士を連結する、
板状構造体。
【請求項2】
前記第1ヒンジ及び前記第2ヒンジが、それぞれ、板厚方向の表面側に突出する山折り形状をなし、
前記第3ヒンジが、板厚方向の裏面側に窪む谷折り形状をなしている、
請求項1に記載の板状構造体。
【請求項3】
前記板状構造体を板厚方向に貫通する複数の孔部を備え、
前記孔部は、前記第2方向において隣り合う前記第1ヒンジ間、前記第1方向において隣り合う前記第2ヒンジ間、及び、前記第3方向において隣り合う前記第3ヒンジ間に位置する、
請求項2に記載の板状構造体。
【請求項4】
前記板状構造体の板厚寸法が、0.05mm以上5mm以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体。
【請求項5】
前記板状構造体の前記第1方向の外形寸法と、前記第2方向の外形寸法とが、互いに異なる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体。
【請求項6】
前記板状構造体の前記第1方向の両端部に配置され、互いに係合可能な係合部を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体。
【請求項7】
前記平行四辺形体が、前記第1方向において、3個以上16個以下の数量で配列する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体。
【請求項8】
前記板状構造体が、単一の部材により一体に形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体を筒状に丸めて構成され、少なくとも伸縮変形及び撓み変形可能とされた、
筒状構造体。
【請求項10】
前記筒状構造体の直径寸法が、1cm以上100cm以下である、
請求項9に記載の筒状構造体。
【請求項11】
前記筒状構造体の直径寸法をDとして、
前記筒状構造体は、曲げ半径2D以下で撓み変形可能である、
請求項9に記載の筒状構造体。
【請求項12】
前記筒状構造体の直径寸法をD、全長をLとして、前記筒状構造体の体積Vは、下記式(1)で表され、
V=(D/2)2×π×L・・・(1)
前記筒状構造体の重量をwとして、前記筒状構造体の見掛け密度ρ1は、下記式(2)で表され、
ρ1=w/V・・・(2)
前記筒状構造体の構成材料の密度をρ0として、密度比drは、下記式(3)で表され、
dr=ρ1/ρ0・・・(3)
前記密度比drが、0.01以上0.3以下である、
請求項9に記載の筒状構造体。
【請求項13】
請求項9に記載の筒状構造体を立体的に編んで構成される、
立体編物構造体。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1項に記載の板状構造体をロール状に巻き取った、
ロール状収納構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状構造体、筒状構造体、立体編物構造体、及びロール状収納構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境と経済が両立した循環型社会を形成していくための取り組みとして、いわゆる3R(Reduce,Reuse,Recycle)政策が知られている。このうち、リユース(Reuse)は、形作られたものを、形を変えずにそのまま再び使う取り組みである。リサイクル(Recycle)は、形作られたものを一度原料レベルまで戻す処理をし、その原料を使って、新たなものを形作る取り組みである。
【0003】
ただし、リユースでは、構造体の形状が限定されるため、再生(再使用)の用途が限られている。また、リサイクルでは、例えば使用済みの構造体を溶解、粉末化し、3次元造形機の使用などにより新たな構造体を成形するなど、複雑な工程や多大なエネルギーを必要とする。
【0004】
そこで、造形及び再生を低エネルギーで実現可能な新たな取り組みが考えられる。具体的には、形作られたものを、原料レベルまで戻す処理をすることなく中間体で留め、その中間体を再び使って、形を変えた新たなものを形作る取り組みである(以下、この取り組みを「リコンストラクション」と呼ぶ)。
【0005】
リコンストラクションの一例として、銅製等の紐を3次元編みした立体編物構造体が挙げられる。このような立体編物構造体であれば、使用済みとなった構造体の紐をほどき、この紐(中間体)を再び3次元編みして別形状の新たな立体編物構造体に再生することができる。しかしながら、中間体が紐状の場合、編み上げ工数や重量が嵩むなどの理由により、立体的で大きな構造物などに適用することが難しい。
【0006】
例えば、特許文献1には、紙や金属箔、プラスチックシート等のように弾性変形しないが折り曲げ可能なシートを用い、折線展開図の山折り線及び谷折り線に沿って折り畳むことで、筒状折り畳み構造物とする製造方法が開示されている。このような筒状構造体を中間体として用い、3次元編みできれば、編み上げ工数や重量が嵩むことを抑制でき、立体的で大きな構造物などにも対応可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の筒状折り畳み構造物は、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が低く、このような筒状折り畳み構造物を中間体として、3次元編みを行うことは難しい。また、変形を繰り返すと破断のおそれがある。
【0009】
本発明は、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体の構成材料となる板状構造体、この板状構造体を筒状に丸めて構成される筒状構造体、この筒状構造体を3次元編みして構成される立体編物構造体、及び、板状構造体をロール状に巻き取ったロール状収納構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
〔本発明の態様1〕
筒状に丸めることが可能な板状構造体であって、板厚方向から見て、第1方向、及び前記第1方向と交差する第2方向に、それぞれ配列する複数の平行四辺形体と、前記第1方向において隣り合う前記平行四辺形体の対向する辺同士を連結し、前記第2方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第1ヒンジと、前記第2方向において隣り合う前記平行四辺形体の対向する辺同士を連結し、前記第1方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第2ヒンジと、前記平行四辺形体の一対の対角線のうち、一方の対角線上に配置され、前記一方の対角線が延びる第3方向に沿って延びる撓み変形可能な複数の第3ヒンジと、を備え、前記平行四辺形体は、一対の三角形体を有し、前記第3ヒンジは、前記一対の三角形体の対向する底辺同士を連結する、板状構造体。
【0012】
本発明の板状構造体は、第1方向に隣り合う平行四辺形体同士を連結する第1ヒンジと、第2方向に隣り合う平行四辺形体同士を連結する第2ヒンジと、平行四辺形体の一対の三角形体同士を連結する第3ヒンジと、を備えている。これらの第1ヒンジ、第2ヒンジ及び第3ヒンジは、それぞれ、撓み変形可能とされたいわゆる「リビングヒンジ」である。撓み変形可能なリビングヒンジは、繰り返し変形させられても、その強度が安定して確保される。なお以下では、第1ヒンジ、第2ヒンジ及び第3ヒンジを、単にヒンジと呼んだり、リビングヒンジと呼んだりする場合がある。
【0013】
そして、延在方向が互いに異なる3種類のリビングヒンジを組み合わせて構成される板状構造体は、筒状に丸めて筒状構造体としたときに、各ヒンジが撓み変形させられることで、少なくとも、筒の中心軸が延びる軸方向に伸縮可能とされ、かつ、中心軸と直交する径方向に撓み変形可能とされる。すなわち、複数種類のリビングヒンジを用いることによって、筒状構造体の柔軟性が高められている。
【0014】
このように、本発明の板状構造体を筒状に丸めて構成される筒状構造体は、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保される。したがって、筒状構造体を3次元編みして立体編物構造体とすることが容易であり、かつ、編み上げた立体編物構造体の強度が確保される。
【0015】
また、筒状構造体は中空状であり、容積が大きく重量が小さい。このため、筒状構造体を3次元編みすることで得られる立体編物構造体は、編み上げ工数や重量の嵩張りが抑制されて、立体的で大きな構造物などに対しても適用しやすい。
【0016】
そして、使用済みとなった立体編物構造体については、その筒状構造体をほどくことで、筒状構造体(中間体)を再び3次元編みして別形状の新たな立体編物構造体に再生することができる。すなわち本発明によれば、造形の自由度が高く、低エネルギーで再生可能な「リコンストラクション」としての資源再利用の取り組みに効果的に寄与できる。
【0017】
また、筒状構造体とする前の板状構造体は、板状(シート状)であるため、この板状構造体を重ねて収納したり、ロール状に巻き取って収納してロール状収納構造体にすることができる。このため、本発明品をコンパクトに収納でき取り扱いが簡単であって、流通や保管することが容易である。
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体の構成材料となる板状構造体、この板状構造体を筒状に丸めて構成される筒状構造体、この筒状構造体を3次元編みして構成される立体編物構造体、及び、板状構造体をロール状に巻き取ったロール状収納構造体を提供することができる。
【0019】
〔本発明の態様2〕
前記第1ヒンジ及び前記第2ヒンジが、それぞれ、板厚方向の表面側に突出する山折り形状をなし、前記第3ヒンジが、板厚方向の裏面側に窪む谷折り形状をなしている、態様1に記載の板状構造体。
【0020】
上記構成では、第1ヒンジ及び第2ヒンジにそれぞれ、断面逆V字状又は断面逆U字状等の山折り形状の折り目が付与され、第3ヒンジに、断面V字状又は断面U字状等の谷折り形状の折り目が付与されている。これにより、板状構造体は、外力を受けていない状態では、自然に筒状に丸まり筒状構造体の形状となる。このため、筒状構造体を使用するときに、板状構造体に別途加工を施して筒状に丸めるような工程は必要なく、筒状構造体の使い勝手がよい。また、板状構造体(筒状構造体)をロール状にして保管することができ、搬送や取り扱いが容易である。
【0021】
また、各ヒンジに上述の所定の折り目が付与されることで、筒状構造体が安定して伸縮変形や撓み変形等の各種変形をすることができる。
【0022】
〔本発明の態様3〕
前記板状構造体を板厚方向に貫通する複数の孔部を備え、前記孔部は、前記第2方向において隣り合う前記第1ヒンジ間、前記第1方向において隣り合う前記第2ヒンジ間、及び、前記第3方向において隣り合う前記第3ヒンジ間に位置する、態様2に記載の板状構造体。
【0023】
この場合、板状構造体を板厚方向に貫通する孔部が、第1ヒンジ間、第2ヒンジ間及び第3ヒンジ間に配置されているため、各ヒンジに所定の折り目を付けるときに(各ヒンジの曲げ加工時に)、隣接するヒンジ同士が相互に干渉することを防止できる。
また、孔部が設けられることで、各ヒンジが安定して撓み変形でき、板状構造体及びこの板状構造体を丸めた筒状構造体の各種変形の自由度がより高められる。
【0024】
〔本発明の態様4〕
前記板状構造体の板厚寸法が、0.05mm以上5mm以下である、態様1から3のいずれか1つに記載の板状構造体。
【0025】
板状構造体の板厚寸法が0.05mm以上であれば、第1ヒンジ、第2ヒンジ及び第3ヒンジがそれぞれ、繰り返し撓み変形可能なリビングヒンジとして、安定して機能する。このため、板状構造体(筒状構造体)が繰り返し変形させられても、各ヒンジでの破断が安定して抑えられる。なお、板状構造体の板厚寸法は、0.1mm以上であることがより好ましい。
【0026】
また、板状構造体の板厚寸法が5mm以下であると、各ヒンジの構造を複雑化させることなく、各ヒンジを変形しやすいリビングヒンジとして安定して機能させることができる。具体的には、例えば、リビングヒンジの一部を構成するスリット等の数量を少なく抑えることができたり、スリット全長を短く抑えることができたりして、各ヒンジの構造が簡素化される。したがって、各ヒンジの機能を良好に維持しつつ、板状構造体の生産性(製造効率)を高めることができる。なお、板状構造体の板厚寸法は、2mm以下であることがより好ましい。
【0027】
〔本発明の態様5〕
前記板状構造体の前記第1方向の外形寸法と、前記第2方向の外形寸法とが、互いに異なる、態様1から4のいずれか1つに記載の板状構造体。
【0028】
この場合、特に第2方向の外形寸法が第1方向の外形寸法と比較して極めて長い場合においても、板状構造体を第1方向に湾曲させて丸めることで、板状構造体から筒状構造体を作製することができる。一方で、この板状構造体を第2方向に巻き取ることによりロール状収納構造体を作製することができ、搬送や取り扱いが容易になる。
【0029】
〔本発明の態様6〕
前記板状構造体の前記第1方向の両端部に配置され、互いに係合可能な係合部を備える、態様1から5のいずれか1つに記載の板状構造体。
【0030】
この場合、板状構造体を第1方向に沿って丸めて筒状構造体としたときに、係合部同士を係合することで、筒状構造体の形状が安定して維持される。
【0031】
〔本発明の態様7〕
前記平行四辺形体が、前記第1方向において、3個以上16個以下の数量で配列する、態様1から6のいずれか1つに記載の板状構造体。
【0032】
板状構造体に、平行四辺形体が第1方向に3個以上で配列していれば、この板状構造体を第1方向に丸めて筒状構造体としたときに、各ヒンジが大きな角度で折り曲げられるようなことが抑制され、各ヒンジに作用する負荷が抑えられて、各ヒンジの破断を安定して防止できる。なお、平行四辺形体が第1方向において配列する数量は、5個以上であることがより好ましい。
【0033】
また、板状構造体に、平行四辺形体が第1方向に16個以下で配列していれば、平行四辺形体の数量が少なく抑えられるとともに、各ヒンジの数量も少なく抑えられる。板状構造体の製造時において、リビングヒンジの加工時間が全体に占める割合は大きいため、リビングヒンジの数量が少なく抑えられることで、板状構造体の製造効率が向上する。なお、平行四辺形体が第1方向において配列する数量は、10個以下であることがより好ましい。
【0034】
〔本発明の態様8〕
前記板状構造体が、単一の部材により一体に形成される、態様1から7のいずれか1つに記載の板状構造体。
【0035】
この場合、板状構造体の構造が簡素化され、製造が容易である。また、各ヒンジの機能がより安定して奏功される。
【0036】
〔本発明の態様9〕
態様1から8のいずれか1つに記載の板状構造体を筒状に丸めて構成され、少なくとも伸縮変形及び撓み変形可能とされた、筒状構造体。
【0037】
〔本発明の態様10〕
前記筒状構造体の直径寸法が、1cm以上100cm以下である、態様9に記載の筒状構造体。
【0038】
筒状構造体の直径寸法(外径寸法)が1cm以上であれば、この筒状構造体を編み込んで立体編物構造体とするときに、筒状構造体が切れにくくなり、構造体の意図しない破断等が安定して抑制される。なお、筒状構造体の直径寸法は、5cm以上であることがより好ましい。
【0039】
また、筒状構造体の直径寸法が100cm以下であれば、例えば重機等の大型の設備を用いることなく、筒状構造体を3次元編みすることができる。なお、筒状構造体の直径寸法は、50cm以下であることがより好ましい。
【0040】
〔本発明の態様11〕
前記筒状構造体の直径寸法をDとして、前記筒状構造体は、曲げ半径2D以下で撓み変形可能である、態様9または10に記載の筒状構造体。
【0041】
上記構成のように、筒状構造体が曲げ半径2D以下で撓み変形可能であると、筒状構造体の柔軟性が十分に確保され、筒状構造体の各種変形の自由度がより高められる。なお、筒状構造体への負荷を小さく抑えてより無理なく撓み変形させるには、曲げ半径1.5D以下であることが好ましく、曲げ半径1.2D以下であることがより望ましい。
【0042】
〔本発明の態様12〕
前記筒状構造体の直径寸法をD、全長をLとして、前記筒状構造体の体積Vは、下記式(1)で表され、V=(D/2)2×π×L・・・(1)
前記筒状構造体の重量をwとして、前記筒状構造体の見掛け密度ρ1は、下記式(2)で表され、ρ1=w/V・・・(2)
前記筒状構造体の構成材料の密度をρ0として、密度比drは、下記式(3)で表され、dr=ρ1/ρ0・・・(3)
前記密度比drが、0.01以上0.3以下である、態様9から11のいずれか1つに記載の筒状構造体。
【0043】
密度比drが0.01以上であれば、筒状構造体の強度が安定して確保される。筒状構造体を編み上げて立体編物構造体としたときに、筒状構造体が安定して自重に耐えることができ、構造体の破損が抑制される。なお、密度比drは、0.03以上であることがより好ましい。
【0044】
また、密度比drが0.3以下であれば、筒状構造体を編み上げて立体編物構造体としたときに、構造体全体としての重量が大きくなり過ぎることを抑制できる。したがって、やはり筒状構造体が安定して自重に耐えることができ、構造体の破損が抑制される。なお、密度比drは、0.1以下であることがより好ましい。
【0045】
〔本発明の態様13〕
態様9から12のいずれか1つに記載の筒状構造体を立体的に編んで構成される、立体編物構造体。
【0046】
〔本発明の態様14〕
態様1から8のいずれか1つに記載の板状構造体をロール状に巻き取った、ロール状収納構造体。
【発明の効果】
【0047】
本発明の前記態様によれば、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体の構成材料となる板状構造体、この板状構造体を筒状に丸めて構成される筒状構造体、この筒状構造体を3次元編みして構成される立体編物構造体、及び、板状構造体をロール状に巻き取ったロール状収納構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、本実施形態の板状構造体の第2方向に沿う一部を示す平面図であり、本実施形態においては、この一部が第2方向に繰り返し延長された構造である。より詳しくは、
図1は、板状構造体の前記一部を板厚方向の表面側から見た上面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のロール状収納構造体の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のロール状収納構造体から板状構造体を適宜引き出して、筒状構造体へと変形させた状態を示す図である。
【
図4】
図4は、筒状構造体を立体に編み上げた場合の完成図であり、すなわち、筒状構造体を3次元編みして形成した立体編物構造体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の一実施形態の板状構造体1、筒状構造体10、ロール状収納構造体11、及び立体編物構造体20について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の板状構造体1は、板状(シート状)の部材である。
図2及び
図3に示すように、板状構造体1は、筒状に丸めることが可能であり、これにより板状構造体1は、筒状構造体10とされる。またロール状に巻き取ることにより板状構造体1は、ロール状収納構造体11とされる。
【0050】
ここで、
図1は、本実施形態の板状構造体1の延在方向(後述する第2方向D2)に沿う一部を示す平面図であり、本実施形態においては、この一部が前記延在方向に繰り返し延長された構造である。つまり
図1は、板状構造体1の延在方向の一部を構成単位として切り出して示す図と言い換えてもよい。より詳しくは、
図1は、板状構造体1の前記一部を板厚方向の表面側から見た上面図である。
図1に示すように、板状構造体1(の前記一部)は、全体として四角形板状をなしており、本実施形態では平行四辺形板状をなしている。
【0051】
板状構造体1の構成材料(素材)としては、例えば、樹脂材料、金属材料、木材等が挙げられる。具体的に、板状構造体1は、例えば、ABS樹脂製、ポリカーボネート製、銅製、銅合金製、アルミニウム製、アルミニウム合金製、ステンレス製、チタン製、木製等である。本実施形態では板状構造体1が、単一の部材により一体に形成されている。
【0052】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
図1に示すように板状構造体1を板厚方向から見て(板状構造体1の平面視で)、板厚方向と直交する所定の方向を、第1方向D1と呼ぶ。
またこの平面視で、第1方向D1と交差する方向を、第2方向D2と呼ぶ。本実施形態では板厚方向から見て、第2方向D2が、第1方向D1に対して90°未満の角度で交差しており、具体的には、例えば60°で交差する。より詳しくは、第1方向D1に沿って延びる図示しない仮想直線と、第2方向D2に沿って延びる図示しない仮想直線とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度が、例えば60°である。
【0053】
また
図1に示す平面視で、第1方向D1及び第2方向D2とそれぞれ交差する方向を、第3方向D3と呼ぶ。本実施形態では板厚方向から見て、第3方向D3が、第1方向D1及び第2方向D2に対して、それぞれ45°未満の角度で交差する。第3方向D3が第1方向D1に対して交差する角度と、第3方向D3が第2方向D2に対して交差する角度とは、互いに等しい。第3方向D3が第1方向D1または第2方向D2に対して交差する角度は、具体的には、例えば30°である。より詳しくは、第3方向D3に沿って延びる図示しない仮想直線と、第1方向D1に沿って延びる図示しない仮想直線とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度が、例えば30°である。また、第3方向D3に沿って延びる図示しない仮想直線と、第2方向D2に沿って延びる図示しない仮想直線とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度が、例えば30°である。
【0054】
板状構造体1の第1方向D1の外形寸法と、第2方向D2の外形寸法とは、互いに異なる。板状構造体1の第2方向D2の外形寸法は、第1方向D1の外形寸法よりも大きい。板状構造体1の第1方向D1の外形寸法に対して第2方向D2の外形寸法は、例えば、5倍以上であり、本実施形態では56倍以上である。
【0055】
また、板状構造体1の板厚寸法は、例えば、0.05mm以上5mm以下である。前記板厚寸法は、好ましくは、0.1mm以上2mm以下である。
【0056】
板状構造体1は、本発明の構成要素である「平行四辺形体」の一例としての菱形体2と、第1ヒンジ3と、第2ヒンジ4と、第3ヒンジ5と、孔部6と、係合部7と、を備える。
【0057】
菱形体2は、板状構造体1に複数設けられる。
図1に示すように板厚方向から見て、複数の菱形体2は、第1方向D1及び第2方向D2に、それぞれ配列する。すなわち、菱形体2は、第1方向D1に並んで複数設けられ、かつ、第2方向D2に並んで複数設けられる。具体的に、菱形体2は、第1方向D1において、例えば、3個以上16個以下の数量で配列する。菱形体2が、第1方向D1において配列する数量は、好ましくは、5個以上10個以下である。
【0058】
また、第1方向D1に並ぶ菱形体2の数量と、第2方向D2に並ぶ菱形体2の数量とは、互いに異なる。第1方向D1に配列する菱形体2の数量に対して第2方向D2に配列する菱形体2の数量は、例えば、5倍以上であり、本実施形態では58倍以上である。
【0059】
また、各菱形体2の外周をなす4辺のうち、2辺は第1方向D1に沿って延び、他の2辺は第2方向D2に沿って延びる。また、特に図示しないが、板状構造体1の平面視で、菱形体2が有する一対の対角線のうち、一方の対角線は、第3方向D3に沿って延び、他方の対角線は、第3方向D3と直交する方向に延びる。本実施形態では、菱形体2の一対の対角線のうち、一方の対角線の長さが、他方の対角線の長さよりも長い。
【0060】
菱形体2は、前記一方の対角線によって区画される一対の二等辺三角形体9を有する。二等辺三角形体9は、本発明の構成要素である「三角形体」の一例である。一対の二等辺三角形体9は、第3方向D3と直交する方向において、前記一方の対角線を間に挟んで、前記一方の対角線の両側に配置される。一対の二等辺三角形体9のうち一方は、他方に対して、第3方向D3と直交する方向において上下反転した姿勢で配置される。このため、菱形体2の一対の二等辺三角形体9の底辺同士は、第3方向D3と直交する方向において、互いに対向する。
【0061】
各二等辺三角形体9の底辺は、前記一方の対角線に沿って第3方向D3に延びる。各二等辺三角形体9の一対の等辺のうち、一方は第1方向D1に沿って延び、他方は第2方向D2に沿って延びる。
【0062】
第1ヒンジ3は、板状構造体1に複数設けられる。第1ヒンジ3は、第1方向D1において隣り合う菱形体2の対向する辺同士を連結する。また、第1ヒンジ3は、第2方向D2に沿って延びる。第1ヒンジ3は、板状(シート状)をなしており、繰り返し撓み変形可能である。第1ヒンジ3は、いわゆるリビングヒンジである。
【0063】
第1ヒンジ3のうち、第1方向D1の両端部は、第1ヒンジ3の第1方向D1の両側に配置される一対の菱形体2の各辺に接続される。第1ヒンジ3のうち、第1方向D1の両端部間に位置する中間部分は、第1方向D1の両端部に比べて、第2方向D2に沿う長さが長くされている。これにより、後述する第1帯状板部3bの長さも長くなり、第1ヒンジ3の曲がりやすさが増す。
【0064】
第1ヒンジ3は、第1スリット3aと、第1帯状板部3bと、第1連結板部3cと、を有する。
【0065】
第1スリット3aは、第1ヒンジ3を板厚方向に貫通する。第1スリット3aは、第2方向D2に沿って延びる。第1スリット3aは、第1ヒンジ3に複数設けられる。複数の第1スリット3aは、第1方向D1において、互いに間隔をあけて配置される。また複数の第1スリット3aは、第2方向D2において、互いに間隔をあけて配置される。
【0066】
第1帯状板部3bは、第1方向D1において隣り合う第1スリット3a間に配置され、第2方向D2に沿って延びる。第1帯状板部3bは、第1ヒンジ3に複数設けられる。複数の第1帯状板部3bは、第1方向D1において、互いに間隔をあけて配置される。
【0067】
第1連結板部3cは、第1方向D1において隣り合う第1帯状板部3b同士を連結する。第1連結板部3cは、第1ヒンジ3に複数設けられる。第1連結板部3cは、第2方向D2において隣り合う第1スリット3a間、または、第1ヒンジ3の第2方向D2の端部に配置される。
【0068】
第2ヒンジ4は、板状構造体1に複数設けられる。第2ヒンジ4は、第2方向D2において隣り合う菱形体2の対向する辺同士を連結する。また、第2ヒンジ4は、第1方向D1に沿って延びる。第2ヒンジ4は、板状(シート状)をなしており、繰り返し撓み変形可能である。第2ヒンジ4は、いわゆるリビングヒンジである。
【0069】
第2ヒンジ4のうち、第2方向D2の両端部は、第2ヒンジ4の第2方向D2の両側に配置される一対の菱形体2の各辺に接続される。第2ヒンジ4のうち、第2方向D2の両端部間に位置する中間部分は、第2方向D2の両端部に比べて、第1方向D1に沿う長さが長くされている。これにより、後述する第2帯状板部4bの長さも長くなり、第2ヒンジ4の曲がりやすさが増す。
【0070】
第2ヒンジ4は、第2スリット4aと、第2帯状板部4bと、第2連結板部4cと、を有する。
【0071】
第2スリット4aは、第2ヒンジ4を板厚方向に貫通する。第2スリット4aは、第1方向D1に沿って延びる。第2スリット4aは、第2ヒンジ4に複数設けられる。複数の第2スリット4aは、第2方向D2において、互いに間隔をあけて配置される。また複数の第2スリット4aは、第1方向D1において、互いに間隔をあけて配置される。
【0072】
第2帯状板部4bは、第2方向D2において隣り合う第2スリット4a間に配置され、第1方向D1に沿って延びる。第2帯状板部4bは、第2ヒンジ4に複数設けられる。複数の第2帯状板部4bは、第2方向D2において、互いに間隔をあけて配置される。
【0073】
第2連結板部4cは、第2方向D2において隣り合う第2帯状板部4b同士を連結する。第2連結板部4cは、第2ヒンジ4に複数設けられる。第2連結板部4cは、第1方向D1において隣り合う第2スリット4a間、または、第2ヒンジ4の第1方向D1の端部に配置される。
【0074】
第3ヒンジ5は、板状構造体1に複数設けられる。第3ヒンジ5は、菱形体2の一対の対角線のうち、一方の対角線上に配置される。第3ヒンジ5は、一方の対角線が延びる第3方向D3に沿って延びる。第3ヒンジ5は、菱形体2のうち、第3方向D3と直交する方向において隣り合う一対の二等辺三角形体9の対向する底辺同士を連結する。第3ヒンジ5は、板状(シート状)をなしており、繰り返し撓み変形可能である。第3ヒンジ5は、いわゆるリビングヒンジである。
【0075】
第3ヒンジ5のうち、第3方向D3と直交する方向(以下、単に「直交方向」と呼ぶ場合がある)の両端部は、第3ヒンジ5の直交方向の両側に配置される一対の二等辺三角形体9の各底辺に接続される。第3ヒンジ5の第3方向D3に沿う長さは、直交方向の全長にわたって一定とされている。ただしこれに限らず、必要に応じて、上述した第1ヒンジ3及び第2ヒンジ4と同様の構成を第3ヒンジ5に採用してもよい。すなわち、第3ヒンジ5のうち、直交方向の両端部間に位置する中間部分は、直交方向の両端部に比べて、第3方向D3に沿う長さが長くされていてもよい。
【0076】
また、第3ヒンジ5の第3方向D3に沿う長さは、第1ヒンジ3の第2方向D2に沿う長さよりも大きい。第3ヒンジ5の第3方向D3に沿う長さは、第2ヒンジ4の第1方向D1に沿う長さよりも大きい。第1ヒンジ3の第2方向D2に沿う長さと、第2ヒンジ4の第1方向D1に沿う長さとは、互いに同じである。
【0077】
第3ヒンジ5は、第3スリット5aと、第3帯状板部5bと、第3連結板部5cと、を有する。
【0078】
第3スリット5aは、第3ヒンジ5を板厚方向に貫通する。第3スリット5aは、第3方向D3に沿って延びる。第3スリット5aは、第3ヒンジ5に複数設けられる。複数の第3スリット5aは、第3方向D3と直交する方向において、互いに間隔をあけて配置される。また複数の第3スリット5aは、第3方向D3において、互いに間隔をあけて配置される。
【0079】
第3帯状板部5bは、第3方向D3と直交する方向において隣り合う第3スリット5a間に配置され、第3方向D3に沿って延びる。第3帯状板部5bは、第3ヒンジ5に複数設けられる。複数の第3帯状板部5bは、第3方向D3と直交する方向において、互いに間隔をあけて配置される。
【0080】
第3連結板部5cは、第3方向D3と直交する方向において隣り合う第3帯状板部5b同士を連結する。第3連結板部5cは、第3ヒンジ5に複数設けられる。第3連結板部5cは、第3方向D3において隣り合う第3スリット5a間、または、第3ヒンジ5の第3方向D3の端部に配置される。
【0081】
また、第1ヒンジ3及び第2ヒンジ4は、それぞれ、板厚方向の表面側に突出する山折り形状をなしている。すなわち、第1ヒンジ3及び第2ヒンジ4にはそれぞれ、断面逆V字状又は断面逆U字状等の山折り形状の折り目が付与されている。また、第3ヒンジ5は、板厚方向の裏面側に窪む谷折り形状をなしている。すなわち、第3ヒンジ5には、断面V字状又は断面U字状等の谷折り形状の折り目が付与されている。
これにより、板状構造体1は、
図2及び
図3に示すように、外力を受けていない状態では、リビングヒンジの弾性力により自然に筒状に丸まり、筒状構造体10の形状となる。
【0082】
図1に示すように、孔部6は、板状構造体1を板厚方向に貫通する。孔部6は、例えば、長方形孔状等の多角形孔状、または十字孔状(X字孔状)等の放射形の孔状である。本実施形態では孔部6が、第3方向D3に延びる長孔状である。孔部6は、板状構造体1に複数設けられる。孔部6は、第3方向D3において隣り合う菱形体2間に配置される。また、孔部6は、第3方向D3と直交する方向において隣り合う菱形体2間に配置される。また孔部6は、第2方向D2において隣り合う第1ヒンジ3間、第1方向D1において隣り合う第2ヒンジ4間、及び、第3方向D3において隣り合う第3ヒンジ5間に位置する。
【0083】
係合部7は、板状構造体1の第1方向D1の両端部に配置され、互いに係合可能である。本実施形態では係合部7が、互いに係合可能な係合爪部7aと係合孔部7bとを有する。係合爪部7aは、板状構造体1の第1方向D1の一端部に配置され、係合孔部7bは、板状構造体1の第1方向D1の他端部に配置される。
【0084】
板状構造体1を第1方向D1に湾曲させて筒状に丸めることにより、係合爪部7aと係合孔部7bとは、互いに接触可能となり、互いに係合される。本実施形態では、係合爪部7aと係合孔部7bとが、抜け止めされた状態で係合する。
【0085】
図3に示すように、筒状構造体10は、前述した板状構造体1を筒状に丸めて構成され、少なくとも伸縮変形及び撓み変形可能とされている。具体的に、筒状構造体10は、第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5の各ヒンジ(各リビングヒンジ)が適宜撓み変形することで、より詳しくは、各ヒンジの折り目回りの撓み変形量が変化することで、筒状構造体10の中心軸(図示省略)が延びる軸方向に伸縮変形したり、前記中心軸と直交する径方向に湾曲して撓み変形したりすることができる。
【0086】
ここで、
図2および
図3は、ロール状収納構造体11の一例を示す側面図である。詳しくは、
図2に示すロール状収納構造体11は、第2方向D2の外形寸法が第1方向D1の外形寸法よりも大きい板状構造体1を、第2方向D2に湾曲させてロール状に丸めたものである。すなわち
図2は、第2方向D2に長尺とされた板状構造体1を、ロール状に巻いてコンパクトに収納した状態のロール状収納構造体11を表している。
【0087】
また
図3は、ロール状収納構造体11から板状構造体1を適宜引き出して、筒状構造体10を形成する例を示す側面図であり、ロール状収納構造体11を第2方向D2に一旦開いて平らな板状とした後、第2方向D2とは異なる第1方向D1に巻いて(湾曲させて)筒状に丸めたものである。
【0088】
本実施形態において、筒状構造体10の直径寸法(外径寸法)は、例えば、1cm以上100cm以下である。前記直径寸法は、好ましくは、5cm以上50cm以下である。
【0089】
また、筒状構造体10の直径寸法をDとして、筒状構造体10は、曲げ半径2D以下で撓み変形可能である。なお、筒状構造体10への負荷を小さく抑える観点からは、前記曲げ半径は、好ましくは1.5D以下であり、より望ましくは1.2D以下である。
【0090】
また、筒状構造体10の直径寸法をD、軸方向の全長をLとして、筒状構造体10の体積Vは、下記式(1)で表される。
V=(D/2)2×π×L・・・(1)
【0091】
筒状構造体10の重量をwとして、筒状構造体10の見掛け密度ρ1は、下記式(2)で表される。
ρ1=w/V・・・(2)
【0092】
筒状構造体10の構成材料の密度をρ0として、密度比drは、下記式(3)で表される。
dr=ρ1/ρ0・・・(3)
そして本実施形態では、密度比drが、0.01以上0.3以下である。密度比drは、好ましくは、0.03以上0.1以下である。
【0093】
図4は、筒状構造体10を立体的に編んで構成した立体編物構造体20の一例である。すなわち、立体編物構造体20は、筒状構造体10を3次元編みすることにより形成される。図示の例では、立体編物構造体20が直方体状または箱状をなしている。ただし、立体編物構造体20の形状は、
図4に示す一例に限定されない。筒状構造体10(立体編物構造体20)の編み方としては、例えば、手芸や工芸等の分野において一般的に知られる編み方を適宜用いることができる。また
図4の立体編物構造体20は、1本の筒状構造体10で構成されているが、複数の筒状構造体10を用いても良い。
【0094】
以上説明した本実施形態の板状構造体1は、第1方向D1に隣り合う菱形体(平行四辺形体)2同士を連結する第1ヒンジ3と、第2方向D2に隣り合う菱形体2同士を連結する第2ヒンジ4と、菱形体2の一対の二等辺三角形体(三角形体)9同士を連結する第3ヒンジ5と、を備えている。これらの第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5は、それぞれ、撓み変形可能とされたいわゆる「リビングヒンジ」である。撓み変形可能なリビングヒンジは、繰り返し変形させられても、その強度が安定して確保される。なお以下では、第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5を、単にヒンジと呼んだり、リビングヒンジと呼んだりする場合がある。
【0095】
そして、延在方向が互いに異なる3種類のリビングヒンジを組み合わせて構成される板状構造体1は、筒状に丸めて筒状構造体10としたときに、各ヒンジが撓み変形させられることで、少なくとも、筒の中心軸が延びる軸方向に伸縮可能とされ、かつ、中心軸と直交する径方向に撓み変形可能とされる。すなわち、複数種類のリビングヒンジを用いることによって、筒状構造体10の柔軟性が高められている。
【0096】
このように、本実施形態の板状構造体1を筒状に丸めて構成される筒状構造体10は、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保される。したがって、筒状構造体10を3次元編みして立体編物構造体20とすることが容易であり、かつ、編み上げた立体編物構造体20の強度が確保される。
【0097】
また、筒状構造体10は中空状であり、容積が大きく重量が小さい。このため、筒状構造体10を3次元編みすることで得られる立体編物構造体20は、編み上げ工数や重量の嵩張りが抑制されて、立体的で大きな構造物などに対しても適用しやすい。
【0098】
そして、使用済みとなった立体編物構造体20については、その筒状構造体10をほどくことで、筒状構造体10(中間体)を再び3次元編みして別形状の新たな立体編物構造体に再生することができる。すなわち本実施形態によれば、造形の自由度が高く、低エネルギーで再生可能な「リコンストラクション」としての資源再利用の取り組みに効果的に寄与できる。
【0099】
また、筒状構造体10とする前の板状構造体1は、板状(シート状)であるため、この板状構造体1を重ねて収納したり、ロール状に巻き取って収納してロール状収納構造体11にすることができる。このため、本発明品をコンパクトに収納でき取り扱いが簡単であって、流通や保管することが容易である。
【0100】
以上説明したように、本実施形態によれば、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体10の構成材料となる板状構造体1、この板状構造体1を筒状に丸めて構成される筒状構造体10、この筒状構造体10を3次元編みして構成される立体編物構造体20、及び、板状構造体1をロール状に巻き取ったロール状収納構造体11を提供することができる。
【0101】
また本実施形態では、第1ヒンジ3及び第2ヒンジ4が、それぞれ、板厚方向の表面側に突出する山折り形状をなし、第3ヒンジ5が、板厚方向の裏面側に窪む谷折り形状をなしている。詳しくは、第1ヒンジ3及び第2ヒンジ4にそれぞれ、断面逆V字状又は断面逆U字状等の山折り形状の折り目が付与され、第3ヒンジ5に、断面V字状又は断面U字状等の谷折り形状の折り目が付与されている。
【0102】
これにより、板状構造体1は、外力を受けていない状態では、自然に筒状に丸まり筒状構造体10の形状となる。このため、筒状構造体10を使用するときに、板状構造体1に別途加工を施して筒状に丸めるような工程は必要なく、筒状構造体10の使い勝手がよい。また、板状構造体1(筒状構造体10)をロール状にして保管することができ、搬送や取り扱いが容易である。
【0103】
また、各ヒンジに上述の所定の折り目が付与されることで、筒状構造体10が安定して伸縮変形や撓み変形等の各種変形をすることができる。
【0104】
また、本実施形態の板状構造体1は、板状構造体1を板厚方向に貫通する複数の孔部6を備えており、各孔部6は、第2方向D2において隣り合う第1ヒンジ3間、第1方向D1において隣り合う第2ヒンジ4間、及び、第3方向D3において隣り合う第3ヒンジ5間に位置している。
この場合、板状構造体1を板厚方向に貫通する孔部6が、第1ヒンジ3間、第2ヒンジ4間及び第3ヒンジ5間に配置されているため、各ヒンジに所定の折り目を付けるときに(各ヒンジの曲げ加工時に)、隣接するヒンジ同士が相互に干渉することを防止できる。
また、孔部6が設けられることで、各ヒンジが安定して撓み変形でき、板状構造体1及びこの板状構造体1を丸めた筒状構造体10の各種変形の自由度がより高められる。
【0105】
また本実施形態では、板状構造体1の板厚寸法が、0.05mm以上5mm以下である。
板状構造体1の板厚寸法が0.05mm以上であれば、第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5がそれぞれ、繰り返し撓み変形可能なリビングヒンジとして、安定して機能する。このため、板状構造体1(筒状構造体10)が繰り返し変形させられても、各ヒンジでの破断が安定して抑えられる。なお、板状構造体1の板厚寸法は、0.1mm以上であることがより好ましい。
【0106】
また、板状構造体1の板厚寸法が5mm以下であると、各ヒンジの構造を複雑化させることなく、各ヒンジを変形しやすいリビングヒンジとして安定して機能させることができる。具体的には、例えば、リビングヒンジの一部を構成するスリット(第1スリット3a、第2スリット4a、または第3スリット5a)等の数量を少なく抑えることができたり、スリット全長を短く抑えることができたりして、各ヒンジの構造が簡素化される。したがって、各ヒンジの機能を良好に維持しつつ、板状構造体1の生産性(製造効率)を高めることができる。なお、板状構造体1の板厚寸法は、2mm以下であることがより好ましい。
【0107】
また本実施形態では、板状構造体1の第1方向D1の外形寸法と、第2方向D2の外形寸法とが、互いに異なる。
この場合、特に第2方向D2の外形寸法が第1方向D1の外形寸法と比較して極めて長い場合においても、板状構造体1を第1方向D1に湾曲させて丸めることで、板状構造体1から筒状構造体10を作製することができる。一方で、この板状構造体1を第2方向D2に巻き取ることによりロール状収納構造体11を作製することができ、搬送や取り扱いが容易になる。
【0108】
また、本実施形態の板状構造体1は、板状構造体1の第1方向D1の両端部に配置され、互いに係合可能な係合部7(係合爪部7a、係合孔部7b)を備える。
この場合、板状構造体1を第1方向D1に沿って丸めて筒状構造体10としたときに、係合部7同士を係合することで、筒状構造体10の形状が安定して維持される。
【0109】
また本実施形態では、菱形体2が、第1方向D1において、3個以上16個以下の数量で配列する。
板状構造体1に、菱形体2が第1方向D1に3個以上で配列していれば、この板状構造体1を第1方向D1に丸めて筒状構造体10としたときに、各ヒンジが大きな角度で折り曲げられるようなことが抑制され、各ヒンジに作用する負荷が抑えられて、各ヒンジの破断を安定して防止できる。なお、菱形体2が第1方向D1において配列する数量は、5個以上であることがより好ましい。
【0110】
また、板状構造体1に、菱形体2が第1方向D1に16個以下で配列していれば、菱形体2の数量が少なく抑えられるとともに、各ヒンジの数量も少なく抑えられる。板状構造体1の製造時において、リビングヒンジの加工時間が全体に占める割合は大きいため、リビングヒンジの数量が少なく抑えられることで、板状構造体1の製造効率が向上する。なお、菱形体2が第1方向D1において配列する数量は、10個以下であることがより好ましい。
【0111】
また本実施形態では、板状構造体1が、単一の部材により一体に形成される。
この場合、板状構造体1の構造が簡素化され、製造が容易である。また、各ヒンジの機能がより安定して奏功される。
【0112】
また本実施形態では、筒状構造体10の直径寸法が、1cm以上100cm以下である。
筒状構造体10の直径寸法(外径寸法)が1cm以上であれば、この筒状構造体10を編み込んで立体編物構造体20とするときに、筒状構造体10が切れにくくなり、構造体の意図しない破断等が安定して抑制される。なお、筒状構造体10の直径寸法は、5cm以上であることがより好ましい。
【0113】
また、筒状構造体10の直径寸法が100cm以下であれば、例えば重機等の大型の設備を用いることなく、筒状構造体10を3次元編みすることができる。なお、筒状構造体10の直径寸法は、50cm以下であることがより好ましい。
【0114】
また本実施形態では、筒状構造体10の直径寸法をDとして、筒状構造体10は、曲げ半径2D以下で撓み変形可能である。
上記構成のように、筒状構造体10が曲げ半径2D以下で撓み変形可能であると、筒状構造体10の柔軟性が十分に確保され、筒状構造体10の各種変形の自由度がより高められる。なお、筒状構造体10への負荷を小さく抑えてより無理なく撓み変形させるには、曲げ半径1.5D以下であることが好ましく、曲げ半径1.2D以下であることがより望ましい。
【0115】
また本実施形態では、筒状構造体10の密度比drが、0.01以上0.3以下である。
密度比drが0.01以上であれば、筒状構造体10の強度が安定して確保される。筒状構造体10を編み上げて立体編物構造体20としたときに、筒状構造体10が安定して自重に耐えることができ、構造体の破損が抑制される。なお、密度比drは、0.03以上であることがより好ましい。
【0116】
また、密度比drが0.3以下であれば、筒状構造体10を編み上げて立体編物構造体20としたときに、構造体全体としての重量が大きくなり過ぎることを抑制できる。したがって、やはり筒状構造体10が安定して自重に耐えることができ、構造体の破損が抑制される。なお、密度比drは、0.1以下であることがより好ましい。
【0117】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0118】
第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5の各ヒンジのスリット3a,4a,5a、帯状板部3b,4b,5b、及び連結板部3c,4c,5cの数量や形状、配置等は、
図1に示した例に限らない。
【0119】
また、第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5のうち少なくとも1つが、前述の実施形態で説明した構成以外のリビングヒンジの構成を備えていてもよい。例えば、第1ヒンジ3、第2ヒンジ4及び第3ヒンジ5のうち少なくとも1つが、スリット等を有さない単なる薄板状等であってもよい。
【0120】
また、孔部6の形状は、前述の実施形態で説明した多角形孔状または放射形の孔状に限らない。孔部6は、例えば長円孔状や楕円孔状等であってもよい。
【0121】
また特に図示しないが、前述の実施形態で説明した菱形体2に代えて、広義の平行四辺形状をなす平行四辺形体を用いてもよい。すなわち、平行四辺形体が、第1方向D1に延びる互いに平行な一対の第1辺と、前記第1辺とは長さが異なり第2方向D2に延びる互いに平行な一対の第2辺と、を有していてもよい。この場合、前述の実施形態で説明した二等辺三角形体9は、広義の三角形状をなす三角形体とされる。平行四辺形体は、一対の三角形体を有し、第3ヒンジは、一対の三角形体の対向する底辺同士を連結する。
ただし、前述の実施形態のように、狭義の平行四辺形体としての(4辺の長さが等しい)菱形体2を用いた場合には、板状構造体1を丸めて円筒状としたときに、周方向の両端部の角部同士が同じ位置に配置されて(ちょうど重なり)円筒形となるため、筒状構造体10として取り扱いやすく、より好ましい。
【0122】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、伸縮変形や撓み変形等の各種変形に対する自由度が高く、かつ繰り返し変形させても強度が安定して確保され、3次元編みに適した筒状構造体の構成材料となる板状構造体、この板状構造体を筒状に丸めて構成される筒状構造体、この筒状構造体を3次元編みして構成される立体編物構造体、及び、板状構造体をロール状に巻き取ったロール状収納構造体を提供することができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0124】
1…板状構造体、2…菱形体(平行四辺形体)、3…第1ヒンジ、4…第2ヒンジ、5…第3ヒンジ、6…孔部、7…係合部、9…二等辺三角形体(三角形体)、10…筒状構造体、11…ロール状収納構造体、20…立体編物構造体、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向