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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142571
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】地図エリア設定装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G09B29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054756
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】井上 利彦
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032HB11
(57)【要約】
【課題】管理者がリンクやノードを考慮せずにエリアの境界線を設定した場合であっても、境界線がノードに位置するように修正したエリアを地図画像上に設定することを可能にした地図エリア設定装置を提供する。
【解決手段】地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得し、境界線と地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得し、複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択し、複数の交点毎に選択されたノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正するとともに、特にノードの選択では隣接する交点で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過するノードを優先して選択するように構成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得する境界線取得手段と、
前記境界線と前記地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得する交点取得手段と、
前記複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択するノード選択手段と、
前記エリアを前記複数の交点毎に選択された前記ノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正するエリア修正手段と、を有し、
前記ノード選択手段は、隣接する交点で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過するノードを優先して選択する地図エリア設定装置。
【請求項2】
地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得する境界線取得手段と、
前記境界線と前記地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得する交点取得手段と、
前記複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択するノード選択手段と、
前記エリアを前記複数の交点毎に選択された前記ノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正するエリア修正手段と、を有し、
前記ノード選択手段は、前記複数の交点毎に選択された前記ノードを繋いだ線の形状が直線形状に近くなるノードを優先して選択する地図エリア設定装置。
【請求項3】
前記ノード選択手段は、前記複数の交点毎に該交点に対して近い位置にあるノードを優先して選択する請求項1又は請求項2に記載の地図エリア設定装置。
【請求項4】
地図画像を表示する画像表示手段と、
前記画像表示手段により表示された前記地図画像上で操作者の操作に基づいてエリアの境界線を指定する境界線指定手段と、
前記境界線取得手段は、前記境界線指定手段により指定された前記境界線を前記エリアの境界線として取得する請求項1又は請求項2に記載の地図エリア設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上でエリアを設定する地図エリア設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地図上において仮想的な境界線で囲まれた任意のエリア(ジオフェンス)を管理者側で設定し、GPS等による位置情報を利用して、設定したジオフェンスへの人や車の出入りを判断するジオフェンス機能について知られている。ジオフェンス機能の活用例としては、例えば被災地の危険地域にジオフェンスを設定し、ジオフェンスに侵入した人や車に対して危険地域であることを通知したり、電気自動車のみに走行が制限された地域にジオフェンスを設定し、車両のナビゲーション装置において表示される地図画像にジオフェンスを表示したり、ジオフェンスに侵入した電気自動車以外の車に対して退出を求めるように通知したり、ハイブリッド車両ではEV走行への切り替え制御を行わせることなどが可能である。
【0003】
そして、上記ジオフェンスの設定は一般的に管理者がディスプレイに表示された地図画像上で境界線を指定することにより行われていた。このような管理者側による操作として例えば特開2013-16207号公報には災害発生位置情報を管理者が入力することによって地図画像上に災害発生位置を表示させる技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-16207号公報(段落0021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば図11に示すようにリンクの途中にジオフェンスの境界線が設定されると一旦該リンクに進入した車両は、ジオフェンスに侵入の意図がなかったとしてもリンクの途中でUターンしない限りジオフェンスに侵入せざるを得ない状況が生じる。従って、ジオフェンスの境界線はリンクの途中ではなくリンクの端点であるノードに位置させるのが望ましい。しかしながら、上記特許文献1のように管理者による操作に基づいて境界線を設定する場合に、ノードに境界線が位置するように境界線を設定するのは極めて煩雑な作業となっていた。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、管理者がリンクやノードを考慮せずにエリアの境界線を設定した場合であっても、境界線がノードに位置するように修正したエリアを地図画像上に設定することを可能にした地図エリア設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明に係る第1の地図エリア設定装置は、地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得する境界線取得手段と、前記境界線と前記地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得する交点取得手段と、前記複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択するノード選択手段と、前記エリアを前記複数の交点毎に選択された前記ノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正するエリア修正手段と、を有し、前記ノード選択手段は、隣接する交点で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過するノードを優先して選択する。
尚、「地図画像に含まれるリンク」とは、地図画像に含まれていればディスプレイ等に表示対象となっているか否かは問わない。例えば地図画像が所定縮尺以上である場合のみ表示対象となるリンクであっても良い。
また、「同じ道路種別」とは、同じ道路名や路線番号(例えば国道1号)の道路であっても良いし、同じ区分(規格)の道路(例えば高速道路、国道)であっても良い。
【0008】
また、本発明に係る第2の地図エリア設定装置は、地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得する境界線取得手段と、前記境界線と前記地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得する交点取得手段と、前記複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択するノード選択手段と、前記エリアを前記複数の交点毎に選択された前記ノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正するエリア修正手段と、を有し、前記ノード選択手段は、前記複数の交点毎に選択された前記ノードを繋いだ線の形状が直線形状に近くなるノードを優先して選択する。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する本発明に係る第1の地図エリア設定装置及び第2の地図エリア設定装置によれば、管理者がリンクやノードを考慮せずにエリアの境界線を設定した場合であっても、境界線がノードに位置するように修正したエリアを地図画像上に設定することが可能となる。その結果、人や車が意図せず設定したエリア内へと侵入することを防止できる。また、第1の地図エリア設定装置では同じ道路種別を通過するノードを優先して境界線に位置するようにするので、できる限り道路に沿った境界線からなるエリアとすることが可能となる。また、第2の地図エリア設定装置では繋いだ線の形状が直線形状に近くなるノードを優先して境界線に位置するようにするので、できる限りエリアが歪な形状となることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るジオフェンスシステムを示した概略構成図である。
図2】管理サーバ装置と管理サーバ装置を管理する管理者を示した模式図である。
図3】本実施形態に係る管理サーバ装置の構成を示したブロック図である。
図4】登録情報DBに記憶される登録情報の一例を示した図である。
図5】本実施形態に係るジオフェンス設定処理プログラムのフローチャートである。
図6】管理者がジオフェンスを設定する際の操作方法について説明した図である。
図7】道路種別に基づく優先度の算出方法を説明した図である。
図8】ノード間を繋ぐ線分がなす角に基づく優先度の算出方法を説明した図である。
図9】交点までの距離に基づく優先度の算出方法を説明した図である。
図10】ジオフェンスの修正例を示した図である。
図11】従来技術の問題点について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る地図エリア設定装置について管理サーバ装置1に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る管理サーバ装置1を含むジオフェンスシステム2の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るジオフェンスシステム2を示した概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るジオフェンスシステム2は、情報管理センタ3が備える管理サーバ装置1と、ユーザ4が所持する通信端末5と、を基本的に有する。また、管理サーバ装置1と通信端末5は通信ネットワーク網6を介して互いに電子データを送受信可能に構成されている。尚、通信端末5としては例えば携帯電話機、スマートフォン、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ、車載器であるナビゲーション装置等がある。また、以下の説明ではユーザ4は車両で移動していることを前提とするが、車両以外の移動手段で移動しても良いし、徒歩で移動或いは移動せずいずれかの地点に滞在している状態であっても良い。
【0013】
管理サーバ装置1は、ジオフェンスシステム2においてジオフェンスの設定や設定されたジオフェンスに関する情報の送受信等を管理するサーバ装置であり、図2に示すように管理サーバ装置1を管理する管理者(操作者)7によって操作される。
【0014】
ここで、図2に示すようにジオフェンス8は地図画像9上において仮想的な境界線で囲まれたエリアが該当する。例えば災害発生時において被災地の危険地域にジオフェンス8を設定することで、ジオフェンス8に侵入した人や車に対して危険地域であることを通知することが可能となる。或いは、電気自動車のみに走行が制限された地域にジオフェンス8を設定することで、車両のナビゲーション装置において表示される地図画像にジオフェンス8を表示したり、ジオフェンス8に侵入した電気自動車以外の車に対して退出を求めるように通知したり、ハイブリッド車両ではEV走行への切り替え制御を行わせることなどが可能である。そして、本実施形態では管理サーバ装置1において管理者7の操作に基づいて後述のようにジオフェンス8の設定を行う。ジオフェンス8の設定の詳細については後述する。
【0015】
また、管理サーバ装置1は管理者7によって設定されたジオフェンス8を特定する情報をDB等に格納し、必要に応じて通信ネットワーク網6を介して通信端末5(ユーザ)に対して提供(配信)する。
【0016】
一方、通信端末5は、ユーザ4が所持し、現在位置を検出する機能や周辺の地図情報を表示したり設定された目的地までの移動案内を行うナビ機能を備えた情報端末が用いられ、例えば携帯電話機、スマートフォン、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ、車載器であるナビゲーション装置等が該当する。特に通信端末5がスマートフォン等のアプリケーションを実行可能な端末である場合には、アプリケーションの一つとして前述のジオフェンス8に関する情報やその他のユーザにとって有益な各種情報の提供を受けることが可能となるアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0017】
例えば、通信端末5では管理サーバ装置1からジオフェンス8を特定する情報を受信すると、通信端末5において表示される地図画像にジオフェンス8を表示したり、ジオフェンス8に侵入した場合には侵入したことに対する通知を行うことが可能である。また、ナビ機能において目的地までの経路探索を行う場合に、ジオフェンス8を避けた(ジオフェンス8内を通過しない)経路を探索することも可能である。また、ジオフェンス8が電気自動車のみに走行が制限された地域であって、車両がEV走行の可能なハイブリッド車両である場合についてはジオフェンス8に侵入した際に車両側のECUに信号を送信し、EV走行への切り替え制御を行わせることも可能である。
尚、これらのジオフェンス8に関する情報の提供を受ける機能は、目的地までの移動案内を行うナビ機能の一部としても良いし、ナビ機能とは異なるアプリケーションプログラムにより実行されても良い。
【0018】
また、通信ネットワーク網6は全国各地に配置された多数の基地局と、各基地局を管理及び制御する通信会社とを含み、基地局及び通信会社を有線(光ファイバー、ISDN等)又は無線で互いに接続することにより構成されている。ここで、基地局は通信端末5との通信をするトランシーバー(送受信機)とアンテナを有する。そして、基地局は通信会社の間で無線通信を行う一方、通信ネットワーク網6の末端となり、基地局の電波が届く範囲(セル)にある通信端末5の通信を管理サーバ装置1との間で中継する役割を持つ。
【0019】
続いて、ジオフェンスシステム2が有する管理サーバ装置1の構成について図3を用いてより詳細に説明する。図3は本実施形態に係る管理サーバ装置1の構成を示したブロック図である。
【0020】
管理サーバ装置1は、図3に示すようにサーバ制御部11と、サーバ制御部11に接続された情報記録手段としての地図情報DB12と、登録情報DB13と、ディスプレイ14と、操作部15と、センタ通信装置16と、を基本的に有する。
【0021】
サーバ制御部11は、管理サーバ装置1の全体の制御を行う制御ユニット(MCU、MPU等)であり、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラムのほか、後述のジオフェンス設定処理プログラム(図5)等が記録されたROM23、ROM23から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ24等の内部記憶装置を備えている。尚、サーバ制御部11は処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、境界線取得手段は、地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得する。交点取得手段は、境界線と地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得する。ノード選択手段は、複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択する。エリア修正手段は、エリアを複数の交点毎に選択されたノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正する。
【0022】
一方、地図情報DB12は、地図情報が記憶される記憶手段である。地図情報は、道路網を始めとして経路探索、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されている。例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ25、ノード点に関するノードデータ26、各交差点に関する交差点データ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等からなる。
【0023】
また、リンクデータ25としては、道路ネットワークを構成する各リンクに関してリンクの属する道路の幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線毎の進行方向の通行区分、対向車線の有無(対面通行区間か否か)、中央分離帯の有無、幅員の狭くなる箇所、踏切り等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、高速道路と一般道(国道、県道、細街路等)を表すデータがそれぞれ記録される。
【0024】
また、ノードデータ26としては、実際の道路の分岐点(交差点、T字路等も含む)や各道路に曲率半径等に応じて所定の距離毎に設定されたノード点の座標(位置)、ノードが交差点に対応するノードであるか等を表すノード属性、ノードに接続するリンクのリンク番号のリストである接続リンク番号リスト、ノードにリンクを介して隣接するノードのノード番号のリストである隣接ノード番号リスト、各ノード点の高さ(高度)等に関するデータ等が記録される。
【0025】
但し、上記地図情報DB12については管理サーバ装置1が有するのではなく、通信可能にある他の外部のサーバが備えていても良い。その場合には、必要に応じて管理サーバ装置1は地図情報を外部のサーバから通信で取得するようにする。
【0026】
一方で、登録情報DB13は、管理サーバ装置1において現在設定されているジオフェンス8に関する情報が登録される記憶手段である。ここで、ジオフェンス8は後述のように管理サーバ装置1を管理する管理者7が管理サーバ装置1の操作部15の操作を行うことによって設定される。但し、管理者7の操作ではなく外部から入力された情報に基づいて設定するようにしても良い。
【0027】
図4は登録情報DB13に記憶される登録情報の一例を示した図である。図4に示すように登録情報DB13には、ジオフェンス8を設定した日時と、ジオフェンス8の種類と、ジオフェンス8の範囲を特定する情報とを含む。ここで、ジオフェンス8の種類はジオフェンス8がどのようなエリアかを示す情報であり、例えば災害発生時において被災地の危険地域に設定したジオフェンス8は『危険地域』となる。また、電気自動車のみに走行が制限された地域に設定したジオフェンス8は『EV制限』となる。また、ジオフェンス8の範囲を特定する情報としては、例えば境界線の座標点(各座標点を繋げたものが境界線となる)であっても良いし、境界線がリンクである場合にはリンク番号であっても良い。
【0028】
但し、登録情報DB13には上記全ての情報を登録する必要は無く、例えばジオフェンス8の範囲を特定する情報のみを格納しても良い。
【0029】
また、ディスプレイ14は、管理サーバ装置1において出力される情報を表示する為の表示装置であり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等が用いられる。特に本実施形態では、ジオフェンス8の設定を行う際に地図画像が表示される。そして、管理サーバ装置1の管理者7はディスプレイ14に表示された地図画像を用いて、ジオフェンス8として設定するエリアを指定することが可能となる。詳細については後述する。
【0030】
また、操作部15は、管理者7によってジオフェンス8の設定を行う際等に操作され、例えばキーボードやマウス等から構成される。そして、サーバ制御部11は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部15はディスプレイ14の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0031】
また、センタ通信装置16は、通信端末5やVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の外部の交通情報センタと通信ネットワーク網6を介して通信を行う為の通信装置である。本実施形態では、センタ通信装置16を介してジオフェンス8に関する情報を通信端末5へと配信する。
【0032】
続いて、前記構成を有するジオフェンスシステム2において管理サーバ装置1が実行するジオフェンス設定処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係るジオフェンス設定処理プログラムのフローチャートである。ここで、ジオフェンス設定処理プログラムは管理サーバ装置1においてジオフェンス8の設定を開始する為の所定の操作を受け付けた後に実行され、管理者7の操作に基づいてジオフェンス8の設定を行うプログラムである。尚、以下の図5にフローチャートで示されるプログラムは、管理サーバ装置1が備えているRAM22やROM23等に記憶されており、CPU21により実行される。
【0033】
先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU21は、地図情報DB12から地図情報を読み出してディスプレイ14に対して地図画像を表示する。尚、表示対象とする地図画像のエリアや表示縮尺については管理者7の操作により適宜変更可能である。また、地図情報については通信可能にある外部のサーバから取得するようにしても良い。
【0034】
次に、S2においてCPU21は、管理者7によってジオフェンス8の境界線を指定する操作を受け付けたか否かを判定する。ここで、ジオフェンス8の境界線を指定する操作は、例えば図6に示すようにマウスのポインタ31を用いて地図画像9上に境界線32を描画する操作とする。他の操作としてはタッチパネルを用いて同様に地図画像9上に境界線32を描画する操作としても良い。また、管理者7が地図画像9上で任意の複数の点を指定する操作であっても良い。任意の複数の点を指定した場合には指定した点を頂点とした多角形が境界線32として描画されるようにする。
【0035】
そして、管理者7によってジオフェンス8の境界線を指定する操作を受け付けたと判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。それに対して、管理者7によってジオフェンス8の境界線を指定する操作を受け付けていないと判定された場合(S2:NO)には、当該ジオフェンス設定処理プログラムを終了する。
【0036】
S3においてCPU21は、受け付けた操作に基づいて地図画像上に設定されたジオフェンス8の境界線を取得する。例えば図6に示すようにマウスのポインタ31を用いて地図画像9上に境界線32を描画する操作を受け付けた場合には、描画された境界線32を地図画像上に設定されたジオフェンス8の境界線として取得する。尚、前記S3で取得されたジオフェンス8の境界線は仮の境界線であり、その後に必要に応じて修正される(S13)。
【0037】
続いて、S4においてCPU21は、前記S3で取得された境界線とディスプレイ14で表示されている地図画像とを照合し、前記S3で取得された境界線と交わる地図画像に含まれるリンク(以下、交差リンクという)と、境界線と交差リンクとの交点とを取得する。尚、“地図画像に含まれるリンク”とはディスプレイ14で表示対象になっているリンクか否かは問わない。即ち、一般的に地図画像では縮尺によって表示対象となるリンクが変化し、一部の高規格道路を除けば所定縮尺以上でのみ表示対象となるリンクが存在する。前記S4では、前記S2で境界線を指定する操作を受け付けたと判定された時点においてディスプレイ14で表示対象となっていないリンクであっても境界線と交わる位置にあれば交差リンクの対象としても良い。一方、前記S2で境界線を指定する操作を受け付けたと判定された時点においてディスプレイ14で表示対象となっているリンクのみに交差リンクの対象を限定しても良い。
【0038】
以下のS5~S12の処理は前記S4で取得された交点毎に行う。例えば、前記S3で取得された境界線に沿って時計回り(或いは反時計回り)に処理対象とする交点を切り替え、前記S4で取得された全ての交点を対象としてS5~S12の処理が行われた後にS13へと移行する。但し、交点がノードにある場合についてはその交点についてはS5~S11の処理は不要であり、S12で交点が位置するノードを選択するようにする。
【0039】
先ず、S5においてCPU21は、処理対象の交点を含む交差リンクの両端に位置するノード(交差リンクの始点及び終点)を地図情報から取得する。
【0040】
更に以下のS6~S11の処理は前記S5で取得されたノード毎に行う。そして、前記S5で取得された全てのノード(交差リンクの始点及び終点)を対象としてS6~S11の処理が行われた後にS12へと移行する。
【0041】
S6においてCPU21は、処理対象のノードが、隣接する交点を対象にしてS12で既に選択されているノードと同じ道路種別の道路を通過しているか否かを判定する。ここで、前述したようにS5~S12の処理は前記S3で取得された境界線に沿って時計回り(或いは反時計回りに)に処理対象とする交点が切り替わる。そして、隣接する交点とは前回の処理で処理対象となった交点とする。例えば図7に示す例では前記S3で取得された境界線32と交差リンクが交わる交点としてP、Q、Rがあって、P→Q→Rの順にS5~S12の処理が実行される。従って、前記S6で処理対象となるノードが交点Qを含む交差リンクの両端に位置するQ1、Q2である場合には、Q1及びQ2が交点Pを対象にしてS12で選択されたノードと同じ道路種別を通過しているか否かを判定することとなる。例えば、交点Pを対象とした処理でノードP1が選択されていたとすると、ノードQ1はP1と同じ道路種別の道路を通過しているのでYESと判定される。一方、ノードQ2はP1と同じ道路種別の道路を通過していないのでNOと判定される。
【0042】
そして、処理対象のノードが、隣接する交点を対象にしてS12で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過していると判定された場合(S6:YES)には、処理対象のノードに対して紐づけられた道路種別フラグをONする(S7)。それに対して処理対象のノードが、隣接する交点を対象にしてS12で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過していないと判定された場合(S6:NO)には、処理対象のノードに対して紐づけられた道路種別フラグをOFFする(S8)。
【0043】
続いてS9においてCPU21は、処理対象のノードが、周辺の交点を対象にしてS12で既に選択されているノード間を繋ぐ線分同士のなす角を算出する。ここで、前述したようにS5~S12の処理は前記S3で取得された境界線に沿って時計回り(或いは反時計回りに)に処理対象とする交点が切り替わる。そして、周辺の交点とは前回及び前々回の処理で処理対象となった交点とする。例えば図8に示す例では前記S3で取得された境界線32と交差リンクが交わる交点としてP、Q、Rがあって、P→Q→Rの順にS5~S12の処理が実行される。従って、例えば交点Pに対する処理でP1が選択され、交点Qに対する処理でQ1が選択されている状態では、前記S9で処理対象となるノードがR1である場合にはP1とQ1を繋ぐ線分とP1とR1を繋ぐ線分とのなす角度θ1が算出される。一方、前記S9で処理対象となるノードがR2である場合にはP1とQ1を繋ぐ線分とP1とR2を繋ぐ線分とのなす角度θ2が算出される。
【0044】
その後、S10においてCPU21は、交点から処理対象のノードまでの距離を算出する。例えば図9に示すように前記S10で処理対象となるノードがR1である場合には、交点RからノードR1までの距離L1が算出される。一方、前記S10で処理対象となるノードがR2である場合には、交点RからノードR2までの距離L2が算出される。
【0045】
次にS11においてCPU21は、処理対象のノードについてジオフェンス8の境界線の通過対象として選択する優先度を算出する。具体的には以下の式(1)により算出する。
優先度=道路種別フラグ×道路係数+(1/なす角)×なす角係数+(1/交点までの距離)×距離係数・・・・(1)
ここで、“道路係数”、“なす角係数”、“距離係数”は上記優先度を算出する際に道路種別と角度と距離のどれを優先するかを調整する為の係数である。例えば道路種別を優先する場合には“道路係数”を他の係数より大きくし、角度を優先する場合には“なす角係数”を他の係数より大きくし、距離を優先する場合には“距離係数”を他の係数より大きくする。
【0046】
また、上記式(1)の『道路種別フラグ』は前記S7で道路種別フラグがONされていれば『1』とし、前記S8で道路種別フラグがOFFされていれば『0』とする。従って、隣接する交点で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過するノードについてより高い優先度が算出されることとなる。
また、上記式(1)の『なす角』は前記S9で算出された角度(rad)とする。従って、複数の交点毎に選択されたノードを繋いだ線の形状が直線形状に近くなる(ノード間を繋いだ線分同士のなす角が小さくなる)ノードについてより高い優先度が算出されることとなる。
また、上記式(1)の『交点までの距離』は前記S10で算出された距離(m)とする。従って、交点に対して近い位置にあるノードについてより高い優先度が算出されることとなる。
【0047】
そして、前記S5で取得された全てのノード(交差リンクの始点及び終点)を対象として優先度が算出された後にS12へと移行する。
【0048】
S12においてCPU21は、前記S5で取得されたノードについて前記S11で算出された優先度を比較し、交差リンクの始点及び終点に対応するノードの内でより優先度が高いノードをジオフェンス8の境界線の通過対象として選択する。
【0049】
そして、前記S4で取得された全ての交点を対象として前記S12のノードの選択が行われた後にS13へと移行する。
【0050】
S13においてCPU21は、前記S4で取得された各交点を対象にして前記S12で選択されたノードを順に繋いだ線を境界線とし、該境界線によって囲まれるエリアを新たなジオフェンス8として設定する。尚、繋ぐ順序は前記S5~S12の処理を行った交点の順とする。また、繋ぐ対象となるノード間がリンクで繋がっていれば該リンクに沿って繋ぐこととし、一方でノード間がリンクで繋がっていなければ最短距離で繋ぐこととする。
【0051】
尚、前記S13で新たに設定されるジオフェンス8は前記S3で最初に仮設定されたジオフェンス8から修正される。具体的には図10に示すように修正前のジオフェンス8は管理者が任意に指定したエリアであるので必ずしも境界線32がノード上に位置するとは限らずリンク途中に位置する場合もある。一方、修正後のジオフェンス8はノード間を繋いだ境界線32によって囲まれるエリアとなるので、基本的に境界線32がノード上に位置することとなりリンク途中に位置することがない。従って、図11に示すように人や車が意図せずにジオフェンス8内へと侵入することを防止できる。
【0052】
その後、管理サーバ装置1は、前記S13で最終的に修正されて設定されたジオフェンス8を特定する情報を登録情報DB13(図4)に格納し、必要に応じて通信ネットワーク網6を介して通信端末5(ユーザ)に対して提供(配信)する。
【0053】
一方、通信端末5では管理サーバ装置1からジオフェンス8を特定する情報を受信すると、通信端末5において表示される地図画像にジオフェンス8を表示したり、ジオフェンス8に侵入した場合には侵入したことに対する通知を行うことが可能である。また、ナビ機能において目的地までの経路探索を行う場合に、ジオフェンス8を避けた(ジオフェンス8内を通過しない)経路を探索することも可能である。また、ジオフェンス8が電気自動車のみに走行が制限された地域であって、車両がEV走行の可能なハイブリッド車両である場合についてはジオフェンス8に侵入した際に車両側のECUに信号を送信し、EV走行への切り替え制御を行わせることも可能である。
【0054】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る管理サーバ装置1、ジオフェンスシステム2及び管理サーバ装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得し(S3)、境界線と地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得し(S4)、複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択し(S5~S12)、複数の交点毎に選択されたノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正する(S13)とともに、特にノードの選択では隣接する交点で選択されたノードと同じ道路種別の道路を通過するノードを優先して選択する(S11、S12)ので、管理者がリンクやノードを考慮せずにエリアの境界線を設定した場合であっても、境界線がノードに位置するように修正したエリアを地図画像上に設定することが可能となる。その結果、人や車が意図せず設定したエリア内へと侵入することを防止できる。更に、同じ道路種別を通過するノードを優先して境界線に位置するようにするので、できる限り道路に沿った境界線からなるエリアとすることが可能となる。
また、地図画像上に設定されたエリアの境界線を取得し(S3)、境界線と地図画像に含まれるリンクとの交点を複数取得し(S4)、複数の交点毎に該交点を含むリンクの両端にあるノードのいずれか一方を選択し(S5~S12)、複数の交点毎に選択されたノードを通過する線を境界線とした新たなエリアへと修正する(S13)とともに、特にノードの選択では複数の交点毎に選択されたノードを繋いだ線の形状が直線形状に近くなるノードを優先して選択する(S11、S12)ので、管理者がリンクやノードを考慮せずにエリアの境界線を設定した場合であっても、境界線がノードに位置するように修正したエリアを地図画像上に設定することが可能となる。更に、は繋いだ線の形状が直線形状に近くなるノードを優先して境界線に位置するようにするので、できる限りエリアが歪な形状となることを防止できる。
また、複数の交点毎に該交点に対して近い位置にあるノードを優先して選択するので、境界線がノードに位置するようにエリアを修正するとともに、できる限り管理者が最初に設定した形状に近づけることが可能となる。
また、表示された地図画像上で操作者の操作に基づいてエリアの境界線を指定し、指定された境界線をエリアの境界線として取得する(S3)ので、操作者の操作に基づいて操作者が希望するエリアを容易に設定することが可能となる。
【0055】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では特にジオフェンスを設定する例を説明したが、地図画像上に設定するエリアであれば特にジオフェンスに限られない。
【0056】
また、本実施形態では前記S3において最初に管理者がジオフェンスを設定する操作を行う場合に、ディスプレイ14に地図画像を表示して表示した地図画像上でジオフェンスの設定を行っているが、ジオフェンスを設定する際に地図画像は必ずしも表示する必要はない。例えば、緯度経度や地名を入力することで該当するエリアにジオフェンスを設定しても良い。また、前記S3では管理者の操作に基づいてジオフェンスを設定するのではなく、外部から入力されたデータに基づいてジオフェンスの設定を行っても良い。例えば外部の災害を管理するサーバから災害の発生地点が入力された場合に、発生地点の周囲1km内をジオフェンスに設定することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…管理サーバ装置、2…ジオフェンスシステム、3…情報管理センタ、4…ユーザ、5…通信端末、6…通信ネットワーク網、7…管理者、8…ジオフェンス。9…地図画像、11…サーバ制御部、12…地図情報DB、13…登録情報DB、14…ディスプレイ、15…操作部、32…境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11