(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142531
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】締結具及び締結具を有するヒンジ構造
(51)【国際特許分類】
F16B 21/08 20060101AFI20241003BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20241003BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16B21/08
F16B21/06 Z
B62J1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054690
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直井 創
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB03
3J037BB04
3J037DA04
(57)【要約】
【課題】 組み立て時の作業性が良い締結具を提供する。
【解決手段】 ベース9及び回転体33に両端が突出した状態で挿入されたシャフト53の両端に結合する締結具55であって、シャフトの軸方向に沿って延びる基部60と、基部の両端に設けられ、互いに対向する第1面63を備えた一対の係合部61とを有し、一対の係合部のそれぞれは、第1面から凹みシャフトの端部に対向する底部69を有する受容孔65と、受容孔から係合部の縁部71に延びシャフトの端部の通過を許容する溝部67と、溝部に設けられシャフトを係止する係止部77とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース及び回転体に両端が突出した状態で挿入されたシャフトの両端に結合する締結具であって、
前記シャフトの軸方向に沿って延びる基部と、
前記基部の両端に設けられ、互いに対向する第1面を備えた一対の係合部とを有し、
前記一対の係合部のそれぞれは、前記第1面から凹み前記シャフトの端部に対向する底部を有する受容孔と、前記受容孔から前記係合部の縁部に延び前記シャフトの端部の通過を許容する溝部と、前記溝部に設けられ前記シャフトを係止する係止部とを有する締結具。
【請求項2】
前記底部及び前記溝部の底部分には、前記軸方向に貫通し、かつ前記溝部の延在方向に延び、前記係合部の前記縁部に到達するスリットが設けられている請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記係合部の前記受容孔と前記基部との間には、前記軸方向に貫通する肉抜き部が設けられ、
前記スリットは、前記受容孔を横切って前記肉抜き部に到達している請求項2に記載の締結具。
【請求項4】
前記受容孔は前記軸方向から見て円形に形成されている請求項1に記載の締結具。
【請求項5】
前記係止部は、前記溝部内に突出した弾性爪である請求項1に記載の締結具。
【請求項6】
前記弾性爪は前記係合部の前記縁部側から前記受容孔に向けて前記溝部内に突出する傾斜面と、前記受容孔側を向く逆止面とを有する請求項5に記載の締結具。
【請求項7】
鞍乗型車両に搭載されたシートボックスと、前記シートボックスを開閉するシートとを回動可能に接続するヒンジ構造であって、
前記シートボックス及び前記シートに両端が突出した状態で挿通されたシャフトと、
前記シャフトの両端に結合する締結具とを有し、
前記締結具は、前記シャフトの軸方向に沿って延びる基部と、前記基部の両端に設けられ、互いに対向する第1面を備えた一対の係合部とを有し、
前記一対の係合部のそれぞれは、前記第1面から凹み前記シャフトの端部に対向する底部を有する受容孔と、前記受容孔から前記係合部の縁部に延び前記シャフトの端部の通過を許容する溝部と、前記溝部に設けられ前記シャフトを係止する係止部とを有するヒンジ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結具及び締結具を有するヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、収納ボックスとしての二輪車のシートボックスにシートを回動可能に接続するためのヒンジ構造を開示している。ヒンジ構造は、シートに取り付けられる第1のヒンジ部材と、シートボックスに取り付けられる第2のヒンジ部材と、第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材を接続するヒンジ軸とを有する。ヒンジ軸は、第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材に設けられたヒンジ孔に挿入されるシャフトと、シャフトの端部に螺合されるナットとを有する。
【0003】
特許文献2は、車両に用いられるヒンジ構造を開示している。ヒンジ構造は、第1のヒンジ部材と、第2のヒンジ部材と、第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材を接続するシャフトと、シャフトに結合する締結具とを有する。シャフトは、第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材に設けられたヒンジ孔に、端部が突出した状態で挿入される。締結具はボルトを受容する凹部を有し、かつ軟質の合成樹脂によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61-036465号公報
【特許文献2】実開昭58-081270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のヒンジ構造を組み立てるためには、シャフトの端部にナットを螺合する必要がある。この作業は煩雑であり、組み立て時の作業性が悪いという問題がある。
【0006】
特許文献2のヒンジ構造を組み立てるためには、締結具の凹部を引っ張って広げながら凹部にシャフトを受容させる必要がある。締結具は軟質の合成樹脂によって形成されているため劣化し易い。また、この作業は煩雑であり、組み立て時の作業性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑み、組み立て時の作業性の良い締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、ベース(9)及び回転体(33)に両端が突出した状態で挿入されたシャフト(53)の両端に結合する締結具(55)であって、前記シャフトの軸方向に沿って延びる基部(60)と、前記基部の両端に設けられ、互いに対向する第1面(63)を備えた一対の係合部(61)とを有し、前記一対の係合部のそれぞれは、前記第1面から凹み前記シャフトの端部に対向する底部(69)を有する受容孔(65)と、前記受容孔から前記係合部の縁部(71)に延び前記シャフトの端部の通過を許容する溝部(67)と、前記溝部に設けられ前記シャフトを係止する係止部(77)とを有する。
【0009】
この態様によれば、シャフトに対して締結具を所定方向から押し込むことによって、シャフトを受容孔に係止することができる。よって、組み立て時の作業性の良い締結具を提供することができる。
【0010】
上記の態様において、前記底部及び前記溝部の底部分(72)には、前記軸方向に貫通し、かつ前記溝部の延在方向に延び、前記係合部の前記縁部に到達するスリット(73)が設けられているとよい。
【0011】
この態様によれば、シャフトに対して締結具を押し込むときに、係合部が変形し、シャフトが溝部を通過し易くなる。これにより、一層作業性良く締結具をシャフトに結合させることができる。
【0012】
上記の態様において、前記係合部の前記受容孔と前記基部との間には、前記軸方向に貫通する肉抜き部(75)が設けられ、前記スリットは、前記受容孔を横切って前記肉抜き部に到達しているとよい。
【0013】
この態様によれば、シャフトに対して締結具を押し込むときに、係合部が一層変形し易くなる。これにより、一層作業性良く締結具をシャフトに結合させることができる。
【0014】
上記の態様において、前記受容孔は前記軸方向から見て円形に形成されているとよい。
【0015】
この態様によれば、シャフトが受容孔内で回転し易くなる。よって、ベースに対する回転体の回転が容易になる。
【0016】
上記の態様において、前記係止部は、前記溝部内に突出した弾性爪(79)であるとよい。
【0017】
この態様によれば、シャフトに対して締結具を結合させるとき、又はシャフトから締結具を取り外すときに、弾性爪が弾性変形する。これにより、シャフトが溝部を通過し易くなる。
【0018】
上記の態様において、前記弾性爪は前記係合部の前記縁部側から前記受容孔に向けて前記溝部内に突出する傾斜面(78)と、前記受容孔側を向く逆止面(80)とを有するとよい。
【0019】
この態様によれば、シャフトに対して締結具を押し込むときに、シャフトが傾斜面に沿って溝部に挿入される。よって、作業性良く締結具をシャフトに結合させることができる。また、シャフトが受容孔に受容されると、逆止面によって、シャフトは受容孔内に確実に保持される。よって締結具がシャフトから脱落することを確実に規制することができる。
【0020】
上記課題を解決するために本発明の別の態様は、鞍乗型車両(1)に搭載されたシートボックス(5)と、前記シートボックスを開閉するシート(6)とを回動可能に接続するヒンジ構造(50)であって、前記シートボックス及び前記シートに両端が突出した状態で挿通されたシャフト(53)と、前記シャフトの両端に結合する締結具(55)とを有し、前記締結具は、前記シャフトの軸方向に沿って延びる基部(60)と、前記基部の両端に設けられ、互いに対向する第1面(63)を備えた一対の係合部(61)とを有し、前記一対の係合部のそれぞれは、前記第1面から凹み前記シャフトの端部に対向する底部を有する受容孔(65)と、前記受容孔から前記係合部の縁部に延び前記シャフトの端部の通過を許容する溝部(67)と、前記溝部に設けられ前記シャフトを係止する係止部(77)とを有する。
【0021】
この態様によれば、鞍乗型車両のシートボックスとシートとを接続するヒンジ構造において、組み立て時の作業性を改善することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成によれば、組み立て時の作業性の良い締結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】シートボックス取付部とブラケットとを接続するヒンジ構造の斜視図
【
図4】シートボックス取付部とブラケットとを接続するヒンジ構造の側面図
【
図5】締結具がシャフトに結合された状態を示すヒンジ構造の断面図
【
図6】締結具がシャフトに結合される前の状態を示すヒンジ構造の断面図
【
図11】第2実施形態に係る締結具の係合部を示す斜視図
【
図12】第2実施形態に係る締結具の係合部を示す断面図
【
図13】第3実施形態に係る締結具の係合部を示す斜視図
【
図14】第3実施形態に係る締結具の係合部を示す断面図
【
図15】第4実施形態に係る締結具の係合部を示す斜視図
【
図16】第4実施形態に係る締結具の係合部を示す断面図
【
図17】第5実施形態に係る締結具の係合部を示す斜視図
【
図18】第5実施形態に係る締結具の係合部を示す断面図
【
図19】第6実施形態に係る締結具の係合部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る締結具を鞍乗型車両のシート装置のヒンジ構造に適用した実施形態について説明する。以下では、説明の便宜上、鞍乗型車両の進行方向を基準として前後、左右及び上下方向を定める。
【0025】
図1に示すように、鞍乗型車両(車両1)は、車体フレーム2と、車体フレーム2に支持されたシート装置4とを有する。
【0026】
シート装置4は、収納ボックスとしてのシートボックス5と、乗員が着座するためのシート6とを有する。
【0027】
図2に示すように、シートボックス5は、シートボックス本体7を有する。シートボックス本体7は、上方に開口した箱形をなす。シートボックス本体7は、左右方向における長さよりも前後方向における長さが長くなるように、前後に延在している。シートボックス本体7の前部における車幅方向における中央部分には、シート6が接続されるシートボックス取付部9が設けられている。
【0028】
図2~
図5に示すように、シートボックス取付部9はシートボックス本体7から前方に延びている。シートボックス取付部9は金属製の部材によって形成されているとよい。シートボックス取付部9には左右に貫通する第1ヒンジ孔21が形成されている。
【0029】
シート6は、シート本体31と、ブラケット33とを有する。
【0030】
シート本体31は、板状をなし、シートボックス本体7の開口を閉塞可能に形成されている。シート本体31の下面の前端には、ブラケット33が結合されている。
【0031】
ブラケット33は、一対の第1部材35と、第2部材36と、一対の第1部材35及び第2部材36を接続する第3部材37とを有する。ブラケット33は、金属製の板状部材によって形成されている。
【0032】
一対の第1部材35は板状に形成され、それぞれ左右方向を向く面を有する。一対の第1部材35にはそれぞれ、ブラケット33を左右に貫通する第2ヒンジ孔44が形成されている。
【0033】
第2部材36は、矩形の板状に形成され、一対の第1部材35の同士を左右に接続している。第2部材36は、シート本体31の下面の前端部分に取り付けられる。第2部材36にはボルト孔40が設けられているとよい。第2部材36は、ボルト孔40に挿入されたボルト46によってシート本体31に締結されているとよい。
【0034】
第3部材37は、矩形の板状に形成されている。第3部材37は、一対の第1部材35を左右に接続している。第3部材37と一対の第1部材35とはそれぞれ直角に接続されているとよい。
【0035】
シートボックス取付部9に対してブラケット33を設けるときには、作業者は、一対の第1部材35がそれぞれシートボックス取付部9に対して左右方向において外側に位置するように、ブラケット33を配置する。このとき、作業者は、2つの第2ヒンジ孔44がそれぞれ第1ヒンジ孔21と対向するように、ブラケット33を配置する。これにより、第1ヒンジ孔21及び第2ヒンジ孔44が協働して、ブラケット33及びシートボックス取付部9を左右方向に貫通する貫通孔が形成される。ブラケット33及びシートボックス取付部9には、ヒンジ構造50が設けられる。
【0036】
図3~
図6に示すように、ヒンジ構造50は、ベースとしてのシートボックス取付部9に対し、回転体としてのブラケット33を回転可能に接続する。ヒンジ構造50は、シャフト53と、締結具55とを有する。
【0037】
シャフト53は、円柱状に形成された金属製の部材である。シャフト53は、第1ヒンジ孔21及び第2ヒンジ孔44に挿入される。シャフト53の両端は、ブラケット33の一対の第1部材35から左右に突出している。すなわち、ブラケット33及びシートボックス取付部9に対する挿入状態において、シャフト53の軸方向は左右方向と一致する。
【0038】
締結具55は、樹脂によって形成された構造体である。締結具55は、所定方向に延びる基部60と、基部60の両端に設けられた一対の係合部61とを有する。以下では、基部60の延びる方向を左右方向と定義して締結具55の説明を行う。
【0039】
図7に示すように、一対の係合部61はそれぞれ、基部60の両端から延出している。一対の係合部61はそれぞれ、互いに対向する第1面63と、第1面63と反対を向く第2面64とを有する。第1面63にはそれぞれ、受容孔65と、溝部67とが設けられている。一対の係合部61はそれぞれ左右対称の構成を有している。このため、以下では一対の係合部61のうちの一方について説明を行う。
【0040】
図8に示すように、受容孔65は、第1面63から凹む有底の孔である。本実施形態では、受容孔65は、左右方向から見て円形に形成されている。受容孔65の直径は、シャフト53の直径よりも大きい。受容孔65は、係合部61における先端(すなわち、延出端)側の部分に設けられているとよい。受容孔65の底部69は、受容孔65の側部としての側壁70によって、第1面63と左右に接続されている。
【0041】
溝部67は、第1面63から凹む溝である。溝部67は、受容孔65から係合部61の縁部71に延びる。本実施形態では、溝部67は、受容孔65よりも係合部61における先端側の部分に設けられ、かつ、係合部61の延出する向きに延びている。別の実施形態では、溝部67は、係合部61の延出する向きに対して異なる角度をもって延びていてもよい。
【0042】
受容孔65の底部69及び溝部67の底部分72には、スリット73が設けられている。スリット73は、底部69及び溝部67を左右に貫通する穴である。スリット73は、溝部67の延在方向に延び、係合部61の縁部71に到達する。係合部61における基端側の部分であって受容孔65と基部60との間には、肉抜き部75が設けられている。
【0043】
肉抜き部75は、係合部61を左右方向に貫通する穴である。肉抜き部75は、左右方向から見て円形に形成されているとよい。スリット73は係合部61の縁部71から受容孔65を横切って肉抜き部75に到達しているとよい。
【0044】
溝部67には、係止部77が設けられている。本実施形態では、係止部77は、溝部67の縁部に設けられている。係止部77は、溝部67から受容孔65の側壁70に向けて突出している。係止部77は、弾性変形可能な弾性爪79によって構成されているとよい。係止部77は、係合部61の縁部71側から受容孔65に向けて傾斜する傾斜面78を有しているとよい。
【0045】
図9及び
図10は、締結具55がシャフト53に結合した状態におけるヒンジ構造50を示す。締結具55は、シャフト53の両端に結合する。締結具55とシャフト53との結合状態において、シャフト53の両端はそれぞれ、締結具55の受容孔65に受容される。これにより、それぞれの受容孔65の底部69は、シャフト53の端部に対向し、シャフト53の軸方向への移動を規制する。また、シャフト53の両端はそれぞれ、係止部77によって受容孔65内に係止される。これにより、締結具55はシャフト53から脱落することなくシャフト53に結合することができる。
【0046】
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係るヒンジ構造50を介してシート6をシートボックス5に回動可能に接続する方法について説明する。
【0047】
第1のステップとして、作業者は、シートボックス取付部9に対してブラケット33を配置する。このとき、作業者は、シートボックス取付部9及びブラケット33を、第1ヒンジ孔21と第2ヒンジ孔44とが対向するように配置する。
【0048】
第2のステップとして、作業者は、シャフト53を第1ヒンジ孔21及び第2ヒンジ孔44に挿入する。このとき、作業者は、シャフト53を、シートボックス取付部9及びブラケット33から両端が突出するように挿入する。
【0049】
第3のステップとして、作業者は、締結具55をシャフト53に対して所定の向きで配置する。このとき、作業者は、基部60の延びる方向がシャフト53の軸方向(本実施形態では、左右方向)と一致し、かつ一対の係合部61の先端部分がシャフト53側を向くように、締結具55を配置する(
図6)。
【0050】
第4のステップとして、作業者は、次に、締結具55をシャフト53に結合させる。このとき、作業者は、基部60を把持し、係合部61の延出端部分をシャフト53の両端に当接させた状態で、締結具55をシャフト53に対して押し込むとよい。
【0051】
このとき、係合部61は、シャフト53の両端を介して伝わった力によって弾性変形し、締結具55を押し込む向きと直交し、かつシャフト53から離れる方向に広がる。これにより、シャフト53の両端は、係止部77の傾斜面78を滑りながら溝部67を通過し、受容孔65に受容される。
【0052】
シャフト53の両端が受容孔65に受容され、作業者が締結具55に対して加えた力を取り除くと、係合部61は変形した状態から元に戻る。シャフト53の両端は、係止部77によって受容孔65内に係止される(
図5)。
【0053】
これにより、ヒンジ構造50を介してシートボックス取付部9及びブラケット33を回動可能に接続することができる。
【0054】
次に、本実施形態に係る締結具55の効果について説明する。作業者が締結具55をシャフト53に対して所定方向から押し込むと、シャフト53の両端が受容孔65に受容される。シャフト53の両端は底部69によって軸方向への移動が規制され、かつ係止部77によって係止されるため、シートボックス取付部9及びブラケット33からのシャフト53の脱落が防止される。これにより、締結具55は、シートボックス取付部9及びブラケット33に対してシャフト53を取り付けることができる。よって、組み立て時の作業性の良い締結具55を提供することができる。
【0055】
また、底部69及び溝部67の底部分72には、軸方向に貫通し、かつ溝部67の延在方向に延び、係合部61の縁部71に到達するスリット73が設けられている。この構成によれば、シャフト53に対して締結具55を押し込むときに、スリット73によって係合部61が弾性変形する。よって、シャフト53が溝部67を通過し易くなる。これにより、一層作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。
【0056】
また、係合部61の受容孔65と基部60との間には、軸方向に貫通する肉抜き部75が設けられ、スリット73は、受容孔65を横切って肉抜き部75に到達している。この構成によれば、シャフト53に対して締結具55を押し込むときに、係合部61が一層弾性変形し易くなる。これにより、一層作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。
【0057】
また、受容孔65は軸方向から見て円形に形成されている。これにより、シャフト53が受容孔65内で回転し易くなる。よって、シートボックス取付部9に対してブラケット33が回転し易くなる。
【0058】
また、係止部77は、溝部67内に突出した弾性爪79である。この構成によれば、シャフト53に対して締結具55を結合させるとき、又はシャフト53から締結具55を取り外すときに、弾性爪79が弾性変形する。これにより、シャフト53が溝部67を通過し易くなる。
【0059】
また、係止部77は係合部61の縁部71側から受容孔65に向けて傾斜する傾斜面78を有する。この構成によれば、シャフト53に対して締結具55を押し込むときに、シャフト53が傾斜面78に沿って受容孔65に挿入される。よって、シャフト53を挿入するときの抵抗を抑制することができる。これにより、作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。
【0060】
更に、本実施形態に係る締結具55を有するヒンジ構造50は、車両1に搭載されたシートボックス5と、シートボックス5を開閉するシート6とを回動可能に接続する。ヒンジ構造50は、シートボックス5のシートボックス取付部9及びシート6のブラケット33に両端が突出した状態で挿通されたシャフト53と、シャフト53の両端に結合する締結具55とを有する。
【0061】
この構成によれば、車両1のシートボックス5とシート6とを接続するヒンジ構造50において、組み立て時の作業性を改善することができる。
【0062】
次に、第2実施形態に係るヒンジ構造50について説明する。第2実施形態に係る締結具55は、第1実施形態に係るヒンジ構造50に対して係合部61の形状において異なる。その他の構成については第1実施形態と同一の符号を付し説明を省略する。
【0063】
図11及び
図12に示すように、第2実施形態に係るヒンジ構造50の受容孔65は、シャフト53の軸方向から見て矩形状に形成されている。溝部67は、シャフト53の軸方向から見て矩形状に形成され、受容孔65に接続されている。
【0064】
係止部77は、弾性爪79によって構成されている。弾性爪79は、底部分72に設けられている。本実施形態では、弾性爪79は、係合部61の縁部71側から受容孔65に向けて溝部67内に突出する傾斜面78と、受容孔65側を向く逆止面80とを有する。係合部61は、スリット73及び肉抜き部75(
図8参照)を有していない。
【0065】
この構成によれば、シャフト53に対して締結具55を押し込むときに、シャフト53が傾斜面78に沿って溝部67内に挿入される。よって、作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。また、シャフト53が受容孔65に受容されると、逆止面80によって、シャフト53は受容孔65内に確実に保持される。よって締結具55がシャフト53から脱落することを確実に規制することができる。更に、係合部61がスリット73及び肉抜き部75(
図8参照)を有していないため、係合部61の剛性を高めることができる。
【0066】
次に、第3実施形態に係るヒンジ構造50について説明する。第3実施形態に係るヒンジ構造50は、第2実施形態に係るヒンジ構造50に対して2つのスリット73が設けられている点において異なる。
【0067】
図13及び
図14に示すように、第3実施形態に係るヒンジ構造50の受容孔65の底部69及び溝部67の底部分72には、2つのスリット73が形成されている。2つのスリット73はそれぞれ、受容孔65における係合部61の基部60側の部分から、係合部61の縁部71に到達している。2つのスリット73が形成されることにより、底部69及び側壁70は溝部67の延在方向に分割されている。
【0068】
この構成によれば、底部69と側壁70とが分割されるため、シャフト53が受容孔65に受容されるときに、底部69が変形し易くなる。よって、作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。
【0069】
次に、第4実施形態に係るヒンジ構造50について説明する。第4実施形態に係るヒンジ構造50は、第3実施形態に係るヒンジ構造50に対して2つのスリット73の形状及び第2のスリット101が設けられている点において異なる。
【0070】
図15及び
図16に示すように、第4実施形態に係るヒンジ構造50の2つのスリット73は、底部分72に形成されている。2つのスリット73はそれぞれ、底部分72から係合部61の先端側に向けて延びている。2つのスリット73の基部60側の端部は、第2のスリット101によって接続されている。第2のスリット101は、2つのスリット73と直交する方向に延び、係合部61をシャフト53の軸方向に貫通している。これにより、2つのスリット73及び第2のスリット101は、シャフト53の軸方向から見てU字状に形成される。底部分72における係止部77が形成されている部分(以下、薄肉部111という)は、係止部77が形成されていない部分と比較して、軸方向における厚みが薄くなっている。
【0071】
この構成によれば、底部分72が薄肉部111を有しているため、シャフト53が受容孔65に入るときに係合部61が撓み易くなる。よって、作業性良く締結具55をシャフト53に結合させることができる。
【0072】
次に、第5実施形態に係るヒンジ構造50について説明する。第5実施形態に係るヒンジ構造50は、第2実施形態に係るヒンジ構造50に対して係止部77の形状において異なる。
【0073】
図17及び
図18に示すように、第5実施形態に係るヒンジ構造50の係止部77は、シャフト53の軸方向から見てM字状に設けられている。係止部77は、溝部67の縁部から互いに対向するように突出した一対の弾性爪79である。一対の弾性爪79はそれぞれ、係合部61の縁部71側から受容孔65に向けて溝部67内に突出する傾斜面78と、受容孔65側を向く逆止面80とを有する。
【0074】
この構成によれば、係止部77によってシャフト53を2方向から受容孔65内に係止することができる。よって、シャフト53の脱落を確実に抑制することができる。
【0075】
次に、第6実施形態に係るヒンジ構造50について説明する。第6実施形態に係るヒンジ構造50は、第1実施形態に係るヒンジ構造50に対して、肉抜き部75を有していない点と、溝部67の延びる向きとにおいて異なる。
【0076】
図19に示すように、溝部67は、受容孔65よりも係合部61における先端側の部分に設けられ、かつ、係合部61の延出する向きと直交する方向に延びている。
【0077】
この構成によれば、締結具55をシャフト53に結合させるために締結具55を押し込む方向を変更することができる。
【0078】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。ヒンジ構造50は、例えば車両1に搭載されたコンソールボックス等に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 :車両(鞍乗型車両)
5 :シートボックス
6 :シート
9 :シート取付部(ベース)
33 :ブラケット(回転体)
53 :シャフト
55 :締結具
60 :基部
61 :係合部
63 :第1面
65 :受容孔
67 :溝部
69 :底部
71 :縁部
72 :底部分
73 :スリット
75 :肉抜き部
77 :係止部
78 :傾斜面
79 :弾性爪
80 :逆止面