(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142574
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】走行路保護マット
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20241003BHJP
E02D 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E01C9/08 Z
E02D3/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054762
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業「河道閉塞対応に必要な建設ロボットシステム」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】久保田 恭行
【テーマコード(参考)】
2D043
2D051
【Fターム(参考)】
2D043CA20
2D051AA09
2D051AE04
2D051AG11
2D051AG13
(57)【要約】
【課題】軟弱地盤上に走行路を確保することができると共に、敷設作業の作業性及び運搬性を向上させる。
【解決手段】走行路保護マット(10)は、軟弱地盤上に走行路を確保するために使用される。走行路保護マットには、軟弱地盤上に敷設されるマット(11)と、マットに設けられた複数の芯材(12)と、が設けられている。複数の芯材が並列に並べられており、複数の芯材の並び方向に巻き畳み可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤上に走行路を確保する走行路保護マットであって、
前記軟弱地盤上に敷設されるマットと、
前記マットに設けられた複数の芯材と、を備え、
前記複数の芯材が並列に並べられており、
前記複数の芯材の並び方向に巻き畳み可能であることを特徴とする走行路保護マット。
【請求項2】
前記マットには並列に並んだ複数の筒状袋部が形成され、
前記複数の筒状袋部の一端が、前記複数の芯材を出し入れ可能に開放されていることを特徴とする請求項1に記載の走行路保護マット。
【請求項3】
前記走行路の幅方向と平行に前記複数の芯材が並列に並べられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行路保護マット。
【請求項4】
前記複数の芯材が中空管状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行路保護マット。
【請求項5】
前記複数の芯材が樹脂製の円形パイプであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行路保護マット。
【請求項6】
前記複数の芯材には大径の芯材と小径の芯材が含まれており、
前記大径の芯材の間に前記小径の芯材が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行路保護マット。
【請求項7】
前記複数の芯材のそれぞれが、1列に並べられた複数の球体よって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行路保護マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路保護マットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、柔らかい粘土や緩い砂等から成る軟弱地盤では、建設機械等を走行させるために軟弱地盤上に複数枚の敷板を敷き並べて走行路が確保されている。敷板として鉄製敷板が用いられることがあるが、鉄製敷板は1枚当たりの重量が大きく取り扱いが困難である。必要枚数の鉄製敷板を現場まで運搬するのに大型車両が必要になると共に、鉄製敷板の敷設作業にクレーン等の重機が必要になってコストが増加する。また、鉄製敷板と比べて軽量で取り扱いが容易な樹脂製敷板も提案されており(例えば、特許文献1参照)、手作業によって軟弱地盤上に敷板を敷くことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂製敷板を敷設する際には、樹脂製敷板を軟弱地盤上に敷いて足場を確保した後で、次の樹脂製敷板を軟弱地盤上に敷かなければならず作業性が悪い。敷板同士が連結していなければ、片方の敷板のみに荷重が作用したときに、片方の敷板のみが沈み込んで隣り合う敷板に高低差が生じて走行し難くなる。また、樹脂製敷板によって軽量化が図られているものの、多数の敷板を重ねて運搬しなければならず、運搬性のさらなる向上が求められている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、軟弱地盤上に走行路を確保することができると共に、敷設作業の作業性及び運搬性を向上させることができる走行路保護マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の走行路保護マットは、軟弱地盤上に走行路を確保する走行路保護マットであって、前記軟弱地盤上に敷設されるマットと、前記マットに設けられた複数の芯材と、を備え、前記複数の芯材が並列に並べられており、前記複数の芯材の並び方向に巻き畳み可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の走行路保護マットは、軟弱地盤上に走行路保護マットが敷かれることで、走行路保護マット上に建設機械等が走行しても、マットや複数の芯材によって広範囲に荷重が分散されて建設機械等の沈み込みが抑えられる。マットは走行方向(延在方向)に連続しているため、走行方向(延在方向)の高低差が生じ難くなって走行性が確保される。また、走行路保護マットをロール状にして容易に持ち運ぶことができ、ロール状の走行路保護マットを転がすことで軟弱地盤上に走行路保護マットを容易に敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の走行路保護マットの上面模式図である。
【
図2】本実施形態の走行路保護マットの側面模式図である。
【
図3】本実施形態の走行路保護マットの敷設作業及び建設機械の走行状態の説明図である。
【
図4】変形例1の走行路保護マットの側面模式図である。
【
図5】変形例2の走行路保護マットの上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の走行路保護マットについて説明する。
図1は、本実施形態の走行路保護マットの上面模式図である。
図2は、本実施形態の走行路保護マットの側面模式図である。
【0010】
近年、地震や台風等の自然災害によって地盤が軟弱になることがあり、このような軟弱地盤上で建設機械を用いた災害対応することが求められている。軟弱地盤上で建設機械を走行させるためには軟弱地盤上に多数の敷板を敷設する必要がある。敷板の敷設時には足場を作りながら1枚ずつ軟弱地盤上に敷板を敷かなければならず、敷板の運搬時には多数の敷板を積み重ねて運ばなければならない。このため、本実施形態では、敷板に代えて走行路保護マット10によって軟弱地盤上に走行路が確保されて、建設機械の走行前の敷設作業の作業性及び走行路保護マット10の運搬性が向上されている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、走行路保護マット10には、軟弱地盤上に敷設されるマット11と、マット11に設けられた複数の芯材12と、が設けられている。マット11は、ポリエステル等の合成繊維織布から成る上面視矩形状の表布13と裏布14を接着して形成されている。表布13と裏布14の走行路の延在方向と平行な一辺を除いた三辺が接着され、走行路の幅方向と平行な複数の直線箇所18で表布13と裏布14が接着されている。表布13と裏布14の接着によってマット11には並列に並んだ複数の筒状袋部15が形成されている。複数の筒状袋部15の一端は未接着で複数の芯材12を出し入れ可能に開放されている。
【0012】
表布13及び裏布14の一辺には等間隔に複数のハトメ金具16が取り付けられている。複数のハトメ金具16には通し紐17が通されており、通し紐17を締めることによって複数の筒状袋部15の一端が閉じられる。複数の筒状袋部15に複数の芯材12が挿入されることで、複数の芯材12が走行路の幅方向と平行に並べられている。複数の芯材12は、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の円形パイプによって形成されている。複数の芯材12によって建設機械が受け止められ、複数の芯材12とマット11によって建設機械の荷重が軟弱地盤上で広範囲に分散されて建設機械の沈み込みが抑えられている。
【0013】
複数の芯材12はマット11の骨組みとして機能しており、建設機械の履帯等へのマット11の巻き込みが抑えられている。走行路保護マット10上に建設機械が乗り上げることで、複数の芯材12の下部が軟弱地盤に埋もれるため、建設機械が走行路保護マット10上を走行しても軟弱地盤に対する走行路保護マット10の位置ズレが抑えられている。複数の芯材12が中空管状に形成されており、走行路保護マット10の軽量化が図られて持ち運び易くなっている。また、建設機械が走行路保護マット10上を走行して芯材12とマット11が摺接しても、芯材12の外周面が円形であるためマット11が摩耗し難くなっている。
【0014】
上記したように、複数の筒状袋部15の一端から複数の芯材12が出し入れ可能であり、管径や材質が異なる芯材12に容易に変更することができる他、芯材12の本数やピッチを容易に変更することができる。大径の芯材12を使用したり、金属製の芯材12を使用したりすることで芯材12の剛性が高められる。また、芯材12の本数を増やしたり、芯材12のピッチを狭めたりすることで芯材12に対する集中荷重が抑えられる。軟弱地盤の状態に合わせて、芯材12の管径、材質、本数、ピッチを変更することで、芯材12の撓みが抑えられて軟弱地盤上での建設機械の沈み込みが低減される。
【0015】
走行路保護マット10は複数の芯材12の並び方向にロール状に巻き畳み可能になっている。走行路保護マット10がロール状に巻き畳まれることで、走行路保護マット10を容易に持ち運ぶことができ運搬性が向上されている。また、ロール状の走行路保護マット10が軟弱地盤上で転がされることで、軟弱地盤上に走行路保護マット10が広げられて走行路保護マット10の敷設作業の作業性が向上されている(
図3参照)。なお、ロール状の走行路保護マット10が手作業によって転がされて軟弱地盤上に敷設されてもよいし、ロール状の走行路保護マット10が建設機械に押し転がされて軟弱地盤上に敷設されてもよい。
【0016】
走行路の幅方向と平行に複数の芯材12が並べられているため、走行路保護マット10がロール状に巻き畳まれても全長が長くなり過ぎることがない。車両等によって走行路保護マット10を運搬する際に、荷台からの走行路保護マット10のはみ出しが抑えられて運搬し易くなっている。軟弱地盤上に走行路保護マット10が敷設された状態では、複数の芯材12が走行路の延在方向に並んでいる(
図1参照)。複数の芯材12によって建設機械が受け止められるため、1つの芯材12への集中荷重や芯材12の局所的な撓みが抑えられている。また、複数の芯材12の間に建設機械の履帯が落ち込むことが防止されている。
【0017】
複数の芯材12が建設機械の車幅よりも長く形成され、マット11の横幅が建設機械の車幅よりも広く形成されている。走行路保護マット10によって十分な走行幅が確保されて、建設機械が走行路保護マット10上を走行しても、走行路保護マット10から建設機械の履帯が外れることが抑えられている。複数の芯材12が長く形成され、マット11の横幅が広く形成されることで、建設機械の荷重が軟弱地盤上で車幅方向にも広く分散されている。また、複数の芯材12の間隔(ピッチ)は、複数の芯材12が建設機械の履帯に接するように、履帯接地長よりも小さく形成されている。
【0018】
次に、走行路保護マットの敷設作業について説明する。
図3は、本実施形態の走行路保護マットの敷設作業及び建設機械の走行状態の説明図である。なお、
図3(A)、(B)は走行路保護マットの敷設作業中を示す図である。
図3(C)は建設機械の走行状態を示す図である。
【0019】
図3(A)に示すように、走行路保護マット10の敷設作業時には、軟弱地盤G上の走行予定地の手前にロール状の走行路保護マット10が置かれて、作業者Uの手作業によって走行路保護マット10が転がされながら軟弱地盤G上に広げられる。ロール状の走行路保護マット10が軟弱地盤G上で転がされた分だけ、軟弱地盤G上には走行路保護マット10によって作業者Uの足場が作られる。このため、作業者Uは軟弱地盤G上に敷かれた走行路保護マット10に乗りながら、未敷設の走行路保護マット10のロール部分を転がして軟弱地盤G上の走行予定地に走行路保護マット10を効率的に敷設することができる。
【0020】
図3(B)に示すように、軟弱地盤G上に1つの走行路保護マット10が敷設されると、次の走行路保護マット10が軟弱地盤G上に敷設される。この場合、敷設済みの走行路保護マット10の先端側に未敷設の走行路保護マット10の後端側が部分的に重ねられて、未敷設のロール状の走行路保護マット10が軟弱地盤G上の走行予定地で転がされて敷設される。敷設済みの走行路保護マット10の芯材12の間に未敷設の走行路保護マット10の芯材12が入り込むことで、敷設済みの走行路保護マット10と未敷設の走行路保護マット10が連結される。2つの走行路保護マット10の連結にネジ等の固定部材が不要となり、走行路保護マット10の敷設作業の作業性が向上されている。
【0021】
図3(C)に示すように、軟弱地盤Gへの複数の走行路保護マット10の敷設作業が終了すると、走行路保護マット10によって軟弱地盤G上に建設機械40の走行路が形成される。走行路保護マット10上に建設機械40が乗り上げると、複数の芯材12によって建設機械40の履帯41が受け止められる。建設機械40の荷重が複数の芯材12及びマット11によって軟弱地盤G上で広範囲に分散されて建設機械40の沈み込みが抑えられている。また、走行路保護マット10は走行方向(延在方向)に連続しているため、走行路保護マット10の走行方向(延在方向)の高低差が小さくなって走行性が向上される。
【0022】
ここで、軟弱地盤を再現した実験フィールドを造成して、何も敷設しない軟弱地盤上、軟弱地盤に敷設した敷板上、軟弱地盤に敷設した走行路保護マット上でのバックホウの沈下量を測定した。掘削した地面に10[cm]角の立方体のウレタンスポンジをランダムに設置して、バックホウを最低地上高だけ沈み込ませる状態を作り出して軟弱地盤を再現した。バックホウのコックピットにGNSS(Global Navigation Satellite System)受信器を取り付けて、バックホウに軟弱地盤上、敷板上、走行路保護マット上を走行させてバックホウの走行中の高さ変位を測定した。
【0023】
なお、敷板としては長さ1000[mm]、幅2000[mm]、厚み13[mm]の樹脂製敷板を用い、ウレタンスポンジ上に2枚の樹脂製敷板を敷設して、樹脂製敷板上をバックホウに走行させた。また、走行路保護マットとしては長さ1300[mm]、幅2100[mm]のマットにポリ塩化ビニル製の管径50[mm]の5本の円形パイプを挿し込んだものを用い、ウレタンスポンジ上に走行路保護マットを敷設して、走行路保護マット上をバックホウに走行させた。バックホウとしてはキャタピラージャパン株式会社製のCAT303のゴムパット仕様を用いた。
【0024】
未敷設の軟弱地盤上ではバックホウの沈下量が47.8[cm]となり、樹脂製敷板上ではバックホウの沈下量が30.3[cm]となり、走行路保護マット上ではバックホウの沈下量が33.4[cm]となった。また、樹脂製敷板上又は走行路保護マット上のバックホウの地下量をA、未敷設の軟弱地盤上のバックホウの地下量をBとし、次式(1)から沈下量低減率を求めたところ、樹脂製敷板の沈下量低減率が36.6[%]、走行路保護マットの沈下量低減率が30.1[%]となった。走行路保護マットでも樹脂製敷板と同様にバックホウの沈下量の低減効果が確認された。
(1)
沈下量低減率=(B-A)/B×100
【0025】
以上のように、本実施形態の走行路保護マット10によれば、軟弱地盤上に走行路保護マット10が敷かれることで、走行路保護マット10上に建設機械等が走行しても、マット11や複数の芯材12によって広範囲に荷重が分散されて建設機械等の沈み込みが抑えられる。走行路保護マット10は走行方向(延在方向)に連続しているため、走行路保護マット10の走行方向(延在方向)に高低差が生じ難くなって走行性が確保される。また、走行路保護マット10をロール状にして容易に持ち運ぶことができ、ロール状の走行路保護マット10を転がすことで軟弱地盤上に走行路保護マット10を容易に敷設することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、走行路保護マットに同一管径の芯材が設けられているが、
図4の変形例1に示すように、走行路保護マット20のマット21に大径の芯材22と小径の芯材23が設けられ、大径の芯材22の間に小径の芯材23が配置されていてもよい。この場合、マット21には大径の筒状袋部25と小径の筒状袋部26が形成され、大径の筒状袋部25に大径の芯材22が収容され、小径の筒状袋部26に小径の芯材23が収容される。これにより、比較的強度の高い大径の芯材22によって建設機械の履帯が支持され、比較的強度の低い小径の芯材23によって車両のタイヤが支持される。大径の芯材22の間に車両のタイヤが入り込んでも、車両が沈み込むことがなく、走行路保護マット20によって建設機械以外の車両も軟弱地盤上を走行することができる。
【0027】
また、本実施形態では、複数の芯材が円形パイプによって形成されているが、
図5の変形例2に示すように、複数の芯材のそれぞれが1列に並べられた複数の球体32よって形成されていてもよい。この場合、マット31の筒状袋部33には複数の球体32が隙間なく詰め込まれている。これにより、マット31内の一部の球体32が破損しても、破損した球体32と新たな球体32を入れ替えて走行路保護マット30を使用し続けることができる。
【0028】
また、本実施形態では、軟弱地盤上に1枚の走行路保護マットが敷設されたが、軟弱地盤上に複数枚の走行路保護マットが重ねられた状態で敷設されてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、複数の芯材として円形パイプが用いられたが、複数の芯材の断面形状は特に限定されない。例えば、複数の芯材の角形パイプによって形成されていてもよいし、複数の芯材は中実に形成されていてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、複数の芯材がマットの複数の筒状袋部に収容されたが、複数の芯材はマットに設けられていればよい。例えば、複数の芯材がマットの表面又は裏面に固定されていてもよい。
【0031】
また、走行路保護マットは軟弱地盤上に敷設されるが、走行路保護マットの一部が硬質地盤上に置かれる場合がある。このような場合には、建設機械が走行路保護マットに乗り上げ易いように、硬質地盤上の芯材はマットから抜き出されていることが望ましい。
【0032】
以上の通り、第1態様は、軟弱地盤(G)上に走行路を確保する走行路保護マット(10、20、30)であって、軟弱地盤上に敷設されるマット(11、21、31)と、マットに設けられた複数の芯材(12、22、23、32)と、を備え、複数の芯材が並列に並べられており、複数の芯材の並び方向に巻き畳み可能である。この構成によれば、軟弱地盤上に走行路保護マットが敷かれることで、走行路保護マット上に建設機械等が走行しても、マットや複数の芯材によって広範囲に荷重が分散されて建設機械等の沈み込みが抑えられる。走行路保護マットは走行方向(延在方向)に連続しているため、走行路保護マットの走行方向(延在方向)に高低差が生じ難くなって走行性が確保される。また、走行路保護マットをロール状にして容易に持ち運ぶことができ、ロール状の走行路保護マットを転がすことで軟弱地盤上に走行路保護マットを容易に敷設することができる。
【0033】
第2態様は、第1態様において、マットには並列に並んだ複数の筒状袋部(15)が形成され、複数の筒状袋部の一端が、複数の芯材を出し入れ可能に開放されている。この構成によれば、軟弱地盤の状態に合わせて、径や材質が異なる芯材に容易に変更できる他、芯材の本数やピッチを容易に変更することができる。
【0034】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、走行路の幅方向と平行に複数の芯材が並列に並べられている。この構成によれば、走行路保護マットがロール状に巻き畳まれても全長が長くなり過ぎることがない。車両等によって走行路保護マットを運搬する際に、車両等の荷台からの走行路保護マットのはみ出しが抑えられて運搬し易くなっている。複数の芯材で建設機械等の荷重が受け止められるため、1つの芯材への集中荷重や撓みが抑えられている。また、複数の芯材の間に建設機械の履帯が落ち込むことが防止されている。
【0035】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、複数の芯材が中空管状に形成されている。この構成によれば、走行路保護マットの軽量化が図られて持ち運び易くなる。
【0036】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、複数の芯材が樹脂製の円形パイプである。この構成によれば、建設機械等が走行路保護マット上を走行して、円形パイプとマットが摺接してもマットが摩耗し難くなる。
【0037】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1態様において、複数の芯材には大径の芯材(22)と小径の芯材(23)が含まれており、大径の芯材の間に小径の芯材が配置されている。この構成によれば、比較的強度の高い大径の芯材によって建設機械の履帯が支持され、比較的強度の低い小径の芯材によって車両のタイヤが支持される。大径の芯材の間に車両のタイヤが入り込んでも、車両が沈み込むことがなく、走行路保護マットによって建設機械以外の車両も軟弱地盤上を走行することができる。
【0038】
第7態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、複数の芯材のそれぞれが、1列に並べられた複数の球体(32)よって形成されている。この構成によれば、一部の球体が破損しても、破損した球体と新たな球体を入れ替えて走行路保護マットを使用し続けることができる。
【0039】
なお、本実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0040】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30:走行路保護マット
11、21、31:マット
12、22、23:芯材
15 :筒状袋部
32 :球体(芯材)
G :軟弱地盤