(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142582
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】観察培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C12M1/34 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054781
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】横山 耕徳
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA07
4B029AA13
4B029BB01
4B029CC02
4B029GA03
4B029GB04
(57)【要約】
【課題】培養空間の環境を安定的に維持可能な観察培養装置の提供を目的とする。
【解決手段】観察培養装置1は、試料を収容する収容部を有する観察容器10と、収容部を観察する観察装置20と、観察容器10を支持して移動し、収容部と観察装置20とを対向させるXYステージユニット30と、XYステージユニット30を上下から挟むように配置され、観察容器10を囲う培養空間100を形成するトップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50と、培養空間100に、加湿気体を供給する加湿ユニット60と、を備え、加湿ユニット60は、加湿用の水が充填される充填領域と、水分子を通過させる膜によって形成され、膜が充填領域に接するように設けられた中空糸と、を備え、中空糸の膜を通過した水分子によって加湿された気体が、加湿気体として培養空間100に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する収容部を有する観察容器と、
前記収容部を観察する観察装置と、
前記観察容器を支持して移動し、前記収容部と前記観察装置とを対向させるXYステージユニットと、
前記XYステージユニットを上下から挟むように配置され、前記観察容器を囲う培養空間を形成するトップヒータユニット及びボトムヒータユニットと、
前記培養空間に、加湿気体を供給する加湿ユニットと、を備え、
前記加湿ユニットは、
加湿用の水が充填される充填領域と、
水分子を通過させる膜によって形成され、前記膜が前記充填領域に接するように設けられた中空糸と、を備え、
前記中空糸の前記膜を通過した水分子によって加湿された気体が、前記加湿気体として前記培養空間に供給される、
観察培養装置。
【請求項2】
前記加湿ユニットから前記培養空間に、前記加湿気体を供給する供給流路を備え、
前記供給流路は、前記加湿ユニットの壁に形成された第1貫通孔と、前記XYステージユニットの壁に形成された第2貫通孔を通して形成される、
請求項1に記載の観察培養装置。
【請求項3】
前記加湿ユニットの壁と前記XYステージユニットの壁は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが連通するように、互いに当接している、
請求項2に記載の観察培養装置。
【請求項4】
前記XYステージユニットには、ヒータユニットが設けられ、
前記加湿ユニットは、前記ヒータユニットによって加熱された前記XYステージユニットの壁からの熱伝導により加熱される、
請求項3に記載の観察培養装置。
【請求項5】
前記充填領域は、前記中空糸の外部であり、
前記中空糸の内部が、前記供給流路に連通している、
請求項2~4のいずれか一項に記載の観察培養装置。
【請求項6】
前記加湿ユニットは、前記トップヒータユニット及び前記ボトムヒータユニットで挟まれた領域内に配置される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の観察培養装置。
【請求項7】
前記加湿ユニットに接続され、前記充填領域に加湿用の水を供給する給水流路を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の観察培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、生細胞を培養しながら顕微鏡観察を行う顕微鏡観察培養装置が開示されている。この顕微鏡観察培養装置は、XYステージユニットを上下から挟むようにトップヒータユニットとボトムヒータユニットが設けられ、XYステージユニットには、培養中の試料が収容されたウェルプレートを保持するプレートホルダが設けられ、ボトムヒータユニットには、一方の面にヒータホルダとメタルプレートよりなる流路が形成され、他方の面にはヒータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、生細胞を培養しながら顕微鏡観察を行うために、ウェルプレートを配置する培養空間の温度、湿度、CO2濃度を調整している。具体的に、培養空間の湿度の調整は、ボトムヒータユニットのメタルプレートに設けられた微小孔から、蒸気を供給することで行う。また、培養空間のCO2濃度の調整は、プレートホルダに設けられたCO2ポートから、CO2を含む混合気体を供給することで行う。
【0005】
しかしながら、培養空間にCO2を含む混合気体を供給すると、その分、培養空間の湿度が下がってしまうため、培養空間の環境を安定的に維持することが困難であった。
【0006】
このため、本発明は、培養空間の環境を安定的に維持可能な観察培養装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様による観察培養装置は、試料を収容する収容部を有する観察容器と、前記収容部を観察する観察装置と、前記観察容器を支持して移動し、前記収容部と前記観察装置とを対向させるXYステージユニットと、前記XYステージユニットを上下から挟むように配置され、前記観察容器を囲う培養空間を形成するトップヒータユニット及びボトムヒータユニットと、前記培養空間に、加湿気体を供給する加湿ユニットと、を備え、前記加湿ユニットは、加湿用の水が充填される充填領域と、水分子を通過させる膜によって形成され、前記膜が前記充填領域に接するように設けられた中空糸と、を備え、前記中空糸の前記膜を通過した水分子によって加湿された気体が、前記加湿気体として前記培養空間に供給される。
【0008】
本発明の第2の態様による観察培養装置は、本発明の第1の態様による観察培養装置において、前記加湿ユニットから前記培養空間に、前記加湿気体を供給する供給流路を備え、前記供給流路は、前記加湿ユニットの壁に形成された第1貫通孔と、前記XYステージユニットの壁に形成された第2貫通孔を通して形成される。
【0009】
本発明の第3の態様による観察培養装置は、本発明の第2の態様による観察培養装置において、前記加湿ユニットの壁と前記XYステージユニットの壁は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが連通するように、互いに当接している。
【0010】
本発明の第4の態様による観察培養装置は、本発明の第3の態様による観察培養装置において、前記XYステージユニットには、ヒータユニットが設けられ、前記加湿ユニットは、前記ヒータユニットによって加熱された前記XYステージユニットの壁からの熱伝導により加熱される。
【0011】
本発明の第5の態様による観察培養装置は、本発明の第2の態様から第4の態様のいずれかによる観察培養装置において、前記充填領域は、前記中空糸の外部であり、前記中空糸の内部が、前記供給流路に連通している。
【0012】
本発明の第6の態様による観察培養装置は、本発明の第1の態様から第5の態様のいずれかによる観察培養装置において、前記加湿ユニットは、前記トップヒータユニット及び前記ボトムヒータユニットで挟まれた領域内に配置される。
【0013】
本発明の第7の態様による観察培養装置は、本発明の第1の態様から第6の態様のいずれかによる観察培養装置において、前記加湿ユニットに接続され、前記充填領域に加湿用の水を供給する給水流路を備える。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の一態様によれば、培養空間の環境を安定的に維持可能な観察培養装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による観察培養装置1の構成図である。
【
図6】本発明の一実施形態による対物レンズが上昇したときの様子を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による加湿ユニットの内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による観察培養装置について、詳細に説明する。以下では、まず、本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0017】
〔概要〕
上述した特許文献1に記載されている構成では、培養空間を加湿する手段と、培養空間にCO2を含む混合気体を供給する手段が、個別に設けられている。
【0018】
CO2については、外部よりCO2濃度が例えば5%に調整された混合気体を、プレートホルダの図示しないCO2ポートから供給することにより、培養空間のCO2濃度を5%にしている。また、湿度については、ボトムヒータユニットのメタルプレートに設けた多数の微小穴から水を蒸発させることにより、培養空間を高い湿度環境にしている。
【0019】
ところで、培養空間のCO2濃度を安定させるには、培養空間の外部から供給する混合気体の流量を上げる必要がある。しかしながら、上述の従来技術の構成では、混合気体は加湿されていないため、混合気体の流量を上げると培養空間の湿度が下がってしまう。
【0020】
下がった湿度を上げるには、蒸気を供給するボトムヒータユニットの温度を上げる必要があるが、そうすると培養空間の温度分布が崩れてしまう。このように、上述の従来技術においては、培養空間の環境を安定的に保つのに、各ヒータユニット温度設定、混合気体のCO2濃度及び流量設定を非常に厳密に行わなくてはならなかった。
【0021】
本発明の実施形態では、中空糸を備える加湿ユニットによって、予め加湿した状態の気体(加湿気体)を、培養空間に供給する。中空糸は、水分子を通過させる膜によって形成され、水が充填される充填領域と広い面積で接するため、培養空間に供給する混合気体を充分に加湿することができる。これにより、加湿に対する温度制御の依存度が、上述の従来技術に対して低減するため、培養空間の温度制御が容易になる。
したがって、厳密なヒータユニット温度設定、混合気体のCO2濃度及び流量設定を必要とせずに、安定した培養環境を形成できる。
【0022】
〔実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態による観察培養装置1の構成図である。
図2は、
図1に示す矢視A図である。
図3は、
図1に示す矢視B図である。
図4は、
図1に示す矢視C図である。
図5は、
図1に示す矢視D図である。
図1に示すように、観察培養装置1は、観察容器10と、観察装置20と、XYステージユニット30と、トップヒータユニット40と、ボトムヒータユニット50と、加湿ユニット60と、を備えている。
【0023】
なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。X軸方向及びY軸方向は、水平面において互いに直交する二軸直交方向(水平方向)である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向である。
【0024】
観察容器10は、
図5に示すように、細胞等の試料を収容する収容部11を有する。本実施形態の観察容器10は、収容部11(ウェル)を複数有するマルチウェルプレートである。なお、収容部11は、1つであってもよい。観察容器10は、平面視矩形状に形成されている。観察容器10の全体、若しくは、少なくとも収容部11の底部は、透明材料から形成されているとよい。
【0025】
観察装置20は、
図1に示すように、観察容器10の底面側から収容部11を観察する。本実施形態の観察装置20は、撮像装置21と、対物レンズ22と、照明装置23と、を備えている。撮像装置21及び対物レンズ22は、観察容器10の下側(-Z側)に配置されている。照明装置23は、観察容器10の上側(+Z側)に配置されている。
【0026】
撮像装置21は、対物レンズ22を介して、収容部11内を撮像する。対物レンズ22は、図示しないアクチュエータによってZ軸方向に移動可能に構成されている。照明装置23は、トップヒータユニット40に設けられた窓部42を介して、収容部11内を照明する。なお、本実施形態の観察装置20は、倒立顕微鏡の構成を有するが、正立顕微鏡の構成を有してもよい。
【0027】
XYステージユニット30は、観察容器10を支持してX-Y平面に沿って移動し、収容部11と観察装置20とを対向させる。XYステージユニット30は、平面視矩形枠状に形成され、観察容器10を収容する開口部31を有している。開口部31の開口周縁部には、観察容器10を支持する支持部32が形成されている。
【0028】
XYステージユニット30の内部には、観察容器10を所定の温度(例えば37℃程度)に加熱するヒータユニット33が設けられている。XYステージユニット30の上面には、トップヒータユニット40との間を気密に保つ環状のシール材34(
図5参照)が設けられている。また、XYステージユニット30の下面には、ボトムヒータユニット50との間の気密に保つ環状のシール材35(
図3参照)が設けられている。
【0029】
図1に示すXYステージユニット30は、図示しないアクチュエータによって観察容器10をX軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。シール材34とトップヒータユニット40、及び、シール材35とボトムヒータユニット50は、互いに接触していることが好ましいが、XYステージユニット30の動作に影響がある場合は、十分に気密性が保たれる限りは、多少の隙間があってもよい。
【0030】
XYステージユニット30は、例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に大きく駆動することにより、観察容器10をトップヒータユニット40で覆われる位置よりも外部に移動させて、観察容器10の着脱ができるように構成されている。XYステージユニット30の壁30aには、水平方向において壁30aを貫通する貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、後述する加湿気体の供給流路90を形成している。
【0031】
トップヒータユニット40は、XYステージユニット30の上側(+Z側)に配置されている。トップヒータユニット40は、
図4に示すように、平面視矩形の板状に形成されている。トップヒータユニット40の中央には、開口部41が形成されている。開口部41には、透明材料の窓部42が嵌め込まれており、照明装置23(
図1参照)の照明光を透過できるようになっている。なお、窓部42は、結露を防止するため、透明パネルヒータであることが好ましい。
【0032】
ボトムヒータユニット50は、
図1に示すように、XYステージユニット30の下側(-Z側)に配置されている。また、ボトムヒータユニット50は、
図2に示すように、底面視矩形の板状に形成されている。ボトムヒータユニット50の中央には、開口部51が形成されている。開口部51には、ベローズ52が取り付けられており、対物レンズ22と共にZ軸方向に伸縮できるようになっている。
【0033】
図6は、本発明の一実施形態による対物レンズ22が上昇したときの様子を示す図である。
図6に示すように、対物レンズ22が上昇位置にあるときは、対物レンズ22によってベローズ52が押し上げられ、対物レンズ22とベローズ52によってボトムヒータユニット50の開口部51を封止するように構成されている。
【0034】
トップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50は、XYステージユニット30を上下から挟むように配置され、観察容器10を囲う培養空間100を形成する。培養空間100は、試料の培養に適した環境であり、例えば湿度、温度、CO2濃度等が調整されている。
【0035】
トップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50は、培養空間100を所定の温度(例えば37℃程度)に加熱する。なお、培養空間100に挿入される対物レンズ22にも、培養空間100の温度を安定させるためのヒータを設けてもよい。
【0036】
図1に示すように、加湿ユニット60は、XYステージユニット30の外部に取り付けられ、培養空間100に加湿気体を供給する。なお、加湿ユニット60の大きさは、XYステージユニット30及び観察容器10とは無関係に設計可能である。例えば、観察容器10の大きさに依存することなく、加湿ユニット60を小型化することができる。この加湿ユニット60は、トップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50で挟まれた領域内に配置されている。
【0037】
加湿ユニット60には、給気ユニット70と、給水ユニット80と、が接続されている。給気ユニット70は、給気流路71を介して加湿ユニット60に接続されている。給気ユニット70は、CO2濃度が例えば5%に調整された混合気体を生成する。なお、給気ユニット70は、予め成分調整された混合気体を収容したガスボンベを備えてもよい。
【0038】
給水ユニット80は、加湿用の水を収容するボトル81と、ボトル81と加湿ユニット60とを接続する給水流路82及び排水流路83と、を備えている。給水流路82の一端は、ボトル81内の液中に配置されている。給水流路82の他端は、加湿ユニット60に接続されている。
【0039】
排水流路83の一端は、加湿ユニット60に接続されている。排水流路83の他端は、ボトル81内の気中に配置されている。排水流路83には、ポンプ84が設けられている。ポンプ84を駆動すると、ボトル81内の水は、給水流路82の一端から吸い上げられて、給水流路82の他端から加湿ユニット60に給水される。また、加湿ユニット60内の水は、排水流路83の一端から吸い出されて、排水流路83の他端からボトル81に排水される。
【0040】
なお、ポンプ84は、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、ベローズポンプなどでもよい。また、ポンプ84は、給水流路82に設けてもよいし、給水流路82と排水流路83の両方に設けてもよい。また、給排水用として一つのボトル81を図示したが、給水用・排水用に個別にボトルを有してもよいし、タンクであってもよい。
【0041】
加湿ユニット60で生成された加湿気体は、供給流路90を介して加湿ユニット60から培養空間100に供給される。供給流路90は、加湿ユニット60の壁60aに形成された貫通孔61と、XYステージユニット30の壁30aに形成された貫通孔36を通して形成される。
【0042】
本実施形態では、加湿ユニット60の壁60aとXYステージユニット30の壁30aは、貫通孔61と貫通孔36とが連通するように、互いに当接している。つまり、加湿ユニット60は、XYステージユニット30と熱的に十分に接続されており、XYステージユニット30に付設されたヒータユニット33によって温度制御ができるように構成されている。
【0043】
図7は、本発明の一実施形態による加湿ユニット60の内部構成図である。
図7に示すように、加湿ユニット60は、ケース62と、中空糸63と、を備えている。本実施形態のケース62は、矩形の箱状に形成されている。ケース62には、上述した給気流路71、給水流路82、及び排水流路83が接続されている。また、ケース62の壁60aには、加湿気体の供給流路90を形成する貫通孔61が形成されている。
【0044】
中空糸63は、ケース62内に配置され、一端が給気流路71に接続され、他端が貫通孔61(供給流路90)に接続されている。なお、
図7においては、中空糸63を模式的に図示しているが、中空糸63は、複数本あってもよく、束になっていてもよい。また、中空糸63は、ケース62内で直線状に延びるだけでなく、曲がっていてもよいし、蛇行していてもよい。
【0045】
ケース62は、加湿用の水が充填される充填領域60Aを形成している。充填領域60Aには、給水流路82及び排水流路83が接続されている。中空糸63は、筒状の膜63aと、その内部空間である中空部60Bとで構成されている。膜63aは、充填領域60Aと接している。膜63aには、微細孔63bが複数形成されている。液体の水は、微細孔63bを透過できないが、気体の水分子としては透過できる。そのような膜63aは、半透膜等とも称される。
【0046】
次に、上記構成の観察培養装置1の動作について説明する。
【0047】
先ず、
図1に示すXYステージユニット30を、トップヒータユニット40で覆われている位置よりも外部に移動させ、ユーザまたはロボットなどにより観察容器10をXYステージユニット30に載置する。
【0048】
次に、XYステージユニット30により、観察容器10をトップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50の間に移動させ、対物レンズ22を上昇させる。これにより、観察容器10が配置される培養空間100が、外部に対し気密状態となる。
【0049】
次に、トップヒータユニット40、ボトムヒータユニット50、及びXYステージユニット30に付設されたヒータユニット33の温度制御をすることで、培養空間100の温度を、細胞等の試料の培養に好適な条件(例えば37℃程度)に保持する。なお、観察容器10を設置する前に、予め上記の温度制御を行っておくことで、試料の培養状態をさらに良好に保つことができる。
【0050】
ポンプ84により、ボトル81内の水は、給水流路82を介して加湿ユニット60の充填領域60Aに供給される。一方、ポンプ84により、充填領域60Aの余分な水は、排水流路83を介してボトル81に排出される。加湿ユニット60は、XYステージユニット30の外部に設けられているので、充填領域60Aへの給水や充填領域60Aの排水による、培養空間100の環境への影響(温度変化、湿度変化等)は極めて少ない。
【0051】
給気ユニット70によって成分調整された混合気体は、加湿ユニット60内の中空糸63、供給流路90を経由して、培養空間100へ供給される。混合気体は、
図7に示すように、中空糸63の中空部60Bを通過する際に加湿される。中空糸63の膜63aは、複数の微細孔63bを有する。微細孔63bは、液体の水は、微細孔63bを透過できないが、気体の水分子としては透過できる。
【0052】
つまり、水分子は、微細孔63bを介して充填領域60Aから中空部60Bに入り込み、中空部60Bを通過する混合気体を加湿する。また、液体の水は、充填領域60Aから中空糸63の中空部60Bには入り込まないため、培養空間100への漏水リスクを低減することができる。
【0053】
なお、仮に、充填領域60Aで菌等が繁殖しても、それらは微細孔63bを通過できない。そのような菌等は、混合気体に含まれないので、観察容器10内の試料に混ざることがなく、コンタミネーションリスクを低減することができる。
【0054】
中空糸63の表面積(膜63aの面積)が大きくなるほど、加湿機能が得られやすい。中空糸63が糸でありその断面積が小さいことから、中空糸63の容積に対する表面積の比率は非常に大きくなる。中空糸63を用いることで、小さい容積でも十分な加湿機能を得ることができる。
【0055】
図1に戻り、観察容器10に培養されている試料を撮像する際には、XYステージユニット30により観察容器10をX-Y平面に沿って移動させ、収容部11と観察装置20とを対向させる。また、対物レンズ22をZ軸方向に移動させ、収容部11と焦点が合う位置に移動させる。
【0056】
そして、照明装置23による透過照明、または、対物レンズ22を介した図示しない落射照明によって試料を照明して、撮像装置21によって試料を撮像する。
【0057】
なお、上述したXYステージユニット30の移動や、対物レンズ22の移動、トップヒータユニット40、ボトムヒータユニット50、及びXYステージユニット30に付設されたヒータユニット33の温度制御、給気ユニット70のガス供給、ポンプ84による給排水、照明装置23または図示しない落射照明、撮像装置21による動作は、図示しないコントローラによって自動的になされてもよい。
【0058】
上記構成の観察培養装置1では、中空糸63を備える加湿ユニットによって、予め加湿した状態の混合気体(加湿気体)を、培養空間に供給する。混合気体が加湿ユニット60により十分に加湿された状態で培養空間100に供給されることで、培養空間100の気体成分(例えばCO2濃度)と湿度が安定する。
【0059】
中空糸63は、水分子を通過させる膜63aによって形成され、水が充填される充填領域60Aと広い面積で接するため、培養空間100に供給する混合気体を充分に加湿することができる。これにより、加湿に対する温度制御の依存度が、従来よりも低減するため、培養空間100の温度制御が容易になる。
上記2点により、厳密なヒータ温度設定、混合気体のCO2濃度及び流量設定を必要としない、安定した培養空間100を形成できる。
【0060】
このように、本実施形態による観察培養装置1は、試料を収容する収容部11を有する観察容器10と、収容部11を観察する観察装置20と、観察容器10を支持して移動し、収容部11と観察装置20とを対向させるXYステージユニット30と、XYステージユニット30を上下から挟むように配置され、観察容器10を囲う培養空間100を形成するトップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50と、培養空間100に、加湿気体を供給する加湿ユニット60と、を備え、加湿ユニット60は、加湿用の水が充填される充填領域60Aと、水分子を通過させる膜63aによって形成され、膜63aが充填領域60Aに接するように設けられた中空糸63と、を備え、中空糸63の膜63aを通過した水分子によって加湿された気体が、加湿気体として培養空間100に供給される。この構成によれば、厳密なヒータユニット温度設定、混合気体のCO2濃度及び流量設定を必要とせずに、安定した培養空間100を形成できる。
【0061】
また、本実施形態では、加湿ユニット60から培養空間100に、加湿気体を供給する供給流路90を備え、供給流路90は、加湿ユニット60の壁60aに形成された貫通孔61(第1貫通孔)と、XYステージユニット30の壁30aに形成された貫通孔36(第2貫通孔)を通して形成される。この構成によれば、XYステージユニット30の外部に配置した加湿ユニット60から、加湿気体を供給流路90を介して培養空間100に供給することができる。
【0062】
また、本実施形態では、加湿ユニット60の壁60aとXYステージユニット30の壁30aは、貫通孔61と貫通孔36とが連通するように、互いに当接している。この構成によれば、加湿気体を培養空間100に最短距離で供給することができる。また、XYステージユニット30と加湿ユニット60が集約して配置される分、観察培養装置1を小型化することができる。
【0063】
また、本実施形態では、XYステージユニット30には、ヒータユニット33が設けられ、加湿ユニット60は、ヒータユニット33によって加熱されたXYステージユニット30の壁30aからの熱伝導により加熱される。この構成によれば、XYステージユニット30に付設されたヒータユニット33によって、加湿ユニット60の温度制御ができる。
【0064】
また、本実施形態では、加湿ユニット60は、トップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50で挟まれた領域内に配置される。この構成によれば、さらにトップヒータユニット40及びボトムヒータユニット50によって、加湿ユニット60の温度制御ができる。
【0065】
また、本実施形態では、加湿ユニット60に接続され、充填領域60Aに加湿用の水を供給する給水流路82を備える。この構成によれば、混合気体の加湿によって消費された水を、充填領域60Aに補給できる。
【0066】
また、本実施形態では、充填領域60Aは、中空糸63の外部であり、中空糸63の内部が、供給流路90に連通している。この構成によれば、中空糸63の内部に水を供給するよりも、中空糸63の外部に水を供給する方が、ポンプ84にかかる負荷(流路抵抗による電力消費量)を低減できる。
【0067】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…観察培養装置、10…観察容器、11…収容部、20…観察装置、21…撮像装置、22…対物レンズ、23…照明装置、30…XYステージユニット、30a…壁、31…開口部、32…支持部、33…ヒータユニット、34…シール材、35…シール材、36…貫通孔(第2貫通孔)、40…トップヒータユニット、41…開口部、42…窓部、50…ボトムヒータユニット、51…開口部、52…ベローズ、60…加湿ユニット、60a…壁、60A…充填領域、60B…中空部、61…貫通孔(第1貫通孔)、62…ケース、63…中空糸、63a…膜、63b…微細孔、70…給気ユニット、71…給気流路、80…給水ユニット、81…ボトル、82…給水流路、83…排水流路、84…ポンプ、90…供給流路、100…培養空間