(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142553
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】感光性着色樹脂組成物およびそれから得られる硬化膜
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241003BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20241003BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241003BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20241003BHJP
C08F 20/22 20060101ALI20241003BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/027 502
G03F7/031
G02B5/20 101
C08F299/00
C08F20/22
C08F8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054725
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳田 拓人
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓郎
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
2H148BE03
2H148BE36
2H148BF16
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2H225CC13
4J100AL08Q
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4J127FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化膜の膜面側の反射強度が低く、リコート性が良好な感光性着色樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】着色材、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、特定構造の含フッ素モノマーおよび一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する繰り返し単位を含む含フッ素樹脂、および、ラジカル重合性化合物を含む感光性着色樹脂組成物。
[式中、R
2は炭素-炭素二重結合を有する基を示す。Y
2は炭素原子数2~4のアルキレン基を示す。R
3は水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を示す。n
3は2以上の整数を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、下記一般式(1)で示される含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位と下記一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含む含フッ素樹脂、および、ラジカル重合性化合物を含む感光性着色樹脂組成物。
【化1】
[式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。Y
1は2価の連結基を示す。R
fは下記式(2-1)または(2-2)で表される構造である。]
【化2】
[式中、*は酸素原子との結合点を示す。]
【化3】
[式中、R
2は炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。Y
2は炭素原子数2~4のアルキレン基を示す。R
3は水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基を示す。n
3は2以上の整数を示す。]
【請求項2】
前記含フッ素樹脂が、さらに下記一般式(6)で示されるイソシアネート基含有化合物に由来する構造単位を含む請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化4】
[式中、R
6は炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。Y
4は炭素原子数が2~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基であり、当該飽和脂肪族炭化水素基はエーテル結合を有しても良い。]
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物の全部または一部が、フルオレン骨格を含有する化合物または3官能以上の多官能アクリレート化合物である、請求項1または2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項4】
光重合開始剤の全部または一部がオキシムエステル系光重合開始剤である、請求項1または2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項5】
さらに溶剤を含み、20℃での蒸気圧が0.01Pa以上、100Pa以下の溶剤が全溶剤100質量%中10質量%以上含まれている、請求項1または2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
着色材として、黒色顔料を固形分濃度中10質量%以上60質量以下%含む請求項1または2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
着色材の二次粒子径が30nm以上、100nm以下である請求項1または2記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
感光性着色樹脂組成物を硬化させた際の硬化膜上におけるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの接触角が10度以下である請求項1または2記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の感光性着色樹脂組成物を基板上に、塗布、乾燥、露光、現像、硬化を行うことを特徴とする硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色樹脂組成物および硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、感光性着色樹脂組成物および硬化膜に関する。詳しくは、反射による表示装置の視認性悪化を改善するための技術に有用である感光性着色樹脂組成物と、該感光性着色樹脂組成物を用いた硬化膜に関する。
【0003】
従来から、表示装置には反射による視認性の悪化を防止するために種々の工夫がこらされており、例えばモスアイの様な反射防止フィルムや円偏光板の他、カラーフィルターなどの着色硬化膜を利用したものなどが挙げられる。
【0004】
カラーフィルター等の表示装置を工夫した反射防止手段を構成するにあたっては、通常、バインダー樹脂溶液に着色材を分散又は溶解した着色樹脂組成物が用いられ、特にアルカリ可溶性樹脂、重合性開始剤、ラジカル重合性化合物等を混合した溶液に顔料を分散した感光性着色樹脂組成物は露光現像のフォトリソグラフィープロセスで微細なパターニングが可能であり、広く用いられている。
【0005】
しかしながら、着色樹脂組成物に用いられる着色材は、基板、フィルム、封止材、絶縁膜、その他の構造物などの表示装置を構成する材料と比べて概して屈折率が高いため、着色材を含有する硬化膜は着色材の含有割合が高いほど屈折率が高くなり、他の構成材料との境界での光の反射強度が高くなってしまう。つまり、境界を形成する物質同士の屈折率の差が大きい程その境界での反射強度は高くなる。例えば、ガラスや樹脂の屈折率が1.5程度であるのに対し、カーボンブラックの屈折率は2.0程度、銅フタロシアニンは1.8程度であるが、着色材の含有割合が高いほど隣接する層との屈折率差が大きくなるので、着色材をカラーフィルター等として透過光を利用する場合や、遮光材としての利用を行う場合に、該着色材を含む層に光が入射する際の該層の表面での光の反射が強くなり、視認性が悪化する問題を内在している。また近年、パネル構成の変化に伴い、基板とは反対側の膜面側の反射強度を下げる要望がある。
【0006】
そこで、感光性着色樹脂組成物に粒子状シリカ等を配合して反射を抑える工夫が検討されている。特許文献1は表示装置用着色硬化膜において、シリカ粒子を含有し、かつ、X線光電子分光法(XPS)による表面元素組成分析におけるSi元素含有割合を特定範囲にすることで、硬化膜の膜面側の反射強度を低くできることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2では、特定の構造を有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含み、フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤を含有する等により、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物の配合設計を工夫することで、反射率の低い隔壁を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-141849号公報
【特許文献2】特開2022-173086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の感光性着色樹脂組成物は、屈折率が1.5程度と比較的高いシリカ粒子を添加して反射強度の低下を行っているため、更に屈折率が高い顔料と混合した組成物の状態では、屈折率の低下効果が十分でないことが分かった。また、特許文献2にはフッ素系の界面活性剤が用いられているが、特許文献2に用いられているフッ素系の界面活性剤はリコート性が劣るため、着色材を含む層の上に別の層を加工するといった後工程への対応が困難であるという課題があった。
【0010】
そこで本発明は、着色硬化膜表面側の反射強度が低く、リコート性が良好な感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また本発明は、この感光性着色樹脂組成物を用いた硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、感光性着色樹脂組成物において、特定の含フッ素樹脂を含有することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明の要旨とするところは、
着色材、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、下記一般式(1)で示される含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位と下記一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含む含フッ素樹脂(かかる含フッ素樹脂を単に「含フッ素樹脂α」ということがある)、および、ラジカル重合性化合物を含む感光性着色樹脂組成物である。
【0012】
【0013】
[式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Y1は2価の連結基を示す。Rfは下記式(2-1)または(2-2)で表される構造である。]
【0014】
【0015】
[式中、*は酸素原子との結合点を示す。]
【0016】
【0017】
[式中、R2は炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。Y2は炭素原子数2~4のアルキレン基を示す。R3は水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を示す。n3は2以上の整数を示す。]
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性着色樹脂組成物を用いることで、硬化膜に入射する光の反射強度を低くでき、表示装置の視認性や用いる着色材に応じた鮮明性や漆黒性を向上できる。また、本発明の感光性着色樹脂組成物はリコート性にも優れるため、後工程への適応性に優れている。
【0019】
また、硬化膜自体が高い反射防止能を有しているので、さらに反射防止層を設けるといった工程の複雑化を避けることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、着色材、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、含フッ素樹脂、および、ラジカル重合性化合物を含有する。
【0021】
以下、本発明の感光性着色樹脂組成物の各成分について、例を挙げて詳述する。
【0022】
<着色材>
本発明に用いられる着色材としては、一般的に表示装置に用いられる顔料、染料等を用いることができる。硬化膜の耐熱性、信頼性および耐光性を向上させるためには、顔料を用いることが好ましい。その際に、結晶子サイズが小さい着色材を含有することで、散乱による漆黒性の悪化を低減できるため、好ましい。顔料としては、特に制限はないが、赤色顔料、青色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、紫色顔料、緑色顔料、黒色顔料および白色顔料などを適宜選択して用いることができる。これら着色材は、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。黒色顔料としては、カーボンブラックまたはペリレンブラック、アニリンブラック等の黒色有機顔料が、反射強度の低さと遮光性の点から好ましい。その中でも特にカーボンブラックが好ましい。
【0023】
着色材の二次粒子径は、30nm~100nmが好ましい。二次粒子径が30nm以上であると、分散後の保存安定性に優れる。一方、二次粒子径が100nm以下であると、膜にした際の拡散反射の値が低く、鮮明な色とでき、特に黒色顔料の場合は漆黒性に優れる。顔料の二次粒子径は、動的光散乱(DLS)により測定された粒度分布から累積度数50%時点の粒子の粒径(D50)として求められる。二次粒子径の測定は、十分に希釈された感光性着色樹脂組成物(通常は希釈して、顔料濃度0.005~0.2質量%程度に調整して測定する。ただし、測定機器により推奨された濃度があれば、その濃度に従う。)に対して行い、25℃で測定される。
【0024】
カーボンブラックとしては、平均一次粒子径が1~18nmであり、ジブチルフタレート吸収量が30~80cm3/100gであり、前記カーボンブラックのpH値が1.0~4.0であるものを用いることが好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径を上記範囲内にすることで、拡散反射の値を低くし、漆黒感を高めることができる。また、カーボンブラックのジブチルフタレート吸収量を上記範囲内にすることで、拡散反射の値を低くし、漆黒感を高めかつ分散性を高めることができる。さらに、カーボンブラックのpH値を上記範囲内にすることで、分散性を高めることができる。
【0025】
なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、次の方法で求めることができる。まずカーボンブラックをクロロホルム中に超音波分散し、コロジオン膜貼り付けメッシュ上に滴下して、乾燥させ、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、カーボンブラックの一次粒子像を得る。次に個々のカーボンブラック粒子の一次粒子径を、同じ面積となる円の直径に換算した面積円相当径として、複数個(通常200~300個程度)のカーボンブラック粒子についてそれぞれ粒子径を求める。得られた一次粒子径の値を用い、下式の計算式の通り個数平均値を計算し平均一次粒子径を求める。
【0026】
個々のカーボンブラック粒子の粒子径:X1,X2,X3,X4,・・・,Xi,・・・Xm
平均一次粒子径=ΣXi/m
[mは粒子の個数、Xiはi番目の粒子の一次粒子径である。] 。
【0027】
また、カーボンブラックのジブチルフタレート吸収量は、JIS K 6221に基づいて測定した。
【0028】
また、カーボンブラックのpH値は、ASTM D1512に準拠して測定した。なお、カーボンブラックとして、樹脂被覆されたカーボンブラックを用いることもできる。なお、樹脂被覆されたカーボンブラックは、例えば特開平9-26571号公報、特開平9-71733号公報、特開平9-95625号公報、特開平9-238863号公報、又は特開平11-60989号公報に記載の方法で、公知のカーボンブラックを処理することにより、得ることができる。
【0029】
本発明の感光性着色樹脂組成物における黒色顔料などの着色材の含有量は、樹脂組成物に含まれる固形分の総量100質量%に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、10質量%以上60質量%以下がより好ましい。着色材の含有量が低すぎると、分散安定性を維持できない。一方、着色材の含有量が高すぎると硬化膜表面での光の反射が強くなる傾向があるので、要求される水準によっては、十分な色の鮮明性や漆黒性が得られない可能性がある。
【0030】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性基、例えば、フェノール性の水酸基やカルボキシル基、を有した樹脂であって、酸価が10mgKOH/g以上で、かつ、重量平均分子量(Mw)が500以上150,000以下である樹脂を指し、構造中にフッ素原子を含まない。ここで、重量平均分子量(Mw)とは、テトラヒドロフランをキャリヤーとするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を指す。
【0031】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、前記のアルカリ可溶性樹脂の条件を満たす、カルド系樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミド樹脂、などが挙げられる。その中でも、パターン加工性と塗膜信頼性の観点から、カルド系樹脂、アクリル樹脂およびポリイミド樹脂から選ばれた樹脂が好ましく、アクリル樹脂を用いることがより好ましい。
【0032】
<光重合開始剤>
本発明に用いられる光重合開始剤は、露光によってラジカルを発生する化合物をいう。光重合開始剤を含有させることにより、露光により、ラジカル重合性化合物の重合を惹起し光硬化させることができる。光重合開始剤としては、例えば、カルバゾール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。これらは2種以上含有されていてもよい。これらの中でも、後述する露光工程において、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)からなる混合線に対する感度が高いことから、カルバゾール系光重合開始剤またはオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。特にオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0033】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン(o-アセチルオキシム)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0034】
本発明の感光性着色樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は、露光に対する感度向上の観点から、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下とすることが好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましい。光重合開始剤の含有量が1質量部以上であると、含フッ素樹脂の現像液への溶解を防ぎ、屈折率の低下を維持できる。一方、光重合開始剤の含有量が60質量部以下であると、露光に対する深部硬化性を向上させ、パターン加工性を向上できる。
【0035】
<含フッ素樹脂(含フッ素樹脂α)>
本発明の感光性着色樹脂組成物に含有される含フッ素樹脂は、下記一般式(1)で示される含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位と、後述する下記一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含有する。かかる含フッ素樹脂を用いることによって、本発明の感光性着色樹脂組成物を塗布し、乾燥する工程中における物質移動で、硬化膜の表面近傍部の屈折率を特異的に下げることができ、これにより、膜面側の反射強度を低下する効果を発揮できる。
【0036】
【0037】
[式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Y1は2価の連結基を示す。Rfは下記式(2-1)または(2-2)で表される構造である。]
【0038】
【0039】
[式中、*は酸素原子との結合点を示す。]
本発明に用いる含フッ素樹脂の繰り返し単位を与える含フッ素モノマーは、フッ素原子を含有し、また、炭素原子間に二重結合を含有する。フッ素原子は、樹脂組成物の屈折率を低下する役割を果たす。また、炭素同士の二重結合は、塗膜を作製し加工する際の露光および現像工程において、露光工程で架橋反応を起こすことで、現像工程で現像液に溶出されず、その結果、露光後の膜において屈折率の低下を維持する役割を果たす。
【0040】
また、Rfが式(2-1)または式(2-2)で示される構造を持つことで、表面に微小な海島構造を形成し、上塗りする組成物の接触角を低下させ、リコート性を向上させることができる。
【0041】
Y1 は2価の連結基であり、好ましく、炭素原子数が1~50の二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する二価の有機基である。当該二価の飽和脂肪族炭化水素基は好ましくは炭素原子数が1~30、より好ましくは2~10、最も好ましくは2~4の基であり、具体例として、上記炭素原子数を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基が挙げられる。好ましくは直鎖状アルキレン基である。二価の飽和脂肪族炭化水素基は1以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中で好ましくは、フッ素原子および塩素原子である。
【0042】
Y1は、好ましく炭素原子数が1~50の二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する二価の有機基であるが、二価の飽和脂肪族炭化水素基以外に含みうる基としては特に制限はなく、例えば、アリーレン基が挙げられる。好ましいアリーレン基としては、炭素原子数6~15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、トリレン基、キシリレン基、アントラニレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。中でも好ましいアリーレン基はフェニレン基、特にp-フェニレン基である。なおここで、アリーレン基に結合する水素原子はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、Y1は、二価の飽和脂肪族炭化水素基間および二価の飽和脂肪族炭化水素基とアリーレン基との間を連結する他の基を有していても良く、そのような連結基としては、例えば、エーテル結合(-O-、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-NHCO-または-CONH-)が挙げられる。
【0043】
好ましいY1の具体例として、以下に示す二価の有機基が挙げられる。
【0044】
-(CH2)na-(na=2~10、好ましくは2~4の整数)
-C6H4COO(CH2)nb-(nb=2~10、好ましくは2~4の整数)
-C6H4(CH2)nc-(nc=1~10、好ましくは2~4の整数)
-CH2CH2(OCH2CH2)nd-(nd=1~10 、好ましくは2~4の整数)
-C6H4CO(OCH2CH2)ne- (ne=1~10、好ましくは2~4の整数)。
【0045】
上記好ましいY1の具体例の中でも、以下の基が特に好ましい。
【0046】
-C6H4COO(CH2)nb-(nb=2~10、好ましくは2~4の整数)。
【0047】
含フッ素モノマーは、公知の方法により製造することができる。その一例を示すと、以下の反応式(3)に基づいて、室温下、酸クロライドの有機溶媒溶液を水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートの有機溶媒溶液に滴下することにより製造することができる。
【0048】
【0049】
[式中、Rf、R1はそれぞれ一般式(1)において説明したのと同様である。n2は2~10の整数である。]
含フッ素モノマーは、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明に用いる含フッ素樹脂の繰り返し単位を与える下記一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーについて説明する。
【0051】
【0052】
[式中、R2は炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。Y2は炭素原子数2~4のアルキレン基を示す。R3は水素原子、または、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。n3は2以上の整数を示す。]
ポリアルキレンオキサイド基含有モノマーが用いられることで含フッ素樹脂自体の感光性着色樹脂組成物への相溶性を向上することができる。具体的には、本発明の感光性着色樹脂組成物からなる塗膜を作製した際に、相溶性の不足に起因して拡散反射が増大することを防ぐ効果を持つ。
【0053】
R2としては、CH2=CH-、CH2=CH-CH2-、CH2=C(CH3)-、CH2=CH-CO-、CH2=C(CH3)-CO-、CH3CH=CH-CO-、などが挙げられる。
【0054】
Y2としては、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、が挙げられる。
【0055】
R3としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、が挙げられる。
【0056】
n3は2以上の整数であり、好ましくは2~50、より好ましくは2~30、さらに好ましくは2~20である。
【0057】
ポリアルキレンオキサイド基含有モノマーは、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
また含フッ素樹脂は、上に説明した含フッ素モノマーおよびポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに加えてさらに任意成分であるモノマーを共重合して調製してもよい。かかる任意成分であるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、親水性基含有モノマーが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが挙げられる。
【0059】
親水性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸または下記の一般式(5)で示されるモノマーが挙げられる。
【0060】
【0061】
[式中、R4は水素原子またはメチル基を示す。Y3は2価の連結基を示す。R5は親水性基を示す。]
R5で示される親水性基としては、水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)またはその塩、リン酸(-O-PO-(OH)2)またはその塩が挙げられる。カルボキシル基又はリン酸の塩としては、アルカリ金属(Na、K、Li、Cs)塩、アルカリ土類金属(Ca、Mg、Sr、Ba)塩が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
【0062】
Y3で示される2価の連結基としては、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐又は環状のアルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基、置換されていてもよいアラルキレン基が挙げられ、これらは、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-NHCO-または-CONH-)を介して結合されていてもよい。例えば、ブチレン基に上記の結合が介在されたものとしては、-CH2CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CO-CH2CH2-、-CH2CH2-CO-O-CH2CH2-、-CH2CH2-CONH-CH2CH2-、-CH2CH2-NHCO-CH2CH2-、が挙げられる。また、炭素数1~14のアルキレン基としては、例えば、-(CH2)m-(mは1~20の整数)、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、フェノキシフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、フルオレニレン基などが挙げられる。アリーレン基としては、ベンジレン基、フェネチレン基が挙げられる。アリーレン基、アラルキレン基の置換基の数は、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基、塩素原子、-CN、-NO2、-OH、アセチル基、アセチルアミノ基、カルバモイル基が挙げられる。Y3で表される好ましい2価の基としては、以下が挙げられる:
-(CH2)m1-、(m1=2~10)、
-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、
-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、
-(CH2CH2O)m2-CH2CH2-、(m2=1~9)、
-CH2CH2O-CO-(C6H4)-、
-CH2CH2-CO-O-(C6H4)-、
-CH2CH2O-CO-(CH2CH2)-、
-CH2CH2-CO-O-(CH2CH2)-、
-CH2CH2O-CO-(シクロヘキシレン基)-、
-CH2CH2-CO-O-(シクロヘキシレン基)-。
【0063】
親水性基含有モノマーは、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、本発明の感光性着色樹脂組成物に用いる含フッ素樹脂は、下記一般式(6)で表されるイソシアネート基含有化合物に由来する構造単位が含まれたものであっても良い。
【0065】
【0066】
[式中、R6は炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。Y4は炭素原子数が2~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基であり、当該飽和脂肪族炭化水素基はエーテル結合を有しても良い。]
R6としては、例えば、CH2=CH-、CH2=CH-CH2-、CH2=C(CH3)-、CH2=CH-CO-、CH2=C(CH3)-CO-、CH3CH=CH-CO-、が挙げられる。
【0067】
一般式(6)中、Y4は炭素原子数が2~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基であり、当該飽和脂肪族炭化水素基はエーテル結合を有しても良い。好ましいY4は炭素原子数が2~4 の二価の飽和脂肪族炭化水素基、すなわちアルキレン基である。
【0068】
一般式(6)で表されるイソシアネート基含有化合物に由来する構造単位は、含フッ素樹脂中において、一般式(6)で表されるイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基が水酸基と反応して含フッ素樹脂中に含まれることが好ましい。
【0069】
前記の一般式(6)で表されるイソシアネート基含有化合物は、市販品として入手することが可能であるが、公知の方法により製造することもできる。イソシアネート基含有化合物の市販品として、化合物名;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI;(株)レゾナック製)、化合物名;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI;(株)レゾナック製 、化合物名;1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(カレンズBEI;(株)レゾナック製)等が挙げられる。
【0070】
イソシアネート基含有化合物は、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明に用いられる含フッ素樹脂は、例えば、含フッ素モノマーおよびポリアルキレンオキサイド基含有モノマーを必須成分として共重合させて製造できる。また、重合方法としては公知の重合方法を用いることができる。詳しくは、モノマーを所望の比率で混合し、適量の重合開始剤を加え、有機溶媒の存在下に室温から100℃程度の温度で1~24時間程度反応させる。これにより反応は定量的に進む。モノマーの混合順序は特に限定されるものではない。
【0072】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いる含フッ素樹脂は、例えば、ラジカル重合によって得ることができ、好ましく、その後一般式(6)で示されたイソシアネート基含有化合物を作用させて得ることができる。重合開始剤としては、例えばt-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチル-α-クミルパーオキシド、ジ-α-クミルパーオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシン-3アセチルパーオキシド、コハク酸パーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-イソブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル=2,2’-アゾビスイソブチレート、 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(V-601)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]およびその二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種類をで用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。共重合反応は、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等の連鎖移動剤を使用して分子量を調整してもよい。重合に用いられる溶媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、ジメトキシエタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく例示される。該重合に用いられる溶媒は、一種で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。含フッ素樹脂は、含フッ素モノマー、および、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマー、また、任意成分として用いられるその他のモノマーとのランダム重合体またはブロック共重合体であってよい。
【0073】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いる含フッ素樹脂がさらにイソシアネート基含有化合物が化合された態様として製造する場合は、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマー中、R3を水素原子とする場合のほか、水酸基やカルボキシル基、好ましくは水酸基、を含有するモノマーを用い、イソシアネート基含有化合物を反応させることで製造できる。イソシアネート基含有化合物を反応させる場合の反応条件としては、具体的には、例えば含フッ素モノマー、およびポリアルキレンオキサイド基含有モノマー、また、任意成分として用いられるその他のモノマーとの共重合体を製造したのち、得られたポリマーの溶液に対して、イソシアネート基含有化合物を所定の比率で混合し、-20℃~100℃、好ましくは20℃~90℃で、1~48時間撹拌することにより製造できる。これにより、水酸基と、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基とが反応し、ウレタン結合が形成される。このとき、混合されたイソシアネート基含有化合物は定量的に反応する。当該反応に際しては、アルカリ性触媒を用いてもよい。アルカリ性触媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、好ましいアルカリ性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機系のアルカリ性触媒が挙げられる。該アルカリ性触媒は、特に、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。該アルカリ性触媒は、一種で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0074】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いる含フッ素樹脂の重量平均分子量は好ましくは2,000~20,000であり、より好ましくは3,000~15,000である。
【0075】
好ましい実施態様においては、含フッ素樹脂の重合に際しての、含フッ素モノマー、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマー、任意成分として用いられるその他のモノマーの使用割合をそれぞれa1、b1、c1(質量%)としたとき、次の関係を同時に充たすことが好ましい(ただし、a1+b1+c1=100質量%)。
【0076】
「a1は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%
b1は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~80質量%
c1は、好ましくは0~89質量%、より好ましくは20~70質量%」 。
【0077】
また、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する構造単位を100モル%としたとき、イソシアネート基含有化合物が化合された割合をd1(モル%)としたとき、以下の関係を充たすことが好ましい。
【0078】
「d1は、好ましくは5~80モル%、より好ましくは10~70モル%、さらに好ましくは20~60モル%」。
【0079】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いる含フッ素樹脂の量は、樹脂組成物の固形分の総量100質量%に対して、0.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。含フッ素樹脂の含有量が0.5質量%以上であると、乾燥中に膜面側に含フッ素樹脂が十分移動し、反射率を下げることができる。一方、含フッ素樹脂の含有量が20質量%以下であると、現像加工性を向上することができる。
【0080】
<ラジカル重合性化合物>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含有する。ラジカル重合性化合物とは前記の光重合開始剤で発生したラジカルに対して重合活性を持つ化合物である。なおここで、ここでいうラジカル重合性化合物は分子構造中にフッ素原子を含まない。
【0081】
ラジカル重合性化合物としては、2つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物が好ましい。ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性官能基としては、露光時の感度向上および硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。ここでいう(メタ)アクリル基とは、メタクリル基またはアクリル基を指す。ラジカル重合性化合物の分子量は、100~3,000が好ましく、250~1,500がより好ましい。
【0082】
ラジカル重合性化合物としては、フルオレン骨格を含有する化合物を用いることが好ましい。フルオレン骨格を含有する化合物としては、例えば、9,9―ビス[4-(3-アクリロキシ-2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[3-メチル-4-(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンや、後述するフルオレン骨格とフルオレン骨格以外の縮合多環式芳香環と1つ以上の水酸基を有する化合物(以下、「(E-1A)成分」と称することがある)などが挙げられる。
【0083】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いるラジカル重合性化合物として、(E-1A)成分を用いることがより好ましい。(E-1A)成分中のフルオレン骨格以外の縮合多環式芳香環としては、ペンタレン、インデン、ナフタレン、ヘプタレン、ビフェニレン、アントラセン、フェナントレン、ペンタセン、ピレン、テトラセン、ペンタセンなどが挙げられる。かかる観点から、ラジカル重合性化合物としては、一般式(7-1)で示される化合物を用いることが好ましい。フルオレン骨格を含有する化合物を含有することで、露光時に含フッ素樹脂と架橋し、現像工程での含フッ素樹脂の現像液への溶解を防ぎ、低反射率を維持する役割を果たす。
【0084】
【0085】
[式中、R50およびR51はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基を表し、R52およびR53は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基を表し、R54およびR55は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。R56~R61は、それぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数4~10のフルオロシクロアルキル基又は炭素数6~15のフルオロアリール基を表す。R62およびR63は、それぞれ独立して水素原子またはCOR64を表し、少なくとも一方は水素原子を表し、R64は炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基または炭素数1~12のアルキニル基を表す。pおよびqはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、rおよびsはそれぞれ独立して1~3の自然数を表す。tおよびuはぞれぞれ独立に0~4の整数を表し、vおよびwは、それぞれ独立して0~3の整数を表す。]
(E-1A)成分としては、例えば、9,9-ビス[5-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-{3-メチル-(3-(メタ)アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)}ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-{(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エトキシ}-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-{(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ}-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)アントリル]フルオレンなどが挙げられる。
【0086】
また、本発明の感光性着色樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物として、3官能以上の多官能アクリレート化合物を用いることが好ましい。3官能以上の多官能アクリレートが含有されることで、感度を向上することができる。
【0087】
3官能以上の多官能アクリレート化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、δ-バレロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、β-プロピオラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0088】
フルオレン骨格を含有する化合物または3官能以上の多官能アクリレート化合物以外のラジカル重合性化合物としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、アジピン酸1,6―ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピルアクリレート、ビス(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジイルビス(オキシ)ビス(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0089】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いるラジカル重合性化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂と、ラジカル重合性化合物の合計含有量100質量%に対して、5質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好ましい。ラジカル重合性化合物の含有量が5質量%以上であると、含フッ素樹脂の現像液への溶解を防ぎ、低反射率を維持できる。一方、ラジカル重合性化合物の含有量が80質量%以下であると、パターン線幅の設計値に対する太りを改善できる。
【0090】
<溶剤>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類、アルコール類などが挙げられる。
【0091】
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。アセテート類としては、例えば、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、BDG-AC:20℃での蒸気圧5Pa)、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA。20℃での蒸気圧500Pa)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、DPMA:20℃での蒸気圧10Pa)、3―メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等が挙げられる。エステル類としては、例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。アミド類としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。アルコール類としては、例えば、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0092】
これらの中でも、着色材をより分散安定化させるため、アセテート類を用いることが好ましい。全溶剤100質量%中におけるアセテート類の含有量は、40質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0093】
また、溶剤として、20℃での蒸気圧が0.01Pa以上、100Pa以下の溶剤を用いることが好ましい。蒸気圧が低い溶剤を使用すると乾燥速度が抑制され、前記の含フッ素樹脂が表面に析出されやすくなり、膜表面の反射強度をより低下できる。20℃での蒸気圧が0.01Pa以上、100Pa以下の溶剤としては、例えばDPMA、BDG-ACなどが挙げられる。
【0094】
20℃での蒸気圧が0.01以上、100Pa以下の溶剤の含有量は、観測速度抑制の観点から、全溶剤100質量%中において10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。一方、塗膜を最終的に乾燥させる観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0095】
溶剤の含有量は、塗布工程における塗布膜の膜厚均一性の観点から、感光性着色樹脂組成物100質量%において50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。一方顔料沈降を抑制する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0096】
<その他、任意に用いることができる成分>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、高分子分散剤を含有してもよい。高分子分散剤とは、顔料表面への化学的結合または吸着作用を有する顔料親和性基と、親溶媒性を有する高分子鎖または基とを併せ持つ化合物をいう。高分子分散剤は、湿式メディア分散処理において、顔料の分散媒への濡れ性を向上させて顔料の解凝集を促進し、立体障害および/または静電反発効果により粒度および粘度を安定化させ、さらに、感光性着色樹脂組成物の貯蔵時あるいは塗布時の色分離の発生を抑制する効果を奏する。
【0097】
高分子分散剤としては、市販のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤、カルボジイミド系分散剤などが挙げられる。高分子分散剤は、アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤、酸価が1mgKOH/g以上でありアミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤、アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g以上である高分子分散剤、アミン価が1mgKOH/g未満であり酸価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤に分類される。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、アミン価が1mgKOH/g以上である高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤の含有量は、着色材100質量%に対して、10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましく、高分子分散剤の含有量が10質量%以上であると、分散安定性を向上できる。一方、高分子分散剤の含有量が100質量%以下であると、着色膜の耐熱性や密着性を向上できる。
【0098】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、ブロックイソシアネートを含有してもよい。ブロックイソシアネートとは、ブロック剤によってブロックされた2以上のイソシアネート基を有する化合物である。加熱によりブロック剤が解離して、イソシアネート基が再生するため、ブロックイソシアネートはポットライフが長く、これを含む感光性着色樹脂組成物は粘度安定性に優れる。本発明の感光性着色樹脂組成物では、ブロックイソシアネートは硬化剤として用いることができられる。ブロックイソシアネートは、比較的低温での加熱によりブロック剤を解離(脱保護)してイソシアネート基を再生する。再生したイソシアネート基がアルカリ可溶性樹脂中の、水酸基および/またはカルボキシル基と熱反応することで、感光性着色樹脂組成物が硬化する。ブロックイソシアネートの種類としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。ブロックイソシアネートの含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量%以上、300質量%以下が好ましい。
【0099】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性着色樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハ、ITO、SiO2、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0100】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させたり、感光性着色樹脂膜の膜厚の均一性を向上させたりする目的で界面活性剤を含有してもよい。なお、前記の含フッ素樹脂が界面活性能を持っていたとしても、ここでいう界面活性剤には含まれない。界面活性剤は市販の化合物を用いることができる。界面活性剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量%に対して0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0101】
<感光性着色樹脂組成物の調製法>
本発明の感光性着色樹脂組成物の調製法について、以下に例を挙げて説明する。ただし、以下の説明は実施の助けとするための例示であって、本発明はこの例に限定して解釈されるものではないことはいうまでもない。
【0102】
本発明の感光性着色樹脂組成物の製造方法としては、例えば、分散機を用いて、着色材、アルカリ可溶性樹脂の内の一部、必要に応じて分散剤および溶剤を含有する樹脂溶液を分散させて、着色材濃度の高い分散液を調製し、さらに、残りのアルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、含フッ素樹脂、ラジカル重合性化合物や、必要に応じて他の成分を添加して撹拌する方法が好ましい。必要に応じて濾過を行ってもよい。
【0103】
分散機としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなどが挙げられる。これらの中でも、分散効率化および微分散化のため、ビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどが挙げられる。ビーズミルに用いるビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズが挙げられる。ビーズミルのビーズ径は、0.03mm~1.0mmが好ましい。着色材の一次粒子径および一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が小さい場合には、径が0.03mm~0.10mmの微小なビーズを用いることが好ましい。この場合には、微小なビーズと分散液とを分離することが可能な、遠心分離方式によるセパレーターを備えるビーズミルが好ましい。一方で、サブミクロン程度の粗大な粒子を含む着色材を分散させる場合には、十分な粉砕力を得るために、径が0.10mm以上のビーズを用いることが好ましい。
【0104】
次に、本発明の感光性着色樹脂組成物を硬化させて硬化膜を形成する方法について説明する。硬化膜の形成方法は、感光性着色樹脂組成物を基板の表面に塗布し着色膜を形成する工程、前記着色膜を乾燥する工程、前記着色膜を露光する工程、露光された着色膜を現像する工程、および後硬化をする工程を含む。
【0105】
まず、感光性着色樹脂組成物を塗布し、着色された硬化膜を形成する工程について述べる。この工程では、本発明の感光性着色樹脂組成物を基板にスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで塗布し、着色膜を得る。これらの中でスリットコート法が好ましく用いられる。スリットコート法での塗布速度は10mm/秒~400mm/秒の範囲が一般的である。着色膜の膜厚は、感光性着色樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1μm~10μm、好ましくは0.5μm~3μmになるように塗布される。ここで固形分濃度とは、組成物調製時において、全成分の質量に対する溶剤以外の成分の質量の割合を%表示したものをいう。基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の透明基板、シリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素の基板などが挙げられる。基板上には樹脂層、無機膜、画素、配線などが存在してもよい。塗布に先立ち、感光性着色樹脂組成物を塗布する基板にUV処理やプラズマ処理などの前処理を行ってもよい。
【0106】
次に、着色膜を乾燥する工程について述べる。この工程では、感光性着色樹脂組成物を塗布後、着色膜を乾燥する。この工程における乾燥方法としては、減圧乾燥または加熱乾燥が典型的である。減圧乾燥と加熱乾燥は両方実施してもよいし、いずれか一方のみでもよい。加熱乾燥について述べる。この工程をプリベークとも言う。乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用する。加熱温度は着色膜の種類や目的により様々であり、50℃から180℃の範囲で1分間~数時間行うことが好ましい。乾燥工程では、溶剤などの揮発成分が取り除かれる。
【0107】
次に、前記着色膜を露光する工程について述べる。この工程では、得られた着色膜からパターンを形成するために、着色膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を利用することや、UV-LED光源からの単色光を用いることが好ましい。
【0108】
次に、露光された着色膜を現像する工程について述べる。この工程では、露光後、現像液を用いて未露光部を除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAH)、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、PGMEAなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、PGMEAなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0109】
次に、着色膜の硬化工程について述べる。現像工程を経て得られたパターン化された着色膜を加熱処理(ポストベーク)することにより、硬化された着色膜(硬化膜)を得ることができる。加熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、真空状態のいずれで行ってもよい。加熱温度は120~300℃が好ましく、加熱時間は0.25~5時間が好ましい。加熱温度を連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0110】
本発明の硬化膜は含フッ素樹脂の物質移動効果により、膜面側の反射強度が低い。このことは、スパッタイオンを用いた飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により硬化膜の厚み方向における質量分析を行った場合、含フッ素樹脂に由来する物質の強度プロファイルが、膜面近傍において高い傾向を示しているためと考えられる。また、X線電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行ったときには、フッ素原子の強度が膜面近傍において高い傾向を示しているためと考えられる。
【0111】
本発明の感光性着色樹脂組成物に含有される含フッ素樹脂は、一般式(1)で示される含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位と、一般式(4)で示されるポリアルキレンオキサイド基含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含有する。かかる含フッ素樹脂を用いることによって、本発明の感光性着色樹脂組成物を塗布し、乾燥する工程中における物質移動で、硬化膜の表面近傍部の屈折率を特異的に下げることができ、これにより、膜面側の反射強度を低下する効果を発揮できる。
【実施例0112】
以下に本発明を実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0113】
<評価方法>
[遮光性]
試料である樹脂組成物をAGC(株)製の無アルカリガラス基板(AN100)上に、ミカサ(株)製スピンナー(MS-A150)を用いて、後硬化後の膜厚が1μmとなるように塗布し、着色膜を90℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した。この着色膜に対して、紫外線を200mJ/cm2露光し、0.045質量%水酸化カリウム水溶液のアルカリ現像液で60秒間現像処理を行った。得られた基板を170℃のオーブンで30分間加熱乾燥して硬化膜を得た。得られた硬化膜について、X-Rite社製光学濃度計361TVisualを用いて、単位膜厚1μmあたりのOD値を算出し、以下の基準により評価した。なお、Aが最も優れている。
【0114】
A:2.5以上
B:1.5以上2.5未満
C:1.5未満 。
【0115】
[全反射光の明度、拡散反射光の明度]
試料である樹脂組成物を無アルカリガラス基板(AN100)上に、ミカサ(株)製スピンナー(MS-A150)を用いて、後硬化後の膜厚が1μmとなるように塗布し、着色膜を90℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した。この着色膜に対して、紫外線を200mJ/cm2露光し、0.045質量%水酸化カリウム水溶液のアルカリ現像液で60秒間現像処理を行った。得られた基板を170℃のオーブンで30分間加熱乾燥して硬化膜を得た。得られた基硬化膜をコニカミノルタ(株)製の白色校正板“CM-A145”で校正した、コニカミノルタ(株)製の分光測色計“CM -2600d”を用い、標準光源D65(色温度6504K) 、視野角10°(CIE1976)、大気圧下、20℃の測定条件下で硬化膜の表面から光を入射させ、SCI方式(正反射光を含む全ての反射光を検知)およびSCE方式(拡散反射光のみを検知)でそれぞれ測定し、それぞれの測定方式において明度(L*値)を求め、以下の基準により評価した。なお、Aが最も優れている。
<SCI方式での測定によるL*値>
A:26.0未満
B:26.0以上33.5未満
C:33.5以上
<SCE方式での測定によるL*値>
A:0.4未満
B:0.4以上0.7未満
C:0.7以上 。
【0116】
[現像加工性]
試料である樹脂組成物を無アルカリガラス基板(AN100)上に、ミカサ(株)製スピンナー(MS-A150)を用いて、後硬化後の膜厚が1μmとなるように塗布し、着色膜を90℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した。この着色膜に対して、ユニオン光学(株)製マスクアライナー(PEM-6M)を用いて、HOYA(株)製ネガマスク(設計ライン&スペース:5、10、15、20μmの4か所)を介して、紫外線を200mJ/cm2露光し、0.045質量%水酸化カリウム水溶液のアルカリ現像液で現像することでパターニング基板を得た。得られたパターニング基板を170℃のオーブンで30分間加熱乾燥して硬化膜を得た。
【0117】
各ライン&スペースのパターンを、光学顕微鏡(オリンパス販売(株)製「BH3-MJL(商品名)」)を用いて、倍率50倍に拡大して1サイズあたり100箇所観察し、90個以上のパターンが残っている最小開口パターンから、以下の基準により現像加工性を評価した。なお、Aが最も優れている。
【0118】
A:最小パターンが10μm未満
B:最小パターンが10μm以上20μm未満
C:最小パターンが20μm以上 。
【0119】
[リコート性]
試料である樹脂組成物を無アルカリガラス基板(AN100)上に、ミカサ(株)製スピンナー(MS-A150)を用いて、後硬化後の膜厚が1μmとなるように塗布し、着色膜を90℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した。この着色膜に対して、紫外線を200mJ/cm2露光し、0.045質量%水酸化カリウム水溶液のアルカリ現像液で60秒間現像処理を行い、170℃のオーブンで30分間加熱乾燥して硬化膜を得た。得られた硬化膜の表面に、1μLのPGMEAを滴下し、接触角を測定した。測定は接触角測定装置(DMs-401;協和界面科学(株)製)を用いて、JIS-R3257に準拠し、23℃で静滴法にて測定した。
【0120】
接触角の値から、以下の基準により、リコート性を評価した。なお、Aが最も優れている。
【0121】
A:接触角が10度以下
B:接触角が10度を超える
感光性着色樹脂組成物の硬化膜上には、後工程においてPGMEA等の溶剤を含んだ組成物の塗膜が形成される場合が多い。硬化膜上において溶剤の接触角が高い場合、後工程における塗膜の形成が困難となってゆくことがわかる。
【0122】
(合成例1 アルカリ可溶性樹脂(P-1)の合成)
特許第3120476号明細書の実施例1に記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(質量比30/40/30)を合成した。得られた共重合体100質量部に対し、グリシジルメタクリレート40質量部を付加させ、精製水で再沈し、濾過および乾燥することにより、重量平均分子量15,000、酸価110mgKOH/gのアクリル系のアルカリ可溶性樹脂(P-1)を得た。なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに要した水酸化カリウムの量(mg)とし(単位:mgKOH/g)、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー(株)製試験装置)を用いて、キャリヤーをテトラヒドロフランとして、ポリスチレン換算により測定した。
【0123】
(合成例2 含フッ素樹脂(f-1)の合成)
2口ナスフラスコに下記構造式で表される、含フッ素モノマー(a-1)を5.7g、ブレンマーPP-800(日油製)(b-1)を37.2g、ベンジルメタクリレート(c-1)を57.2g、および、開始剤としてV-601を0.6g、重合調整剤としてドデカンチオール(LM)を1.1g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を203.3g入れ、反応混合物を窒素バブリングさせながら30分攪拌した。反応混合物を80℃まで昇温し、80℃で5時間撹拌した。
【0124】
反応終了後、反応混合物を固形分濃度が30質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈した。前記の単量体(b-1)に対して0.3当量分の下記構造式で表される2-(イソシアネートエチル)アクリレート(d-1)及び0.01当量分の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを添加し、50℃で反応溶液の攪拌を20時間続行し、含フッ素樹脂(f-1)を得た。
【0125】
【0126】
[(a-1)において、Rfは下記式(1a)または(2a)で表される構造である。]
【0127】
【0128】
[式中、*は酸素原子との結合点を示す。]
なお、式(b-1)中の「≒」の意味は、用いたものがnの値の異なる化合物の混合物であり、その平均値としては整数ではないことによる、近似値を意味する(以下も同様)。
【0129】
(合成例3 含フッ素樹脂(f-2)の合成)
2口ナスフラスコに前記の含フッ素モノマー(a-1)を29.5g、ブレンマーPP-800(日油(株)製)(b-1)を64.9g、下記構造式で表されるHOA-MS(N)(共栄社化学(株)製)(c-2)を5.6g、および、開始剤としてV-601を0.6g、重合調整剤としてドデカンチオール(LM)を1.1g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を203.3g入れ、反応混合物を窒素バブリングさせながら30分攪拌した。反応混合物を80℃まで昇温し、80℃で5時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を固形分濃度が30質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈し、含フッ素樹脂(f-2)を得た。
【0130】
【0131】
(合成例4 含フッ素樹脂αに該当しないフッ素系樹脂(k-1)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(k-a)で表される両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物20質量部、溶媒としてジイソプロピルエーテル10質量部、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.006質量部及び中和剤としてトリエチルアミン3.3質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌した後、50℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行い、ガスクロマトグラフィー測定にてメタクリル酸クロライドの消失が確認された。次いで、溶媒としてジイソプロピルエーテル70質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。
【0132】
【0133】
(式中、Xはパーフルオロメチレン基またはパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在する。)
次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記式(k-b)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物を得た。
【0134】
【0135】
(式中、Xはパーフルオロメチレン基またはパーフルオロエチレン基である。1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在する。)
次いで、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン100質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物(k-b)20質量部と、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート(下記式(k―c)で表される化合物)50.1質量部をメチルイソブチルケトン120質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.5質量部をメチルイソブチルケトン80質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した後、減圧下で溶媒262.1質量部を留去することによって、重合体(k-d)溶液を得た。
【0136】
【0137】
次いで、上記で得られた重合体(k-d)溶液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート31.7質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン70質量部を加えて、含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂(k-1)を50%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂(k-1)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量1,500、重量平均分子量4,100であった。また、含フッ素重合性樹脂(1)のフッ素含有率は11質量%であり、重合性不飽和基当量は500g/eq.であった。
【0138】
(合成例5 含フッ素樹脂αに該当しないフッ素系樹脂(k-2)の合成)
合成例4と同様の方法で、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物(k-b)を得た。
【0139】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン101.6質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら95℃に昇温した。次いで、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物(k-b)37.9質量部(液1)と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート36.1質量部をメチルイソブチルケトン1.6質量部に溶解した溶液37.7質量部(液2)と、ラジカル重合開始剤であるアゾビスジイソブチロニトリル11.1質量部をメチルイソブチルケトン34.3質量部に溶解した溶液45.4質量部(液3)との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を95℃に保ちながら同時に滴下を開始し、液1と液2は2時間、液3は2時間20分かけて滴下した。滴下終了後、95℃で10時間攪拌した後、溶媒を留去することによって、重合体(k-e)を得た。
【0140】
次いで、溶媒としてメチルエチルケトン151.2質量部、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.066質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.496質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.05質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながらペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」という。)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」という。)との混合物(東亞合成(株)製「アロニックスM-305」;PE3A比率59質量%、PE4A比率41質量%)97.8質量部(PE3Aとして57.7質量部)を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌した。さらに、オクチル酸スズ0.113質量部及びPE3AとPE4Aとの混合物(東亞合成(株)製「アロニックスM-305」;PE3A比率59質量%、PE4A比率41質量%)19.6質量部(PE3Aとして11.6質量部)追加し、80℃にて5時間攪拌した後、反応液のIRスペクトル測定によりイソシアネート基の吸収ピークの消失が確認された。上記の反応液を室温に冷却後、メチルエチルケトン103.9質量部を加え、濾過によって溶液に不溶な物は濾別して、含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂(k-2)を42.6%含有するメチルエチルケトン溶液を得た。この含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂(k-2)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量1,000、重量平均分子量98,000、最大分子量300万、フッ素含有率は15.3重量%、ラジカル重合性不飽和基当量は207g/eq.であった。
【0141】
(合成例6 ラジカル重合性化合物(M-1)の合成)
特許第5782281号明細書の実施例1に記載の方法により、同実施例に記載の化合物を合成し、フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物(M-1)として用いた。
【0142】
(合成例7 アルカリ可溶性樹脂(P-2)の合成)
500mLの三口フラスコに、33gのメタクリル酸メチル(0.33mol)、33gのスチレン(0.32mol)、34gのメタクリル酸(0.39mol)、3gの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(0.02mol)及び150gのPGMEAを仕込み、90℃で2時間撹拌してから内温を100℃に昇温して、さらに1時間反応させた。得られた反応溶液に、33gのメタクリル酸グリシジル、1.2gのジメチルベンジルアミン及び0.2gのp-メトキシフェノールを添加して、90℃で4時間撹拌し、反応終了時に50gのPGMEAを添加して、アルカリ可溶性樹脂(P-2)のPGMEA溶液(固形分濃度40%)を得た。アルカリ可溶性樹脂(P-2)の酸価は80.0mgKOH/gであり、GPC測定による重量平均分子量は22,000であった。
【0143】
(製造例1 着色材分散液(DB-1)の製造)
黒色顔料として、平均一次粒子径18nm、ジブチルフタレート吸収量56cm3/100g、pH値3.5であるカーボンブラック“#1000”(三菱ケミカル(株)製)96g、合成例1により得られたアルカリ可溶性樹脂(P-1)のPGMEA35質量%溶液98g、分散剤としてアミン系高分子分散剤DISPER BYK(登録商標)21116(固形分濃度40%のPGMEA溶液、ビックケミー社製。以下、「BYK-21116」)17g、PGMEA235gおよび3-メトキシブチルアセテート(以下、MBA)103gをタンクに仕込み、ホモミキサーで20分撹拌し、予備分散液を得た。ビーズ径0.10mmφのジルコニアビーズを75体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した寿工業(株)製分散機ウルトラアペックスミルUAM015に、得られた予備分散液を供給し、回転速度9m/sで139分間分散を行い、固形分濃度25%、着色材/(樹脂+分散剤)(質量比)=70/30の着色材分散液(DB-1)を得た。(DB-1)に含まれた黒色顔料の二次粒子径は61nmであった。二次粒子径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置(SZ-100;(株)堀場製作所製)を用い、(DB-1)をPGMEAで希釈し、25℃で測定し、累積度数50%時点の顔料粒子の二次粒子径(D50)を平均二次粒子径として求めた。
【0144】
(製造例2 着色材分散液(DB-2)の製造)
黒色顔料として、“MA100”(三菱ケミカル(株)製)を用いた以外は製造例1と同様にして、固形分濃度25%、着色材/(樹脂+分散剤)(質量比)=70/30の着色材分散液(DB-2)を得た。(DB-2)に含まれた黒色顔料の二次粒子径は110nmであった。
【0145】
(製造例3 着色材分散液(r-1)の製造)
顔料である50gのPR254(イルガフォア(登録商標)レッドBK-CF;BASFジャパン(株)製)、顔料である21gのPR177(クロモファイン(登録商標)レッド6125EC;大日精化工業(株)製)、高分子分散剤である70gのBYK-21116、116g質量部の合成例7により得られたアルカリ可溶性樹脂(P-2)のPGMEA40質量%溶液及び291gのPGMEAを混合し、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散して、着色材分散液(r-1)を得た。
【0146】
(実施例1)
32.0gの着色材分散液(DB-1)に、アルカリ可溶性樹脂として(P-1)の35質量%PGMEA溶液を11.0g、ラジカル重合性化合物としてDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物。日本化薬(株)製)を5.8g、光重合開始剤としてアセトフェノン系開始剤IC379(BASFジャパン(株)製)を1.3g、含フッ素樹脂(f-1)の30質量%PGMEA溶液を3.3g、PGMEAを46.6g添加し、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-1)を得た。
【0147】
(実施例2)
DPHAの添加量を4.4gに変更し、フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物(M-1)1.4gを追加で添加した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-2)を得た。
【0148】
(実施例3)
IC379を添加する代わりに同量のNCI-831Eを添加する以外は実施例2と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-3)を得た。
【0149】
(実施例4)
PGMEAの添加量を26.5gに変更し、BDG-ACを20.0g追加で添加した以外は実施例3と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-4)を得た。
【0150】
(実施例5)
BDG-ACを添加する代わりに同量のDPMAを添加した以外は実施例4と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-5)を得た。
【0151】
(実施例6)
45.5gの着色材分散液(DB-1)に、(P-1)の35質量%PGMEA溶液を5.3g、DPHAを3.5g、(M-1)を1.2g、NCI-831Eを1.1g、含フッ素樹脂(f-1)の30質量%PGMEA溶液を3.3g、PGMEAを40.2g添加し、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=42/58の感光性着色樹脂組成物(PB-6)を得た。
【0152】
(実施例7)
54.6gの着色材分散液(DB-1)に、(P-1)の35質量%PGMEA溶液を1.5g、DPHAを3.0g、(M-1)を1.0g、NCI-831Eを0.9g、含フッ素樹脂(f-1)の30質量%PGMEA溶液を3.3g、PGMEAを35.8g添加し、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=50/50の感光性着色樹脂組成物(PB-7)を得た。
【0153】
(実施例8)
(DB-1)の代わりに(DB-2)を用いること以外は実施例3と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-8)を得た。
【0154】
(実施例9)
含フッ素樹脂(f-1)の30%PGMEA溶液の代わりに含フッ素樹脂(f-2)の30質量%PGMEA溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、感光性着色樹脂組成物(PB-9)を得た。
【0155】
(実施例10)
31.9gの着色材分散液(r-1)に、アルカリ可溶性樹脂として(P-1)の固形分濃度35%PGMEA溶液を1.9g、DPHAを3.3g、(M-1)を1.1g、NCI-831Eを0.4g、含フッ素樹脂(f-1)の30質量%PGMEA溶液を3.3g、PGMEAを58.0g添加し、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(DR-1)を得た。
【0156】
(比較例1)
含フッ素樹脂(f-1)の30質量%PGMEA溶液を3.3g添加する代わりに、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであるBYK-333(ビックケミー社製)を0.1g添加し、PGMEAの添加量を49.8gに変更した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-10)を得た。
【0157】
(比較例2)
BYK-333を添加する代わりに、炭素原子間に二重結合を持たないフッ素系化合物であるメガファック(登録商標)F-477(DIC(株)製)を1.0g添加し、PGMEAの添加量を48.9gに変更した以外は比較例1と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-11)を得た。
【0158】
(比較例3)
32.0gの着色材分散液(DB-1)に、アルカリ可溶性樹脂として(P-1)の35質量%PGMEA溶液を11.0g、ラジカル重合性化合物としてDPHAを5.8g、光重合開始剤としてアセトフェノン系開始剤IC379(BASFジャパン(株)製)を1.3g、含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂として(k-1)の50質量%メチルイソブチルケトン溶液を2.0g、PGMEAを47.9g添加し、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-12)を得た。
【0159】
(比較例4)
含フッ素樹脂に該当しないフッ素系樹脂として(k-1)の50質量%メチルイソブチルケトン溶液を2.0g添加する代わりに(k-2)の42.6質量%メチルエチルケトン溶液を2.4g添加し、PGMEAの添加量を47.5gに変更した以外は比較例3と同様にして、固形分濃度20%、顔料/樹脂(質量比)=30/70の感光性着色樹脂組成物(PB-13)を得た。
【0160】
(比較例5)
31.9gの着色材分散液(r-1)に、アルカリ可溶性樹脂として(P-1)の35質量%PGMEA溶液を4.8g、DPHAを4.4g、NCI-831Eを0.4g、PGMEAを58.5g添加し、感光性着色樹脂組成物(DR-2)を得た。
【0161】
結果を、表1および表2に示す。
【0162】
【0163】
【0164】
実施例の着色樹脂組成物は、膜面の全反射及び拡散反射色度の値が低いために、漆黒性に優れる。また、PGMEAの接触角の値が低く、リコート性に優れる。
【0165】
一方、比較例の着色樹脂組成物は、請求項1記載の含フッ素樹脂の要件を満たさない場合、膜面の全反射及び拡散反射色度の値が高いために、漆黒性が劣る。また、含フッ素樹脂αに該当しないフッ素系の化合物を含む場合、PGMEAの接触角の値が高く、リコート性が劣るため、後工程における塗膜の形成に支障が生じることが判る。
【0166】
(実施例11)
(PB-5)に対して、[全反射・拡散反射]の評価方法のうち、現像処理の時間を30秒に変更した以外は実施例5と同様にして、[全反射・拡散反射]の評価を行った。
【0167】
(実施例12)
(PB-5)に対して、[全反射・拡散反射]の評価方法のうち、現像処理の時間を90秒に変更した以外は実施例5と同様にして、[全反射・拡散反射]の評価を行った。
【0168】
(実施例13)
(PB-5)に対して、[全反射・拡散反射]の評価方法のうち、現像処理の時間を120秒に変更した以外は実施例5と同様にして、[全反射・拡散反射]の評価を行った。
【0169】
各実施例の評価結果を、表3に示す。
【0170】
【0171】
実施例に示すように現像処理の時間を変更しても、いずれも膜面の全反射及び拡散反射色度の値が低いために、色の鮮明性や漆黒性に優れる。
本発明の感光性着色樹脂組成物および硬化膜は、液晶表示装置等が備えるカラーフィルターのブラックマトリクス等の遮光画像、有機ELディスプレイ内部の着色隔壁、ミニLEDディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ内部のブラックマトリクス等の遮光画像などに好適に利用できる。