(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142618
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リールシート、これを備えた釣竿及び魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 87/06 20060101AFI20241003BHJP
A01K 89/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01K87/06 B
A01K89/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054837
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
(72)【発明者】
【氏名】河合 一輝
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬介
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AF01
2B019AF10
2B019CB02
2B019CB03
2B019CB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御部をそれぞれ有する釣竿と魚釣用リールとの間の接続及びこれらの間での連携を可能とし、これらの間での情報や電源等の共有化を行わしめることで機能の多機能化を実現することが可能となるリールシート、これを備える釣竿、及び魚釣用リールを提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るリールシートは、釣竿に設けられ、魚釣用リールを保持可能なリールシートであって、該魚釣用リールを保持する魚釣用リール連結部と、該魚釣用リールに設けられた魚釣用リール側制御部と、該釣竿に設けられた釣竿側制御部との有線通信を可能とする通信部と、を備え、該通信部は、前記魚釣用リール連結部が前記魚釣用リールを保持した状態で、前記魚釣用リール側制御部と前記釣竿側制御部とが電気的に接続されるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に設けられ、魚釣用リールを保持可能なリールシートであって、
該魚釣用リールを保持する魚釣用リール連結部と、
該魚釣用リールに設けられた魚釣用リール側制御部と、該釣竿に設けられた釣竿側制御部との有線通信を可能とする通信部と、を備え、
該通信部は、前記魚釣用リール連結部が前記魚釣用リールを保持した状態で、前記魚釣用リール側制御部と前記釣竿側制御部とが電気的に接続されることを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記通信部に含まれる複数の電気的接点部は、前記加圧方向と直交する面内に配置されている、請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記魚釣用リール連結部が前記魚釣用リールを保持した状態で、前記魚釣用リール又は前記釣竿のいずれか一方に設けられた電源を用いた前記魚釣用リール側制御部と前記釣竿側制御部との双方への給電を可能とする給電部を備える、請求項1に記載のリールシート。
【請求項4】
前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記給電部に含まれる複数の電気的接点部は、前記加圧方向と直交する面内に配置されている、請求項3に記載のリールシート。
【請求項5】
前記加圧方向と直交する面内での前記魚釣用リールと前記釣竿との相対位置の位置決めを行う位置決め部を有する、請求項2又は4に記載のリールシート。
【請求項6】
前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記加圧方向と直交する面内で閉曲線を構成する防水部を有する、請求項1又は3に記載のリールシート。
【請求項7】
前記加圧方向は、前記釣竿の長手方向と直行する方向である、請求項2又は4に記載のリールシート。
【請求項8】
請求項1に記載のリールシートを備える釣竿。
【請求項9】
請求項1に記載のリールシートにより釣竿と通信可能にされる魚釣用リール側制御部を有する魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿と魚釣用リールとを連結するリールシート、該リールシートの少なくとも一部を有する釣竿、及び魚釣用リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚釣用リールや釣竿等の釣具にセンサを設けることで、釣をしている間の釣具の情報を取得し、記録や表示を行う技術が開示されている。これにより、ユーザーは釣りをしている間の状況を振り返ることができるなど、様々な効果を実現できる。
【0003】
特許文献1では、釣り糸が釣り用釣竿または釣り用リールに対して移動する際に、移動する釣り糸により移動されるように、釣り糸に対して係合する移動部材と、前記移動部材に応答して出力を提供するための移動応答手段と、前記移動応答手段の出力信号に応答して釣り糸の移動に関連したパラメータを示すための指摘手段とを有する釣り用インジケータ装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、釣竿に設けられた表示手段をリールにより操作することについて開示されているものの、釣竿とリールとの間で連携を行うことができず、これらの連携に基づく機能の多機能化が難しいという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御部をそれぞれ有する釣竿と魚釣用リールとの間の接続及びこれらの間での連携を可能とし、これらの間での情報や電源等の共有化を行わしめることで機能の多機能化を実現することが可能となるリールシート、これを備える釣竿、及び魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るリールシートは、釣竿に設けられ、魚釣用リールを保持可能にされ、該魚釣用リールを保持する魚釣用リール連結部と、該魚釣用リールに設けられた魚釣用リール側制御部と、該釣竿に設けられた釣竿側制御部との有線通信を可能とする通信部と、を備え、該通信部は、前記魚釣用リール連結部が前記魚釣用リールを保持した状態で、前記魚釣用リール側制御部と前記釣竿側制御部とが電気的に接続されるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係るリールシートにおいて、前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記通信部に含まれる複数の電気的接点部は、前記加圧方向と直交する面内に配置されている。
【0009】
本発明の一実施形態に係るリールシートは、前記魚釣用リール連結部が前記魚釣用リールを保持した状態で、前記魚釣用リール又は前記釣竿のいずれか一方に設けられた電源を用いた前記魚釣用リール側制御部と前記釣竿側制御部との双方への給電を可能とする給電部を備える。
【0010】
本発明の一実施形態に係るリールシートにおいて、前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記給電部に含まれる複数の電気的接点部は、前記加圧方向と直交する面内に配置されている。
【0011】
本発明の一実施形態に係るリールシートにおいて、前記加圧方向と直交する面内での前記魚釣用リールと前記釣竿との相対位置の位置決めを行う位置決め部を有する。
【0012】
本発明の一実施形態に係るリールシートにおいて、前記魚釣用リール連結部は、前記魚釣用リールの取付け方向に力を付与する加圧部材を有し、前記加圧方向と直交する面内で閉曲線を構成する防水部を有する。
【0013】
本発明の一実施形態に係るリールシートにおいて、前記加圧方向は、前記釣竿の長手方向と直行する方向である。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかのリールシートを備えるように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記いずれかのリールシートにより釣竿と接続(通信)可能にされる魚釣用リール側制御部を有するように構成される。
【発明の効果】
【0016】
上記実施形態によれば、制御部をそれぞれ有する釣竿と魚釣用リールとの間の接続及びこれらの間での連携を可能とし、これらの間での情報や電源等の共有化を行わしめることで機能の多機能化を実現することが可能となるリールシート、これを備える釣竿、及び魚釣用リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3とを含む全体構成を示す図である
【
図2】本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3の分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3とを含む全体構成の、スプールの中心と竿の中心を通る断面で破断した組立後の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3とを含む全体構成の、リールと竿の境界面で破断した断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3の分解斜視図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3とを含む全体構成の、スプールの中心と竿の中心を通る断面で破断した組立後の断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、リール3の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る糸長計測装置及びこれを備える魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
本発明の一実施形態に係るリールシート1は、釣竿2に取り付けられ、魚釣用リール3を保持可能にされる。本発明の一実施形態に係るリールシート1の構成について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、魚釣用リール3とを含む全体構成を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、魚釣用リール3の分解斜視図である。
図3は、本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、魚釣用リール3とを含む全体構成の、スプールの中心と竿の中心を通る断面で破断した組立後の断面図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るリールシート1と、釣竿2と、魚釣用リール3とを含む全体構成の、魚釣用リール3と釣竿2の境界面で破断した断面図である。
【0020】
本発明の一実施形態に係るリールシート1は、釣竿2に取り付けられ、魚釣用リール3を着脱自在にされる。
図1ないし3に示すように、本発明の一実施形態に係るリールシート1は、釣竿2に魚釣用リール3を機械的に連結するための魚釣用リール連結部11と、釣竿2から魚釣用リール3に給電を行うための給電部12と、釣竿2と魚釣用リール3との間で有線通信を行うための通信部13を有する。また、
図1ないし
図3に示すように、釣竿2は、釣竿側制御部(マイコン)21と、釣竿側端子部22と、電池23とを有する。また、魚釣用リール3は、魚釣用リール側制御部(マイコン)31と、魚釣用リール側端子部32とを有する。
【0021】
図1に示すように、釣竿側制御部(マイコン)21は、釣竿2に設けた釣情報取得部(釣竿側センサ)211、記録部(記録手段)213、外部通信部(外部通信手段)212、及び表示・報知部(表示・報知手段)215、のいずれか又は全てと電気的に接続され、それぞれを制御可能に構成される。釣情報取得部(釣竿側センサ)211は、釣竿2の長さや硬さ等など、釣竿2に関する特性に関する情報や、釣りをしている間の釣竿の状態に関する状態を取得することができる。具体的な例としては、釣竿の動作を取得可能なモーションセンサや、釣竿のたわみを取得する歪(ひずみ)センサ、周囲の温度や湿度、光量、地磁気等を取得する温度センサ等の環境センサ等の公知のセンサが考えられるが、これらに限られない。
【0022】
これらのいずれか又は全てのセンサを設けることで、ユーザが釣りをしている間の釣竿2の操作や状態に関する情報を取得することができる。釣竿側制御部21は、例えば、一定期間毎に釣情報取得部(釣竿側センサ)211の情報を取得し、必要に応じて演算や記録ができる。また、取得した情報は、BLEモジュール等の無線通信部(無線通信手段)や、USB等の有線通信部(有線通信手段)を通して、スマートフォンやPC、魚群探知機等の外部機器に送信するようにしてもよい。また、SDカード等のリムーバブルメディアや、内部の記録部(記録手段)等に保存するようにしてもよい。
【0023】
釣竿側制御部21は、LEDやLCD等や、スピーカー、ページャーモータ等の表示部・報知部(表示手段・報知手段)215を制御可能としてもよい。これにより、所定のタイミングでユーザへの注意喚起や状態表示を行うことができる。
【0024】
魚釣用リール側制御部31は、魚釣用リール3に設けた釣情報取得部(魚釣用リール側センサ)311、記録部(記録手段)(図示しない)、外部通信部(外部通信手段)(図示しない)、表示・報知部(表示・報知手段)314、のいずれか又は全てと電気的に接続され、それぞれを制御可能に構成される。釣情報取得部(魚釣用リール側センサ)311は、魚釣用リールの大きさや種類等、魚釣用リールの特性に関する情報や、釣りをしている間の魚釣用リールの状態に関する情報を取得することができる。
【0025】
具体的な例としては、魚釣用リールに巻き取られた釣糸の長さや張力等の状態を取得するための釣糸情報に関するセンサや、ドラグ力やクラッチ状態等、魚釣用リールの設定に関する情報を取得するセンサ、周囲の温度や湿度、光量、地磁気等を取得する温度センサを含む環境センサ等の公知のセンサが考えられる。釣糸の長さや張力を検出するためのセンサには、回転センサやリミットスイッチ等を、魚釣用リールの可動部に設置することで実現可能な従来公知の種々のものが考えられるが、これ以上の詳細は省略する。このようなセンサのいずれか又は全てを設けることで、ユーザが釣りをしている間の魚釣用リールの操作や状態を取得することができる。魚釣用リール側制御部31は、例えば、一定期間毎に釣情報取得部(魚釣用リール側センサ)311の情報を取得し、必要に応じて演算や記録ができる。また、取得した情報は、BLEモジュール等の無線通信部(無線通信手段)や、USB等の有線通信部(有線通信手段)を通して、スマートフォンやPC、魚群探知機等の外部機器に送信するようにしてもよい。また、SDカード等のリムーバブルメディアや、内部の記録部(記録手段)等に保存するようにしてもよい。
【0026】
また、魚釣用リール側制御部31は、LEDやLCD等や、スピーカー、ページャーモータなどの表示部・報知部(表示手段・報知手段)314を制御可能としてもよい。これにより、所定のタイミングでユーザへの注意喚起や状態表示を行なうことができる。さらに、魚釣用リール側制御部31は、モータやアクチュエータ等の電動機を制御してもよい。これにより、スプール回転やドラグ設定力の変更、クラッチ接続/切断の切り替え、キャスティングブレーキの制動力変更等、魚釣用リールに用いられている各種機構の状態変更を行うようにしてもよい。
【0027】
通信部13は、釣竿側制御部21と、リール側制御部31との間での有線接続を可能にする。後述するように、魚釣用リール3を釣竿2に機械的に連結した際に、釣竿側制御部21の通信用ポートと魚釣用リール側制御部31の通信用ポートとが電気的に接続される。また、魚釣用リール3を釣竿2から外した際に、これらの電気的接続が切断される。
【0028】
釣竿側制御部21の通信用ポートと魚釣用リール側制御部31の通信用ポートとが電気的に接続された状態では、各制御部同士での有線通信が可能となる。通信方式は、SPI、I2C、UART等のシリアル通信や、パラレル通信等、従来公知の種々の通信方式が使用可能である。このようにして、各制御部同士の通信が可能となることで、双方の制御部が情報を共有することを可能とする。これにより、一方の制御部で得た情報と、他方の制御部で得た情報とを統合する(共有化する)ことができる。
【0029】
具体例として、釣竿のたわみ情報と魚釣用リールの糸長変化の双方の情報を用いれば、魚のアタリ判定をより正確に判断できるようになる。また、一方のセンサで得た情報を用いて、他方の制御部に接続された出力部を操作することができる。具体的な例としては、魚釣用リール側で得た釣糸放出長等の情報を、釣竿側に設けた表示部・報知部(表示手段・報知手段)215に表示することができる。
【0030】
また、
図2に示すように、通信部13は、魚釣用リール側に設けられたリール側端子32の一部と、釣竿側に設けられた竿側端子22の一部で構成される。魚釣用リール3が連結した際に、これらの端子が電気的に接続する。この時、一方の端子をスプリングピンとすると、電気的接触がリール連結時のガタの影響を受けにくくなり、好適である。なお、通信部13は、上述のような電気信号を送る方法に限らない。送信された電気信号を、通信部13にて、光信号に変換するようにしてもよい。例えば、これは、送信側の発光部と受信側の受光部を近接かつ対向させて配置することで実現できる。これにより、ノイズの影響を避け易く、また、防水処理を行い易く、かつ通信の高速化を実現しやすい等の効果がある。この場合、目的に応じて一方の制御部から他方の制御部へのみ送信可能な一方向の通信とすることで、通信線の削減を行うようにしてもよいし、通信線を増やして双方向の通信を可能とするような構成にしてもよい。
【0031】
給電部12は、電池23と、釣竿側制御部21と、魚釣用リール側制御部31とを電気的に接続する。これにより、電池23の電力を釣竿側制御部21及び魚釣用リール側制御部31に給電することができる。すなわち、釣竿側制御部21と魚釣用リール側制御部31は電源23を共有化(共有して使用)できるため、釣竿2と魚釣用リール3の一方は、電池を省略することができる。また、魚釣用リール3に電池を搭載し、釣竿2には電池を搭載しない構成も可能であり、電池は配置のしやすい方に搭載するようにすればよい。一般に、釣竿の竿尻側にはデッドスペースが生じやすく、ユーザが魚釣用リールを把持した際の重量バランスとしても好適であるため、そのような場所を選択して電池を配置するようにすればよい。
【0032】
また、魚釣用リール3に、電池23を有する釣竿2及び電池を有さない他の釣竿のいずれの種類の釣竿も接続対象として想定する場合には、魚釣用リール3に電池33を備える構成も考えられる。このようにすることで、魚釣用リール3の自重は増えてしまうものの、釣竿の種類に依らずにリール側制御部31に給電できるため、魚釣用リール3を汎用的に使うことができるという有利な効果を奏する。電池33を有する魚釣用リール3と電池23を有する釣竿2を接続した場合には、それぞれの制御部がそれぞれの電池を使用する方法やより残量の多い電池を使用する方法等、各種の方法が考えられる。
【0033】
給電部12は、魚釣用リール側に設けられた魚釣用リール側端子32の一部と、釣竿側に設けられた釣竿側端子22の一部で構成される。魚釣用リール3を連結した際に、これらの端子が電気的に接続される。この時、一方の端子をスプリングピンとすると、電気的接触がリール連結時のガタの影響を受けにくくなり、好適である。すなわち、魚釣用リール側端子32及び釣竿側端子22は、その一部が通信部13として機能し、また、その一部が給電部12として機能する。GND線等の一部の端子は、通信部13と給電部12を兼ねるようにしてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態に係るリールシート1においては、
図4に示すように、端子の中央付近を通信部13として機能させ、端子の両端を給電部12として機能させている。これにより、2つの給電部の距離を離すことができるため、外部から金属や液体などの導電体が端子部に接触したときに、給電部12がショートしてしまうことを低減することができる。
【0035】
なお、給電部12は、上述のように端子を介して給電する接触式の給電方法に限定されず、ワイヤレス給電を用いてもよい。ワイヤレス給電には、送電側コイルと受電側コイルを対向して配置する電磁誘導方式や磁界共鳴方式、送電側電極と受電側電極を対向して高周波を発生させる電界結合方式等がある。いずれの方式でも、送電距離が短く、送電側と受電側の位置ずれが少ない方が有利となる。給電部12にワイヤレス給電方式を用いた場合、通信部13には光信号を用いる方式と組み合わせると特に良好である。これにより、給電部12、通信部13とも漏水の影響を受けにくくなるため、防水手段を用いる必要性が低減される。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係るリールシート1において、魚釣用リール3を竿に固定する連結部(魚釣用リール連結部)11について説明する。まず、当該連結部11は、魚釣用リール3を釣竿2に固定するためのものである。
図2及び
図3に示すように、当該連結部11は、魚釣用リール3のリール脚のリアフット部を挿入可能なリア固定部25と、魚釣用リール3のリール脚のフロントフット部を締結可能なフロント固定部11とにより構成される。フロント固定部11は、フロントフット部に空いたビス穴に挿通され、竿に設けられためねじ穴に固定可能なねじ11である。なお、当該連結部11は、ねじ以外にも、トグルクランプやカム機構等、魚釣用リール3を釣竿2に着脱可能な従来公知の機構を利用可能である。これにより、釣竿2の長手方向に直交する方向に、加圧力(作用力)を発生させることができる。
【0037】
また、連結部11による加圧力の方向は、通信部13及び端子部(図示しない)の境界面に対して概略直交している。これにより、魚釣用リール3を釣竿2に固定させると、端子同士が接触する方向に加圧力を発生させることができ、端子同士の接触不良を避けることができる。既述のように、スプリングピンを用いる場合、スプリングの伸縮方向が、加圧方向と平行になるように設定する。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係るリールシート1において、
図4に示すように、釣竿2と魚釣用リール3との境界面に、パッキン等の防水部(防水手段)24を設けている。本発明の一実施形態に係るリールシート1では、防水部24は釣竿2側に設けているが、魚釣用リール側に設けても同様の効果が実現可能である。また、防水部24は、釣竿2と魚釣用リール3との境界面内にて閉曲線を形成し、ゴムやエラストマー、接着剤等の弾性部材で構成すると望ましい。当該閉曲線内には釣竿側端子部22及び魚釣用リール側端子部32を配置し、外部からの水の侵入を防ぐようにされている。当該連結部11は、当該閉曲線の外部に設けると、ビス穴等からの水の侵入を気にする必要がなくなる。防水部24は、当該連結部11による加圧力で潰し方向に加圧されることで、安定した防水力を実現することができる。
【0039】
既述のように、本発明の一実施形態に係るリールシート1において、加圧力の発生する方向は、釣竿2の長手方向と直交するように構成されている。これにより、防水部24の形成する閉曲線の面積をより広く確保することができる。こうして、装置全体の大型化を招かずに端子部の端子数を増加させることができる。釣竿2と魚釣用リール3との境界面内において、釣竿2と魚釣用リール3との相対位置関係を安定して位置決めするために、位置決め部(位置決め手段)を設けるとよい。本発明の一実施形態に係るリールシート1では、魚釣用リール側に設けたダボ35と、釣竿側に設けた位置決め穴25とを篏合させることで位置決めする一点が決まり、ねじ11と合わせて位置決め部を実現することができる。これにより、魚釣用リール3の着脱を繰り返してもリール側端子部22と釣竿側端子部32の相対位置関係を安定的に決定することができるため、端子部の小型化・狭ピッチ化を行っても安定した電気的接続が可能となる。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係るリールシート1による技術的効果について説明する。本発明の一実施形態に係るリールシート1によれば、魚釣用リール3と釣竿2との機械的締結及び電気的接続を同時に行うことが可能となる。ユーザは、魚釣用リール側制御部31と釣竿側制御部21との間の電気的接続に、特別な操作を行う必要がないため、ユーザの利便性向上だけでなく、接触不良の回避も実現できる。
【0041】
また、魚釣用リール、釣竿のそれぞれに、多数のセンサや出力手段等の等電気的要素を配置するためには、魚釣用リール、釣竿のそれぞれに制御手段(マイコン)を配置することが望ましい。魚釣用リール、釣竿の一方にのみ制御手段(マイコン)を配置すると、魚釣用リールと釣竿との間の端子数を多く必要とし、リールシートの大型化を招いてしまうところ、魚釣用リール、釣竿共に単独で使用するケースはほとんどなく、これら2つを組み合わせて使うのが一般的である。すなわち、魚釣用リール側制御部、釣竿側制御部の2つの制御部とも、スタンドアロン(独立)で機能させる必要はない。電源や保存手段、外部との通信手段等は、それぞれが独立して設ける必要はなく、どちらか一方に設ければよい。本発明の一実施形態に係るリールシート1によれば、2つの制御部を電気的に接続自在とすることができるので、使用状態において電源や保存手段、通信手段を共有化できる。したがって、釣竿と魚釣用リールを組み合わせたタックル状態(実使用状態)において、大型化や高コスト化を回避することができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係るリールシート1によれば、魚釣用リール側制御部31と釣竿側制御部21とは、電気的に接触する通信部13を介する有線通信が可能にされる。そのため、それぞれの間で無線通信をする場合に比して、高速通信が可能、混線のリスクがない、ペアリングが不要といった、有線通信のメリットを享受することができる。また、機械的締結部中に通信手段を含めることができるので、通信や給電のためのケーブル類が外部に露出することがなく、ケーブル類を周辺の障害物や手等に引っ掛けるリスクを回避することができる。
【0043】
さらに、従来、魚釣用リール側で得た情報は魚釣用リール側で独立させ、釣竿側で得た情報は釣竿側で独立させる必要があった。例えば、魚釣用リール側で検出された糸長情報等の情報は、魚釣用リール側に設けた表示部で表示させる必要があった。これに対して、本発明の一実施形態に係るリールシート1によれば、どちらか一方(魚釣用リール又は釣竿)で得た情報は、他方(釣竿又は魚釣用リール)でも共有化することができる。これにより、各要素のレイアウト自由度を向上させることができる。例えば、釣竿側に設けた表示部215に魚釣用リール側で得た情報を表示したり、釣竿側に設けた操作部(操作手段)214で魚釣用リール側に設けたモータ312等の出力手段を操作することができる。これにより、ユーザの操作性や視認性を向上させることができる。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係るリールシート1によれば、魚釣用リールと釣竿とが着脱自在とされ、それぞれの制御部は着脱を検出することができる。従って、例えば、魚釣用リール側制御部は、釣竿が取り換えられるとその情報を検出し、釣竿によってモータ制御方法の特性を変更できる等、組み合わせに応じた最適化を実現することができる。なお、魚釣用リールと釣竿の組み合わせを自由に変更可能である。
【0045】
次に、本発明の別の実施形態に係るリールシート1について、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、既述の本発明の一実施形態に係るリールシート1と同じ機能を有する構成要素については、同じ番号を付すことによって、説明を省略する。
【0046】
本発明の別の実施形態に係るリールシート1において、連結部(図示しない)は、釣竿側に設けたクランプ用ねじ111と、魚釣用リール3のリール脚のリールフット部に設けたテーパ面124との作用により、釣竿の長手方向と直交する方向に加圧力を働かせる。クランプ用ねじ111は、内周に雌ねじ部を有し、釣竿に設けた雄ねじ部を螺合する。これにより、当該クランプ用ねじ111を釣竿の長手方向に移動させることができる。また、魚釣用リール3を固定する際、クランプ用ねじ111を回して魚釣用リール3のリール脚のリールフット部を釣竿の長手方向に押し付ける。クランプ用ねじ111は、内周にテーパ面を持っており、これがリールフット部のテーパ面124と接触するように構成される。このテーパ面により、クランプ用ねじ111による釣竿の長手方向の締結力は、直交する方向へ大きな加圧力を発生せることができる。これにより、電気端子同士が接触する方向に加圧力を発生させることができ、端子同士の接触不良を避けることができる。また、防水部24に対して潰し方向に加圧することができ、安定した防水力を実現することができる。
【0047】
なお、本実施形態においても、魚釣用リール3と釣竿2の相対位置関係を安定して位置決めするための位置決め手段を設けるようにしてもよい。例えば、魚釣用リール側に設けたダボ35と、釣竿側に設けた位置決め穴25を篏合させることで位置決めの一点を決め、ねじ11と合わせて位置決め手段を実現している。これにより、魚釣用リール3と釣竿2の着脱を繰り返しても魚釣用リール側端子部32と釣竿側端子部22の相対位置関係を安定して決めることができ、端子部を小型化・狭ピッチ化をしても安定して電気的に接続できる。特に、本実施形態では、クランプ用ねじ111が釣竿の長手方向に移動するため、釣竿側端子部22と魚釣用リール側端子部32の相対位置関係がずれ易い。したがって、本実施形態では、ダボ35がクランプ用ねじ111の締結力に屈することがないよう、十分な強度を確保するとよい。
【0048】
次に、本発明の別の実施形態に係るリールシート1について、
図7を参照して説明する。なお、既述の本発明の一実施形態に係るリールシート1と同じ機能を有する構成要素については、同じ番号を付すことによって、説明を省略する。
【0049】
本発明の別の実施形態に係るリールシート1において、連結部(図示しない)は、釣竿側に設けたクランプ用ねじ211の作用により、釣竿の長手方向に加圧力を発生させる。釣竿側端子部222及び魚釣用リール側端子部232は、釣竿の長手方向と直交する面内に設けられる。防水部224は、釣竿の長手方向と直交する面内で閉曲線を形成する。また、連結部(図示しない)による加圧力は、釣竿の長手方向に発生させているため、防水部224や端子部222、232は大きな面積を確保しにくい。そのため、端子部の端子数を増加させるには限界がある。これに対して、本実施形態のリールシート1では、既に市場に流通しているリールシートの構成に近いため、流通済の魚釣用リールや釣竿との互換性、親和性を確保しやすいというメリットが挙げられる。
【0050】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 リールシート
2 釣竿
3 魚釣用リール
11 連結部(魚釣用リール連結部)
12 給電部
13 通信部
21 釣竿側制御部(マイコン)
22 釣竿側端子部
23 電池
31 魚釣用リール側制御部
32 魚釣用リール側端子部
211 釣情報取得部(釣竿側センサ)
212 外部通信部
213 記録部
214 操作部
215 表示・報知部
311 釣情報取得部(魚釣用リール側センサ)
314 表示部・報知部