(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142507
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054665
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】塚本 圭
(72)【発明者】
【氏名】川村 葉月
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615RR04
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS19
5H615TT14
5H615TT16
(57)【要約】
【課題】セグメントコイルと接続部材との凝着が不安定になるのを防ぐ。
【解決手段】複数のスロットを有するステータコアと、前記スロット内に一部が配置され前記ステータコアに巻回されるステータコイルと、前記ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルを前記スロット内で電気的に接続させる接続部材と、を備えた、ステータの製造方法であって、前記接続部材を前記スロット内に挿入する第1挿入ステップと、前記セグメントコイルの直線部を、前記スロット内に挿入する第2挿入ステップと、前記スロット内に挿入された前記直線部を、前記ステータコアの軸方向に沿って、前記接続部材の長軸方向の端部に設けられた嵌合部に圧入する圧入ステップと、を有し、前記圧入ステップにおいて、前記直線部が前記嵌合部に圧入される間、前記接続部材は、前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に向かう方向に、押圧手段により押圧される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するステータコアと、前記スロット内に一部が配置され前記ステータコアに巻回されるステータコイルと、前記ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルを前記スロット内で電気的に接続させる接続部材と、を備えた、ステータの製造方法であって、
前記接続部材を前記スロット内に挿入する第1挿入ステップと、
前記セグメントコイルの直線部を、前記スロット内に挿入する第2挿入ステップと、
前記スロット内に挿入された前記直線部を、前記ステータコアの軸方向に沿って、前記接続部材の長軸方向の端部に設けられた嵌合部に圧入する圧入ステップと、
を有し、
前記圧入ステップにおいて、前記直線部が前記嵌合部に圧入される間、前記接続部材は、前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に向かう方向に、押圧手段により押圧される、ステータの製造方法。
【請求項2】
前記第1挿入ステップにおいて、複数の前記接続部材が、前記軸方向において前記押圧手段の位置に対応する位置に配置され、
前記圧入ステップにおいて、複数の前記接続部材が、同時に押圧される、請求項1に記載の、ステータの製造方法。
【請求項3】
前記直線部の端部には、導体が露出した裸電部が形成され、
隣接する前記セグメントコイルそれぞれの前記裸電部の間に絶縁紙を配置する配置ステップをさらに有し、
前記圧入ステップにおいては、前記絶縁紙が配置された後で、前記接続部材が押圧される、請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記直線部の端部には、導体が露出した裸電部が形成され、
前記第1挿入ステップにおいて、複数の前記接続部材が、前記軸方向において異なる位置に配置され、
前記異なる位置は、前記圧入ステップにおいて、複数の前記接続部材に前記直線部が圧入された後の状態において、少なくとも隣接する複数の前記セグメントコイルの前記裸電部が前記軸方向において互いに重ならない位置である、請求項1に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコイルを構成する複数のコイルを、接続部材を介して接続する方法が知られている。例えば特許文献1には、複数のセグメントコイルの端部を接続部材(連結部材)の両端に形成された嵌合凹部に圧入することにより、コイル同士を接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたステータは、複数のセグメントコイルの端部を接続部材の両端の嵌合凹部に圧入することで、接続部材とセグメントコイルとを強固に固定させる。しかしながら、圧入による凝着においては、セグメントコイル等の機械要素に不可避的な寸法のバラツキ(すなわち個体差)や、セグメントコイルと接続部材の締め代が十分でない、といったことに起因して、セグメントコイルと接続部材とを強固に固定できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、セグメントコイルと接続部材との凝着が不安定になるのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、複数のスロットを有するステータコアと、前記スロット内に一部が配置され前記ステータコアに巻回されるステータコイルと、前記ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルを前記スロット内で電気的に接続させる接続部材と、を備えた、ステータの製造方法であって、前記接続部材を前記スロット内に挿入する第1挿入ステップと、前記セグメントコイルの直線部を、前記スロット内に挿入する第2挿入ステップと、前記スロット内に挿入された前記直線部を、前記ステータコアの軸方向に沿って、前記接続部材の長軸方向の端部に設けられた嵌合部に圧入する圧入ステップと、を有し、前記圧入ステップにおいて、前記直線部が前記嵌合部に圧入される間、前記接続部材は、前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に向かう方向に、押圧手段により押圧される。
【0007】
この構成によれば、セグメントコイルがステータコアの軸方向に沿って、接続部材に圧入される間、接続部材がステータコアの径方向内側から径方向外側に向かう方向に押圧される。これにより、セグメントコイルと接続部材が密着するので、セグメントコイルが圧入されることにより確実に凝着が起き、凝着が不安定になるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2Aは第1セグメントコイルを示し、
図2Bは第2セグメントコイルを示す。
【
図3】接続部材及びセグメントコイルを示す図である。
【
図4】スロット内におけるセグメントコイルの配置状態を模式的に示す図である。
【
図7】ステータの製造方法のフローチャートである。
【
図9】変形例に係る、セグメントコイルの配置状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照しつつ、ステータの構成およびステータの製造方法について説明する。ここでは、下記の順序に従って本発明の実施形態について説明する。
(1)ステータの構成
(2)ステータの製造方法
(3)付記
【0010】
(1)ステータの構成
図1は、本実施形態におけるステータ1の構成を示す分解斜視図である。
図1に示すステータ1は、当該ステータ1の内径側に配置されたロータ(図示せず)と共にモータを構成する。ステータ1が適用されるモータは、電動機として用いられてもよいし、発電機として用いられてもよいし、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えたモータ・ジェネレータとして用いられてもよい。例えば、ステータ1は、電動車両やハイブリッド車両のモータに適用され、当該モータは、走行用の駆動力を生成する電動機として機能すると共に、回生トルクで発電を行う発電機として機能する。なお、本明細書においては、ステータ1の軸(中心軸)に沿った方向を「軸方向」と称し、軸に垂直な方向(ステータの半径方向)を「径方向」と称す。また、径方向における軸側を「径方向内側」と称し、径方向における軸と反対側(軸から離れる側)を「径方向外側」と称す。さらに、軸を中心とした円の周に沿った方向を「周方向」と称す。そして、軸方向のうち、ステータコイルにおいてリード線が引き出される方向をリード側と称し、その反対側を反リード側と称す。
図1においては、上側がリード側、下側が反リード側とする。
【0011】
ステータ1は、主な構成要素としてステータコア10と、ステータコア10に巻回されるステータコイル20とを備える。ステータコア10は、例えばプレス加工により略円環状に形成された複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を軸方向に積層して構成される積層鋼板である。または、ステータ1は、絶縁被覆された磁性粒子をプレス成形してなる圧粉磁芯であってもよい。
【0012】
ステータコア10は、
図1に示すように、略円環形状のヨーク11と、ヨーク11の内周面から径方向内側に突出する複数のティース12と、を有する。ティース12は、ヨーク11の内周面において周方向に一定の間隔毎に並んで形成されている。そして、当該ティース12の間にはステータコイル20の一部が収容される空間である複数のスロット13が形成されている。各スロット13は、それぞれステータコア10の径方向に延在し、複数のスロット13は、一定の間隔をおいて周方向に並んでいる。
【0013】
ステータコイル20は、ステータコア10のティース12に巻回される。ステータコイル20は、U相コイル、V相コイル、および、W相コイルを含む。これら各相のコイルの基端は、入力端子(図示せず)に接続されており、各相のコイルの末端は、他の相コイルの末端に接続されて中性点を形成する。すなわち、ステータコイル20は、スター結線される。なお、ステータコイル20の結線態様は、モータの仕様等に応じて、適宜変更されてよく、例えばステータコイル20は、スター結線に代えてデルタ結線されてもよい。
【0014】
また、ステータコイル20は、複数のティース12に跨って巻回される分布巻により巻回されてもよいし、1つのティース12に巻回される集中巻により巻回されてもよい。本実施形態においては、ステータコイル20は、分布巻によって巻回されている。そして、本実施形態では、ステータコイル20は、複数のセグメントコイル21が接続(すなわち結合)されて構成される。
【0015】
セグメントコイル21は、長尺のコイルを切断したものである。本実施形態では、セグメントコイル21は、ステータコア10の軸方向の一方側の端部からスロット13内に挿入される略U字状をなす第1セグメントコイル21aと、ステータコア10の軸方向の他方側の端部からスロット13内に挿入される逆U字状をなす第2セグメントコイル21bとを含む。第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bは、スロット13内において、接続部材30により電気的に接続される。なお、以下において、「第1」及び「第2」を区別しない場合には、添え字のアルファベットを省略して単に「セグメントコイル21」と記す。また、実際のステータ1は、多数のセグメントコイル21を有しているが、
図1では、説明の便宜上、一部のセグメントコイル21を図示している。また、上述のように、本実施形態において、ステータコイル20は分布巻きであって、
図1に示す例では、セグメントコイル21が3つのティース12に跨がって2つのスロット13に挿入されている。
【0016】
図2Aは、第1セグメントコイル21aを示す図である。第1セグメントコイル21aは、金属材料や合金材料(例えば銅線、銅錫合金線、銀メッキ銅錫合金線等)からなる導線22であり、その端部を残して、コイル皮膜23(墨ハッチングで図示)で被覆されている。コイル皮膜23としては、例えばポリアミドイミドのエナメル皮膜等の絶縁材料が用いられる。導線22は、断面形状が略矩形の平角線である。このように導線22の断面形状を平角線とするのは、スロット13内における第1セグメントコイル21aの線積率を向上させるためである。
【0017】
また、第1セグメントコイル21aは、ステータ1の完成時と同じ形状、すなわち最終形状に屈曲して成形されている。具体的には、第1セグメントコイル21aは、スロット13内に収容される一対の直線部24と、当該一対の直線部24を接続する接続部25と、を有した略U字状となっている。2つの直線部24の長さは等しい。また、直線部24の長さはステータコア10の軸方向の寸法より短くなっている。これは、本実施形態においては、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとをスロット13内で接続するためである。これにより、当該直線部24を軸方向の反リード側からスロット13内に挿入した際に、当該直線部24の末端がスロット13内に位置するようになっている。なお、一対の直線部24の間隔dは、第1セグメントコイル21aが挿入される2つのスロット分の長さとなる。
【0018】
また、接続部25は、ステータコア10の軸方向の端部において、周方向に延びて、コイルエンド(反リード側のコイルエンド)の一部を構成する。そして、第1セグメントコイル21aの両端部、すなわち直線部24の末端には、コイル皮膜23が剥離され、導線22が外部に露出した裸電部26が形成されている。裸電部26の先端は、後述する接続部材30への嵌合し易さを考慮して、例えば先細り状のテーパー形状や段差形状とされている。
【0019】
図2Bは、第2セグメントコイル21bを示す図である。第2セグメントコイル21bは、第1セグメントコイル21aと同様に、金属材料や合金材料(例えば銅線、銅錫合金線、銀メッキ銅錫合金線等)からなる導線22を、コイル皮膜23で被覆している。第2セグメントコイル21bに用いられる導線22は、第1セグメントコイル21aに用いられる導線22と同様に、断面形状が略矩形の平角線となっている。この第2セグメントコイル21bは、第1セグメントコイル21aと同様に、ステータ1の完成時と同じ形状である最終形状に形成されている。具体的には、第2セグメントコイル21bは、スロット13内に収容される一対の直線部24と、この一対の直線部24を接続する接続部25とを有する略逆U字状の部材である。本実施形態において、2つの直線部24の長さは、等しく、また直線部24の長さは、第1セグメントコイル21aの直線部24と同様に、ステータコア10の軸方向の寸法よりも短くなっている。
【0020】
また、第2セグメントコイル21bにおける接続部25も、ステータコア10の軸方向の端部において、周方向に延びて、コイルエンド(リード側のコイルエンド)の一部を構成する。そして、第2セグメントコイル21bの両端部には、コイル皮膜23が剥離され、導線22が外部に露出した裸電部26が形成されている。なお、裸電部26(導線22)の先端は、第1セグメントコイル21aと同様に、例えば先細り状のテーパー形状や段差形状等とされている。
【0021】
第1セグメントコイル21aの直線部24の長軸方向の長さは、第1の長さL21であり、第2セグメントコイル21bの直線部24の長軸方向の長さは、第2の長さL22である。ここで、第1の長さL21と第2の長さL22の和は、ステータコア10の軸方向の長さL11と同程度かそれよりもわずかに長いものとする。また、第1の長さL21と第2の長さL22は等しいものとする。ただし、第1の長さL21と第2の長さL22は、その和がステータコア10の軸方向の長さL11と同程度かそれよりもわずかに長ければよく、第1の長さ21と第2の長さ22は、異なっていてもよい。
【0022】
上述の第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとは、
図3に示すように、接続部材30を介して互いに接続される。接続部材30は、スロット13内で第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとを電気的に接続させる中空部材であり、当該接続部材30は、長軸方向に貫通する貫通孔が形成された筒状となっている。筒の形状は、筒に挿入される、裸電部26の平角線の形状に対応し、略矩形に形成されている。接続部材30の長軸方向における両端には、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとがそれぞれ嵌合する第1嵌合部31a及び第2嵌合部31bが設けられている。すなわち接続部材30の一端に第1セグメントコイル21aの裸電部26が嵌合し、接続部材30の他端に第2セグメントコイル21bの裸電部26が嵌合する。
図3においては、第1セグメントコイル21aと嵌合する端部を第1嵌合部31a、第2セグメントコイル21bと嵌合する端部を第2嵌合部31bとする。また、第1と第2を区別しない場合は、添え字アルファベットを省略して「嵌合部31」と記す。なお、この
図3に示す例は、本実施形態のステータ1の製造方法により、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとが接続部材30を介して接続された例を示している。当該ステータ1の製造方法の具体的な態様については、後述する。
【0023】
接続部材30は、金属材料又は合金材料からなる筒状の本体32と、当該本体32の外周面を被覆する絶縁皮膜33と、を備えている。本体32は、金属材料又は合金材料で形成される。本実施形態においては、本体32は、銅で形成されているものとする。筒状の本体32の内周面は、軸方向の一方側(反リード側)で嵌合された第1セグメントコイル21aの裸電部26の外周面と密着し、当該密着した面で凝着により接続部材30と第1セグメントコイル21aとが固定されている。また、筒状の本体32の内周面は、軸方向の他方側(リード側)で嵌合された第2セグメントコイル21bの裸電部26と密着し、当該密着した面で凝着により接続部材30と第1セグメントコイル21aとが固定されている。言い換えれば、接続部材30の本体32は、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとに嵌合し、さらに密着し、凝着することで、これら第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとが電気的に接続され、ステータコイル20の電流経路の一部を形成する。また、本体32の外周面は、予め、絶縁皮膜33で被覆されているため、隣接するコイルとの絶縁を容易に確保できる。
【0024】
なお、接続部材30における本体32は、上述のように電流経路の一部として機能するため、ステータコイル20に電流が流れる際、当該ステータコイル20とともに発熱する。当該発熱を受けて本体32は熱膨張することになるが、この際に当該本体32とセグメントコイル21の導線22との嵌め合いが緩まないように構成することが好ましい。例えば本体32は、膨張係数が、セグメントコイル21の導線22と同じか小さい材質で構成されることが好ましい。本実施形態では、本体32は、例えば導線22と同じ材質(例えば、銅や合金などの金属)から構成される。
【0025】
また、上述のように、第1セグメントコイル21aは、接続部材30の反リード側の端部に設けられた第1嵌合部31aに嵌合され、第2セグメントコイル21bは、接続部材30のリード側の端部に設けられた第2嵌合部31bに嵌合される。このとき、第1セグメントコイル21aと、第2セグメントコイル21bとは、接続部材30の内部において、互いに当接するものとする。ただし、他の例としては、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bは離間していてもよい。第1セグメントコイル21aと、第2セグメントコイル21bとが離間していても、導電性材料からなる本体32により、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとの電気的接続は確保される。なお、接続部材30の内部であって、第1セグメントコイル21aと、第2セグメントコイル21bとの間に、導電性ペースト(例えば銀ナノペースト等)が充填されてもよい。当該導電性ペーストを設けることで、接続部材30において電気抵抗を低減でき、かつ熱伝導率を向上させることができる。
【0026】
図4は、スロット13内におけるセグメントコイル21の配置状態を模式的に示す図である。
図4の例ではスロット13内には、径方向に沿って6本のセグメントコイル21が配置されている。各セグメントコイル21に接続された接続部材30は、いずれも軸方向においてA1の位置に配置されている。すなわち、各接続部材30の軸方向の位置は、等しい。なお、軸方向の位置A1は、スロット13内の中間位置である。なお、接続部材30が配置される軸方向の位置は、スロット13内のいずれの位置でもよい。ただし、この場合には、接続部材30の位置に合わせて、第1セグメントコイル21a及び第2セグメントコイル21bそれぞれの直線部24の長さが設計されるものとする。
【0027】
図3及び
図4に示すように、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bが接続部材30に挿入された状態において、裸電部26の一部が接続部材30に覆われない状態となる。さらに、
図4に示すように、接続部材30は、軸方向において等しい位置に配置される。このため、複数の第1セグメントコイル21aがスロット13内において径方向に配置されることにより、第1セグメントコイル21aのうち接続部材30に覆われていない裸電部26同士が隣接することになる。同様に、複数の第2セグメントコイル21bがスロット13内において径方向に配置されることにより、第2セグメントコイル21bのうち接続部材に覆われていない裸電部26同士が隣接することになる。
【0028】
そこで、本実施形態においては、隣接するセグメントコイル21の裸電部26の間には、絶縁紙50が配置される。絶縁紙50は、その軸方向の長さが、第1セグメントコイル21aの裸電部26の反リード側の端部から、第2セグメントコイル21bの裸電部26のリード側の端部までの長さよりも長く、各裸電部26を覆うように配置される。
【0029】
図5は、絶縁紙50の形状を示す図であり、
図6は、径方向において隣接する裸電部26の断面図であり、裸電部26の間に絶縁紙50が配置された状態を示している。
図6に示すように、径方向で隣接する複数の裸電部26それぞれの、長軸に垂直な断面の矩形の4辺のうち、周方向に沿ったスロット13の内壁及び隣接する裸電部26に対向する2つの側面を第1面26aと称する。また、第1面26aに垂直な2つの側面を第2面26bと称する。
【0030】
図5に示すように、絶縁紙50は、例えばノーメックスなどの1枚のシート状の絶縁部材が折りたたまれて形成される。そして、
図6に示すように、折りたたまれた絶縁紙50は、径方向において最も外側(外側から1番目)に配置された裸電部26の2つの第1面26aと、一方の第2面26bを覆う。絶縁紙50はさらに、径方向において外側から2番目に配置された裸電部26の2つの第1面26aと、1番目の裸電部26の第2面26bと異なる側の第2面26bを覆う。このように、絶縁紙50は、各裸電部26の第1面26aを覆いつつ、隣り合う裸電部26の、異なる側の第2面26bを覆う。このように、絶縁紙50が配置されることで、1つのスロット13内に配置される全ての裸電部26同士の絶縁性を確保できる。また、セグメントコイル21と、スロット13(ステータコア10)の間にも、不図示の絶縁紙が配置される。これにより、セグメントコイル21のスロット13への挿入時に、絶縁紙がコイル被膜を保護することができる。
【0031】
(2)ステータの製造方法
以下では、上述のように構成されたステータ1の製造方法について説明する。
図7は、特にステータ1を構成するステータコイル20の製造方法を示すフローチャートである。なお、ステータコア10の製造方法については、従来知られている通りであって、例えばプレス加工により略円環状に形成された薄い複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を軸方向(積層方向)に積層させることで成形される。
【0032】
先ず、コイル材料を切断する(ステップS1)。具体的には、長尺なコイル材料を、所望の長さに切断する。コイル材料は、セグメントコイル21の材料であり、長尺な導線22をコイル皮膜23で被覆している。本実施形態では、第1セグメントコイル21aの形状と、第2セグメントコイル21bの形状と、にそれぞれ対応させるべく断面略矩形の平角線を使用したコイル材料を準備する。コイル材料は、刃物等を用いて、ステータ1の完成時と同じ長さが得られるように切断される。また、本実施形態においては、コイル材料を切断後、各セグメントコイル21の端部が、例えば先細りのテーパー形状となるように加工される。
【0033】
次に、各セグメントコイル21の端部においてコイル皮膜23を剥離して、導線22を露出させた裸電部26を形成する(ステップS2)。この裸電部26は、例えば、レーザ等を用いて、コイル皮膜23を非接触で切断して形成してもよいし、適宜のカッター等によりコイル皮膜23を切削して形成してもよい。
【0034】
次に、セグメントコイル21を、屈曲または湾曲させて、
図2Aおよび
図2Bで示す第1セグメントコイル21aおよび第2セグメントコイル21bのように所望の形状になるように成形する(ステップS3)。この成形は、例えば、セグメントコイル21を専用の金型に押し付けたり、専用のローラで曲げたりして行うことができる。また、この成形において、各セグメントコイル21は、最終形状に成形される。言い換えれば、ステータコア10に組み付け後に、各セグメントコイル21に曲げ加工は施されない。したがって、本実施形態において、第1セグメントコイル21aは略U字状に成形され、第2セグメントコイル21bは、略逆U字状に成形される。
【0035】
次に、成形後の第1セグメントコイル21aを接続部材30に挿入する(ステップS4)。この際、第1セグメントコイル21aを接続部材30に対して凝着させる。接続部材30は、内側のサイズが裸電部26のサイズと等しいか、または、それよりもわずかに小さく形成されている。そして、それぞれ中間嵌め又はしまり嵌めにより、接続部材30に第1セグメントコイル21aが圧入されることにより、第1セグメントコイル21aの裸電部26は、接続部材30と凝着する。なお、本工程は、接続部材30や第1セグメントコイル21aをスロット13に挿入する前に実行される工程である。なお、接続部材30の内径のサイズが裸電部26のサイズと等しいとは、矩形の4辺のサイズが等しいことを意味する。また、接続部材30の内径のサイズが裸電部26のサイズよりもわずかに小さいとは、内径の4辺のサイズそれぞれが裸電部の4辺のサイズそれぞれよりもわずかに小さいことを意味する。
【0036】
次に、ステップS5において、まず、スロット13内に絶縁紙を挿入する。続いて、
図5に示す絶縁紙50を、スロット13内に挿入するための挿入治具(図示せず)を準備し、挿入治具に絶縁紙50を取り付け、絶縁紙50が取り付けられた状態で、挿入治具を、スロット13のリード側の端部から挿入する。これにより、絶縁紙50の軸方向の位置は、後の工程において、接続部材30が配置される位置に対応した位置で固定される。
【0037】
そして、挿入治具に取り付けられた絶縁紙50がスロット13内に配置された状態で、ステップS6において、第1セグメントコイル21aをステータコア10のスロット13内に挿入する。具体的には、接続部材30が接続された状態の第1セグメントコイル21aの直線部24を、反リード側の端部からスロット13内に挿入する。このように、接続部材30は、第1セグメントコイル21aに接続された状態で、スロット13内に挿入される。本処理は、接続部材30をスロット13内に挿入する第1挿入ステップの一例である。スロット13内において、径方向で隣接する接続部材30は、軸方向において、同じ位置に配置される。第1セグメントコイル21aが挿入治具に当接したら、挿入治具をスロット13外へ移動させる。以上の工程により、接続部材30と、第1セグメントコイル21aの裸電部26に対応する軸方向の位置には、絶縁紙50が配置されることになる。すなわち、径方向において隣接する第1セグメントコイル21aそれぞれの裸電部26の間には、絶縁紙50が配置される。
【0038】
図4を参照しつつ前述した通り、絶縁紙50は、その軸方向の長さが、第1セグメントコイル21aの裸電部26の反リード側の端部から、第2セグメントコイル21bの裸電部26のリード側の端部までの長さよりも長くなるように形成されている。したがって、後の工程において第2セグメントコイル21bが挿入された後の状態においては、
図4に示すように、径方向において隣接する第2セグメントコイル21bそれぞれの裸電部26の間には、絶縁紙50が配置されるようになる。ステップS5及びステップS6は、複数のセグメントコイル21それぞれの裸電部26の間に絶縁紙50を配置する配置ステップの一例である。
【0039】
次に、ステップS7において、第2セグメントコイル21bを、スロット13内に挿入する。具体的には、第2セグメントコイル21bの直線部24を、リード側の端部から挿入する。本処理は、セグメントコイルの直線部をスロット13内に挿入する第2挿入ステップの一例である。
【0040】
次に、ステップS8において、第2セグメントコイル21bを接続部材30に圧入する。これにより、第2セグメントコイル21bの裸電部26と接続部材30の本体32が凝着し、ステータ1が完成する。ステップS8では、具体的には、
図8Aに示すように、接続部材30に第1セグメントコイル21aが接続された状態の接続部材30に対して、第2セグメントコイル21bを圧入する。このとき、
図8Bに示すように、押圧部材40(例えば、押し付け用の治具)を用いて、径方向に配置された複数の接続部材30のうち、最も内側に配置された接続部材30の側面34を径方向内側から径方向外側に向けて押圧する。ここで、側面34とは、接続部材30の外周の面である。
図8Bにおいては、1つの接続部材30のみを示しているが、
図4に示すように、スロット13内において径方向に配置された複数の接続部材30が軸方向において同じ位置(
図4の例ではA1の位置)に配置された状態で、最も内側の接続部材30の側面34が押圧される。したがって、スロット13内の複数の接続部材30それぞれが、同時に直接又は間接に押圧部材40により、径方向外側に向けて押圧される。
【0041】
そして、径方向外側へ押圧された状態を維持しつつ、径方向に複数配置された接続部材30それぞれの第2嵌合部31bに、第2セグメントコイル21bの裸電部26が設けられた端部(直線部24の長軸方向の端部)を軸方向に沿って圧入する。本工程は圧入ステップの一例である。また、押圧部材40は、押圧手段の一例である。
【0042】
第2セグメントコイル21bを反リード側に向けて軸方向に押圧した場合においても、第2セグメントコイル21bを構成する一対の直線部24の間が広がるよう、すなわち軸方向からずれた方向に力が加わってしまう場合がある。この場合には、裸電部26と接続部材30の本体32の間の密着が不均一となり、凝着が不十分な部分が生じる可能性がある。これに対し、上記の通り、第2セグメントコイル21bを接続部材30に圧入する間、接続部材30を径方向内側から径方向外側に向かう方向に押圧する。これにより、第2セグメントコイル21bと接続部材30の間の隙間が狭くなり、軸方向からずれることなく、圧入されるようになる。したがって、裸電部26と接続部材30の本体32の密着が均一となり、また押圧により密着の程度が高くなるので、第2セグメントコイル21bの裸電部26と接続部材30の本体32とを強固に凝着させることができる。
【0043】
また、第2セグメントコイル21bを接続部材30に圧入している間の、押圧部材40による押圧力は一定とする。第2セグメントコイル21bの第2嵌合部31bへの嵌合深さが深くなるほど、接続部材30の本体32と裸電部26の凝着面積が大きくなるので、接合力を高めることができる。
【0044】
以上のように、第1の実施形態のステータ1の製造方法においては、第2セグメントコイル21bを接続部材30に圧入している間、接続部材30の側面34が押圧部材40により押圧される。これにより、接続部材30と第2セグメントコイル21bの凝着力を高めることができる。したがって、セグメントコイルなどの寸法にばらつきがある場合や、セグメントコイルと接続部材の締め代が十分でない場合においても、凝着が不安定になるのを防ぐことができる。
【0045】
(3)付記
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。そうした第1の変形例としては、ステップS5の処理は、ステップS4の処理の前に実行されてもよく、ステップS4の処理とステップS5の処理は同時に実行されてもよい。
【0046】
また、第2の変形例としては、ステップS4において第1セグメントコイル21aを接続部材30に挿入し、凝着させる際にも、接続部材30をその長軸に垂直な方向に押圧することとしてもよい。具体的には、接続部材30を治具などで固定した上で、押圧部材40で接続部材30の長軸に垂直な方向に押圧しつつ、第1セグメントコイル21aを第1嵌合部31aから圧入する。
【0047】
第3の変形例としては、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bの挿入順を変更してもよい。第1セグメントコイル21aに替えて、第2セグメントコイル21bに接続部材30を凝着させた状態でスロット13に挿入し、その後、スロット13内において、第1セグメントコイル21aを接続部材30と凝着させることとしてもよい。この場合には、第1セグメントコイル21aを接続部材30に圧入させる間、押圧部材40により接続部材30を押圧することとする。
【0048】
第4の変形例としては、接続部材30に第1セグメントコイル21a及び第2セグメントコイル21bのいずれも接続されていない状態で、接続部材30をスロット13内に挿入することとしてもよい。この場合には、挿入された接続部材30を、固定部材(不図示)で固定した状態で、第1セグメントコイル21a及び第2セグメントコイル21bを接続部材30に圧入する。また、この場合には、いずれのセグメントコイル21a、21bを圧入する場合にも押圧部材40により接続部材30を押圧することとする。
【0049】
第5の変形例としては、径方向において隣接するセグメントコイル21の裸電部26の絶縁性を確保するために、絶縁紙50を配置する構成に替えて、高熱伝導樹脂を用いてもよい。具体的にはセグメントコイル21とスロット13の隙間、隣接するセグメントコイル21の裸電部26の隙間に、高熱伝導樹脂を埋め込む。なお、高熱伝導樹脂を埋め込む工程は、ステップS8の工程の後で実行されるものとする。
【0050】
第6の変形例としては、
図9に示すように、スロット13内において隣接するセグメントコイル21の裸電部26の位置が軸方向において互いに重ならないように接続部材30が配置されてもよい。具体的には、
図9に示すように、接続部材30の軸方向の位置を、径方向に隣接する他の接続部材30とずらす。
図9には、1つのスロット13において、径方向内側から径方向外側に6つのセグメントコイル21が配置された例を示している。径方向において、最も内側の位置(内側から1番目の位置)においては、A11の位置に接続部材30が配置され、内側から2番目の位置においては、A12に位置に接続部材30が配置されている。ここで、A11とA12は、異なる位置であり、かつ各位置に接続部材30が配置された場合に、隣接する裸電部26同士が重ならないような位置である。このような位置を実現するには、A11とA12の軸方向の距離が、接続部材30の長軸方向の長さと、露出している2つの裸電部26それぞれの長さと、の和よりも長ければよい。そして、内側から3番目の位置においては、A11の位置に接続部材30が配置され、4番目の位置においては、A12の位置に接続部材30が配置される。このように、接続部材30は、2つの位置に交互に配置される。このように、隣接するセグメントコイル21における接続部材30の軸方向における配置位置を、異ならせることで、コイル間の絶縁を確実に確保することができる。
【0051】
なお、このような構成においては、第1セグメントコイル21aとして、A11の位置に接続部材30が位置できるような第1の長さのセグメントコイルと、A12の位置に接続部材30が位置できるような第2の長さのセグメントコイルと、が用いられる。同様に、第2セグメントコイル21bとして、A12の位置に接続部材30が位置できるような第2の長さのセグメントコイルと、A11の位置に接続部材が位置できるような第1の長さのセグントコイルと、が用いられる。
【0052】
なお、接続部材30の位置は、スロット13内において隣接するセグメントコイル21の裸電部26の位置が軸方向に互いに重ならないような位置であればよく、
図9に示す例に限定されるものではない。すなわち、スロット13内において、接続部材30は、3以上の位置に配置されてもよい。
【0053】
第7の変形例としては、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとの導線22の断面形状は、矩形に限定されるものではなく、例えば丸線であってもよい。特に、第2セグメントコイル21bは、第1セグメントコイル21aに比べて、ステータ1の周方向だけではなく、ステータ1の径方向にも屈曲または湾曲させる必要がある。そのため、第2セグメントコイル21bは、第1セグメントコイル21aよりも柔軟に曲げられることが望まれる。そこで、例えば第2セグメントコイル21bの導線22の断面形状を丸線としてもよい。これにより、第2セグメントコイル21bの曲げ加工が、断面形状が角線である場合に比べて容易となる。
【0054】
第8の変形例としては、第1セグメントコイル21aと第2セグメントコイル21bとで、それぞれの導線22及びコイル皮膜23の厚さや材質は同じでもよいが、異ならせてもよい。特に、第2セグメントコイル21bの導線22を丸線で構成した場合には、矩形断面の平角線に比べるといずれの方向に対しても曲げ加工が容易で、曲げ加工によるコイル皮膜23の損傷も少ない。したがって、その場合には、丸線を用いる第2セグメントコイル21bのコイル皮膜23の厚さは、平角線を用いる第1セグメントコイル21aのコイル皮膜23の厚さよりも薄くしてもよい。
【0055】
第9の変形例としては、接続部材30は、その両端に嵌合部31が形成されていれば、貫通孔が形成された筒体でなくてもよい。また、嵌合部31のうち第1嵌合部31aと第2嵌合部31bとは、同じ形状に限られず、例えばセグメントコイル21の導線22の形状に応じて適宜変更されることで、互いの嵌合部31の形状が異なってもいてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…ステータ、10…ステータコア、11…ヨーク、12…ティース、13…スロット、20…ステータコイル、21…セグメントコイル、21a…第1セグメントコイル、21b…第2セグメントコイル、22…導線、23…コイル皮膜、24…縦線部、25…接続部、26…裸電部、26a…第1面、26b…第2面、30…接続部材、31…嵌合部、31a…第1嵌合部、31b…第2嵌合部、32…本体(接続部材の)、33…絶縁皮膜(接続部材の)、34…側面、40…押圧器具、50…絶縁紙