(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142517
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】オーディオ制御方法およびオーディオデータ処理装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241003BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241003BHJP
H04R 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04R3/00 310
B60R11/02 S
H04R5/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054675
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪
【テーマコード(参考)】
3D020
5D011
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE03
5D011AA13
5D220AA01
5D220AA05
5D220AA12
5D220AB00
(57)【要約】
【課題】オーディオデータに対する処理の内容の切り替えを、適切なタイミングで行う。
【解決手段】車載オーディオ装置10は、オーディオデータのオーディオレベルを検出する。車載オーディオ装置10は、オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定する。車載オーディオ装置10は、オーディオレベルが所定の条件を満たした場合に、オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から第2モードに沿った処理に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実現されるオーディオ制御方法であって、
オーディオデータのオーディオレベルを検出し、
前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定し、
前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替える、
オーディオ制御方法。
【請求項2】
前記所定の条件を満たすか否かは、前記オーディオレベルの時間的推移に基づいて判定される、
請求項1記載のオーディオ制御方法。
【請求項3】
前記所定の条件は、基準時点までの所定期間に渡る前記オーディオレベルの平滑値が第1所定値以下であることを含む、
請求項2記載のオーディオ制御方法。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記基準時点に連続する所定数のサンプリング時刻における前記オーディオレベルが第2所定値以下であることを含む、
請求項3記載のオーディオ制御方法。
【請求項5】
前記オーディオデータは、車両に搭載された車載オーディオ装置で音を発生させるためのデータであり、
前記第1モードと前記第2モードとは、前記車両の各座席における乗員の有無に基づいて切り替えられる、
請求項1記載のオーディオ制御方法。
【請求項6】
前記車両は、前記オーディオデータに基づく音が出力される第1スピーカ群および第2スピーカ群を備え、
前記第1モードでは、前記第1スピーカ群および前記第2スピーカ群から前記音が出力され、前記第2モードでは、前記第1スピーカ群のみから前記音が出力される、
請求項5記載のオーディオ制御方法。
【請求項7】
前記モードの切り替えは、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定の少なくともいずれかに関する処理パラメータの値の切り替えに対応する、
請求項1記載のオーディオ制御方法。
【請求項8】
前記オーディオデータに基づく音が出力される空間の環境の変化に基づいて、前記第1モードから前記第2モードに切り替える指示を出力することを更に含む、
請求項1記載のオーディオ制御方法。
【請求項9】
前記第1モードから前記第2モードに切り替える指示は、ユーザによる前記モードの切り替え操作である、
請求項1記載のオーディオ制御方法。
【請求項10】
オーディオデータのオーディオレベルを検出する検出部と、
前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定する判定部と、
前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替えるモード切替部と、
を備えるオーディオデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ制御方法およびオーディオデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音が出力される場の環境、音の種類、またはユーザの好み等に応じて、オーディオデータに対して行う処理の内容を変更する技術が知られている。例えば下記特許文献1は、人体センサを用いて車両の各座席における乗員の有無を検出し、乗員の有無に応じて車両に設けられた複数のスピーカ各々からの音の出力を調整し、適正な音場とする手法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば1つの楽曲等、連続する音の出力中に処理の内容を切り替えると、ユーザに違和感を与える可能性がある。ユーザに違和感を与えるのを防止するために、例えば出力前の音データを解析して音の切り替わりのタイミングを事前に検出する方法も採用され得るが、処理が複雑となりコストアップにつながる。
【0005】
本開示の一つの態様は、オーディオデータに対する処理の内容の切り替えを、適切なタイミングで行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係るオーディオ制御装置は、コンピュータにより実現されるオーディオ制御方法であって、オーディオデータのオーディオレベルを検出し、前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定し、前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替える。
【0007】
また、本開示のひとつの態様に係るオーディオデータ処理装置は、オーディオデータのオーディオレベルを検出する検出部と、前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定する判定部と、前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替えるモード切替部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる車載オーディオ装置10の構成を例示する図である。
【
図2】車両Cにおけるスピーカ19の配置を例示する図である。
【
図3】オーディオレベルの時間的推移を模式的に示す図である。
【
図4】車載オーディオ装置10の制御装置11の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態にかかる車載オーディオ装置10Aの構成を示すブロック図である。
【
図6】第3変形例にかかる車載オーディオ装置10Bの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:実施形態
A-1:システム構成
図1は、実施形態にかかる車載オーディオ装置10の構成を例示する図である。車載オーディオ装置10は、自動車等の車両C(
図2参照)に搭載され、スピーカ19(19-1~19-N、Nは2以上の整数)から車両Cの車室内に音を出力する。スピーカ19から出力される音(以下、「出力音」と称する場合がある)は、例えばCD(Compact Disc)またはスマートフォン等に記憶された楽曲データの再生音、ラジオ放送の音声、テレビ放送等の動画の音声、ナビゲーション装置の案内音声またはハンズフリー通話による通話音声等である。
【0010】
車載オーディオ装置10は、制御装置11、記憶装置12、入力装置13、オーディオデータ取得装置14、複数のアンプ17(17-1~17-N)および複数のスピーカ19(19-1~19-N)を備える。また、車載オーディオ装置10には、車両Cに搭載されたカメラ51が接続される。車載オーディオ装置10とカメラ51との接続には、CAN(Controller Area Network)が用いられる。
【0011】
制御装置11は、オーディオデータ処理装置およびコンピュータの一例である。制御装置11は、車載オーディオ装置10の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。例えば、制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより構成される。
【0012】
制御装置11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより、モード決定部110、検出部111、条件判定部112、モード切替部113、データ処理部114およびボリューム調整部115として機能する。これら機能部の詳細については後述する。
【0013】
記憶装置12は、制御装置11が実行するプログラムを記憶する。記憶装置12は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体(例えば、コンピュータによって読み取り可能なnon transitoryな記録媒体)である。記憶装置12は、不揮発性メモリと、揮発性メモリと、を含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。なお、記憶装置12は、車載オーディオ装置10に対して着脱される可搬型の記録媒体、またはネットワークを介して制御装置11が書込または読出を実行可能な記録媒体(例えばクラウドストレージ)であってもよい。
【0014】
入力装置13は、車両Cのユーザからの入力を受け付ける。車両Cのユーザとは、例えば車両Cの乗員である。入力装置13は、例えば車両Cのユーザから、出力音の音量の指定を受け付ける。以下、入力装置13を用いて指定された出力音の音量を「指定音量」という。また、入力装置13は、例えば車両Cのユーザから、出力音の種類の指定を受け付けてもよい。出力音の種類の指定とは、例えば出力音を、CDに記録された楽曲の再生音からラジオ放送に切り替える、等である。出力音の種類の指定は、オーディオデータの種類の指定と言い換えることができる。入力装置13は、具体的には、例えばタッチパネル、種々の操作ボタンを有する操作盤またはリモコンである。
【0015】
オーディオデータ取得装置14は、スピーカ19から出力音を発生させるためのオーディオデータを取得する。言い換えると、オーディオデータは、車両Cに搭載された車載オーディオ装置10で音を発生させるためのデータである。オーディオデータ取得装置14は、例えば入力装置13を介してユーザから指定された種類のオーディオデータを取得する。オーディオデータ取得装置14は、例えばCDまたはSDカード等の記録媒体に記憶された音データを読み取って再生することにより(または再生音データを取得することにより)オーディオデータを生成してもよい。また、オーディオデータ取得装置14は、ラジオ放送またはテレビ放送を受信することによりオーディオデータを取得してもよい。また、オーディオデータ取得装置14は、例えば無線通信または有線通信を用いて近傍に位置する電子機器(例えばスマートフォン、ポータブル音楽プレイヤなど)からオーディオデータを取得してもよい。また、オーディオデータ取得装置14は、例えば車両Cに搭載されたナビゲーション装置からオーディオデータを取得してもよい。
【0016】
アンプ17は、オーディオデータを増幅し、増幅した音信号をスピーカ19に供給する。スピーカ19は、アンプ17から供給されたオーディオデータに基づく音を出力する。
【0017】
図2は、車両Cにおけるスピーカ19の配置を例示する図である。
図2は、N=4の場合、すなわち、車両Cにスピーカ19-1~19-4が搭載されている場合を示す。車両Cは、座席P(P1~P4)を備える。座席P1および座席P2は、車両Cの車室の前部に設けられた座席Pである。座席P1は運転席であり、座席P2は助手席である。座席P3および座席P4は、車両Cの車室の後部に設けられた座席Pである。座席P3は、運転席である座席P1の後方に位置する座席Pであり、座席P4は、助手席である座席P2の後方に位置する座席Pである。
【0018】
また、車両Cは、ドアD(D1~D4)を備える。ドアD1は、座席P1に着席する乗員が乗り降りするためのドアDである。なお、乗員はユーザの一例である。ドアD2は、座席P2に着席する乗員が乗り降りするためのドアDである。ドアD3は、座席P3に着席する乗員が乗り降りするためのドアDである。ドアD4は、座席P4に着席する乗員が乗り降りするためのドアDである。
【0019】
スピーカ19-1は、ドアD1に設けられる。スピーカ19-2は、ドアD2に設けられる。スピーカ19-3は、ドアD3に設けられる。スピーカ19-4は、ドアD4に設けられる。換言すれば、スピーカ19-1は、座席P1に対応する箇所に設けられる。スピーカ19-2は、座席P2に対応する箇所に設けられる。以下、車両Cの前部に設けられたスピーカ19-1および19-2を、「第1スピーカ群」という場合がある。また、スピーカ19-3は、座席P3に対応する箇所に設けられる。スピーカ19-4は、座席P4に対応する箇所に設けられる。以下、車両Cの後部に設けられたスピーカ19-3および19-3を、「第2スピーカ群」という場合がある。
【0020】
つぎに、車両Cに搭載されたカメラ51について説明する。カメラ51は、車両Cの車室内を撮像した画像を生成する。カメラ51は、例えばフロントガラスの近傍に車両Cの後方に撮像方向を向けて設置されている。本実施形態では、カメラ51の画像は各座席P1~P4における乗員の有無の判定に用いられる。
【0021】
A-2.制御装置11の詳細
次に、制御装置11がプログラムを実行することによって実現する、モード決定部110、検出部111、条件判定部112、データ処理部114およびボリューム調整部115の詳細について説明する。
【0022】
モード決定部110は、オーディオデータの処理に関するモード(以下、「処理モード」という)を決定する。処理モードとは、オーディオデータに対する処理に用いる処理パラメータの値を指定することに対応する。例えば、第1モードでは第1パラメータ値を用いてオーディオデータに対する処理が行われ、第2モードでは第2パラメータ値を用いてオーディオデータに対する処理が行われる。オーディオデータに対する処理は、後述するデータ処理部114またはアンプ17等で行われる。
【0023】
本実施形態では、処理モードの一例として「乗員別モード」を例に挙げて説明する。「乗員別モード」では、車室内の各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて、音が出力されるスピーカ19が切り替えられる。例えば、座席P1(運転席)にのみ乗員がいる場合と、全ての座席P1~P4に乗員がいる場合とでは、最適な音像の位置が異なる。また、全ての座席P1~P4に乗員がいる場合には、全てのスピーカ19-1~19-4から音を出力する必要があるのに対して、座席P1にのみ乗員がいる場合には、オーディオデータの種類によっては、車両Cの車室の前部に設けられた第1スピーカ群から音を出力すれば足りる。乗員の乗車座席に基づいて、音を出力するスピーカ19および各スピーカ19から出力する音の音質を変更することによって、全ての乗員が最適な音質で音を聞くことができる。
【0024】
乗員別モードは、例えば「全座席モード」および「前座席モード」を有する。全座席モードは、座席P1および座席P2の少なくともいずれか、および、座席P3および座席P4の少なくともいずれかに乗員がいる場合に指定される。前座席モードは、座席P1(運転席)または座席P2(助手席)の少なくともいずれかに乗員がいる場合に指定される。本実施形態では、全座席モードでは第1スピーカ群および第2スピーカ群(スピーカ19-1~19-4)から、前座席モードでは第1スピーカ群(スピーカ19-1および19-2)から、それぞれ音が出力されるものとする。
【0025】
すなわち、モード決定部110は、オーディオデータに基づく音が出力される空間の環境の変化に基づいて、処理モードを切り替える指示を出力する。音が出力される空間とは、車室内であり、空間の環境の変化とは、車両Cの各座席P1~P4における乗員の有無である。例えば、全座席モードを第1モード、前座席モードを第2モードとする。第1モードおよび第2モードは、車両Cの各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて切り替えられる。第1モードでは、第1スピーカ群および第2スピーカ群から音が出力され、第2モードでは、第1スピーカ群のみから音が出力される。
【0026】
モード決定部110は、例えばカメラ51で撮像された画像を解析して、車両Cの各座席P1~P4における乗員の有無を判定する。そして、モード決定部110は、各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて、モードを決定する。モード決定部110は、車載オーディオ装置10の起動中、所定のサンプリング間隔でカメラ51の画像を取得し、画像を取得する都度、当該画像に基づいてモードを決定する。モード決定部110は、今回決定したモードと、前回決定したモード(現在指定されているモード)とが異なる場合に、モードの切り替えを指示する信号(以下、「切替指示信号」という)を条件判定部112に出力する。すなわち、モード決定部110は、オーディオデータに基づく音が出力される空間の環境の変化に基づいて、第1モードから第2モードに切り替える切替指示信号を出力する。
【0027】
なお、カメラ51に加えて、またはカメラ51に代えて、車両Cの各座席P1~P4の座面に座席センサを設けてもよい。座席センサは、座席P1~P4の座面に設けられた感圧センサである。座席P1~P4のうち、乗員が着席した座席の座席センサからは、所定値以上の圧力を検出したことを示す感圧信号が出力される。モード決定部110は、座席センサから出力される感圧信号に基づいて車両Cの各座席P1~P4における乗員の有無を判定する。例えば、座席P2の座席センサから感圧信号が出力された場合、モード決定部110は、座席P2に乗員がいると判定する。
【0028】
検出部111は、オーディオデータのオーディオレベルを検出する。検出部111が検出するオーディオデータは、オーディオデータ取得装置14で取得されたデータであり、現在時刻より後に音として出力されるデータである。検出部111は、各サンプリング時刻におけるオーディオレベルを検出する。オーディオレベルはdBFSで示される。オーディオレベルの最大値は0dBFSであり、最大値より小さいレベルは負の値(-25dBFSなど)で示される。検出部111は、サンプリング時刻と当該時刻のオーディオレベルの値(以下「サンプリング値」という)とを対応付けて条件判定部112に出力する。
【0029】
以下では、オーディオデータのサンプリング周波数が、ハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾ)における一般的なサンプリング周波数である48kHzであるものとする。この場合、1秒間当たり48000個のサンプリング値が検出される。
【0030】
条件判定部112は、オーディオデータの処理モードを第1モードから第2モードに切り替える切替指示信号を受けた場合に、オーディオレベルが所定の条件(以下、「切替条件」という)を満たしているかを判定する。
【0031】
切替条件を満たすか否かは、オーディオレベルの時間的推移に基づいて判定される。本実施形態では、切替条件を満たすことは、オーディオデータに基づく音が無音とみなせる程度にオーディオレベルが低いことに対応する。より詳細には、条件判定部112は、例えば下記の条件1および条件2が成立する場合に、切替条件を満たすと判定する。なお、下記条件1および条件2に示す数値は一例であり、例えばオーディオデータの種類等によって変更されてもよい。
【0032】
[条件1]基準時刻までの200msecに渡るオーディオレベルの平滑値が-50dBFS以下であること。200msecは所定期間の一例であり、-50dBFSは第1所定値の一例である。基準時刻は、例えば直近に取得したサンプリング値のサンプリング時刻である。
【0033】
[条件2]基準時刻に連続する10個のサンプリング時刻におけるオーディオレベルが-50dBFS以下であること。10個は所定数の一例であり、-50dBFSは第2所定値の一例である。本実施形態では、第1所定値と第2所定値とが同一であるが、第1所定値と第2所定値とが異なってもよい。
【0034】
図3は、オーディオレベルの時間的推移を模式的に示す図である。なお、
図3におけるオーディオレベルを示す基準線(0dBFSおよび-50dBFS)は、オーディオレベルの相対的な大小関係を示すものであり、実際のスケールとは異なっている。
図3では、サンプリング値をサンプリング時刻の順にナンバリングしている。例えば、直近に取得されたサンプリング値をN番目とすると、その直前のサンプリング時刻のサンプリング値はN-1番目となる。
【0035】
また、N番目のサンプリング値に対応するサンプリング時刻を基準時刻(T=0)とする。上述のように、条件1は、基準時刻までの200msecに渡るオーディオレベルの平滑値が-50dBFS以下、である。基準時刻までの200msecに渡るオーディオレベルの平滑値とは、N-9599番目からN番目のサンプリング値の平滑値である。一般に、オーディオレベルが-50dBFS以下では、オーディオデータに基づく音は無音状態と考えられる。条件1は、オーディオデータ内の無音期間を検出するための条件である。オーディオデータ内の無音期間は、例えば楽曲と楽曲との間、楽曲内における「溜め」もしくは楽章間の間、またはラジオ放送やポッドキャストにおける番組と広告との間やトークと楽曲との間等に生じ得る。
【0036】
なお、上述した無音期間は、必ずしも完全な無音ではなく、多くの場合フロアノイズを含んでいる。フロアノイズは、低レベルのバックグラウンドノイズである。しかしながら、サンプリング値が-50dBFS以下であれば、フロアノイズ以外の音は無音であるとみなすことができる。
【0037】
また、条件1では、基準時刻までの200msecに渡るオーディオレベルを平滑化する。これは、後述するモードの切り替えに際して数十msec程度の遅延時間が生じるためである。数十msecの遅延に対して、200msec(数百msec程度)の判定期間を設ければ、アンプ17からの出力が無音状態になっていると考えられる。
【0038】
また、条件2は、基準時刻に連続する10個のサンプリング時刻におけるオーディオレベルが-50dBFS以下、である。基準時刻に連続する10個のサンプリング時刻におけるオーディオレベルとは、N-9番目~N番目のサンプリング値である。上記条件2は、
図3に示すように、N番目~N-9番目のサンプリング値が全て-50dBFS以下の場合に成立する。条件2が設けられているのは、平滑値のみで判定を行うと直近で音が鳴り始めた場合に、これを検出できないためである。
【0039】
図1に戻り、モード切替部113は、オーディオレベルが所定の条件を満たした場合に、オーディオデータに対して行われる処理を、第1モードに沿った処理から第2モードに沿った処理に切り替える。より詳細には、モード切替部113は、オーディオレベルが切替条件を満たしている場合、第1モードから第2モードへと処理モードを切り替える切替制御信号を出力する。切替制御信号の出力先は、変更対象のモードによって異なる。例えば、乗員別モードが切替対象の場合、モード切替部113は、アンプ17-1~17-4に、切替制御信号を送信する。
【0040】
例えば、全座席モードを第1モード、前座席モードを第2モードとする。モード切替部113は、第1モードが指定された場合、アンプ17-1~17-4のゲインを所定の基準値とする切替制御信号を出力する。この結果、アンプ17-1~17-4に接続されたスピーカ19-1~19-4(第1スピーカ群および第2スピーカ群)からオーディオデータに基づく音が出力される。また、モード切替部113は、第2モードが指定された場合、アンプ17-3および17-4のゲインを、無音状態とみなせる程度に小さくする切替制御信号を出力する。この結果、アンプ17-3および17-4に接続されたスピーカ19-3および19-4(第2スピーカ群)からはオーディオデータに基づく音が出力されず、アンプ17-1およびアンプ17-2に接続されたスピーカ19-1およびスピーカ19-2(第1スピーカ群)からのみ、オーディオデータに基づく音が出力される。
【0041】
乗員別モードにおいて、「オーディオデータに対して行われる処理」とは、アンプ17におけるオーディオデータの増幅処理である。第1モードと第2モードとでは、オーディオデータの増幅率、すなわち、アンプ17-1~17-4におけるゲインが異なる。
【0042】
データ処理部114は、オーディオデータに対して各種の音響処理を行う。データ処理部114は、例えばユーザによって指定されたサラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定に基づいて、オーディオデータを処理する。一例として、例えばユーザが低音域(例えば32~250Hz)を強調するようにイコライザ設定を調整した場合、データ処理部114は、オーディオデータのうち低音域に対応する周波数帯成分のレベルを上げる処理を行う。
【0043】
後述する第1変形例のように、処理モードが、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定等に関する場合、モード切替部113は、データ処理部114に対して切替制御信号を出力する。データ処理部114は、例えば第1モードが指定されている間は、オーディオデータに対して第1モードに沿った処理を行う。また、データ処理部114は、第2モードへの切り替え切替制御信号が入力されると、オーディオデータに対して行う処理の内容を、第1モードに沿った処理から第2モードに沿った処理に切り替える。
【0044】
ボリューム調整部115は、ユーザから入力装置13を用いて指定された指定音量に基づいて、オーディオデータのゲインを調整する。ボリューム調整部115は、指定音量を大きくする指示が入力された場合にはオーディオデータのゲインを大きくし、指定音量を小さくする指示が入力された場合にはオーディオデータのゲインを小さくする。ボリューム調整部115によってゲインが調整されたオーディオデータは、データ処理部114に入力される。
【0045】
上述した検出部111は、ボリューム調整部115に入力される前のオーディオデータのオーディオレベルを検出する。よって、検出部111によって検出されるオーディオレベルは、指定音量の大小に影響されない値であり、モードの切替タイミングをより正確に決定することができる。
【0046】
A-3:制御装置11の動作
図4は、車載オーディオ装置10の制御装置11の動作を示すフローチャートである。
図4では、オーディオデータの処理モードが全座席モード(第1モード)から前座席モード(第2モード)に切り替えられる場合の処理を示す。例えば、車両Cの座席P1~P4の全てに乗員が乗車している場合、制御装置11(モード切替部113)から、アンプ17-1~17-4のゲインを基準値とする制御信号、すなわち、乗員別モードを全座席モードとする制御信号が出力される。この結果、オーディオデータは、アンプ17-1~17-4において基準値に対応するゲインで増幅され、オーディオデータに基づく音がスピーカ19-1~19-4から出力される(図中「第1モードの処理」と表記、ステップS20)。また、制御装置11は、検出部111として機能し、ボリューム調整部115に入力される前のオーディオデータのオーディオレベルを検出する(ステップS21)。
【0047】
制御装置11は、モード決定部110として機能し、カメラ51の画像を用いて、車室内の各座席P1~P4における乗員の有無を検出する(ステップS22)。制御装置11は、モード決定部110として機能し、処理モードを切り替える必要があるか否かを判断する(ステップS23)。例えば、座席P3およびP4に乗車していた乗員が車両Cを降り、座席P1およびP2にのみ乗員が乗車している場合、処理モードを第2モードに切り替える必要があると判断される。処理モードを切り替える必要がない場合(ステップS23:NO)、制御装置11は、処理をステップS20に戻す。
【0048】
処理モードを切り替える必要がある場合(ステップS23:YES)、制御装置11は、条件判定部112として機能し、オーディオレベルの時間的推移が、上述した条件1および条件2を満たすか否かを判断する(ステップS25)。オーディオレベルの時間的推移が条件1および条件2を満たす場合(ステップS25:YES)、制御装置11は、モード切替部113として機能し、アンプ17-3および17-4のゲインを無音状態とみなせる程度に小さくする制御信号、すなわち、乗員別モードを前座席モードとする切替制御信号を出力する(ステップS26)。この結果、オーディオデータは、アンプ17-1および17-2において基準値に対応するゲインで増幅され、オーディオデータに基づく音がスピーカ19-1および19-2から出力される。一方で、アンプ17-3および17-4ではオーディオデータはほとんど増幅されず、オーディオデータに基づく音はスピーカ19-3および19-4からはほとんど出力されない(図中「第2モードの処理」と表記、ステップS27)。制御装置11は、本フローチャートの処理を終了する。
【0049】
また、ステップS25において、オーディオレベルの時間的推移が条件1および条件2を満たさない場合(ステップS25:NO)、制御装置11は、処理をステップS20に戻す。よって、オーディオレベルの時間的推移が条件1および条件2を満たすまで、処理モードの切り替えが保留されることになる。
【0050】
A-4:実施形態まとめ
以上説明したように、実施形態にかかる車載オーディオ装置10は、車室内の各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて、乗員別モードを自動的に変更する。これにより、例えば運転者が乗員別モードを設定しなくても、あらゆるユースケースにおいて各乗員が最適な音質で音を聞くことができる。
【0051】
一方で、処理モードの切替時には、スピーカ19から出力される音を無音にする必要がある。よって、処理モードの切り替えを任意のタイミングで実施してしまうと、例えば音楽が盛り上がっている途中で突如音が途切れる等の不都合が生じる。例えば、第1モードから第2モードへの切り替えに際して、第1モードの処理および第2モードの処理を同時に行い、出力をクロスフェードさせる方法も考えられる。しかし、この方法では、信号処理の負荷が倍増するため、その分ハードウェア性能を高める必要があり、コストアップになる。また、第1モードから第2モードへの切り替えに際して、楽曲の終わり等、音が途切れる箇所をオーディオデータ上で検出し、その箇所で一度音の出力を止めた上で処理モードを切り替え、その後音の出力を再開する方法も考えられる。しかし、この方法では、アンプ17の制御のみならず、オーディオデータ取得装置14によるオーディオデータの取得元の端末等、複数のモジュールをまたぐ制御を行う必要があり煩雑である。また、例えばラジオ放送や1時間以上収録時間のあるポッドキャストの場合、事実上曲の終わりが存在せず、処理モードを切り替えることができない。
【0052】
実施形態にかかる車載オーディオ装置10は、オーディオデータが実質的に無音な状況で処理モードを切り替えれば、ユーザは違和感を持たない、という発想の元、処理モードの切り替えタイミングを決定する。すなわち、車載オーディオ装置10は、オーディオレベルが低い状態が一定期間続く場合に、処理モードを切り替える。車載オーディオ装置10は、オーディオレベルが十分に低いことを検知すれば、処理モードの切替タイミングを決定することができ、例えば楽曲が終わったことを示すトリガー情報等を受け取る必要はない。また、車載オーディオ装置10は、ラジオやポッドキャストの「間」(無言期間)を活用することにより、曲終わりといった明確な切れ目がないオーディオデータにおいても、比較的短時間の間に処理モード変更が可能になる。
【0053】
車載オーディオ装置10は、オーディオデータの処理モードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定する。車載オーディオ装置10は、オーディオレベルが所定の条件を満たした場合に、処理モードを第2モードに切り替える。よって、車載オーディオ装置10では、処理モードの切り替えの指示を受けた場合でも、オーディオレベルが所定の条件を満たすまでは第1モードが維持される。よって、処理モードの切り替えタイミングを、オーディオレベルが所定の条件を満たした時にすることができる。
【0054】
また、車載オーディオ装置10は、所定の条件を満たすか否かを、オーディオレベルの時間的推移に基づいて判定する。よって、オーディオレベルの経時的変化を把握して適切なタイミングで処理モードを切り替えることができる。
【0055】
また、車載オーディオ装置10は、所定の条件として、基準時点までの所定期間に渡るオーディオレベルの平滑値が第1所定値以下であること(条件1)を判定する。これにより、所定期間に渡るオーディオレベルの平滑値が第1所定値以下、すなわち、オーディオデータに基づく音が小さいタイミングで、第2モードへの切り替えが行われる。よって、第1モードと第2モードとでオーディオデータに基づく音の聞こえ方が異なる場合でも、ユーザに与える違和感が小さくなる。
【0056】
また、車載オーディオ装置10は、所定の条件として、基準時点に連続する所定数のサンプリング時刻におけるオーディオレベルが第2所定値以下であること(条件2)を判定する。これにより、直近でオーディオレベルが上昇した場合には、処理モードの切り替えが行われない。よって、オーディオデータに基づく音が大きくなるタイミングでの処理モードの切り替えが防止される。
【0057】
また、本実施形態において、オーディオデータは、車両Cに搭載された車載オーディオ装置10で音を発生させるためのデータであり、第1モードと第2モードとは、車両Cの各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて切り替えられる。一般に、車両Cの各座席における乗員の有無は、オーディオデータの出力状況と連動しておらず、処理モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合に処理モードを切り替えることによって、処理モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0058】
また、本実施形態において、車両Cは、オーディオデータに基づく音が出力されるスピーカ19-1~19-4(第1スピーカ群および第2スピーカ群)を備える。第1モードの一例である全座席モードでは、スピーカ19-1~スピーカ19-4(第1スピーカ群および第2スピーカ群)から音が出力され、第2モードの一例である前座席モードでは、スピーカ19-1および19-2(第1スピーカ群)のみから音が出力される。第2モードでは、第1スピーカ群からのみ音が出力されるので、第1モードと比較して、スピーカ19の消費電力が低減する。
【0059】
また、車載オーディオ装置10は、オーディオデータに基づく音が出力される空間の環境の変化に基づいて、第1モードから第2モードに切り替える指示を出力する。一般に、空間の環境の変化は、オーディオデータの出力状況と連動しておらず、処理モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合に処理モードを切り替えることによって、処理モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0060】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において機能が実施形態と同様である要素については、実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0061】
図5は、第2実施形態にかかる車載オーディオ装置10Aの構成を示すブロック図である。車載オーディオ装置10Aには、カメラ51およびモード決定部110が設けられていない。また、車載オーディオ装置10Aでは、入力装置13からの出力が、条件判定部112に入力される。
【0062】
第2実施形態では、処理モードの切り替えは、ユーザによって行われる。すなわち、第2実施形態において、処理モードを第1モードから第2モードに切り替える指示は、ユーザによるモードの切り替え操作である。ユーザは、入力装置13を用いて処理モードの切り替え操作を行うことが可能である。入力装置13は、ユーザから指定された処理モードを示す切替指示信号を条件判定部112に出力する。条件判定部112は、第1実施形態と同様に、オーディオレベルが所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしている場合は、モード切替部113が切替制御信号を出力する。
【0063】
ユーザは、例えば車両Cの走行開始時に入力装置13を用いて乗員別モードを指定する。ユーザは、各座席P1~P4における乗員の有無に基づいて、乗員別モードのうちいずれのモードを指定するかを判断する。走行開始後に各座席P1~P4における乗員の有無が変化した場合、ユーザは、変化後の乗員に基づいて乗員別モードを設定し直す。
【0064】
このように、第2実施形態では、ユーザによる処理モードの切り替え操作に基づいて、処理モードが切り替えられる。よって、ユーザの任意のタイミングで処理モードを変更することができ、ユーザの利便性が向上する。また、例えば「運転者のみが乗車している状態でも全スピーカ19から音を出力させたい」等のユーザの好みの処理モードを選択することができる点においても、ユーザの利便性が向上する。
【0065】
C:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0066】
C-1:第1変形例
上述した実施形態では、オーディオデータの処理モードとして乗員別モードを例にして説明したが、処理モードはこれに限らない。例えばオーディオデータが楽曲の場合に、楽曲ジャンルに応じてイコライザ設定を変更する「楽曲ジャンル別モード」であってもよい。また、オーディオデータの内容(例えば楽曲、ニュース、スポーツ中継など)に応じてサラウンド設定を変更する「コンテンツ別モード」であってもよい。また、車両Cの走行状態(速度や走行路面等)に応じてエフェクタ設定を変更する「走行状態別モード」であってもよい。すなわち、処理モードの切り替えは、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定の少なくともいずれかに関する処理パラメータの値の切り替えに対応していればよい。
【0067】
これらの処理モードは、第1実施形態のようにモード決定部110によって自動的に切り替えられてもよいし、第2実施形態のようにユーザの指示に基づいて切り替えられてもよい。
【0068】
第1変形例によれば、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定におけるモードの切り替えに際して、オーディオレベルが所定の条件を満たしているか否かが判断される。サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定のタイミングは、オーディオデータの出力状況と連動していない場合もあり、モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合にモードを切り替えることによって、モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0069】
C-2:第2変形例
上述した実施形態では、オーディオレベルが所定の条件を満たすまで、処理モードの切り替えが保留される。すなわち、第1実施形態においては、モード決定部110から処理モードの切替指示信号が出力されてから、また、第2実施形態においては、ユーザが処理モードの切り替え操作を行ってから、処理モードが実際に切り替わるまでにタイムラグが生じる可能性がある。しかしながら、状況によっては、処理モードの切り替えを即座に行いたい場合もある。また、オーディオデータの内容によっては、無音部分がほとんどなく、処理モードが切り替わるまで長時間が経過してしまう場合がある。
【0070】
よって、モードの切り替えが保留されている間はその旨をユーザに報知するとともに、ユーザからモードの即時切り替えを指示する操作を受け付けるようにしてもよい。「モードの切り替えが保留されている」とは、モード決定部110または入力装置13から切替指示信号が出力され、かつ、所定の条件が成立していない状態である。
【0071】
例えば、車載オーディオ装置10に表示装置を設け、モードの切り替えが保留されている間は、その旨を示すメッセージまたはアイコンで表示装置に表示する。また、入力装置13にモードの即時切り替えを指示する操作をユーザから受け付けるインターフェース(スイッチやボタン等)を設ける。ユーザから即時切り替えの操作があった場合、モード切替部113は、オーディオレベルが所定の条件を満たすか否かに関わらず、切替制御信号を出力する。これにより、ユーザの意図したタイミングで処理モードの切り替えが可能となる。
【0072】
第2変形例によれば、ユーザの任意のタイミングで処理モードを変更することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0073】
C-3:第3変形例
図6は、第3変形例にかかる車載オーディオ装置10Bの構成を示すブロック図である。車載オーディオ装置10Bは、
図1に示す第1実施形態にかかる車載オーディオ装置10の構成に加えて、遅延部116およびゲイン調整部117を備える。
【0074】
遅延部116は、オーディオデータ取得装置14から入力されたオーディオデータを一時的に記憶し、遅延時間を設けた上でボリューム調整部115に出力する。遅延部116は、処理モードの切り替えの判定に要した時間の分、オーディオデータを遅らせるために設けられる。より詳細には、遅延部116は、条件判定部112における判定に用いられたオーディオデータの部分がアンプ17-1~17-4またはデータ処理部114等に入力されるタイミングで処理モードの切り替えが行われるように設けられる。
【0075】
ゲイン調整部117は、データ処理部114から入力されたオーディオデータのゲインを調整する。ゲイン調整部117は、モード切替部113からの制御によりオーディオデータのゲインを調整する。モード切替部113は、アンプ17-1~17-4またはデータ処理部114等に切替制御信号を出力するタイミングで、オーディオデータのゲインを小さくするよう指示する指示信号をゲイン調整部117に出力する。ゲインを小さくする、とは、例えばオーディオデータに基づく音が無音とみなせる程度のゲインとすることであってもよい。モード切替部113は、アンプ17-1~17-4またはデータ処理部114等において、処理モードの切り替えに要する期間中、指示信号を出力する。指示信号の出力が停止されると、ゲイン調整部117は、ゲインの調整を停止する。
【0076】
処理モードの切り替え中にオーディオデータのゲインを小さくするのは、処理モードの切り替え中に処理されたオーディオデータが異音として認識されるのを防止するためである。本実施形態では、処理モードの切り替えは、オーディオデータに基づく音が無音とみなせる程度にオーディオレベルが低いタイミングで行われるが、処理モードの切り替えのタイミングがずれた場合等に備えて、ゲイン調整部117が設けられてもよい。
【0077】
なお、
図6に示す車載オーディオ装置10Bは、遅延部116およびゲイン調整部117を備えるが、遅延部116またはゲイン調整部117のいずれか一方のみが設けられていてもよい。また、
図5に示す第2実施形態にかかる車載オーディオ装置10Aに、遅延部116またはゲイン調整部117の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0078】
C-4:第4変形例
車載オーディオ装置10の機能(モード決定部110、検出部111、条件判定部112、モード切替部113、データ処理部114、ボリューム調整部115、遅延部116およびゲイン調整部117)は、前述の通り、制御装置11を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置12に記憶されたプログラムの協働により実現される。
【0079】
以上のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置がネットワークを介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0080】
D:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0081】
本開示のひとつの態様(態様1)に係るオーディオ制御方法は、コンピュータにより実現されるオーディオ制御方法であって、オーディオデータのオーディオレベルを検出し、前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定し、前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替える。以上の構成によれば、処理モードの切り替えの指示を受けた場合でも、オーディオレベルが所定の条件を満たすまでは第1モードが維持される。よって、処理モードの切り替えタイミングを、オーディオレベルが所定の条件を満たした時にすることができる。
【0082】
態様1の具体例(態様2)において、前記所定の条件を満たすか否かは、前記オーディオレベルの時間的推移に基づいて判定される。以上の構成によれば、オーディオレベルの経時的変化を把握して適切なタイミングで処理モードを切り替えることができる。
【0083】
態様2の具体例(態様3)において、前記所定の条件は、基準時点までの所定期間に渡る前記オーディオレベルの平滑値が第1所定値以下であることを含む。以上の構成によれば、所定期間に渡るオーディオレベルの平滑値が第1所定値以下、すなわち、オーディオデータに基づく音が小さいタイミングで、第2モードへの切り替えが行われる。よって、第1モードと第2モードとでオーディオデータに基づく音の聞こえ方が異なる場合でも、ユーザに与える違和感が小さくなる。
【0084】
態様3の具体例(態様4)において、前記所定の条件は、前記基準時点に連続する所定数のサンプリング時刻における前記オーディオレベルが第2所定値以下であることを含む。以上の構成によれば、直近でオーディオレベルが上昇した場合には、処理モードの切り替えが行われない。よって、オーディオデータに基づく音が大きくなるタイミングでの処理モードの切り替えが防止される。
【0085】
態様1の具体例(態様5)において、前記オーディオデータは、車両に搭載された車載オーディオ装置で音を発生させるためのデータであり、前記第1モードと前記第2モードとは、前記車両の各座席における乗員の有無に基づいて切り替えられる。以上の構成によれば、車両の各座席における乗員の有無に基づく処理モードの切り替えに際して、オーディオレベルが所定の条件を満たしているか否かが判断される。一般に、車両の各座席における乗員の有無は、オーディオデータの出力状況と連動しておらず、処理モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合に処理モードを切り替えることによって、処理モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0086】
態様5の具体例(態様6)において、前記車両は、前記オーディオデータに基づく音が出力される第1スピーカ群および第2スピーカ群を備え、前記第1モードでは、前記第1スピーカ群および前記第2スピーカ群から前記音が出力され、前記第2モードでは、前記第1スピーカ群のみから前記音が出力される。以上の構成によれば、処理モードに基づいて、音が出力されるスピーカが変更される。第2モードでは、第1スピーカ群からのみ音が出力されるので、第1モードと比較して、スピーカの消費電力が低減する。
【0087】
態様1の具体例(態様7)において、前記モードの切り替えは、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定の少なくともいずれかに関する処理パラメータの値の切り替えに対応する。以上の構成によれば、サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定におけるモードの切り替えに際して、オーディオレベルが所定の条件を満たしているか否かが判断される。サラウンド設定、イコライザ設定またはエフェクタ設定のタイミングは、オーディオデータの出力状況と連動していない場合もあり、モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合にモードを切り替えることによって、モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0088】
態様1の具体例(態様8)において、前記オーディオデータに基づく音が出力される空間の環境の変化に基づいて、前記第1モードから前記第2モードに切り替える指示を出力することを更に含む。以上の構成によれば、環境の変化に基づいて処理モードの切り替えが行われる場合において、モードの切り替えタイミングが、オーディオレベルが所定の条件を満たした時となる。一般に、空間の環境の変化は、オーディオデータの出力状況と連動しておらず、処理モードの切り替えに伴ってユーザに違和感を与える可能性がある。オーディオレベルが所定の条件を満たしている場合に処理モードを切り替えることによって、処理モードの切り替えに伴うユーザの違和感を軽減できる。
【0089】
態様1の具体例(態様9)において、前記第1モードから前記第2モードに切り替える指示は、ユーザによる前記モードの切り替え操作である。以上の構成によれば、ユーザの任意のタイミングで処理モードを変更することができ、ユーザの利便性が向上する。また、ユーザの好みに合った処理モードを選択することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0090】
本開示のひとつの態様(態様10)に係るオーディオデータ処理装置は、オーディオデータのオーディオレベルを検出する検出部と、前記オーディオデータの処理に関するモードを第1モードから第2モードに切り替える指示を受けた場合に、前記オーディオレベルが所定の条件を満たしているかを判定する判定部と、前記オーディオレベルが前記所定の条件を満たした場合に、前記オーディオデータに対して行われる処理を、前記第1モードに沿った処理から前記第2モードに沿った処理に切り替えるデータ処理部と、を備える。
【符号の説明】
【0091】
10(10A,10B)…車載オーディオ装置、11…制御装置、12…記憶装置、13…入力装置、14…オーディオデータ取得装置、17(17-1~17-4)…アンプ、19(19-1~19-4)…スピーカ、51…カメラ、110…モード決定部、111…検出部、112…条件判定部、113…データ処理部、114…モード切替部、115…ボリューム調整部、116…遅延部、117…ゲイン調整部、C…車両。