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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142489
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054641
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 景太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 紗織
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA03
4B055BA07
4B055BA21
4B055BA36
4B055CB08
4B055CC29
4B055DB14
4B055EA10
4B055GB08
4B055GB25
4B055GC32
4B055GC33
4B055GC40
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】調理温度の異なる複数の調理工程を連続して実施した場合における調理時間の延長を抑制できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】加熱調理器は、本体と、本体に収納される容器と、容器を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、容器の内部の気体を外部に排出する減圧部と、容器の内部と外部とを連通又は遮断する開閉弁と、加熱部、減圧部及び開閉弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1調理工程における第1調理温度が、第1調理工程の後に実施される第2調理工程における第2調理温度よりも高い場合、第1調理工程と第2調理工程との間に、減圧部によって容器の内部の気体を外部に排出するとともに、開閉弁によって容器の内部と外部とを連通させて容器の内部に外部の空気を導入する吸排気工程を実施する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収容される容器と、
前記容器を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器の内部の気体を外部に排出する減圧部と、
前記容器の内部と外部とを連通又は遮断する開閉弁と、
前記加熱部、前記減圧部及び前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1調理工程における第1調理温度が、前記第1調理工程の後に実施される第2調理工程における第2調理温度よりも高い場合、前記第1調理工程と前記第2調理工程との間に、前記減圧部によって前記容器の内部の気体を外部に排出するとともに、前記開閉弁によって前記容器の内部と外部とを連通させて前記容器の内部に外部の空気を導入する吸排気工程を実施する加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1調理工程終了時の、前記容器の温度である容器温度又は前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度に基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1調理温度、前記第2調理温度、及び前記第1調理温度から前記第2調理温度を減算した温度差の少なくとも何れか一つに基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1調理工程中の、前記容器の温度である容器温度、前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度、及び前記容器温度から前記調理空間温度を減算した温度差の少なくとも何れか一つに基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記容器の温度である容器温度、前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度、及び前記吸排気工程を開始してから経過した時間である吸排気時間の少なくとも何れか一つに基づき、前記吸排気工程を終了するか否かを判断する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御部は、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下となった場合に前記吸排気工程を終了する請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御部は、前記容器温度又は前記調理空間温度に応じて前記吸排気時間を増減する請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記吸排気時間が経過した後も、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下でない場合、追加時間の間、前記吸排気工程を継続し、
前記追加時間が経過した場合は、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下でなくても前記吸排気工程を終了する請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第2調理工程が減圧調理の場合、前記第1調理工程及び前記第2調理工程の両方が前記減圧調理の場合、又は前記第2調理工程が保温工程の場合、前記吸排気工程を実施しない、又は前記吸排気時間を基準時間よりも短くする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記蓋体には、内蓋が取り付けられ、
前記内蓋には、
前記減圧部と前記容器の内部とを連通する排気孔と、
前記開閉弁と前記容器の内部とを連通する給気孔と、が別々に設けられている請求項1~9の何れか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品の加熱調理を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に容器を収容自在に構成されている本体と、本体内の容器を収容する部分を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、から構成される加熱調理器が知られている。このような加熱調理器では、加熱部の火力を制御することで、火力の異なる複数の調理工程又は複数の調理モードを実行することができる。例えば、特許文献1には、昇温工程及び低温維持工程などの複数の工程、又は被調理物の種類に応じた複数のモードを実行する加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-143389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱部の火力の異なる複数の工程を組み合わせて調理を行う場合、前の調理工程の調理温度が、後の調理工程の調理温度よりも高いと、後の調理工程を行う前に容器内の温度が自然に低下するまで待機する必要がある。被調理物の量が多い場合又は調理温度の差が大きい場合は、待機時間が長くなり、全体の調理時間が長くなってしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、調理温度の異なる複数の調理工程を連続して実施した場合における調理時間の延長を抑制できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加熱調理器は、本体と、本体に収納される容器と、容器を覆う蓋体と、容器を加熱する加熱部と、容器の内部の気体を外部に排出する減圧部と、容器の内部と外部とを連通又は遮断する開閉弁と、加熱部、減圧部及び開閉弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1調理工程における第1調理温度が、第1調理工程の後に実施される第2調理工程における第2調理温度よりも高い場合、第1調理工程と第2調理工程との間に、減圧部によって容器の内部の気体を外部に排出するとともに、開閉弁によって容器の内部と外部とを連通させて容器の内部に外部の空気を導入する吸排気工程を実施する。
【発明の効果】
【0007】
本開示における加熱調理器によれば、第1調理工程と第2調理工程との間に吸排気工程を実施することで、容器の内部の温度を強制的に低下させることができるため、調理時間の延長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る加熱調理器の外観斜視図である。
図2】実施の形態1に係る加熱調理器の断面模式図である。
図3】実施の形態1に係る蓋体の内部構造を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る加熱調理器の吸排気構造を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る加熱調理器の制御ブロック図である。
図6】実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1における吸排気工程の流れを示すフローチャートである。
図8】実施の形態1に係る加熱調理器における容器温度と、減圧部、開閉弁及び加熱部の動作とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
(加熱調理器100の構成)
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100の外観斜視図である。図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の断面模式図である。図1及び図2に示すように、本実施の形態の加熱調理器100は、外観形状が概ね有底筒状である本体1と、本体1の上面を覆う蓋体2とを備える。本体1及び蓋体2は、加熱調理器100の外郭を構成する。蓋体2は、本体1にヒンジ部11を介して開閉自在に取り付けられ、本体1内の容器収容部12を覆うことができる。
【0011】
図2に示すように、本体1は、有底筒状に形成され、内部に容器収容部12を備えている。容器収容部12は本体1の上面側に開口を有し、容器6は、容器収容部12に着脱可能に収納される。本体1の内部であって容器収容部12の下方には、容器6を加熱するための加熱部13と、容器6の温度を測定する底面温度センサ14が設けられている。
【0012】
加熱部13は、例えば渦巻状又は螺旋状に形成され、高周波電流が供給される誘導加熱コイルからなる。加熱部13は、容器6の下方において、容器6の底面と対向するように配置されている。加熱部13に電流が流れると、電流によって生じる磁束により、容器6に渦電流が生じる。そして、渦電流によって容器6に生じるジュール熱により、容器6内の被調理物が加熱される。なお、加熱部13は、容器6の底面に直接接触して加熱するヒータであってもよい。
【0013】
底面温度センサ14は、例えばサーミスタである。底面温度センサ14は、バネ等の弾性手段(図示せず)によって上方に付勢されることで、容器収容部12に収容された容器6の底面に接して容器6の底面の温度を測定することができる。以降の説明において、底面温度センサ14で測定された温度を「容器温度Tb」とする。底面温度センサ14によって測定された容器温度Tbは、制御部5に出力される。なお、底面温度センサ14の具体的構成はサーミスタに限定されず、容器6に接触して温度を測定する接触式温度センサのほか、例えば赤外線センサ等の容器6の温度を非接触で測定する非接触式温度センサであってもよい。
【0014】
容器6は、被調理物である食材及び調味料等が収容されるものであり、容器収容部12に着脱可能に収容されている。容器6は、有底筒形状を有し、例えば誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。本実施の形態の容器6は、平面視で横長の楕円形状を有しているが、容器6の形状はこれに限定されるものではなく、平面視で円形状であってもよい。
【0015】
容器6の上端には、開口に沿って外側に向かって突出したフランジ部6aが形成されている。容器6のフランジ部6aと内蓋21の蓋パッキン22とが当接することで、容器6の内部に調理空間60が形成される。容器6が平面視において楕円形状の場合、内蓋21とフランジ部6aとのずれは、短軸方向よりも長軸方向で出やすい。そのため、フランジ部6aの長軸側の端部の幅を大きく形成することで、内蓋21のずれを吸収でき、内蓋21がずれた場合にも調理空間60の密閉性を担保することができる。
【0016】
容器6は、容器収容部12に収容された状態において、本体1の上面であって容器収容部12の開口の周囲に設けられた容器支持体12aに支持されている。容器支持体12aは、加熱状態の時に容器6の底部よりも比較的温度が低いフランジ部6aに当接して容器6を支持する。容器支持体12aは、耐熱性の高い樹脂で構成されているとよい。
【0017】
図1及び図2に示すように、本体1は、略楕円筒柱状の前方部分と、前方部分の側面から短軸方向に向かって突出した直方体状の後方部分とを有する形状になっている。本体1の後方部分には、加熱調理器100の動作を制御する制御部5が収容されている。制御部5は、制御を実現する制御回路のようなハードウェアで構成されていてもよいし、プログラムが記憶されたメモリと、プログラムを実行するCPUなどのプロセッサとで構成されてもよい。制御部5による加熱調理器100の制御については、後ほど詳述する。
【0018】
蓋体2は、本体1の上面を覆うように構成され、本体1が備える開放ボタン15によって開放される。蓋体2の本体1側の面には、内蓋21が取り付けられている。蓋体2が閉じられた状態において、内蓋21の蓋パッキン22と容器6のフランジ部6aとが当接することで、調理空間60が密閉される。
【0019】
図1に示すように、蓋体2の上面には、加熱調理器100を操作するための操作部31と加熱調理器100の状態及び操作のための情報が表示される表示部32とが設けられている。また、蓋体2の上面のヒンジ部11側には、容器6の内部の調理空間60と外部の空間とを連通可能にする通気口33が設けられている。
【0020】
操作部31は、加熱調理に関するユーザーからの指示入力を受け付けるものであり、例えば、ハードウェアボタン又はタッチパネルで構成される。操作部31は、例えば、調理の開始、取消、加熱時間、火力の強弱(調理温度)、調理工程、食材の種類、又は調理方法に関する設定を受け付ける。本実施の形態の加熱調理器100は、調理空間60内の圧力をそのままの状態で調理する常圧調理と、調理空間60内の圧力を低減させて調理を行う減圧調理と、を実施することができる。また、本実施の形態の加熱調理器100は、複数の調理工程を連続して実施することができる。複数の調理工程を実施する場合、ユーザーは操作部31を操作して、各調理工程の調理温度と、調理時間と、調理圧力とをそれぞれ設定する。操作部31に入力された指示及び設定情報は、制御部5へ送信される。
【0021】
表示部32は、操作部31において設定された設定情報、加熱調理の進行状態、及びユーザーへの通知等を表示する。表示部32は、液晶画面、発光素子又は有機EL(Electro Luminescence)画面で構成される。表示部32の表示内容は、制御部5によって制御される。
【0022】
なお、図1では、操作部31及び表示部32は、蓋体2の上面に設けられているが、操作部31及び表示部32の位置はこれに限定されず、少なくとも一方を本体1に配置してもよい。また、操作部31及び表示部32の少なくとも一方の機能は、加熱調理器100とは別の装置によって実現されてもよい。例えば、加熱調理器100はスマートフォン等の通信端末と通信する通信装置を備え、スマートフォン等の通信端末にて、操作部31に対する操作入力を受け付けるとともに、表示部32と同等の表示を行ってもよい。
【0023】
図2に示すように、蓋体2の内部には、内部温度センサ23が設けられている。内部温度センサ23は、例えばサーミスタで構成され、容器6の内部に形成される調理空間60の温度を測定する。内部温度センサ23は、蓋体2に取り付けられ、一部が内蓋21の孔部に挿入される。以降の説明において、内部温度センサ23で測定された温度を「調理空間温度Ts」とする。内部温度センサ23で測定された調理空間温度Tsは、制御部5に出力される。なお、内部温度センサ23の具体的構成はサーミスタに限定されず、その他のセンサであってもよい。
【0024】
図3は、実施の形態1に係る蓋体2の内部構造を説明する図である。図4は、実施の形態1に係る加熱調理器100の吸排気構造を説明する図である。図3及び図4に示すように、蓋体2の内部には、容器6の内部の気体(空気及び/又は蒸気)を吸排気するための構成として、減圧ポンプ41と、経路切換弁42と、カートリッジ43と、蒸気排出弁44と、開閉弁45と、圧力センサ46とが設けられている。なお、以降の説明において減圧ポンプ41と経路切換弁42とをまとめて「減圧部40」ということがある。
【0025】
減圧ポンプ41は、調理空間60から気体を吸入するポンプである。減圧ポンプ41は、2つの接続口を備えており、接続口の一方を介して経路切換弁42から空気を吸入し、吸入した空気を接続口の他方から排出して、カートリッジ43に送る。
【0026】
経路切換弁42は、例えば三方向電磁弁であり、調理空間60から気体を吸入してカートリッジ43を介して調理空間60の外に排出する第1経路と、吸入口42aから空気を吸入してカートリッジ43に排出する第2経路とを切り換えるよう構成されている。
【0027】
経路切換弁42は、無通電状態においては、第2経路に切り換えられている。この場合、経路切換弁42は、吸入口42aと減圧ポンプ41とを連通させる。このとき、減圧ポンプ41を作動させると、減圧ポンプ41は、蓋体2の内部の空間にある空気、つまり外気を吸入する。これにより、調理空間60の外の空気が経路切換弁42に導入され、減圧ポンプ41を経てカートリッジ43に流入する。これにより、経路切換弁42及び減圧ポンプ41の内部の水滴がカートリッジ43に排出される。また、経路切換弁42が第2経路に切り換えられている状態(無通電状態)においては、調理空間60は外部の空間と遮断され、密閉状態が維持される。
【0028】
一方、経路切換弁42は、通電状態においては第1経路に切り替えられる。この場合、経路切換弁42は、減圧ポンプ41と調理空間60とを連通する。このとき、減圧ポンプ41を作動させると、減圧ポンプ41は、調理空間60の気体を吸入する。減圧ポンプ41が吸入した調理空間60の空気は、カートリッジ43に送られ、通気口33から外部に排出される。
【0029】
カートリッジ43は、内部に空間が設けられており、減圧ポンプ41、経路切換弁42、蒸気排出弁44及び開閉弁45に付着した結露水を貯留する。カートリッジ43の上部には、蓋体2の上面に配置される通気口33が設けられている。カートリッジ43に貯留された結露水は、本体1の結露導管(不図示)に排出される。
【0030】
蒸気排出弁44は、調理空間60内の気体を排出する弁である。蒸気排出弁44は、通常は閉じており、調理空間60の圧力が予め決められた値を超えると開口するように構成されている。蒸気排出弁44を備えることで、調理空間60の圧力が過剰に大きくなることが抑制される。また、蒸気排出弁44は、調理空間60が低圧、つまり大気圧よりも低くなると、調理空間60が密閉状態となるよう構成されている。
【0031】
開閉弁45は、調理空間60とカートリッジ43との間に接続されており、調理空間60と外部の空間とを連通又は遮断する。開閉弁45は、調理空間60を減圧する際には流入する外気を遮断し、調理空間60を減圧された状態から常圧に昇圧する際には外部の空間から外気を取り込むために開放される。また、開閉弁45は、常圧状態で調理する場合には、調理空間60から蒸気を排出するための開口となる。開閉弁45は、内蓋21に設けられた給気孔21cを介して、調理空間60と連通される。開閉弁45は、例えば通電によって開閉状態が切り換えられるラッチ式の弁体を有する。開閉弁45は、閉状態のときに通電されると開状態になり、開状態のときに通電されると閉状態になる。
【0032】
圧力センサ46は、調理空間60内の圧力を測定する。圧力センサ46は、蓋体2に取り付けられ、一部が内蓋21の孔部21bに挿入される。圧力センサ46で測定された調理空間60の圧力は、制御部5に出力される。
【0033】
(加熱調理器100の動作)
続いて、加熱調理器100の動作について説明する。上記のように、本実施の形態の加熱調理器100は、複数の調理工程を連続して実施することができる。例えば、第1調理温度T1、第1調理時間t1、常圧に設定された第1調理工程の後に、第2調理温度T2、第2調理時間t2、減圧に設定された第2調理工程を実施することができる。具体例として、「ローストビーフ」を調理する場合、まずは調味液に含まれるアルコール(料理酒、ワイン)を煮詰め、その後低温加熱することが望ましい。この場合は、第1調理工程の調理温度を100℃とし、調理時間を10分とし、調理圧力を常圧とすることで、調味液に含まれる水分を蒸発させることができる。また、第2調理工程の調理時間を65℃とし、調理時間を20分とし、調理圧力を減圧とすることで、減圧状態で低温加熱を行うことができる。
【0034】
このように、複数の調理工程を連続して行う場合であって、第1調理工程の第1調理温度T1が、第2調理工程の第2調理温度T2よりも高い場合、調理空間60の温度が第2調理温度T2に自然に下がるのを待つと、調理時間の延長を招いてしまう。また、温度低下を待つ間に食材が過加熱状態となり、火の入りすぎにより硬くなることがある。例えば、「ローストビーフ」を調理する例の場合、容器6の温度が100℃から65℃に自然に低下するのを待つ間に、肉に火が入りすぎて硬くなってしまう。そこで、本実施の形態の加熱調理器100は、第1調理工程と第2調理工程との間に、調理空間60の温度を強制的に低下させるための吸排気工程を実施する。
【0035】
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器100の制御ブロック図である。図5に示すように、制御部5は、記憶部51と、加熱制御部52と、吸排気制御部53とを有する。記憶部51は、例えば、ROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、RAM等の揮発性の半導体メモリ、又はHDD等である。加熱制御部52及び吸排気制御部53は、制御部5のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、加熱制御部52及び吸排気制御部53の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0036】
記憶部51は、制御部5が実行するプログラム及びプログラムに用いられる情報を記憶する。例えば、記憶部51は、操作部31を介して入力された設定情報、並びに各調理工程及び吸排気工程において閾値として用いられる複数の温度、圧力及び時間などを記憶する。
【0037】
加熱制御部52は、操作部31に入力された設定情報、並びに底面温度センサ14及び内部温度センサ23により測定される温度に基づいて、加熱部13を制御し、容器6を加熱する。具体的には、加熱制御部52は、底面温度センサ14又は内部温度センサ23によって測定される温度が、設定された温度となるように、加熱部13への出力電流を制御する。
【0038】
吸排気制御部53は、操作部31に入力された設定情報及び圧力センサ46により測定される圧力に応じて、減圧部40及び開閉弁45を制御し、減圧調理を実施する。吸排気制御部53による制御について、図4を参照して説明する。図4の点線矢印は、排気及び給気の流れを示している。吸排気制御部53は、減圧調理を行う場合、開閉弁45を閉じ、調理空間60を加熱調理器100の外部の空間と遮断した密閉状態とする。その後、吸排気制御部53は、経路切換弁42を第1経路に切り換える。これにより、内蓋21に設けられた排気孔21aを介して、調理空間60と減圧ポンプ41とが連通する。調理空間60と減圧ポンプ41とを連通した後、吸排気制御部53は、減圧ポンプ41を駆動する。減圧ポンプ41が駆動されると、調理空間60の気体が、排気孔21a、経路切換弁42、減圧ポンプ41、及びカートリッジ43の順番に流れ、通気口33から加熱調理器100の外部に排出される。これにより、調理空間60内が減圧される。
【0039】
圧力センサ46によって測定される調理空間60内の圧力が目的の圧力となった場合、吸排気制御部53は、減圧ポンプ41を停止し、経路切換弁42を第2経路に切り替える。そして、吸排気制御部53は、減圧調理時間が経過すると、調理空間60を常圧に戻すため、開閉弁45を開とし、調理空間60と加熱調理器100の外部の空間とを連通させる。これにより、外部の空気が通気口33から、カートリッジ43、開閉弁45、内蓋21の給気孔21cの順番に流れ、調理空間60に供給される。その結果、調理空間60が常圧に戻る。
【0040】
また、吸排気制御部53は、操作部31に入力された設定情報、並びに底面温度センサ14又は内部温度センサ23により測定される温度に基づいて、減圧部40及び開閉弁45を制御し、吸排気工程を実施する。吸排気工程において、吸排気制御部53は、経路切換弁42を第1経路に切り換えて、減圧ポンプ41を駆動し、調理空間60の気体を容器6の外部に排出するとともに、開閉弁45を開とし、外部の空気を容器6の内部(調理空間60)に導入する。
【0041】
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、第1調理工程の後に、第2調理工程が実施される場合を例に説明する。まず、密閉確認工程が実施される(S1)。密閉確認工程では、吸排気制御部53によって、開閉弁45が閉じられ、経路切換弁42が第1経路に切り換えられ、減圧ポンプ41が駆動される。そして、圧力センサ46により測定される圧力に基づき、調理空間60が密閉されているか否かが確認される。密閉が確認されると、吸排気制御部53によって、減圧ポンプ41が停止され、経路切換弁42が第2経路に切り換えられ、開閉弁45が開かれる。
【0042】
密閉確認工程が終了すると、昇温工程が実施される(S2)。昇温工程では、加熱部13に高周波電流が供給され、底面温度センサ14によって測定された容器温度Tbが第1調理温度T1になるまで容器6が加熱される。そして、容器温度Tbが第1調理温度T1に達すると、第1調理工程が実施される(S3)。第1調理工程では、設定された調理温度、調理時間、及び調理圧力を満たすように、加熱部13、減圧部40、及び開閉弁45が制御される。
【0043】
そして、第1調理工程が終了すると、第1調理工程における第1調理温度T1が、続いて実施する第2調理工程の第2調理温度T2よりも高いか否かが判断される(S4)。そして、第1調理温度T1が第2調理温度T2以下の場合(S4:NO)、そのまま第2調理工程が実施される(S8)。一方、第1調理温度T1が第2調理温度T2より高い場合(S4:YES)、吸排気工程の開始条件が満たされるか否かが判断される(S5)。吸排気工程の開始条件は、下記の開始条件(1)~(7)の少なくとも何れか一つである。
【0044】
開始条件(1)は、第1調理工程終了時の容器温度Tbが第1閾値温度Tth1以上であること(Tb≧Tth1)である。第1閾値温度Tth1は、例えば70℃である。第1調理工程後の容器温度Tbが第1閾値温度Tth1未満である場合には、自然な温度低下を待った場合も調理時間の延長にはつながらない。そのため、第1調理工程終了時の容器温度Tbが第1閾値温度Tth1以上である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は吸排気工程を実施しない。
【0045】
開始条件(2)は、第1調理温度T1が第2閾値温度Tth2以上であること(T1≧Tth2)である。第2閾値温度Tth2は、例えば75℃である。第1調理温度T1が第2閾値温度Tth2未満の場合には、自然な温度低下を待った場合も調理時間の延長にはつながらない。そのため、第1調理温度T1が第2閾値温度Tth2以上である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は吸排気工程を実施しない。
【0046】
開始条件(3)は、第2調理温度T2が第3閾値温度Tth3未満であること(T2<Tth3)である。第3閾値温度Tth3は、例えば80℃である。第2調理温度T2が第3閾値温度Tth3以上の場合には、自然な温度低下を待った場合も調理時間の延長にはつながらない。そのため、第2調理温度T2が第3閾値温度Tth3未満である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は吸排気工程を実施しない。
【0047】
開始条件(4)は、第1調理温度T1から第2調理温度T2を減算した温度差が第4閾値温度Tth4以上であること((T1-T2)≧Tth4)である。第4閾値温度Tth4は、例えば15℃である。第1調理温度T1と第2調理温度T2との温度差が第4閾値温度Tth4未満の場合には、自然な温度低下を待った場合も調理時間の延長にはつながらない。そのため、第1調理温度T1から第2調理温度T2を減算した温度差が第4閾値温度Tth4以上である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は吸排気工程を実施しない。
【0048】
開始条件(5)は、第1調理工程中の容器温度Tbが第5閾値温度Tth5以上であること(Tb≧Tth5)である。第5閾値温度Tth5は、例えば75℃である。第1調理工程中の容器温度Tbが第5閾値温度Tth5未満である場合、第1調理工程において容器6内の食材が高温になっていないと判断できる。そのため、第1調理工程中の容器温度Tbが第5閾値温度Tth5以上である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は自然な温度低下を待っても調理時間の延長にはつながらないため吸排気工程を実施しない。
【0049】
開始条件(6)は、第1調理工程中に内部温度センサ23で測定された調理空間温度Tsが第6閾値温度Tth6以上であること(Ts≧Tth6)である。第6閾値温度Tth6は、例えば80℃である。第1調理工程中の調理空間温度Tsが第6閾値温度Tth6未満である場合、第1調理工程において容器6内の食材が高温になっていないと判断できる。そのため、第1調理工程中の調理空間温度Tsが第6閾値温度Tth6以上である場合のみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は自然な温度低下を待っても調理時間の延長にはつながらないため吸排気工程を実施しない。
【0050】
開始条件(7)は、第1調理工程中の容器温度Tbから調理空間温度Tsを減算した温度差が第7閾値温度Tth7未満であること((Tb-Ts)<Tth7)である。第7閾値温度Tth7は、例えば15℃である。第1調理工程後の容器温度Tbと調理空間温度Tsとの温度差が第7閾値温度Tth7以上である場合、容器6内の食材が高温になっていないと判断できる。そのため、容器温度Tbから調理空間温度Tsを減算した温度差が第7閾値温度Tth7未満であるのみ吸排気工程を実施し、そうでない場合は自然な温度低下を待っても調理時間の延長にはつながらないため吸排気工程を実施しない。
【0051】
上記開始条件(1)~(7)の何れか一つ、又は複数の組み合わせが吸排気工程の開始条件として用いられる。なお、第1調理温度T1及び第2調理温度T2は、調理開始前に設定される、又は選択された調理メニューによって決まるため、開始条件(2)~(4)の何れかを開始条件とする場合は、開始条件を満たすか否かの判断(S4)を調理開始時に行ってもよい。また、開始条件(1)においては、容器温度Tbに替えて調理空間温度Tsを用いてもよい。
【0052】
吸排気工程の開始条件が満たされる場合(S5:YES)、吸排気工程が実施される(S6)。図7は、実施の形態1における吸排気工程の流れを示すフローチャートである。吸排気工程において、吸排気制御部53は、まず、開閉弁45を開とする(S61)。ここで、第1調理工程において開閉弁45が開となっている場合はそのまま開状態が維持され、第1調理工程において開閉弁45が閉となっている場合は、開閉弁45に通電することで開に切り換えられる。そして、吸排気制御部53は、経路切換弁42を第1経路に切り換え(S62)、減圧ポンプ41を駆動する(S63)。これにより、調理空間60の気体が加熱調理器100の外部に排出されるとともに、外部の空気が調理空間60に供給される。これにより、調理空間60の高温の気体が低温の外部の空気と入れ替わるため、調理空間60内の温度を自然な温度低下よりも短時間で低下させることができる。
【0053】
そして、吸排気工程の終了条件が満たされるか否かが判断される(S64)。終了条件は、下記の終了条件(1)~(3)の少なくとも何れか一つである。
【0054】
終了条件(1)は、吸排気工程が開始されてから吸排気時間taが経過したことである。吸排気時間taは、例えば5分である。吸排気時間taは、予め設定され記憶部51に記憶されている。なお、吸排気制御部53は、第1調理工程終了時の容器温度Tb又は調理空間温度Tsに応じて吸排気時間taを増減してもよい。例えば、吸排気制御部53は、容器温度Tb又は調理空間温度Tsが第8閾値温度Tth8(例えば80℃)より高い場合は、吸排気時間taを基準時間(例えば5分)よりも長くしてもよい。また、吸排気制御部53は、容器温度Tb又は調理空間温度Tsが第9閾値温度Tth9(例えば65℃)以下の場合は、吸排気時間taを基準時間(例えば5分)よりも短くしてもよい。
【0055】
終了条件(2)は、容器温度Tbが第2調理温度T2に達したこと(Tb≧T2)である。容器温度Tbが第2調理温度T2にした場合は、これ以上温度を下げる必要が無いため、吸排気工程を終了する。
【0056】
終了条件(3)は、容器温度Tbが第2調理温度T2に近づいたこと(Tb≧T2+α)である。αは、例えば3℃である。この場合も、これ以上温度を下げる必要が無いため、吸排気工程を終了する。
【0057】
上記終了条件(1)~(3)の何れか一つ、又は複数の組み合わせが吸排気工程の終了条件として用いられる。例えば、終了条件(1)と終了条件(2)とを組み合わせ、吸排気工程が開始されてから吸排気時間taが経過し、且つ容器温度Tbが第2調理温度に達したこと(Tb≧T2)を終了条件としてもよい。この場合、吸排気時間taが経過したにもかかわらず、容器温度Tbが第2調理温度T2に達していない場合には、さらに追加時間tbが経過することを追加の終了条件として設けてもよい。追加時間tbは、例えば5分である。吸排気時間taが経過した場合も、追加時間tbだけ吸排気工程を延長することで、食材への過加熱を防止することができる。また、追加時間tbが経過した場合、容器温度Tbが第2調理温度T2に達していなくても、終了条件が満たされたと判断する。また、終了条件(2)及び(3)においては、容器温度Tbに替えて調理空間温度Tsを用いてもよい。
【0058】
吸排気工程の終了条件が満たされない場合(S64:NO)、吸排気工程を継続する。一方、吸排気工程の終了条件が満たされる場合(S64:YES)、吸排気制御部53は、減圧ポンプ41を停止し(S65)、経路切換弁42を第2経路に切り換える(S66)。そして、吸排気制御部53は、開閉弁45を閉じる(S67)。これにより、調理空間60からの排気及び調理空間60への外気の導入が停止され、吸排気工程が終了する。
【0059】
図6に戻って、開始条件が満たされない場合は(S4:NO)、容器温度Tbが第2調理工程における第2調理温度T2に自然に低下するまで待機する待機工程が実施される(S6)。吸排気工程又は待機工程が終了すると、第2調理工程が実施される(S8)。第2調理工程では、設定された調理温度、調理時間、及び調理圧力を満たすように、加熱部13、減圧部40、及び開閉弁45が制御される。
【0060】
図8は、実施の形態1に係る加熱調理器100における容器温度Tbと、減圧部40、開閉弁45及び加熱部13の動作とを示す図である。図8においては、調理メニューとして「ローストビーフ」が選択された場合の容器温度Tb及び各部の動作を示している。また、図8の破線は、吸排気工程を実施せずに、待機工程を実施する場合の自然な温度低下を示している。
【0061】
図8に示すように、まず密閉確認工程が実施され、その後昇温工程において、容器温度Tbが第1調理温度T1まで上昇する。そして、常圧での第1調理工程が実施される。第1調理工程が終了すると、吸排気工程が実施される。ここでは、開閉弁45が開とされ、経路切換弁42が通電されて第1経路に切り換えられ、減圧ポンプ41が駆動される。これにより、調理空間60の気体が外部に排出されるとともに、外部の気体が調理空間60に導入される。これにより、破線で示す自然の温度低下の場合よりも短時間で容器温度Tbを第2調理温度T2に低下させることができる。その後は、減圧状態での第2調理工程が実施される。
【0062】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100では、第1調理工程における第1調理温度が第2調理工程の第2調理温度よりも高い場合は、第1調理工程と第2調理工程との間に吸排気工程を実施し、容器6の温度を強制的に低下させる。これにより、調理温度の異なる複数の調理工程を連続して実施する場合において、調理時間の延長を抑制することができる。また、自然な温度低下を待機することによる食材の過加熱を抑制することができ、火の入りすぎにより食材が硬くなることを防ぐことができる。
【0063】
また、調理時間の延長につながる開始条件を満たす場合にのみ吸排気工程を実施することで、不要な吸排気工程の実施を抑制できる。これにより、減圧部40の劣化を防ぎ、減圧部40の寿命を延ばすことができる。
【0064】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1調理工程が常圧調理、第2調理工程が減圧調理の場合を例に説明したが、第1調理工程及び第2調理工程が常圧調理か、減圧調理かにかかわらず、第1調理工程と第2調理工程との間に吸排気工程を実施することができる。また、上記実施の形態では、2つの調理工程を連続して実施する場合を例に説明したが、3つ以上の調理工程を連続して実施する場合も、連続する2つの調理工程の間で、開始条件を満たす場合に吸排気工程を実施することができる。
【0065】
また、吸排気工程を実施するか否かの開始条件は、上記実施の形態の例に限定されない。例えば、加熱調理器100が配置される室温Trが低い場合は、容器6の温度が早く低下することが想定されるため、室温Trが第10閾値温度Tth10以上であること(Tr≧Tth10)を開始条件としてもよい。第10閾値温度Tth10は、例えば20℃である。室温Trは、加熱調理器100の本体1又は蓋体2の外面に室温センサを設けて測定してもよいし、制御部5が外部機器と通信を行う通信部を備え、加熱調理器100とは別に設けられた室温センサにて測定された室温Trを受信してもよい。
【0066】
又は、選択された調理メニューに応じて、吸排気工程を実施するか否かを判断してもよい。この場合は、調理メニューごとに、予め吸排気工程を実施するか否かが設定されているものとする。この場合は、調理メニューが選択された時点で開始条件を満たすか否かが判断できるため、図6のステップS4及びS5の処理を省略することができる。
【0067】
また、吸排気制御部53は、吸排気工程の開始条件が満たされる場合であっても、吸排気工程の実施が加熱調理又は被調理物に何らかの影響を与えることが想定される場合は、吸排気工程を実施しないよう制御してもよい。例えば、第2調理工程が減圧調理の場合、減圧制御により気圧が下がり、飽和水蒸気圧の低下現象によって水温も下がる。そのため、開始条件が満たされた場合も、第2調理工程が減圧調理の場合は吸排気工程を不実施としてもよい。又は、第1調理工程及び第2調理工程の何れもが減圧調理を行う場合、第1調理工程後に吸排気工程を実施することで、調理空間60が常圧になり、再度第2調理工程で減圧させる必要が生じる。そのため、第1調理工程及び第2調理工程の何れもが減圧調理を行う場合は、開始条件が満たされた場合も、吸排気工程を不実施としてもよい。又は、第2調理工程が保温工程の場合、吸排気工程によって調理空間60内に外気が取り込まれ、外気に含まれる雑菌が保温工程において増殖する恐れがある。そのため、第2調理工程が保温工程の場合も、開始条件が満たされたとしても、吸排気工程を不実施としてもよい。保温工程は、例えば60℃以下の低温に維持される工程である。もしくは、上記の何れかの場合は、吸排気工程を不実施とすることに替えて、吸排気工程を実施した上で、吸排気時間taを基準時間よりも短くしてもよい。
【0068】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0069】
(付記1)
本体と、
前記本体に収容される容器と、
前記容器を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器の内部の気体を外部に排出する減圧部と、
前記容器の内部と外部とを連通又は遮断する開閉弁と、
前記加熱部、前記減圧部及び前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1調理工程における第1調理温度が、前記第1調理工程の後に実施される第2調理工程における第2調理温度よりも高い場合、前記第1調理工程と前記第2調理工程との間に、前記減圧部によって前記容器の内部の気体を外部に排出するとともに、前記開閉弁によって前記容器の内部と外部とを連通させて前記容器の内部に外部の空気を導入する吸排気工程を実施する加熱調理器。
(付記2)
前記制御部は、前記第1調理工程終了時の、前記容器の温度である容器温度又は前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度に基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する付記1に記載の加熱調理器。
(付記3)
前記制御部は、前記第1調理温度、前記第2調理温度、及び前記第1調理温度から前記第2調理温度を減算した温度差の少なくとも何れか一つに基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する付記1又は2に記載の加熱調理器。
(付記4)
前記制御部は、前記第1調理工程中の、前記容器の温度である容器温度、前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度、及び前記容器温度から前記調理空間温度を減算した温度差の少なくとも何れか一つに基づき前記吸排気工程を実施するか否かを判断する付記1~3の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記5)
前記制御部は、前記容器の温度である容器温度、前記容器の内部に形成される調理空間の温度である調理空間温度、及び前記吸排気工程を開始してから経過した時間である吸排気時間の少なくとも何れか一つに基づき、前記吸排気工程を終了するか否かを判断する付記1~4の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記6)
前記制御部は、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下となった場合に前記吸排気工程を終了する付記5に記載の加熱調理器。
(付記7)
前記制御部は、前記容器温度又は前記調理空間温度に応じて前記吸排気時間を増減する付記5に記載の加熱調理器。
(付記8)
前記制御部は、
前記吸排気時間が経過した後も、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下でない場合、追加時間の間、前記吸排気工程を継続し、
前記追加時間が経過した場合は、前記容器温度又は前記調理空間温度が前記第2調理温度以下でなくても前記吸排気工程を終了する付記5に記載の加熱調理器。
(付記9)
前記制御部は、
前記第2調理工程が減圧調理の場合、前記第1調理工程及び前記第2調理工程の両方が前記減圧調理の場合、又は前記第2調理工程が保温工程の場合、前記吸排気工程を実施しない、又は前記吸排気時間を基準時間よりも短くする付記5~8の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記10)
前記蓋体には、内蓋が取り付けられ、
前記内蓋には、
前記減圧部と前記容器の内部とを連通する排気孔と、
前記開閉弁と前記容器の内部とを連通する給気孔と、が別々に設けられている付記1~9の何れか一つに記載の加熱調理器。
【符号の説明】
【0070】
1 本体、2 蓋体、5 制御部、6 容器、6a フランジ部、11 ヒンジ部、12 容器収容部、12a 容器支持体、13 加熱部、14 底面温度センサ、15 開放ボタン、21 内蓋、21a 排気孔、21b 孔部、21c 給気孔、22 蓋パッキン、23 内部温度センサ、31 操作部、32 表示部、33 通気口、40 減圧部、41 減圧ポンプ、42 経路切換弁、42a 吸入口、43 カートリッジ、44 蒸気排出弁、45 開閉弁、46 圧力センサ、51 記憶部、52 加熱制御部、53 吸排気制御部、60 調理空間、100 加熱調理器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8