(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142547
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】吊り物の昇降装置
(51)【国際特許分類】
F21V 21/36 20060101AFI20241003BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241003BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
F21V21/36 110
G01H17/00 Z
F21S2/00 621
F21S2/00 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054711
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴之
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】 センサによるバトンの揺れや振動などの検知感度が向上する吊り物の昇降装置の提供。
【解決手段】 吊り物の昇降装置は、上部パネル33の下面に締結され、バトンユニット10の下部パネル34から下方に延出する吊り部材37と、吊り部材37に設けられた振動検出センサ43,44と、下部パネル34の下方から延設する吊り部材37に締結されたパイプ保持部材21と、パイプ保持部材21に保持され、吊り物100が固定される吊りパイプ20と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部パネルおよび下部パネルを有するバトンユニットと、
前記上部パネルの下面に締結され、前記下部パネルから下方に延出する吊り部材と、
前記吊り部材に設けられた振動検出センサと、
前記下部パネルの下方から延設する前記吊り部材に締結されたパイプ保持部材と、
前記パイプ保持部材に保持され、吊り物が固定される吊りパイプと、
を備えたことを特徴とする吊り物の昇降装置。
【請求項2】
前記上部パネルの上面に締結されたワイヤ接続部材を有し、
前記ワイヤ接続部材、前記吊り部材、前記振動検出センサおよび前記パイプ保持部材は、前記バトンユニットの昇降方向に沿った直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吊り物の昇降装置。
【請求項3】
前記振動検出センサは、前記上部パネルと前記下部パネルの間の前記吊り部材の中途位置に固定されることを特徴とする請求項1に記載の吊り物の昇降装置。
【請求項4】
前記下部パネルは、孔部が形成され、
前記吊り部材は、前記孔部に挿通して、前記下部パネルの下方から延出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吊り物の昇降装置。
【請求項5】
前記吊り部材は、前記下部パネルに非接触に前記孔部に挿通配置されることを特徴とする請求項4に記載の吊り物の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り物の昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ局などのスタジオ、劇場、舞台などに設置される吊り物の昇降装置が周知である。この昇降装置は、照明器具、音響装置、舞台幕、看板などの吊り物を昇降させるための舞台設備である。従来の昇降装置は、ワイヤに吊り下げられた照明用、音響用、美術用、幕用などのバトン装置を巻上機によって昇降する。なお、巻上機は、ワイヤを巻き取り、または繰り出すことによりバトン装置を昇降するための手動または電動の装置である。
【0003】
このような昇降装置には、ウインチなどの電動巻上機によるバトン装置の昇降を自動で減速、停止などさせる機能を備えたものが知られている。この昇降装置は、バトン装置の揺れや振動を検出するセンサが設けられる。センサは、昇降中のバトン装置に揺れ、傾き、振動などによって生じる異常な状態を検出する。
【0004】
そして、昇降装置は、バトン装置の揺れ、振動などをセンサが検出したとき、電動巻上機によるバトン装置の昇降を減速、停止などする。これにより、昇降装置は、吊り物またはバトン装置が障害物と接触、衝突したときの被害を軽減することができる。なお、障害物とは、人間、美術セット、他のバトン装置、他の吊り物などである。
【0005】
しかしながら、昇降装置は、センサの設置位置、バトン装置の構造、またはバトン装置が障害物に接触、衝突などした位置によっては、センサが揺れ、振動などを検出できない場合がある。その場合、従来の昇降装置では、バトン装置と障害物との接触、衝突などが発生してもバトン装置の昇降を減速、停止などすることができない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態によれば、センサによるバトン装置の揺れ、振動などの検知感度が向上する吊り物の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る吊り物の昇降装置は、上部パネルおよび下部パネルを有するバトンユニットと、前記上部パネルの下面に締結され、前記下部パネルから下方に延出する吊り部材と、前記吊り部材に設けられた振動検出センサと、前記下部パネルの下方から延設する前記吊り部材に締結されたパイプ保持部材と、前記パイプ保持部材に保持され、吊り物が固定される吊りパイプと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態の吊り物の昇降装置は、センサによるバトン装置の揺れ、振動などの検知感度が向上することにより、バトン装置に揺れ、障害物との接触、衝突などが発生したときにバトン装置の昇降を確実に減速、停止などすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】照明器具を吊り下げる昇降装置の構成を示す正面図
【
図3】照明バトンのフロントパネルを外した状態のバトン装置を示す分解斜視図
【
図4】照明バトンの一方の側部(右側部)を右斜め上方から見た斜視図
【
図5】照明バトンの一方の側部(右側部)を右斜め下方から見た分解斜視図
【
図6】照明バトンの一方の側部(右側部)を右斜め下方から見た斜視図
【
図7】照明バトンのフロントパネルを外した状態の正面図
【
図8】変形例の照明バトンのフロントパネルを外した状態の正面図
【
図9】電動巻上機、2つのセンサユニット、制御装置および操作パネルを示すブロック図
【
図10】昇降装置が実行する制御例を示すフローチャート
【
図11】照明バトンの一方の側部(右側部)の正面図
【
図12】下部パネルにセンサユニットが設けられた照明バトンの一方の側部(右側部)を右斜め上方から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る吊り物の昇降装置は、上部パネルおよび下部パネルを有するバトンユニットと、前記上部パネルの下面に締結され、前記下部パネルから下方に延出する吊り部材と、前記吊り部材に設けられた振動検出センサと、前記下部パネルの下方から延設する前記吊り部材に締結されたパイプ保持部材と、前記パイプ保持部材に保持され、吊り物が固定される吊りパイプと、を備える。
【0012】
また、前記上部パネルの上面に締結されたワイヤ接続部材を有し、前記吊りワイヤ、前記ワイヤ接続部材、前記吊り部材、前記振動検出センサおよび前記パイプ保持部材は、前記バトンユニットの昇降方向に沿った直線上に配置されている。
【0013】
また、前記振動検出センサは、前記上部パネルと前記下部パネルの間の前記吊り部材の中途位置に固定される。
【0014】
また、前記下部パネルは、孔部が形成され、前記吊り部材は、前記孔部に挿通して、前記下部パネルの下方から延出する。
【0015】
また、前記吊り部材は、前記下部パネルに非接触に前記孔部に挿通配置される。
【0016】
以下に図面を参照しながら、一態様の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の
説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、
構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。そのため、本発明の実施形態は、図面に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0017】
図1に示す、本実施形態の昇降装置1は、吊り物である照明器具100を鉛直上下方向に昇降する照明昇降機構を例示する。なお、昇降装置1は、音響装置、看板、舞台幕などの種々の吊り物を昇降する各種昇降機構にも適用できる。
【0018】
昇降装置1は、バトン装置2と、電動巻上機3と、を有する。バトン装置2は、複数台の照明器具100を保持する。バトン装置2は、複数台の照明器具100が設置されて支持する。バトン装置2は、複数台の照明器具100を纏めて鉛直上下方向に昇降移動する照明バトン装置である。
【0019】
バトン装置2は、ここでは照明バトンとしてのバトンユニット10と、吊りパイプ20と、を有する。バトン装置2は、ここでは2本の吊りワイヤ15が接続されている。バトン装置2は、2本の吊りワイヤ15が電動巻上機3に巻き上げられることによって上昇移動する。また、バトン装置2は、2本の吊りワイヤ15が電動巻上機3から繰り出されることによって下降移動する。
【0020】
電動巻上機3は、グリッド4に固定して設置される電動ウインチなどの昇降機である。なお、グリッド4は、テレビ局のスタジオ、ホール、劇場などの建物の天井に設けられた井桁状の簀の子、ぶどう棚などである。グリッド4には、バトン装置2に接続された2本の吊りワイヤ15を垂直方向から電動巻上機3に向けて延設させる2つのプーリ(方向変換滑車)5が設置される。
【0021】
バトン装置2は、グリッド4から下方に垂設されたケーブル12が接続される。ケーブル12は、複数台の照明器具100の給電線、複数台の照明器具100を点灯制御などする制御線が含まれた複合ケーブルである。
【0022】
バトン装置2は、
図2に示すように、照明バトンとしてのバトンユニット10と、吊りパイプ20と、を有する。バトンユニット10は、中央上部にケーブル用カゴ11が設けられている。
図1に示したケーブル12は、折り畳んだ状態でケーブル用カゴ11内に収容される。
【0023】
ケーブル12は、バトン装置2の鉛直下方への移動に伴いケーブル用カゴ11から引き出される。また、ケーブル12は、バトン装置2の鉛直上方への移動に伴いケーブル用カゴ11に折り畳まれて収容される。
【0024】
バトンユニット10は、ここでは両側上部のそれぞれに、ワイヤ接続部材であるワイヤ接続金物13が締結される。即ち、バトンユニット10は、2つのワイヤ接続金物13が固定された構成である。2つのワイヤ接続金物13には、吊りワイヤ15が接続される。なお、吊りワイヤ15は、例えば、ターンバックルが設けられたワイヤホルダ14内にて留められている。
【0025】
吊りパイプ20は、バトンユニット10の下方において、ここでは3つのパイプホルダ21によって保持される。吊りパイプ20は、両端にエンドキャップであるパイプエンド22が装着される。なお、
図1に示した複数台の照明器具100は、図示しないクランプなどによって、吊りパイプ20の長手方向に並べて固定される。
【0026】
バトンユニット10は、
図3に示すように、フロントパネル31と、バックパネル32と、上部パネル33と、下部パネル34と、サイドカバーである2つのサイドパネル35と、を有する。バトンユニット10は、これらのパネル31~35が図示しないビスなどにより組付けられることにより、中空の横長な略直方体形状となっている。
【0027】
上部パネル33および下部パネル34は、中途に配置された2つの支持金具36と、両側に組付けられる2つのサイドパネル35によって、所定の距離を有して離間するように保持される。そして、上部パネル33および下部パネル34の縁辺部分に、フロントパネル31およびバックパネル32が組付けられる。なお、フロントパネル31には、複数台の照明器具100の給電用コードおよび制御用コードのプラグが接続される複数のコンセント16が設けられる。
【0028】
バトンユニット10は、両側部分に設けられた吊り部材(吊り金物)である2つの吊りアーム37を有する。2つの吊りアーム37は、
図4に示すように、ワイヤ接続金物13の鉛直下方側の直線上に設けられる。2つの吊りアーム37は、下部パネル34の長手方向に沿って形成された孔部である長孔38に挿通して、下部パネル34から下方に延出する。なお、2つの吊りアーム37は、下部パネル34の長孔38への挿通により、下部パネル34とは非接触状態に配設される。
【0029】
そして、2つの吊りアーム37は、下端部分が吊りパイプ20を保持するパイプ保持部材のパイプホルダ21と締結される。なお、2つの吊りアーム37には、振動、傾き、回転(旋回)などを検出するセンサユニット41がそれぞれ固定される。センサユニット41は、上部パネル33と下部パネル34との間の吊りアーム37の中途位置に固定される。
【0030】
そのため、センサユニット41は、ワイヤ接続金物13の鉛直下方側であって、パイプホルダ21の鉛直上方側の直線上に配置される。即ち、センサユニット41は、上部パネル33と下部パネル34との間のバトンユニット10の内部に配置される。
【0031】
バトンユニット10の両端部分の構造を、
図5および
図6に基づいて、より具体的に説明する。なお、ここでは、バトンユニット10の右側部のみを例示して説明する。
【0032】
図5および
図6に示すように、吊りワイヤ15と、この吊りワイヤ15が接続されるワイヤ接続金物13と、吊りアーム37と、吊りパイプ20を保持するパイプホルダ21と、センサユニット41とが直線上に配置される。
【0033】
ワイヤ接続金物13と吊りアーム37は、上部パネル33を挟むように4セットのボルト26aおよびナット26bによって締結される。即ち、ワイヤ接続金物13は、上部パネル33の上面に締結される。吊りアーム37は、上部パネル33の下面に締結される。
【0034】
ワイヤ接続金物13は、上部が断面矩形凹状であって、下部が断面T字状の金物である。吊りアーム37は、上部が断面T字状の金物である。なお、ワイヤ接続金物13の矩形状の下面部、吊りアーム37の矩形状の上面部、上部パネル33には、所定の4か所にボルト26aを通すためのボルト孔13a,37b,26bが形成されている。
【0035】
吊りアーム37は、下部側に2つのボルト孔37aが穿孔されている。2つのボルト孔37aは、吊りアーム37の長手方向に沿った上下方向に並設するように形成される。吊りアーム37は、下部パネル34の長孔38に挿通された後、下部パネル34から下方に延出する板状の下端部分がパイプホルダ21の上方に延設した2つの板体に挟まれるように配置される。なお、パイプホルダ21は、吊りパイプ20が配置されるリング体と、このリング体から延設された2つの板体と、を有する。
【0036】
パイプホルダ21の2つの板体には、2つのボルト孔21aが穿孔されている。これら、2つのボルト孔21aは、吊りアーム37の2つのボルト孔37aと一致するように、板体の長手方向に沿った上下方向に並設するように形成される。
【0037】
吊りアーム37とパイプホルダ21は、それぞれのボルト孔37a,21aが合わせられて、ボルト孔37a,21aにボルト25aが通される。吊りアーム37とパイプホルダ21は、2セットのボルト25aおよびナット25bによって締結される。
【0038】
吊りアーム37は、上部パネル33と下部パネル34との間に位置する中途部にセンサユニット41が固定される。吊りアーム37は、平板状のセンサ保持板42が固定される。吊りアーム37の中途部には、穿孔された複数、ここでは5つのビス孔37cを有する。
【0039】
センサ保持板42は、複数、ここでは5つのビス孔42aを有する。5つのビス孔42aは、吊りアーム37の5つのビス孔37cと一致するセンサ保持板42の位置に穿孔される。センサ保持板42は、吊りアーム37の中途部に面接触するように配置される。センサ保持板42は、複数、ここでは5つの固定ビス27が5つのビス孔42a,37cに螺着して吊りアーム37に固定される。
【0040】
センサ保持板42には、センサユニット41が面接触するように固定される。センサユニット41は、加速度センサ43、ジャイロセンサ44などの電子部品が実装されたセンサ基板である。加速度センサ43およびジャイロセンサ44は、振動検出センサを構成する。
【0041】
センサユニット41は、複数、ここでは4つのビス孔42bを有する。4つのビス孔42bは、センサユニット41の四隅に穿孔される。センサ保持板42は、複数、ここでは4つのビス孔42bを有する。4つのビス孔42bは、センサユニット41の4つのビス孔41aと一致するセンサ保持板42の四隅の位置に穿孔される。
【0042】
センサユニット41は、複数、ここでは4つの固定ビス28が4つのビス孔41a,42bに螺着してセンサ保持板42に固定される。これにより、センサユニット41は、上部パネル33と下部パネル34との間において、吊りアーム37の中途位置に固定される。こうして、センサユニット41は、バトンユニット10の内部に設置される。なお、サイドパネル35は、上部パネル33と下部パネル34の側部と、図示しないビスにより固定される。
【0043】
以上に説明した、バトン装置2のバトンユニット10は、
図7に示すように、吊りパイプ20を保持するパイプホルダ21、パイプホルダ21に締結する吊りアーム37、および吊りワイヤ15が接続されたワイヤ接続金物13が直線上に配置される。
【0044】
そして、バトン装置2のバトンユニット10は、吊りアーム37の中途にセンサユニット41が固定された構成である。即ち、吊りアーム37に固定されたセンサユニット41も、パイプホルダ21およびワイヤ接続金物13と直線上の位置に設置される。
【0045】
このように、バトン装置2のバトンユニット10は、下方から吊りパイプ20を保持するパイプホルダ21、吊りアーム37、吊りワイヤ15が接続されるワイヤ接続金物13およびセンサユニット41が直線上に配置される。即ち、バトンユニット10は、少なくとも2組の直線上に配置されるパイプホルダ21、吊りアーム37、ワイヤ接続金物13およびセンサユニット41を有する構成となる。
【0046】
なお、バトン装置2のバトンユニット10は、
図8に示すように、センサユニット41をパイプホルダ21と直線上の支持金具36にも設置してもよい。即ち、バトンユニット10は、3組の直線上に配置されるパイプホルダ21およびセンサユニット41を有する構成となる。
【0047】
以上のように構成された昇降装置1は、
図9に示すように、ここでは2つのセンサユニット41が制御装置48と制御信号を授受する図示しない制御ケーブルによって接続される。制御装置48は、電動巻上機3および操作パネル51と制御信号を授受する図示しない制御ケーブルによって接続される。電動巻上機3は、モータ7と、ワイヤドラム8と、を有する。ワイヤドラム8は、吊りワイヤ15を巻回し、モータ7によって回転駆動される。
【0048】
なお、操作パネル51は、バトンユニット10の昇降をユーザが操作する操作部である。操作パネル51には、昇ボタン52と、降ボタン53と、緊急停止ボタン54と、警報装置55と、を有する。昇ボタン52は、バトン装置2を上昇する際にユーザが押下する操作ボタンである。降ボタン53は、バトン装置2を下降する際にユーザが押下する操作ボタンである。緊急停止ボタン54は、バトン装置2の昇降を緊急停止する際にユーザが押下する操作ボタンである。警報装置52は、異常を検知した際に、例えば、警告灯または警報ブザーである。
【0049】
なお、昇降装置1は、ユーザが昇ボタン52または降ボタン53を押下し続けないと、バトン装置2が昇降しない構成となっている。即ち、昇降装置1は、ユーザが昇ボタン52または降ボタン53から手を放して押下をやめると、バトン装置2の昇降が停止する構成である。
【0050】
制御装置48は、操作パネル51の警報装置52と制御信号を授受する図示しない制御ケーブルによって接続される。2つのセンサユニット41は、バトンユニット10の揺れ、振動、衝撃などを検出する、例えば、3軸加速度センサの加速度センサ43と、バトンユニット10の回転(旋回)、向きなどを検出するジャイロセンサ44と、を有する。また、2つのセンサユニット41は、加速度センサ43およびジャイロセンサ44の検出値を取得して所定の閾値との判定結果を制御装置48に出力する制御部としての判定部45を有する。
【0051】
2つのセンサユニット41は、加速度センサ43およびジャイロセンサ44によって検出された加速度αおよび角加速度ωの検出値に基づいて、判定部45が判定結果を制御装置48に出力する。そして、制御装置48は、判定部45から入力された検出結果に基づいて、電動巻上機3のモータ7の駆動を制御する。こうして、昇降装置1は、バトンユニット10の昇降を停止したり、昇降速度を低速にしたりする。即ち、昇降装置1は、センサユニット41から入力される検出結果に基づいて、電動巻上機3および警報装置52を駆動制御する制御装置48を備える。
【0052】
以下に、電動巻上装置3の駆動により、バトン装置2が鉛直上下方向に昇降操作されるときに、昇降装置1が実行する制御例について説明する。昇降装置1は、ユーザにより操作パネル51の昇ボタン52または降ボタン53が押下されて、バトン装置2を昇降する電動巻上機3の駆動が開始すると、
図10のフローチャートに示すステップSのルーチンに従った制御例を実行する。なお、昇降装置1は、バトン装置2の下降と上昇への移動を問わず、
図10に示す制御例を実行する。
【0053】
先ず、センサユニット41に設けられる判定部45には、加速度センサ43が検出した加速度αが入力される(ステップS1)。そして、判定部45は、入力された加速度αが第1加速度閾値Pα1未満(α<Pα1)であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0054】
ここでの第1加速度閾値Pα1は、例えば、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などがスタッフなどの人間、美術セット、他のバトン、他の吊り物などの障害物と接触、衝突などして衝撃が加えられた際に生じる所定の加速度値が設定される。なお、第1加速度閾値Pα1は、ユーザによって所望の設定値に変更できるようにしてもよい。
【0055】
判定部45は、加速度αが第1加速度閾値Pα1未満(α<Pα1)の場合(ステップS2:YES)、ステップS3に進む。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などしていないと判断する。
【0056】
一方、判定部45は、加速度αが第1加速度閾値Pα1以上(α≧Pα1)の場合(ステップS2:NO)、その判定結果を制御装置48に出力する(ステップS8)。この判定結果(α≧Pα1)が入力された制御装置48は、電動巻上機3の緊急停止を実行する(ステップS9)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、または照明器具100が障害物と接触、衝突などしたと判断する。そのため、昇降装置1は、制御装置48が電動巻上機3の駆動を停止制御してバトン装置2の昇降が緊急停止される。
【0057】
判定部45は、ステップS2において、加速度αが第1加速度閾値Pα1未満(α<Pα1)の場合、入力された加速度αが第2加速度閾値Pα2未満(α<Pα2)であるか否かを判定する(ステップS3)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などしていない状態である。
【0058】
ここでの第2加速度閾値Pα2は、第1加速度閾値Pα1よりも小さな加速度値(Pα1>Pα2)が設定される。この第2加速度閾値Pα2は、例えば、空調によりバトン装置2が揺れたり、障害物との接触、衝突などから回避させるため、スタッフがバトン装置2をゆっくり動かしたりしたときに生じる所定の加速度値が設定される。なお、第2加速度閾値Pα2も、ユーザによって所望の設定値に変更できるようにしてもよい。
【0059】
判定部45は、加速度αが第2加速度閾値Pα2未満(α<Pα2)の場合(ステップS3:YES)、ステップS4に進む。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、または照明器具100が揺れたり、スタッフによって動かされたりしていないと判断する。そのため、バトン装置2は、通常の速度で昇降される。
【0060】
一方、判定部45は、加速度αが第2加速度閾値Pα2以上(α≧Pα2)の場合(ステップS3:NO)、その判定結果を制御装置48に出力する(ステップS11)。この判定結果(α≧Pα2)が入力された制御装置48は、電動巻上機3の低速駆動を実行する(ステップS12)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、または照明器具100が揺れたり、スタッフによって動かされたりしていると判断する。そのため、バトン装置2の昇降速度が低速に切り替えられる。
【0061】
判定部45は、ステップS3において、加速度αが第2加速度閾値Pα2未満(α<Pα2)の場合、ジャイロセンサ44が検出した角加速度ωが入力される(ステップS4)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、または照明器具100が揺れたり、スタッフによって動かされたりしていない状態である。そして、判定部45は、入力された角加速度ωが第1角加速度閾値Pω1未満(ω<Pω1)であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0062】
ここでの第1角加速度閾値Pω1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などして、例えば、旋回などにより急激な揺れが生じた際の所定の角加速度値が設定される。なお、第1角加速度閾値Pω1も、ユーザによって所望の設定値に変更できるようにしてもよい。
【0063】
判定部45は、角加速度ωが第1角加速度閾値Pω1未満(ω<Pω1)の場合(ステップS5:YES)、ステップS6に進む。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などして、旋回などにより急激な揺れが生じていないと判断する。そのため、バトン装置2は、通常の速度で昇降される。
【0064】
一方、判定部45は、角加速度ωが第1角加速度閾値Pω1以上(ω≧Pω1)の場合(ステップS5:NO)、その判定結果を制御装置48に出力する(ステップS8)。この判定結果(α≧Pω1)が入力された制御装置48は、電動巻上機3の緊急停止を実行する(ステップS9)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などして、旋回などにより急激な揺れが生じたと判断する。そのため、昇降装置1は、制御装置48が電動巻上機3の駆動を停止制御してバトン装置2の昇降が緊急停止される。
【0065】
判定部45は、ステップS5において、角加速度ωが第1角加速度閾値Pω1未満(ω<Pω1)の場合、入力された角加速度ωが第2角加速度閾値Pω2未満(ω<Pω2)であるか否かを判定する(ステップS6)。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、吊りパイプ20、吊りパイプ20に保持された吊り物の照明器具100などが障害物と接触、衝突などして、旋回などにより急激な揺れが生じていない状態である。
【0066】
ここでの第2角加速度閾値Pω2は、第1角加速度閾値Pω1よりも小さな角速度値(Pω1<Pω2)が設定される。この第2角加速度閾値Pω2は、例えば、空調によりバトン装置2が、ゆっくり揺れたり、旋回などしたり、障害物との接触、衝突などから回避させるため、スタッフがバトン装置2をゆっくり揺らしたり、旋回したりしたときに生じる所定の角加速度値が設定される。なお、第2角加速度閾値Pω2も、ユーザによって所望の設定値に変更できるようにしてもよい。
【0067】
判定部45は、角加速度ωが第2角加速度閾値Pω2未満(ω<Pω2)の場合(ステップS6:YES)、ステップS7に進む。このとき、昇降装置1は、バトン装置2のバトンユニット10、または照明器具100が、ゆっくり揺れたり、旋回したりしていないと判断される。そのため、昇降装置1は、制御装置48が電動巻上機3の駆動を通常制御してバトン装置2が通常の速度で昇降される。
【0068】
一方、判定部45は、角加速度ωが第2角加速度閾値Pω2以上(ω≧Pω2)の場合(ステップS6:NO)、その判定結果を制御装置48に出力する(ステップS11)。この判定結果(ω≧Pω2)が入力された制御装置48は、ステップS12の電動巻上機3の低速駆動を実行する。このとき、昇降装置1は、空調によりバトン装置2が、ゆっくり揺れたり、旋回したりしていると判断する。そのため、昇降装置1は、制御装置48が電動巻上機3の駆動を低速制御して、バトン装置2の昇降速度が低速に切り替えられる。
【0069】
ステップS7において、昇降装置1は、バトン装置2の昇降移動が終了されたか否かを判定する(ステップS7)。即ち、バトン装置2の昇降移動の終了は、ユーザが操作パネル51の昇ボタン52または降ボタン53の押下をやめて、電動巻上機3の駆動が停止された状態である。
【0070】
昇降装置1は、バトン装置2の昇降移動が終了された場合(ステップS7:YES)、本制御例を終了する。一方、昇降装置1は、バトン装置2の昇降移動が終了されていない場合(ステップS7:NO)、ステップS1に戻り、以降の処理を繰り返し実行する。
【0071】
なお、ステップS9において、制御装置48は、電動巻上機3のモータ7の駆動を緊急停止した後、警報装置52を駆動して(ステップS10)、本制御を終了する。
【0072】
また、ステップS12において、制御装置48は、電動巻上機3を低速駆動した後、ステップS1に戻り、以降の処理を繰り返し実行する。このとき、制御装置48は、モータ7の回転速度が低下するように、電動巻上機3を駆動制御する。これにより、バトン装置2は、通常速度よりも遅い速度に昇降される。
【0073】
なお、昇降装置1は、例えば、センサユニット41の判定部45を出力部に変更し、加速度センサ43およびジャイロセンサ44からの加速度αおよび角加速度ωの検出値を制御装置48に出力する機能だけの構成とし、バトン装置2の緊急停止または低速昇降の判定を制御装置48が実行する構成としてもよい。
【0074】
以上に説明した本実施形態の昇降装置1のバトン装置2は、吊りパイプ20を保持するパイプホルダ21、このパイプホルダ21と締結される吊りアーム37、この吊りアーム37の中途に設けられるセンサユニット41、および吊りワイヤ15が接続されるワイヤ接続金物13が直線上に配置された構成を有する。
【0075】
また、センサユニット41が設けられる吊りアーム37は、バトンユニット10の下部パネル34の長孔38に挿通して、下部パネル34から下方に延設した下端部分にパイプホルダ21が締結される。そして、吊りアーム37は、下部パネル34の長孔38によって、下部パネル34とは非接触の構造である。
【0076】
これにより、昇降装置1は、バトン装置2と障害物との接触、衝突などがセンサユニット41に直接的に伝わり、センサユニット41の振動などの検知感度が向上する。即ち、昇降装置1は、吊りパイプ20を保持するパイプホルダ21が締結される吊りアーム37とセンサユニット41がバトン装置2の鉛直上下方向である昇降方向に対して直線上に設置することにより、センサユニット41による振動の検出感度が向上する構造となっている。
【0077】
以上のように構成された本実施形態の吊り物の昇降装置1は、吊りパイプ20を支える吊りアーム37にセンサユニット41を設けた構造によって、照明器具100、吊りパイプ20またはバトンユニット10が障害物と接触、衝突などした場合に、吊りアーム37から直接的に振動などがセンサユニット41に伝わり易くなる。そのため、昇降装置1は、障害物との接触時、衝突時などにおけるセンサユニット41の振動検出値が大きくなり、センサ検知感度が向上する。
【0078】
また、昇降装置1は、バトン装置2が障害物と接触、衝突などの異常を検出した場合、バトン装置2の昇降を緊急停止制御する。さらに、昇降装置1は、バトン装置2がゆっくり揺れたり、旋回したり、またはスタッフによって、ゆっくり動かされたりした場合、電動巻上機3によるバトン装置2の昇降を減速制御する。
【0079】
以上に説明した本実施形態の吊り物の昇降装置1は、センサユニット41によるバトン装置2の揺れ、振動などの検知感度が向上することにより、吊り物である照明器具100またはバトン装置2が揺れたり、旋回(回転)したり、障害物との接触、衝突などしたときにバトン装置2の昇降を確実に減速、停止などすることができる構成となる。
【0080】
なお、センサユニット41は、加速度センサ42およびジャイロセンサ43を実装した基板を例示したが、これに限定されることなく、一般販売されている種々の振動検出センサを用いても良い。さらに、吊りパイプ20を支える金具のパイプホルダ21、センサユニット41が配置される金具の吊りアーム37の形態は、一例として示しており、これらの形態に限られるものではない。
【0081】
さらに、センサユニット41の配置位置は、吊り部材37に限らず、
図11に示す、正面視において、パイプホルダ21に締結される吊り部材37に対して昇降方向に沿った直線上の領域Rに配置されてもよい。なお、
図11は、バトンユニット10の右側部のみ図示している。
【0082】
具体的なセンサユニット41の配置位置としては、
図12に示すように、例えば、下部パネル34の他、ワイヤ接続金物13、上部パネル33、フロントパネル31、バックパネル32またはパイプホルダ21のいずれかに配置されてもよい。これらセンサユニット41の何れの配置位置においても、昇降装置1は、パイプホルダ21に締結される吊り部材37の直線上にあるため振動などの検知感度が向上するという効果が得られる。
【0083】
また、センサユニット41に設けられる判定部45は、検出値と閾値とを比較するプログラム、および制御装置48は、昇降装置1の電動巻上機3を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)を有した構成である。
【0084】
なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて、または、これと共に、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。センサユニット41に設けられる判定部45および制御装置48は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行するものである。
【0085】
以上に本発明のいくつかの実施形態を説明したが、この実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…昇降装置
2…バトン装置
3…電動巻上機
4…グリッド
5…プーリ(方向変換滑車)
7…モータ
8…ワイヤドラム
10…バトンユニット
11…ケーブル用カゴ
12…ケーブル
13…ワイヤ接続金物
13a,21a,26b,37b…ボルト孔
14…ワイヤホルダ
15…吊りワイヤ
16…コンセント
20…吊りパイプ
21…パイプホルダ
22…パイプエンド
25a,26a…ボルト
25b,26b…ナット
27,28…固定ビス
31…フロントパネル
32…バックパネル
33…上部パネル
34…下部パネル
35…サイドパネル
36…支持金具
37…吊りアーム
37c,41a,42b…ビス孔
38…長孔
41…センサユニット
42…センサ保持板
43…加速度センサ
44…ジャイロセンサ
45…検出部
48…制御装置
51…操作パネル
52…昇ボタン
53…降ボタン
54…緊急停止ボタン
55…警報装置
100…照明器具
α…加速度
ω…角加速度
Pα1…第1加速度閾値
Pα2…第2加速度閾値
Pω1…第1角加速度閾値
Pω2…第2角加速度閾値
R…領域