(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142494
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】時計用部品および時計用部品の加飾方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20241003BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20241003BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
G04B 19/04 20060101ALN20241003BHJP
G04B 37/22 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G04B19/06 B
G04B45/00 G
G04B45/00 V
B41J2/01 501
G04B19/04 C
G04B37/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054648
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】仲西 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 美紗妃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC70
2C056EE17
2C056FB01
2C056FB04
2C056FB10
2C056FC01
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】独創的な意匠を表現することが時計用部品および時計用部品の加飾方法を提供すること。
【解決手段】時計用部品は、第1模様が表示された基材を備え、基材には、表面に金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンがドット形成されることで第2模様が表示され、第1模様と第2模様とにより所望の意匠が表現されることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1模様が表示された基材を備え、
前記基材には、表面に金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンがドット形成されることで第2模様が表示され、前記第1模様と前記第2模様とにより所望の意匠が表現される
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項2】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記基材は、貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つ、または、これらを組み合わせることにより形成されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項3】
請求項2に記載の時計用部品において、
前記基材には、メッキ処理または塗料による塗装が施されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項4】
請求項2に記載の時計用部品において、
前記基材は透明性を有する樹脂、または、ガラスにより形成され、
前記第1模様は、前記基材の表面に表示されている、または、前記基材を通して視認可能に表示されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項5】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記第1模様と前記第2模様とは関連付けられており、
前記第2模様は、前記第1模様を強調するようにドット形成されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項6】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記第2模様を構成するドットは、濃淡をつけて形成されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項7】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記第1模様と前記第2模様とにより表現された前記意匠は、視認角度に応じて変化するように構成されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項8】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記金属ナノ粒子は、金、銀、銅、および、プラチナの内のいずれか一つを含んで構成される
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項9】
請求項1に記載の時計用部品において、
前記金属ナノ粒子にて構成される前記インクが前記基材の表面に着弾して形成されたドットの直径は11μm以上、かつ、60μm以下である
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項10】
請求項1に記載の時計用部品は文字板として構成され、
前記基材には、濃色系の色が付加され、かつ、金属光沢を有する前記インクにて前記第2模様が表示されている
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項11】
基材に第1模様を表示させる第1模様表示工程と、
前記基材の表面に、金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンをドット形成することで第2模様を表示させる第2模様表示工程と、を備える
ことを特徴とする時計用部品の加飾方法。
【請求項12】
請求項11に記載の時計用部品の加飾方法において、
前記第2模様表示工程の後に実施され、ドットが形成された前記基材の表面に透明膜を塗布し、前記透明膜を研磨するラップ加工工程を備える
ことを特徴とする時計用部品の加飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用部品および時計用部品の加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メッキを施した金属板に対して、インクジェット印刷により文字や画像を形成した文字板が開示されている。
【0003】
特許文献1では、メッキを施した金属板の表面に透明なインク受容層を形成することで、フィルムや刷版の製作を不要として、短時間でかつ低コストでの文字板の多品種少量生産を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、メッキを施した金属板の表面に、単にインクジェット印刷にて文字や画像を形成するだけなので、独創的な意匠を表現することが難しいといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の時計用部品は、第1模様が表示された基材を備え、前記基材には、表面に金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンがドット形成されることで第2模様が表示され、前記第1模様と前記第2模様とにより所望の意匠が表現されることを特徴とする。
【0007】
本開示の時計用部品の加飾方法は、基材に第1模様を表示させる第1模様表示工程と、前記基材の表面に、金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンをドット形成することで第2模様を表示させる第2模様表示工程と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】金属ナノ粒子にて構成されるインクが基材の表面に着弾して形成されたドットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の実施形態の時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図である。本実施形態では、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計として構成される。
図1に示すように、時計1は、金属製のケース2を備える。そして、ケース2の内部には、円板状の文字板10と、秒針3、分針4、時針5と、りゅうず7と、Aボタン8と、Bボタン9とを備える。なお、文字板10は、本開示の時計用部品の一例である。
【0010】
[文字板]
図2は、文字板10の要部を示す断面図である。なお、
図2は、文字板10おける基材30を厚さ方向に切断した断面図である。
図2に示すように、文字板10は、基材30を備えて構成される。本実施形態では、基材30は、貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つ、または、これらを組み合わせることにより形成されている。これにより、これらの素材の風合いを表現することができる。例えば、真珠母貝を削り出して基材30を形成することで、光の加減により色調が変化するような意匠を表現することができ、また、プラチナ等の貴金属により基材30を形成することで高級感を得ることができる。
【0011】
そして、基材30の表面31に凹部32が複数形成されている。本実施形態では、基材30の表面31に筋目加工を施すことで、凹部32を形成している。より具体的には、基材30の表面31には、中央から放射状に凹部32が形成されるように筋目加工が施されている。
このように、本実施形態では、凹部32を形成することで第1模様40を基材30の表面31に表示している。
なお、凹部32は上記構成に限られるものではなく、例えば、切削加工、レーザー加工、化学除去加工、研磨加工、および、鍛造・鋳造加工等により形成されていてもよい。
【0012】
また、基材30の表面31には、ドット33が形成されている。本実施形態では、金属ナノ粒子にて構成されるインクが二値化パターンに沿って基材30の表面31に着弾することでドット33が形成されている。これにより、本実施形態では、ドット33により第2模様50を基材30の表面31に表示している。より具体的には、中央から放射状にドットが形成された二値化パターンに沿って、インクジェット印刷により金属ナノ粒子にて構成されるインクが基材30の表面31に印刷されることで、第2模様50が表示されている。
【0013】
ここで、金属ナノ粒子にて構成されるインクとは、金属ナノ粒子が分散媒に分散した組成物である。また、金属ナノ粒子とは、粒径1nm以上、かつ、1μm以下の範囲を有する金属粒子を意図し、好ましくは、金、銀、銅、および、プラチナの内のいずれか一つを含んで構成される。これにより、光沢のある第2模様50を表現することができ、より高級感のある意匠を表現することができる。
【0014】
また、本実施形態では、ドット33は、直径Dが11μm以上、かつ、60μm以下となるように形成されている。
一般的に、直径が10μm以下のドットで模様を表現したとしても、ドットの直径が小さすぎるので、ドットにより表現された模様であると視認されにくいといった問題がある。本実施形態では、ドット33を直径Dが11μm以上、かつ、60μm以下となるように形成することにより、視認可能で、かつ、微細なドット33による第2模様50を表現することができる。
【0015】
[文字板の加飾方法]
図3は、文字板10の加飾工程を示す図であり、
図4は、文字板10の概略を示す正面図である。
図3に示すように、先ず、第1模様表示工程として、基材30の表面31に筋目加工および型打ち加工を施すことで、凹部32を形成して第1模様40を表示させる。
【0016】
次に、第2模様表示工程として、事前に準備した二値化パターンに沿って、金属ナノ粒子にて構成されるインクにて基材30の表面31にインクジェット印刷を行うことにより、ドット33を形成して第2模様50を表示させる。
そして、最後に、ラップ加工工程として、ドット33が形成された基材30の表面31に透明膜を塗布し、当該透明膜を研磨する。これにより、仕上げ工程として基材30の表面31に塗布された透明膜が研磨されるので、より意匠性を高めることができる。
【0017】
このように文字板10を加飾することにより、
図4に示すように、第1模様40と第2模様50とによる所望の意匠を表現することができる。
なお、本実施形態では、同じ第1模様40が表現された基材30であっても、二値化パターンを変更することで容易に第2模様を変更できるので、
図4とは印象の異なる文字板を容易に提供することができる。
【0018】
また、本実施形態では、基材30に表示された第1模様40と、二値化パターンがドット形成されることで表示された第2模様50と、の両者を視認可能とさせることができるので、複雑で独創的な意匠を表現することができる。
さらに、本実施形態では、第2模様50は光沢のある金属ナノ粒子にて構成されるインクによりドット形成されるので、高級感のある外観を得ることができる。
【0019】
また、本実施形態では、前述したように、基材30の表面31に対して放射状に凹部32が形成されることで第1模様40が表示され、かつ、放射状にドットが形成された二値化パターンに沿ってドット33が形成されることで第2模様50が表示されている。すなわち、本実施形態では、第1模様40と第2模様50とが関連付けられている。これにより、
図4に示すように、第1模様40が第2模様50により強調されるので、第1模様40を際立たせた印象の意匠を表現することができる。
【0020】
図5は、金属ナノ粒子にて構成されるインクが基材30の表面31に着弾して形成されたドット33を示す図である。
図5に示すように、金属ナノ粒子にて構成されるインクが基材30の表面31に着弾して形成されるドット33は、直径が概ね20μmとされており、11μm以上、かつ、60μm以下となるように形成されている。なお、着弾する箇所が重なるような場所では、この限りではない。換言すると、本実施形態では、インクが着弾する箇所が重ならない箇所では、ドット33は直径Dが11μm以上、かつ、60μm以下となるように形成される。
【0021】
これは、本実施形態において、インクが粒子径の非常に小さい金属ナノ粒子にて構成される上、基材30の表面31に対して撥水処理を施していないことにより、基材30の表面31に着弾したインクが適度に広がることによるものと推察される。すなわち、親水状態または疎水状態の基材30の表面31に対して、粒子径の非常に小さい金属ナノ粒子にて構成されるインクを着弾させることで、直径Dが11μm以上、かつ、60μm以下となるようにドット33を形成することができる。
なお、一般的に、ぬれ性の評価として、水滴が表面に付着した際の、液滴の輪郭曲線の接線と表面とが成す接触角が40°以下である場合が親水状態とされ、接触角が40°~90°程度の場合が疎水状態とされる。さらに、接触角が90°を超える場合が撥水状態とされる。
本実施形態では、上記のようなドット33を形成することで、視認可能で、かつ、微細な第2模様50を表現することができる。
【0022】
[第1実施形態の作用効果]
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、基材30に表示された第1模様40と、二値化パターンがドット形成されることで表示された第2模様50と、の両者を視認可能とさせることができる。このため、複雑で独創的な意匠を表現することができる。また、第2模様50は光沢のある金属ナノ粒子にて構成されるインクによりドット形成されるので、高級感のある外観を得ることができる。
さらに、本実施形態では、基材30の表面31に形成する第2模様50を変更することで、印象の異なる時計用部品を容易に提供することができる。
【0023】
本実施形態では、基材30が貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つにより形成されるので、これらの素材の風合いを表現することができる。
【0024】
本実施形態では、第1模様40と第2模様50とは関連付けられており、第2模様50は、第1模様40を強調するようにドット形成されているので、第1模様40を際立たせた印象の意匠を表現することができる。
【0025】
本実施形態では、第2模様50をドット形成する金属ナノ粒子が、金、銀、銅、および、プラチナの内のいずれか一つを含んで構成されるので、光沢のある第2模様50を表現することができ、より高級感のある意匠を表現することができる。
【0026】
本実施形態では、金属ナノ粒子にて構成されるインクが基材30の表面31に着弾して形成されたドットの直径Dが11μm以上、かつ、60μm以下であるので、視認可能で、かつ、微細なドット33により第2模様50を表示でき、より繊細な意匠を表現することができる。
【0027】
本実施形態では、仕上げ工程として基材30の表面31が研磨されるので、より意匠性を高めることができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について、
図6、
図7に基づいて説明する。第2実施形態では、梨地状に第1模様40Aが表示され、格子状にドットが形成された二値化パターンに沿ってドット33Aが形成されることで第2模様50Aが表示される点で、前述した第1実施形態と異なる。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0029】
図6は、第2実施形態の文字板10Aの加飾工程を示す図であり、
図7は、文字板10Aの概略を示す正面図である。
図6、
図7に示すように、本実施形態では、基材30Aの表面31Aに梨地状の第1模様40Aが表示されている。さらに、第1模様40Aが表示された基材30Aの表面31Aに対して、金属ナノ粒子にて構成されるインクが格子状の二値化パターンに沿って着弾することでドット33Aが形成されて第2模様50Aが表示されている。
これにより、
図7に示すように、梨地状の第1模様40Aが格子状の第2模様50Aによってぼかしたような複雑な意匠を表現することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、第2模様50Aを構成するドット33Aを、濃淡をつけて形成している。これにより、梨地状の第1模様40Aがやや明瞭に見える箇所と、やや不明瞭に見える箇所とを有する意匠を表現することができる。
【0031】
[第2実施形態の作用効果]
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、基材30Aの表面31Aに梨地状の第1模様40Aが表示され、格子状の二値化パターンに沿ってドット33Aが形成されることで第2模様50Aが表示されるので、梨地状の第1模様40Aが格子状の第2模様50Aによってぼかしたような複雑な意匠を表現することができる。
【0032】
本実施形態では、第2模様50Aを構成するドット33Aを、濃淡をつけて形成しているので、梨地状の第1模様40がやや明瞭に見える箇所と、やや不明瞭に見える箇所とを有する意匠を表現することができる。
【0033】
[変形例]
なお、本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
【0034】
前述した各実施形態では、貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つ、または、これらを組み合わせることにより形成される基材30,30Aの素地に第1模様40,40Aおよび第2模様50Aが表示されていたが、これに限定されない。例えば、基材には、メッキ処理または塗料による塗装が施されていてもよい。これにより、基材としての光沢や色を自由に表現することができる。
【0035】
前述した第1実施形態では、基材30の表面31に凹部32を形成することで、第1模様40を表示していたが、これに限定されない。例えば、基材の表面に対して印刷や転写することで第1模様を表示させるようにしてもよい。
さらに、基材をポリカーボネート等の透明性を有する樹脂やガラス等により形成し、かつ、文字板の裏側に配置されるムーブメント等に第1模様を表示することで、基材を通して第1模様を視認可能に表示してもよい。これにより、第1模様と第2模様とで表現される意匠に奥行きが生まれるので、より複雑で独創的な意匠を表現することができる。
【0036】
前述した各実施形態において、第1模様40,40Aと第2模様50,50Aとにより表現された意匠を、視認角度に応じて変化するように構成していてもよい。より具体的には、第2模様50,50Aを構成するドット33,33Aの濃淡により、視認角度に応じて意匠が変化するように構成していてもよい。これにより、第1模様と第2模様とにより表現された意匠は、視認角度に応じて変化するので、より複雑で独創的な意匠を表現することができる。
【0037】
また前述した各実施形態において、基材30,30Aには、濃色系の色が付加され、かつ、金属光沢を有するインクにて第2模様50,50Aが表示されていていてもよい。これにより、基材30,30Aには濃色系の色が付加されるので、金属光沢のある第2模様50,50Aを際立たせることができる。特に、基材を黒色とし、金または銀を含んで構成されるインクにて第2模様を表示することにより、金箔漆器のような高級感のある意匠を表現することができる。
【0038】
前述した各実施形態では、本開示の時計用部品は文字板10,10Aとして構成されていたが、これに限定されない。例えば、本開示の時計用部品は、ケース、ダイヤルリング、ガラス縁、ムーブメントおよびその地板、針、略字、および、回転錘のいずれか一つとして構成されていてもよい。
【0039】
[本開示のまとめ]
本開示の時計用部品は、第1模様が表示された基材を備え、前記基材には、表面に金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンがドット形成されることで第2模様が表示され、前記第1模様と前記第2模様とにより所望の意匠が表現されることを特徴とする。
本開示では、基材に表示された第1模様と、二値化パターンがドット形成されることで表示された第2模様と、の両者を視認可能とさせることができる。このため、複雑で独創的な意匠を表現することができる。また、第2模様は光沢のある金属ナノ粒子にて構成されるインクによりドット形成されるので、高級感のある外観を得ることができる。
さらに、本開示では、基材の表面に形成する第2模様を変更することで、印象の異なる時計用部品を容易に提供することができる。
【0040】
本開示の時計用部品において、前記基材は、貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つ、または、これらを組み合わせることにより形成されていてもよい。
これにより、基材が貝殻、樹脂、および、金属の内のいずれか一つ、または、これらを組み合わせることにより形成されるので、これらの素材の風合いを表現することができる。
【0041】
本開示の時計用部品において、前記基材には、メッキ処理または塗料による塗装が施されていてもよい。
これにより、基材にメッキ処理または塗料による塗装が施されるので、基材としての光沢や色を自由に表現することができる。
【0042】
本開示の時計用部品において、前記基材は透明性を有する樹脂、またはガラスにより形成され、前記第1模様は、前記基材の表面に表示されている、または、前記基材を通して視認可能に表示されていてもよい。
これにより、基材が透明性を有する樹脂、または、ガラスにより形成されるので、基材に直接第1模様を表示させずに、例えば、基材の裏側に配置される部材に第1模様を表示させることで、当該第1模様を視認可能とさせることができる。このため、第1模様と第2模様とで表現される意匠に奥行きが生まれるので、より複雑で独創的な意匠を表現することができる。
なお、この場合、先に基材の表面にインクを着弾させてドットを形成することで第2模様を表示させ、次に、基材の裏側に配置される部材に第1模様を表示させ、その後、本開示の時計用部品と基材の裏側に配置される部材とを組み立てるようにしてもよい。すなわち、第1模様表示工程と第2模様表示工程との実施順が入れ替わってもよい。
【0043】
本開示の時計用部品において、前記第1模様と前記第2模様とは関連付けられており、前記第2模様は、前記第1模様を強調するようにドット形成されていていてもよい。
これにより、第1模様が第2模様により強調されるので、第1模様を際立たせた印象の意匠を表現することができる。
【0044】
本開示の時計用部品において、前記第2模様を構成するドットは、濃淡をつけて形成されていてもよい。
これにより、第2模様を構成するドットを、濃淡をつけて形成しているので、第1模様がやや明瞭に見える箇所と、やや不明瞭に見える箇所とを有する意匠を表現することができる。
【0045】
本開示の時計用部品において、前記第1模様と前記第2模様とにより表現された前記意匠は、視認角度に応じて変化するように構成されていてもよい。
これにより、第1模様と第2模様とにより表現された意匠は、視認角度に応じて変化するので、より複雑で独創的な意匠を表現することができる。
【0046】
本開示の時計用部品において、前記金属ナノ粒子は、金、銀、銅、および、プラチナの内のいずれか一つを含んで構成されていてもよい。
これにより、第2模様をドット形成する金属ナノ粒子が、金、銀、銅、および、プラチナの内のいずれか一つを含んで構成されるので、光沢のある第2模様を表現することができ、より高級感のある意匠を表現することができる。
【0047】
本開示の時計用部品において、前記金属ナノ粒子にて構成される前記インクが前記基材の表面に着弾して形成されたドットの直径は11μm以上、かつ、60μm以下であってもよい。
これにより、視認可能で、かつ、微細なドットにより第2模様を表示するので、より繊細な意匠を表現することができる。
【0048】
本開示の時計用部品において、前記基材には、濃色系の色が付加され、かつ、金属光沢を有する前記インクにて前記第2模様が表示されていていてもよい。
これにより、基材には濃色系の色が付加されるので、金属光沢のある第2模様を際立たせることができる。特に、基材を黒色とし、金または銀を含んで構成されるインクにて第2模様を表示することにより、金箔漆器のような高級感のある意匠を表現することができる。
【0049】
本開示の時計用部品の加飾方法は、基材に第1模様を表示させる第1模様表示工程と、前記基材の表面に、金属ナノ粒子にて構成されるインクにより二値化パターンをドット形成することで第2模様を表示させる第2模様表示工程と、を備えることを特徴とする。
本開示では、基材に表示された第1模様と、二値化パターンがドット形成されることで表示された第2模様と、の両者を視認可能とさせることができる。このため、複雑で独創的な意匠を表現することができる。さらに、第2模様は光沢のある金属ナノ粒子にて構成されるインクによりドット形成されるので、高級感のある外観を得ることができる。
また、本開示では、基材の表面に形成する第2模様を変更することで、印象の異なる時計用部品を容易に提供することができる。
【0050】
本開示の時計用部品の加飾方法において、前記第2模様表示工程の後に実施され、ドットが形成された前記基材の表面に透明膜を塗布し、前記透明膜を研磨するラップ加工工程を備えていてもよい。
これにより、仕上げ工程として基材の表面に塗布した透明膜が研磨されるので、より意匠性を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…時計、2…ケース、3…秒針、4…分針、5…時針、7…りゅうず、8…Aボタン、9…Bボタン、10,10A…文字板、30,30A…基材、31,31A…表面、32…凹部、33,33A…ドット、40,40A…第1模様、50,50A…第2模様。