(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014255
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シール材およびシール構造体
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240125BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116947
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正志
(72)【発明者】
【氏名】奥田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】内田 暁人
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA03
3J040EA16
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA03
3J040HA08
(57)【要約】
【課題】 気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することが可能なシール材およびシール構造体を提供すること。
【解決手段】 シール材A10は、径方向rのr1側に位置し且つr1側とは反対側のr2側に凹む第1曲面1と、径方向rのr2側に位置し且つr2側に膨出する第2曲面2と、を有する。第2曲面2は、径方向rに視て、第1曲面1のすべてと重なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の第1側に位置し且つ前記第1側とは反対側の第2側に凹む第1曲面と、
前記第1方向の前記第2側に位置し且つ前記第2側に膨出する第2曲面と、を有し、
前記第2曲面は、前記第1方向に視て、前記第1曲面のすべてと重なる、シール材。
【請求項2】
前記第1曲面は、前記第1方向と直交する第2方向の第1側の端点である第1端点と、前記第2方向の前記第1側とは反対側の第2側の端点である第2端点と、を有し、
前記第1端点における前記第1曲面の法線を延長した第1直線と、前記第2端点における前記第1曲面の法線を延長した第2直線とは、いずれもが前記第2曲面と交差する、請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記第1曲面および前記第2曲面の各々は、前記第1方向に延びる同一の対称軸について線対称である、請求項2に記載のシール材。
【請求項4】
前記対称軸と交差する部分の厚さは、前記第1直線または前記第2直線と交差する部分の厚さの0.5倍以上3.0倍以下である、請求項3に記載のシール材。
【請求項5】
前記第1直線と前記第2直線とがなす角度は、60°以上210°以下である、請求項2に記載のシール材。
【請求項6】
前記第1方向と直交する第2方向の前記第1側において前記第1曲面と前記第2曲面との間に介在する第3曲面と、
前記第2方向の前記第2側において前記第1曲面と前記第2曲面との間に介在する第4曲面と、をさらに有する、請求項1に記載のシール材。
【請求項7】
前記シール材が、閉環状である、請求項1ないし6のいずれかに記載のシール材。
【請求項8】
前記第1方向の前記第1側が、環状の外側であり、
前記第1方向の前記第2側が、環状の内側である、請求項7に記載のシール材。
【請求項9】
請求項1に記載のシール材と、
前記第1方向と直交する第2方向の両側から前記シール材を挟むシール対象物と、を備える、シール構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材およびシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
シール対象物に気密性を付与する等を目的として、シール材が広く用いられている。特許文献1には、従来のシール材の一例が開示されている。同文献に開示されたシール材は、断面形状において、底部、第1側壁部および第2側壁部と、凹部と、を有する形状である。このシール材は、底部、第1側壁部および第2側壁部が、シール対象物に設けられた凹部に接するように装着されることが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シール材が装着されるシール対象物は様々であり、それぞれにおいて種々の特性が求められる。気密性を高めるためにシール材を変形させるほど、シール材からシール対象物に及ぼす反力が大きくなる。たとえば、シール対象物が石英等の脆性材料からなる場合、反力が大き過ぎるとシール対象物が破損するおそれがある。あるいは、シール対象物が互いに摺動する部材からなる場合、シール材の反力が高いことによって、シール材の一部が摩耗しやすくなる。シール材の摩耗粉は、シール対象物において不純物となることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することが可能なシール材およびシール構造体を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるシール材は、第1方向の第1側に位置し且つ前記第1側とは反対側の第2側に凹む第1曲面と、前記第1方向の前記第2側に位置し且つ前記第2側に膨出する第2曲面と、を有し、前記第2曲面は、前記第1方向に視て、前記第1曲面のすべてと重なる。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1曲面は、前記第1方向と直交する第2方向の第1側の端点である第1端点と、前記第2方向の前記第1側とは反対側の第2側の端点である第2端点と、を有し、前記第1端点における前記第1曲面の法線を延長した第1直線と、前記第2端点における前記第1曲面の法線を延長した第2直線とは、いずれもが前記第2曲面と交差する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1曲面および前記第2曲面の各々は、前記第1方向に延びる同一の対称軸について線対称である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記対称軸と交差する部分の厚さは、前記第1直線または前記第2直線と交差する部分の厚さの0.5倍以上3.0倍以下である。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1直線と前記第2直線とがなす角度は、60°以上210°以下である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1方向と直交する第2方向の前記第1側において前記第1曲面と前記第2曲面との間に介在する第3曲面と、前記第2方向の前記第2側において前記第1曲面と前記第2曲面との間に介在する第4曲面と、をさらに有する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シール材が、閉環状である。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1方向の前記第1側が、環状の外側であり、前記第1方向の前記第2側が、環状の内側である。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供されるシール構造体は、本発明の第1の側面によって提供されるシール材と、前記第1方向と直交する第2方向の両側から前記シール材を挟むシール対象物と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシール材を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は(a)のc-c線に沿う断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るシール材を示す部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るシール構造体について、(a)は気密状態が実現される前の部分拡大断面図であり、(b)は気密が実現された後の部分拡大断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係るシール材の第1変形例および第2変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図5】(a)は、本発明の第2実施形態に係るシール材を示す平面図であり、(b)は、本発明の第3実施形態に係るシール材を示す部分平面図である。
【
図6】(a)、(b)は、本発明の第4実施形態に係るシール材およびその第1変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図7】(a)、(b)は、本発明の第4実施形態に係るシール材の第2変形例および第3変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態に係るシール材を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に識別のために用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0020】
<第1実施形態>
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に係るシール材およびシール構造体を示す。本発明に係るシール材の全体形状は何ら限定されず、円環状、楕円環状、矩形環状等の端部を有さない閉環状、あるいは、端部を有する直線状、曲線状、屈曲状等、種々の形状に設定される。本実施形態のシール材A10は、閉環状であり、さらに、中心軸CSを有する円環状である。シール材A10では、径方向rが本発明の第1方向であり、軸方向zが本発明の第2方向である。シール材A10は、周方向θと直交する断面形状が、
図1(c)に示す断面形状である。
【0021】
なお、
図2においては、径方向r(第1方向)の外側、すなわち環状の外側をr1側(本発明の第1方向の第1側)とし、径方向r(第1方向)の内側、すなわち環状の内側をr2側(本発明の第1方向の第2側)とする。また、軸方向z(第2方向)の一方側(上側)をz1側(本発明の第2方向の第1側)とし、軸方向z(第2方向の)の他方側(下側)をz2側(本発明の第2方向の第2側)とする。本発明に係るシール材は、第2方向の両側からシール対象物によって挟まれることによりシール構造体を構成し、気密性を維持することが意図されている。
【0022】
シール材A10は、シール構造体B10等に用いられた場合に、気密性を適切に維持しうる材質からなることが好ましい。このようなシール材A10の材質としては、可撓性に富み、弾性変形が容易な材質が選択され、たとえばフッ素ゴム、シリコンゴム等に代表されるゴム材料が挙げられる。
【0023】
シール材A10は、第1曲面1、第2曲面2、第3曲面3、第4曲面4、第5面5および第6面6を有する。第1曲面1は、径方向rのr1側に位置しており、径方向rのr2側に凹んだ凹曲面である。第2曲面2は、径方向rのr2側に位置しており、径方向rのr2側に膨出する凸曲面である。
【0024】
第2曲面2は、径方向rに視て、第1曲面1のすべてと重なる。すなわち、
図2に示す断面形状において、第1曲面1の軸方向zのz1側の端点を第1端点P1とした場合、第1端点P1を通り且つ径方向rに平行である直線L11が、第2曲面2と交差する。また、第1曲面1の軸方向zのz2側の端点を第2端点P2とした場合、第2端点P2を通り且つ径方向rに平行である直線L21が、第2曲面2と交差する。
【0025】
また、
図2に示す断面形状において、第1曲面1の第1端点P1における法線を延長した第1直線L12は、第2曲面2と交差する。また、第1曲面1の第2端点P2における法線を延長した第2直線L22は、第2曲面2と交差する。
【0026】
さらに、本実施形態においては、
図2に示す断面形状において、第1曲面1および第2曲面2の各々は、径方向rに延びる対称軸ASについて線対称である。
【0027】
また、シール材A10のうち対称軸ASと交差する部分の厚さt0は、シール材A10のうち第1直線L12と交差する部分の厚さt1、または第1曲面1のうち第2直線L22と交差する部分の厚さt2の、0.5倍以上3.0倍以下であり、好ましくは0.5倍以上2.0倍以下であり、より好ましくは1.0倍以上1.5倍以下である。
【0028】
また、第1直線L12と第2直線L22とがなす角度である角度αは、60°以上210°以下であり、好ましくは、90°以上180°以下である。図示された例においては、角度αは、およそ120°に設定されている。また、図示された例においては、第2曲面2は、角度αが180°であっても、第1直線L12および第2直線L22と交差する範囲に設けられている。
【0029】
第3曲面3は、軸方向zのz1側において、第1曲面1と第2曲面2との間に介在しており、軸方向zのz1側および径方向rのr1側に膨出する凸曲面である。第3曲面3は、第1曲面1および第2曲面2と直接繋がっていてもよいし、これらの間に他の部位がさらに介在してもよい。図示された例においては、第2曲面2と第3曲面3とは直接繋がっており、第1曲面1と第3曲面3とは直接繋がっていない。図示された例とは異なり、第1曲面1と第3曲面3とが直接繋がっていてもよい。
【0030】
第4曲面4は、軸方向zのz2側において、第1曲面1と第2曲面2との間に介在しており、軸方向zのz2側および径方向rのr1側に膨出する凸曲面である。第4曲面4は、第1曲面1および第2曲面2と直接繋がっていてもよいし、これらの間に他の部位がさらに介在してもよい。図示された例においては、第2曲面2と第4曲面4とは直接繋がっており、第1曲面1と第4曲面4とは直接繋がっていない。図示された例とは異なり、第1曲面1と第4曲面4とが直接繋がっていてもよい。また、
図2に示す断面形状において、第3曲面3と第4曲面4とは、対称軸ASについて線対称である。
【0031】
第5面5は、第1曲面1と第3曲面3との間に介在している。第5面5の具体的形状は何ら限定されず、図示された例においては、径方向rに対して傾斜した平坦面である。第6面6は、第1曲面1と第4曲面4との間に介在している。第6面6の具体的形状は何ら限定されず、図示された例においては、径方向rに対して第5面5とは反対側に傾斜した平坦面である。また、
図2に示す断面形状において、第5面5と第6面6とは、対称軸ASについて線対称である。すなわち、図示された例においては、シール材A10は、その全体が対称軸ASについて線対称である。
【0032】
図3は、シール材A10が用いられたシール構造体B10を示しており、
図2と同様の部分断面図であって、中心軸CSおよび対称軸ASを省略している。シール構造体B10は、シール材A10とシール対象物91,92とを備える。シール対象物91,92は、シール材A10によって気密性が付与される対象物である。シール対象物91,92の形状、大きさ、材質等は何ら限定されない。図示された例においては、シール対象物91は、溝部911を有する。溝部911は、軸方向zのz2側に凹み、軸方向zに視て円環状の溝である。シール対象物92は、シール対象物91に対して軸方向zのz1側に配置される板状部材である。
【0033】
図3(a)では、シール対象物91の溝部911にシール材A10が載置される。この際、シール材A10は、未だ非圧縮の状態であり、その一部が溝部911から軸方向zのz1側に突出している。
【0034】
図3(b)では、シール対象物92が軸方向zのz2側に押圧され、シール材A10が軸方向zの両側からシール対象物91とシール対象物92とによって挟まれている。これにより、シール材A10は、軸方向zにおいて縮小し、全体が屈曲するように弾性変形する。より具体的には、第1曲面1および第2曲面2の曲率半径が、同図(a)よりも同図(b)の方が小さくなっている。同図(b)のシール構造体B10においては、シール材A10からシール対象物91およびシール対象物92のそれぞれに軸方向zの反力が付与されている。
【0035】
シール構造体B10においては、径方向rのr1側の第1領域s1と径方向rのr2側の第2領域s2とが、シール材A10によって互いに気密状態で区画されている。シール構造体B10の一態様においては、第1領域s1が高圧側、第2領域s2が低圧側に設定される。シール構造体B10の他の態様においては、第1領域s1が低圧側、第2領域s2が高圧側に設定される。
図3(b)に示す構成においては、第1領域s1が高圧側であり、第2領域s2が低圧側である場合に、差圧によってシール材A10の端部が意図せずに局所的に変形してしまい、シール構造体B10の気密性が弱められることを防止するのに好ましい。また、第1領域s1と第2領域s2とが、同圧に設定されてもよい。第1領域s1と第2領域s2とが同圧であっても、たとえば、第1領域s1と第2領域s2とに種類が異なる流体が存在する場合に、これらが混流することを抑制可能である。
【0036】
次に、シール材A10およびシール構造体B10の作用について説明する。
【0037】
本実施形態によれば、シール材A10は、第1曲面1および第2曲面2を有する。第2曲面2は、径方向r(第1方向)に視て、第1曲面1のすべてと重なる。このような構成によれば、たとえば、断面形状が円形状である一般的なシール材や、シール材A10の第1曲面1および第2曲面2が設けられている部位に、平面や屈曲部分、段差部分等を有する形状のシール材と比べて、軸方向z(第2方向)の両側から挟んだ場合に生じる反力を低減させることができる。
【0038】
シール材A10の反力を低減可能であることにより、たとえば
図3のシール構造体B10において、シール対象物92が石英等の脆性材料からなる場合であっても、シール材A10の反力によってシール対象物92を破損してしまうことを抑制することができる。また、シール対象物91とシール対象物92とが互いに摺動する場合であっても、シール材A10の反力が小さいことにより、シール対象物91およびシール対象物92との摩擦によってシール材A10が摩耗することを抑制することができる。これにより、シール材A10の摩耗粉が不純物となってしまうことを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態の第2曲面2は、第1直線L12および第2直線L22と交差する範囲に設けられている。これにより、軸方向zの両側から挟まれた場合に、シール材A10のより大きな範囲の部位を、偏り無く曲げ変形させることができる。これは、反力の低減に好ましい。
【0040】
第1曲面1および第2曲面2の各々は、対称軸ASについて線対称である。これにより、シール材A10を軸方向zの両側から挟んだ場合に、よりバランスよくシール材A10を弾性変形させることが可能であり、反力の低減に有利である。また、シール材A10は、その全体が、対称軸ASについて線対称である。これにより、
図3に示すシール構造体B10において、シール材A10をシール対象物91の溝部911に載置する場合に、軸方向zのいずれの向きに載置してもよく、装着方向を誤ってシール構造体B10を構成してしまうことを回避することができる。
【0041】
本実施形態とは異なり、たとえば、第1曲面1が径方向rのr2側に位置し、第2曲面2が径方向rのr1側に位置するシール材を金型を用いて形成する場合、凹曲面である第1曲面1よりも径方向rのr2側(内側)に位置する金型を、形成後に離脱させることが困難である。たとえば、多数に分割された金型を複雑な動作によって離脱させるか、あるいは、形成したシール材を径方向rおよび周方向θに伸張させることが強いられる。この場合、形成効率の低下や、シール材の意図しない変形等が懸念される。本実施形態においては、第1曲面1が、径方向rのr1側に位置しており、第2曲面2が、径方向rのr2側に位置している。シール材A10を金型を用いて形成する場合、たとえば、軸方向zのz1側およびz2側に接近離隔可能な2つの金型と、径方向rのr1側およびr2側に接近離隔可能な金型とを用いれば、シール材A10を伸張等させること無く、シール材A10を効率よく形成することができる。
【0042】
シール材A10においては、厚さt0が、厚さt1または厚さt2の0.5倍以上3.0倍以下である。たとえば、厚さt0が、厚さt1または厚さt2に対して過度に厚く、厚さt1または厚さt2が厚さt0に対して過度に薄いと、シール材A10の軸方向zの両側のみが選択的に変形してしまい、シール材A10の軸方向zの中央部分が意図した程度に変形しない事態が生じうる。このようなことでは、反力を十分に低減できないか、あるいは
図3に示す第1領域s1と第2領域s2との圧力差が大きい場合に、気密状態を維持できないおそれがある。本実施形態によれば、シール材A10のより広範な部分を全体的に変形させることが可能である。これにより、たとえば、第1領域s1と第2領域s2との圧力差が大きい場合であっても、気密状態をより確実に維持することができる。また、シール材A10は、第1領域s1が高圧側であっても、第2領域s2が高圧側であっても、両方のケースにおいて気密状態を適切に維持可能である
【0043】
また、角度αが、60°以上210°以下であれば、シール材A10の全体に対して、第1曲面1および第2曲面2が占める割合を十分に大きく設定することが可能である。このような構成は、反力の低減に好ましい。
【0044】
シール材A10においては、第3曲面3および第4曲面4が設けられている。また、第1曲面1、第2曲面2、第3曲面3、第4曲面4、第5面5および第6面6は、突出部分や局所的に凹んだ部分、あるいは段差部分等を介することなく、互いに滑らかに繋がっている。これにより、シール材A10の全体が、滑らかな表面を有する形状となっており、軸方向zの両側から挟まれた場合に、いずれかの箇所に局所的な応力が意図せず生じてしまうことを回避することができる。これは、反力の低減に有効である。また、局所的な応力を抑制することにより、シール材A10の一部が選択的に破損することを防止できる効果が期待できる。
【0045】
図4~
図8は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。また、各変形例および各実施形態における各部の構成は、技術的な矛盾を生じない範囲において相互に適宜組み合わせ可能である。
【0046】
<第1実施形態 第1変形例>
図4(a)は、シール材A10の第1変形例を示している。本変形例のシール材A11は、径方向r(第1方向)の内側を本発明の第1方向の第1側とし、径方向r(第1方向)の外側を本発明の第1方向の第2側としている。すなわち、第1曲面1が径方向rの内側に配置されており、第2曲面2が径方向rの外側に配置されている。シール材A11においても、軸方向zの両側からシール対象物によって挟まれることによりシール構造体を構成し、気密性を維持することが意図されている。
【0047】
本変形例によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、全体が閉環状である場合、第1曲面1および第2曲面2の配置は、径方向rの内側および外側のいずれであってもよい。
【0048】
<第1実施形態 第2変形例>
図4(b)は、シール材A10の第2変形例を示している。本変形例のシール材A12は、軸方向zが本発明の第1方向となるように設定されている。第1曲面1は、軸方向zの一方側(
図2のz1側)に位置しており、第2曲面2は、軸方向zの他方側(
図2のz2側)に位置している。シール材A12は、径方向rの両側からシール対象物によって挟まれることによりシール構造体を構成し、気密性を維持することが意図されている。
【0049】
本変形例によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、本変形例から理解されるように、シール部材の全体が閉環状である場合に、第1方向が径方向rである構成に限定されず、第1方向がたとえば軸方向zであってもよい。このような構成においても、シール材A12が径方向rの両側(内側および外側)から挟まれた場合に、径方向rに作用する反力を低減することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係るシール材を示す平面図である。本実施形態のシール材A20は、軸方向zに視て矩形環状である。本実施形態によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、本実施形態から理解されるように、シール部材の全体が閉環状である場合に、具体的な形状は何ら限定されず、円環状、矩形環状のほか、多角形の環状や、複数の屈曲部分(軸方向zに視て外側に凸、または内側に凸)を含む環状等、シール対象物の形状等に応じて、シール材の種々に設定可能である。
【0051】
<第3実施形態>
図5(b)は、本発明の第3実施形態に係るシール材を示す部分平面図である。本実施形態のシール材A30は、全体が直線状であり、閉環状とは異なり端部を有する形状である。端部を有する形状としては、直線状のほか、曲線状、屈曲状等が挙げられる。
【0052】
本実施形態によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、本実施形態から理解されるように、本発明のシール材は、端部を有さない閉環状に限定されず、端部を有する形状であってもよい。直線状のシール材A30であっても、シール材A30を挟んで両側の領域を互いに気密な状態で区画することができる。
【0053】
<第4実施形態>
図6(a)は、本発明の第4実施形態に係るシール材を示す拡大断面図であり、
図2と同様の要領にて記載されている。本実施形態のシール材A40は、上述の実施形態における第3曲面3および第4曲面4を有しておらず、平面71および平面81を有する。
【0054】
平面71は、軸方向zのz1側において第2曲面2と第1曲面1との間に介在しており、第2曲面2と第5面5とに繋がっている。平面71は、軸方向zに対して若干傾いた平坦面である。平面81は、軸方向zのz2側において第2曲面2と第1曲面1との間に介在しており、第2曲面2と第6面6とに繋がっている。平面71は、軸方向zに対して平面71とは反対側に若干傾いた平坦面である。平面71と平面81とは、対称軸ASについて線対称である。
【0055】
本実施形態によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、本実施形態から理解されるように、本発明のシール材は、シール材A10等における第3曲面3および第4曲面4を有する構成に限定されない。第1曲面1および第2曲面2を有する構成であれば、反力の低減を図ることができる。
【0056】
<第4実施形態 第1変形例>
図6(b)は、シール材A40の第1変形例を示している。本変形例のシール材A41は、第3曲面3および平面81を有している。すなわち、対称軸ASについて第3曲面3と線対称である第4曲面4や、対称軸ASについて平面81と線対称である平面71を有していない。したがって、シール材A41の全体は、対称軸ASについて線対称の形状ではない。
【0057】
本変形例によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、本変形例から理解されるように、本発明のシール材は、対称軸ASについて線対称の構成に限定されない。対称軸ASについて線対称である構成か、線対称ではない構成かは、たとえばシール対象物の具体的形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0058】
<第4実施形態 第2、第3変形例>
図7(a)、(b)は、シール材A40の第2変形例および第3変形例を示している。
【0059】
図7(a)に示す第2変形例のシール材A42は、凸部72および凸部82を有する。凸部72は、第2曲面2と第3曲面3との間に設けられており、軸方向zのz1側に突出する部分である。凸部82は、第2曲面2と第4曲面4との間に設けられており、軸方向zのz2側に突出する部分である。
【0060】
図7(b)に示す第3変形例のシール材A43は、凹部73および凹部83を有する。凹部73は、第2曲面2と第3曲面3との間に設けられており、軸方向zのz2側に凹んだ部分である。凹部83は、第2曲面2と第4曲面4との間に設けられており、軸方向zのz1側に凹んだ部分である。
【0061】
凸部72および凸部82や、凹部73および凹部83が設けられる目的は何ら限定されず、たとえば
図3に示すシール対象物91およびシール対象物92との接触状態を所望の状態に設定したい場合等に設けてもよい。
【0062】
これらの変形例によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、これらの変形例から理解されるように、本発明のシール材は、第1曲面1および第2曲面2を除く部分において、凸部や凹部が形成された構成であってもよい。
【0063】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態に係るシール材を示している。本実施形態のシール材A50は、平面74および平面84を有する。平面74は、第2曲面2と第3曲面3との間に介在しており、図示された例においては、第2曲面2および第3曲面3に繋がっている。平面74は、径方向rにほぼ平行な平坦面である。平面84は、第2曲面2と第4曲面4との間に介在しており、図示された例においては、第2曲面2および第4曲面4に繋がっている。平面84は、径方向rにほぼ平行な平坦面である。
【0064】
本実施形態においては、第1直線L12および第2直線L22が、第2曲面2と交差していない。すなわち、本実施形態の第2曲面2は、たとえばシール材A10の第2曲面2と比べて、設けられている範囲(角度)が小さい。ただし、本実施形態においても、第2曲面2は、第1方向である径方向rに視て、第1曲面1のすべてと重なっている。
【0065】
本実施形態によっても、気密性を維持しつつ装着時の反力を低減することができる。また、反力の低減の観点から、第2曲面2が第1直線L12および第2直線L22が第2曲面2と交差する構成が好ましいが、本発明はこれに限定されない。第2曲面2が軸方向zに視て第1曲面1の全体と重なる構成であれば、気密性を維持しつつ装着時の反力低減が期待できる。
【0066】
本発明に係るシール材およびシール構造体は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るシール材およびシール構造体の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0067】
A10,A11,A12,A20,A30,A40,A41,A42,A43,A50:シール材
B10 :シール構造体
1 :第1曲面
2 :第2曲面
3 :第3曲面
4 :第4曲面
5 :第5面
6 :第6面
71,74,81,84:平面
72,82:凸部
73,83:凹部
91,92:シール対象物
911 :溝部
AS :対称軸
CS :中心軸
L12 :第1直線
L22 :第2直線
P1 :第1端点
P2 :第2端点
s1 :第1領域
s2 :第2領域
t0,t1,t2:厚さ
z :軸方向
r :径方向
θ :周方向
α :角度