(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142560
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】地中熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20241003BHJP
F24T 10/15 20180101ALI20241003BHJP
F25B 30/06 20060101ALI20241003BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F28D7/16 D
F24T10/15
F25B30/06 Z
F28D7/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054739
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】503116257
【氏名又は名称】学校法人八戸工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠都
(72)【発明者】
【氏名】野田 英彦
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
(57)【要約】
【課題】熱媒の経路の途中で管をつなぎ合わせたり、特別な加工をすることなく、往路管と復路管のうちの少なくとも一方の管内の熱媒の流速を速めることができ、かつ、熱変換効率を向上させることができる地中熱交換器を提供する。
【解決手段】地中の深層部Hまで埋設した管の内部に熱媒Sを循環させ、地盤1との間で熱交換を行う地中熱交換器10であって、熱媒Sを深層部H側へ流すための往路管11と、この往路管11を通って深層部H側に到達した熱媒Sを地表1a側へ流すための復路管12と、を備え、往路管11と復路管12のうちの少なくとも一方の管は、内部の地中の浅層部Lに対応する位置に挿入管13を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の深層部まで埋設した管の内部に熱媒を循環させ、地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器であって、
前記熱媒を前記深層部側へ流すための往路管と、
前記往路管を通って前記深層部側に到達した前記熱媒を地表側へ流すための復路管と、
を備え、
前記往路管と前記復路管のうちの少なくとも一方の管は、内部の地中の浅層部に対応する位置に挿入管を有することを特徴とする地中熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の地中熱交換器であって、
前記挿入管は、接着或いは熱溶着により前記往路管と前記復路管のうちの少なくとも一方の管内に固定されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項3】
請求項1記載の地中熱交換器であって、
前記往路管と前記復路管のうちの少なくとも一方の管は、管軸方向の他方の端部に凹部が設けられ、
前記挿入管は、管軸方向の他方の端部に前記凹部に係止される凸部が設けられていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項4】
請求項1記載の地中熱交換器であって、
前記挿入管の肉厚は、前記地表側に近づくにつれて厚く形成されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項5】
請求項1記載の地中熱交換器であって、
前記挿入管は、管軸方向の端部に熱媒整流用の傾斜面が設けられていることを特徴とする地中熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
地中熱交換器は、U字状の管のものが広く採用され、地中に埋設した管内に水等の熱媒を循環させ、空調装置等から排出される熱を放熱したり、地中の熱を採熱して空調装置に供給したりすることにより、効率的に空調装置を運転する目的で利用されている。この種の地中熱交換器として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された地中熱交換器は、地中に配設された往路配管と復路配管及びU字形の曲げ管とでU字形配管を構成している。そして、復路配管の一部を縮径して復路配管内の熱媒の流速を速め、また、復路配管の縮径部を断熱材で包囲して熱変換効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の地中熱交換器では、復路配管の一部を縮径することによって、復路配管内の熱媒の流速を速めることができるが、熱変換効率を向上させるために、復路配管の縮径部を包囲する断熱材が必要不可欠となり、その分、コスト高となる。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、広く利用されているU字状の管をそのまま利用することが可能で、途中で管をつなぎ合わせたり、特別な加工を施すことなく、往路管と復路管のうちの少なくとも一方の管内の熱媒の流速を速めることができ、また、断熱材を用いることなく断熱効果を得ることができる地中熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地中の深層部まで埋設した管の内部に熱媒を循環させ、地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器であって、前記熱媒を前記深層部側へ流すための往路管と、前記往路管を通って前記深層部側に到達した前記熱媒を地表側へ流すための復路管と、前記往路管の管軸方向の端部と前記復路管の管軸方向の端部とを所定間隔離間させて連結する連結管と、を備え、前記往路管と前記復路管のうちの少なくとも一方の管は、内部の地中の浅層部に対応する位置に挿入管を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、往路管と復路管のうちの少なくとも一方の管内の地中の浅層部に対応する位置に挿入管を挿入することで、熱媒の経路の途中で管をつなぎ合わせたり、特別な加工をすることなく、往路管と復路管のうちの少なくとも一方の管内の熱媒の流速を速めることができ、かつ、熱の伝達率を低減させて断熱効果を得ることができる。これにより、地中熱交換器の熱変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の地中熱交換器を示す側面図である。
【
図3】(a)は本発明の第2実施形態の地中熱交換器の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図、(b)は同第2実施形態の変形例の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態の地中熱交換器の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態の地中熱交換器を示す側面図、
図2は
図1中符号A部分の拡大断面図である。
【0011】
図1に示すように、地中熱交換器10は、地中の深層部Hまで埋設した往路管11と復路管12及び連結管14からなるU字状の管の内部に熱媒Sを循環させ、地盤1との間で熱交換を行うものである。ここで、熱媒Sとして水または不凍液等の液体が利用される。つまり、地中熱交換器10は、地中に埋設したU字状の管内に水等の熱媒Sを循環させ、空調装置等から排出される熱を放熱したり、地中の熱を採熱して空調装置に供給したりすることにより、効率的に空調装置を運転する目的で利用される。尚、
図1中、符号Hは、地中の温度が年中一定の約10m以深の深層部を示し、符号Lは、地中の温度が季節により変化し易い3m以浅の浅層部を示す。
【0012】
図1に示すように、往路管11は、熱媒Sを地盤1の深層部H側へ流すためのものであり、高い長期静水圧強度を備えた高密度ポリエチレン製の円筒状に形成されている。
【0013】
図1、
図2に示すように、復路管12は、往路管11を通って深層部H側に到達した熱媒Sを地表1a側へ流すためのものであり、高い長期静水圧強度を備えた高密度ポリエチレン製の円筒状に形成されている。また、復路管12は、内部の地中の浅層部Lに対応する位置に挿入管13を有している。即ち、復路管12は、地表やその付近の外気の温度変化を受け易い箇所(位置)や往路管11内の熱媒Sの温度の影響を受け易い箇所(位置)まで挿入管13を挿入している。
【0014】
挿入管13は、熱伝導率が低く十分な耐久性を備えるものが求められるため、復路管12と同じ素材である高い長期静水圧強度を備えた高密度ポリエチレン製の円筒状に形成されていて、接着剤(図示略)の接着により復路管12内に固定されている。また、挿入管13の外径は、復路管12の内径とほぼ同等であり、挿入に支障をきたさないように復路管12の内径より若干小さくしても良い。この場合、挿入管13の外周が復路管12の内周にほぼ隙間なく挿入された状態となるようにするために、挿入管13の外周に接着剤を塗布し、接着剤が乾燥する前に挿入管13を復路管12内の地中の浅層部Lに対応する位置まで挿入して固定する。つまり、復路管12の上端部(管軸方向の他方の端部)12aと挿入管13の上端部(管軸方向の他方の端部)13aとの位置を合わせて、挿入管13が復路管12内から下方に落下しないように固定する。また、挿入管13の下端部には、熱媒整流用の円錐面(傾斜面)13bが形成されている。
【0015】
図1に示すように、連結管14は、高い長期静水圧強度を備えた高密度ポリエチレン製の円筒状でU字状に形成され、往路管11の下端部(管軸方向の端部)11bと復路管12の下端部(管軸方向の端部)12bとを所定間隔離間させて連結するものである。尚、連結管14は、往路管11と復路管12がU字状に一体に形成される場合には、連結部となる。
【0016】
尚、
図1に示すように、U字状の地中熱交換器10は、地盤1に鉛直に形成された掘削孔2に挿入され、掘削孔2と地中熱交換器10との間には砂等の充填材3が充填されている。これにより、充填材3を介して地中熱交換器10の熱媒Sと地盤1との間で熱交換が行われる。
【0017】
以上第1実施形態の地中熱交換器10によれば、復路管12内の地中の浅層部Lに対応する位置に挿入管13を挿入することにより、熱媒Sの経路の途中で管をつなぎ合わせたり、復路管12に特別な加工をすることなく、復路管12内の熱媒Sの流速を速めることができる。
【0018】
さらに、復路管12内の地中の浅層部Lに対応する位置に挿入管13を挿入することにより、挿入管13の肉厚を厚くすることにより、断熱効果が増大し、熱のロスを低減することができ、従来のような断熱材を使用することなく断熱効果をさらに高めることができる。これにより、地中熱交換器10の熱変換効率をより一段と向上させることができる。また、挿入管13の下端部に熱媒整流用の円錐面13bを形成したことにより、復路管12の上方の開口側まで熱媒Sをスムーズに流すことができる。さらに、復路管12内に挿入管13を挿入することにより、浅層部Lでの巻き癖が緩和され、地上での管の接続作業がし易くなる。
【0019】
図3(a)は本発明の第2実施形態の地中熱交換器の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図、
図3(b)は同地中熱交換器の変形例の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図である。
【0020】
この第2実施形態の地中熱交換器10は、復路管12の上端部12aに設けた凹部12cに挿入管13の上端部13aに設けた凸部13cを係止させて復路管12内に挿入管13を固定した点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
この第2実施形態の地中熱交換器10では、
図3(a)に示すように、復路管12の凹部12cに挿入管13の凸部13cを係止させて復路管12内に挿入管13を固定したことで、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。特に、凹部12cと凸部13cとの係合により、挿入管13の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0022】
また、
図3(b)に示す変形例のように、復路管12の上端部12aに傾斜面12dを有した凹部12cを設け、挿入管13の上端部13aに傾斜面12dを有した凸部13cを設け、各傾斜面12d,13dを当接(係止)させて復路管12内に挿入管13を固定しても良い。
【0023】
図4は本発明の第3実施形態の地中熱交換器の
図1中符号A部分に相当する拡大断面図である。
【0024】
この第3実施形態の地中熱交換器10は、挿入管13の肉厚を地表1a側に近づくにつれて厚く形成した点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
この第3実施形態の地中熱交換器10では、挿入管13の肉厚を地表1a側に近づくにつれて厚く形成(挿入管13の内周面13eを上方に向けて小径となる円錐面状に形成)したことで、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。つまり、挿入管13の内径は、必要とされる熱媒Sの流速により決定されるが、地表1a側に近づくほど外気温の影響を受け易くなるので、地表1a側に向けて徐々に内径を狭めたものである。
【0026】
尚、前記各実施形態によれば、往路管と復路管と挿入管及び連結管は、高密度ポリエチレン製としたが、それらの素材はこれに限定されることはなく、例えば、通常密度のポリエチレン等の熱可塑性樹脂でも良く、また、樹脂以外の材料でも良い。さらに、挿入管は復路管の内部に格納されるので、復路管に比べ挿入管の外部からの劣化要因は少なくなるので、比較的安価な塩化ビニル樹脂製でも良い。
【0027】
また、前記第1実施形態によれば、復路管内に挿入管を接着材により接着することで固定したが、挿入管を熱溶着により復路管内に固定しても良い。
【0028】
さらに、前記各実施形態によれば、挿入管を地中熱交換器の復路管内に挿入したが、挿入管を復路管の他に、往路管、二重管、螺旋チューブ等に適用しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 地盤
1a 地表
10 地中熱交換器
11 往路管
11b 下端部(管軸方向の端部)
12 復路管
12a 上端部(管軸方向の他方の端部)
12b 下端部(管軸方向の端部)
12c 凹部
13 挿入管
13a 上端部(管軸方向の他方の端部)
13b 円錐面(傾斜面)
13c 凸部
14 連結管
S 熱媒
H 地中の深層部
L 地中の浅層部