(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014260
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】射出成形用金型における固定型構造
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20240125BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116954
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】517030734
【氏名又は名称】有限会社米田精密金型製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 隆治
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK11
4F202CK42
4F202CK43
(57)【要約】
【課題】射出成形用の3プレート方式の金型において、製品から分離されるスクラップ部の形成のために消費される溶融樹脂量を抑える。
【解決手段】射出成形用金型1の固定型100は、第1貫通穴112を有する固定板110、第1貫通穴112と連通する孔125を形成するよう厚さ方向に形成された第2貫通穴122を有し、かつ、固定板110の主表面111に対して主表面121が離合可能に密接して配置されたランナーストリッパプレート120、及び、溶融樹脂を導入するためのノズルを装着するための台座421とフランジ420とを有する筒状のスプルブッシュ400を含む。スプルブッシュ400は、孔125内に配置されており、固定板110の側の主表面111に設けた座繰り114にフランジ420が収容されるとともに、固定板110に対してフランジ420がボルト430を用いて脱着可能に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型とを備えかつノズルを通じて溶融樹脂を導入可能な射出成形用の金型における前記固定型の構造であって、
厚さ方向に形成された第1貫通穴を有する固定板と、
第1貫通穴と連通する孔を形成するよう厚さ方向に形成された第2貫通穴を有し、かつ、前記固定板の前記可動型の側の主表面に対して主表面が離合可能に密接して配置されたランナーストリッパプレートと、
一端に前記ノズルを装着するための台座とフランジとを有する、前記金型の内部に前記ノズルから前記溶融樹脂を導入するための筒状のスプルブッシュと、
を含み、
前記スプルブッシュは、前記孔内に配置されており、互いに離合可能な前記固定板の側の主表面および前記ランナーストリッパプレートの側の主表面のいずれかに設けた座繰りに前記フランジが収容されかつ前記固定板に対して脱着可能に固定されている、
射出成形用金型における固定型構造。
【請求項2】
前記固定板が前記第1貫通穴の内方向に突出する鍔を有し、前記スプルブッシュは前記フランジが前記鍔に対して脱着可能に固定されている、請求項1に記載の射出成形用金型における固定型構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型における固定型構造、特に、固定型と可動型とを備えかつノズルを通じて溶融樹脂を導入可能な射出成形用の金型における固定型の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから供給される溶融樹脂を導入して樹脂成形品を製造する射出成形用の金型として、溶融樹脂の流路に由来のスクラップ部と製品である成形品とを型開きのときに分離可能な3プレート方式のものが知られている。3プレート方式の金型は、可動型と固定型とを備えたものである点において2プレート方式の金型と同じであるが、その固定型は、固定板と、当該固定板の可動型の側の主表面に対して主表面が離合可能に密接して配置されたランナーストリッパプレートとを有するとともに、ノズルからの溶融樹脂を金型の内部に導入するための筒状のスプルブッシュを備えている。スプルブッシュは、固定板からランナーストリッパプレートにかけて貫通した状態で装着されており、このスプルブッシュが固定板に対して固定されている。
【0003】
このような3プレート方式の金型では、可動型と固定型とを閉じた状態でスプルブッシュを通じてノズルからの溶融樹脂を内部に導入して冷却すると、成形品が形成される。金型内で形成された成形品は、スプルブッシュから金型の内部に至る溶融樹脂の流路において溶融樹脂が固化することで形成されるスクラップ部と一体化した状態となるが、このスクラップ部は、固定型に対して可動型を開くことで成形品から分離され、続いて固定板からランナーストリッパプレートを離隔することでスプルブッシュから抜き取られ、廃棄物として金型外へ離脱する。
【0004】
3プレート方式の金型においてスプルブッシュは、通常、特許文献1に記載のように、ランナーストリッパプレートとの密接側とは反対側の固定板の主表面側に固定されている。このため、スプルブッシュにおける溶融樹脂の流路が固定板の厚さに従って長くなることから、廃棄対象となるスクラップ部の形成のために消費される溶融樹脂量が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、射出成形用の3プレート方式の金型において、製品から分離されるスクラップ部の形成のために消費される溶融樹脂量を抑えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固定型と可動型とを備えかつノズルを通じて溶融樹脂を導入可能な射出成形用の金型における固定型の構造に関するものである。この固定型構造は、厚さ方向に形成された第1貫通穴を有する固定板と、第1貫通穴と連通する孔を形成するよう厚さ方向に形成された第2貫通穴を有し、かつ、固定板の可動型の側の主表面に対して主表面が離合可能に密接して配置されたランナーストリッパプレートと、一端にノズルを装着するための台座とフランジとを有する、金型の内部にノズルから溶融樹脂を導入するための筒状のスプルブッシュとを含む。スプルブッシュは、上述の孔内に配置されており、互いに離合可能な固定板の側の主表面およびランナーストリッパプレートの側の主表面のいずれかに設けた座繰りに上述のフランジが収容されかつ固定板に対して脱着可能に固定されている。
【0008】
本発明の一形態では、固定板が第1貫通穴の内方向に突出する鍔を有し、スプルブッシュは上述のフランジが当該鍔に対して脱着可能に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固定型構造は、互いに離合可能な固定板の側の主表面およびランナーストリッパプレートの側の主表面のいずれかに設けた座繰りにスプルブッシュのフランジが収容されかつ固定板に対して脱着可能に固定されていることから、製品から分離されるスクラップ部の形成のために消費される溶融樹脂量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る固定型構造を採用した射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図2】前記射出成形用金型を用いた射出成形の一工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図3】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図4】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図5】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図6】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図7】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図8】前記射出成形用金型を用いた射出成形の他の工程を示す、前記射出成形用金型の縦断面概要図。
【
図9】本発明の他の実施の形態に係る固定型構造の縦断面概要図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照し、本発明の実施の一形態に係る固定型構造を採用した射出成形用金型を説明する。
図1において、射出成形用金型1は、ノズルを通じて供給される溶融樹脂による成形品を製造するための3プレート方式のものであり、固定型100、可動型200、ランナーロックピン300およびスプルブッシュ400を主に備えている。固定型100と可動型200とは互いの主表面が対面するよう並置されており、可動型200は固定型100に対して図の下側に配置されている。
図1に示す射出成形用金型1は、固定型100と可動型200との互いに対面する主表面が密接した状態、すなわち、固定型100と可動型200との密接面が第1パーティング面P1となる閉じた状態である。可動型200は、作動機構(図示省略)により固定型100から離隔するよう平行移動可能であり、これにより固定型100と所定距離をもって離合可能である(
図3参照)。
【0012】
固定型100は、互いの主表面が対面するよう並置された固定板110とランナーストリッパプレート120とを備えている。ランナーストリッパプレート120は、可動型200と対面するよう配置されており、作動機構(図示省略)により固定板110から離隔するよう平行移動可能である。これにより、ランナーストリッパプレート120は、固定板110側の主表面121が対面する固定板110の主表面111(固定板110の可動型200の側の主表面)に対し、所定距離を限度として離合可能に密接している。
【0013】
固定板110は、中心部の厚さ方向に第1貫通穴112が形成されている。第1貫通穴112は、円状の穴であり、中心に向けて突出する環状の鍔113が設けられている。この鍔113により、固定板110のランナーストリッパプレート120側の主表面111は、環状の座繰り114が形成されている。
【0014】
ランナーストリッパプレート120は、中心部の厚さ方向に第2貫通穴122が形成されている。第2貫通穴122は、第1貫通穴112と同心の円状の穴であり、主表面121側の径が座繰り114よりも小さく設定されているとともに、第1パーティング面P1方向に向けて径が漸次縮小するように設定されている。固定型100において、第1貫通穴112と第2貫通穴122とは一連の孔125を形成している。
【0015】
可動型200は、キャビティプレート210、コアプレート220および突き出しピン230を主に備えている。キャビティプレート210とコアプレート220とは互いの主表面が対面するよう並置されており、コアプレート220はキャビティプレート210に対して図の下側に配置されている。
図1に示す可動型200は、キャビティプレート210とコアプレート220との互いに対面する主表面が密接した状態、すなわち、キャビティプレート210とコアプレート220との密接面が第2パーティング面P2となる閉じた状態である。コアプレート220は、作動機構(図示省略)によりキャビティプレート210から離隔するよう平行移動可能であり、これによりキャビティプレート210に対して所定距離をもって離合可能である。
【0016】
キャビティプレート210は、第1パーティング面P1において第2貫通穴122と対面するランナー溝211と、成形品を形成するための所定形状のキャビティ212とを有している。キャビティ212は、第2パーティング面P2側が開口し、ゲート213を通じてランナー溝211と連絡している。コアプレート220は、キャビティ212内に挿入可能な入れ子形状であって第2パーティング面P2から突出するコア221を有している。コア221は、キャビティ212に挿入された状態において第2パーティング面P2により閉鎖される、成形品の型となる隙間250を形成可能である。
【0017】
突き出しピン230は、先端部がコア221から突出可能にコアプレート220を貫通しており、他端が突出板231に固定されている。突出板231は、それを支える固定台232に対して離合可能であり、作動機構(図示省略)により固定台232から離隔方向に押されることで、突き出しピン230をコア221から突出するよう押出し可能である。固定台232は、コア221からの突き出しピン230の突出量を確保するとともに規制するために、コアプレート220に対しスペーサーブロック233を挟んで所要の間隔を隔てて固定されている。
【0018】
ランナーロックピン300は、先端部にアンダーカット(図示省略)が形成された棒状の部材であり、固定板110内に保持された係止部310からランナーストリッパプレート120内へ摺動可能に突出するとともに貫通しており、固定板110の主表面111とランナーストリッパプレート120の主表面121とが密接した状態において先端部がランナー溝211内に突出している。
【0019】
スプルブッシュ400は、可動型200に対して溶融樹脂を導入するためのものであり、溶融樹脂の流路となるスプル411を中心に有する筒部410と、筒部410の一端に設けられたフランジ部420とを備えており、固定型100の孔125内に配置されている。筒部410は、第2貫通穴122に対応したテーパー状に形成されており、第2貫通穴122内に嵌め込まれている。フランジ部420は、座繰り114内に収容されており、中心部においてスプル411に通じる台座421を有している。台座421は、孔125内で露出しており、溶融樹脂を供給するノズルを密接させるためのものである。スプルブッシュ400は、フランジ部420が複数のボルト430により固定板110の鍔113に対して固定されており、これにより孔125内に固定されている。
【0020】
次に、射出成形用金型1を用いた射出成形工程を説明する。
先ず、第1パーティング面P1と第2パーティング面P2とが閉じた状態の
図1に示す射出成形用金型1において、
図2に示すように、溶融樹脂を供給するためのノズル2を固定型100の孔125内に挿入し、その先端をスプルブッシュ400の台座421に対して当接させる。そして、ノズル2から溶融樹脂を射出し、スプル411を通じて第1パーティング面P1に向けて導入する。導入された溶融樹脂は、ランナー溝211およびゲート213を通じて隙間250内に充填される。そして、導入された溶融樹脂を保圧した後に冷却すると、射出成形用金型1内には、冷却固化した溶融樹脂による成形物500が形成される(
図2の塗りつぶし部分)。
【0021】
次に、射出成形用金型1において第1パーティング面P1を型開きする。ここでは、
図3に示すように、作動機構により可動型200を平行移動させ、固定型100から離す。これにより、成形物500は、ゲート213において切断され、隙間250において形成された製品510と、スプル411およびランナー溝211において形成されたスクラップ部520とに分離される。ここで、スクラップ部520は、ランナーロックピン300の先端部により保持され、ランナーストリッパプレート120の主表面に保持される。
【0022】
次に、固定型100において、
図4に示すように、作動機構によりランナーストリッパプレート120を平行移動させ、固定板110からランナーストリッパプレート120を離隔する。これにより、成形物500のスクラップ部520がランナーストリッパプレート120によりスプル411から押し出されるとともにランナーロックピン300から分離され、スクラップ部520が射出成形用金型1外に離脱する。
【0023】
次に、可動型200において、第2パーティング面P2を型開きする。ここでは、
図5に示すように、作動機構によりコアプレート220を平行移動させ、キャビティプレート210から離隔する。このとき、製品510はキャビティ212から離れ、コアプレート220とともに移動する。
【0024】
次に、
図6に示すように作動機構により固定台232から突出板231を押出し、突き出しピン230をコア221から突出させる。これにより、製品510が突き出しピン230に押されてコア221から分離される。そして、
図7に示すように作動機構により突出板231を固定台232へ戻すと、製品510が射出成形用金型1外に離脱する。
【0025】
次に、作動機構によりコアプレート220をキャビティプレート210方向へ移動させることで
図8に示すように第2パーティング面P2を閉じ、続けて作動機構によりランナーストリッパプレート120を移動させて固定板110と密接させるとともに可動型200を移動させて第1パーティング面P1を閉じると、射出成形用金型1は
図1に示す状態に復帰する。以上の行程を繰り返すことで、射出成形用金型1は、製品510を連続的に量産することができる。
【0026】
射出成形用金型1は、固定板110のランナーストリッパプレート120側の主表面111に形成された座繰り114にスプルブッシュ400のフランジ部420を固定していることから、成形物500のスクラップ部520は、従来の射出成形用金型を用いた場合よりもスプル411に対応する部分521(
図4)の長さを短縮することができる。このため、射出成形用金型1は、従来のものに比べてスクラップ部520の形成に消費される溶融樹脂の量を抑えることができる。
【0027】
固定型100においてスプルブッシュ400は、ボルト430の取り外しにより固定板110から脱着可能であり、必要により交換可能である。
【0028】
図9を参照し、上述の射出成形用金型1における固定型100の変形例を説明する。この変形例に係る固定型100は、上述の実施の形態に係る射出成形用金型1のものと同じく固定板110とランナーストリッパプレート120とを備えている。固定板110は、中心部の厚さ方向に第1貫通穴112が形成されている。第1貫通穴112は、円状の穴であり、ランナーストリッパプレート120側の主表面111において中心に向けて突出する環状の鍔113が設けられている。
【0029】
ランナーストリッパプレート120は、中心部の厚さ方向に第2貫通穴122が形成されている。第2貫通穴122は、第1貫通穴112と同心の円状の穴であり、固定板110側の主表面121側において環状の座繰り114が形成されており、この座繰り114の中央部から第1パーティング面P1方向に向けて径が漸次縮小するように設定されている。固定板110において、第2貫通穴122と第1貫通穴112とは一連の孔125を形成している。
【0030】
スプルブッシュ400は、溶融樹脂の流路となるスプル411を中心に有する筒部410と、筒部410の一端に設けられたフランジ部420とを備えており、固定型100の孔125内に配置されている。筒部410は、第2貫通穴122に対応したテーパー状に形成されており、第2貫通穴122内に挿入されている。フランジ部420は、座繰り114内に収容されており、中心部においてスプル411に通じる台座421を有している。台座421は、孔125内で露出しており、溶融樹脂を供給するノズルを当接可能である。スプルブッシュ400は、フランジ部420が複数のボルト430により固定板110の鍔113に対して固定されることで、孔125内に固定されている。
【0031】
この変形例に係る固定型100は、先の実施の形態に係る固定型100よりもスプルブッシュ400におけるスプル411の長さをより短縮できることから、成形物500のスクラップ部520においてスプル411に対応する部分の長さをより短縮することができる。このため、この変形例に係る固定型100を用いた射出成形用金型1は、スクラップ部520の形成に消費される溶融樹脂の量をさらに抑えることができる。
【0032】
上述の実施の形態およびその変形例では、ランナーストリッパプレート120において第2貫通穴122を第1パーティング面P1方向に向けて径が漸次縮小するように設定し、スプルブッシュ400の筒部410を第2貫通穴122に対応したテーパー状に形成しているが、第2貫通穴122を全体の径が同じの円穴に設定し、筒部410をそれに対応した円筒状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 射出成形用金型
2 ノズル
100 固定型
110 固定板
111 主表面
112 第1貫通穴
113 鍔
114 座繰り
120 ランナーストリッパプレート
121 主表面
122 第2貫通穴
125 孔
200 可動型
400 スプルブッシュ
420 フランジ
421 台座