(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142619
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】バルブメンテナンス支援装置および支援方法
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16K37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054839
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 史明
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【テーマコード(参考)】
3H065
【Fターム(参考)】
3H065AA06
3H065BA01
3H065BA05
3H065BB11
3H065CA01
3H065CA03
(57)【要約】
【課題】ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させる。
【解決手段】バルブメンテナンス支援装置は、ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する開度取得部2と、開度計測値を記憶する開度記憶部3と、ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を開度計測値の時系列データ上で特定し、動作完了時点からの経過時間を計測する経過時間計測部4と、経過時間が規定時間を過ぎた後に、開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する変動状態検出部5と、ふらつき状態が検出された場合に、ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定する連結緩み判定部6と、連結緩み判定部6の判定結果を提示する判定結果提示部7とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、
前記開度計測値を記憶するように構成された第1の記憶部と、
前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作した場合に前記開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうか、または前記目標開度への動作の途中で前記開度計測値が前記目標開度と逆方向に規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定するように構成された変動状態検出部と、
前記変動状態検出部によって前記ふらつき状態が検出された場合に、前記ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定するように構成された連結緩み判定部と、
前記連結緩み判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とを備えることを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項2】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
前記第1の記憶部に記憶された開度計測値を読み込み、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を前記開度計測値の時系列データ上で特定し、前記時系列データの時間軸上において前記動作完了時点からの経過時間を計測するように構成された経過時間計測部をさらに備え、
前記変動状態検出部は、前記経過時間が規定時間を過ぎた後に、前記開度計測値が前記動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項3】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記変動状態検出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定し、
前記連結緩み判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定し、
前記判定結果提示部は、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記連結緩み判定部の判定結果とを提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項4】
請求項2記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記経過時間計測部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記経過時間を計測し、
前記変動状態検出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定し、
前記連結緩み判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定し、
前記判定結果提示部は、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記連結緩み判定部の判定結果とを提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項5】
ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第1のステップと、
前記開度計測値を記憶する第2のステップと、
前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作した場合に前記開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうか、または前記目標開度への動作の途中で前記開度計測値が前記目標開度と逆方向に規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する第3のステップと、
前記第3のステップによって前記ふらつき状態が検出された場合に、前記ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定する第4のステップと、
前記第4のステップの判定結果を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項6】
請求項5記載のバルブメンテナンス支援方法において、
記憶された前記開度計測値を読み込み、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を前記開度計測値の時系列データ上で特定し、前記時系列データの時間軸上において前記動作完了時点からの経過時間を計測する第6のステップをさらに含み、
前記第3のステップは、前記経過時間が規定時間を過ぎた後に、前記開度計測値が前記動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項7】
請求項5記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第2のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第3のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含み、
前記第4のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、
前記第5のステップは、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項8】
請求項6記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第2のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第6のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記経過時間を計測するステップを含み、
前記第3のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含み、
前記第4のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、
前記第5のステップは、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス作業を支援する技術に係り、特にON-OFFバルブのメンテナンスの効率的な作業のための支援を実現するバルブメンテナンス支援装置および支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラントなどで使用されるバルブ(例えば
図13のコントロールバルブ)は、特に安全性に留意する必要があり、ゆえに定期的なメンテナンスが行なわれる。
図13に示すコントロールバルブは、流体の流れる通路を開閉するバルブ本体100と、入力電気信号を空気圧に変換するポジショナ101と、ポジショナ101から供給される空気圧に応じてバルブ本体100を操作する操作器102とから構成される。
【0003】
図13に示したようなバルブが設置されているプラントにおいてバルブのメンテナンス作業効率を改善するために、バルブの摺動部におけるスティックスリップの発生を検出する技術(特許文献1参照)、バルブのハンチング状態を判定する技術(特許文献2参照)、バルブへのスケールの付着を検出する技術(特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
一方、開度を連続的に変化させることが可能なコントロールバルブとは別の種類のバルブとして、開度を全開/全閉の二位置しか取ることができないON-OFFバルブがあり、例えばボールバルブやバタフライバルブやゲートバルブがある。
図14に示すON-OFFバルブ200は、ボールバルブを用いたものであり、弁体であるボール201をボールシートと呼ばれるシートリング202で挟み込む構造であり、ステム(弁棒)203を操作器204によって90度回転させることで、バルブを開いたり閉めたりすることができる。また、種類によっては、90度以外のものもある。
【0005】
ON-OFFバルブ200の大半は、
図15に示すように計装されており、電磁弁205を介してON-OFFバルブ200の操作器204に操作器空気が供給されるようになっている。ON-OFFバルブ200の開状態はリミットスイッチ206によって検出され、閉状態はリミットスイッチ207によって検出される。このように、リミットスイッチ206,207を用いたアンサーバックは、閉状態または開状態の2状態のみを表しており、ON-OFFバルブ200の開閉の動作過程はアンサーバックに反映されない。すなわち、ON-OFFバルブ200のアンサーバック機能は、異常時に警報を発報するだけであり、警報が発生した時に既に緊急の異常状態であれば、処置が手遅れになる。
【0006】
そこで発明者は、ON-OFFバルブの動き出しの不感帯(圧力の動き出しから開度の動き出しまでの時間差)の大きさの変化が、ON-OFFバルブの不具合(基準トルク以上または基準トルク以下の力で作動させている)と相関することを利用した診断技術を提案した(特許文献4参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献4に開示された技術では、ON-OFFバルブ本体の不具合の予兆を検出できるものの、操作器の駆動軸とバルブ本体のステムとの連結部分の不具合の予兆を検出できない可能性があった。
安全性や作業効率については、完全とか十分とか言える上限は無く、安全性、作業効率の更なる向上が求められている。特に、石油化学プラントなどでは、例えば
図16に示すように複数のバルブ200-A,200-C,200-Mが使用される。したがって、バルブメンテナンスの作業効率については、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3254624号広報
【特許文献2】特開2015-114942号公報
【特許文献3】特開2015-114943号公報
【特許文献4】特開2021-026268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができるバルブメンテナンス支援装置および支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバルブメンテナンス支援装置は、ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、前記開度計測値を記憶するように構成された第1の記憶部と、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作した場合に前記開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうか、または前記目標開度への動作の途中で前記開度計測値が前記目標開度と逆方向に規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定するように構成された変動状態検出部と、前記変動状態検出部によって前記ふらつき状態が検出された場合に、前記ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定するように構成された連結緩み判定部と、前記連結緩み判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、前記第1の記憶部に記憶された開度計測値を読み込み、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を前記開度計測値の時系列データ上で特定し、前記時系列データの時間軸上において前記動作完了時点からの経過時間を計測するように構成された経過時間計測部をさらに備え、前記変動状態検出部は、前記経過時間が規定時間を過ぎた後に、前記開度計測値が前記動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記変動状態検出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定し、前記連結緩み判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定し、前記判定結果提示部は、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記連結緩み判定部の判定結果とを提示することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記経過時間計測部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記経過時間を計測し、前記変動状態検出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定し、前記連結緩み判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定し、前記判定結果提示部は、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記連結緩み判定部の判定結果とを提示することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法は、ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第1のステップと、前記開度計測値を記憶する第2のステップと、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作した場合に前記開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうか、または前記目標開度への動作の途中で前記開度計測値が前記目標開度と逆方向に規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する第3のステップと、前記第3のステップによって前記ふらつき状態が検出された場合に、前記ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定する第4のステップと、前記第4のステップの判定結果を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例は、記憶された前記開度計測値を読み込み、前記ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を前記開度計測値の時系列データ上で特定し、前記時系列データの時間軸上において前記動作完了時点からの経過時間を計測する第6のステップをさらに含み、前記第3のステップは、前記経過時間が規定時間を過ぎた後に、前記開度計測値が前記動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例において、前記第2のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第3のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含み、前記第4のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、前記第5のステップは、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例において、前記第2のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第6のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記経過時間を計測するステップを含み、前記第3のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記ふらつき状態が生じているかどうかを判定するステップを含み、前記第4のステップは、前記記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、前記第5のステップは、前記連結部分に緩みの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、開度取得部と変動状態検出部と連結緩み判定部とを設けることにより、ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があることを検知できるので、オペレータがメンテナンス候補のON-OFFバルブを選定する作業を支援することができる。その結果、本発明では、ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができる。本発明では、ON-OFFバルブを利用する生産設備におけるロスを低減することができ、従来に比べて生産設備を安定的に稼働させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ON-OFFバルブの連結部分について説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係るON-OFFバルブの構造の1例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例に係るON-OFFバルブの開度計測部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の変動状態検出部の動作を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置による判定結果の提示例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の変動状態検出部の動作を説明する図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施例に係るプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1~第3の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、コントロールバルブの1例を示す図である。
【
図14】
図14は、ON-OFFバルブの1例を示す図である。
【
図16】
図16は、プラントのタンクに使用される複数のバルブの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理1]
ON-OFFバルブにおける内弁漏れ(全閉時の弁本体での流体漏れ)の原因の一つとして、操作器の駆動軸とバルブ本体のステムとの連結部分(ステムコネクタ)が緩んでしまうことで、操作器のトルクがバルブ本体まで伝わらないことがある。
【0021】
図1(A)、
図1(B)を用いてON-OFFバルブの連結部分について説明する。ON-OFFバルブ200のバルブ本体210と操作器204とは、ヨーク211によって機械的に連結される。バルブ本体210の上にヨーク211が配置され、ボルト212によってバルブ本体210にヨーク211が固定される。さらに、ヨーク211の上に操作器204が配置され、ボルト213によってヨーク211に操作器204が固定される。
【0022】
操作器204の駆動軸214とバルブ本体210のステム(弁棒)203とは、それぞれヨーク211を貫通して、ヨーク211の内側の空間においてステムコネクタ215によって連結される。操作器204に操作器空気が供給されると、駆動軸214の回転に伴ってステム203が回転し、ON-OFFバルブ200が全開または全閉の状態となる。スプリングリターン(単動シリンダ)のタイプの場合、操作器204への空気の供給が遮断されると、スプリング216の力によって駆動軸214が回転し、ON-OFFバルブ200が全閉または全開の状態となる。操作器空気が再び供給されると、駆動軸214はスプリング216の力に対抗して回転し、ON-OFFバルブ200が全開または全閉の状態となる。スプリングリターン時に全閉となるか全開となるかはバルブの仕様によって異なる。
【0023】
図1(A)、
図1(B)に示したような構造では、連結部分(ステムコネクタ215)が緩んでしまうと、シート面を押さえ込むための締め切りなどに必要なトルクが得られずにバルブ開度の不安定化(ふらつき)を引き起こす。
【0024】
発明者は、操作器内部のスプリングの力で全閉(ゼロ点)あるいは全開にする開度(スプリングリターン側)で特に安定となることに着眼し、連結部分が緩んでいると全閉あるいは全開の開度にふらつきが発生することから、このふらつきを検出することにより連結部分の緩みの可能性を判定できることに想到した。
【0025】
すなわち、ON-OFFバルブの開度データを収集することにより、操作器の駆動軸とバルブ本体のステムとの連結部分の緩み現象を捉えることができ、開度のふらつきの原因が連結部分の機構的な問題によるものなのか、それ以外の事象によるものなのかを、識別することが可能になる。
なお、連結部分の緩みの状態によっては、全閉あるいは全開に限らず、ON-OFFバルブの動作中に開度のふらつきが確認できる場合もある。また、スプリングレス(複動シリンダ)のタイプもあり、この場合も連結部分に対して同様の動きになる。
【0026】
[発明の原理2]
正常な状態から徐々に連結部分の緩みが発生するように進展するのであれば、連結部分の緩みの程度が少ない時期は、ON-OFFバルブの目標開度への動作時に、目標開度に一旦到達し、規定時間を経過した後に開度にふらつきが発生するという挙動になる。このような挙動は特に連結部分の緩みとして特定し易く、また連結部分の緩みが初期の状態なので、早期発見という点でも意義が大きい。
【0027】
[発明の原理3]
連結部分の緩みが進展すると、目標開度に到達した後に限らず、動作の途中でも開度にふらつきが発生する。したがって、連結部分の緩みが特に急速に進展した場合を考慮すれば、目標開度への動作中の、動作方向とは逆方向への動きも監視し、この現象が検出された場合も連結部分の緩みの可能性があると判定するのが好ましい。
【0028】
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。本実施例は、上記の発明の原理1、発明の原理2に対応する実施例である。
図2は本実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。以下の実施例では、説明を簡潔にするため、バルブのIDの事例などは、実際のプラントで利用されるものよりも単純なものとする。また、スプリングリターン(単動シリンダ)のタイプとして説明するが、スプリングレス(複動シリンダ)のタイプでも同様の実施例になる。
【0029】
バルブメンテナンス支援装置は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのID(識別情報)を予め記憶するバルブID記憶部1と、ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する開度取得部2と、開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶する開度記憶部3と、ON-OFFバルブが目標開度へ向かって動作したときの動作完了時点を開度計測値の時系列データ上で特定し、時系列データの時間軸上において動作完了時点からの経過時間を計測する経過時間計測部4と、経過時間が規定時間を過ぎた後に、開度計測値が動作完了時点の値から規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する変動状態検出部5と、変動状態検出部5によってふらつき状態が検出された場合に、ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定する連結緩み判定部6と、連結緩み判定部6の判定結果を提示する判定結果提示部7とを備えている。
【0030】
図3は、本実施例のON-OFFバルブ200の構造の1例を示す図であり、
図14に示した構成に開度計測部8を追加した例を示している。開度計測部8の追加位置については、
図3の位置に限られるものではなく、ON-OFFバルブ200の開度が計測できる位置であればよい。
【0031】
図4は開度計測部8の構成を示すブロック図である。開度計測部8は、ON-OFFバルブ200のステム(弁棒)203の回転角度を連続的に検出することにより、バルブ開度を連続的に計測する開度センサ80と、開度計測部8が取り付けられたON-OFFバルブ200に固有のバルブIDを記憶するバルブID記憶部81と、バルブメンテナンス支援装置に対して開度計測値とバルブIDとを周期的に送信する送信部82とを備えている。
【0032】
送信部82は、バルブID記憶部81に記憶されているバルブIDを、開度計測値に付加して送信する。なお、ON-OFFバルブ200の開度を連続的に取得する必要があるので、開度計測値の計測・送信周期は、ON-OFFバルブ200の開閉所要時間の生じ得る最小値よりも短いことが必要である。
【0033】
図5は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。本実施例では、例えばプラント内にバルブが26個あるとして、これら26個のバルブにそれぞれ“A”,“B”,“C”,・・・,“M”,・・・,“X”,“Y”,“Z”という固有のIDが予め割り当てられているものとする。特に、バルブID“A”,“C”,“M”のバルブが電磁弁を利用しているON-OFFバルブで、このID“A”,“C”,“M”がバルブID記憶部1に予め記憶されているものとする。
【0034】
開度取得部2は、各ON-OFFバルブ200の開度計測部8から開度計測値を受信し(
図5ステップS100)、受信した開度計測値とこの開度計測値に付加されていたバルブIDと開度計測値の受信時刻とを開度記憶部3に格納する(
図5ステップS101)。なお、
図5では明記していないが、開度取得部2は、ステップS100,S101の処理を周期的に実施する。
【0035】
次に、経過時間計測部4は、バルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200が動作したときの動作完了時点を開度計測値の時系列データ上で特定し、時系列データの時間軸上において動作完了時点からの経過時間を計測する(
図5ステップS102)。
【0036】
例えば、全開から全閉になるスプリングリターンの動作により全閉時開度(ゼロ点)に到達したときを動作完了時点として、ゼロ点到達後の経過時間を計測するのが特に有効である。ただし、開度計測値がゼロ点になるのは理想的な場合であって、実際には計測誤差等の理由により、開度計測値がゼロ点になるとは限らない。
【0037】
そこで、経過時間計測部4は、開度計測値が所定の目標開度(全閉)に向かって変化し、目標開度の付近で目標開度方向へ変化しなくなった時点(開度計測値が一定値になった時点または反対方向へ変化した時点)を動作完了時点とすればよい。
【0038】
なお、上記の例はあくまでも特に有効という例であり、スプリングリターンではなく、操作器空気の力でON-OFFバルブ200が全閉から全開になる方向に動作する場合に全開時開度に到達したときを動作完了時点としてもよい。
また、スプリングリターン時に全閉から全開になるタイプのON-OFFバルブ200であれば、全開時開度に到達したときを動作完了時点とするのが特に有効である。
【0039】
全開から全閉になるスプリングリターンの場合と同様に、開度計測値が理想値になるとは限らない。そこで、経過時間計測部4は、開度計測値が所定の目標開度(全開)に向かって変化し、目標開度の付近で目標開度方向へ変化しなくなった時点を動作完了時点とすればよい。
【0040】
変動状態検出部5は、バルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、経過時間計測部4によって計測された経過時間が規定時間Tを過ぎた後に、開度計測値が動作完了時点の値から規定量α以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する(
図5ステップS103,S104)。
【0041】
上記のように全開から全閉になるスプリングリターンの動作により、ON-OFFバルブ200が全閉時開度に向かって動作する場合にふらつき状態を検出するのであれば、
図6に示すように、開度計測値PVが動作完了時点の値から規定量α以上離れる状態をふらつき状態として検出する。なお、
図6のSPは開度計測値PVの理想値を表している。実際の開度計測値PVには、動作の遅れや計測誤差等によりSPとの乖離が生じる。
図6のように規定時間Tは例えば5秒程度でよい。また、バルブ開度を0%(全閉)-100%(全開)の範囲とする場合、規定量αは例えば0.2%程度でよい。
【0042】
ON-OFFバルブ200が全開時開度に向かって動作する場合についても同様にしてふらつき状態を検出できる。
経過時間計測部4と変動状態検出部5とは、全閉から全開への動作と、全開から全閉への動作のどちらか一方について判定してもよいし、両方について判定してもよい。変動状態検出部5は、判定したバルブのIDと判定結果とを連結緩み判定部6に渡す。
【0043】
連結緩み判定部6は、変動状態検出部5によって開度計測値のふらつき状態が検出されなかった場合に(ステップS104においてNO)、ON-OFFバルブ200の連結部分が正常と判定する(
図5ステップS105)。また、連結緩み判定部6は、開度計測値のふらつき状態が検出された場合に(ステップS104においてYES)、ON-OFFバルブ200の連結部分に緩みの可能性があると判定する(
図5ステップS106)。
【0044】
なお、ふらつき状態が検出される頻度や回数を規定して、その頻度や回数を超えた場合に連結部分に緩みの可能性があると判定してもよい。
【0045】
判定結果提示部7は、連結緩み判定部6の判定結果をオペレータに対して提示する(
図5ステップS107)。具体的には、判定結果提示部7は、連結部分に緩みの可能性ありと判定されたON-OFFバルブ200について、このバルブのIDと判定結果とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示し、正常と判定されたON-OFFバルブ200のIDを通常の形式(例えば黒色で表示)で表示すればよい。
【0046】
図7は判定結果の提示例を示す図である。
図7の例では、判定結果提示部7が表示する画面70の領域700に、バルブID“A”,“C”,“M”の各バルブの判定結果が表示されている。
図7の例では、バルブID“M”のON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があると判定されたため、バルブIDと「緩みあり」という判定結果とが、他のON-OFFバルブの結果と異なる色(
図7の例では黒地に白)で表示されている。
【0047】
判定結果提示部7は、ON-OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、画面70の領域701に表示している。また、判定結果提示部7は、予め用意されている画像データを用いて、
図7に示すように診断対象のON-OFFバルブが配設されている箇所の配管計装
図702を画面70に表示するようにしてもよい。
【0048】
本実施例では、ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があることを検知できるので、オペレータがメンテナンス候補のON-OFFバルブを選定する作業を支援することができる。本実施例では、ON-OFFバルブを利用する生産設備におけるロスを低減することができ、従来に比べて生産設備を安定的に稼働させることが期待できる。
【0049】
なお、本実施例では、正常な状態だったON-OFFバルブが、突然、不安定になるケースは想定していない。すなわち、ON-OFFバルブの連結部分の緩みが徐々に進行する場合は、動作完了時点から規定時間Tが経過した後の開度計測値と動作完了時点の開度計測値との差が少しずつ規定量αに近づいていくことを想定している。
【0050】
ただし、規定時間Tを0秒とすれば、ON-OFFバルブが突然不安定になるケースもカバーできる。すなわち、経過時間計測部4と規定時間Tの設定は必須事項ではない。
経過時間計測部4を設けない場合、変動状態検出部5は、経過時間計測部4と同様の手法によりON-OFFバルブの動作完了時点を開度計測値の時系列データ上で特定し、動作完了時点の後に開度計測値が動作完了時点の値から規定量α以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定すればよい。
【0051】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、上記の発明の原理3に対応する実施例である。
図8は本実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。本実施例のバルブメンテナンス支援装置は、バルブID記憶部1と、開度取得部2と、開度記憶部3と、ON-OFFバルブの目標開度への動作の途中で開度計測値が目標開度と逆方向に規定量以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する変動状態検出部5aと、連結緩み判定部6と、判定結果提示部7とを備えている。
【0052】
図9は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。開度取得部2と開度記憶部3の動作(
図9ステップS200,S201)は、
図2のステップS100,S101で説明したとおりである。
【0053】
変動状態検出部5aは、バルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、全閉から目標開度(全開)への動作の途中あるいは全開から目標開度(全閉)への動作の途中で、開度計測値が目標開度と逆方向に規定量α以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する(
図9ステップS202)。
【0054】
具体的には、変動状態検出部5aは、ON-OFFバルブ200が全閉から全開へ動作している場合、逆方向の閉じる側へ開度計測値が規定量α(例えば0.2%)以上変化した状態を、ふらつき状態として検出する。また、変動状態検出部5aは、ON-OFFバルブ200が全開から全閉へ動作している場合、逆方向の開く側へ開度計測値が規定量α以上変化した状態を、ふらつき状態として検出する。
【0055】
例えば
図10の例において、変動状態検出部5aは、ON-OFFバルブ200が全閉から全開へ動作している場合に、開度計測値PVが逆方向の閉じる側へ変化した状態(
図10のRの状態)をふらつき状態として検出する。変動状態検出部5aは、判定したバルブのIDと判定結果とを連結緩み判定部6に渡す。
【0056】
第1の実施例と同様に、連結緩み判定部6は、変動状態検出部5aによって開度計測値のふらつき状態が検出されなかった場合に、ON-OFFバルブ200の連結部分が正常と判定する(
図9ステップS203)。また、連結緩み判定部6は、開度計測値のふらつき状態が検出された場合に、ON-OFFバルブ200の連結部分に緩みの可能性があると判定する(
図9ステップS204)。判定結果提示部7の動作(
図9ステップS205)は、第1の実施例と同じである。
【0057】
こうして、本実施例では、ON-OFFバルブの連結部分に緩みの可能性があることを検知できる。本実施例では、正常な状態だったON-OFFバルブが、突然、不安定になるケースも想定している。すなわち、ON-OFFバルブが何らかの衝撃などを受け、連結部分の緩みが急激に進行するような場合も想定している。
【0058】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、第1、第2の実施例の実装例を説明するものである。
図11はプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。本実施例では、バルブID“A”,“M”のON-OFFバルブ200-A,200-Mが流路15-1に配設され、バルブID“C”のON-OFFバルブ200-Cが流路15-3に配設されているものとする。
図11における16-A,16-C,16-Mは流量計測器、17はタンク、18は圧力発信器である。なお、
図11では、バルブIDが“A”,“C”,“M”以外のバルブについては記載を省略している。
【0059】
石油、化学系のプラントの機器管理システムには、プラントの各機器を制御・管理する管理装置19が設けられている。第1、第2の実施例で説明したバルブID記憶部1と開度取得部2と開度記憶部3については、プラント固有の膨大な情報を扱うので、管理装置19に実装されることが好ましい。
【0060】
一方、経過時間計測部4と変動状態検出部5,5aと連結緩み判定部6と判定結果提示部7とは、原則的にバルブのメンテナンス要否判断時のみ必要な処理を提供するものである。また、メンテナンス実施者(メンテナンス受託企業の作業担当者)は、プラントオーナ企業から委託されてプラントのメンテナンスを実施するのが一般的である。したがって、不特定多数のプラントを対象にすることを想定して、メンテナンス受託企業の作業担当者(オペレータ)が持ち歩く携帯型のコンピュータ20に、経過時間計測部4と変動状態検出部5,5aと連結緩み判定部6と判定結果提示部7とを実装することが好ましい。
【0061】
プラントの管理装置19とコンピュータ20とは、メンテナンス作業実施時にイーサネット(登録商標)などの通信機能を利用して一時的に接続される。
オペレータがコンピュータ20上のアプリケーションソフトウエアを起動すると、コンピュータ20のCPU(Central Processing Unit)は、メモリに格納されたプログラムに従って処理を実行し、経過時間計測部4と変動状態検出部5,5aと連結緩み判定部6と判定結果提示部7としての機能を実現する。
【0062】
経過時間計測部4は、管理装置19上のバルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、管理装置19上の開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200が動作したときの動作完了時点を開度計測値の時系列データ上で特定し、時系列データの時間軸上において動作完了時点からの経過時間を計測する(ステップS102)。
【0063】
変動状態検出部5は、バルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、経過時間が規定時間Tを過ぎた後に、開度計測値が動作完了時点の値から規定量α以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する(ステップS103,S104)。
【0064】
連結緩み判定部6は、変動状態検出部5によるふらつき状態の検出結果に基づいて、ON-OFFバルブ200の連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定する(ステップS105,S106)。判定結果提示部7は、連結緩み判定部6の判定結果をコンピュータ20のディスプレイに表示する(ステップS107)。
【0065】
オペレータは、表示されたバルブIDと判定結果に基づき、特に留意すべきON-OFFバルブ200を確認する。オペレータは、表示された事項を確認した後で、コンピュータ20と管理装置19との接続を解除する。
こうして、第1の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置を実際のプラントに適用することができる。
【0066】
また、第2の実施例を実際のプラントに適用する場合、変動状態検出部5aは、バルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、開度記憶部3に記憶された開度計測値を読み込み、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、目標開度への動作の途中で開度計測値が目標開度と逆方向に規定量α以上変動するふらつき状態が生じているかどうかを判定する(ステップS202)。
【0067】
連結緩み判定部6は、変動状態検出部5aによるふらつき状態の検出結果に基づいて、ON-OFFバルブ200の連結部分に緩みの可能性があるかどうかを判定する(ステップS203,S204)。判定結果提示部7は、連結緩み判定部6の判定結果をコンピュータ20のディスプレイに表示する(ステップS205)。
【0068】
第1~第3の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置は、CPU、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図12に示す。
【0069】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、例えばバルブ、管理装置、ディスプレイ等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のバルブメンテナンス支援方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1~第3の実施例で説明した処理を実行する。
【0070】
なお、第3の実施例に示したようにバルブメンテナンス支援装置を管理装置19とコンピュータ20に分けて実装する場合には、これらの各々を
図12のような構成で実現すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、バルブメンテナンス作業を支援する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…バルブID記憶部、2…開度取得部、3…開度記憶部、4…経過時間計測部、5,5a…変動状態検出部、6…連結緩み判定部、7…判定結果提示部、15-1,15-3…流路、16-A,16-C,16-M…流量計測器、17…タンク、18…圧力発信器、19…管理装置、20…コンピュータ。