IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-142622頭部装着型表示装置、光学モジュール、及び頭部装着型表示装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142622
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】頭部装着型表示装置、光学モジュール、及び頭部装着型表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241003BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241003BHJP
   G02C 11/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054842
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】野口 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 敏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓也
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H199CA04
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA59
2H199CA70
2H199CA86
2H199CA89
(57)【要約】
【課題】ケースに外力がかかっても、画像形成素子の位置決め状態が劣化することを防止する。
【解決手段】HMD200は、画像形成素子11aと、画像形成素子11aを保持するホルダー31と、画像形成素子11aからの映像光が入射する光学部材2a,2bと、光学部材2a,2bを収納し、ホルダー31を介して画像形成素子11aを内部に保持するケースCAと、ホルダー31をケースCA内で固定する第1接着部材FX1と、ホルダー31をケースCA外で固定する第2接着部材FX2とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成素子と、
前記画像形成素子を保持するホルダーと、
前記画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、
前記光学部材を収納し、前記ホルダーを介して前記画像形成素子を内部に保持するケースと、
前記ホルダーを前記ケース内で固定する第1接着部材と、
前記ホルダーを前記ケース外で固定する第2接着部材と、
を備える頭部装着型表示装置。
【請求項2】
前記第1接着部材は、湿気硬化型、光遅延硬化型、及び熱硬化型のいずれかの接着材で形成され、
前記第2接着部材は、光硬化型の接着材で形成される、請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
前記ケースは、内部に、前記第1接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第1保持構造を有する、請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
前記ケースは、外部に、前記第2接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第2保持構造を有する、請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
前記ホルダーは、前記第1接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第1保持構造を有し、
前記ケースは、前記第1保持構造に対向する壁体を有する、請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項6】
前記第1保持構造及び前記第2保持構造は、硬化前の前記接着材を保持する液溜めとして形成されている、請求項3から5のいずれか一項に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項7】
前記ケースは、底板部材と側壁とを有する容器状の本体と、前記本体の内側を覆うことによって収納空間を形成するカバーとを含み、
前記第1保持構造は、前記ケースの前記底板部材おいて、前記ホルダーの端部が対向する箇所に窪みを有する、請求項6に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項8】
前記ホルダーは、前記画像形成素子を支持する支持フレームと、前記支持フレームに接続される基部板とを有し、
前記支持フレームの端部は、前記ケースに形成された挿入口を介して前記ケース中に挿入された状態で、前記第1接着部材によって前記ケース内に固定され、
前記基部板は、前記挿入口を覆う状態で、前記第2接着部材によって前記ケース外に固定され、
前記第2保持構造は、前記ケースのうち前記基部板の周辺部が配置される箇所に段差状に形成されている、請求項6に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項9】
前記基部板は、前記ケースのうち前記挿入口が形成された側面部に当接して初期位置決めされる、請求項8に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項10】
画像形成素子と、
前記画像形成素子を保持するホルダーと、
前記画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、
前記光学部材を収納し、前記ホルダーを介して前記画像形成素子を内部に保持するケースと、
前記ホルダーを前記ケース内で固定する第1接着部材と、
前記ホルダーを前記ケース外で固定する第2接着部材と、
を備える光学モジュール。
【請求項11】
画像形成素子を保持するホルダーと、光学部材を収納し前記ホルダーを介して前記画像形成素子を内部に保持するケースとを備える頭部装着型表示装置の製造方法であって、
前記ホルダーを第1接着部材によって前記ケース内で固定し、
前記ホルダーを第2接着部材によって前記ケース外で固定する、
頭部装着型表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1接着部材の硬化は、前記第2接着部材の硬化よりも遅い、請求項11に記載の頭部装着型表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする頭部装着型表示装置、光学モジュール、及び頭部装着型表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部装着型表示装置として、映像素子を収納する映像素子ケースと、映像素子からの光を投射する投射光学系を収納する鏡筒とを備えるものであって、映像素子ケースに設けられた一対の平板状部材と、鏡筒の一端に設けられた接続部とのうち、いずれか一方に設けられた凸状リブと、他方に設けられたスリット状部分とを用いて、投射光学系に対する映像素子の位置合わせを行いつつ、これらを接着剤によって相互に固定することが開示されている(特許文献1)。特許文献1の装置では、凸状リブとスリット状部分とを用いて位置調整を行うことで製造公差の影響を低減し、適切なアライメントを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-211674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の装置では、映像素子及び投射光学系の接合時及びその後に、映像素子及び投射光学系が部分的に露出するので、防塵対策が不十分となりやすい。また、映像素子ケースに外力がかかったり熱的負荷がかかると、映像素子の位置決め状態が劣化する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における頭部装着型表示装置は、画像形成素子と、画像形成素子を保持するホルダーと、画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、光学部材を収納し、ホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するケースと、ホルダーをケース内で固定する第1接着部材と、ホルダーをケース外で固定する第2接着部材とを備える。
【0006】
本発明の一側面における光学モジュールは、画像形成素子と、画像形成素子を保持するホルダーと、画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、光学部材を収納し、ホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するケースと、ホルダーをケース内で固定する第1接着部材と、ホルダーをケース外で固定する第2接着部材とを備える。
【0007】
本発明の一側面における頭部装着型表示装置の製造方法は、画像形成素子を保持するホルダーと、光学部材を収納し前記ホルダーを介して前記画像形成素子を内部に保持するケースとを備える頭部装着型表示装置の製造方法であって、前記ホルダーを第1接着部材によって前記ケース内で固定し、前記ホルダーを第2接着部材によって前記ケース外で固定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の頭部装着型表示装置の使用状態を説明する外観斜視図である。
図2】片側の表示装置の内部構造を説明する側方断面図である。
図3】表示部等の支持構造を説明する斜視図である。
図4】バレル及びこれに保持された光学部材等の側方断面図である。
図5】バレルカバーを除いた残りの光学部品等の背面図及び平面図を示す。
図6】バレルの分解斜視図である。
図7】表示ユニットを示す表側の斜視図、側断面図、及び裏側の斜視図である。
図8】バレル前部の拡大断面図である。
図9】光学モジュールの平面図である。
図10A】バレルの前方下部に形成された第1保持構造を説明する図である。
図10B】第1保持構造にホルダーの端部を差し込んだ状態を説明する図である。
図10C】ホルダーの端部の状態を説明する図である。
図11A】変形例の第1保持構造を説明する図である。
図11B】変形例のホルダーを説明する図である。
図11C】ホルダーの端部の状態を説明する図である。
図12】バレルに対する表示ユニットの組付けを説明する斜視図である。
図13A】第2実施形態におけるホルダーを説明する図である。
図13B】ホルダーの端部の状態を説明する図である。
図14】第3実施形態の頭部装着型表示装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、図1、2等を参照して、本発明に係る頭部装着型表示装置等の第1実施形態について説明する。
【0010】
図1は、頭部装着型表示装置(以下、ヘッドマウントディスプレイ又はHMDとも称する。)200の装着状態を説明する図であり、HMD200は、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0011】
HMD200は、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bと、表示装置100A,100Bを支持するテンプル状の一対の支持装置100Cと、情報端末であるユーザー端末90とを備える。第1表示装置100Aは、単独でHMDとして機能し、上部に配置される第1表示駆動部102aと、メガネレンズ状で眼前を覆う第1コンバイナー103aとで構成される。第2表示装置100Bも同様に、単独でHMDとして機能し、上部に配置される第2表示駆動部102bと、メガネレンズ状で眼前を覆う第2コンバイナー103bとで構成される。支持装置100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材であり、外観上一体化されている表示駆動部102a,102bを介して一対のコンバイナー103a,103bの上端側を支持している。第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、光学的に同一又は左右反転させたものであり、第2表示装置100Bについては、詳細な説明を省略する。
【0012】
図2は、第1表示装置100Aの内部構造を説明する側方断面図である。第1表示装置100Aは、第1画像形成素子11aと第1表示部20aと第1回路部材80aとを備える。第1画像形成素子11aを映像素子とも呼ぶ。第1表示部20aは、虚像を形成する結像光学系であり、投射レンズ21と、プリズムミラー22と、シースルーミラー23とを有する。第1表示部20aのうち、投射レンズ21とプリズムミラー22とは、第1画像形成素子11aからの映像光MLが入射する第1投射光学系12aとして機能し、シースルーミラー23は、上記第1投射光学系12aから射出される映像光MLを瞳位置PP又は眼EYに向けて部分的に反射する部分透過ミラー123として機能する。第1表示部20aは、第1投射光学系12aとシースルーミラー23とを一体化した状態で有するものである。第1投射光学系12aを構成する投射レンズ21は、第1画像形成素子11aの光射出側に配置される第1光学部材2aに相当し、プリズムミラー22は、投射レンズ21である第1光学部材2aの光射出側に配置される第2光学部材2bに相当する。また、第1画像形成素子11aと投射レンズ21とプリズムミラー22とは、図1に示す第1表示駆動部102aの一部に対応し、シースルーミラー23は、第2光学部材2bの光射出側に配置されており、図1に示す第1コンバイナー103aに対応する。第1投射光学系12aを構成する投射レンズ21及びプリズムミラー22は、第1画像形成素子11aとともに相互に位置決めされた状態で容器状のバレル41内で固定されている。バレル41は、第1投射光学系12aや第1画像形成素子11aを位置決めした状態で収納するケースCAである。
【0013】
第1表示装置100Aにおいて、第1画像形成素子11aは、自発光型の画像光生成装置である。第1画像形成素子11aは、映像光MLを第1投射光学系12aに射出する。第1画像形成素子11aは、バレル41中に後から収納され支持される。第1画像形成素子11aは、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであり、2次元の表示面11dにカラーの静止画又は動画を形成する。第1画像形成素子11aは、駆動回路部材80aを含む表示制御装置88に駆動されて表示動作を行う。第1画像形成素子11aは、有機ELディスプレイに限らず、無機EL、有機LED、LEDアレイ、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。第1画像形成素子11aは、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。第1画像形成素子11aとして、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。なお、第1表示装置100Aにおいて、駆動回路部材80aや表示制御装置88を除いた光学的装置を、光学モジュール100と呼ぶ。
【0014】
第1表示部20aは、2つの反射面を含み、シースルーミラー23及びプリズムミラー22よって光路の折り曲げが行われる。第1表示部20aは、軸外し光学系OSとなっている。投射レンズ21、プリズムミラー22、及びシースルーミラー23は、非軸対称に配置されている。この第1表示部20aでは、基準面であるYZ面に平行な軸外し面内で光軸AXの折り曲げを行うことで、かかる軸外し面(すなわち基準面)に沿って光学素子21,22,23が配列されている。具体的には、YZ面に平行で紙面に対応する軸外し面において、投射レンズ21から反射面22bまでの光路部分P1と、反射面22bからシースルーミラー23までの光路部分P2と、シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路部分P3とが、Z字状に2段階で折り返される配置となっている。
【0015】
第1表示部20aのうち、投射レンズ21から反射面22bまでの光路部分P1は、視点を基準とする後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。反射面22bからシースルーミラー23までの光路部分P2は、前方に向かって斜め下方向に延びている。水平面方向(XZ面)を基準とした場合、光路部分P2の傾斜が光路部分P1の傾斜よりも大きくなっている。シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路部分P3は、後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。図示の例では、光軸AXのうち光路部分P3に対応する部分は、+Z方向に向かって、下向きを負として、-10°程度となっている。つまり、シースルーミラー23は、光軸AX又は光路部分P3が所定角度上向き、つまり10°程度上向きとなるように映像光MLを反射する。結果的に、光路部分P3に対応する光軸AXの部分を延長した射出光軸EXは、前方の+Z方向に平行な中心軸HXに対して10°程度下向きに傾いて延びる。
【0016】
第1表示部20aのうち、投射レンズ21は、第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qを含む。投射レンズ21は、第1画像形成素子11aから射出された映像光MLを受けて、プリズムミラー22に入射させる。投射レンズ21は、第1画像形成素子11aから射出された映像光MLを平行光束に近い状態に集光する。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面、すなわちこれらの入射面及び射出面は、自由曲面又は非球面である。第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの入射面及び射出面は、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性をそれぞれ有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性をそれぞれ有する。第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面には、反射防止膜を形成することができる。
【0017】
プリズムミラー22は、ミラーとレンズとを複合させた機能を有する屈折反射機能を有する光学部材であり、投射レンズ21からの映像光MLを屈折させつつ反射する。プリズムミラー22は、第1光学部材2aの光射出側に配置される入射面22aと、光軸AXを折り曲げる反射面22bと、反射面22bに対向して入射面22aとは対称的な方向に配置される射出面22cとを有する。プリズムミラー22は、投射レンズ21が配置された前方から入射する映像光MLを、入射方向を反転させた方向(プリズムミラー22から見た光源の方向)に対して下方に傾斜した方向に折り返すように射出する。プリズムミラー22を構成する光学面である入射面22aと反射面22bと射出面22cとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。プリズムミラー22の光学面、つまり入射面22aと反射面22bと射出面22cとは、例えば自由曲面である。入射面22aと反射面22bと射出面22cとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。プリズムミラー22は、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。反射面22bについては、全反射によって映像光MLを反射するものに限らず、金属膜又は誘電体多層膜からなる反射面とすることもできる。この場合、反射面22b上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜し、或いは金属で形成されたシート状の反射膜を貼り付ける。詳細な図示は省略するが、入射面22a及び射出面22c上には、反射防止膜を形成することができる。
【0018】
プリズムミラー22の射出面22cは、全体的に凹面であり、YZ面に平行で光軸AXが通る軸外し面上すなわち紙面上において凹面であり、YZ面に垂直で射出面22cの中心を通る横断面CSにおいても凹面である。プリズムミラー22の射出面22cは、バレル41の射出口41oにおいて露出するため、凹面とすることにより、外の物体との接触を回避し易くなり、損傷の発生を抑制することができる。プリズムミラー22の射出面22cは、中間像IMの近くに配置されており、映像光MLの光束断面が絞られた箇所に配置されるので、面積を比較的小さくすることができる。プリズムミラー22の射出面22cの面積を比較的小さくすることによっても、射出面22cに発生する損傷を抑制することができる。
【0019】
シースルーミラー23すなわち第1コンバイナー103aは、凹の表面ミラーとして機能する湾曲した板状の反射光学部材であり、プリズムミラー22からの映像光MLを部分的に反射するとともに外界光OLを部分的に透過させる。シースルーミラー23は、プリズムミラー22からの映像光MLを瞳位置PPに向けて反射する。シースルーミラー23は、反射面23cと外側面23oとを有する。シースルーミラー23は、眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPを覆うとともに瞳位置PPに向かって凹形状を有し、外界に向かって凸形状を有する凹面ミラーである。瞳位置PP又はその開口PPaは、アイポイント又はアイボックスと呼ばれ、シースルーミラー23を含む第1表示部20aの射出瞳EPに相当する。シースルーミラー23は、正のパワーを持つ凹面ミラーとして、第1画像形成素子11aに形成され第1投射光学系12aによって再結像された中間像IMを拡大視することを可能にする。
【0020】
シースルーミラー23は、板状体23bの裏面上に透過性反射膜23aを形成した構造を有する。シースルーミラー23の反射面23cは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。シースルーミラー23の反射面23cは、例えば自由曲面である。反射面23cは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。
【0021】
シースルーミラー23の反射面23cは、映像光MLの反射に際して一部の光を透過させる。これにより、外界光OLがシースルーミラー23を通過するので、外界のシースルー視が可能になり、外界像に虚像を重ねることができる。この際、板状体23bが数mm程度以下に薄ければ、外界像の倍率変化を小さく抑えることができる。反射面23cの映像光MLや外界光OLに対する反射率は、映像光MLの輝度確保や、シースルーによる外界像の観察を容易にする観点で、想定される映像光MLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。シースルーミラー23の基材である板状体23bは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。板状体23bは、これを周囲から支持する支持板61と同一の材料で形成され、支持板61と同一の厚みを有する。透過性反射膜23aは、例えば膜厚を調整した複数の誘電体層からなる誘電体多層膜で形成される。透過性反射膜23aは、膜厚を調整したAl、Ag等の金属の単層膜又は多層膜であってもよい。透過性反射膜23aは、例えば蒸着を利用した積層によって形成できるが、シート状の反射膜を貼り付けることによって形成されてもよい。板状体23bの外側面23oには、反射防止膜が形成されている。
【0022】
光路について説明すると、第1画像形成素子11aからの映像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から射出される。投射レンズ21を通過した映像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、射出面22cで再度屈折される。プリズムミラー22からの映像光MLは、一旦中間像IMを形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって50%程度以下の反射率で反射される。シースルーミラー23で反射された映像光MLは、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、シースルーミラー23やその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、第1表示装置100Aを装着した装着者USは、外界像に重ねて、映像光MLによる虚像を観察することができる。
【0023】
図3を参照して、第1表示装置100Aにおいて、第1結像光学系20aは、バレル41すなわちケースCA中に収納され、点線で示す細長いフレーム52の-X側の部分52aに対して例えば接着材を用いて固定され、フレーム52に対して吊るされるように支持されフレーム52の下側に配置されている。第2表示装置100Bにおいて、第2結像光学系20bは、バレル41すなわちケースCA中に収納され、点線で示す細長いフレーム52の+X側の部分52bに対して例えば接着材を用いて固定され、フレーム52に対して吊るされるように支持されフレーム52の下側に配置されている。フレーム52は、剛性及び軽量性確保の観点から例えばマグネシウム合金のような金属材料で形成されている。フレーム52は、駆動回路部材80aを配置するための凹所REを上側に有し、バレル41とともに外装部材71によって上下を覆われている(図2参照)。
【0024】
第1結像光学系20aは、第1投射光学系12aと第1コンバイナー103aとを一体化した状態で有するものであり、第2結像光学系20bは、第2投射光学系12bと第2コンバイナー103bとを一体化した状態で有するものである。第1投射光学系12aを収納するバレル41には、第1コンバイナー103aの上端61gが位置決めされた状態で接着等によって固定されている。第1コンバイナー103aを支持するバレル41は、第1投射光学系12aに加えて第1画像形成素子11aを収納する空間を有し、第1画像形成素子11a等を図2等に示す投射レンズ21等に対して位置決めした状態で支持する。第2投射光学系12bを収納するバレル41には、第2コンバイナー103bの上端61gが位置決めされた状態で接着等によって固定されている。第2コンバイナー103bを支持するバレル41は、第2投射光学系12bに加えて第2画像形成素子11bを収納する空間を有し、第2画像形成素子11bを図2等に示す投射レンズ21等と同様のものに対して位置決めした状態で支持する。
【0025】
図4及び5を参照して、バレル41すなわちケースCAの構造について説明する。図4中で、領域AR1は、バレル41、及び、これに保持された第1画像形成素子11a及び光学部材2a,2bの側方断面図であり、領域AR2は、第1画像形成素子11a等を除いた状態の側方断面図であり、領域AR3は、さらにバレルカバー41uを除いた状態の側方断面図である。また、図5中で、領域BR1は、バレルカバー41uを除いた状態の背面図であり、領域BR2は、バレルカバー41uを除いた状態の後端部の平面図である。
【0026】
バレル41又はケースCAは、バレル本体41aとバレルカバー41uとを含み、第1光学部材2aを収納し、第2光学部材2bを保持する。バレル本体41a及びバレルカバー41uは、例えばポリカーボネート樹脂に黒色顔料を添加して遮光性を持たせた樹脂材料で形成される。バレル本体41aは、上方が開放されたバスタブ状の容器であり、底の一部に射出口41oを有する。バレルカバー41uは、バレル本体41aを上方から覆うように固定される。バレル本体41aは、2つの側板部材41cと底板部材41dと前板部材41eと2つの突起部41f,41g(図5参照)とを有する。これらのうち、2つの側板部材41cと前板部材41eとを合わせて側壁SWと呼ぶ。2つの側板部材41cは、光軸AXが延びる基準面HS(図5参照)に対して略平行に延び互いに離間する。底板部材41dは、光軸AXが延びる基準面HSに垂直なXZ面に略沿って延び、その後方端には、射出口41oが設けられている。底板部材41dにおいて、射出口41oの後方及び側方には、ガード部材41qが設けられ、第2光学部材2bの下部の側面22n等を覆っている。前板部材41eは、底板部材41dの前方端と2つの側板部材41cの前方端とを連結している。2つの突起部41f,41gは、2つの側板部材41cの上部から外側に張り出すように横方向に延びている。
【0027】
一方の側板部材41cの内側には、第1光学部材2aを構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qと、第2光学部材2bのプリズムミラー22とを支持する突起として、段差を有する案内凸部45a,45b,45c,45dが形成されている。なお、図示を省略しているが、他方の側板部材41c(図5参照)の内面にも、案内凸部45a,45b,45c,45dと同様の案内凸部が形成されている。2つの側板部材41cの内面に設けられて対向する2つの第1の案内凸部45aによって第1レンズ21oが片寄せされ位置決めされた状態で接着され、バレル本体41aに支持される。同様に、第2の案内凸部45bによって第2レンズ21pが位置決めされた状態で接着され、バレル本体41aに支持され、第3の案内凸部45cによって第3レンズ21qが位置決めされた状態で接着され、バレル本体41aに支持される。第4の案内凸部45dによってプリズムミラー22の側面22sに設けられた突起22t(図5参照)を介してプリズムミラー22が位置決めされた状態で接着され、バレル本体41aに支持される。
【0028】
バレルカバー41uは、底板部材41dの反対側に配置されバレル本体41aの内側を覆うことによって収納空間ISを形成する。バレルカバー41uは、天板41xと後部板41yとを備える。天板41xは、XZ面に平行に延び、後部板41yは、第2光学部材2bのプリズムミラー22の反射面22bの外側を覆うように傾斜して配置される。バレルカバー41uにおいて、前方の+Z側には、周りから所定高さだけ低くされた位置決め用のホルダー台座41sが形成され、ホルダー台座41sの前方には、挿入口41zが形成されている。バレルカバー41uに設けられたホルダー台座41sは、第1画像形成素子11a用のホルダー31の基部板31bに対向する。基部板31bは、挿入口41zの一部、若しくは全部を覆いつつバレル41に固定されている。後部板41yの内面41mは、XZ面及びXY面に対して傾斜し、プリズムミラー22の反射面22bに沿って反射面22bの近傍に延びている。反射面22bの外側と、後部板41yの内面41mとの間には、一様な隙間GAが形成されている。
【0029】
図6に示すように、バレルカバー41uの外周に沿って延びる外縁42qとバレル本体41aの上端42pとの間には、例えば段差のような嵌合構造47a,47bが設けられ、相互の位置決めを達成できる。バレルカバー41uの外縁42qとバレル本体41aの上端42pとは、本体とカバーとの連結部CJとなっている。連結部CJにおいて、バレルカバー41uの外縁42qとバレル本体41aの上端42pとの隙間、つまり嵌合構造47a,47bと外縁42q又は上端42pとの隙間には、接着材又はシール材として機能する密閉部材SMが充填されている(図4の領域AR2参照)。この場合、収納空間ISの機密性を高めることができる。
【0030】
図4及び5を参照して、バレル41内において、第1光学部材2aと第2光学部材2bとの間には、絞り板部材26が配置されている。図5を参照して、絞り板部材26は、中央部26aと、2つの側辺部26bとを有する。つまり、絞り板部材26は、上端が開放された形状を有する。絞り板部材26は、周囲の4箇所に切欠き26fを有し、切欠き26fは、プリズムミラー22の入射面22aの周囲に形成された4つの突起22f(図4参照)と嵌合する。これにより、プリズムミラー22の入射面22aに対して絞り板部材26が位置決めされる。絞り板部材26は、切欠き26fの周辺で接着材によって突起22fに固定される。
【0031】
図4を参照して、プリズムミラー22の射出面22cの外縁22cpと、射出口41oの縁部44との間には、それらの隙間であって内部側において、接着材又はシール材として機能する密閉部材SMが充填されている。密閉部材SMは、バレル本体41aの射出口41oと、第2光学部材2b又はプリズムミラー22の射出面22cの周囲との間を密閉する。この場合、第2光学部材2bの射出面22cは、外部に露出するが、第2光学部材2bの射出面22cよりも光学的に上流の光学面すなわち光源に近い光学面は、バレル41の防塵や防水によって保護される。
【0032】
バレル41において、前板部材41eに臨む空間ISaには、ホルダー31に支持された第1画像形成素子11aが挿入口41zを介して上方から挿入され、位置決めされた状態で固定されている。この場合、第1画像形成素子11aがバレル41内に配置され、外部からの衝撃の影響を受けにくくなり、製造工程における作業ミス等があっても位置調整ズレが発生しにくくなる。
【0033】
図7は、第1画像形成素子11aをホルダー31に組み付けた表示ユニットDUを説明する図である。図7中で、領域CR1は、表示ユニットDUの表側を示す斜視図であり、領域CR2は、表示ユニットDUの側断面であり、領域CR3は、ホルダー31の裏側を示す斜視図である。
【0034】
図示の表示ユニットDUにおいて、第1画像形成素子11aとこれに付随する遮光板33とは、ホルダー31に固定され、相互に位置決めされている。
【0035】
第1画像形成素子11aは、板状の本体部分11kと、本体部分11kの上部に接続されて上方に延びるFPC(Flexible Printed Circuits)部11fとを有する。これらのうち、本体部分11kは、駆動回路11jが形成され本体部分11kの外形をなすシリコン基板SSと、有機EL材料を含んで構成される有機EL素子であって映像光MLとなるべきカラーの光を発生させる発光層11eと、シリコン基板SSと協働して発光層11eを密閉する封止用の保護ガラスGGとを備える。ここで、発光層11eは、表示面11dに相当する。第1画像形成素子11aは、FPC部11fから受けた駆動信号に従い発光動作を行うことで、保護ガラスGG側へ向けて映像光MLを射出させる。シリコン基板SSの裏面SSaには、弾性を持つ放熱シート11sを張り付けることができる。放熱シート11sは、例えばグラファイト製で、熱伝導性の高い粘着材を用いてシリコン基板SSの裏面SSaに接着されている。放熱シート11sは、図示を省略するが、先端側において金属製のフレーム52(図2及び3参照)に固定され、シリコン基板SSを熱伝導によって冷却する効果がある。放熱シート11sは、複数のシートを張り合わせた積層構造とすることができる。
【0036】
ホルダー31は、遮光性を有する樹脂で形成された部材であり、側面視L字状に折れ曲がった外形を有する。ホルダー31は、第1画像形成素子11aを支持する支持フレーム31aと、支持フレーム31aの上部に接続されて支持フレーム31aと交差する方向(具体的には直交する方向)に延びる基部板31bとを有する。
【0037】
支持フレーム31aは、第1画像形成素子11aを支持した状態でバレル41に形成された挿入口41z(図4参照)を介してバレル41中に挿入される。基部板31bは、支持フレーム31aの根元側に接続され、バレル41中に挿入されない。支持フレーム31aは、矩形状の外形を有し、平板部31sと枠部31tとを含む。平板部31sは、上端で基部板31bに接続されている。枠部31tは、U字状で、第1画像形成素子11aを左右方向と下方向から囲む。支持フレーム31aは、平板部31sと枠部31tとに囲まれた矩形の開口A1を有する。開口A1には、第1画像形成素子11aの保護ガラスGGが嵌め込むように配置される。支持フレーム31aの内部であって、Y方向の上部と下部には、横のX方向に平行に延びる2つの支持領域31pが形成されている。両支持領域31pは、接着材を介して第1画像形成素子11aのシリコン基板SSのうち上下の表面領域SScに接着されている。これにより、第1画像形成素子11aが支持フレーム31aに対して位置決めされた状態で支持され、第1画像形成素子11aの表示面11dをXY面に略平行な所定の位置決めされた状態とすることができる。支持フレーム31aの-Z側には、遮光板33が固定されている。
【0038】
ホルダー31の基部板31bは、矩形平板状の外形を有し、下面31jは、XZ面に平行に延びる。基部板31bは、バレル41のバレルカバー41uに形成されたホルダー台座41s上に載置され、位置決め後にホルダー台座41sに固定される(図4等参照)。結果的に、基部板31bに形成された第1面である下面31jと、ホルダー台座41sに形成された第2面である座面41nとは、互いに対向する。基部板31bの上面31uは、後述する3次元駆動装置のアームによる吸着や支持を容易にするため、滑らかで平坦になっている。
【0039】
遮光板33は、ホルダー31の支持フレーム31aに対して接着材や粘着材を利用して固定されている。遮光板33は、矩形の開口33pを設けた遮光絞りであり、遮光性を有する金属、樹脂等で形成されている。遮光板33により、迷光が発生すことを抑制できる。第1画像形成素子11aの表示面11dから射出される有効な映像光MLは、遮光板33によって遮られることなく開口33pを通過する。遮光板33を固定する際には、支持フレーム31aに形成された4つの突起31qを位置決めとして用いることができる。4つの突起31qは、遮光板33から左右に形成された突出部33cを上下から把持しており、遮光板33が支持フレーム31aに対して適正に位置決めされる。遮光板33は、接着材を用いることで支持フレーム31aに対して恒久的に固定することができる。
【0040】
図8及び9を参照して、バレル41に対する表示ユニットDUの外側からの固定方法や位置決め方法について説明する。図8は、光学モジュール100の要部を説明する拡大断面図であり、図9は、光学モジュール100の組み立て方法を説明する図である。図9中で、領域DR1は、バレル41に表示ユニットDUを組み付けた状態を示す平面図であり、領域DR2は、表示ユニットDUを組み付ける前の状態を示す平面図である。ここで、光学モジュール100は、バレル41を含む第1投射光学系12aと第1コンバイナー103aとを組み合わせた第1表示部20aに対して、第1画像形成素子11aを含む表示ユニットDUを組付けたものである。
【0041】
バレル41の上面である、バレルカバー41uの天板41xに形成されたホルダー台座41sのうち左右及び後方の縁部分41rには、段差S1が形成されている。つまり、ホルダー台座41sの上面又は座面41nである初期当接面49pの高さは、天板41xの上面49cの高さよりも低くなっている。ホルダー台座41sの段差S1及びその近傍は、ホルダー31とバレル41とを接続する接着材AM1を保持する。接着材AM1は、光硬化型の樹脂であり、具体的にはアクリル系の紫外線硬化樹脂である。後述するホルダー31の位置決め後に接着材AM1は硬化される。
【0042】
表示ユニットDUのホルダー31のうち、支持フレーム31aの下端である端部31eを挿入口41zから挿入し、支持フレーム31a全体を第1画像形成素子11aとともにバレル41中に進入させると、第1画像形成素子11aが空間ISaに収まり、基部板31bが窪んだホルダー台座41sに嵌り込むように載置される。この際、挿入口41zの大半が基部板31bによって塞がれた状態となって、ホルダー31中への塵や埃の侵入を抑制する。また、基部板31bがホルダー台座41s上に載置されると、ホルダー台座41sの座面41nである初期当接面49pと、基部板31bの下面31jである初期当接面39pとが当接し、第1画像形成素子11aの表示面11dの中心が第1光学部材2aの第1レンズ21oに向かう光軸AXと同じ位置又は所定距離だけ低くされた初期位置決め状態となる。つまり、初期段階以後の調整に際して、ホルダー31をバレル41に対して上側の+Y方向に移動させることができ、ホルダー31の+Y方向への移動量の微調整によってY方向に関する精密な位置決めが可能になる。
【0043】
ホルダー31の基部板31bは、左右及び後方の縁部分に肉薄部35tを有する。肉薄部35tは、ホルダー台座41sの段差S1に向かう段差S2となっている。結果的に、バレルカバー41uのホルダー台座41sに設けられた段差S1と、ホルダー31の肉薄部35tに設けられた段差S2とによって溝TRが形成される。この溝TRは、接着材塗布部AAの一部であり、基部板31bの肉薄部35tの周辺に接着材AM1を保持し意図しない拡散を防止する役割を有する。つまり、段差S1,S2は、拡散防止壁といえる。後述するホルダー31の位置決めに際して、ホルダー31が微小変位する。このようなホルダー31の変位に伴って接着材AM1の塗布状態に粗・密が発生し、密の位置では接着材AM1がホルダー31の周囲(つまり上面31u)にはみ出したり、接着材AM1がホルダー台座41sの外にはみ出したりするおそれがあり、その後の調整や取り扱いの妨げになり得る。これを防止するため、溝TRが設けられ、接着材AM1を必要な領域に止めるようにしている。
【0044】
図9を参照して、バレルカバー41uに形成されたホルダー台座41sの-Z側の縁部分には、段差S1の側面から前方の+Z側に突出する2つの突起49sが設けられている。2つの突起49sは、ホルダー31の基部板31bの-Z側の縁部分に形成された肉薄部35tにおける2つの対応箇所39sと当接する。ホルダー31の後端の対応箇所39sである初期当接箇所39dと、バレルカバー41uのホルダー台座41sの2つの突起49sである初期当接箇所49dとが当接することによって、ホルダー31が側面部としてのバレルカバー41uに対して初期位置決めされた状態となる。この場合、図8に示す第1画像形成素子11aの表示面11dから第1光学部材2aの第1レンズ21oまでの距離は、本来の適正な距離よりも若干短くなっている。つまり、初期段階以後の調整に際して、ホルダー31をバレル41に対して+Z方向に所期の調整幅又は可動幅の範囲内で移動させることができ、ホルダー31の+Z方向への移動量の微調整によってZ方向に関する精密な位置決めが可能になる。
【0045】
初期位置決め用の突起49sについては、ホルダー台座41sの-Z側の縁部分に設けられるものに限らず、図9の領域DR2に示すように、突起49sに代えて或いはこれに追加して、一対の突起149sをホルダー台座41sの±X側の縁部分のいずれかに設けることができる。
【0046】
ホルダー31の基部板31bの位置を挿入口41z内でX方向及びZ方向に微動させることができるように、挿入口41zの平面視の輪郭を、基部板31b及び第1画像形成素子11aの平面視の輪郭より一まわり大きくしている。つまり、挿入口41zは、支持フレーム31aを第1画像形成素子11aの表示面11dの法線方向及びこれに垂直な横方向に移動させることを許容する調整代を含むサイズを有する。これに合わせて、第1画像形成素子11aや支持フレーム31aを収納する空間ISaは、第1画像形成素子11a等との干渉を回避して第1画像形成素子11a等の微小移動を許容するものとなっている。結果的に、ホルダー31の前方上部、つまり基部板31bと支持フレーム31aとのつなぎ目の前方+Z側において、挿入口41zが部分的に開放されて隙間G1が形成された状態となっている。このため、ホルダー31をバレル41に対して位置決めして固定した後、隙間G1を覆うように、挿入口41zの前方端と第1画像形成素子11aのシリコン基板SS又は放熱シート11sとの間にこれらの間を充填するように封止部である接着材AM2を塗布し、後述するホルダー31の位置決め後に接着材AM2を硬化させる。接着材AM2は、光硬化型の樹脂であり、具体的にはアクリル系の紫外線硬化樹脂である。接着材AM2は、硬化前に比較的粘度が高く形状維持が容易になっている。溝TRに対応する接着材AM1と隙間G1に対応する接着材AM2とを合わせると長方形の4辺のように閉じた形状となる。硬化後の接着材AM1,AM2は、ホルダー31をケースCA外で固定する第2接着部材FX2として機能する。つまり、ホルダー31の基部板31bを囲む溝TRは、液溜めLRであり、第2接着部材FX2を形成する硬化前の接着材AM1を保持する第2保持構造HL2として機能する。第2保持構造HL2は、ホルダー31の基部板31bとバレル41のホルダー台座41sとによって、これらの間に溝状の窪みとして形成される。また、硬化後の接着材AM1,AM2を合わせたものは防塵構造DPとしても機能する。防塵構造DPは、ホルダー31とバレル41との防塵を確保しつつホルダー31とバレル41との固定を達成する。防塵構造DPの接着材AM1,AM2は、基部板31bの周辺に沿って延びホルダー台座41sにはみ出している。防塵構造DPは、光硬化樹脂で形成され、ホルダー31をバレル41に対して位置決めした状態を維持する封止部材である。接着材AM1,AM2は、硬化収縮が少ない材料であることが望ましい。防塵構造DPを構成する接着材AM1,AM2が塗布される箇所(溝TRや隙間G1)が接着材塗布部AAとなる。
【0047】
なお、図9の領域DR2に示すように、バレル41の上面には、挿入口41zを封止するように、予めシールRKを張り付けておくことができる。ホルダー31の基部板31bを挿入口41zに挿入する直前にシールRKを剥がせば、バレル41内への塵や埃の侵入防止を確実にすることができる。
【0048】
図10A~10Cを参照して、バレル本体41aの内面に対するホルダー31の支持フレーム31aの固定について説明する。図10Aは、バレル本体41aの前方下部41aaの一部を切出した斜視断面図であり、図10Bは、前方下部41aaにおける支持フレーム31aの端部31eの固定方法を説明する斜視断面図である。図10Cは、支持フレーム31aの端部31eの周辺を第1保持構造HL1とともに拡大して示す斜視断面図である。
【0049】
バレル本体41aの前方下部41aaには、底板部材41dと前板部材41eとの境界近傍において、内面41iから突起し横のX方向に延びるリブ48が形成されている。リブ48と、底板部材41d及び前板部材41eの境界近傍領域と、一対の側板部材41cの前方下端とは、細長い受け皿又は堀を形成しており、硬化前の接着材AM3を保持する第1保持構造HL1として機能する。第1保持構造HL1は、硬化前の接着材AM3を保持する液溜めLRであり、窪みDEを有する。第1保持構造HL1は、ホルダー31の底板部材41d及び前板部材41eの境界又はその周辺において、溝状の窪みとして形成される。第1保持構造HL1は、硬化前の液状の接着材AM3が必要箇所から流出することを抑制している。
【0050】
ケースCA又はバレル41の底板部材41dにおいて、第1保持構造HL1は、図8等に例示されるように、バレルカバー41uに対して初期位置決めされた状態のホルダー31の端部31eが対向する箇所に形成され、端部31eが対向する窪みDEを有する。窪みDEに硬化前の接着材AM3を充填又は塗布し、ホルダー31の端部31eを接着材AM3が充填又は塗布された窪みDEに差し込んで硬化させることで、窪みDEとホルダー31の端部31eとの間で接着が達成される。硬化後の接着材AM3は、ホルダー31をケースCA内で固定する第1接着部材FX1として機能する。窪みDEは、空間ISaの下端に設けられた空間であるとみることもできる。第1保持構造HL1又は窪みDEの上端は、バレルカバー41uに対して初期位置決めされた状態のホルダー31の端部31eよりも高い位置に設定されている。また、窪みDEの底又は深さは、初期位置決めされた状態のホルダー31の端部31eが当たらない程度にされている。第1保持構造HL1の窪みDEのサイズは、ホルダー31のアライメント用の位置調整代を確保する観点で、端部31eのX方向やZ方向のサイズより一回り大きい。つまり、窪みDEは、ホルダー31をバレル41に対して+Z方向やX方向に移動させる初期段階以後の調整に際して、ホルダー31の端部31eのXZ面に沿った移動を許容するサイズを有する。第1保持構造HL1とホルダー31の端部31eとのクリアランスは、位置決め又はアライメントで調整し得る調整幅又は可動幅と同等かそれ以上のものとなっている。図8に示す第1保持構造HL1とホルダー31の端部31eとのクリアランスは、挿入口41zと支持フレーム31aとのクリアランスと同等のものであり、ホルダー台座41s上で基部板31bをXZ面に沿って移動させ得る範囲に対応するものとなっている。第1保持構造HL1とホルダー31の端部31eとのクリアランスは、具体的には、第1画像形成素子11aの対角サイズが5~10mm程度として、例えば±0.1~±0.5mm程度とする。
【0051】
接着材AM3は、例えば湿気硬化型の接着材(例えば変成シリコーン系樹脂を用いたもの)であり、第1保持構造HL1に充填又は塗布された後、ケースCA又はバレル41の湿気を吸収することで、数十分、数時間といった所望の硬化時間で硬化するように調整されている。接着材AM3の硬化後、ホルダー31の端部31eは、接着材AM3を介して第1保持構造HL1に対して位置決めされた状態で固定され、接着材AM3を介して第1保持構造HL1の窪みDEに支持される。硬化した接着材AM3は、端部31eと窪みDEとの隙間を充填するものとなっている。接着材AM3の硬化時間は、ホルダー31をバレル41にセットする工程、外の溝TRに接着材AM1を充填する工程、ホルダー31をバレル41に対して+Y方向や+Z方向に移動させて精密な位置決めを行う工程を含む外側固定準備工程に要する時間以上とされる。結果的に、第1保持構造HL1の硬化タイミングは、第2保持構造HL2の硬化タイミングよりも遅くなるように調整される。これにより、ホルダー31のケースCAに対する位置決めを含めた取り付けの時間を確保しつつ、第1保持構造HL1によってケースCA内でホルダー31の端部31eを固定することができる。
【0052】
接着材AM3は、湿気硬化型の接着材に限らず、光遅延硬化型の接着材(例えばエポキシ系やアクリル系樹脂を用いたもの)であってもよい。接着材AM3が光遅延硬化型である場合、ホルダー31をケースCAに挿入する直前に、液溜めLR又は窪みDEに充填された接着材AM3に対してUV光等を照射しておく。光遅延硬化型の接着材の硬化時間は、上記外側固定準備工程に要する時間以上とされる。これにより、ホルダー31をバレル41に対して位置決めし、光硬化型の接着材AM1を硬化させて基部板31bをホルダー31の外部に固定した後に、光遅延硬化型の接着材AM3の反応が促進し、支持フレーム31aの端部31eをホルダー31の内部に固定することができる。
【0053】
接着材AM3は、熱硬化型の接着材(例えばエポキシ系やアクリル系樹脂を用いたもの)であってもよい。この場合、ホルダー31をバレル41に対して位置決めし、接着材AM1を硬化させることで基部板31bをホルダー31の外部に固定した後に、ホルダー31とともに接着材AM3を適宜の温度及び時間で加熱し硬化させる。
【0054】
図11A~11Cは、図10A~10Cに示す支持フレーム31aのケースCA又はバレル41に対する固定構造を変更した変形例を示す。図11Aは、バレル本体41aの前方下部41aaの一部を切出した斜視断面図であり、図11Bは、支持フレーム31aの下端である端部31eを説明する斜視図である。図11Cは、支持フレーム31aの端部31eにおける角周辺を第1保持構造HL1とともに拡大して示す斜視断面図である。
【0055】
図11Aを参照して、バレル本体41aの前方下部41aaには、底板部材41dと前板部材41eと一対の側板部材41cとの境界近傍に、一対の枠状の突起148が形成されている。各突起148は、細矩形の受け皿又は堀を形成しており、硬化前の接着材AM3を保持する第1保持構造HL1として機能する。第1保持構造HL1は、硬化前の接着材AM3を保持する液溜めLRである窪みDEを有する。
【0056】
図11B及び11Cを参照して、ホルダー31の支持フレーム31aの端部31eの両端において、下方又は-Y方向に延びる一対の突起38pが形成されている。図8等に例示されるように、バレルカバー41uに対してホルダー31が初期位置決めされた状態で、ホルダー31の端部31eに形成された一対の突起38pは、バレル本体41aに形成された一対の窪みDEに対向する位置にそれぞれ配置される。
【0057】
窪みDEに硬化前の接着材AM3を充填又は塗布し、ホルダー31の下端に形成された一対の突起38pを接着材AM3が充填又は塗布された一対の窪みDEに差し込んで硬化させることで、窪みDEと突起38pとの間で接着が達成される。硬化後の接着材AM3は、ホルダー31をケースCA内で固定する第1接着部材FX1として機能する。窪みDEは、空間ISaの下端に設けられた空間であるとみることもできる。窪みDEは、ホルダー31をバレル41に対して+Z方向やX方向に移動させる初期段階以後の調整に際して、ホルダー31の端部31eのXZ面に沿った移動を許容するサイズを有する。
【0058】
図11A~11Cに示す固定構造では、左右2箇所に分けてホルダー31を固定するので、接着材AM3の使用量を抑えることができる。
【0059】
なお、突起148は、左右2箇所の配置に限らず、中央に1箇所の配置としてもよい。また、突起148は、左右及び中央の3箇所の配置としてもよい。
【0060】
図8、9、12等を参照して、光学モジュール100の製造方法であって、バレル41に表示ユニットDUを組付ける方法について説明する。図12中で、領域ER1は、バレル41に表示ユニットDUを組み付ける前の状態を示す斜視図であり、領域ER2は、表示ユニットDUを組み付け中の状態を示す斜視図である。
【0061】
光学部材2a,2bを内蔵したバレル41を準備する。次に、バレル本体41aに第1レンズ21o、第2レンズ21p、第3レンズ21q、及びプリズムミラー22を位置決めしつつ接着によって固定する。その後、バレル本体41aに対してバレルカバー41uを接着によって気密に固定する。この段階で、バレル41は、挿入口41zを除いて密閉された状態となっている。
【0062】
バレル本体41aにバレルカバー41uを固定する前又は後に、バレル41の底部に形成された第1保持構造HL1に接着材AM3を充填又は塗布する。バレル41の完成後、バレル41にホルダー31を固定する。
【0063】
図12の領域ER1に示す例では、バレル41の前部に第1コンバイナー103aが固定され、さらに、バレル41の上部にフレーム52の部分52aが取り付けられている。次に、表示ユニットDUのホルダー31をフレーム52の開口52oに露出するバレル41の挿入口41zに挿入する。具体的には、表示ユニットDUを構成するホルダー31のうち、支持フレーム31aを第1画像形成素子11aとともに挿入口41zに挿入する。この際、ホルダー31の基部板31bがバレルカバー41uのホルダー台座41s上に載置される。この場合、バレル41に対してホルダー31を取り付ける初期段階で、挿入口41zが略塞がれ、バレル41中の防塵を確保しやすくなる。この状態でホルダー31を後方-Z方向に押し付けると、バレル41に設けられたホルダー台座41sの表面である座面41nと、ホルダー31に設けられた基部板31bの下面31jとが当接した状態で、バレル41に設けられた2つの突起49sと、ホルダー31に設けられた2つの対応箇所39sとが当接する。これにより、初期位置決めが達成される。初期位置決め後、ホルダー台座41sの3方の縁部分に設けた段差S1すなわち第2保持構造HL2に接着材AM1を供給し、バレルカバー41uの挿入口41zに残る隙間G1を塞ぐように封止部として接着材AM2を供給する(図8参照)。その後、ホルダー31の基部板31bの上面31uを3次元駆動装置のアームRAで吸引してホルダー31を支持する。アームRAによってホルダー31の姿勢を6軸で調整しつつ、結像状態を観察し、所期の光学性能を達成できる程度に収差が少なくなった状態で、ホルダー31又は表示ユニットDUの移動を停止する。なお、図12の領域ER2に示すように、アームRAは、ホルダー31の上面31uを吸着機構によって支持し、ホルダー31を3軸α、β、γの方向に移動可能であり、3軸α、β、γの周りに回転させることができる。その後、段差S1等に供給された接着材AM1,AM2に紫外光を照射し、接着材AM1,AM2を硬化させる。つまり、基部板31bを接着材AM1,AM2によってバレル41の挿入口41z近傍に設けられたホルダー台座41sに固定する。以上において、ホルダー台座41sの段差S1に接着材AM1を供給し、挿入口41zに残る隙間G1を塞ぐように接着材AM2を供給する工程は、表示ユニットDUをバレル41に差し込む工程の前に行ってもよい。
【0064】
ホルダー31をバレル41の外側に固定するための接着材AM1,AM2が適度に硬化し、バレル41に対するホルダー31の位置決めが確定した後、第1保持構造HL1に保持された接着材AM3が硬化する。これにより、ホルダー31をバレル41の内側に固定することができる。結果的に、ホルダー31がバレル41の内部と外部とで接着固定された構造となるので、接着材AM1,AM3等の硬化後に直接の外力や熱などの環境影響によるズレを防止でき、安定的に良好な映像品位を提供することができる。例えば、製品として組み立てられたHMD200が落下しても、バレル41内でホルダー31の位置が維持されやすく、映像品位の維持が容易である。
【0065】
ホルダー31の姿勢を調整する工程では、接着材AM1,AM2によってバレル41内が密閉されており、防塵を配慮して光学モジュール100に第1画像形成素子11aを組み付けることができる。
【0066】
以上において、アームRAによってホルダー31を移動させる方向は主に光軸AXに平行なγ方向となっている。よって、基部板31bは、主にその下面31jの方向に移動することになり、位置決めのための空間確保が容易になり、バレル41や光学モジュール100を小型化することが容易になる。
【0067】
ホルダー31について初期位置決めを行うことにより、6軸で姿勢を調整する際の負担を軽減することができる。また、初期位置決めを行うことにより、影響度の低い軸について移動や回転の調整を省略することができる。つまり、6軸の姿勢調整から調整軸を減らした簡単な姿勢調整が可能なる。具体的には、バレル41に設けられた2つの突起49sを利用した初期位置決めにより、β軸又はY軸周りの回転の調整を省略することができる。
【0068】
以上で説明した第1実施形態の頭部装着型表示装置すなわちHMD200は、画像形成素子11aと、画像形成素子11aを保持するホルダー31と、画像形成素子11aからの映像光が入射する光学部材2a,2bと、光学部材2a,2bを収納し、ホルダー31を介して画像形成素子11aを内部に保持するケースCAと、ホルダー31をケースCA内で固定する第1接着部材FX1と、ホルダー31をケースCA外で固定する第2接着部材FX2とを備える。
【0069】
上記HMD200では、ケースCAが光学部材2a,2bを収納しホルダー31を介して画像形成素子11aを内部に保持するので、ケースCAに画像形成素子11aを組付ける際やその後において、画像形成素子11aや光学部材2a,2bにごみや異物が付着する可能性を低減できる。さらに、第1接着部材FX1がホルダー31をケースCA内で固定し、第2接着部材FX2がホルダー31をケースCA外で固定するので、ケースCA内での画像形成素子11aの配置を安定化させることができ、組み立て後におけるHMD200の光学性能の確保が容易になる。
【0070】
第1実施形態のHMD200において、ケースCAは、底板部材41dと側壁SWとを有する容器状のバレル本体41aと、バレル本体41aの内側を覆うことによって収納空間を形成するバレルカバー41uとを含み、第1保持構造HL1は、ケースCAの底板部材において、ホルダー31の端部31eが対向する箇所に窪みDEを有する。窪みDEに硬化前の接着材AM3を充填し、ホルダー31の端部31eを接着材AM3が充填された窪みDEに差し込んで硬化させることで、窪みDEとホルダー31の端部31eとの間で接着が達成される。
【0071】
また、第1実施形態のHMD200において、ホルダー31は、画像形成素子11aを支持する支持フレーム31aと、支持フレーム31aに接続される基部板31bとを有し、支持フレーム31aの端部31eは、ケースCAに形成された挿入口を介してケースCA中に挿入された状態で、第1接着部材FX1によってケースCA内に固定され、基部板31bは、挿入口を覆う状態で、第2接着部材FX2によってケースCA外に固定され、第2保持構造HL2は、ケースCAのうち基部板31bの周辺部が配置される箇所に段差状に形成されている。基部板31bの周辺部と段差状の第2保持構造HL2との間に硬化前の接着材AM1を充填し硬化させることで、基部板31bの周辺部と段差状の第2保持構造HL2の間で接着が達成される。
【0072】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態のHMD等について説明する。なお、第2実施形態のHMDは、第1実施形態のHMDを部分的に変更したものであり、第1実施形態のHMDと共通する部分については説明を省略する。
【0073】
図13A,13Bを参照して、第2実施形態のHMD200におけるホルダー31の固定について説明する。図13Aは、支持フレーム31aの下端である端部31eを説明する斜視図であり、図13Bは、支持フレーム31aの端部31eにおける角周辺の固定状態を拡大して示す斜視断面図である。
【0074】
図13Aに示すように、ホルダー31の支持フレーム31aのうち端部31eは、一対の角部に、切欠き238cを有する。切欠き238cは、接着材用の液溜めLRであり、硬化前の接着材を、その粘性や表面張力を利用して切欠き238cの外に流れ出しにくくしている。切欠き238cは、硬化前の接着材を保持する第1保持構造HL1として機能する。
【0075】
図13Bに示すように、バレル本体41aの前方下部41aaにおいて、底板部材41dと前板部材41eと一対の側板部材41cとの境界近傍には、一対の突起248が形成されている(図13Bでは、右側のみ図示)。突起248は、切欠き238cである第1保持構造HL1に対向する壁体WBである。つまり、ケースCA又はバレル41中において、初期位置決めされた状態のホルダー31の端部31eに形成された切欠き238cに対向するように壁体WBが設けられている。支持フレーム31aの端部31eに形成された切欠き238cには、予め接着材AM3が充填され、切欠き238cと突起248との間に接着材AM3が広がり、これらの間に接着材AM3が保持される。硬化後の接着材AM3は、支持フレーム31aの端部31eをバレル本体41aに固定する第1接着部材FX1として機能する。切欠き238cと突起248とのクリアランスは、図8に示す挿入口41zと支持フレーム31aとのクリアランスと同等のものであり、ホルダー台座41s上で基部板31bをXZ面に沿って移動させ得る範囲に対応するものとなっている。
【0076】
切欠き238cや突起248の形状は、図示のものに限らず、様々な形状とすることができる。ただし、突起248の底面又は段差面248bで接着材AM3の流出を抑制できることが望ましい。なお、突起248の段差面248bに代えて、底板部材41dの上面を接着材AM3の流出抑制に用いてもよい。
【0077】
以上で説明した第3実施形態のHMD200において、ホルダー31は、第1接着部材FX1を形成する硬化前の接着材AM3を保持する第1保持構造HL1を有し、ケースCAは、第1保持構造HL1に対向する壁体WBを有する。この場合、第1保持構造HL1と壁体WBとの間に接着材AM3を保持することができ、第1保持構造HL1と壁体WBとを介して、ホルダー31とケースCAとを直接的に固定することができる。
【0078】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態のHMD等について説明する。なお、第3実施形態のHMDは、第1実施形態のHMDを部分的に変更したものであり、第1実施形態のHMDと共通する部分については説明を省略する。
【0079】
図14に示すように、ホルダー331は、側面視T字状の外形を有する。ホルダー431は、第1画像形成素子11aを支持する支持フレーム31aと、支持フレーム31aの上部に接続されて支持フレーム31aと直交する方向に延びる基部板131bとを有する。基部板131bは、第1画像形成素子11aの光射出側又は-Z側である前方に延びる第1部材131baと、第1画像形成素子11aの光射出側に対して反対側又は+Z側である後方に延びる第2部材131bbとを有する。第1部材131baは、第1実施形態のホルダー31の基部板31bと同様の形状を有し同様に機能する。一方、第2部材131bbは、ホルダー台座41sの+Z側の端部に支持される。よって、表示ユニットDU又はホルダー331をバレル41に組み付ける際に、支持フレーム31a又は第1画像形成素子11aが光軸AXに対して傾くことをより抑制しやすくなる。また、第2部材131bbは、挿入口41zの+Z側に残る隙間G1を塞ぐ。つまり、基部板131bは、挿入口41zに蓋をするような形状となっている。これにより、ホルダー331をバレル41に差し込んだ段階で挿入口41zを全体的に塞ぐことができ、防塵効果を高めたものとなっている。
【0080】
FPC部11fや放熱シート11sは、第2部材131bbに形成された孔31hに通されてバレル41の外部に延びている。孔31hの周囲には、防塵や防水を確保する目的で接着材を塗布し充填することができる。
【0081】
T字のホルダー331については、平面視で、基部板131bが挿入口41zの外側に広がっており、基部板131bの面積が挿入口41zの面積よりも大きくなっている。
【0082】
T字のホルダー331を用いる場合、矩形の基部板131bの全周を囲む4方の縁部分に接着材AM1を供給することになる。
【0083】
図示の例では、ホルダー331の端部31eを全体的に固定しているが、ホルダー331の端部31eを例えば2箇所に分けて部分的に固定することもできる。また、図13Aに示すように、ホルダー331に切欠き238cを設け、バレル41のバレル本体41aの底に突起248を設けることもできる。
【0084】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0085】
以上では、HMD200が第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを備えるとしたが、HMD200は、単一の第1表示装置100A又は第2表示装置100Bを支持装置100Cによって眼前に支持するようなものであってもよい。
【0086】
以上では、ホルダー31に関して、支持フレーム31aと基部板31bとが直交する方向に延びるとしているが、支持フレーム31aと基部板31bとは、直交に限らず、折れ曲がって互いに交差する方向に延びるものであってもよい。
【0087】
基部板31bのサイズは、支持フレーム31aと同程度としているが、支持フレーム31aの半分程度以下のサイズを有するものであってもよい。
【0088】
基部板31bの形状は、矩形に限らず、円、楕円、多角形のような様々な形状とすることができる。
【0089】
段差S1,S2は、接着材AM1,AM2の移動を制限できる他の構造に置き換えることができ、例えば凸条に置き換えることができる。
【0090】
接着材AM3は、接着材AM1よりも最終的な硬化を遅くすることができるものであれば、湿気硬化型の接着材、光遅延硬化型の接着材、又は熱硬化型の接着材に限らず、外的な作用がない状態で硬化するものであってもよい。ただし、ケースCAの密閉性が高い場合、揮発性成分が少ないものを用いることが望ましい。
【0091】
支持フレーム31aの挿入口41zについては、製品構造として挿入口41zが上に配置されるものに限らず、挿入口41zが横に配置されるものであってもよい。ただし、支持フレーム31aをケースCAに挿入して固定する際には、ケースCAに形成された挿入口41zを上に配置し、支持フレーム31aを降下させるように挿入口41zに挿入することが、接着剤の流動を抑制する観点で望ましい。
【0092】
第1投射光学系12aの光学部材2a,2bは、図示のものに限らず、例えば第1光学部材2aを構成する光学素子の枚数や光学面の形状は、HMD200の使用目的等に応じて適宜変更することができる。
【0093】
第1画像形成素子11aは、レーザー光源やスキャナーミラーを有する走査型の表示装置であってもよい。この場合、レーザー光源やスキャナーミラーを一体化した装置がホルダー31に支持されて、ケースCA内に挿入され、ケースCA内で位置決めされつつ固定される。
【0094】
具体的な態様における頭部装着型表示装置は、画像形成素子と、画像形成素子を保持するホルダーと、画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、光学部材を収納し、ホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するケースと、ホルダーをケース内で固定する第1接着部材と、ホルダーをケース外で固定する第2接着部材とを備える。
【0095】
上記頭部装着型表示装置では、ケースが光学部材を収納しホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するので、ケースに画像形成素子を組付ける際やその後において、画像形成素子や光学部材にごみや異物が付着する可能性を低減できる。さらに、第1接着部材がホルダーをケース内で固定し、第2接着部材がホルダーをケース外で固定するので、ケース内での画像形成素子の配置を安定化させることができ、組み立て後における頭部装着型表示装置の光学性能の確保が容易になる。
【0096】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、第1接着部材は、湿気硬化型、光遅延硬化型、及び熱硬化型のいずれかの接着材で形成され、第2接着部材は、光硬化型の接着材で形成される。この場合、第2接着部材の接着材を硬化させる前に第1接着部材を接着箇所にセットし、ホルダーとともに画像形成素子をアライメントした状態で、第2接着部材の接着材を光照射によって硬化させた後に、第1接着部材を硬化させることで、ホルダーをケース内で固定することができる。
【0097】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、ケースは、内部に、第1接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第1保持構造を有する。この場合、第1保持構造が硬化前の接着材の流動を制限し、接着材が必要箇所から流出することを防止できる。
【0098】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、ケースは、外部に、第2接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第2保持構造を有する。この場合、第2保持構造が硬化前の接着材の流動を制限し、接着材が必要箇所から流出することを防止できる。
【0099】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、ホルダーは、第1接着部材を形成する硬化前の接着材を保持する第1保持構造を有し、ケースは、第1保持構造に対向する壁体を有する。この場合、第1保持構造と壁体との間に接着材を保持することができ、第1保持構造と壁体とを介して、ホルダーとケースとを直接的に固定することができる。
【0100】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、第1保持構造及び第2保持構造は、硬化前の接着材を保持する液溜めとして形成されている。この場合、硬化前の液状の接着材が必要箇所から流出することを抑制できる。
【0101】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、ケースは、底板部材と側壁とを有する容器状の本体と、本体の内側を覆うことによって収納空間を形成するカバーとを含み、第1保持構造は、ケースの底板部材において、ホルダーの端部が対向する箇所に窪みを有する。窪みに硬化前の接着材を充填し、ホルダーの端部を接着材が充填された窪みに差し込んで硬化させることで、窪みとホルダーの端部との間で接着が達成される。
【0102】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、ホルダーは、画像形成素子を支持する支持フレームと、支持フレームに接続される基部板とを有し、支持フレームの端部は、ケースに形成された挿入口を介してケース中に挿入された状態で、第1接着部材によってケース内に固定され、基部板は、挿入口を覆う状態で、第2接着部材によってケース外に固定され、第2保持構造は、ケースのうち基部板の周辺部が配置される箇所に段差状に形成されている。基部板の周辺部と段差状の第2保持構造との間に硬化前の接着材を充填し硬化させることで、基部板の周辺部と段差状の第2保持構造の間で接着が達成される。
【0103】
具体的な態様における頭部装着型表示装置において、基部板は、ケースのうち挿入口が形成された側面部に当接して初期位置決めされる。基部板の初期位置決め後、基部板を側面部に対して変位させることで、ホルダーや画像形成素子の精密な位置決めを行った状態で、第2接着部材によってホルダーを固定する。
【0104】
具体的な態様における光学モジュールは、画像形成素子と、画像形成素子を保持するホルダーと、画像形成素子からの映像光が入射する光学部材と、光学部材を収納し、ホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するケースと、ホルダーをケース内で固定する第1接着部材と、ホルダーをケース外で固定する第2接着部材とを備える。
【0105】
上記光学モジュールでは、ケースが光学部材を収納しホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するので、ケースに画像形成素子を組付ける際やその後において、画像形成素子や光学部材にごみや異物が付着する可能性を低減できる。さらに、第1接着部材がホルダーをケース内で固定し、第2接着部材がホルダーをケース外で固定するので、ケース内での画像形成素子の配置を安定化させることができ、組み立て後における光学モジュールの光学性能の確保が容易になる。
【0106】
具体的な態様における頭部装着型表示装置の製造方法は、画像形成素子を保持するホルダーと、光学部材を収納しホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するケースとを備える頭部装着型表示装置の製造方法であって、ホルダーを第1接着部材によってケース内で固定し、ホルダーを第2接着部材によってケース外で固定する。
【0107】
上記製造方法では、ケースが光学部材を収納しホルダーを介して画像形成素子を内部に保持するので、ケースに画像形成素子を組付ける際やその後において、画像形成素子や光学部材にごみや異物が付着する可能性を低減できる。さらに、第1接着部材がホルダーをケース内で固定し、第2接着部材がホルダーをケース外で固定するので、ケース内での画像形成素子の配置を安定化させることができ、組み立て後における頭部装着型表示装置の光学性能の確保が容易になる。
【0108】
具体的な態様における頭部装着型表示装置の製造方法において、第1接着部材の硬化は、第2接着部材の硬化よりも遅い。
【符号の説明】
【0109】
2a,2b…光学部材、11a…画像形成素子、11d…表示面、21…投射レンズ、21,22,23…光学素子、22…プリズムミラー、23…シースルーミラー、23a…透過性反射膜、23c…反射面、23o…外側面、26…絞り板部材、31,331,431…ホルダー、31a…支持フレーム、31b…基部板、31e…端部、31j…下面、31s…平板部、31t…枠部、31u…上面、33…遮光板、35t…肉薄部、39d,49d…初期当接箇所、39p,49p…初期当接面、39s…対応箇所、41…バレル、41a…バレル本体、41aa…前方下部、41c…側板部材、41d…底板部材、41e…前板部材、41i,41m…内面、41n…座面、41o…射出口、41s…ホルダー台座、41u…バレルカバー、41z…挿入口、45a,45b,45c,45d…案内凸部、48…リブ、49s…突起、52…フレーム、61…支持板、80a…駆動回路部材、90…ユーザー端末、100…光学モジュール、100A,100B…表示装置、100C…支持装置、102a,102b…表示駆動部、103a,103b…コンバイナー、148,149s、248…突起、238c…切欠き、AM1,AM2,AM3…接着材、FX1…第1接着部材、FX2…第2接着部材、HL1…第1保持構造、HL2…第2保持構造、AX…光軸、CA…ケース、DE…窪み、DP…防塵構造、DU…表示ユニット、EP…射出瞳、IM…中間像、IS…収納空間、ISa…空間、ML…映像光、OL…外界光、OS…軸外し光学系、P1,P2,P3…光路部分、RE…凹所、S1,S2…段差、SM…密閉部材、SW…側壁、TR…溝、US…装着者、WB…壁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図14