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特開2024-142519ウレタン(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法、中和物、水性樹脂組成物、水性活性エネルギー線硬化性組成物及びその用途、硬化物、硬化皮膜付き基材、ソフトコート層付き基材、並びに接着剤層を有する積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142519
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法、中和物、水性樹脂組成物、水性活性エネルギー線硬化性組成物及びその用途、硬化物、硬化皮膜付き基材、ソフトコート層付き基材、並びに接着剤層を有する積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20241003BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20241003BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20241003BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G18/67 005
C08G18/48
C08G18/44
C08G18/42
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/76
C08G18/00 C
C08F299/06
C09D4/02
C09J4/02
C09J175/14
C09D175/14
C09D11/00
C09J7/30
C09D5/00 Z
C09D5/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054677
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】畠中 瑞生
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】澤 京吾
【テーマコード(参考)】
4J004
4J034
4J038
4J039
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
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4J004AA14
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(57)【要約】
【課題】水分散性を向上できる新規なウレタン(メタ)アクリレート化合物の提供。
【解決手段】エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてなるカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)と、ポリオール化合物(D)と、ポリイソシアネート化合物(E)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート化合物であって、分子中に1個以上のウレタン結合、1個以上の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有し、少なくとも1個のカルボキシ基がエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてなるカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)と、
ポリオール化合物(D)と、
ポリイソシアネート化合物(E)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート化合物であって、
1分子中に1個以上のウレタン結合、1個以上の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有し、
少なくとも1個のカルボキシ基が、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
二重結合当量が100~10,000である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
酸価が10~500KOHmg/gである、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の総質量に対して、ウレタン結合の含有量が1~50質量%である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項5】
前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)が、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項6】
前記酸無水物(B)が、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項7】
前記ポリオール化合物(D)が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート化合物(E)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物をアミン化合物で中和してなる中和物。
【請求項10】
請求項9に記載の中和物を水に分散してなる、水性樹脂組成物。
【請求項11】
平均粒子径が10~200nmである、請求項10に記載の水性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の水性樹脂組成物、及び光重合開始剤を含む、水性活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項14】
ショアD硬度が45以下である、請求項13に記載の硬化物。
【請求項15】
基材の表面に、請求項13に記載の硬化物からなる硬化皮膜を有する、硬化皮膜付き基材。
【請求項16】
請求項12に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物からなるソフトコート剤、接着剤、シーリング剤、インキ、又はレジスト。
【請求項17】
基材の表面に、請求項13に記載の硬化物からなるソフトコート層を有する、ソフトコート層付き基材。
【請求項18】
基材と被接着物との間に、請求項13に記載の硬化物からなる接着剤層を有する、積層体。
【請求項19】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)を得る工程と、
得られたカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)とポリオール化合物(D)とポリイソシアネート化合物(E)とを反応させる工程とを有する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の中和物、前記中和物を含む水性樹脂組成物、前記水性樹脂組成物を含む水性活性エネルギー線硬化性組成物、前記水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物、前記硬化物を有する硬化皮膜付き基材、前記水性活性エネルギー線硬化性組成物からなるソフトコート剤、接着剤、シーリング剤、インキ、又はレジスト、前記硬化物を有するソフトコート層付き基材、及び前記硬化物を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水性ウレタンアクリレートの製造は、界面活性剤を使用する方法、ウレタンアクリレートを構成するポリオールとして親水性のポリオール(例えばポリエチレングリコール等)を使用して自己乳化型とする方法、及びウレタンアクリレートに親水基(例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、3級アミノ基等)を導入する方法が知られている。
ウレタンアクリレートに親水基を導入する方法としてはカルボキシ基を導入するのが最も容易であり一般的に行われている。
【0003】
特許文献1では、水又はアルコール系溶剤で希釈可能なウレタンアクリレート含有組成物として、ジイソシアネート化合物、カルボキシ基含有ジオール化合物、トリオール化合物、末端ヒドロキシ基含有グリコール化合物、及びヒドロキシ基含有不飽和化合物を反応させたヒドロキシ基含有ウレタン化合物と、片末端イソシアネート基含有アクリレート化合物とをウレタン化反応させて得られるウレタンアクリレートを含む、光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
特許文献2では、カルボキシ基不含有ポリオール、カルボキシ基含有ポリオール、有機イソシアネート、及び水酸基含有多官能(メタ)アクリレートをウレタン化反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーに、3級アミンを加えて中和した後、更に水を加えて前記中和物をウレア化させてなるウレタンポリマー水分散物、及びこれを含有する活性エネルギー線硬化性水性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
特許文献3では、ポリカプロラクトンポリオールを合成するにあたり、開始剤にジヒドロキシカルボン酸を使用することによって、1個のポリカプロラクトンポリオールにカルボキシ基1個を確実に導入することができ、かつ、ウレタンアクリレート樹脂中のカルボキシ基を任意に調整できる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3911792号公報
【特許文献2】特開2004-168809号公報
【特許文献3】特開平7-157531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウレタンアクリレートのウレタン結合部分は凝集力が高く、ハードセグメントを形成しやすい。
上記特許文献1,2のように、ジヒドロキシカルボン酸を鎖延長剤として用いてカルボキシ基を導入する方法では、鎖延長剤に由来する部位がハードセグメントに含まれてしまうため、カルボキシ基を導入したことによる水溶性又は水分散性の向上効果が十分に得られない。
そこで、カルボキシ基含有鎖延長剤の使用量を増すことによって、水溶性又は水分散性を高めることはできるものの、ハードセグメントの比率が大きくなり、要求される物性のバランスが非常にとりにくくなるという欠点がある。
【0008】
また上記特許文献3のように、ラクトンの開環にジヒドロキシカルボン酸を用いることで上記特許文献1,2の欠点を改善できるが、ラクトン系ポリオール以外には適用が困難である。また、開始剤由来の分子鎖のペンダント基としてカルボキシ基が導入されるため、水分散性や分散安定性に乏しいという欠点がある。
【0009】
本発明は、水分散性を向上できる新規なウレタン(メタ)アクリレート化合物の提供を目的とする。
また本発明は、硬化物の柔軟性を向上できる水性活性エネルギー線硬化性組成物の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の態様を有する。
[1] エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてなるカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)と、
ポリオール化合物(D)と、
ポリイソシアネート化合物(E)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート化合物であって、
1分子中に1個以上のウレタン結合、1個以上の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有し、
少なくとも1個のカルボキシ基が、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[2] 二重結合当量が100~10,000である、[1]に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[3] 酸価が10~500KOHmg/gである、[1]又は[2]に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[4] 前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の総質量に対して、ウレタン結合の含有量が1~50質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[5] 前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)が、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[6] 前記酸無水物(B)が、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[7] 前記ポリオール化合物(D)が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
[8] 前記ポリイソシアネート化合物(E)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【0011】
[9] 前記[1]~[8]のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物をアミン化合物で中和してなる中和物。
[10] 前記[9]に記載の中和物を水に分散してなる、水性樹脂組成物。
[11] 平均粒子径が10~200nmである、[10]に記載の水性樹脂組成物。
[12] 前記[10]又は[11]に記載の水性樹脂組成物、及び光重合開始剤を含む、水性活性エネルギー線硬化性組成物。
[13] 前記[12]に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
[14] ショアD硬度が45以下である、[13]に記載の硬化物。
[15] 基材の表面に、[13]又は[14]に記載の硬化物からなる硬化皮膜を有する、硬化皮膜付き基材。
[16] 前記[12]に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物からなるソフトコート剤、接着剤、シーリング剤、インキ、又はレジスト。
[17] 基材の表面に、[13]又は[14]に記載の硬化物からなるソフトコート層を有する、ソフトコート層付き基材。
[18] 基材と被接着物との間に、[13]又は[14]に記載の硬化物からなる接着剤層を有する、積層体。
[19] エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)を得る工程と、
得られたカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)とポリオール化合物(D)とポリイソシアネート化合物(E)とを反応させる工程とを有する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水分散性を向上できるウレタン(メタ)アクリレート化合物が得られる。
本発明によれば、硬化物の柔軟性を向上できる水性活性エネルギー線硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリレート」は、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
「重量平均分子量」(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
「水酸基価」は、試料中の水酸基をアセチル化して、アセチル化に使用した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量を、前記試料1.0gに対するmg数で表したものであり、試料中の水酸基の含有量を示す尺度となる。水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定されている中和滴定法を用いて測定される。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の「二重結合当量」とは、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の、二重結合1モル当たりの質量であり、単位はg/molで表すことができる。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の「酸価」は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの質量である。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート化合物をアセトンで希釈し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1N水酸化カリウム-メタノール溶液で滴定し、測定値をウレタン(メタ)アクリレート化合物1gあたりの量に換算して算出される。
水性樹脂組成物の平均粒子径は、固形分濃度が1~2質量%となるように水性樹脂組成物を水で希釈した測定試料(25℃)について、動的光散乱法により粒度分布を測定し、体積基準のメジアン径を平均粒子径とする。
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
≪ウレタン(メタ)アクリレート化合物≫
本発明のウレタン(メタ)アクリレート化合物(以下、「化合物(a)」とも記す。)は、下記の(A)成分と(B)成分とを反応させてなる(C)成分と、(D)成分と、(E)成分とを反応させてなる化合物である。
(A)成分:エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)
(B)成分:酸無水物(B)
(C)成分:カルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)
(D)成分:ポリオール化合物(D)
(E)成分:ポリイソシアネート化合物(E)
【0017】
化合物(a)は、1分子中に1個以上のウレタン結合、1個以上の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有する。
化合物(a)は、少なくとも1個のカルボキシ基が、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在する。エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在するカルボキシ基は水分散性の向上に寄与する。
好ましくは、化合物(a)は、少なくとも1個のカルボキシ基が、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖の末端に存在する。
【0018】
化合物(a)は(メタ)アクリロイル基に由来する二重結合を有する。
化合物(a)の二重結合当量は100~10,000が好ましく、100~5,000がより好ましく、100~1,000がさらに好ましい。
化合物(a)の二重結合当量は、化合物(a)1gを製造するにあたって必要な(A)成分のモル数をαmolとし、(A)成分の1分子中に含まれるラジカル重合性二重結合の数をβ個とした場合、1/(α×β)で計算される。
化合物(a)の二重結合当量が、上記範囲の下限値以上であると柔軟性に優れ、上限値以下であると硬化性や耐摩耗性、耐薬品性に優れる。
【0019】
化合物(a)の酸価は10~500KOHmg/gが好ましく、10~100KOHmg/gがより好ましく、10~50KOHmg/gがさらに好ましい。
化合物(a)の酸価が、上記範囲の下限値以上であると水分散性に優れ、上限値以下であると柔軟性に優れる。
【0020】
化合物(a)におけるウレタン結合(-NHCOO-)の含有量(以下、「ウレタン結合濃度」ともいう。)は、ウレタン(メタ)アクリレートの総質量に対して1~50質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
前記ウレタン結合の含有量が、上記範囲の下限値以上であると硬化性や耐摩耗性、耐薬品性に優れ、上限値以下であると柔軟性に優れる。
【0021】
<(A)成分>
エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、エポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基が縮合反応した化合物である。
(A)成分は、(メタ)アクリル酸に由来する(メタ)アクリロイル基、及びエポキシ基から生じた水酸基を有する。
前記エポキシ化合物の1分子中に存在するエポキシ基の数は2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
(A)成分の1分子中に存在する(メタ)アクリロイル基の数は、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
(A)成分の1分子中に存在する水酸基の数は、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
【0022】
(A)成分としては、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、グリセリントリグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ソルビトールテトラグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
脂環式エポキシ(メタ)アクリレートの例としては水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(メタ)アクリル酸付加物、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(メタ)アクリル酸付加物、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド(メタ)アクリル酸付加物、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(メタ)アクリル酸付加物、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル(メタ)アクリル酸付加物、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
芳香族エポキシ(メタ)アクリレートの例としてはビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールSジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ビフェニルジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、テトラメチルビフェニルテトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリスヒドロキシフェニルメタンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、レゾルシノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ハイドロキノンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノール型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、得ようとする化合物(a)の特性に応じて選択することが好ましい。
例えば黄変抑制性、柔軟性の点では脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物がより好ましい。
例えば黄変抑制性、靭性の点では脂環式エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物がより好ましい。
例えば耐摩耗性、耐薬品性の点では芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物がより好ましい。
【0024】
(A)成分の分子量は100~10,000が好ましく、100~5,000がより好ましく、100~1,000がさらに好ましい。(A)成分の分子量が、上記範囲の下限値以上であると柔軟性に優れ、上限値以下であると靭性に優れる。
【0025】
<(B)成分>
酸無水物(B)は、2分子のカルボン酸が脱水縮合した化合物、又は1分子中に存在する2個のカルボキシ基が分子内脱水した化合物である。
酸無水物(B)の1分子中に存在する酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)は1個でもよく、2個以上でもよい。1個が好ましい。
酸無水物(B)は、肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
肪族酸無水物の例としては、無水コハク酸、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
脂環式酸無水物の例としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
芳香族酸無水物の例としては、無水フタル酸、3-メチル無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0026】
(B)成分は、得ようとする化合物(a)の特性に応じて選択することが好ましい。
例えば黄変抑制性、柔軟性の点では肪族酸無水物が好ましく、無水コハク酸がより好ましい。
例えば黄変抑制性、靭性の点では脂環式酸無水物が好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸がより好ましい。
例えば耐摩耗性、耐薬品性の点では芳香族酸無水物が好ましく、無水フタル酸がより好ましい。
【0027】
<(C)成分>
カルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)は、(A)成分と(B)成分との反応により、(A)成分にカルボキシ基が導入された化合物である。(C)成分には(A)成分由来の水酸基も残存する。
(A)成分と(B)成分の反応機構については後述する。
【0028】
<(D)成分>
ポリオール化合物(D)の1分子あたりの平均水酸基数は1~4個が好ましく、1~3個がより好ましく、1~2.5個がさらに好ましい。
(D)成分として、平均水酸基数が異なる2種以上の化合物を併用してもよい。
(D)成分は少なくともポリオールを含み、さらにモノオールを含んでもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
モノオールとしては、ポリエーテルモノオール、ポリカーボネートモノオール、ポリエステルモノオールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(D)成分の総質量に対して、ポリオールの合計の含有量は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。
【0029】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールとして、例えば、開始剤に環状エーテルを開環付加重合させて得られるポリオキシアルキレンポリオールを用いることができる。
開始剤としては、水酸基含有化合物が好ましく、1価アルコールや多価アルコールが好ましく、1価アルコールと多価アルコールの混合物や水酸基数の異なる多価アルコールの混合物なども開始剤として使用できる。
環状エーテルとしてはアルキレンオキシドやテトラヒドロフランが好ましい。
開始剤における環状エーテルが反応する活性水素の数(例えば、水酸基の水素原子の数)が得られるポリオキシアルキレンポリオールの水酸基数となる。
【0030】
ポリオキシアルキレンポリオールの具体例として、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)ポリオール及びポリオキシテトラメチレンポリオール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールは、いずれか1種が単独で用いられても、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0031】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネートとジオールとの反応生成物が挙げられる。
カーボネートとして具体的には、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、並びにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。
ジオールとしては、低分子量ジオールが挙げられる。低分子量ジオールとは、例えば、分子量60~300程度のジオールが挙げられ、具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、いずれか1種が単独で用いられても、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子量ジオールから選ばれる少なくとも1種と、ジカルボン酸やその反応性誘導体の少なくとも1種からなる酸成分との反応物が挙げられる。
酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。また、酸成分の一部として3官能以上のポリカルボン酸やその反応性誘導体を使用して得られる、1分子あたり平均の水酸基数が2個を超えるポリエステルポリオールを使用することもできる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、前記多価アルコールなどの開始剤に環状エステルを開環付加重合させて得られる、1分子あたり平均の水酸基数が1.8~4個のポリエステルポリオールを使用することもできる。環状エステルとしてはε-カプロラクトン等が挙げられる。
ポリエステルポリオールは、いずれか1種が単独で用いられても、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0033】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、200以上15,000以下であることが好ましく、300以上10,000以下であることがより好ましく、400以上5,000以下であることがさらに好ましい。
(D)成分の重量平均分子量が、上記範囲の下限値以上であると柔軟性に優れ、上限値以下であると硬化性や耐摩耗性、耐薬品性に優れる。
【0034】
(D)成分の水酸基価は、30mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であることがより好ましく、45mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
(D)成分の水酸基価が、上記範囲の下限値以上であると硬化性や耐摩耗性、耐薬品性に優れ、上限値以下であると柔軟性に優れる。
【0035】
<(E)成分>
ポリイソシアネート化合物(E)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
(E)成分の1分子中に存在するイソシアネート基の数は2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
【0036】
(E)成分は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
脂環式ポリイソシアネートの例としては、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(別名:トルエンジイソシアネート)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイゾシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
(E)成分は、得ようとする化合物(a)の特性に応じて選択することが好ましい。
例えば黄変抑制性、柔軟性の点では脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
例えば黄変抑制性、靭性の点では脂環式ポリイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
例えば耐摩耗性、耐薬品性の点では芳香族ポリイソシアネートが好ましく、トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートがより好ましい。
ポリイソシアネート化合物(E)は、ビウレット体、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体のいずれであってもよい。
【0041】
≪ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法≫
化合物(a)は、下記第1の工程と第2の工程を有する方法で製造できる。
第1の工程:(A)成分と(B)成分とを反応させて(C)成分を得る工程。
第2の工程:(C)成分と(D)成分と(E)成分とを反応させて化合物(a)を得る工程。
【0042】
<第1の工程>
第1の工程では、(A)成分中の水酸基に、(B)成分中の酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)が開環付加反応を起こし、(C)成分が生成する。
(A)成分中の水酸基の一部に酸無水物が開環付加することにより、カルボキシ基を有する分岐鎖が形成される。すなわち、(A)成分に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖にカルボキシ基が存在する構造が得られる。
(B)成分中に存在する酸無水物基が1個の場合、(A)成分中の水酸基に(B)成分が開環付加することにより、(A)成分に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖の末端にカルボキシ基が存在する構造が得られる。
(A)成分中の水酸基のうち、(B)成分と反応しなかった残りの水酸基は、第2の工程においてポリイソシアネート化合物(E)と反応してウレタン結合を形成する。これにより、(A)成分に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含む分子鎖が形成される。
【0043】
第1の工程で反応させる(A)成分と(B)成分の比率(質量比)を表すA:Bは1:0.1~1:10が好ましい。
(A)成分と(B)成分の比率が上記範囲の下限値以上であると樹脂組成物の水分散安定性に優れ、上限値以下であると柔軟性に優れる。
第1の工程で反応させる、(A)成分中に存在する水酸基と(B)成分中に存在する酸無水物基とのモル比を表す水酸基:酸無水物基は1:0.05~1:0.9が好ましく、1:0.1~1:0.7がより好ましい。前記水酸基に対する前記酸無水物基のモル比が上記範囲の下限値以上であると樹脂組成物の水分散安定性に優れ、上限値以下であると柔軟性に優れる。
【0044】
第1の工程は、重合禁止剤の存在下で行う。
重合禁止剤は、(メタ)アクリロイル基のラジカル重合性不飽和結合の重合反応の進行を止める化合物である。公知の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤の具体例としては、メトキシヒドロキノン、フェノチアジン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレート(a)に対して0.001~1質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましく、0.01~0.1質量%がさらに好ましい。重合禁止剤の使用量が上記範囲の下限値以上であるとウレタン(メタ)アクリレートの貯蔵安定性が向上し、上限値以下であるとウレタン(メタ)アクリレートの紫外線硬化性が向上する。
【0045】
第1の工程は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。
エステル化触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィン、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、(A)成分と(B)成分の総量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。エステル化触媒の使用量が上記範囲の下限値以上であると反応速度が向上し、上限値以下であると貯蔵安定性が向上する。
【0046】
第1の工程の反応温度は、例えば30~130℃、さらには60~100℃である。
第1の工程の反応時間は、例えば1~24時間、さらには1~8時間である。
【0047】
<第2の工程>
第2の工程では、(C)成分及び(D)成分中の水酸基が(E)成分中のイソシアネート基に付加反応を起こし、化合物(a)が生成する。
具体的には、(C)成分中の水酸基、すなわち第1の工程で(B)成分と反応しなかった水酸基と(E)成分中のイソシアネート基とが反応してウレタン結合が形成される。また(E)成分中のイソシアネート基と(D)成分中の水酸基とが反応してウレタン結合が形成される。
【0048】
第2の工程で反応させる(C)成分と(D)成分と(E)成分の比率は、化合物(a)におけるウレタン結合濃度が、上述の好ましい範囲となるように設定することが好ましい。
また第2の工程では、(E)成分中のイソシアネート基の実質的に全てが反応することが好ましい。
第2の工程で生成する反応物の赤外線吸収スペクトルを測定し、イソシアネート残基に由来する波長2200~2300cm-1の吸収が観察されなくなったことをもって、(E)成分中のイソシアネート基の実質的に全てが反応したと判断することができる。
【0049】
例えば、第2の工程で反応させる(C)成分と(D)成分と(E)成分の比率(質量比)を表すC:D:Eが、1:0.1:0.1~1:10:10の範囲内で設定することが好ましい。
(C)成分と(D)成分と(E)成分の比率が上記範囲の下限値以上であると柔軟性に優れ、上限値以下であると樹脂組成物の水分散安定性に優れる。
【0050】
第2の工程は、第1の工程と同様の重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。好ましくは、第1の工程を終えた反応液に(D)成分と(E)成分を加えて第2の工程を行う。
【0051】
第2の工程は、反応時間の短縮の観点から、ウレタン化触媒の存在下で行ってもよい。
公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体例としては、ジブチルスズアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性化合物が挙げられる。
ウレタン化触媒の使用量は、用いる触媒の活性によって適宜調整することが可能である。例えばウレタン(メタ)アクリレート(a)に対して0~1質量%が好ましく、0~0.5質量%がより好ましく、0~0.1質量%がさらに好ましい。
【0052】
≪中和物≫
本発明の一実施形態に係る中和物(以下、「本中和物」とも記す。)は、化合物(a)中のカルボキシ基がアミン化合物で中和されたものである。カルボキシ基がアミン化合物で中和されることで、水分散性又は水溶性がより向上する。
【0053】
本中和物においては、化合物(a)中に存在するカルボキシ基の全部が中和されていてもよく、一部が中和されていてもよい。水分散性又は水溶性により優れる点から、本中和物中の全てのカルボキシ基100モル%のうち、アミン化合物で中和されたカルボキシ基の割合は、80モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。アミン化合物で中和されたカルボキシ基の割合が高いほど、水分散性又は水溶性により優れる傾向がある。
【0054】
アミン化合物としては、アミノ基を有し、カルボキシ基を中和可能なものであればよい。
アミン化合物の例としてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミンなどの脂肪族第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリデシルアミン、トリステアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N-ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジエチルブチルアミン、N,N-ジエチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルオクチルアミン、N,N-ジエチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルラウリルアミン、N,N-ジイソプロピルメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジイソプロピルブチルアミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン等の脂肪族第三級アミン類;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン類;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチル-4-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジエチルフェニルアミン、N,N-ジフェニルメチルアミン等の芳香族三級アミン類;N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N-プロピルピロリジン、N-ブチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-プロピルモルホリン、N-ブチルモルホリン、N-sec-ブチルモルホリン、N-tert-ブチルモルホリン、N-イソブチルモルホリン、キヌクリジン等の環状アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、キシリレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリオキシプロピレンジアミン等のその他のアミン類;等が挙げられる。
アミン化合物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン化合物カルボン酸としては、水への溶解性の観点から、第3級アミノ基を有する化合物が好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0055】
本中和物は、例えば、化合物(a)とアミン化合物とを接触させることにより製造できる。接触時の温度は、例えば20~70℃である。接触時間は、例えば10~60分間である。
【0056】
≪水性樹脂組成物≫
本発明の一実施形態に係る水性樹脂組成物は、本中和物を水に分散したものである。
具体的には、化合物(a)とアミン化合物とを接触させて本中和物を得た後、本中和物を撹拌しながら水を徐々に加え、乳化状態となるように混合して水性樹脂組成物(乳化分散液)を得る。
水性樹脂組成物中の本中和物の含有量は、例えば、水性樹脂組成物の総質量に対し、10~60質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
【0057】
本中和物は水溶性又は水分散性に優れるため、水性樹脂組成物の平均粒子径が小さいという特徴を有する。また水性樹脂組成物の分散安定性に優れる。
例えば、測定温度25℃における、水性樹脂組成物の平均粒子径が10~200nm、好ましくは10~100nm、より好ましくは10~50nmである水性樹脂組成物が得られる。
【0058】
≪水性活性エネルギー線硬化性組成物≫
本発明の一実施形態に係る水性活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「本硬化性組成物」とも記す。)は、前記水性樹脂組成物と光重合開始剤とを含む。すなわち、本硬化性組成物は、本中和物と、水と、光重合開始剤とを含む。
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射による開始剤の開裂や水素移動でラジカルやカチオンの活性種を発生するものである。
【0059】
本硬化性組成物は、さらに、本中和物及び化合物(a)以外の、重合性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合等)を有するモノマー(以下、「他のモノマー」とも記す。)を含んでもよい。
本硬化性組成物は、必要に応じて、非反応性希釈剤をさらに含んでもよい。
本硬化性組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。
【0060】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、鉄-アレン錯体、チタノセン化合物などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0061】
<他のモノマー>
他のモノマーは、重合性不飽和結合を1個有する単官能モノマーでもよく、重合性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーでもよい。単官能モノマーと多官能モノマーとを併用してもよい。
モノマーは、水溶性モノマーが好ましい。「水溶性モノマー」とは、水と混和して均一な溶液となるモノマーを示す。
【0062】
単官能モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有単官能(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、イソボルニルアクリレートが挙げられる。
多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート、DPH(M)A、PET(M)A、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
<非反応性希釈剤>
非反応性希釈剤は、重合性不飽和結合を有さず、常温で液状の化合物である。
非反応性希釈剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の有機溶剤、水が挙げられる。これらの非反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非反応性希釈剤としては、希釈性や乾燥工程での作業性に優れる点で、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒や酢酸エチル等のエステル系溶媒が好ましい。
【0064】
<他の成分>
他の成分としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、フィラー、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光輝材等の添加剤が挙げられる。
【0065】
<各成分の含有量>
本中和物の含有量は、本硬化性組成物の総質量に対し、30~95質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。本中和物の含有量が前記下限値以上であれば樹脂組成物の水分散安定性と硬化物の柔軟性がより優れる。
【0066】
他のモノマーの含有量は、本硬化性組成物の総質量に対し、0~50質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましい。他のモノマーの含有量が前記上限値以下であれば樹脂組成物の水分散安定性と硬化物の柔軟性がより優れる。
【0067】
本中和物と他のモノマーとの合計の含有量に対する本中和物の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。本中和物の割合が前記下限値以上であれば樹脂組成物の水分散安定性と硬化物の柔軟性がより優れる。
【0068】
光重合開始剤の含有量は、本硬化性組成物の総質量に対し、0.1~10質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましい。光重合開始剤の含有量が前記下限値以上であれば、本硬化性組成物の光硬化性がより優れ、前記上限値以下であれば、本硬化性組成物の保存安定性がより優れる。
【0069】
非反応性希釈剤の含有量は、本硬化性組成物の総質量に対し、0~80質量%が好ましく、0~60質量%がより好ましい。非反応性希釈剤の含有量が前記上限値以下であれば樹脂組成物の水分散安定性がより優れる。
【0070】
本硬化性組成物は、本中和物と、光重合開始剤と、必要に応じて他のモノマー及び他の成分からなる群から選ばれる少なくとも1種を混合することにより製造できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
【0071】
≪硬化物≫
本硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化させて硬化物とすることができる。
本硬化性組成物に活性エネルギー線が照射されると、光重合開始剤に由来する活性種(ラジカルやカチオン)が生成し、前記活性種が本中和物及び他のモノマーに作用して重合又は架橋反応が起こり、本硬化性組成物が硬化する。
【0072】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、プラズマ、赤外線、電離放射線等が挙げられる。これらの中では、照射装置が広く普及している観点から、紫外線が好ましい。
活性エネルギー線の照射条件は、使用する光源に応じて適宜選定できる。紫外線を照射する場合の積算光量は、例えば50~1000mJ/cmである。
【0073】
本硬化性組成物の硬化物は柔軟性に優れる。
例えば、ショアD硬度が45以下、好ましくは40以下、より好ましくは35以下である硬化物を得ることができる。
本硬化性組成物に含まれる本中和物の水溶性又は水分散性が高いため、硬化物におけるハードセグメントの比率が少なくなり、柔軟な硬化物(硬化皮膜)が得られると考えられる。
【0074】
≪水性活性エネルギー線硬化性組成物の用途≫
本硬化性組成物は、例えば、ソフトコート剤、接着剤、シーリング剤、インキ、レジスト等の用途に用いることができる。そのほか、硬化性エラストマーが用いられる用途に、本硬化性組成物を用いることができる。
本硬化性組成物は、柔軟な硬化皮膜を形成できる点から、ソフトコート剤、接着剤として好適である。
【0075】
[ソフトコート剤]
本硬化性組成物からなるソフトコート剤は、基材の表面にソフトコート層を形成するために用いることができる。
例えば、基材の表面にソフトコート剤を塗布し、必要に応じて乾燥することで、ソフトコート剤からなる塗膜を形成する。次いで、前記塗膜に光を照射して硬化させることで、ソフトコート剤の硬化物からなるソフトコート層(硬化皮膜)を形成する。これにより、ソフトコート層付き基材が得られる。
【0076】
基材としては、例えばフィルム、シート、その他各種の成形物が挙げられる。作業性、加工性の点では、フィルムが好ましい。フィルムの厚さは、例えば10~250μmである。
基材の材質としては、例えば樹脂、金属、ガラス、木が挙げられる。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が挙げられる。
【0077】
塗布方法としては、公知の塗布方法を適宜採用でき、例えばスプレーコート、スピンコート、グラビヤコートが挙げられる。
乾燥条件としては、非反応性希釈剤を除去できればよく、例えば60~110℃で0.5~10分間の条件が挙げられる。
光の照射条件は前記と同様である。
塗膜の厚さは、形成するソフトコート層の厚さに応じて設定される。
ソフトコート層の厚さは、例えば1~20μmとすることができる。
【0078】
[接着剤]
本硬化性組成物からなる接着剤は、基材と被接着物との間に接着剤層を形成し、基材と被接着物とを接着剤層を介して一体化するために用いることができる。
例えば、基材の表面に接着剤を塗布し、その上に被接着物を積層し、必要に応じて乾燥することで、接着剤の塗膜を形成する。次いで、前記塗膜に光を照射して硬化させることで、接着剤の硬化物からなる接着剤層(硬化皮膜)を形成する。これにより、基材と被接着物とが接着剤層を介して一体化した積層体が得られる。
【0079】
基材及び被接着物の材質は、前記ソフトコート層付き基材における基材の材質と同様のものが例示できる。
接着剤の塗布方法、乾燥条件、光の照射条件としては、前記ソフトコート層付き基材の製造における塗布方法と同様のものが例示できる。
接着剤層の厚さは、例えば1~20μmとすることができる。
【実施例0080】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
以下において「部」は「質量部」を示す。
【0081】
<略号>
[ポリイソシアネート化合物(E)]
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社製「IPDI」)。
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー株式会社製「HDI」)。
・TDI:トルエンジイソシアネート(東ソー株式会社製「コロネート T-100」)。
[ヒドロキシアクリレート]
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート。
【0082】
[製造例1:ウレタンアクリレート化合物の製造]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4口フラスコに、(A)成分である1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物298部と、(B)成分である無水フタル酸118部と、トリフェニルホスフィン5.0部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.5部とを投入し、充分に攪拌した後、80℃に昇温し、約3時間攪拌加熱して反応させて(C)成分を生成した(第1の工程)。続いて、(D)成分であるポリテトラメチレングリコール(Mw=1011、水酸基価=111mgKOH/g)407部と、(E)成分であるイソホロンジイソシアネート177部とを投入し、充分に攪拌した後、80℃に昇温し、約24時間攪拌加熱して反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトル測定によりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した(第2の工程)。このようにして、ウレタンアクリレート化合物(a)を得た。
得られたウレタンアクリレート化合物の重量平均分子量(Mw)、二重結合当量、酸価及びウレタンアクリレートの総質量に対するウレタン結合濃度を表1に示す(以下、同様)。
【0083】
[製造例2~11]
4口フラスコに投入する材料の種類及び量を表1に示すようにした以外は製造例1と同様にしてウレタンアクリレート化合物(a)を得た。
【0084】
以下の比較製造例1、2は、(A)成分及び(B)成分を用いず、その代わりにヒドロキシエチルアクリレート及びジヒドロキシカルボン酸を用いた例である。
【0085】
[比較製造例1]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4口フラスコに、(D)成分であるポリテトラメチレングリコール232部と、(E)成分であるヘキサメチレンジイソシアネート382部と、ジメチロールプロピオン酸122部と、ヒドロキシエチルアクリレート264部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.5部とを投入し、充分に攪拌した後、80℃に昇温し、約24時間攪拌加熱して反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトル測定によりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した。このようにして、ウレタンアクリレートを得た。
【0086】
[比較製造例2]
4口フラスコに投入する材料の種類及び量を表1に示すようにした以外は比較製造例1と同様にしてウレタンアクリレートを得た。
【0087】
[実施例1]
(中和物及び水性樹脂組成物の製造)
攪拌装置を備えたフラスコに、製造例1で得たウレタンアクリレート35部と、トリエチルアミン2.8部とを投入し、液温を60℃に保ちながら約1時間攪拌して中和物を得た後、水65部を攪拌しながら徐々に投入し、均質な乳化状態となるように混合して、中和物が水に分散した乳化分散液(水性樹脂組成物)を得た。
得られた中和物中の全てのカルボキシ基100モル%のうち、アミン化合物で中和されたカルボキシ基の割合を表2に示す(以下、同様)。
得られた水性樹脂組成物の平均粒子径を、動的光散乱式測定装置(マイクロトラック・ベル社製品名「NANOTRAC-flex」)を使用して測定した。その結果を表2に示す(以下、同様)。
得られた水性樹脂組成物の分散安定性を下記の方法で評価した。その結果を表3に示す(以下、同様)。
【0088】
(水性活性エネルギー線硬化性組成物の製造)
得られた水性樹脂組成物を用いて水性活性エネルギー線硬化性組成物を製造した。
すなわち、攪拌装置を備えたフラスコに、上記で得た乳化分散液(水性樹脂組成物)の100部と、光重合開始剤である4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(IGM Resins B.V.社製品名「Omnirad 2959」、以下、単に「Omnirad 2959」とも記す。)の1.1部を投入し、約1時間攪拌して液状の樹脂組成物(水性活性エネルギー線硬化性組成物)を得た。
【0089】
(硬化物及び硬化皮膜付き基材の製造)
得られた水性活性エネルギー線硬化性組成物を、厚さ100μmの基材フィルム(易接着PET)上に、乾燥後の膜厚が所定の膜厚となるように塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成した。
その後、塗膜に対して紫外線を、積算光量が500mj/cmとなるように照射して硬化皮膜(硬化物)を形成し、硬化皮膜付きPETフィルムを得た。
得られた硬化皮膜付きフィルムについて、下記評価基準に基づき、柔軟性を評価した。その結果を表3に示す(以下、同様)。
【0090】
<分散安定性の評価方法>
各例で得られた均質な乳化分散液(水性樹脂組成物)の液温を一定に保ちながら静置し、固体が分離して沈殿が生じているか否かを目視で観察した。液温は25℃及び40℃の2通りとした。水性樹脂組成物を調製した日を1日目として、毎日観察を行い、分離沈殿が生じるまでの日数を測定した。
また、25℃で静置した乳化分散液について、製造直後の平均粒子径(製造直後)と、14日目の平均粒子径(静置後)を測定した。分離沈殿が生じている液の平均粒子径は「測定不可」とした。
下記の評価基準に基づいて分散安定性を評価した。
(評価基準)
◎:14日目に分離沈殿が生じていない、かつ製造直後と静置後の平均粒子径の差の絶対値が40nm未満である。
○:14日目に分離沈殿が生じていない、かつ製造直後と静置後の平均粒子径の差の絶対値が40nm以上である。
△:2日目から14日目までの間に分離沈殿が生じた。
×:1日目に分離沈殿が生じた。
【0091】
<柔軟性の評価方法>
(1)折り曲げ評価
硬化皮膜の乾燥後膜厚が1mmとなるように形成した硬化皮膜付きPETフィルムを、硬化皮膜を内側にして180°まで手で屈曲した。下記の基準で耐屈曲性を評価した。
(評価基準)
○:屈曲した際に割れが生じなかった。
×:屈曲した際に割れが生じた。
【0092】
(2)ショアD硬度
硬化皮膜の乾燥後膜厚が8mmとなるように形成した硬化皮膜付きPETフィルムを測定対象とし、JIS K 6253-3:2012に準拠するタイプDデュロメータを用いて、硬化皮膜のショアD硬度を測定した。
【0093】
[実施例2~11、比較例1,2]
フラスコに投入する材料の種類及び量を表2に示すようにした以外は実施例1と同様にして乳化分散液(水性樹脂組成物)を得て、水性活性エネルギー線硬化性組成物を製造し、硬化皮膜付き基材を製造した。実施例1と同様に評価した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表1~3の結果に示されるように、製造例1~11で得たウレタンアクリレート化合物(a)の中和物を水に分散させた実施例1~11の水性樹脂組成物は、平均粒子径が小さかった。このことから、ウレタンアクリレート化合物(a)の中和物は水分散性に優れることがわかる。
また、実施例1~11の水性樹脂組成物は、保存中に分離沈殿を生じ難く、分散安定性に優れていた。
また、実施例1~11の水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(硬化皮膜)は、耐屈曲性に優れ、ショアD硬度が低く、柔軟性に優れていた。
かかる特性が得られるのは、ウレタンアクリレート化合物(a)のエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖の末端にカルボキシ基を導入したことにより、水溶性又は水分散性が大幅に向上したためと考えられる。また、水溶性又は水分散性が大幅に向上したことにより、硬化物におけるハードセグメントの比率が少なくなり、より柔軟な硬化皮膜が得られたと考えられる。
【0098】
一方、比較製造例1、2で得たウレタンアクリレート化合物の中和物を水に分散させた比較例1、2の分散乳化液は、平均粒子径が大きく、保存中に分離沈殿を生じやすく、水分散性に劣るものであった。
また、比較例1、2の水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(硬化皮膜)は、180°まで屈曲した際に割れが生じ、ショアD硬度が高く、柔軟性に劣るものであった。
比較製造例1、2で得られるウレタンアクリレート化合物において、カルボキシ基は、ジヒドロキシカルボン酸の水酸基に由来する2つのウレタン結合の間に介在する分子鎖のペンダント基として存在する。すなわち、凝集力が高いウレタン結合の間に存在するカルボキシ基がハードセグメントに含まれてしまい、カルボキシ基を導入したことによる水溶性又は水分散性の向上効果が十分に得られなかったと考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてなるカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)と、
ポリオール化合物(D)と、
ポリイソシアネート化合物(E)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート化合物であって、
1分子中に1個以上のウレタン結合、1個以上の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有し、
少なくとも1個のカルボキシ基が、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)に由来する分子鎖から分岐した、ウレタン結合を含まない分子鎖に存在し、
二重結合当量が100~10,000であり、酸価が10~500KOHmg/gであり、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の総質量に対して、ウレタン結合の含有量が1~50質量%である、ウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)が、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
前記酸無水物(B)が、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(D)が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物(E)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物をアミン化合物で中和してなる中和物。
【請求項7】
請求項に記載の中和物を水に分散してなる、水性樹脂組成物。
【請求項8】
平均粒子径が10~200nmである、請求項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項に記載の水性樹脂組成物、及び光重合開始剤を含む、水性活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項11】
ショアD硬度が45以下である、請求項10に記載の硬化物。
【請求項12】
基材の表面に、請求項10に記載の硬化物からなる硬化皮膜を有する、硬化皮膜付き基材。
【請求項13】
請求項に記載の水性活性エネルギー線硬化性組成物からなるソフトコート剤、接着剤、シーリング剤、インキ、又はレジスト。
【請求項14】
基材の表面に、請求項10に記載の硬化物からなるソフトコート層を有する、ソフトコート層付き基材。
【請求項15】
基材と被接着物との間に、請求項10に記載の硬化物からなる接着剤層を有する、積層体。
【請求項16】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と酸無水物(B)とを反応させてカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)を得る工程と、
得られたカルボキシ基含有エポキシ(メタ)アクリレート化合物(C)とポリオール化合物(D)とポリイソシアネート化合物(E)とを反応させる工程を経て、
二重結合当量が100~10,000であり、酸価が10~500KOHmg/gであり、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の総質量に対して、ウレタン結合の含有量が1~50質量%である、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造する、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法。