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  • 特開-積層ポリエステルフィルムロール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001426
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルムロール
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100053
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩見 崇正
(72)【発明者】
【氏名】石田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 岬
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AL01B
4F100BA02
4F100BA08
4F100EH46C
4F100EJ38
4F100EJ94
4F100GB07
4F100GB32
4F100GB41
4F100GB48
4F100HB00
4F100JL11C
4F100JN06
4F100JN18A
4F100JN24
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 本発明は、金属光沢調に優れ、色ムラを抑制した積層ポリエステルフィルムロールを提供することを課題とする。
【解決手段】 積層ポリエステルフィルムがコアに巻かれた積層ポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが以下の特徴1~5を全て備えることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムロール。
特徴1:400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下。
特徴2:1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下。
特徴3:屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。
特徴4:幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下。
特徴5:幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層ポリエステルフィルムがコアに巻かれた積層ポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが以下の特徴1~5を全て備えることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムロール。
特徴1:400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下である。
特徴2:1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下である。
特徴3:屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。
特徴4:幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下である。
特徴5:幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さい。
【請求項2】
前記積層構成における屈折率の低い層をA層、屈折率の高い層をB層としたときに、前記A層の面内平均屈折率と前記B層の面内平均屈折率の差が0.040以上0.120以下である、請求項1に記載の積層ポリエスエルフィルムロール。
【請求項3】
前記A層の主成分がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、前記B層が、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸単位を主たる構成単位とする共重合ポリエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムを用いてなる、加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色ムラを抑制した積層ポリエステルフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりにより、建材、自動車部品、携帯電話、家電やパソコンなどの成型部材の加飾で、溶剤レス塗装、メッキ代替などの要望が高まり、フィルムを使用した加飾方法の導入が進んでいる。加飾のデザインとしては、意匠性を高めるために木目調、布目調の他、金属調のデザインなどが用いられている。中でも金属調のデザインは高級感が引き出せるためニーズが高いが、金属で成型すると重量が大きくなるため、加飾用フィルム等の樹脂基材を用いて金属光沢調に加飾することが行われている。
【0003】
加飾用フィルムに求められる特性としては、成型部材の形状に追従できる成型性が重要であるが、例えば、冷蔵庫などの大型家電、自動車部品等の大面積の成型部材の加飾に用いる場合、色調ムラがあると外観品位を損なうため、色調の安定性も要求されている。
【0004】
そのような中で特許文献1には、金属光沢調の優れた意匠性と大面積においても色差を感じない色調安定性、耐押跡性を有し、またフローマークと呼ばれる外観不良を抑えた加飾用金属光沢調フィルムが開示されている。また、特許文献2には、彩度及び成型時の彩度変化が小さく、粘度特性と積層部の厚膜層による外観欠点の少ない積層フィルム、及びそれを用いた加飾成型体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-164798号公報
【特許文献2】特開2016-16883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2の技術では、外観不良の軽減はできるものの、厚み斑による色ムラの改善効果は十分でなかった。そこで本発明は、金属光沢調に優れ、かつ色ムラを抑制した積層ポリエステルフィルムロールを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため下記の構成よりなる。すなわち、積層ポリエステルフィルムがコアに巻かれた積層ポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが以下の特徴1~5を全て備えることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムロールである。
特徴1:400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下である。
特徴2:1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下である。
特徴3:屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。
特徴4:幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下である。
特徴5:幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さい。
【0008】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムロールは以下の態様とすることもでき、これを用いて以下の成形加飾体とすることもできる。
(1) 積層ポリエステルフィルムがコアに巻かれた積層ポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが以下の特徴1~5を全て備えることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムロール。
特徴1:400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下である。
特徴2:1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下である。
特徴3:屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。
特徴4:幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下である。
特徴5:幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さい。
(2) 前記積層構成における屈折率の低い層をA層、屈折率の高い層をB層としたときに、前記A層の面内平均屈折率と前記B層の面内平均屈折率の差が0.040以上0.120以下である、(1)に記載の積層ポリエスエルフィルムロール。
(3) 前記A層の主成分がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、前記B層が、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸単位を主たる構成単位とする共重合ポリエステル樹脂を含む、(1)または(2)に記載の積層ポリエステルフィルムロール。
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムを用いてなる、加飾成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、金属光沢調に優れ、かつ色ムラを抑制した積層ポリエステルフィルムロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で使用した多層積層合流装置の隔壁部を差し込んでいない状態を長手方向から観察したときの概略図である。
図2】実施例で使用した多層積層合流装置に隔壁部を差し込む状態を厚み方向から観察したときの概略図である。
図3】実施例で使用した多層積層合流装置の隔壁部を差し込んだ状態を長手方向から観察したときと、溝部分を拡大した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムロールについて説明する。本発明の積層ポリエステルフィルムロールは、積層ポリエステルフィルムがコアに巻かれた積層ポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが以下の特徴1~5を全て備えることを特徴とする。
特徴1:400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下である。
特徴2:1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下である。
特徴3:屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。
特徴4:幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下である。
特徴5:幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さい。
【0012】
なお、積層ポリエステルフィルムとは、フィルムを構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂を50質量%より多く100質量%以下含み、かつ2つ以上の層を有するシート状物をいう。また、ポリエステル樹脂とはジカルボン酸単位とジオール単位がエステル結合を介して交互に繰り返した構成を有する樹脂をいう。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、金属調の意匠を実現する観点から、400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下であることが必要である。当該平均反射率が60%未満であると可視光領域での反射性が不足して光沢が不十分となり、金属調の意匠性に劣る。上記観点から、当該平均反射率は70%を超え100%以下がより好ましい。
【0014】
当該平均反射率や後述する別の帯域における平均反射率は、入射角度Φ=10度における相対反射率として、公知の分光光度計により以下の条件で測定することができ、その詳細な手順や条件は実施例に示す。なお、分光光度計は測定が可能なものであれば特に制限されず、例えば(株)日立製作所製、U-4100 Spectrophotometer)等を用いることができる。
【0015】
積層ポリエステルフィルムの当該平均反射率を上記範囲とするための方法としては、例えば、屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成とし、さらに一方の面から反対側に面に向かって、層厚みを20nm以上500nm以下の範囲で徐々に厚く、もしくは薄くすることにより、反射する帯域を所望の値に近づける方法が挙げられる。
【0016】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、赤外線透過が求められる用途に用いる観点から、1000~2000nmの波長帯域における平均反射率が1%以上15%以下であることが必要である。平均反射率が15%以上であると、赤外線が反射されて赤外線の透過率が不十分となり、結果、赤外線センサーを用いる機器の加飾に用いた場合に動作が妨げられることがある。上記観点から、1000~2000nmの波長帯域における平均反射率は1%以上13%以下がより好ましい。1000~2000nmの波長帯域における平均反射率を上記範囲とするためには、400~800nmの波長帯域における平均反射率を60%以上とする方法と同様の方法を用いることができる。
【0017】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、干渉反射により各波長帯域における反射率を好適な範囲とする観点から、屈折率が異なる層が交互に合計99層以上積層された積層構成を有する。ここで「屈折率が異なる」とは、面内平均屈折率が0.040以上異なることをいう。上記観点から、層数はより好ましくは合計399層以上であり、さらに好ましくは749層以上である。なお、反射率は層数に比例して高くなるため特に制限はされないが、装置の大型化等を考慮して999層となる。
【0018】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、高い反射率を達成させる観点から、積層構成における屈折率の低い層をA層、屈折率の高い層をB層としたときに、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が0.040以上0.120以下であることが好ましい。通常、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が大きいほど干渉反射も大きくなるため、当該屈折率差は反射率を高める観点から、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.100以上である。また、反射率を高めるためにA層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差を高めようとすると、A層及びB層を互いに化学構造の大きく異なる樹脂で構成させる必要があるため、層間密着性が低下する。上記の点を考慮すると、当該屈折率差の上限は0.120となる。なお、A層の面内平均屈折率と厚み方向の屈折率の差が0.120以下であると、入射角が大きくなっても、反射率の低下が起きないためより好ましい。
【0019】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、汎用性および反射性の観点から、A層の主成分がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、B層が、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸単位を主たる構成単位とする共重合ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ここで主成分とは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいう。
【0020】
A層は、本発明の目的を阻害しない範囲において、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。また、巻き特性、剛性、光学特性などの機能を付与するために、コロイダルシリカ、酸化チタン、架橋ポリスチレンなどの粒子を含んでもよい。これらの樹脂や粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その添加量は限定されないが、好ましい範囲としては層中5質量%未満である。
【0021】
B層は、層間剥離軽減や光学性能の観点からスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエステルを含むことが好ましい。この場合、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸の共重合量が、それぞれ、5~30mol%であるエチレンテレフタレート重縮合体であることが特に好ましく、B層はポリエチレンテレフタレートと当該共重合ポリエステルのアロイであっても構わない。
【0022】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールは、幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差が1%以上10%以下であることが重要である。このような態様とすることは、広範囲にわたって色ムラが低く抑えられていることを意味し、当該要件を充足する積層ポリエステルフィルムロールは後述する各種機器等の加飾に好適に用いることができる。上記観点から、幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差は、好ましくは1%以上6%以下である。なお、600~1000nmの波長帯域における反射率は、公知の分光光度計により測定することができ、詳細は後述する。
【0023】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムロールは、幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEが5より小さいことが重要である。幅方向と平行な直線を11等分する各点におけるΔEは、以下の手順により測定することができる。まず、積層ポリエステルフィルムロールにおいて、これを幅方向と平行な直線を11等分する各点を定め、各点が中心となるように110mm(長手方向)×30mmの矩形状のサンプルを10枚切り出す。得られた各サンプルについて、分光測色計により明度L*および色度(a、b)を測定し、各測定値の平均値をそれぞれ明度L*および色度(a、b)の基準値とする。さらに、明度L*および色度(a、b)について、各サンプルの測定値と基準値との差(ΔL、ΔaおよびΔb)を求め、下記式よりΔEを算出する。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0024】
ΔEが5より小さいことは、広範囲にわたって積層ポリエステルフィルムの色ムラが低く抑えられていることを意味し、また、ΔEが0に近い程色調に変化がなく、ΔEが2以上になると目視による外観観察で色の変化を感じるようになる。ΔEを5より小さい範囲に抑えることで、当該要件を充足する積層ポリエステルフィルムは後述する各種機器等の加飾に好適に用いることができる。上記観点から、ΔEは3以下であることが好ましい。
【0025】
幅方向と平行な直線を11等分する各点における600~1000nmの波長帯域における平均反射率の最大値と最小値の差や、ΔEを小さくする方法としては、例えば、外壁部の内面に隔壁板を差し込む溝部、及び隔壁板の凸部のための窪み部が設けられており、隔壁板の着脱が可能な多層積層合流装置を用いることで、幅方向と平行な方向の各層の積層乱れや厚みムラを抑える方法が挙げられる。なお、このとき隔壁板が熱により膨張しても変形しないように、隔壁板と溝部の間には隔壁板の膨張を想定して隙間を設けておくことが好ましい。
【0026】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムは、フィルムの最表層の厚みが0.05μm以上5μm未満であることが好ましい。最表層が5μm以上であると、多層の界面付近で生じる微小な模様や色変化が表面から視認しにくくなることがある。上記観点から、最表層のより好ましい厚みは0.06μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.06μm以上1μm以下である。
【0027】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に、さらに印刷層を設けた積層シートも好ましい態様である。当該印刷層は積層フィルム表面を部分的に着色するものであると、着色のない部分から積層フィルムの光沢を直接視認できるため、螺鈿のような外観の意匠を提供できることとなるため好ましい。印刷層は、着色表面や模様などを表すためのものであり、顔料と樹脂バインダーからなる顔料インキ層、パール顔料と樹脂バインダーからなる光輝性顔料層、染料と樹脂バインダーからなる染料インキ層の群から選ばれる少なくとも一層によって構成することができる。印刷層は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法や、ロールコート法、スプレーコート法等のコート法等により形成するとよい。印刷層の外観は漆工のような深みのある黒色、黒紫色、紅色、朱色、渋茶色などが、積層フィルムの光沢とのコントラストが強調され好ましい。これらの色に木目などの模様を加えることも好ましい態様として挙げられる。
【0028】
以下、本発明の加飾成形体について説明する。本発明の加飾成形体は、本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムを用いてなる。本発明の積層フィルムは真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで成形体を得ることが可能である。このような成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。
【0029】
特に、本発明の成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、ゲーム機などの無線で情報通信を行う機能を有する機器(無線情報通信機器)の装飾部品として用いることが好ましい。本発明の成形体は、金属調の外観と電磁波透過性を両立しており、従来の金属調装飾材料の意匠性を維持しつつ、電磁波障害を軽減することができる。また、本発明の成形体は金属よりも薄膜化が容易であり軽量性にも優れるため、これを上記の無線情報通信機器の加飾に用いると、機器の小型化や薄型化が可能となり、情報通信機器内部の回路設計の自由度が増すものである。
【0030】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールの好ましい製造方法の具体例として、多層積層押出法による積層ポリエステルフィルムロールの製造方法を以下に説明する。但し、本発明の積層ポリエステルフィルムロールの製造方法は以下に限定されるものではない。
【0031】
先ず、互いに屈折率の異なる2種類のポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂B)をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給され、押出機に供給された樹脂は押出機内において融点以上で加熱溶融される。各押出機内で融点以上に加熱されて溶融した樹脂を、ギアポンプ等で押出量を均一化して押し出し、さらに溶融した樹脂からフィルター等を介して異物や樹脂の編成物を取り除く。その後、さらにマルチマニホールドダイ、フィードブロック、スクエアミキサー、スタティックミキサー等の積層装置を経て、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bを積層する。その後、得られた溶融積層体をT型口金等でシート状に溶融押出し、当該シート状物をキャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る。
【0032】
本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成するポリエステルフィルムは、フィードブロックを用いることにより好適に得ることができ、そのフィードブロックの構造は、多数の微細スリットを有する部材を、少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましく、より好ましくは3個以上である。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物を少なくすることができ、さらに積層数が極端に多い場合でも幅方向の積層精度を高めて高精度に積層することが可能となる。また、このようなフィードブロックを用いることにより、各層の厚みをスリット形状(長さ、幅、間隙)で調整できるため、任意の層厚み構成を形成することも容易となる。そのため、積層ポリエステルフィルムの特徴である層構成を容易に達成することができる。
【0033】
積層ポリエステルフィルムが2段以上の傾斜構造をとる場合、薄い層から厚い層への変化もしくは厚い層から薄い層への層厚みの変化が、非常に急になる。本発明では多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に3個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。ただし、この別個のフィードブロックから送り込まれた樹脂が合流する箇所では合流直後に層厚み分布が変化し、幅方向の色調をばらつかせる大きな一因となる。さらにはフィードブロックから口金までの経路で配管の壁面の影響により配管付近の樹脂速度が低下するため、配管壁面付近と配管中心部の流速差により幅方向の色調均一性が悪化する。そのため、フィルム最表層部及び別個のフィードブロックの樹脂合流部の一定の距離を同一のポリマーで置換することで積層比を崩すことなく、幅方向で均一な色調を発現する積層フィルムを得ることができる。
【0034】
このとき、積層フィルムの両側の最表層の厚膜層をポリエステル樹脂Aとする場合、ポリエステル樹脂Aからなる層が表層厚膜層(両側の最表層)に該当する。表層厚膜層となる樹脂は射出成型時の剪断を緩和するために高結晶性樹脂であることが好ましい。また、中層厚膜層とする樹脂においても、射出成型時の剪断を緩和するために高結晶性樹脂であることが好ましい。厚膜層の厚み調整は該当する層の厚みに相当する各流量をスリットの間隙で調整することが好ましく、この際、各スリット間隙の間隙精度は±10μm以下であることが好ましい。このような特殊なフィードブロックを用いることにより、高精度でかつ2段以上の傾斜構造を形成する積層フィルムを得ることができる。
【0035】
次に、本発明の積層ポリエステルフィルムロールを構成する積層ポリエステルフィルムの特徴での一つである、「400~800nmの波長帯域における平均反射率が60%以上100%以下」を充足させるためには、各層の層厚みを、下記式Aに基づいて設計する必要がある。このような設計により、積層フィルム反射特性の制御を可能とするが、その反射率についてはポリエステル樹脂Aからなる層とポリエステル樹脂Bからなる層の屈折率差と層数によって制御することができる。
式A:2×(na・da+nb・db)=λ
na:樹脂Aからなる層の面内平均屈折率
nb:樹脂Bからなる層の面内平均屈折率
da:樹脂Aからなる層の層厚み(nm)
db:樹脂Bからなる層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
フィードブロックにより得られた溶融樹脂積層体は、口金に到達する前に流路を形成する隔壁が消失して、流路が一つに合流する多層積層合流装置を通過する。多層積層合流装置を通過した溶融樹脂積層体は、その後口金でさらに薄いシート状に成形されてキャストドラムに吐出され、ここで冷却固化されて未延伸シートとなる。そのため、ここで「口金に到達する前」とは多層積層装置の出口よりも上流を意味する。口金に到達する前に流路が一つに合流することで、これまで複数の流路に分けて流れを整えることで積層精度を高めた溶融樹脂積層体を一つに合流させることができる。その結果、積層精度を落とさずに溶融樹脂積層体の積層数を増やすことができる。
【0036】
このようにして多層積層された溶融体を、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、例えば、ワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0037】
次いで、かかる未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行う。
【0038】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、2.5~3.5倍、さらに好ましくは2.8~3.5倍、特に好ましくは3~3.4倍が採用される。また、延伸速度は1,000~200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、ガラス転移点~(ガラス転移点+50℃)の温度が採用されるが、さらに好ましくは90~130℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を100~120℃、幅方向の延伸温度を90~ 110℃とするのがよい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。
【0039】
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上、ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、200~240℃の熱処理温度とするのが好ましい。フィルムの透明性、寸法安定性の点からは210~235℃であればより好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1~60秒間、より好ましくは1~30秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/ または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、横延伸工程の前で、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行うことや、コーティング層を設けることもできる。このときの塗工液はロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、バーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の公知の塗工手段を用いて、前記透明基材に塗布する。
【0040】
次に、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0041】
その後、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6~50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8~30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0042】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やしてワインダーで巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。この場合、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理を行う。
【0043】
さらに、一旦巻き取った積層ポリエステルフィルムを巻き出し、幅方向両端部を長手方向と平行にスリットしてテンターのクリップが把持した部分を除去し、再度巻き取ることにより、本発明の積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【実施例0044】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
【0045】
(1)フィルムの層構成及び層厚み
積層ポリエステルフィルムロールより、幅方向と平行な直線を11等分する各点を中心に約1cm四方のサンプルを切り出した。さらに、それぞれのサンプルについて、ミクロトームを用いて厚み方向(フィルム面と垂直な方向)の断面を切り出した。その後、透過型電子顕微鏡(TEM (株)日立製作所製、H-7100FA型)により、加速電圧75kVの条件で各断面を40,000倍に拡大して観察、撮影した。得られた画像より後述の方法で、層構成を特定し、層厚みを測定した。また、各層の合計厚みを積層フィルム全体厚みとした。なお、観察にあたり、層間のコントラストを高く得るために、RuOによりサンプルを染色した。
【0046】
以下、層構成及び層厚みの特定、算出方法を具体的に説明する。40,000倍のTEM写真を、“CanoScan”(登録商標)D1230U(キヤノン(株)製)を用いて画像サイズ729dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで、画像処理ソフト(販売元プラネトロン(株)、Imagc-Pro Plus ver.4)を用いて、該JPEGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域における平均の明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(“Excel”(登録商標)2000 マイクロソフト社)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採取後、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア アプリケーションズ)プログラムにより、微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出し、併せて層構成を確認した。
【0047】
(2)平均反射率
積層ポリエステルフィルムロールより、幅方向と平行な直線を11等分する各点を中心に5cm四方のフィルムサンプルを切り出した。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U-4100 Spectrophotometer)を用いて、入射角度Φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は硫酸バリウムであり、標準板は本測定機に付属の酸化アルミニウムである。測定波長は250nm~1200nm、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、さらにゲイン2と設定し、走査速度600nm/分、1nm間隔で測定した。このとき、サンプルの裏面に黒色ビニールテープ(日東電工(株)製No.21)を貼りつけて、裏面からの反射による干渉を防ぎ、波長帯域400~800nmにおける相対反射率、1000~2000nmの相対反射率を測定した。測定した波長帯域の相対反射率の平均値を各波長帯域における平均反射率とした。
【0048】
(3)平均反射率の最大値と最小値の差
(2)反射率と同様に10個のフィルムサンプルを取得し、波長帯域600~1000nmの相対反射率を測定した。得られた値の最小値と最大値の差を「平均反射率の最大値と最小値の差」とした。
【0049】
(4)彩度および色差ΔE
積層ポリエステルフィルムロールより、幅方向と平行な直線を11等分する各点を中心に110mm(長手方向)×30mmのフィルムサンプルを10枚切り出した。次いで、コニカミノルタセンシング(株)製の分光測色計CM-3600dにより、各フィルムサンプルの明度Lおよび色度(a、b)を測定し、L、Δa、Δbそれぞれの平均値を算出して基準値とした。その後、各測定値と基準値との差異(ΔL、ΔaおよびΔb)を求め、以下の式でΔEを求めた。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
なお、測定は、分光測色計付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、続いて付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件で実施した。
モード:反射、SCI/SCE同時測定
測定径:8mm
光源:D65
視野角:10度
サンプル:非測定面側に黒色ビニールテープを貼付(日東電工製No.21)。
【0050】
(5)屈折率差
積層フィルムと、B層に使用している原料を押出機で280度に溶融しキャストドラムに吐出し、冷却固化されたシート状のフィルムを採取し、幅5mm、長さ20mmの大きさの試験片を切り出した。アッベ屈折率計(アタゴ製、DR-M 2)により、23℃、波長589nmにおける各試験片の面内屈折率を測定し、n数5の平均値を算出した。それぞれのフィルムの面内屈折率の差を屈折率差とした。
【0051】
(原料)
(樹脂A-1)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部の混合物に、テレフタ酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%(質量比)水溶液0.020質量部を添加した後、重縮合反応槽に移行した。さらに、加熱昇温しながら反応系を除々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度(IV)0.63のポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある。)を得た。このPETを樹脂A-1とした。
(樹脂B-1)
スピログリコール(SPG)21mol%、及びシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)24mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度(IV)0.55)。
(樹脂B-2)
シクロヘキサンジメタノール(CHDM)30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度(IV)0.72)。
(樹脂B-3)
樹脂A-1と樹脂B-2を1:3(質量比)で混合したもの。
(樹脂B-4)
樹脂A-1と樹脂B-2を1:1(質量比)で混合したもの。
【0052】
(多層積層合流装置の構成)
図面を参照しながら、各実施例、各比較例で使用した多層積層合流装置の構成を以下に説明する。図1は、実施例で使用した多層積層合流装置の隔壁部を差し込んでいない状態を長手方向から観察したときの概略図である。図2は、実施例で使用した多層積層合流装置に隔壁部を差し込む状態を厚み方向から観察したときの概略図である。図3は、実施例で使用した多層積層合流装置の隔壁部を差し込んだ状態を長手方向から観察したときと、その溝部分を拡大した概略図である。図1の様に、多層積層合流装置においては、外壁部1の内面に隔壁板を差し込む溝部2、及び隔壁板の凸部の為の窪み部3が設けられており、図2の様に外壁部1の溝部2に隔壁板4を差し込み、窪み部3と隔壁板の凸部5で外壁部1と隔壁板4を固定する。図3の様に隔壁板4と外壁部1で形成される2つの流路の中をポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bが交互に積層された溶融樹脂積層体が流れ、隔壁板がなくなる出口(図示しない)で全ての溶融樹脂積層体が合流する。
【0053】
(多層積層合流装置A)
図3における外壁部の内面に、幅方向と平行に隔壁板を差し込む態様の隔壁板の厚み7が3mm、幅長さ200mm、外壁部の溝部の幅8が3.5mm、窪み部の端部と隔壁板の凸部との距離9が2.5mmの多層積層合流装置。
【0054】
(多層積層合流装置B)
図3における外壁部の内面に、幅方向と平行に隔壁板を差し込む態様の隔壁板の厚み7が5mm、幅長さ200mm、外壁部の溝部の幅が3.8mm、窪み部の端部と隔壁板の凸部との距離9が4mmの多層積層合流装置。
【0055】
(多層積層合流装置C)
隔壁部と外壁が一体の態様の隔壁板厚みが5mm、幅長さ200mm、の多層積層合流装置。
【0056】
(多層積層合流装置D)
多層積層合流装置3の隔壁板厚みが20mm、幅長さが200mmである多層積層合流装置。
【0057】
(実施例1)
ポリエステル樹脂Aとして樹脂A-1、ポリエステル樹脂Bは樹脂B-1を用いた。これらのポリエステル樹脂を、それぞれ別々のベント付き二軸押出機に供給し、温度制御の下で280℃の溶融状態とした。その後、溶融状態の2種類のポリエステル樹脂を押し出し、別々のギアポンプおよびフィルターを介して、401個のスリットを有し、ポリエステル樹脂Aが最表層かつ厚膜層となるように構成された部材を個別に2個有するフィードブロックへ送り込み、ポリエステル樹脂A,Bを交互に積層した溶融積層体を2個得た。得られた溶融積層体を、多層積層合流装置Aを用いて口金に向かって搬送し、口金に到達する直前で2つの溶融樹脂積層体を合流させ、合計層数が801層の溶融樹脂積層体を得た。その後、口金から吐出させた溶融樹脂積層体を静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムを75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターで急速加熱しながら、フィルムの搬送方向、すなわち長手方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。次いで、該一軸延伸フィルムの両面に(ガラス転移温度18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で搬送方向と垂直なフィルムの幅方向、に3.5倍延伸した。延伸したフィルムについては、そのままテンター内で240℃の熱風で熱処理を行い、続いて同温度で幅方向に7%の弛緩処理を施して室温まで除冷後、ワインダーで巻き取った。得られた積層ポリエステルフィルムロール、及びそれを構成する積層ポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2~4、比較例1~4)
各層の樹脂、層数、多層積層合流装置を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様に、積層ポリエステルフィルムロールを得た。得られた積層ポリエステルフィルムロール、及びそれを構成する積層ポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、金属光沢調に優れ、かつ色ムラを抑制した積層ポリエステルフィルムロールを提供することができる。この積層ポリエステルフィルムロールロールを構成する積層ポリエステルフィルムロールは、広い面積でスジ状の色ムラが抑えられているため、装飾用途として例えば、家電製品、調度品、家具、建材、自動車および電車の車両等の内外装などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 外壁部
2 溝部
3 窪み部
4 隔壁板
5 凸部
6 溝部2近傍の拡大図
7 隔壁板の厚み
8 溝部の幅
9 窪み部の端部と隔壁板の凸部との距離
図1
図2
図3