(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142499
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20241003BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241003BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241003BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241003BHJP
B60P 1/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L1/00 L
B60L9/18 J
B60L50/60
B60P1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054654
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥太朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 純
(72)【発明者】
【氏名】兼澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】中手 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西条 公啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】李 智
(72)【発明者】
【氏名】金谷 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄二
(72)【発明者】
【氏名】本多 健志
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC12
5H125BA09
5H125BB00
5H125BB05
5H125CD04
5H125CD06
5H125FF23
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】蓄電装置を含む主機の冷却回路に、主機用ポンプを用いることなく冷却液を効率良く且つ確実に供給することが可能な電動式のダンプトラックを提供することを目的とする。
【解決手段】ダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機を冷却する冷却回路7~9と、冷却液を貯留する冷却液タンク10と、補機の熱交換を行う伝熱回路15と、制御装置40と、を備える。伝熱回路15は、伝熱回路15内の熱媒体を循環させる補機用ポンプ12を有する。冷却回路7~9及び冷却液タンク10は、連結路16~19によって伝熱回路15に連結されている。制御装置40は、補機用ポンプ12によって伝熱回路15内において熱媒体を循環させる状態と、補機用ポンプ12を連結路16~19を介して冷却回路7~9に連通させて、補機用ポンプ12によって冷却液タンク10内の冷却液を冷却回路7~9内に供給する状態と、に切り替え可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を動力源として走行する電動式のダンプトラックであって、
前記蓄電装置を含む主機を冷却する冷却回路と、
前記冷却回路内を流れる冷却液を貯留するタンクと、
補機の熱交換を行う伝熱回路と、
前記冷却回路及び前記伝熱回路を制御する制御装置と、を備え、
前記伝熱回路は、前記伝熱回路内の熱媒体を循環させる補機用ポンプを有し、
前記冷却回路及び前記タンクは、連結路によって前記伝熱回路に連結されており、
前記制御装置は、
前記補機用ポンプによって前記伝熱回路内において前記熱媒体を循環させる状態と、
前記補機用ポンプを、前記連結路を介して前記冷却回路に連通させて、前記補機用ポンプによって前記タンク内の前記冷却液を前記冷却回路内に供給する状態と、に切り替え可能である
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
前記冷却回路は、前記蓄電装置を冷却する第1冷却回路と、前記蓄電装置の充放電動作を制御する電力制御装置を冷却する第2冷却回路と、前記蓄電装置の入出力電圧を降圧又は昇圧するコンバータを冷却する第3冷却回路と、を含み、
前記連結路は、前記伝熱回路と前記第1冷却回路とを連結する第1連結路と、前記伝熱回路と前記第2冷却回路とを連結する第2連結路と、前記伝熱回路と前記第3冷却回路とを連結する第3連結路と、前記伝熱回路と前記タンクとを連結する第4連結路と、を含み、
前記制御装置は、前記補機用ポンプを作動させて、前記タンクから前記第4連結路を介して前記補機用ポンプに吸い込まれた前記冷却液を、前記補機用ポンプから前記第1連結路、前記第2連結路及び前記第3連結路の少なくとも1つに吐出させることによって、前記第1冷却回路内、前記第2冷却回路内及び前記第3冷却回路内の少なくとも1つに前記冷却液を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のダンプトラック。
【請求項3】
前記冷却回路は、前記冷却回路内において前記冷却液を循環させる主機用ポンプを有し、
前記補機用ポンプは、前記主機用ポンプよりも低い電圧によって作動する
ことを特徴とする請求項1に記載のダンプトラック。
【請求項4】
前記伝熱回路は、前記伝熱回路の流路を遮断するバルブを有し、
前記連結路は、前記連結路を遮断するバルブを有し、
前記制御装置は、前記冷却液の供給時、前記伝熱回路の前記バルブを閉状態に作動させ、且つ、前記連結路の前記バルブを開状態に作動させると共に、前記補機用ポンプを作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のダンプトラック。
【請求項5】
前記冷却液と前記熱媒体とは同一の材料を用いて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を動力源として走行する電動式のダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
電動式のダンプトラックは、車体を動かすための主要装置として、蓄電装置を含む主機を搭載している。この主機は作動中に発熱するので、当該ダンプトラックは、主機の温度調節システムとして、冷却液を循環させて主機を冷却する冷却回路を搭載している。
【0003】
作業機械に搭載された蓄電装置を含む主機の温度調節システムに関する技術として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1に開示された作業機械は、エンジン用伝熱媒体が流通するエンジン冷却システムと、蓄電装置用伝熱媒体が流通する蓄電装置冷却システムとを備える。このエンジン冷却システムと蓄電装置冷却システムとは、それぞれ別々の伝熱媒体が流通する異なる冷却システムとして構成されている。特許文献1に開示された作業機械は、伝熱媒体熱交換器を備え、エンジン用伝熱媒体と蓄電装置用伝熱媒体との間で熱交換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動式のダンプトラックにおいて、主機を冷却する冷却回路内において冷却液を循環させる主機用ポンプは電動モータの回転によって作動するが、当該電動モータは主機の蓄電装置からの電力供給によって駆動する。
【0006】
主機を冷却する冷却回路内に充填された冷却液は、主機のメンテナンス時、冷却回路から外部に排出され、メンテナンス終了後に冷却回路内へ再び充填される。冷却液を充填するために当該主機用ポンプを作動させると、主機の蓄電装置が電力を消費してしまうと共に、冷却液の充填前なので当該蓄電装置がオーバーヒートを引き起こす可能性がある。
【0007】
特許文献1には、上記のような問題について何ら考慮されておらず、電動式のダンプトラックに搭載された主機の冷却回路に、主機用ポンプを用いることなく冷却液を供給することについては改善の余地がある。
【0008】
上記事情に鑑みて、本発明は、蓄電装置を含む主機の冷却回路に、主機用ポンプを用いることなく冷却液を効率良く且つ確実に供給することが可能な電動式のダンプトラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のダンプトラックは、蓄電装置を動力源として走行する電動式のダンプトラックであって、前記蓄電装置を含む主機を冷却する冷却回路と、前記冷却回路内を流れる冷却液を貯留するタンクと、補機の熱交換を行う伝熱回路と、前記冷却回路及び前記伝熱回路を制御する制御装置と、を備え、前記伝熱回路は、前記伝熱回路内の熱媒体を循環させる補機用ポンプを有し、前記冷却回路及び前記タンクは、連結路によって前記伝熱回路に連結されており、前記制御装置は、前記補機用ポンプによって前記伝熱回路内において前記熱媒体を循環させる状態と、前記補機用ポンプを、前記連結路を介して前記冷却回路に連通させて、前記補機用ポンプによって前記タンク内の前記冷却液を前記冷却回路内に供給する状態と、に切り替え可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電装置を含む主機の冷却回路に、主機用ポンプを用いることなく冷却液を効率良く且つ確実に供給することが可能な電動式のダンプトラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ダンプトラックに搭載された温度調節システムの構成を示す図。
【
図3】温度調節システムの各構成要素のレイアウトを説明するダンプトラックの斜視図。
【
図4】
図3を異なる方向から視たダンプトラックの斜視図。
【
図5】
図3を異なる方向から視たダンプトラックの側面図。
【
図6】通常稼働時における温度調節システムの動作を説明する図。
【
図7】冷却液供給時における温度調節システムの動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0013】
図1は、ダンプトラック100の外観を示す図である。
【0014】
ダンプトラック100は、充放電可能な蓄電装置4を走行用の動力源として備える電動式のダンプトラックである。ダンプトラック100は、例えば、露天掘り鉱山内において掘削された土砂又は鉱物等を運搬するダンプトラック(マイニングトラック)である。
【0015】
ダンプトラック100は、前輪101と、後輪102と、前輪101及び後輪102に連結された頑丈な車体フレーム104とによって構成されている。車体フレーム104の上部には、土砂等を積載するための荷台105が搭載されている。車体フレーム104には、放土時において車体フレーム104に対して荷台105を傾斜させるためのホイストシリンダ106が設けられている。後輪102は、駆動輪であり、後輪102の回転軸部に走行モータ103が設けられている。車体フレーム104の前部の上部には、オペレータが搭乗する運転室107が設けられている。
【0016】
図2は、ダンプトラック100に搭載された温度調節システム50の構成を示す図である。
【0017】
ダンプトラック100は、車体を動かすための主要装置として、蓄電装置4を含む主機を搭載している。ダンプトラック100の主機は、蓄電装置4と、蓄電装置4の充放電動作を制御する電力制御装置5と、蓄電装置4の入出力電圧を降圧又は昇圧するコンバータ6と、を含む。蓄電装置4、電力制御装置5及びコンバータ6は、数千ボルト程度の高電圧系として設けられている。
【0018】
ダンプトラック100は、主機以外の装置である補機を搭載している。ダンプトラック100の補機は、運転室107内の空気の温湿度を調整するエアコンユニット14と、エアコンユニット14に供給される熱媒体を加熱するヒータ13と、を含む。エアコンユニット14及びヒータ13は、数十ボルト程度の低電圧系として設けられている。
【0019】
温度調節システム50は、ダンプトラック100の主機を冷却する冷却回路7~9と、冷却回路7~9内を流れる冷却液を貯留する冷却液タンク10と、ダンプトラック100の補機の熱交換を行う伝熱回路15と、冷却回路7~9及び伝熱回路15を制御する制御装置40と、を備える。
【0020】
伝熱回路15は、伝熱回路15内の熱媒体を循環させる補機用ポンプ12と、伝熱回路15の流路を遮断するバルブ20,21と、を有する。伝熱回路15の流路は、補機用ポンプ12の吐出側から、ヒータ13及びエアコンユニット14の順に通過し、補機用ポンプ12の吸込側に接続されている。
【0021】
伝熱回路15内を流れる熱媒体は、特に限定されないが、水又は冷却液であってもよい。伝熱回路15内を流れる熱媒体は、冷却回路7~9内を流れる冷却液と同一の材料を用いて構成されていてもよい。冷却回路7~9内を流れる冷却液は、エチレングリコールを含む不凍液であってもよい。
【0022】
補機用ポンプ12は、蓄電装置4とは異なる低電圧系の補機用バッテリからの電力供給によって駆動する電動モータの回転によって作動する。すなわち、補機用ポンプ12は、低電圧系として設けられている。言い換えると、補機用ポンプ12は、主機用ポンプ1~3よりも低い電圧によって作動する。
【0023】
バルブ20は、補機用ポンプ12の吐出側とヒータ13の上流側との間の流路に設けられている。バルブ21は、補機用ポンプ12の吸込側とエアコンユニット14の下流側との間の流路に設けられている。バルブ20,21は、制御装置40からの制御によって閉状態に作動し、伝熱回路15の流路を遮断する。バルブ20,21は、制御装置40からの制御によって開状態に作動し、伝熱回路15の流路を連通させる。
【0024】
冷却回路7~9は、冷却回路7~9内において冷却液を循環させる主機用ポンプ1~3と、冷却回路7~9の流路を遮断するバルブ31~33と、を有する。冷却回路7~9は、蓄電装置4を冷却する第1冷却回路7と、電力制御装置5を冷却する第2冷却回路8と、コンバータ6を冷却する第3冷却回路9と、を含む。
【0025】
第1冷却回路7は、第1冷却回路7内において冷却液を循環させる第1主機用ポンプ1と、第1冷却回路7の流路を遮断するバルブ31と、を有する。第1冷却回路7の流路は、第1主機用ポンプ1の吐出側から、蓄電装置4及び冷却液タンク10の順に通過し、第1主機用ポンプ1の吸込側に接続されている。
【0026】
第2冷却回路8は、第2冷却回路8内において冷却液を循環させる第2主機用ポンプ2と、第2冷却回路8の流路を遮断するバルブ32と、を有する。第2冷却回路8の流路は、第2主機用ポンプ2の吐出側から、電力制御装置5及び冷却液タンク10の順に通過し、第2主機用ポンプ2の吸込側に接続されている。
【0027】
第3冷却回路9は、第3冷却回路9内において冷却液を循環させる第3主機用ポンプ3と、第3冷却回路9の流路を遮断するバルブ33と、を有する。第3冷却回路9の流路は、第3主機用ポンプ3の吐出側から、コンバータ6及び冷却液タンク10の順に通過し、第3主機用ポンプ3の吸込側に接続されている。
【0028】
第1主機用ポンプ1、第2主機用ポンプ2及び第3主機用ポンプ3のそれぞれは、蓄電装置4からの電力供給によって駆動する電動モータの回転によって作動する。すなわち、主機用ポンプ1~3は、高電圧系として設けられている。
【0029】
冷却液タンク10は、第1冷却回路7、第2冷却回路8及び第3冷却回路9のそれぞれにおいて共用されている。冷却液タンク10は、流路28,29を介して、右ラジエータ26及び左ラジエータ27に連結されている。冷却液タンク10内の冷却液は、ダンプトラック100の右側及び左側にそれぞれ設けられた右ラジエータ26及び左ラジエータ27によって冷却される。
【0030】
バルブ31~33は、主機用ポンプ1~3の吐出側と冷却対象4~6の上流側との間の流路に設けられている。バルブ31~33は、制御装置40からの制御によって閉状態に作動し、冷却回路7~9の流路を遮断する。バルブ31~33は、制御装置40からの制御によって開状態に作動し、冷却回路7~9の流路を連通させる。
【0031】
冷却回路7~9及び冷却液タンク10は、連結路16~19によって伝熱回路15に連結されている。連結路16~19は、第1連結路16と、第2連結路17と、第3連結路18と、第4連結路19と、を含む。
【0032】
第1連結路16は、伝熱回路15と第1冷却回路7とを連結する流路である。第1連結路16の一端は、バルブ20と補機用ポンプ12との間の伝熱回路15の流路に接続されている。第1連結路16の他端は、蓄電装置4とバルブ31との間の第1冷却回路7の流路に接続されている。第1連結路16は、第1連結路16を遮断するバルブ22を有する。
【0033】
第2連結路17は、伝熱回路15と第2冷却回路8とを連結する流路である。第2連結路17の一端は、バルブ20と補機用ポンプ12との間の伝熱回路15の流路に接続されている。第2連結路17の他端は、電力制御装置5とバルブ32との間の第2冷却回路8の流路に接続されている。第2連結路17は、第2連結路17を遮断するバルブ23を有する。
【0034】
第3連結路18は、伝熱回路15と第3冷却回路9とを連結する流路である。第3連結路18の一端は、バルブ20と補機用ポンプ12との間の伝熱回路15の流路に接続されている。第3連結路18の他端は、コンバータ6とバルブ33との間の第3冷却回路9の流路に接続されている。第3連結路18は、第3連結路18を遮断するバルブ24を有する。
【0035】
第4連結路19は、冷却液タンク10と伝熱回路15とを連結する流路である。第4連結路19の一端は、冷却液タンク10に接続されている。第4連結路19の他端は、バルブ21と補機用ポンプ12との間の伝熱回路15の流路に接続されている。第4連結路19には、第4連結路19を遮断するバルブ25を有する。
【0036】
バルブ22~25は、制御装置40からの制御によって閉状態に作動し、連結路16~19を遮断する。バルブ22~25は、制御装置40からの制御によって開状態に作動し、連結路16~19を連通させる。
【0037】
制御装置40は、プロセッサ及びメモリを含み、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、温度調節システム50の機能を実現する。制御装置40は、主機用ポンプ1~3及び補機用ポンプ12のそれぞれの作動を制御すると共に、バルブ20~25,31~33のそれぞれの作動を制御する。これによって、制御装置40は、冷却回路7~9及び伝熱回路15における冷却液及び熱媒体の流れを制御し、ダンプトラック100の主機の温度を許容範囲以内に調節する。制御装置40の詳細については、
図6及び
図7を用いて後述する。
【0038】
図3は、温度調節システム50の各構成要素のレイアウトを説明するダンプトラック100の斜視図である。
図4は、
図3を異なる方向から視たダンプトラック100の斜視図である。
図5は、
図3を異なる方向から視たダンプトラック100の側面図である。
【0039】
図3~
図5では、前輪101、後輪102、荷台105、ホイストシリンダ106及び走行モータ103等の図示を省略している。
図3~
図5において、X軸はダンプトラック100の前後方向に沿った軸を示し、Y軸はダンプトラック100の左右方向に沿った軸を示し、Z軸はダンプトラック100の上下方向に沿った軸を示している。
【0040】
蓄電装置4は、ダンプトラック100の車体フレーム104の前部に配置されている。蓄電装置4は、複数のユニットによって構成されており、各ユニットが上下方向に積層されて配置されている。電力制御装置5は、車体フレーム104の中央部に配置されている。コンバータ6は、車体フレーム104の中央部であって電力制御装置5よりも後方に配置されている。
【0041】
冷却回路7~9の各流路は、冷却対象4~6の各筐体内を通過すると共に、車体フレーム104の下面に沿って前後方向に延びるように配置されている。主機用ポンプ1~3及び冷却液タンク10は、車体フレーム104の前端部に配置されている。右ラジエータ26及び左ラジエータ27は、車体フレーム104の前部における蓄電装置4の右側及び左側にそれぞれ配置されている。蓄電装置4、右ラジエータ26及び左ラジエータ27は、ダンプトラック100の走行風によって冷却され易いよう、それぞれの前面が前方に開放されている。
【0042】
補機用ポンプ12及びヒータ13は、車体フレーム104の前部の上部に配置された運転室107の後方に配置されている。伝熱回路15の流路は、運転室107内に配置されたエアコンユニット14と、運転室107の後方に配置された補機用ポンプ12及びヒータ13とに渡って、前後方向に延びるように配置されている。
【0043】
連結路16~19は、車体フレーム104の上部において前後方向に延びる伝熱回路15の流路と、車体フレーム104の下部又は下方において前後方向に延びる冷却回路7~9の各流路とを連結するべく、上下方向に延びるように配置されている。
【0044】
図6は、通常稼働時における温度調節システム50の動作を説明する図である。
図6において、黒色が施されたバルブ22~25は閉状態であることを示し、バルブ20,21,31~33は開状態であることを示す。
【0045】
ダンプトラック100が運搬動作や放土動作等を行う通常稼働時、制御装置40は、連結路16~19のバルブ22~25を閉状態に作動させ、且つ、伝熱回路15のバルブ20,21及び冷却回路7~9のバルブ31~33をそれぞれ開状態に作動させる。これにより、第1冷却回路7、第2冷却回路8及び第3冷却回路9のそれぞれは、閉ループを形成することができる。伝熱回路15は、閉ループを形成することができる。
【0046】
そして、制御装置40は、主機用ポンプ1~3及び補機用ポンプ12を作動させる。冷却回路7~9は、主機用ポンプ1~3から吐出された冷却液を冷却対象4~9に供給することができ、冷却対象4~9を冷却することができる。更に、伝熱回路15は、補機用ポンプ12から吐出された熱媒体をヒータ13に供給して加熱し、加熱された熱媒体をエアコンユニット14に供給することができる。伝熱回路15は、加熱された熱媒体とエアコンユニット14内の空気との熱交換を行って、運転室107内の空気を暖めることができる。
【0047】
図7は、冷却液供給時における温度調節システム50の動作を説明する図である。
図7において、黒色が施されたバルブ20,21,31~33は閉状態であることを示し、バルブ22~25は開状態であることを示す。
【0048】
主機のメンテナンス時、冷却液の交換等のために冷却回路7~9内に充填された冷却液は、外部に排出され、主機のメンテナンス終了後、冷却液は冷却回路7~9内へ再び充填される。冷却液を冷却回路7~9内へ充填する時のように、冷却液を冷却回路7~9内へ供給する時(以下「冷却液供給時」とも称する)、主機用ポンプ1~3は作動停止状態であり、作業員によって冷却液が冷却液タンク10内に投入される。
【0049】
冷却液供給時、制御装置40は、伝熱回路15のバルブ20,21及び冷却回路7~9のバルブ31~33をそれぞれ閉状態に作動させ、且つ、連結路16~19のバルブ22~25を開状態に作動させる。これにより、温度調節システム50は、冷却液が流れる流路として、補機用ポンプ12の吐出側から、第1~第3連結路16~18、冷却回路7~9及び第4連結路19を順に通過し、補機用ポンプ12の吸込側に接続される閉ループを形成することができる。
【0050】
そして、制御装置40は、主機用ポンプ1~3を作動させずに、補機用ポンプ12を作動させる。これにより、温度調節システム50は、冷却液タンク10内の冷却液を、第4連結路19を介して補機用ポンプ12に吸い込み、補機用ポンプ12から第1~第3連結路16~18に吐出し、第1~第3連結路16~18を介して冷却回路7~9に供給することができる。
【0051】
なお、冷却液供給時、冷却回路7~9の何れかに冷却液を供給したい場合には、制御装置40は、供給対象の冷却回路7~9に接続された第1~第3連結路16~18のバルブ22~24だけを開状態に作動させ、これ以外のバルブ22~24を閉状態に作動させればよい。加えて、制御装置40は、第4連結路19のバルブ25を開状態に作動させ、伝熱回路15のバルブ20,21及び冷却回路7~9のバルブ31~33をそれぞれ閉状態に作動させればよい。
【0052】
このように、制御装置40は、補機用ポンプ12を作動させて、冷却液タンク10から第4連結路19を介して補機用ポンプ12に吸い込まれた冷却液を、補機用ポンプ12から第1連結路16、第2連結路17及び第3連結路18の少なくとも1つに吐出させることによって、第1冷却回路7内、第2冷却回路8内及び第3冷却回路9内の少なくとも1つに冷却液を供給することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を動力源として走行する電動式のダンプトラックである。ダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機を冷却する冷却回路7~9と、冷却回路7~9内を流れる冷却液を貯留する冷却液タンク10と、補機の熱交換を行う伝熱回路15と、冷却回路7~9及び伝熱回路15を制御する制御装置40と、を備える。伝熱回路15は、伝熱回路15内の熱媒体を循環させる補機用ポンプ12を有する。冷却回路7~9及び冷却液タンク10は、連結路16~19によって伝熱回路15に連結されている。制御装置40は、補機用ポンプ12によって伝熱回路15内において熱媒体を循環させる状態と、補機用ポンプ12を連結路16~19を介して冷却回路7~9に連通させて、補機用ポンプ12によって冷却液タンク10内の冷却液を冷却回路7~9内に供給する状態と、に切り替え可能である。
【0054】
これにより、ダンプトラック100は、蓄電装置4を動力源とする主機用ポンプ1~3を作動させずに、冷却液を冷却回路7~9内に供給することができる。したがって、ダンプトラック100は、蓄電装置4の電力を消費せずに、冷却液を冷却回路7~9内に効率良く供給することができる。加えて、ダンプトラック100は、例えば冷却液の充填前に蓄電装置4を含む主機を作動させなくても、補機用ポンプ12の作動によって冷却液を冷却回路7~9内に充填することができる。したがって、ダンプトラック100は、例えば蓄電装置4を含む主機の温度が異常に上昇してオーバーヒートを引き起こすことなく、冷却液を冷却回路7~9内に確実に充填することができる。よって、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機の冷却回路7~9に、主機用ポンプ1~3を用いることなく冷却液を効率良く且つ確実に供給することができる。
【0055】
更に、本実施形態のダンプトラック100において、冷却回路7~9は、蓄電装置4を冷却する第1冷却回路7と、蓄電装置4の充放電動作を制御する電力制御装置5を冷却する第2冷却回路8と、蓄電装置4の入出力電圧を降圧又は昇圧するコンバータ6を冷却する第3冷却回路9と、を含む。連結路16~19は、伝熱回路15と第1冷却回路7とを連結する第1連結路16と、伝熱回路15と第2冷却回路8とを連結する第2連結路17と、伝熱回路15と第3冷却回路9とを連結する第3連結路18と、伝熱回路15と冷却液タンク10とを連結する第4連結路19と、を含む。制御装置40は、補機用ポンプ12を作動させて、冷却液タンク10から第4連結路19を介して補機用ポンプ12に吸い込まれた冷却液を、補機用ポンプ12から第1連結路16、第2連結路17及び第3連結路18の少なくとも1つに吐出させることによって、第1冷却回路7内、第2冷却回路8内及び第3冷却回路9内の少なくとも1つに冷却液を供給する。
【0056】
これにより、ダンプトラック100は、比較的発熱量が大きい蓄電装置4、電力制御装置5及びコンバータ6を冷却する第1~第3冷却回路7~9に対して、蓄電装置4を含む主機を作動させずに、冷却液を供給することができる。したがって、ダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機のオーバーヒートを確実に防止しながら、冷却液を冷却回路7~9内に更に確実に供給することができる。よって、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機の冷却回路7~9に、主機用ポンプ1~3を用いることなく冷却液を効率良く且つ更に確実に供給することができる。
【0057】
更に、本実施形態のダンプトラック100において、冷却回路7~9は、冷却回路7~9内において冷却液を循環させる主機用ポンプ1~3を有する。補機用ポンプ12は、主機用ポンプ1~3よりも低い電圧によって作動する。
【0058】
これにより、ダンプトラック100は、冷却液供給時に消費する電力量を、主機用ポンプ1~3の作動によって冷却液を供給する場合よりも確実に抑制することができる。よって、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機の冷却回路7~9に、主機用ポンプ1~3を用いることなく冷却液を更に効率良く且つ確実に供給することができる。
【0059】
更に、本実施形態のダンプトラック100において、伝熱回路15は、伝熱回路15の流路を遮断するバルブ20,21を有する。連結路16~19は、連結路16~19を遮断するバルブ22~25を有する。制御装置40は、冷却液の供給時、伝熱回路15のバルブ20,21を閉状態に作動させ、且つ、連結路16~19のバルブ22~25を開状態に作動させると共に、補機用ポンプ12を作動させる。
【0060】
これにより、ダンプトラック100は、冷却液が補機用ポンプ12によって伝熱回路15に供給されることを防止しながら、冷却液を冷却回路7~9内に確実に供給することができる。よって、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機の冷却回路7~9に、主機用ポンプ1~3を用いることなく冷却液を効率良く且つ更に確実に供給することができる。
【0061】
更に、本実施形態のダンプトラック100において、冷却回路7~9を流れる冷却液と伝熱回路15を流れる熱媒体とは、同一の材料を用いて構成されている。
【0062】
これにより、ダンプトラック100は、補機用ポンプ12付近において伝熱回路15を流れる熱媒体が冷却回路7~9を流れる冷却液に混ざっても、冷却液が劣化することを防止することができる。よって、本実施形態のダンプトラック100は、蓄電装置4を含む主機の冷却回路7~9に、主機用ポンプ1~3を用いることなく冷却液を効率良く且つ確実に供給しながら、冷却液の劣化を防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…第1主機用ポンプ、2…第2主機用ポンプ、3…第3主機用ポンプ、4…蓄電装置、5…電力制御装置、6…コンバータ、7…第1冷却回路、8…第2冷却回路、9…第3冷却回路、10…冷却液タンク(タンク)、12…補機用ポンプ、15…伝熱回路、16…第1連結路、17…第2連結路、18…第3連結路、19…第4連結路、20~25…バルブ、40…制御装置、100…ダンプトラック